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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1200218 |
審判番号 | 不服2007-21571 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-02 |
確定日 | 2009-07-09 |
事件の表示 | 特願2005-201807「写真画像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月24日出願公開、特開2005-328568〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は,平成8年5月22日(パリ条約による優先権主張1995年5月22日,アメリカ合衆国)に出願した特願平8-127381号の一部を平成17年7月11日に新たな特許出願としたものであって,平成19年3月29日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,同年6月1日に意見書とともに同日付けで手続補正がなされたところ,平成19年6月28日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年8月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年9月3日付けで手続補正がなされたものである。 第2 手続補正の却下 1 補正却下の決定の結論 平成19年9月3日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1) 補正後の本願発明 本件補正後の本願の発明は,平成19年9月3日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものである。 「 【請求項1】 写真フィルムのフレームに形成された画像を画像信号に変換してモニタ上に表示するための写真画像装置において, ボディと, 前記ボディに配設され,写真フィルムを位置決めするフィルム位置決め手段と, 前記ボディに配設され,前記写真フィルム上に記録されている縦横比情報を検出して縦横比情報信号を生成する検出手段と, 前記ボディに配設され,前記写真フィルムの画像を画像信号に変換する画像変換手段と, 前記写真フィルムのユーザ入力情報を画像信号に変換する手段と, 前記縦横比情報信号と前記画像の画像信号と前記ユーザ入力情報の画像信号とをデジタル的にミキシングしてプリント注文時にモニタ上に表示できるようにするミキシング手段と, 前記デジタル化画像信号よりビットマップ形式,GIF形式,TIFF形式,JPEG形式のうちの1つの形式で出力するデジタル信号出力手段と, 前記フィルム位置決め手段と検出手段とミキシング手段とデジタル信号出力手段とを制御する制御手段とを有し, 前記フィルム位置決め手段が,前記写真フィルム上のフレーム位置インジケータを検出して位置制御信号を生成する検出器を含んでおり,更に,前記フィルム位置決め手段が,前記写真フィルムのフレームを前記画像変換手段に対して位置付けるフィルム送り機構を含んでおり, 前記フレーム位置インジケータが,孔,光学コード信号,ないしは磁気コード信号のいずれかであることを特徴とする写真画像装置。」 本件補正は,平成19年6月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ミキシング手段」において,表示が「プリント注文時に」行われる点に限定したものであり,かつ,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2) 引用例 原査定の拒絶の理由として引用された特開平7-5593号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示) ア 「【請求項1】 フィルム(2)の画像情報を読み取る読取手段(RD)と,その読取手段(RD)が読み取った画像情報に基づいて感光材料(3)を露光するための露光条件を求める露光条件演算手段(T)と, 前記読取手段(RD)が読み取った画像情報を,前記露光条件演算手段(T)にて求めた露光条件にて前記フィルム(2)の画像情報を前記感光材料(3)に露光したときに前記感光材料(3)上に得られると予測される画像情報に変換する画像情報変換手段(U)と, その画像情報変換手段(U)にて変換された画像情報を表示するモニタ(MT)と, そのモニタ(MT)に表示された画像情報について,前記露光条件演算手段(T)に,前記露光条件を補正するための補正指示又は補正不要指示を入力する補正指示入力手段(V)と, その補正指示入力手段(V)からの補正指示に基づいて前記露光条件演算手段(T)が補正演算して求めた露光条件に基づいて前記感光材料(3)を露光する露光手段(S)とが設けられた写真焼付装置であって, 前記露光条件演算手段(T)に対する前記補正指示入力手段(V)による入力と,既に補正指示入力手段(V)からの補正指示に基づいて前記露光条件の補正を終了した又は補正不要指示のあった画像情報についての前記露光手段(S)の露光とを,併行して実行可能に構成されている写真焼付装置。 【請求項2】 前記読取手段(RD)が読み取った画像情報を複数駒分記憶する記憶手段(101)が設けられ, その記憶手段(101)に記憶されている画像情報のうちの複数駒分の画像情報をモニタ(MT)上に表示するように構成されている請求項1記載の写真焼付装置。」 イ 「【0010】 【実施例】以下,本発明の写真焼付装置の実施例を図面に基づいて説明する。図1に示すように,写真焼付装置1には,フィルム2の画像情報を感光材料としての印画紙3に投影露光する投影露光部5,投影露光部5で露光された印画紙3を現像する現像処理部DE,及び,写真焼付装置1の各部の作動の制御等を行うコントローラCOが設けられ,コントローラCOには各種の指示入力を行うための操作卓O及び画像情報を表示させるモニタMTが接続されている。