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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1200051
審判番号 不服2008-26471  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-15 
確定日 2009-07-09 
事件の表示 特願2003-290411「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 6980〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成7年5月16日に出願した特願平7-117060号の一部を平成15年8月8日に新たな特許出願としたものであって、平成20年9月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成19年10月18日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その内の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜上にシリコンオキシナイトライド膜を形成する工程と、
前記シリコンオキシナイトライド膜上にシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜、前記シリコンオキシナイトライド膜および前記シリコン酸化膜をエッチングすることによりパターニングする工程と、
前記パターニングによって露出された前記半導体基板の表面をエッチングすることにより前記半導体基板の表面に凹部を形成する工程と、
前記半導体基板の凹部を選択的に酸化することにより素子分離酸化膜を形成する工程とを備え、
前記シリコンオキシナイトライド膜は、1.47以上1.70以下の屈折率を有している、半導体装置の製造方法。」

第3 刊行物に記載された発明
1 刊行物1:特開昭63-21848号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願(特願平7-117060号)の出願前に日本国内で頒布された特開昭63-21848号公報(以下、「刊行物1」という。)には、第1図及び第2図とともに、以下の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
(1)半導体基板の一主面に薄い酸化膜を介するか直接オキシナイトライド膜を付着する工程と、
前記オキシナイトライド膜上をシリコン窒化膜で被覆する工程と、
前記半導体基板のフィールド領域上の前記オキシナイトライド膜およびシリコン窒化膜をエッチング除去する工程と、
前記半導体基板のフィールド領域を選択酸化する工程とを具備することを特徴とする素子分離領域の形成方法。
3.発明の詳細な説明
(イ)産業上の利用分野
本発明は素子分離領域の形成方法、特に選択酸化による埋め込み酸化膜を用いた素子分離領域の形成方法に関する。
〈ロ)従来の技術
素子分離領域の形成方法として選択酸化(LOCOS)法による酸化膜分離方法が特公昭49-39308号公報等で良く知られている。
斯るLOCOS法は第2図Aおよび第2図Bに示すように、シリコン基板(11)上に約500Åの厚みのパッド酸化膜(12)を熱酸化して形成し、更にこのパッド酸化膜(12)上にシリコン窒化膜(13)を堆積する。続いてホトレジスト膜をフィールド領域(14)を除いて付着し、これをマスクとしてフィールド領域(14)上のシリコン窒化膜(13)をエッチング除去してシリコン窒化膜(13)パターンを形成する。その後ボロンをフィールド領域(14)に選択的にイオン注入を行い、P^(+)型のチャンネルストッパ領域(15)を形成する。次いでホトレジスト膜を除去してシリコン窒化膜(13)パターンをマスクとして選択酸化を行い、フィールド領域(14)に部分的に基板(11)に埋設されたフィールド酸化膜(16)を成長させる。
(ハ)発明が解決しようとする問題点
しかしながら従来の選択酸化法では、フィールド酸化膜(16)がシリコン窒化膜(13)パターンの下に喰い込んで成長するためにいわゆるバーズビークが形成される。このためにLSIの集積化にとって大きな障害となっている。
これを改善するためにシリコン窒化膜(13)パターンを厚くしてパッド酸化膜(12)を薄くしてバーズビークを抑制する方法やフィールド酸化膜(16)の成長膜を薄くしフィールド酸化膜の喰い込みを抑制する方法が試みられている。
