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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1200189
審判番号 不服2006-21009  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-07-09 
事件の表示 特願2002-135632「金属用アルカリ洗浄剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開、特開2003-221598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年5月10日(優先権主張平成13年11月20日)の出願であって、平成17年4月13日付けで拒絶理由が通知され、同年6月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成18年8月14日付けで拒絶査定がなされたところ、同年9月21日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月23日付けで手続補正がなされ、さらに、平成20年6月30日付けで審尋がなされ、同年8月28日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年10月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定[補正の却下の決定の結論]
平成18年10月23日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
平成18年10月23日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前に、
「【請求項1】 水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤と下記(1)?(6)から選ばれる防錆剤とキレート剤とHLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤の1種以上とを含有し、アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)とが下記式(1)を満足し、且つキレート剤の含有量が0.01?0.5重量%である金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
-0.95≦0.333a-25b-0.2≦0.09 式(1)
(1)ベンゾトリアゾール系化合物又はその誘導体
(2)ベンゾチアゾール系化合物又はその誘導体
(3)脂肪族メルカプタン
(4)アミン系化合物
(5)イミダゾール系化合物又はその塩
(6)窒素環式不飽和化合物
【請求項2】 アルカリ剤の濃度aが0.8?2.4重量%の範囲にある請求項1記載の金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】 防錆剤の濃度bが0.005?0.05重量%の範囲にある請求項1又は2記載の金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項4】 組成物中の非イオン界面活性剤の含有量が0.01?5重量%の範囲内にある請求項1?3の何れか1項記載の金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項5】 非イオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルから選ばれる請求項1?4の何れか1項記載の金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
【請求項6】 非イオン界面活性剤が、下記一般式(I)?(III)で表される化合物から選ばれる請求項1?4の何れか1項記載の金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
R-O-(EO)_(x1)-(PO)_(y1)-(EO)_(x2)-H (I)
R-O-[(EO)_(x3)/(PO)_(y2)]-(EO)_(x4)-H (II)
R-O-(EO)_(x5)-[(EO)_(x6)/(PO)_(y3)]-(PO)_(y4)-[(EO)_(x7)/(PO)_(y5)]-(EO)_(x8)-H (III)
〔式中、Rは炭素数6?24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又は【化1】


を示す。ただし、R^(1)、R^(2)は、それぞれ炭素数1?22の直鎖のアルキル基を示し、その炭素数の和は5?23である。また、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x1、x2、x3、x4、x5、x6、x7及びx8はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、x1、x2、x3、x4、x5及びx8はそれぞれ1以上の数、x1+x2≧4、x3+x4≧4、x5+x6+x7+x8≧4、x6+x7≧1である。y1、y2、y3、y4及びy5はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、0<y1<x1+x2、0<y2<x3+x4、y3+y5≧0.1、y3≧0、y4≧0、y5≧0、y3+y4+y5<x5+x6+x7+x8である。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕
【請求項7】 請求項1?6の何れか1項記載のアルカリ洗浄剤組成物を用いて金属板表面を洗浄する方法。」
だったものを、次のように補正するものである。
「【請求項1】 水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤と下記(1)?(6)から選ばれる防錆剤とキレート剤とHLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤の1種以上とを含有し、アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)とが下記式(1)を満足し、且つキレート剤の含有量が0.01?0.5重量%である金属板用アルカリ洗浄剤組成物を用いて金属板表面を脱脂洗浄する方法。
-0.95≦0.333a-25b-0.2≦0.09 式(1)
(1)ベンゾトリアゾール系化合物又はその誘導体
(2)ベンゾチアゾール系化合物又はその誘導体
(3)脂肪族メルカプタン
(4)アミン系化合物
(5)イミダゾール系化合物又はその塩
(6)窒素環式不飽和化合物
【請求項2】 前記金属板用アルカリ洗浄剤組成物のアルカリ剤の濃度aが0.8?2.4重量%の範囲にある請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記金属板用アルカリ洗浄剤組成物の防錆剤の濃度bが0.005?0.05重量%の範囲にある請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 前記金属板用アルカリ洗浄剤組成物中の非イオン界面活性剤の含有量が0.01?5重量%の範囲内にある請求項1?3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】 前記金属板用アルカリ洗浄剤組成物の非イオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルから選ばれる請求項1?4の何れか1項記載の方法。
【請求項6】 前記金属板用アルカリ洗浄剤組成物の非イオン界面活性剤が、下記一般式(I)?(III)で表される化合物から選ばれる請求項1?4の何れか1項記載の方法。
R-O-(EO)_(x1)-(PO)_(y1)-(EO)_(x2)-H (I)
R-O-[(EO)_(x3)/(PO)_(y2)]-(EO)_(x4)-H (II)
R-O-(EO)_(x5)-[(EO)_(x6)/(PO)_(y3)]-(PO)_(y4)-[(EO)_(x7)/(PO)_(y5)]-(EO)_(x8)-H (III)
〔式中、Rは炭素数6?24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又は【化1】