印画紙3をロール状に収納している印画紙マガジン4から引き出された印画紙3は,投影露光部5で露光された後,現像処理部DEにて現像され,一駒分の画像情報を含む大きさに切断されて排出される。 【0011】以下,各構成部分について説明する。投影露光部5には,光源10,フィルム2に照射する光の色バランスを調整する調光フィルタ11,調光フィルタ11を通過した光を均一に混色するミラートンネル12,フィルム2の画像を印画紙3上に結像させる焼付レンズ13及びシャッタ14が露光光路をなす同一光軸上に設けられている。焼付レンズ13の側方には,フィルム2の画像情報を読み取る読取手段RDが設けられている。読取手段RDは,反射ミラー15,レンズ16,モータM1に回転駆動され且つ周方向にR(赤),G(緑),B(青)のカラーフィルタが配列されている回転カラーフィルタ17及びCCDイメージセンサ18からなり,反射ミラー15は焼付レンズ13と共に図示しない移動台に取り付けられている。」 ウ 「【0014】コントローラCOは,図2に示すように,CCDイメージセンサ18が読み取った画像情報を記憶する記憶手段としての画像情報記憶部101と,画像情報記憶部101の画像情報を読み出して,その画像情報を印画紙3に露光するための露光条件を求める露光条件演算部102と,露光条件演算部102が求めた露光条件に基づいて投影露光部5の調光フィルタ11及びシャッタ14の作動を制御し,印画紙3への露光を行う露光制御部104と,画像情報記憶部101から読み出した画像情報を,その画像情報に対して露光条件演算部102が求めた露光条件に基づいて,モニタMTに表示するための画像情報に変換する画像情報変換部103と,画像情報記憶部101,露光条件演算部102,画像情報変換部103及び露光制御部104等の各部の作動を指示する制御部100とからなっている。」 エ 「【0022】操作者は,6駒表示モード及び28駒表示モードの何れにおいても,上記のカーソル表示を移動させて,補正指示及び焼付枚数の指示を入力する対象の駒を指定し,シネマビューモードでは,操作卓Oからの操作によって,後述するように,画像情報表示領域Jに表示される画像情報を右方向への順送りか又は左方向への逆送りをすることで,補正指示及び焼付枚数の指示を入力する対象の駒を指定する。尚,焼付枚数を入力する際に,ピンボケ等のために焼付が不要であれば,操作卓Oに備えられた「PASS」キーを押し操作すると,モニタMTの焼付枚数表示欄37に「PASS」と表示される。 【0023】又,図3の6駒表示モードの表示例における下段の右端に位置する画像情報のように,画像情報を含む領域の縦横比が通常のものつまりフルサイズのものと異なる,いわゆるパノラマ写真がフィルム2の一本分の中に混在する場合でも,通常の縦横比を有する画像情報と同様に扱うことができる。制御部100が,フィルム2にパノラマ写真が含まれているのを画像情報記憶部101に記憶されている画像情報の縦横比に基づいて検出すると,モニタMTには,パノラマ写真の画像情報の表示の下側に,フィルムサイズを示す「135」とともにパノラマ写真であることを示す「P」が表示される。通常の画像情報と縦横比が異なるものには,いわゆるハイビジョン写真等もあるが,この場合も上記のパノラマ写真の場合と同様に検出されて,モニタMTには例えば「H」等の記号が表示される。パノラマ写真等の検出は,上記のように制御部100によって自動的に実行されるのであるが,検出誤りが発生した場合にも対応できるように,操作卓Oからの入力によってパノラマ写真であること,又はその逆にフルサイズのものであることを指示できる。露光条件演算部102では,画像情報がパノラマ写真等である場合,それらの画像情報の縦横比に応じて,通常の画像情報の縦横比とは異なる領域の画像情報を基に露光条件を演算する。このパノラマ写真等の通常の画像情報と縦横比が異なるものに対しては,上記の6駒表示モードの場合だけではなく,図4及び図5に示すように,28駒表示モード及びシネマビューモードにおいても同様に扱われる。」 オ 「【0025】以下,コントローラCOの制御部100による各部の作動の制御を図7乃至図9のフローチャート及びタイミングチャートに基づいて説明する。先ず,フィルム2の画像情報をCCDイメージセンサ18に導くために投影露光部5の反射ミラー15を露光光路中に位置させて測光の準備をする(ステップ#1)。測光の準備が完了すると,モータM2を作動させて,フィルム2の駒が露光光路中に位置する画像情報読取位置に達するまで図1中矢印Nの方向にフィルム2を搬送する(ステップ#2,ステップ#3)。フィルム2が,画像情報読取位置に達した時点で搬送を停止し,フィルム2の画像情報を読み取り(ステップ#4),画像情報記憶部101に記憶する。この画像情報の読取作業をフィルム2の一本分について,残りの駒が無くなったと判断される(ステップ#5)まで継続する。」 カ 「【0030】ステップ#9において補正指示の受付開始を指示した後,上記の如くして露光条件演算部102及び画像情報変換部103が操作卓Oからの補正指示に対応している一方において,制御部100は,フィルム2の戻し搬送が終了したのを確認すると(ステップ#10),露光条件演算部102が露光制御部104に最終的な露光条件を送るまで待機する(ステップ#11)。露光制御部104が露光条件演算部102から露光条件を受け取ると,制御部100は,フィルム2の駒が露光光路中に位置するまで搬送し(ステップ#12,ステップ#13),露光制御部104が受け取った露光条件に基づいてシャッタ14及び調光フィルタ11の作動を制御する状態で,印画紙3にフィルム2の画像情報を露光する(ステップ#14)。」 前掲アないしカの記載及び図面によると,引用例1には, 「読取手段が読み取った画像情報を複数駒分記憶する記憶手段が設けられ,その記憶手段に記憶されている画像情報のうちの複数駒分の画像情報をモニタ上に表示するように構成されている写真焼付装置において, 前記写真焼付装置の各部の作動の制御等を行うコントローラと, 前記フィルムの画像情報を読み取る読取手段から構成され, 前記コントローラは, モータを作動させて,フィルムの駒が露光光路中に位置する画像情報読取位置に達するまでフィルムを搬送し,前記フィルムが,前記画像情報読取位置に達した時点で搬送を停止し,前記フィルムの画像情報を読み取り,画像情報記憶部に記憶させ, 前記フィルムに通常の画像情報と縦横比が異なるパノラマ写真,ハイビジョン写真が含まれているのを画像情報記憶部に記憶されている画像情報の縦横比に基づいて検出し, 前記モニタには,画像情報の表示の下側に,フィルムサイズを示す「135」とともにパノラマ写真であることを示す「P」,ハイビジョン写真であることを示す「H」等の記号を表示する等の制御を行う写真焼付装置。」 