しかし前者ではシリコン窒化膜が固いためにフィールド端部におけるストレスが大きくなり、結晶欠陥が生じ易くなり、後者ではフィールド反転電圧低下などの問題点があり、選択酸化法による高集積化には限界がある。
(ニ)問題点を解決するための手段
本発明は斯る問題点に鑑みてなされ、選択酸化用マスクとなるシリコン窒化膜の下にオキシナイトライド膜を設けてフィールド領域の選択酸化を行うことにより、従来の問題点を大巾に改善した素子分離領域の形成方法を実現するものである。
(ホ)作用
本発明に依れば、シリコン窒化膜下にオキシナイトライド膜を設けることにより基板表面を被覆するパッド酸化膜を極めて薄くあるいは不要とするので、選択酸化を行う際にフィールド酸化膜の横方向への喰い込みを大巾に縮少できる。
(へ)実施例
以下に本発明の一実施例を第1図A乃至第1図Dを参照して詳述する。
本発明の第1の工程は、半導体基板(1)の一主面に薄い酸化膜(2)を介するか直接オキシナイトライド膜(3)を付着することにある(第1図A)。
P型シリコン基板(1)表面を熱酸化して約100?200Åの薄いパッド酸化膜(2)を付着する。このパッド酸化膜(2)上にSiH_(2)Cl_(2)+NH_(3)+N_(2)Oの混合ガスを用いて減圧CVD法により約200Åのオキシナイトライド膜(3)を付着する。なおオキシナイトライド膜(3)は直接半導体基板(1)表面に付着しても良い。
本工程で付着したオキシナイトライド膜(3)は酸素を含んだシリコン窒化膜であり、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜の中間の性質を有し、シリコン窒化膜より柔かいので基板(1)へのストレスを弱める働きをする。
本発明の第2の工程は、オキシナイトライド膜(3)をシリコン窒化膜(4)で被覆することにある(第1図B)。
シリコン窒化膜(4)はSiH_(2)Cl_(2)+NH_(3)の混合ガスを用いて減圧CVD法により約1500Åに全面に付着される。このシリコン窒化膜(4)は後で行う選択酸化のマスクとして利用される。
本発明の第3の工程は、半導体基板(1)のフィールド領域(5)上のオキシナイトライド膜(3)およびシリコン窒化膜(4)をエッチング除去することにある(第1図C)。
シリコン窒化膜(4)上にホトレジスト膜(図示せず)を付着し、所望のパターンに露光してフィールド領域(5)上のシリコン窒化膜(4)を露出する。続いてホトレジスト膜をマスクとしてシリコン窒化膜(4)およびオキシナイトライド膜(3)をプラズマエッチングして、フィールド領域(5)のパッド酸化膜(2)あるいは基板(1)表面を露出する。
本発明の第4の工程は、半導体基板(1)のフィールド領域(5)を選択酸化することにある(第1図D)。
本工程ではシリコン窒化膜(4)およびオキシナイトライド膜(3)をマスクとしてボロンをイオン注入してフィールド領域(5)上にP^(+)型のチャンネルストッパ領域(6)を形成する。その後同様のマスクを用いて選択酸化を行い、フィールド領域(5)に一部を基板(1)内に埋設したフィールド酸化膜(7)を熱酸化により形成する。この選択酸化はウェットO_(2)雰囲気内で1000℃で行い、約8000Åの厚みのフィールド酸化膜(7)を形成し、これと同時にチャンネルストッパ領域(6)もフィールド酸化膜(7)下にドライブインされる。
本工程は本発明の特徴とする工程であり、オキシナイトライド膜(3)を用いることによりパッド酸化膜(2)の厚みを極めて薄くできるのでフイールド酸化膜(7)のシリコン窒化膜(4)下への喰い込みを大巾に減少できる。具体的にはパッド酸化膜(2)の厚みが100Åのとき0.8μm厚のフィールド酸化膜(7)の横方向への喰い込み巾は約0.1μmとなる。またオキシナイトライド膜(3)はシリコン窒化膜(4)より柔かいので、フィールド端部へのストレスはシリコン窒化膜(4)に比べて緩和され結晶欠陥の発生を低減できる。またオキシナイトライド膜(3)はシリコン窒化物を主成分とするので選択酸化の際に耐酸化マスクとしても働く。
(ト)発明の効果
本発明に依れば、オキシナイトライド膜(3)をシリコン窒化膜(4)下に設けているので、パッド酸化膜(2)を従来より大巾に薄くするか無くすることができ、選択酸化によるフィールド酸化膜(7)のバーズビークの発生を最少限に抑えることができる。このために集積度を大巾に向上できる利点を有する。
また本発明に依れば、パッド酸化膜(2)を薄くしてもシリコン窒化膜(4)との間にオキシナイトライド膜(3)を緩衝材として配置するので、選択酸化によるフィールド端部へのストレスを大巾に緩和でき、結晶欠陥の少い素子形成領域を実現できる利点を有する。」(第1頁左下欄第4行ないし第3頁右上欄第5行)

したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「半導体基板の表面に薄いパッド酸化膜を付着する工程と、
前記パッド酸化膜上にオキシナイトライド膜を付着する工程と、
前記オキシナイトライド膜上にシリコン窒化膜を付着する工程と、
前記半導体基板のフィールド領域上の前記オキシナイトライド膜および前記シリコン窒化膜をエッチング除去する工程と、
前記半導体基板のフィールド領域を選択酸化して、フィールド酸化膜を形成する工程とを具備することを特徴とする素子分離領域の形成方法。」

2 刊行物2:特開平3-229419号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願(特願平7-117060号)の出願前に日本国内で頒布された特開平3-229419号公報(以下、「刊行物2」という。)には、第1図とともに、以下の事項が記載されている。
「(イ)産業上の利用分野
この発明は、半導体装置の製造方法に関する。さらに詳しくは、シリコン基板上の素子分離領域の形成方法に関する。」(第1頁左下欄第17行ないし第20行)
「(ホ)作用
等方性エッチングによって形成された溝が、この溝の表面酸化によって形成される酸化シリコン素子分離領域をシリコン基板面に対して緩やかな段差で配置させかつバーズビークシフトを抑制する。この緩やかな段差は、酸化シリコン素子分離領域の端部に加わる窒化シリコン層によるストレスを緩和し接合層のリーク電流を減少させる。また側壁部もさらに上記ストレスを緩和させるよう作用する。
(へ)実施例
以下に、この発明の実施例を図面を用いて説明する。
まず、第1図(a)に示すようにシリコン基板1の上に熱酸化法によって酸化シリコン層2(10nm)を形成し、この上にCVD法によって窒化シリコン層3(160nm)を形成し、更にこの上にCVD法によって非ドーピングシリケートガラス(NSG)層4(100nm)を積層する。
次に、第1図(b)に示すようにホトリソグラフィ法によって上記NSG層4、窒化シリコン層3及び薄い酸化シリコン層2を所定パターンになるようにエッチングして、酸化シリコン層2a、窒化シリコン層3a及びNSG層4aを形成する。
次に、第1図(c)に示すように上記エッチングによって露出したシリコン基板1上に熱酸化法によって再び酸化シリコン層2b(10nm)を形成し、この上にCVD法によってシリコン窒化膜(200nm)を積層し、リアクティブイオンエッチング(RIE)法によってエッチングしてテーパー状の側壁部5を形成する。
次に、第1図(d)に示すように上記エッチングによって露出したシリコン基板1をプラズマエッチャーを用いて等方性エッチングを行い、オフセット付の溝6を形成する。ただしこの溝は、幅1050Å、深さ1500Åである。次にこの溝6の表面からシリコン基板内へボロンイオンを注入し、この後ロコス法によって酸化処理を行い酸化シリコン素子分離領域7を形成する。
次に、第1図(e)に示すようにNSG層4を除去し、更にこのシリコン基板をリン酸水溶液中で煮沸することによって窒化シリコン層及びそのテーパー状側壁部5を除去し、この後、通常の工程によって半導体装置(CMOSデバイス)を作製する。
次に得られた半導体装置の特性について説明する。まず素子分離領域用酸化シリコン層の形状は傾斜付の溝を形成するため、上に凸の形状にならず20?30°のテーパー角をもつ平滑な形状が得られた。次にn^(+)接合層のI-V特性は第2図に示すように、接合耐圧が従来法にくらべて高くなる傾向が見られる。溝の深さの増加と共に耐圧は向上し、約1500Åの深さで4?5Vの耐圧向上が見られた。またリーク電流は従来のロコス法による酸化層に比べ電圧依存性が小さくなっている。」(第3頁左上欄第7行ないし同頁右下欄第1行)

3 刊行物3:特開平5-335302号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の原出願(特願平7-117060号)の出願前に日本国内で頒布された特開平5-335302号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図1ないし図3とともに、以下の事項が記載されている。
「【0012】
【実施例】以下、本発明の一実施例に係る選択酸化素子分離領域を有する半導体装置およびその製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1,2は本発明の一実施例に係る半導体装置の製造方法を示す要部断面図、図3は本発明の他の実施例に係る半導体装置の製造方法を示す要部断面図・・・を示す要部断面図である。