を示す。ただし、R^(1)、R^(2)は、それぞれ炭素数1?22の直鎖のアルキル基を示し、その炭素数の和は5?23である。また、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x1、x2、x3、x4、x5、x6、x7及びx8はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、x1、x2、x3、x4、x5及びx8はそれぞれ1以上の数、x1+x2≧4、x3+x4≧4、x5+x6+x7+x8≧4、x6+x7≧1である。y1、y2、y3、y4及びy5はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、0<y1<x1+x2、0<y2<x3+x4、y3+y5≧0.1、y3≧0、y4≧0、y5≧0、y3+y4+y5<x5+x6+x7+x8である。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕」

2.補正の適否
この補正は、補正前の請求項1?6を削除し、補正前の請求項7の「請求項1?6の何れか1項」をそれぞれ独立させて補正後に請求項1?6とし、かつ「洗浄する方法」を「脱脂洗浄する方法」と補正するものであるから、補正前の請求項7に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項の規定に適合する。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1)刊行物:
1 特公昭41-1326号公報 (原査定における引用文献1)
2 特開平10-324900号公報(原査定における引用文献2)

(2)刊行物に記載された事項
刊行物1:
1-1 「高度の苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾール又はその水溶性塩を添加し生成せる溶液で不銹鋼又は銅を洗浄し高度苛性洗浄剤による洗浄の際に生ずる不銹鋼上の褐色乃至黒色の汚れ又は銅の曇りの形成を阻止することを特徴とする不銹鋼及び銅の洗浄方法。」(特許請求の範囲)
1-2 「ここに高度苛性液と称するは少くとも0.25%以上のアルカリ金属水酸化物例えば水酸化ナトリウム若くは水酸化カリウムを溶存する水溶液を意味するものとする。」(1頁左欄6?8行)
1-3 「不銹鋼製装置の場合には高度の苛性洗浄液を繰返し使用すると、不銹鋼表面上、特に牛乳処理に使用する不銹鋼装置表面例えば牛乳蒸発器及び真空鍋或は又この付属装置の表面上に黒い被膜又は汚れを極めて形成し易い。」(1頁左欄9?12行)
1-4 「尚屡々(審決注:「屡々」について原文は旧字体。)界面活性剤をこの洗浄液中に混入することが誠に好ましい場合があるが、多くの目的に対してはこの物質を混入する必要がない。ポリエチレンオキシド縮合物、ノニルフェノールエチレンオキシド縮合物アルキルナフチレンスルホネートその他の適当な界面活性剤を使用し得るが泡立ちの少いものを可とする。」(1頁右欄13?18行))
1-5 「尚多くの場合グルコン酸、へプタグルコン酸、グルコン酸のアルカリ金属塩及びへプタグルコン酸のアルカリ金属塩の何れかをこの洗浄液に混入するを特に可とする。かかる物質は洗浄を助長し、又洗浄操作中或は排出する際の生成洗浄液と洗浄表面からの離脱を促進する。尚これ等の物質は洗浄操作中に取除いた物質と錯化合物を形成して金属表面上に再度沈積するのを阻止する。」(1頁右欄19?25行)
1-6 「本発明方法に使用する洗浄液を形成する固形粒状混合物は通常次の組成範囲にする。
組成1
重量%
1 アルカリ金属水酸化物 40?94
2 水溶性リン酸塩洗浄剤 5?20
3 グルコン酸、ヘプタグルコン 1?10
酸グルコン酸のアルカリ金属
塩又はヘプタグルコン酸のア
ルカリ金属塩
4 2-メルカプトベンゾチアゾ 0.1?40
ール又はその水溶性塩
リン酸塩はこれを混入する方が好ましいが、かかる組成物には絶対に必須なものでなく、洗浄液をリン酸塩を除去して製造することもできる。リン酸塩を除外する場合には他の成分は重量%を重量部とし取扱い決定した割合で使用する。尚組成1に約5(重量)%迄の少量の界面活性剤を混入することができる。尚この混合物を銅洗浄用に使用する洗浄液の生成に使用せんとする場合には、この混合物に対し約20(重量)%迄の洗浄剤形成剤として通常使用するアルカリ金属硅酸塩特に無水メタ硅酸ナトリウムを混入するを可とする。」(1頁右欄30行?2頁左欄3行)
1-7 「水で稀釈した場合に約0.5?5%のアルカリ度を含有する不銹鋼洗浄用に適する固形粒状混合物の1例は次の組成をなす。
組成3
重量%
1 水酸化ナトリウム 79
2 ピロリン酸四ナトリウム 12
3 グルコン酸ナトリウム 5
4 アルキルアミンポリグリコール
縮合物(泡立ちの少ない界面活性剤) 3
5 2-メルカプトベンゾチアゾール 1
銅表面の洗浄に使用する水で稀釈した場合に約0.5?5のアルカリ度の溶液を形成する固形粒状混合物の1例は次の組成をなす。
組成4
重量%
1 水酸化ナトリウム 73.55
2 無水メタ硅酸ナトリウム 15.0
3 グルコン酸ナトリウム 5.0
4 トリポリリン酸ナトリウム 5.0
5 アルキルアミンポリグリコール縮合物 0.75
6 2-メルカプトベンゾチアゾール 0.7 」
(2頁左欄16?41行)