の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 同じく,原査定の拒絶の理由で引用された特開平5-265099号公報(以下,「引用例2」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示) キ 「【0008】さらに,コマ3のピッチ,すなわち,フィルム1の送りピッチは例えば42.0mmとする。ただし,このコマ3のサイズ及びピッチは,現行のテレビ放送システムに対処したものであり,したがって,コマ3のアスペクトレシオは3:4になっている。 【0009】そして,HDTV(いわゆるハイビジョン)に対処するときには,図19Bに示すように,コマ3の大きさは,30mm×53.3mm,ピッチは例えば57.75mmとする。なお,アスペクトレシオは9:16である。 【0010】さらに,上述の数値はフルサイズの場合であり,ハーフサイズの場合は,図19C及びDに示すように,現行のテレビ放送システムのとき,コマ3の大きさは30mm×22.5mm,ピッチは例えは26.2mm,HDTVのとき,コマ3の大きさは30mm×16.9mm,ピッチは例えは21.0mmとする。」 ク 「【0041】またこのときシステムコントローラ8は同様にしてコマサイズ記録回路11にコマサイズ(撮影有効エリア幅信号)に応じた制御信号を供給し,カメラ本体の下側のフィルムガイド30,31部に設けられたコマサイズ記録用のLED12を使用して図7,図8に示す如く撮影したコマ3のサイズ信号12aを記録する。 【0042】このコマサイズ記録用のLED12は例えば4素子のLEDから構成し,コマサイズ設定スイッチ6により設定されたコマサイズのコマサイズ信号12aを撮影時に記録する。このコマサイズ信号12aとしては例えば下表に示す如きものとする。 【0043】 ![]() 」 ケ 「【0052】本例においては,このネガ押え板55の所定位置にフィルム1に記録されたコマサイズ信号12aを検出するコマサイズセンサS1 及びフィルム1に記録されたコマ中心を示す中心マーク40aを検出するコマ中心センサS2 を設ける。 【0053】この場合コマ中心センサS2 によりコマ3の中心マーク40aを検出し,フィルム送りローラ56を制御して,コマ中心位置をネガキャリア可変スリット54の中心に合わせる。またこのコマサイズセンサS1 により検出されたコマサイズ信号12aにより可変ペーパーマスク48及びネガキャリア可変スリット54の大きさを制御する。 【0054】コマサイズが例えばHDTVサイズのときはネガキャリア可変スリット54を図5Aに示す如くすると共に可変ヘーパーマスク48を図6Aに示す如くする。またコマサイズが例えばNTSCサイズのときはネガキャリア可変スリット54を図5Bに示す如くすると共に可変ペーパーマスク48を図6Bに示す如くする。 【0055】図2は本例によるこの自動焼付機の制御装置を示し,この図2においてはこのコマサイズセンサS1 及びコマ中心センサS2 として,フォトカプラを使用し,之等によりフィルム1の上端側縁に記録されたコマサイズ信号12a及び中心マーク40aを検出する。 【0056】コマ中心センサS2 により検出される中心マーク40aにより写真フィルム1のコマ中心位置がきめられこのコマ中心位置がきめられたコマ3のコマサイズはコマサイズセンサS1 により先読みされたコマサイズ信号12aによりマイコンよりなるマイクロプロセッサ64で判断され,このフィルムコマサイズに合致させるように,マスクサイズ駆動用モニタM3 を制御して可変ペーパーマスク48を制御すると共にこのマイクロプロセッサ64によりネガキャリア可変スリット駆動用モータM2 を制御して,ネガキャリア可変スリット54を制御する。 【0057】また,この場合フィルム1を先読したコマサイズ信号12aに応じて,フィルムネガ送り用モータM1 を制御して,フィルム送りローラ56を制御し,フィルム1を所定量送る如くすると共にペーパー送り用モータM4 を制御してペーパー送りローラ50を制御し,印画紙46を所定量送る如くする。 【0058】図3は,この現像された写真フィルム1とコマ中心センサS2 及びコマサイズセンサS1 との関係を示し,フィルム1の送り方向で,コマサイズ信号12aをコマサイズセンサS1 により位置決め前に検出し,フィルム1の送りとネガキャリア可変スリット54及び可変ペーパーマスク48を制御するもので,このコマサイズ信号12aはマイクロプロセッサ64で演算処理され,このフィルム1のコマ3のコマ中心位置がだされた時には,このコマサイズが決められる如くなされたものである。 【0059】この図3A及びBに示されるように,フィルム1上では各コマ位置で,中央にコマ中心位置を示す中心マーク40aが記録され,フィルム送り方向で,先方向にコマサイズ信号12aが記録され,この中心マーク40aの後方向にフィルム1のコマ番号41aが記録されている。 【0060】上述例においてはこのコマ中心センサS2 及びコマサイズセンサS1 とはほぼ同一位置にあるが,之等は同一位置にある必要はなく,コマ中心センサS2 のみがネガキャリア可変スリット54及び可変ペーパーマスク48の中央位置あれば良く,コマサイズセンサS1 はフィルムデッキ53上のフィルム進入位置に配置しても良い。 【0061】図4は現像されたフィルム即ちネガフィルム1及び印画紙即ちプリントペーパー46の送りの制御とネガキャリア可変スリット54及び可変ペーパーマスク48の制御とに関するマイクロプロセッサ64のフローチャートを示し,ネガフィルム1の駆動は中心マーク40aがコマ中心センサS2 により検出するまでなされ,この中心マーク40aがコマ中心センサS2 により検出されたときにネガフィルム1の駆動が停止される。