【0013】本発明の半導体装置は、膜厚が相互に相違する複数種類の選択酸化素子分離領域を同一の半導体基板上に有する。このような半導体装置を得るために、図1,2に示す実施例では、まず図1(A)に示すように、半導体基板2の表面に、パッド用絶縁膜4を形成する。このパッド用絶縁膜4は、後述する第1酸化阻止膜6と半導体基板2との緩衝作用を有し、たとえば半導体基板2の表面を熱酸化して得られる約50nm程度の酸化シリコン膜で構成される。
【0014】パッド用絶縁膜4の上には、同図(B)に示すように、第1酸化阻止膜6を成膜する。第1酸化阻止膜6は、たとえばCVD法で成膜される約150nm程度の窒素含有シリコン膜で構成される。第1酸化阻止膜6としては、酸化を阻止する機能を有する薄膜であれば特に限定されないが、たとえばSiN、SiONなどの窒素含有薄膜が例示される。
【0015】次に、同図(C)に示すように、第1酸化阻止膜6の表面にレジスト膜8を成膜し、素子領域にレジスト膜8が残るように、レジスト膜8をホトリソグラフィでパターニングし、このパターニングされたレジスト膜8を用いてRIEなどで第1酸化阻止膜6をパターニングする。
【0016】次に、同図(D)に示すように、レジスト膜8のみを除去し、その表面に、第1酸化阻止膜6に対して膜厚が十分に薄い薄膜状の第2酸化阻止膜10を成膜する。この第2酸化阻止膜10は、第1酸化阻止膜6と同様に酸化を阻止する機能を有する薄膜であれば特に限定されず、たとえばSiN、SiONなどの窒素含有薄膜などで構成される。・・・この酸化阻止膜10の膜厚は、特に限定されないが、たとえば10nm程度である。この第2酸化阻止膜10の膜厚および材質を調整することで、酸化阻止機能を調節することができる。この第2酸化阻止膜10は、酸化阻止機能と共に、その下層側の半導体基板表面をある程度酸化させる機能も必要であることから、余りに膜厚を厚くすることはできない。」
「【0024】図3は、図1,2に示す実施例の変形例を示す。この実施例では、図1(A)?(D)に示す工程を行った後、図3(A)に示すように、レジスト膜24を用いて、膜厚が相対的に厚い選択酸化素子分離領域を形成すべき領域を少なくとも含む半導体基板2の表面に、トレンチ溝26を形成する。・・・
【0025】トレンチ溝を26を形成した後には、図3(B)に示すように、レジスト膜24をエッチングなどで取り除く。この状態でLOCOS酸化を行えば、トレンチ溝内に、膜厚が相対的に厚い方の第1選択酸化素子分離領域20aが形成され、第2酸化阻止膜10の下層側に位置する半導体基板2の表面には、膜厚が薄い第2選択酸化素子分離領域22aが形成されることになる。この実施例では、トレンチ溝内に、膜厚が相対的に厚い方の第1選択酸化素子分離領域20aが形成されることから、半導体基板2の表面の平滑化が図れると共に、第1選択酸化素子分離領域20aが半導体基板2の深い位置まで形成されることになり、素子分離がより確実にな・・・る。」

第4 対比
本願発明と刊行物発明を対比する。
1 刊行物発明の「薄いパッド酸化膜」及び「オキシナイトライド膜」は、それぞれ、本願発明の「シリコン酸化膜」及び「シリコンオキシナイトライド膜」に相当するから、刊行物発明の「半導体基板の表面に薄いパッド酸化膜を付着する工程と、 前記パッド酸化膜上にオキシナイトライド膜を付着する工程と、 前記オキシナイトライド膜上にシリコン窒化膜を付着する工程」は、本願発明の「半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、 前記シリコン酸化膜上にシリコンオキシナイトライド膜を形成する工程と、 前記シリコンオキシナイトライド膜上にシリコン窒化膜を形成する工程と」に相当する。
2 刊行物1の「シリコン窒化膜(4)上にホトレジスト膜(図示せず)を付着し、所望のパターンに露光してフィールド領域(5)上のシリコン窒化膜(4)を露出する。続いてホトレジスト膜をマスクとしてシリコン窒化膜(4)およびオキシナイトライド膜(3)をプラズマエッチングして、フィールド領域(5)のパッド酸化膜(2)・・・を露出する。」(第2頁左下欄第16行ないし右下欄第3行)との記載から、刊行物発明の「前記半導体基板のフィールド領域上の前記オキシナイトライド膜および前記シリコン窒化膜をエッチング除去する工程」において、前記オキシナイトライド膜および前記シリコン窒化膜」がパターニングされることは明らかであるから、刊行物発明の「前記半導体基板のフィールド領域上の前記オキシナイトライド膜および前記シリコン窒化膜をエッチング除去する工程」は、本願発明の「前記シリコン窒化膜、前記シリコンオキシナイトライド膜」「をエッチングすることによりパターニングする工程」に相当する。