刊行物2:
2-1 「(A)下記一般式(I)?(III)で表される非イオン界面活性剤の1種以上、及び(B)アルカリ剤を含有することを特徴とする硬質表面洗浄剤組成物。
R^(1)O-(EO)x_(1)-(PO)y_(1)-(EO)x_(2)-H (I)
R^(2)O-[EOx_(3)/POy_(2)]-(EO)x_(4)-H (II)
R^(3)O-(EO)x_(5)-[EOx_(6)/POy_(3)]-(PO)y_(4)-[EOx_(7)/POy_(5)]-(EO)x_(8)-H (III)
〔式中、R^(1), R^(2)及びR^(3)は炭素数6?24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基を示す。x_(1), x_(2), x_(3), x_(4), x_(5), x_(6), x_(7)及びx_(8)はエチレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、x_(1), x_(2), x_(3), x_(4), x_(5)及びx_(8)はそれぞれ1以上の数、x_(1)+x_(2)≧4、x_(3)+x_(4)≧4、x_(5)+x_(6)+x_(7)+x_(8)≧4、x_(6)+x_(7)≧1である。y_(1), y_(2), y_(3), y_(4)及びy_(5)はプロピレンオキサイドの平均付加モル数を示す数で、0<y_(1)<x_(1)+x_(2)、0<y_(2)<x_(3)+x_(4)、y_(3)+y_(5)≧1、y_(3)≧0、y_(4)≧0、y_(5)≧0、y_(3)+y_(4)+y_(5)<x_(5)+x_(6)+x_(7)+x_(8)である。また、[ ]で囲まれた部分はランダム付加、( )で囲まれた部分はブロック付加であることを示す。〕」(特許請求の範囲の請求項1)
2-2 「本発明の課題は、金属、ガラス、陶磁器、プラスチックス等の硬質表面の洗浄において、低温(50℃以下)で、十分な洗浄性能を有するアルカリ洗浄剤組成物を提供することにある。」(段落【0004】)
2-3 「また、本発明は、上記(A)成分の非イオン界面活性剤及び(B)成分のアルカリ剤に加えて、更に(C)キレート剤を含有することを特徴とする硬質表面洗浄剤組成物を提供するものである。(C)成分のキレート剤を含有することによって、一般式(I)?(III)で表される特定の非イオン界面活性剤の1種以上との組み合わせで、洗浄性能が相乗的に向上する利点がある。・・・50℃より高い温度で洗浄した場合においても、先に示した公知の非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤より優れた性能を示すことは言うまでもない。」(段落【0007】?【0009】)
2-4 「本発明の洗浄組成物を洗浄にそのまま用いる場合には、(A)成分の非イオン界面活性剤の配合量は、0.01?5重量%が好ましく、0.05?3重量%が更に好ましい。」(段落【0023】)
2-5 「表2


