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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1200138
審判番号 不服2007-31124  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-16 
確定日 2009-07-08 
事件の表示 特願2002-247071号「貼付剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 81558号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月27日の出願であって、平成19年10月15日付け(発送:平成19年10月18日)で拒絶査定がなされたところ、同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年11月28日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

第2 平成19年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成19年11月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は
「延紙と、その表面に延展塗布される薬剤と、薬剤に仮付着された剥離紙とよりなる貼付剤であって、
該薬剤側を内側にして2つ折りにした延紙両片部の間に剥離紙が挿入されており、
延紙の各合わせ端から折り返し端部に向けて、それぞれ広幅及び狭幅薬剤未塗布部分を有し、該狭幅薬剤未塗布部分は、その先端部が前記広幅薬剤未塗布部分に対して指の感覚で感じ取る段部を有しており、
該薬剤側を内側にし、薬剤塗布端を一致させて延紙を2つ折りにした状態で、各片部の前記合わせ端が、折り返し端部からそれぞれ異なる距離に配置され、且つ、前記剥離紙が薬剤塗布端より突出する未仮付着部を有し、該未仮付着部の先端は、前記いずれの合わせ端をも超えない位置に配置されていることを特徴とする貼付剤。」
と補正された。
この補正は、平成19年1月23日付けの手続補正により補正された請求項1の幅狭薬剤未塗布部分について、「該狭幅薬剤未塗布部分は、その先端部が前記広幅薬剤未塗布部分に対して指の感覚で感じ取る段部を有し」という限定を付加するものである。
この補正は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて新規事項を追加するものでなく、しかも、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか否か)について、以下に検討する。

2.本願補正発明
補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。
「延紙と、その表面に延展塗布される薬剤と、薬剤に仮付着された剥離紙とよりなる貼付剤であって、
該薬剤側を内側にして2つ折りにした延紙両片部の間に剥離紙が挿入されており、
延紙の各合わせ端から折り返し端部に向けて、それぞれ広幅及び狭幅薬剤未塗布部分を有し、該狭幅薬剤未塗布部分は、その先端部が前記広幅薬剤未塗布部分に対して指の感覚で感じ取る段部を有しており、
該薬剤側を内側にし、薬剤塗布端を一致させて延紙を2つ折りにした状態で、各片部の前記合わせ端が、折り返し端部からそれぞれ異なる距離に配置され、且つ、前記剥離紙が薬剤塗布端より突出する未仮付着部を有し、該未仮付着部の先端は、前記いずれの合わせ端をも超えない位置に配置されていることを特徴とする貼付剤。」

3.引用発明
(1)引用刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である実願昭49-49122号(実開昭50-137386号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「膏薬を片面に塗布した紙又は布などを膏薬塗布面を内側にして二つ折りにし膏薬塗布面の間に剥離紙を挟んで折畳んだ貼り膏薬。」(明細書第1頁第5?7行)

(b)「本考案は、膏薬を紙や布に塗布した貼り膏薬に関する。」(明細書第1頁第9行?10行)

(c)「第1図、第2図に示す貼り膏薬(1)は、第3図に示す長方形の和紙(2)の片面に膏薬(5)を両側の短辺側側片部(3)、(3)を残して均一に塗布し、ほぼ固化した膏薬面を内側にして長手方向の中央部より二つ折りにし、和紙の両折半部(4)、(4)の各膏薬面よりやや大きい長方形のシリコン加工を施したグラシン紙の剥離紙(6)を、各折半部(4)、(4)に塗着した膏薬(5)面間に挟込み、剥離紙(6)の両面に膏薬(5)面を密着させて膏薬を塗着した和紙(2)を二つ折りに折畳んだ貼り膏薬である。
使用する際には、密着していない和紙の各側辺部(3)、(3)をつかんで外側方に引っ張り折畳んだ貼り膏薬(1)を広げ、一方の折半部(4)の塗着膏薬面に接着して残った剥離紙(6)を剥がして取り除き、広げた貼り膏薬(1)を患部に貼布する。」(明細書第2頁第11行?第3頁第5行)

また、第1図及び第2図には、剥離紙(6)の両面に膏薬(5)面を密着させて膏薬を塗着した和紙(2)を二つ折りに折畳んだ貼り膏薬が図示されており、和紙両端に位置する2つの側辺部(3)、(3)の一方が幅広の側辺部であり、他方が幅狭の側辺部であることが図示されている。そして、第1図には、塗着された膏薬(5)の端部の実線及び剥離紙(6)端部の実線が重ならない状態で図示されており、これより剥離紙(6)の端部は、塗着された膏薬(5)の端部より突出していることが認められる。
さらに、第1図には、各側片部の端部が、折り返し端部からそれぞれ異なる距離に配置され、且つ、剥離紙(6)の側辺部側の端部先端は、いずれの側辺部の端部をも超えない位置に配置されている点も図示されている。