このネガフィルム1が停止されるまでの間,コマサイズ信号12aをコマサイズセンサS1 が検出し,この数をカウントする如くする。」 前掲キないしケの記載及び図面によると,引用例2には, 「フィルムの上端側縁に,撮影コマの中心を示す中心マーク,及びアスペクトレシオが9:16であるHDTVフルサイズ,アスペクトレシオが3:4であるNTSCフルサイズ,NTSCハーフサイズ,HDTVハーフサイズというコマサイズのコマサイズ信号を撮影時に記録しておき, フィルム焼付装置において,前記中心マークを検出するコマ中心センサを設け,前記中心マークを検出し,コマ中心位置をネガキャリア可変スリットの中心に合わせるとともに,前記フィルムに記録された前記コマサイズ信号を検出する前記コマサイズセンサを設け,前記コマサイズ信号を検出すること」 が記載されていると認められる。 同じく,原査定の拒絶の理由で引用された特開平3-50537号公報(以下,「引用例3」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は頁数等で表示) コ 「 第5図は,映像情報記録媒体の構成を示している。ここで映像情報記録媒体とは,例えば可視化可能な映像情報を有するものを示しており,映像後のネガカラーフィルムはもちろんの事,電子カメラによって撮影された映像が記録されているフロッピーディスク,更には銀塩フィルムから媒体変更されたフロッピーディスクやビデオテープ等を含んでいる。 このような映像情報記録媒体として第5図では,上述した映像情報を記録する領域52とその映像と関連のある撮影情報を記録する領域53,そして更にその中に縦横比情報を記録する領域54を含む映像情報記録媒体51が示されている。 第6図に映像情報記録媒体51の一つの例を示した。この実施例では印画紙61に焼きつけられた映像情報62と撮影情報が記録された領域63をもって映像情報記録媒体が構成されている。」(第3頁左上欄第10行ないし同右上欄第6行) サ 「 次に第8図は本発明に基づく画像出力装置の概念を示している。 本装置には前述した映像情報に対して映像情報入力手段81が,撮影情報に対しては撮影情報入力手段84がそれぞれ設けられており,この2つの入力手段が装置にセットされた映像情報記録媒体51からそれぞれの情報を抽出する。 撮影情報入力手段84からは縦横比抽出手段85によって該当する画面の縦横比が抽出され,余白部分発生手段82へ送られる。余白部分発生手段82では,記録された映像の縦横比と出力様式(例えば印画紙とかテレビ画面)の縦横比との差から余白部分を発生させる。 一方,撮影情報入力手段84からは,印字情報選択手段86によって縦横比以外の情報から画面と共に可視化するべき情報が選択される。それは例えば日付け情報であったり,簡略な文章であったりする。 映像情報入力手段81で入力された映像情報は余白部分発生手段82で発生された余白部分を考慮して,映像情報可視化手段83によって可視化される。なお,ここで映像情報可視化手段83は同時に印字情報選択手段86によって選択された情報を可視化して余白部分を表出させる。」(第3頁右上欄第15行ないし同左下欄第18行) シ 「 この実施例に基づく動作は第11図に示す。 第11図に於いて使用者が出力すべき映像(画像)を有する映像情報記録媒体(例えば第6図及び第7図の媒体61,71)をセットした事でこのプログラムがスタートする。 映像情報記録媒体61,71がセットされると,まずS111で撮像部91が駆動される。次にS112でこの撮像部91によって映像情報が入力される。 次に,S113に於いて,情報読取り回路92によって撮影情報が入力され,S114で映像情報記録媒体に記録された縦横比に関する情報と出力様式の縦横比に関する情報が抽出される。 S114では,それぞれの縦横比に基づいて,出力様式に映像情報を全て可視化した上で余白となる部分を求める。 更にS115で前述したように余白部に印字すべき情報が選択される。 この結果,S116で映像情報に基づく画像が形威され,S117で余白部に文字が形成される。この第11図の動作によって得られる出力様式の1例を第10図に示す。尚,この例は記録された画像と出力様式の長手力向とを一致させた場合の例である。 第10図はA4サイズ用紙に36mmX24mmのフルサイズフォーマットの銀塩フィルムから映像を可視化出力した例を示している。A4サイズは297mmX210mm縦横比≒1.41であり,それに対し36mmX24mmの画面サイズはその縦横比は1.5となる。従って,A4サイズの長辺に銀塩フィルムの長辺を適用すると,短辺側はA4サイズの方が余白となる。この分が余白として扱われる事になり,その部分に102に示すような文字情報が記録される。この例では余白部幅は14mmとなる。 なお,この実施例では,所謂プリンターを想定して示したが出力機器としては,それに限られるものでなく,例えばCRTなどで出力する場合でも同様となる。」(第3頁右下欄第4行ないし第4頁右上欄第2行) 前掲コないしシの記載及び図面によると,引用例3には, 「映像情報記録媒体はネガカラーフィルムを含むものであって,映像情報を記録する領域と,その映像情報と関連のある撮影情報を記録する領域をもって構成されており, 画像出力装置には,前記映像情報に対して映像情報入力手段が,前記撮影情報に対しては撮影情報入力手段がそれぞれ設けられており,この2つの入力手段が前記映像情報記録媒体からそれぞれの情報を抽出し,前記撮影情報入力手段から,画面と共に可視化するべき情報,例えば日付け情報であったり簡略な文章であったりが選択され,映像情報可視化手段は,前記映像情報入力手段で入力された映像情報を,余白部分を考慮して可視化すると同時に,前記選択された情報を可視化して余白部分に表出させ,CRTで出力すること」 が記載されていると認められる。 同じく,原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-233069号公報(以下,「引用例4」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示) ス 「【0009】デジタル化装置は,好ましくは,使用者がモニタしてデジタル化されるべき画像フレームを容易に選択できるためのフィルムリーダ又はマイクロフィッシュリーダに組み込まれている。