」(段落【0050】)

(3)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「高度の苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾールを添加した溶液で不銹鋼又は銅を洗浄する洗浄方法」(摘記1-1)に係る発明が記載され、摘記1-7には、水で稀釈した場合に0.5?5%のアルカリ度を含有する不銹鋼洗浄用に適する固形粒状混合物の1例として組成3が、銅表面の洗浄に使用する水で稀釈した場合に0.5?5%のアルカリ度の溶液を形成する固形粒状混合物の1例として組成4が示されている。該組成3中、グルコン酸ナトリウムは摘記1-5に「尚これ等の物質は洗浄操作中に取除いた物質と錯化合物を形成して」とあるから「キレート剤」といえ(なお、本願明細書の段落【0012】にもグルコン酸がキレート剤である旨の記載がある。)、摘記1-6に「リン酸塩はこれを混入する方が好ましいが、かかる組成物には絶対に必須なものでなく、洗浄液をリン酸塩を除去して製造することもできる。」と記載されているからなくてもよく、アルキルアミンポリグリコール縮合物は「界面活性剤」であるから、該組成物を水で稀釈した場合は「苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾール、界面活性剤及びキレート剤を添加した、0.5?5%のアルカリ度の溶液」になるので、刊行物1には、
「苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾール、界面活性剤及びキレート剤を添加した、0.5?5%のアルカリ度の溶液で、不銹鋼又は銅を洗浄する洗浄方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(4)対比
そこで、補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「苛性洗浄液」は摘記1-2より水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム溶液であるから、補正発明の「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤」に相当し、引用発明の「2-メルカプトベンゾチアゾール」は、ベンゾチアゾール系化合物であり、本願明細書の段落【0009】に「本発明に用いられる防錆剤としては、・・・(2)2-メルカプトベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系化合物又はその誘導体、」と記載されているから、補正発明の「下記(2)から選ばれる防錆剤」に相当し、補正発明の「金属板」も引用発明の「不銹鋼又は銅」も「金属」であり、かつ、両者ともにそれを洗浄する方法であるから、両者は、
「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤と下記(2)から選ばれる防錆剤とキレート剤と界面活性剤の1種以上とを含有する金属用アルカリ洗浄剤組成物を用いて金属を洗浄する方法。」
という点で一致するが、下記の点で相違している。

[相違点]
1.補正発明は、「アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)とが式(1)-0.95≦0.333a-25b-0.2≦0.09を満足し、且つキレート剤の含有量が0.01?0.5重量%である」のに対して、引用発明は、組成3及び4に具体的組成割合が記載されているが、アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)の関係、及びキレート剤の含有量についての記載は存在しない点
2.界面活性剤が、補正発明は「HLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤」であるのに対して、引用発明には特に限定がない点
3.補正発明は、「金属板表面を脱脂洗浄する方法」であるのに対して、引用発明は、「不銹鋼又は銅を洗浄する洗浄方法」である点

