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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10H
管理番号 1200137
審判番号 不服2007-30621  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-12 
確定日 2009-07-08 
事件の表示 特願2003-348053「サウンドカード,コンピュータシステム及びコンピュータシステムの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-170932〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成15年10月7日の出願(パリ条約による優先権主張2002年(平成14年)11月21日、大韓民国)であって、その請求項に係る発明は、平成19年3月9日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という)は以下のとおりのものである。

「スピーカー、マイク、ヘッドセット、CDプレーヤーなどのオーディオ機器が接続可能な少なくとも一つの接続ポートと;
外部から入力されるオーディオ信号を処理する入力オーディオ回路部と、外部に出力されるオーディオ信号を処理する出力オーディオ回路部と、ライン入力信号を処理するライン入力オーディオ回路部とからなり、前記接続ポートに接続される前記オーディオ機器の種類にしたがって前記オーディオ機器と連動する複数のオーディオ回路部と;
前記オーディオ機器が接続された前記接続ポートと前記複数のオーディオ回路部の中のいずれか一つのオーディオ回路部とを選択的に連結する制御部と;
を含むことを特徴とするコンピュータシステム。」

2.引用文献の記載事項
これに対して、原査定で引用された特開平11-69478号公報(以下、「引用文献1」という)には、次の技術事項が記載されている。

(a1)「【発明の属する技術分野】
本発明はオーディオ回路に係わり、特に複数のオーディオ機能を有するオーディオ回路に関する。
【従来の技術】
従来のオーディオ回路では、LINE_INジャック,MICジャック,ヘッドホンジャックと各オーディオ機能毎にジャックが設けられていた。
図2は従来のオーディオ回路の概略的構成図である。同図に示すように、サウンド回路11には、LINE_INジャック17,MICジャック18,ヘッドホンジャック16が接続される。
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、各オーディオ機能毎にオーディオジャックを設けると、オーディオジャックが省スペース化の障害となる。省スペース装置では、1個しかオーディオジャックを搭載することができない場合もあり、この場合には多くのオーディオ機能を持たせることができなくなる。
本発明の目的は、オーディオジャックを1個しか搭載できない省スペース装置に、より多くのオーディオ機能を持たせることを可能とするオーディオ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明のオーディオ回路は、サウンド回路の複数の入出力信号を前記入出力信号と同数以上の入力を持つセレクタに接続し、そのセレクタ出力を該セレクタの入力の数より少ない数のオーディオジャックに接続し、制御手段で該セレクタを制御することを特徴とする。
オーディオジャックはセレクタの入力の数より少ない数であれば、各オーディオ機能毎にオーディオジャックを設ける場合よりも、オーディオジャックの数が少なくなるので省スペース化に寄与するが、オーディオジャックの数を一つとすればさらなる省スペース化が可能である。」(【0001】-【0007】)
(a2)「図1は本発明のオーディオ回路の一実施形態の概略的構成図である。本実施形態においては、オーディオジャック5とセレクタ2,3を用いることにより、サウンド回路1の全ての機能を使用可能としている。
図1に示すように、本実施形態のオーディオ回路は、サウンド回路1、セレクタ2,3、音声出力手段となるスピーカ4、オーディオジャック5、制御手段となる制御回路6からなる。
セレクタ2は制御回路6によって制御され、MIC2-1、IN2-2、OUT2-3に切換え可能となっている。また、セレクタ3も制御回路6によって制御され、HP3-1、SP3-2に切換え可能となっている。
通常は、制御回路6によりセレクタ2をOUT2-3,セレクタ3をHP3-1にして、へッドホンジャック端子として機能させる。その時、音声はへッドホン及びスピーカから出力される。LINE-INジャック機能として使用する時には、制御回路6によりセレク夕2をIN2-2に、セレクタ3をSP3-2に切り替えることにより使用可能になる。その時には、へッドホンジャック機能が無いため、スピーカのみの出力となる。また、MICジャック機能として使用する時には、制御回路6によりセレクタ2をMIC2-1に、セレクタ3をSP3-2に切り替えることにより使用可能になる。その時もスピーカのみの出力となる。」(【0009】-【0012】)
(a3)「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオーディオ回路の一実施形態の概略的構成図である。
【図2】従来のオーディオ回路の概略的構成図である。」

以上の記載及び【図1】【図2】の記載から、引用文献1には次の発明が記載されている。

「ヘッドホンジャック、LINE-INジャック、及び、MICジャックの各オーディオ機能毎のオーディオジャックとして機能するオーディオジャックと、
セレクタを介して上記オーディオジャックに接続されるLINE-IN端子、MIC端子、OUT端子を備えたサウンド回路と、
上記セレクタを制御して、上記オーディオジャックがLINE-IN端子、MIC端子、OUT端子の何れか一つに接続されるように切り替える制御回路と、
を備えたオーディオ回路を搭載する省スペース装置。」