次に,デジタル化された画像は前記コンピュータの制御により,モニタに映し出され記録又は電送の前にモニタあるいは編集作業を行う。」 セ 「【0014】 【実施例】以下,本発明の実施例を,図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2は,マイクログラフィック画像をデジタル化し,これらを電子的に記憶又は電送するためのシステム10を示す。このシステム10は,組み込み式デジタル化機構14と電子部材16(図5参照)とを備えた105ミリマイクロフィッシュリーダ12(16ミリロールアタッチメントはオプション)を有している。システム10は,更に,例えばIBMタイプのパソコン(PC)であるデータ処理用のコンピュータ18を有する。このパソコン18は,ビデオディスプレイ18aと,プリンタ18bと通信又はファクシミリポート18cとを備えている。 【0015】システム10は,デジタル化機構14を,リーダ12と,パソコン18の各種機能とを接続させる。これらの組合せによって,従来式のモニタ作業を行うことも出来る。更に,画像をデジタル化して,高品質プリンタによるプリントアウトや,ファックス電送,磁気デスク,磁気テープ又は光ディスクへの記憶,ネットワーク上の所望の数のあらゆる装置への伝送といった情報処理や管理作業を行うことができる。画像のデジタル化されたデータは,パソコン18のRAMに記憶される。画像の画素は「1」や「0」(黒又は白)のデジタル値,あるいはグレースケール上のシェードとして表される。」 ソ 「【0030】図10は,本発明のデジタル化方法を示す。ステップ130において,各画素が,前記A/Dコンバータ70によってデジタル化され8ビットのデジタルデータに変換される。ステップ132において,このデジタルデータは,前記DRAMメモリモジュール74に記憶される。次に,ステップ134において,必要な時には,前記プロセッサ82はしきい値判断をし,前述した各画素ごとのマルチビットデータを,前記ビデオディスプレイ18a上における表示のために,1ビットデータに変換する。ステップ136において,媒体Mの投影映像のこの処理済み圧縮データを前記コンピュータ18用のメモリに記憶する。次に,ステップ138において,この画像を表示,プリント,記憶あるいは更に編集する。 【0031】商業的に入手可能なソフトウェア又はハードウェア手段を利用して,各画素のグレーシェードを「ON」(黒)又は「OFF」(白)として表すか,もしくは,画像の最終表示においてグレースケール値で表すかを決定する。このエンハンスメント決定により様々な程度の高度な処理(sophistication)が可能である。画像の最終表示は,「TIFF」等の通常のどのようなグラフィックファイルフォーマットにもセーブすることができる。更に,デジタル化された画像を,モニタ用のPCディスプレイ18aに表示してデジタル化が成功したかどうかの確認と,その後の処理とを行うことが可能である。その後の処理としては,具体的には,複数の画像のコンバイン,画像のカットやペースト処理,ビデオ極性の反転,特定のファーチャーの為のエンハンスメントの変更,テキストの挿入,画像テキストの編集(光学的文字読み取り(OCR)ハードウェア/ソフトウェアが使用された場合)等がある。編集が終われば,遠隔ユーザは,この画像をプリンタ18bでプリントアウトしたり,所望の数のユーザ側のメモリ媒体に記憶することができる。」 前掲スないしソの記載及び図面によると,引用例4には, 「画像をデジタル化してビデオディスプレイ上に表示し,画像の最終表示は,「TIFF」等の通常のどのようなグラフィックファイルフォーマットにもセーブすることができること,画像をデジタル化してファックス電送,ネットワーク上の所望の数のあらゆる装置への伝送を行うこと」 が記載されていると認められる。 同じく,原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-209429号公報(以下,「引用例5」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示) タ 「【0121】次に,♯507の“位置決め処理”のルーチンについて図24のフローチャートを用いて説明する。なお,駆動モータは正転でフィルム4が繰り出され,逆転でフィルム4が巻き戻されるものとする。 【0122】まず,駒位置検出部104の受光素子がパーフォレーションを通して発光素子からの光を受光したかどうかが判別され(♯571),例えば図5に示すように,受光素子P1が受光している場合には(♯571でYES),駒が撮像領域に一致しているので,♯573以降の処理を行なうことなく,図22,図23のフローチャートに戻る。」 チ 「【0125】なお,フィルム4の駒を撮像部100eの撮像領域SRに位置決めする方法としては,図24の方法に限られるものではなく,例えば撮影時に各駒の所定位置にマークを写し込み,このマークを検出して位置決めを行なうようにしてもよい。また,フィルム4の磁気帯に記録されているデータを読み取ってこのデータに基づいて位置決めを行なうようにしてもよい。」 前掲タ及びチの記載及び図面によると,引用例5には, 「フィルムのコマを撮像部の撮像領域に位置決めする方法として,駒位置検出部を設け,パーフォレーションやマーク,磁気体に記録されているデータに基づいて位置決めすること」 が記載されていると認められる。 (3) 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「フィルム」,「駒」は,本願補正発明の「写真フィルム」,「フレーム」に相当する。 引用発明の「画像情報」は,前掲イに「フィルム2の画像情報を読み取る」との記載,前掲ウに「CCDイメージセンサ19が読み取った画像情報を記憶する画像情報記憶部101と,画像情報記憶部101の画像情報を読み出して」との記載からみて,フィルム上の画像,及びこれを読み取って画像情報記憶部に記憶できる形に変換された画像情報の両方を表すものといえる。よって,引用発明の「画像情報」は,本願補正発明の「画像」及び,「画像」を変換した「画像情報」に相当する。 