以上の記載及び図面を総合すれば、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「和紙(2)と、その表面に塗着される膏薬(5)と、膏薬(5)に仮付着された剥離紙(6)とよりなる貼り膏薬であって、
該膏薬(5)側を内側にして2つ折りにした和紙(2)の両側片部の間に剥離紙(6)が挿入されており、
和紙(2)の端部には、それぞれ幅広の側辺部(3)及び幅狭の側辺部(3)を有し、
該膏薬(5)側を内側にし、和紙(2)を二つ折りに折畳んだ状態で、各側片部の端部が、折り返し端部からそれぞれ異なる距離に配置され、且つ、前記剥離紙(6)の端部が塗着された膏薬の端部より突出し、剥離紙の側辺部側の端部先端は、前記いずれの側辺部の端部をも超えない位置に配置されている貼り膏薬」

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「和紙(2)」「膏薬(5)」「貼り膏薬」「剥離紙(6)」「幅広の側辺部(3)」「幅狭の側辺部(3)」「塗着された膏薬の端部」及び「剥離紙の側辺部側端部」は、それぞれ、本願補正発明の「延紙」「薬剤」「貼付剤」「剥離紙」「広幅薬剤未塗布部分」「狭幅薬剤未塗布部分」「薬剤塗布端」及び「未仮付着部」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「側辺部(3)(3)」と、本願補正発明の「広幅及び狭幅薬剤未塗布部分」は、いずれも幅の長さを不統一とすることにより段部を形成するものであり、引用発明の和紙がある程度の厚みを有することは自明であることから、引用発明の該幅狭の側辺部は、その先端部が前記幅広の側辺部に対して指の感覚で感じ取る段部といえる。
してみると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「延紙と、その表面に延展塗布される薬剤と、薬剤に仮付着された剥離紙とよりなる貼付剤であって、
該薬剤側を内側にして2つ折りにした延紙両片部の間に剥離紙が挿入されており、
延紙の各合わせ端から折り返し端部に向けて、それぞれ広幅及び狭幅薬剤未塗布部分を有し、該狭幅薬剤未塗布部分は、その先端部が前記広幅薬剤未塗布部分に対して指の感覚で感じ取る段部を有しており、
該薬剤側を内側にし、延紙を2つ折りにした状態で、各片部の前記合わせ端が、折り返し端部からそれぞれ異なる距離に配置され、且つ、前記剥離紙が薬剤塗布端より突出する未仮付着部を有し、該未仮付着部の先端は、前記いずれの合わせ端をも超えない位置に配置されていることを特徴とする貼付剤。」

<相違点>
本願補正発明は、「薬剤塗布端を一致させて」いるのに対して、引用発明には薬剤塗布端の位置について明記がない点。

5.相違点についての検討及び判断
・相違点について
引用刊行物において、塗着した膏薬(5)の塗布端の位置について記載はないが、第1図及び第2図を参酌すると、第1図の実線で示された上側の膏薬の塗布端の位置と、破線で示された下側の膏薬の塗布端の位置は重なっており、第2図を見ても、上側と下側の塗布端の位置はほぼ一致した位置にあるものと解することができる。
そして、薬剤塗布端を一致させることは、原査定の拒絶理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である実願昭61-173173号(実開昭63-78033号)のマイクロフィルムの第5図にあるように公知であり、この公知例に照らせば、引用発明の膏薬の塗布端の位置を、本願補正発明の上記相違点に係る構成のようにすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
本願補正発明を全体構成でみても、引用発明及び公知例から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び公知例に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年1月23日付けで手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「延紙と、その表面に延展塗布される薬剤と、薬剤に仮付着された剥離紙とよりなる貼付剤であって、
該薬剤側を内側にして2つ折りにした延紙両片部の間に剥離紙が挿入されており、
延紙の各合わせ端から折り返し端部に向けて、それぞれ広幅及び狭幅薬剤未塗布部分を有しており、
該薬剤側を内側にし、薬剤塗布端を一致させて延紙を2つ折りにした状態で、各片部の前記合わせ端が、折り返し端部からそれぞれ異なる距離に配置され、且つ、前記剥離紙が薬剤塗布端より突出する未仮付着部を有し、該未仮付着部の先端は、前記いずれの合わせ端をも超えない位置に配置されていることを特徴とする貼付剤。」

第4 引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献、その記載事項及び引用発明は、前記第2【理由】3.に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記第2【理由】2.で検討した本願補正発明から、幅狭薬剤未塗布部分について、「該狭幅薬剤未塗布部分は、その先端部が前記広幅薬剤未塗布部分に対して指の感覚で感じ取る段部を有し」という限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2【理由】5.に記載したとおり、引用発明及び公知例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び公知例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用刊行物及び公知例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-07 
結審通知日 2009-05-08 
審決日 2009-05-27 
出願番号 特願2002-247071(P2002-247071)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 村山 禎恒
佐野 健治
発明の名称 貼付剤  
代理人 阿部 綽勝  
代理人 白崎 真二  
代理人 勝木 俊晴  

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