また、原査定で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特表2001-509610号公報(以下、「引用文献2」という)には、次の技術事項が記載されている。

(b1)「図1Bは、パーソナルコンピュータ10の内部アーキテクチャーを非常に簡単に示す。パーソナルコンピュータ10は、CPU18と、メモリ20と、フロッピードライブ22と、CD-ROMドライブ24と、ハードドライブ26と、マルチメディアカード28とを備えている。図1Bに示すコンピュータ10の各要素は、バスシステム29を経て互いに通信する。もちろん、本発明では、多数のコンピュータ構成を使用できる。実際に、本発明は、パーソナルコンピュータに限定されるものではなく、ビデオゲームや映画のサウンドシステムや他の多数のシステムにも適用できる。
図2は、本発明による集積回路を取り付けることのできる典型的なマルチメディアカード28を示す。このマルチメディアカード28は、回路ボード32に取り付けられた音響プロセッサチップ30を備えている。図2に示すように、CD-ROMコネクタ34、AC97コーデック36、オプションのAC3デコンプレッサ/デコーダ38、及びミクサ39は、全て、適当なインターフェイスを経て音響プロセッサチップ30に接続される。
又、図2には音響プロセッサ30への種々の他の接続も示されており、これらは、ジョイスティックコネクタ42、モデム(図示せず)用の電話線接続44、ラインインコネクタ46、マイクロホンコネクタ47、及びスピーカ出力48を含む。更に、バスシステム29の一部分であるPCIバス49への接続も示されている。バス49は、ホストマイクロプロセッサ18及びメインメモリ20に接続される。
図3は、音響プロセッサ30の簡単なブロック図である。音響プロセッサ30は、3つの主機能ユニット、即ち音響処理エンジン40と、音響効果エンジン50と、ホストインターフェイスユニット60とを備えている。」(【0005】-【0008】)

以上の記載及び【図1B】【図2】【図3】の記載から、引用文献2には、次の発明が記載されている。

「外部のマイクロホンやスピーカを接続するコネクタを備えて音響処理を行うマルチメディアカードを含むパーソナルコンピュータ」

3.対比
本願発明と、引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1に記載された発明おける「オーディオジャック」は、ヘッドホンジャック、LINE-INジャック、及び、MICジャックの各オーディオ機能毎のオーディオジャックとして機能するものであるから、本願発明の「スピーカー、マイク、ヘッドセット、CDプレーヤーなどのオーディオ機器が接続可能な少なくとも一つの接続ポート」に相当する。
引用文献1に記載された発明における「サウンド回路」は、【図1】に示されるようにLINE-IN端子、MIC端子、OUT端子を備えているから、これらの端子を用いて入力した、又は、出力するオーディオ信号の処理を行う回路部からなるものであり、これらの回路部が、オーディオジャックを介して外部のMICから入力したオーディオ信号の処理を行ったり、信号処理を行ったオーディオ信号を外部のヘッドホンへ出力したりするものであること、すなわち、外部のMICやヘッドホンと連動するものであることは当業者には明らかである。
したがって、この「サウンド回路」は、本願発明の「外部から入力されるオーディオ信号を処理する入力オーディオ回路部と、外部に出力されるオーディオ信号を処理する出力オーディオ回路部と、ライン入力信号を処理するライン入力オーディオ回路部とからなり、前記接続ポートに接続される前記オーディオ機器の種類にしたがって前記オーディオ機器と連動する複数のオーディオ回路部」に相当するものである。
引用文献1に記載された発明における「制御回路」は、セレクタを制御して、上記オーディオジャックがLINE-IN端子、MIC端子、OUT端子の何れか一つに接続されるように切り替える制御を行うものであるから、本願発明の「前記オーディオ機器が接続された前記接続ポートと前記複数のオーディオ回路部の中のいずれか一つのオーディオ回路部とを選択的に連結する制御部」に相当する。
引用文献1に記載された発明の「・・オーディオジャックと、・・サウンド回路と、・・制御回路とを備えたオーディオ回路を搭載する省スペース装置」と、本願発明の「・・接続ポートと・・複数のオーディオ回路部と・・制御部とを含むことを特徴とするコンピュータシステム」とは、「・・接続ポートと・・複数のオーディオ回路部と・・制御部とを含む装置」である点で共通する。
したがって、本願発明と引用文献1に記載された発明とは次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「スピーカー、マイク、ヘッドセット、CDプレーヤーなどのオーディオ機器が接続可能な少なくとも一つの接続ポートと;
外部から入力されるオーディオ信号を処理する入力オーディオ回路部と、外部に出力されるオーディオ信号を処理する出力オーディオ回路部と、ライン入力信号を処理するライン入力オーディオ回路部とからなり、前記接続ポートに接続される前記オーディオ機器の種類にしたがって前記オーディオ機器と連動する複数のオーディオ回路部と;
前記オーディオ機器が接続された前記接続ポートと前記複数のオーディオ回路部の中のいずれか一つのオーディオ回路部とを選択的に連結する制御部と;
を含む装置。」