したがって,引用発明の「読取手段が読み取った画像情報を複数駒分記憶する記憶手段が設けられ,その記憶手段に記憶されている画像情報のうちの複数駒分の画像情報をモニタ上に表示する」ことは,本願補正発明の「写真フィルムのフレームに形成された画像を画像信号に変換してモニタ上に表示する」ことに相当するものであって,このように構成されているという点で,引用発明の「写真焼付装置」は,本願補正発明の「写真画像装置」に相当するものといえる。 引用発明の「モータを作動させて,フィルムの駒が露光光路中に位置する画像情報読取位置に達するまでフィルムを搬送し,前記フィルムが,画像情報読取位置に達した時点で搬送を停止」することは,フィルムを画像情報読取位置に位置決めしているといえるから,引用発明には,本願補正発明の「写真フィルムを位置決めするフィルム位置決め手段」に相当する構成が存在しているといえる。 引用発明の「パノラマ写真」や「ハイビジョン写真」は,「通常の画像情報と縦横比が異なる」ものであって,「モニタ」に「パノラマ写真であることを示す「P」,ハイビジョン写真であることを示す「H」等の記号を表示する」ものであるから,引用発明には,「画像情報の表示の下側に」「パノラマ写真であることを示す「P」,ハイビジョン写真であることを示す「H」等の記号を表示する」ために用いられる,本願補正発明の「縦横比情報信号」に相当する信号の存在が伺われる。よって,引用発明と本願補正発明とは「縦横比情報信号を生成する」機能の点で共通するものであり,引用発明には,そのような機能を有する本願補正発明の「検出手段」に相当する構成が存在しているといえる。 引用発明の「フィルムの画像情報を読み取る読取手段」は,読み取った画像情報を画像情報記憶部に記憶できるような形式の信号に変換することは明らかであるから,本願補正発明の「写真フィルムの画像を画像信号に変換する画像変換手段」に相当するといえる。 引用発明の「モニタには,画像情報の表示の下側に,フィルムサイズを示す「135」とともにパノラマ写真であることを示す「P」,ハイビジョン写真であることを示す「H」等の記号を表示」するものであり,同一画面内に,「P」や「H」等の記号と画像情報とを表示する以上,その前提として,「P」や「H」等の記号と,「画像情報」とを混合(ミキシング)していることは明らかである。よって,引用発明と本願補正発明とは「縦横比情報信号と画像の画像信号とをデジタル的にミキシングしてモニタ上に表示できるようにする」機能を有する点で共通し,引用発明には,そのような処理を行う本願補正発明の「ミキシング手段」に相当する構成は当然備えているものといえる。 引用発明の「コントローラ」は,「写真焼付装置の各部の作動の制御等を行う」ものであるから,各部,つまりフィルムの搬送や縦横比の検出,モニタ上に表示するためのミキシング処理の制御を行うことは明らかであるから,本願補正発明の「フィルム位置決め手段と検出手段とミキシング手段とを制御する制御手段」に相当する。 引用発明は「モータを作動させて,フィルムの駒が露光光路中に位置する画像情報読取位置に達するまでフィルムを搬送し,前記フィルムが,画像情報読取位置に達した時点で搬送を停止し,前記フィルムの画像情報を読み取」るものであって,前記画像情報読取位置とは,読取手段が読み取りを行う位置であるから,引用発明において,フィルムを搬送し,フィルムの駒が読取手段に対して位置付けられていることは明らかである。よって,引用発明と本願補正発明とは「写真フィルムのフレームを画像変換手段に対して位置付けるフィルム送り」機能を有する点で共通し,引用発明には,そのような機能を実現するための機構を当然備えているといえる。 以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。 【一致点】 写真フィルムのフレームに形成された画像を画像信号に変換してモニタ上に表示するための写真画像装置において, 写真フィルムを位置決めするフィルム位置決め手段と, 縦横比情報信号を生成する検出手段と, 前記写真フィルムの画像を画像信号に変換する画像変換手段と, 前記縦横比情報信号と前記画像の画像信号とをデジタル的にミキシングしてモニタ上に表示できるようにするミキシング手段と, 前記フィルム位置決め手段と検出手段とミキシング手段とを制御する制御手段とを有し, 前記フィルム位置決め手段が,前記写真フィルムのフレームを前記画像変換手段に対して位置付けるフィルム送り機構を含んでいる写真画像装置。 【相違点】 a 本願補正発明が「ボディ」を有し,フィルム位置決め手段,検出手段,画像変換手段が当該「ボディに配設され」ているのに対し,引用発明では,ボディや各部の配設について特定されていない点。 b 縦横比情報信号の生成を,本願補正発明が「写真フィルム上に記録されている縦横比情報を検出して」行っているのに対し,引用発明は,画像情報記憶部に記憶されている画像情報の縦横比に基づいて検出して行っている点。 c 本願補正発明が「写真フィルムのユーザ入力情報を画像信号に変換する手段」を有し,縦横比情報信号と画像の画像信号に加えて「前記ユーザ入力情報の画像信号」をデジタル的にミキシングするのに対し,引用発明は,そのような手段を有しておらず,画像情報等にそのような画像信号はミキシングしていない点。 d 表示が,本願補正発明では「プリント注文時」であるのに対し,引用発明では,そのようなタイミングではない点。 e 本願補正発明が「デジタル化画像信号よりビットマップ形式,GIF形式,TIFF形式,JPEG形式のうちの1つの形式で出力するデジタル信号出力手段」を有し,これを「制御手段」によって「制御する」のに対し,引用発明は,そのような手段を有していない点。 f フィルム位置決め手段として,本願補正発明が「写真フィルム上のフレーム位置インジケータを検出して位置制御信号を生成する検出器を含んで」いるものであって,「前記フレーム位置インジケータが,孔,光学コード信号,ないしは磁気コード信号のいずれかである」のに対し,引用発明では,フィルムの位置決めがどのように行われているのか,特定されていない点。 (4) 当審の判断 上記相違点aについて検討する。 