3 刊行物1の第1図D及び「その後同様のマスクを用いて選択酸化を行い、フィールド領域(5)に一部を基板(1)内に埋設したフィールド酸化膜(7)を熱酸化により形成する。」(第2頁右下欄第10行ないし第13行)との記載より、「フィールド酸化膜」が素子分離膜であることは明らかであるから、刊行物発明の「前記半導体基板のフィールド領域を選択酸化して、フィールド酸化膜を形成する工程」は、本願発明の「前記半導体基板」「を選択的に酸化することにより素子分離酸化膜を形成する工程」に相当する。
4 刊行物発明の「素子分離領域」が「半導体装置」の一部であることは明らかであるから、刊行物発明の「素子分離領域の形成方法」は、本願発明の「半導体装置の製造方法」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物発明とは、
「半導体基板上にシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記シリコン酸化膜上にシリコンオキシナイトライド膜を形成する工程と、
前記シリコンオキシナイトライド膜上にシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜、前記シリコンオキシナイトライド膜をエッチングすることによりパターニングする工程と、
前記半導体基板を選択的に酸化することにより素子分離酸化膜を形成する工程とを備える、半導体装置の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明は、「前記シリコン窒化膜、前記シリコンオキシナイトライド膜および前記シリコン酸化膜をエッチングすることによりパターニングする工程」を備えるのに対し、
刊行物発明は、「前記半導体基板のフィールド領域上の前記オキシナイトライド膜および前記シリコン窒化膜をエッチング除去する工程」を備えているが、本願発明の「前記シリコン酸化膜」に相当する「薄いパッド酸化膜」をエッチング除去していない点。
相違点2
本願発明は、「前記パターニングによって露出された前記半導体基板の表面をエッチングすることにより前記半導体基板の表面に凹部を形成する工程」を備えるのに対し、
刊行物発明は、上記工程を備えていない点。
相違点3
本願発明は、「前記半導体基板の凹部を選択的に酸化することにより素子分離酸化膜を形成する工程」を備えるのに対し、
刊行物発明は、「前記半導体基板のフィールド領域を選択酸化して、フィールド酸化膜を形成する工程」を備えているが、「前記半導体基板の凹部を選択的に酸化」していない点。
相違点4
本願発明は、「前記シリコンオキシナイトライド膜は、1.47以上1.70以下の屈折率を有している」との構成を備えるのに対し、
刊行物発明は、上記構成を備えていない点。

第5 当審の判断
以下に、各相違点について検討する。
1 相違点2について
ア 刊行物2には、「第1図(b)に示すように・・・上記NSG層4、窒化シリコン層3及び薄い酸化シリコン層2を所定パターンになるようにエッチングして、酸化シリコン層2a、窒化シリコン層3a及びNSG層4aを形成する。 次に、第1図(c)に示すように上記エッチングによって露出したシリコン基板1上に・・・テーパー状の側壁部5を形成する。 次に、第1図(d)に示すように上記エッチングによって露出したシリコン基板1をプラズマエッチャーを用いて等方性エッチングを行い、オフセット付の溝6を形成する。・・・この後ロコス法によって酸化処理を行い酸化シリコン素子分離領域7を形成する。」(第3頁右上欄第6行ないし左下欄第5行)こと、言い換えると、「NSG層4、窒化シリコン層3及び薄い酸化シリコン層2を」パターニングして、「露出したシリコン基板1」に「溝6を形成」し、その後、「酸化処理を行い酸化シリコン素子分離領域7を形成する」こと、及び「この溝の表面酸化によって形成される酸化シリコン素子分離領域をシリコン基板面に対して緩やかな段差で配置させかつバーズビークシフトを抑制する。」(第3頁左上欄第8行ないし第12行)ことが記載されている。