(5)判断
上記相違点について判断する。
ア 相違点1について
摘記1-7には、水で稀釈した場合に0.5?5%のアルカリ度を含有する不銹鋼洗浄用に適する固形粒状混合物の1例として組成3が、銅表面の洗浄に使用する水で稀釈した場合に0.5?5%のアルカリ度の溶液を形成する固形粒状混合物の1例として組成4が、それぞれ示されている。
上記の組成3において、「水酸化ナトリウム」は「アルカリ剤」に、「グルコン酸ナトリウム」は「キレート剤」に、「2-メルカプトベンゾチアゾール」は「防錆剤」にそれぞれ相当するところ、「ピロリン酸四ナトリウム」は、摘記1-6に「リン酸塩はこれを混入する方が好ましいが、かかる組成物には絶対に必須なものでなく、洗浄液をリン酸塩を除去して製造することもできる。リン酸塩を除外する場合には他の成分は重量%を重量部とし取扱い決定した割合で使用する。」と記載されているから、ピロリン酸四ナトリウムを除去した場合の組成3を書き直すと、
組成3
A B C
重量部 重量% 重量%
水酸化ナトリウム 79 89.8 2
グルコン酸ナトリウム 5 5.7 0.127
アルキルアミンポリグリコール
縮合物(泡立ちの少ない界面活性剤)3 3.4 0.076
2-メルカプトベンゾチアゾール 1 1.1 0.024
となる。
ここで、A欄は、ピロリン酸四ナトリウムを除き各成分を重量部で表したもの、B欄はA欄の組成を重量%で表しなおしたもの、そして、C欄は水酸化ナトリウムが2重量%のときの他の成分の量を計算したもの、を表す。
そこで、アルカリ剤の濃度を、0.5?5%のアルカリ度の中央付近の値であり、かつ、摘記2-5の「アルカリ剤含有量(%)」の欄に見るように、金属用アルカリ洗浄剤として代表的な濃度である2重量%に稀釈した場合について、アルカリ剤の濃度と防錆剤の濃度の関係、及びキレート剤の配合割合を計算する。
式(1)の「 0.333a-25b-0.2」において、「a(アルカリ剤の濃度)=2」、「b(防錆剤の濃度)=0.024」を代入すると、「0.333a-25b-0.2=-0.134」となり、式(1)の「-0.95≦0.333a-25b-0.2≦0.09」を満足するものであり、キレート剤の含有量も0.127重量%であるから、0.01?0.5重量%の範囲内のものである。
同様に組成4の場合においても、組成3と同様に、無水メタ硅酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムとを除き、水酸化ナトリウムが2重量%となるように稀釈すると、防錆剤である2-メルカプトベンゾチアゾールは0.020重量%となり、同様に式1を計算すると、「0.333a-25b-0.2=-0.034」となり、また、キレート剤は0.137重量%と計算されているから、いずれも補正発明の条件を満たすものである。
そうしてみると、引用発明において、アルカリ剤の濃度aと防錆剤の濃度bとの関係及びキレート剤の含有量は補正発明のそれと差異がないから、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ 相違点2について
刊行物2には、アルカリ剤、キレート剤及び非イオン界面活性剤からなる金属等の硬質表面用のアルカリ洗浄剤(摘記2-1?2-3)において、非イオン界面活性剤として、本願明細書の段落【0015】?【0027】で本願発明において効果的なものとして挙げられている一般式(I)?(III)と同じものが示され(摘記2-1)、公知の非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤より優れた性能を示す(摘記2-3)ことが記載されている。
また、刊行物2には、HLB(デイビス法)が4?8であることは明記されていないが、同じ非イオン界面活性剤であればHLBも同じと認められるので、刊行物2に記載の界面活性剤もHLB(デイビス法)が4?8であると認められる。
そうしてみると、引用発明も刊行物2に記載のアルカリ洗浄剤もともに金属に用いられるものであるから、引用発明において、界面活性剤として刊行物2に記載の一般式(I)?(III)で示される非イオン界面活性剤を適用する程度のことは当業者にとって通常の創作能力の範囲内のことであり何ら困難なことではない。
したがって、引用発明において、界面活性剤を「HLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤」とするのは、当業者にとって容易である。

ウ 相違点3について
引用発明は、特に牛乳処理に使用する不銹鋼装置表面例えば牛乳蒸発器及び真空鍋の洗浄に用いるものである(摘記1-3)が、牛乳は脂肪分を多量に含むものであるから、洗浄により当然脱脂もおこなわれると認められる。
そうしてみると、牛乳蒸発器等の金属装置用の脱脂洗浄方法を単に金属の形態が異なるだけの金属板に用いる程度のことは、当業者にとって通常の創作能力の範囲内のことであり何ら困難なことではないから、引用発明において、「金属板表面を脱脂洗浄する方法」とすることは、当業者にとって容易である。