引用発明には,ボディが存在するか否か明確に特定されていないものの,一般に,装置には内部の各構成手段を配設するためのボディが備えられているのが普通であること,またフィルムを搬送する機構と読取手段などは,両者の位置関係が固定された状態で配設されていないと,位置合わせができないため,画像情報を読み取ることができないことが自明であることから,引用発明において,ボディを設け,そこに各構成手段を配設することは,当業者が当然になし得たことである。 上記相違点bについて検討する。 引用例2記載の「コマサイズ信号」は,フィルムの上端側縁に記録されたもので,アスペクトレシオ(縦横比)が9:16であるHDTVフルサイズや,アスペクトレシオが3:4であるNTSCフルサイズといったアスペクトレシオを判別するための情報であるから,本願補正発明の「縦横比情報」に相当する。 引用発明と引用例2記載の技術とは,どちらも印画紙にフィルム上の写真を焼き付ける写真焼付装置という共通の技術分野に属し,画像情報の縦横比を検出するという共通の機能を有するものであるから,引用発明において,画像情報の表示の下側にパノラマ写真であることを示す「P」,ハイビジョン写真であることを示す「H」等の記号を表示するために用いられる信号を,引用例2記載のような,フィルム上に記録されたコマサイズ信号を検出して生成するよう構成することは,当業者が容易になし得たことである。 上記相違点cについて検討する。 本願補正発明の「ユーザ入力情報」とは,発明の詳細な説明を参酌するに,「写真フィルムの側縁部余白領域のユーザ入力情報43a等の情報」(段落【0094】),「この情報43aは,カメラのレンズ及びカメラそれ自体から露出時に供給されるところの,例えば撮影日付,撮影者名,露出条件等の情報であることもあり,或いはまた,ユーザがカメラ・ボディ10の裏蓋の外面に装備されているキー・パッド等の入力デバイス44を介して入力するその他の情報であることもある。」(段落【0057】)と記載されている。 これに対して,引用例3記載の「撮影情報」のうち,「可視化するべき情報」は,「ネガカラーフィルム」を含む「映像情報記録媒体」に記録され,「映像情報と関連のある」ものであって,「例えば日付情報であったり簡略な文章であったり」するものであるから,本願補正発明の「写真フィルムのユーザ入力情報」に相当するものといえる。 引用例3記載の「撮影情報可視化手段」は「選択された情報を可視化」するものであって,「可視化」された情報は「CRTで出力」されることから,引用例3記載のものは,その前段として「選択された情報」を,「CRTで出力」可能な画像信号に変換する手段,つまり本願補正発明の「ユーザ入力情報を画像信号に変換する手段」に相当する手段を当然有しているといえる。 引用例3記載の「映像情報可視化手段は,前記映像情報入力手段で入力された映像情報を,余白部分を考慮して可視化すると同時に,前記選択された情報を可視化して余白部分に表出させ,CRTで出力する」ものであるから,「映像情報」(本願の「画像の画像信号」に相当)と,選択された「可視化するべき情報」とを混合(ミキシング)してCRT(本願の「モニタ」に相当)に出力するようにしている。つまり,引用例3には,本願補正発明の,画像の画像信号と「ユーザ入力情報の画像信号」とをミキシングすることに相当するものが記載されているといえる。なお,ミキシングをデジタル的に行うか否かは,設計上の微差である。 引用発明と引用例3記載の技術とは,写真画像を入力し,関連情報とともにモニタに表示するという共通の機能を有するものであるから,引用発明において,引用例3記載のような,フィルムに記録された画像情報に関連のある撮影情報のうち,可視化するべき情報を抽出する撮影情報入力手段を設けることにより,縦横比情報信号と画像の画像情報に加え,さらに前記可視化するべき情報までもデジタル的にミキシングして表示するよう構成することは,当業者が容易になし得たことである。 上記相違点dについて検討する。 本願補正発明の「プリント注文時」における表示とは,発明の詳細な説明を参酌するに,段落【0094】ないし【0099】や,図29のステップBやステップCとして記載されているようなものであって,当該表示において「プリントのサイズ,プリントの枚数,及び注文の最終確認を選択する」(段落【0099】)ものである。 これに対し,引用発明の表示とは,前掲「第2 2(2)エ」及び「第2 2(2)カ」の記載から,印画紙にフィルムの画像情報を露光する際,露光に先立って,つまり事前に,前記画像情報に対する補正指示や焼付枚数(本願補正発明の「プリントの枚数」に相当)を入力する時に行われるものである。 本願補正発明と引用発明とは,ともに,写真プリントの作成に先立って,プリントの枚数を指示する際に行われる表示である点で一致しており,引用発明の表示を,写真プリントの作成に先立って行われる「プリント注文時に」行うことは,当業者が容易に想到し得る事項であり,当該相違点dに格別な点はない。 上記相違点eについて検討する。 本願補正発明における「デジタル信号出力手段」とは,発明の詳細な説明を参酌するに,「データ保持/処理回路161は,CMYデータを受取って,そのデータ形式,データ・サイズ,及びディスプレイ・サイズを変換している。データ形式については,ビットマップ形式,GIF形式,TIFF形式,JPEG形式,或いはその他の適当な形式のデータのうちから,画像コントローラ/スーパーインポーズ回路166が選択する。」(段落【0105】)との記載から,「データ保持/処理回路」を表すものと認められる。この「データ保持/処理回路」において,変換対象としているデータは「CMYデータ」,つまり「画像の画像信号」に対応するデータであるから,本願補正発明における「前記デジタル化画像信号」とは,「前記画像の画像信号」を表すものといえる。 引用例4には,デジタル化した画像を,通常のどのようなグラフィックファイルフォーマットにもセーブすることができること,ファックス電送やネットワーク上の装置への伝送を行うこと,つまり出力することが記載されているものの,「TIFF」以外の具体的なグラフィックファイルフォーマットについて記載されてない。