イ 刊行物3には、「膜厚が相対的に厚い選択酸化素子分離領域を形成すべき領域を少なくとも含む半導体基板2の表面に、トレンチ溝26を形成する。・・・ 【0025】トレンチ溝を26を形成した後には、図3(B)に示すように、レジスト膜24をエッチングなどで取り除く。この状態でLOCOS酸化を行えば、トレンチ溝内に、膜厚が相対的に厚い方の第1選択酸化素子分離領域20aが形成され、第2酸化阻止膜10の下層側に位置する半導体基板2の表面には、膜厚が薄い第2選択酸化素子分離領域22aが形成されることになる。この実施例では、トレンチ溝内に、膜厚が相対的に厚い方の第1選択酸化素子分離領域20aが形成されることから、半導体基板2の表面の平滑化が図れると共に、第1選択酸化素子分離領域20aが半導体基板2の深い位置まで形成される」(【0024】段落及び【0025】段落)こと、言い換えると、半導体基板2にトレンチ溝26を形成し、その後、選択酸化することにより、第1選択酸化素子分離領域20aが半導体基板2の深い位置まで形成されることが記載されている。
ウ 刊行物2及び3には、上記ア及びイに記載したとおり、半導体基板に溝(トレンチ)を形成した後に、選択酸化により素子分離領域を形成することが記載されており、刊行物発明において、刊行物2及び3に記載されるような、「前記半導体基板のフィールド領域を選択酸化して、フィールド酸化膜を形成する工程」の前に、半導体基板に溝(トレンチ)を形成する技術を適用して、刊行物発明が、本願発明の如く、「前記パターニングによって露出された前記半導体基板の表面をエッチングすることにより前記半導体基板の表面に凹部を形成する工程」を備えたものとすることは、当業者が何ら困難性なくなし得たものである。

2 相違点1及び3について
ア 上記「相違点2について」において検討したとおり、刊行物発明が「露出された前記半導体基板の表面をエッチングすることにより前記半導体基板の表面に凹部を形成する工程」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
イ また、刊行物発明において、選択酸化する前に、半導体基板に凹部を形成するためには、選択酸化する前に、半導体基板上に形成された酸化膜を除去することが必要であることは明らかであって、刊行物発明の「エッチング除去する工程」又はその後の工程であって、「選択酸化する」工程よりも前のいずれかの工程において、「パッド酸化膜」をも除去することが必要であることは明らかである。
ウ そして、「選択酸化する」工程よりも前のいずれかの工程において、「パッド酸化膜」をも除去することが必要であれば、刊行物発明の「前記半導体基板のフィールド領域上の前記オキシナイトライド膜および前記シリコン窒化膜をエッチング除去する工程」において、「パッド酸化膜」をも含めて除去することによりパターニングし、本願発明の如く、「前記シリコン窒化膜、前記シリコンオキシナイトライド膜および前記シリコン酸化膜をエッチングすることによりパターニングする工程」を備えたものとすることは当業者が適宜なし得たものである。
エ さらに、上記「相違点2について」において検討したとおり、刊行物発明において、選択酸化する工程の前に、半導体基板に溝(トレンチ)(本願発明の「凹部」に相当)を形成する技術を適用すると、刊行物発明の「前記半導体基板のフィールド領域を選択酸化して、フィールド酸化膜を形成する工程」は、「半導体基板のフィールド領域を選択酸化」することにより「フィールド酸化膜を形成する」工程ではなく、「前記半導体基板」の溝(トレンチ)「を選択的に酸化」することにより「フィールド酸化膜を形成する」工程となり、結果として、刊行物発明が、本願発明の如く、「前記半導体基板の凹部を選択的に酸化することにより素子分離酸化膜を形成する工程」を備えたものとなることは明らかである。

3 相違点4について
ア 以下の周知文献1及び2には、プラズマCVD法によるシリコンオキシナイトライド膜(SiON膜)の成長において、O及びNの原料ガスの流量を調整することにより、SiO_(2)に近い組成から、Si_(3)N_(4)に近い組成までのSiON膜を形成することができること、及び、SiON膜の屈折率は1.4程度から2.0程度までの範囲の値となることが記載されている。
イ 上記周知文献に記載されるシリコンオキシナイトライド膜(SiON膜)の屈折率の値の範囲(1.4程度から2.0程度)に、本願発明のシリコンオキシナイトライド膜の屈折率の値の範囲(n=1.47?1.70)が含まれることは明らかである。
ウ 本願の明細書には、シリコンオキシナイトライド膜の屈折率について、【0078】段落のみに、「膜構成を3層構造にすることによりゲート酸化膜の信頼性が向上できるが、このときシリコンオキシナイトライド膜(SiON膜)の組成(屈折率)が問題となる。すなわち、SiON膜22の組成をSiN膜3に近い組成にすると、図43に示したホワイトリボン12が発生しやすくなる。その一方SiON膜22をSiO_(2)膜に近い組成にすると耐酸化性が失われてバーズビークの延びが大きくなる。したがって、SiON膜22の組成は、その屈折率nがn=1.47?1.70の範囲内になるように形成するのが望ましい。」と記載されている。