エ 発明の効果について
補正発明の効果は、本願明細書の段落【0011】、【0033】に記載されているように「洗浄力と防錆効果の両方に優れた効果が得られる。」というものであるが、本願明細書の段落【0036】、【0037】に記載された防錆性の試験方法と洗浄性の試験方法では、本来、洗浄液に同じ時間浸漬した場合の評価であるべきところ、金属板の洗浄時間が、防錆性の試験方法と洗浄性の試験方法では全く異なっていて、それぞれに都合がよい試験結果が示されているだけなので、これをもって、本願発明の効果が、洗浄力と防錆効果の両方に優れたものであると認めることはできない。したがって、補正発明の効果は、引用発明の奏する効果と同種のものであり、予測可能な範囲内のものであり、かつ格別優れたものとも認められない。

オ まとめ
以上のとおりであるから、補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(6)請求人の主張
請求人は、回答書において以下の主張をしている。
ア 「原審引例1(審決注:「刊行物1」に同じ。以下、同様。)は、・・・繰り返し使用といったある程度の時間をかけて高度の苛性洗浄液が接触することにより生じる場合の不都合を解消しようとするものです。・・・本願発明の対象とする、圧延油などを含む汚れが付着した金属板を脱脂洗浄する場合に生じる洗浄直後の不都合(銅の腐食等)を防止することを意図しているものとはいえません。・・・本願発明の課題に対する解決手段を、原審引例1やその設計変更から見出そうとする動機付けは生まれません。」(〔2〕(2-1))

イ 「原審引例1には、洗浄力の向上については具体的に示されているとは言い難く、本願発明のように、金属板に対する洗浄力と腐食防止効果の両方に優れた技術が原審引例1から示唆されることもありません。」(〔2〕(2-2))

ウ 「原審引例1には、界面活性剤を使用できることも記載されていますが、「多くの目的に対してはこの物質を混入する必要がない」・・・とあり、また、界面活性剤を使用する場合にしても「殆ど総ての市販の界面活性剤を用いることができる」・・・としています。・・・原審引例1で脱脂洗浄を意図して界面活性剤を使用すべき動機付けそのものが存在しません。ましてや、原審引例1では界面活性剤を使用する場合は、「殆ど総ての市販の界面活性剤を用いることができる」としていることから、本願発明で使用するHLB4?8の非イオン界面活性剤という、特定の界面活性剤のみを選定して原審引例1において使用することも示唆されません。」(〔2〕(2-3))

エ 「本願発明では、アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)に着目して、特定の関係式を満たす金属板用アルカリ洗浄剤組成物を用いて金属板表面を脱脂洗浄することで、洗浄力と防錆効果の両方に優れた効果が得られることを見出したものです。原審引例1で用いられる高度の苛性洗浄液は、アルカリ金属水酸化物を水に溶存させたものですが、その場合、当業者は、任意成分であるリン酸やグルコン酸といった酸による影響も含め、全体で「高度の苛性洗浄液」が得られるように調製することが一般的です。しかし、こうした通常の観点で調製する場合に、当業者が補正案による本願の式(1-1)を想起し、具体的にこの関係式を満たすように希釈倍率等を決めることが、設計事項であるとはいえません。」(〔2〕(2-4))

オ 「原審引例1には、表現上、洗浄と防錆についての言及はありますが、実質的には金属板の脱脂洗浄と防錆効果の両方を向上させる技術が開示されているとは言い難く、本願発明の課題である金属板の脱脂洗浄と防錆効果の両方を向上させるための手段が原審引例1から示唆されることはありません。」(〔2〕(2-5))