(相違点)
装置が、本願発明では、コンピュータシステムであるのに対し、引用文献1に記載された発明は、省スペース装置である点。

4.当審の判断
相違点について検討する。
引用文献2に記載されているように、外部のマイクロホンやスピーカを接続するコネクタを備えて音響処理を行うマルチメディアカードを含むパーソナルコンピュータは周知のものである。
したがって、引用文献1に記載された省スペース装置を、引用文献2に記載されたもののようなパーソナルコンピュータ(本願発明の「コンピュータシステム」に相当)として構成することは当業者が容易に想到できたことである。

なお、請求人は請求の理由において次のように主張している。
「(3-1-1)
引用文献1には、複数のポートを有するいわゆる一般的な構成が開示されています(引用文献1の図2等参照)。また、平成19年4月17日(発送日)の拒絶理由通知書において審査官殿が認定されている様に、引用文献1に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明と相違しています。
(3-1-2)
また、引用文献2に記載の発明は、「オーディオジャックを1個しか搭載できない省スペース装置により多くのオーディオ機能を持たせること」(引用文献2の段落0005参照)を目的とした発明であり、複数のポートを有するいわゆる一般的な構成と比較してポートの数が減ぜられた特殊な構成を前提とするものです。したがって、引用文献2に記載の発明と本願請求項1に記載の発明とは、発明の対象(前提とする構成)が相違します。
(3-1-3)
さらに、複数のポートを備えることを前提とした発明(引用文献1に記載の発明)と、複数のポートを有するいわゆる一般的な構成と比較してポートの数が減ぜられた特殊な構成を前提とした発明(引用文献2に記載の発明)とは、発明の前提が相反するものであり、引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とを組み合わせること自体、いかなる当業者といえども、容易に行えるものではないと確信致します。」
(なお、請求人がこの理由で記載した引用文献1と引用文献2は平成19年4月12日付け拒絶理由通知の記載と番号を同じにしたものであるが、本審決においては引用文献1と引用文献2の番号を逆に、すなわち、上記拒絶理由通知の引用文献1は本審決においては引用文献2、上記拒絶理由通知の引用文献2は本審決においては引用文献1と定義している。以下、本審決の定義にしたがって記載する。)

確かに、請求人が主張するように、引用文献2に記載された発明は複数のポートを備えることを前提としたものであり、引用文献1に記載された発明は、オーディオジャックの数を少なくして省スペースにすることを目的とするものではある。しかしながら、引用文献1に記載されたものは、上記(a1)に、「オーディオジャックはセレクタの入力の数より少ない数であれば、各オーディオ機能毎にオーディオジャックを設ける場合よりも、オーディオジャックの数が少なくなるので省スペース化に寄与するが、オーディオジャックの数を一つとすればさらなる省スペース化が可能である。」と記載されているように、必ずしもオーディオジャックが1個のみに限定されているものではなく、要するに省スペースのために数を少なくすることを目的とするのみであって、複数のジャックを備えることを排除するものではない。
さらに、省スペースにするという目的自体は一般的なものであって、引用文献2に記載されたパーソナルコンピュータにおいても当業者が普通に考えることである。
したがって、引用文献1と引用文献2とは発明の前提が相反するものではなく、引用文献1に記載の発明と引用文献2に記載の発明とを組み合わせることができないとする請求人の主張は当を得ないものである。
また、そもそも、本願発明は「オーディオ機器が接続可能な少なくとも一つの接続ポート・・・を含むコンピュータシステム」であるから、本願発明は、接続ポートが1つの場合も複数の場合も両方を含むものであり、この点において引用文献1との相違はないのであるから、上記した当業者が容易に想到できたものは、本願発明と同じ効果を有することは明らかである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項5に係る発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-06 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2003-348053(P2003-348053)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 和水板橋 通孝  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 千葉 輝久
伊藤 隆夫
発明の名称 サウンドカード,コンピュータシステム及びコンピュータシステムの制御方法  
代理人 亀谷 美明  

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