エ 一方、刊行物1には、「オキシナイトライド膜(3)はシリコン窒化膜(4)より柔かいので、フィールド端部へのストレスはシリコン窒化膜(4)に比べて緩和され結晶欠陥の発生を低減できる。」(第3頁左上欄第5行ないし第8行)及び、「本発明に依れば、パッド酸化膜(2)を薄くしてもシリコン窒化膜(4)との間にオキシナイトライド膜(3)を緩衝材として配置するので、選択酸化によるフィールド端部へのストレスを大巾に緩和でき、結晶欠陥の少い素子形成領域を実現できる利点を有する。」(第3頁左上欄第20行ないし同頁右上欄第5行)と記載されている。
オ 上記アないしエより、シリコンオキシナイトライド膜を適用する目的等を考慮して、刊行物発明の「オキシナイトライド膜」の屈折率を、本願発明の如く、1.47以上で1.70以下の範囲内の値に設定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。

周知文献1:特開昭63-280426号公報
「本発明者はP-SiONの成長につき実験を重ね、SiONのプラズマ成長においてN_(2)O(亜酸化窒素)ガスとNH_(3)(アンモニア)ガスの比を20?50程度にして満足すべきP-SiON膜を得た。さらに、P-SiNとP-SiONの成長条件を比較して次のデータを得た。
成長条件 P-SiN P-SiON
成長温度 100?500℃ 100?500℃
成長圧力 0.5?数十Torr 0.5?数十Torr
SiH_(4) 数十cc/min 数十cc/min
NH_(3) 数十cc/min 数十cc/min
N_(2)O 0 数十?数百cc/min
高周波 数十W 数十W
屈折率 2程度 1.4?2程度
P-SiONの成長には、P-SiNの成長に用いなかったN_(2)Oガスを使用し、いわばSiNとSiO_(2)の中間の性質をもつSiONを得ることができた。屈折率は膜質を知るためのバロメーターとして測定したもので、屈折率が1.4程度であるとSiONはSiO_(2)に近い膜質のものとなり、2程度になるとSiNに近い膜質のものが得られる。」(第2頁左下欄第3行ないし同頁右下欄第3行)

周知文献2:特開平4-372132号公報
「【0011】この発明において、SiON膜の屈折率は、使用する反応ガス成分の種類及びそれらの構成比、反応温度、反応圧力等の反応条件に依存するが、中でも、反応ガス成分の構成比を変えることにより簡便に屈折率をコントロールできる。これは、SiON膜の屈折率がSi-O結合とSi-N結合との相対比に依存しているからである。例えば、反応ガスとしてSiH_(4)、O_(2)及びN_(2)を使用し、ECRプラズマCVD法により、μ波パワー150W,ガス圧8.3×10^(-4)Torr,SiH_(4)流量6sccm、O_(2)及びN_(2)の合計流量15sccmでO_(2)とN_(2)との比率を変えてシリコン基板にSiON膜を堆積させた場合において、SiON膜の屈折率と[O_(2)/(O_(2)+N_(2))]との関係を図1に示す。・・・ 【0012】これによれば、N_(2)の流量が零の場合には,SiO_(2)膜が形成されるので、その屈折率は1.40となる。一方、O_(2)の流量が零の場合には,Si_(3)N_(4)膜が形成されるので、屈折率は2.00となる。そして、その間では、連続的に屈折率が変化する。従って、同じ堆積条件においては、・・・図1のグラフに基づき、O_(2)とN_(2)との流量比を適切に選択することができる。・・・ 【0014】なお、SiON膜を形成する手段としては、バイアスECR-CVD法をはじめとする種々のCVD法から適宜選択することができる。」

よって、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-01 
結審通知日 2009-05-12 
審決日 2009-05-26 
出願番号 特願2003-290411(P2003-290411)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 安田 雅彦
小野田 誠
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 森田 俊雄  
代理人 深見 久郎  
代理人 仲村 義平  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 酒井 將行  
代理人 堀井 豊  
代理人 野田 久登  

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