カ これらの主張について検討するに、上記「ア」について、補正発明の「金属板」が「圧延油などを含む汚れが付着した金属板」であるとの特定はなく、引用発明は、優れた洗浄、防錆効果の結果、洗浄直後は勿論のこと、ある程度の時間をかけて生じる場合の不都合を解消したものであるから、優れた洗浄、防錆効果のある洗浄剤を用いる洗浄脱脂方法という点では補正発明と解決課題が異なるとはいえず、請求人の主張は採用することができない。
上記「イ」について、補正発明の比較例1の洗浄性と実施例1?22の洗浄性を比較してみても(本願明細書の段落【0038】、【0039】の「洗浄性(脱脂性)、判定」の項)、補正発明に洗浄力の向上があるとは認められず、アルカリ洗浄液の持つ本来の洗浄能力の中で洗浄効果を発現しているにすぎず、この点では引用発明と何ら変わりがないので、この請求人の主張は採用することができない。
上記「ウ」について、刊行物1の組成3及び4(摘記1-7)には、界面活性剤が使用されているし、引用発明も、上記「(5)ウ」で述べたとおり、洗浄により脱脂も行われているといえるので、脱脂洗浄を意図して界面活性剤を使用すべき動機付けそのものが存在しないという主張は採用することができない。また、HLB4?8の非イオン界面活性剤という、特定の界面活性剤のみを選定して使用することの容易性は、上記「(5)イ」で述べたとおりであり、この主張も採用することができない。
上記「エ」について、刊行物1の組成3及び4(摘記1-7)では、全ての組成割合を示し、その上で0.5?5%のアルカリ度を含有する洗浄液にするとの記載があり、そのアルカリ度2%の洗浄液が補正発明の式(1)を満たすものなのであるから、刊行物1に式(1)が記載されていないことをもって、実質的に相違しているとはいえない。
したがって、上記「(5)ア」で述べたとおり、この主張も採用することができない。
上記「オ」について、上記の「(5)エ」で述べたとおり、本願明細書には、脱脂洗浄と防錆効果の両方の向上を裏付けるデータはなく、補正発明の効果は引用発明の奏する効果と同種のものであり、予測可能な範囲内のものであり、かつ格別優れたものとも認められないので、この主張も採用することができない。
以上のとおりであるから、請求人の主張はいずれも採用することができない。

(7)まとめ
以上のとおり、補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年10月23日付けの手続補正が上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?7に係る発明は、平成17年6月20日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤と下記(1)?(6)から選ばれる防錆剤とキレート剤とHLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤の1種以上とを含有し、アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)とが下記式(1)を満足し、且つキレート剤の含有量が0.01?0.5重量%である金属板用アルカリ洗浄剤組成物。
-0.95≦0.333a-25b-0.2≦0.09 式(1)
(1)ベンゾトリアゾール系化合物又はその誘導体
(2)ベンゾチアゾール系化合物又はその誘導体
(3)脂肪族メルカプタン
(4)アミン系化合物
(5)イミダゾール系化合物又はその塩
(6)窒素環式不飽和化合物」

2.原査定の拒絶の理由
(1)経緯
原査定における平成17年4月13日付け拒絶理由通知において、出願当初の請求項1?3、7に係る発明については、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同請求項4?6に係る発明については、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨が、通知されたところ、「HLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤の1種以上」なる事項は、同請求項1に係る発明においては、発明を特定する事項とされてはおらず、同請求項4に係る発明において、発明を特定する事項として記載されていたものである。
これに対して、平成17年6月20日付けで手続補正書が提出されたところ、該補正後の請求項1においては、「HLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤の1種以上」が、発明を特定する事項として記載され、以下の請求項においては、すべて該補正後の請求項1が引用されている。
そして、原査定においては、該補正後の請求項1?6に係る発明について、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とされた。
以上をまとめると、平成17年6月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1については、刊行物1及び刊行物2に基づく特許法第29条第2項の拒絶理由が通知され、これに基づいて拒絶査定がされた、といえる。

(2)原査定の拒絶の理由の概要及び刊行物
上記(1)より、原査定の拒絶の理由の概要は、請求項1?6に係る発明については、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1(特公昭41-1326号公報)及び刊行物2(特開平10-324900号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.刊行物に記載された事項
刊行物1、2に記載された事項は、上記「第2 [理由]2.(2)」に示したとおりである。