しかし,ビットマップ形式,GIF形式,JPEG形式などのグラフィックファイルフォーマットは周知なものであるから,引用発明において,画像情報を,ビットマップ形式,GIF形式,TIFF形式,JPEG形式のうちの1つの形式で出力するよう構成することは,引用例4の記載及び前記周知事項に基づいて,当業者が容易になし得たことである。 なお,本願補正発明における「前記デジタル化画像信号」が,「前記画像の画像信号」を表すものではなく,「デジタル的にミキシングしてプリント注文時にモニタ表示」した画像信号を表すものだとしても,モニタ表示できるようなデジタル化した画像情報を所定のファイル形式で出力することは,当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的な事項である。 上記相違点fについて検討する。 引用例2記載の「中心マーク」は,本願補正発明の「フレーム位置インジケータ」,そのうちの「光学コード信号」に相当し,また引用例2記載の「コマ中心センサ」は,本願補正発明の「検出器」に相当する。引用例2記載のものにおいては,検出された中心マークから,コマ中心位置をネガキャリア可変スリットの中心に合わせる制御を行うものであるから,中心マークの検出結果から何らかの制御信号を生成していることは明らかであって,引用例2記載のものにおいても,本願補正発明の「位置制御信号」に相当する信号を生成しているといえる。 引用例5記載の「パーフォレーション」,「マーク」,「磁気帯に記録されているデータ」は,すべて本願補正発明の「フレーム位置インジケータ」に相当し,またそれぞれが,本願補正発明の「孔」,「光学コード信号」,「磁気コード信号」に相当する。引用例5記載のものにおいては,パーフォレーションやマーク,磁気帯に記録されているデータに基づいて位置決めという制御を行うものであるから,パーフォレーションやマーク,磁気帯に記録されているデータに基づいて位置決めを行うための何らかの制御信号を生成しているのは明らかであって,引用例5記載のものにおいても,本願補正発明の「位置制御信号」に相当する信号を生成しているといえる。 引用発明と,引用例2及び5とは,フィルムの駒の位置合わせを行うという共通の機能を有するものであるから,引用発明において,フィルムの駒が画像情報読取位置に達するように制御する際,パーフォレーション,マーク,磁気帯に記録されているデータのいずれかを検出する駒位置検出部を用いることは,当業者が容易になし得たことである。 そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願補正発明の奏する効果を検討してみても,引用発明及び引用例2ないし5に記載された事項及び周知事項から想定される範囲を越えるものではない。 したがって,本願補正発明は,引用発明及び引用例2ないし5記載の技術事項及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5) むすび 以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成19年9月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年6月1日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 写真フィルムのフレームに形成された画像を画像信号に変換してモニタ上に表示するための写真画像装置において, ボディと, 前記ボディに配設され,写真フィルムを位置決めするフィルム位置決め手段と, 前記ボディに配設され,前記写真フィルム上に記録されている縦横比情報を検出して縦横比情報信号を生成する検出手段と, 前記ボディに配設され,前記写真フィルムの画像を画像信号に変換する画像変換手段と, 前記写真フィルムのユーザ入力情報を画像信号に変換する手段と, 前記縦横比情報信号と前記画像の画像信号と前記ユーザ入力情報の画像信号とをデジタル的にミキシングしてモニタ上に表示できるようにするミキシング手段と, 前記デジタル化画像信号よりビットマップ形式,GIF形式,TIFF形式,JPEG形式のうちの1つの形式で出力するデジタル信号出力手段と, 前記フィルム位置決め手段と検出手段とミキシング手段とデジタル信号出力手段とを制御する制御手段とを有し, 前記フィルム位置決め手段が,前記写真フィルム上のフレーム位置インジケータを検出して位置制御信号を生成する検出器を含んでおり,更に,前記フィルム位置決め手段が,前記写真フィルムのフレームを前記画像変換手段に対して位置付けるフィルム送り機構を含んでおり, 前記フレーム位置インジケータが,孔,光学コード信号,ないしは磁気コード信号のいずれかであることを特徴とする写真画像装置。」 2 引用例 引用例1ないし5及びその記載事項は,前記「第2 2(2)」の項で認定したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から前記「第2 2(1)」に記載した限定事項を省いたものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2(3)」,「第2 2(4)」に記載したとおり,引用例1に記載された発明及び引用例2ないし5に記載された技術事項及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1に記載された発明及び引用例2ないし5に記載された技術事項及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び引用例2ないし5に記載された技術事項及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-30 |
結審通知日 | 2009-05-12 |
審決日 | 2009-05-26 |
出願番号 | 特願2005-201807(P2005-201807) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 飯田 清司、手島 聖治 |
特許庁審判長 |
原 光明 |
特許庁審判官 |
大野 雅宏 廣川 浩 |
発明の名称 | 写真画像装置 |
代理人 | 伊藤 仁恭 |
代理人 | 角田 芳末 |