4.刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「高度の苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾールを添加した溶液で不銹鋼又は銅を洗浄する洗浄方法」(摘記1-1)に係る発明が記載され、摘記1-7には、水で稀釈した場合に0.5?5%のアルカリ度を含有する不銹鋼洗浄用に適する固形粒状混合物の1例として組成3が、銅表面の洗浄に使用する水で稀釈した場合に0.5?5%のアルカリ度の溶液を形成する固形粒状混合物の1例として組成4が示されている。該組成3中、グルコン酸ナトリウムは摘記1-5に「尚これ等の物質は洗浄操作中に取除いた物質と錯化合物を形成して」とあるから「キレート剤」といえ(なお、本願明細書の段落【0012】にもグルコン酸がキレート剤である旨の記載がある。)、摘記1-6に「リン酸塩はこれを混入する方が好ましいが、かかる組成物には絶対に必須なものでなく、洗浄液をリン酸塩を除去して製造することもできる。」と記載され、アルキルアミンポリグリコール縮合物は「界面活性剤」であるから、該組成物を水で稀釈した場合は「苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾール、界面活性剤及びキレート剤を添加した、0.5?5%のアルカリ度の溶液」になるので、刊行物1には、
「苛性洗浄液に少量の2-メルカプトベンゾチアゾール、界面活性剤及びキレート剤を添加した、0.5?5%のアルカリ度の溶液であって、不銹鋼又は銅を洗浄するのに用いられる組成物」
の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。

5.対比
そこで、本願発明と刊行物発明を対比する。
刊行物発明の「苛性洗浄液」は摘記1-2より水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム溶液であるから、本願発明の「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤」に相当し、刊行物発明の「2-メルカプトベンゾチアゾール」は、ベンゾチアゾール系化合物であり、本願明細書の段落【0009】に「本発明に用いられる防錆剤としては、・・・(2)2-メルカプトベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系化合物又はその誘導体、」と記載されているから、本願発明の「下記(2)から選ばれる防錆剤」に相当し、本願発明の「金属板」も刊行物発明の「不銹鋼又は銅」も「金属」であり、かつ、刊行物発明の組成物もアルカリ洗浄剤組成物ということができるから、両者は、
「水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤と下記(2)から選ばれる防錆剤とキレート剤と界面活性剤の1種以上とを含有する金属用アルカリ洗浄剤組成物。」
という点で一致するが、下記の点で相違している。

[相違点]
1.本願発明は、「アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)とが式(1)-0.95≦0.333a-25b-0.2≦0.09を満足し、且つキレート剤の含有量が0.01?0.5重量%である」のに対して、刊行物発明は、組成3及び4に具体的組成割合が記載されているが、アルカリ剤の濃度a(重量%)と防錆剤の濃度b(重量%)の関係、及びキレート剤の含有量についての記載は存在しない点
2.界面活性剤が、本願発明は「HLB(デイビス法)が4?8の非イオン界面活性剤」であるのに対して、刊行物発明には特に限定がない点
3.「金属用」に関し、本願発明は「金属板用」であるのに対して、刊行物発明は「不銹鋼又は銅を洗浄する」ものである点

6.判断
相違点1、2は、上記「第2 [理由]2.(4)」に示した、補正発明と引用発明との相違点1、2と同じであるから、相違点1、2についての判断は、上記「第2 [理由]2.(5)ア、イ」に示したとおりである。
相違点3について、本願明細書の段落【0004】に「銅板等のアルカリ洗浄」と記載されているように、本願発明の「金属」とは銅板も含まれ、一方、刊行物発明の「銅」には当然「銅板」も含まれるから、相違点3は実質的な相違点ではない。
また、本願発明の効果は上記した補正発明の効果と同じといえるから、その判断は、上記「第2 [理由]2.(5)エ」に示したとおりである。
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.結論
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-11 
結審通知日 2009-05-12 
審決日 2009-05-26 
出願番号 特願2002-135632(P2002-135632)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C11D)
P 1 8・ 121- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之中村 浩  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
松本 直子
発明の名称 金属用アルカリ洗浄剤組成物  
代理人 古谷 聡  
代理人 義経 和昌  
代理人 持田 信二  
代理人 溝部 孝彦  

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