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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1200235
審判番号 不服2008-3354  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-13 
確定日 2009-07-09 
事件の表示 特願2002-162648「画像表示システムおよびそのコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 15163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年6月4日の出願であって、平成20年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「Webブラウザ上において複数の画像を一画面に同時に表示・操作する画像表示システムであって、該システムは、
画像領域内の特定の領域のみを抽出して前記Webブラウザ上に表示する部分的領域抽出画像表示手段と、
マウスのドラッグ等による基準座標の変化に伴い、前記抽出した画像を表示させる領域を前記基準座標の変化量だけ変更する部分的領域変更手段と、
前記抽出表示された画像に対して拡大・縮小・回転等の画像操作が行われた場合に、表示している全ての画像領域に対し同じ操作を同期させて行う同期画像操作手段と、を有し、
前記各手段は所定のプラグインが組み込まれた前記Webブラウザによって実行されることを特徴とする画像表示システム。」

3.引用例
平成18年12月6日付けで通知された拒絶の理由に引用された特開2000-39947号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は一般に、コンピュータ・システムに関
し、特に、異なる文書を見せるための多数の「ウィンドウ」を表示するグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を有し、GUIが、さもなくば関連のない二つ以上のウィンドウの間の連動相互作用、たとえば連動スクロール・バー相互作用を提供するコンピュータ・システムに関する。」

(2)「【0005】所与のファイルが、子(または親)ウィンドウの物理的範囲の中で表示するには大きすぎるかもしれない。そのため、スクロー
ル・バーを使用して、子ウィンドウの境界の範囲内でファイルを動かす(すなわち、パンする)ことができる。」

(3)「【0007】スクロール・バー・ボタンの動きは、そのスクロー
ル・バーを含むウィンドウの中の表示にのみ影響する。しかし、二つのウィンドウを同時にスクロールすることが有利なこともあろう。たとえば、二つの別個のウィンドウが、建築規格の類似した描画を含むかもしれない。ユーザは、二つの規格の間に差がないかどうかを視覚的に判定しようとして、これらのウィンドウを同時にスクロールすることを望むかもしれない。」

(4)「【0018】まず図3を参照すると、本発明にしたがって設計されたグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)の一つの実施態様の表示が示されている。GUIは、コンピュータ・システムのプロセッサに接続されたビデオ・アダプタによって制御することができる従来の画像モニタ70上に表示されている。GUIは、図示する実施態様ではより大きなアプリケーション・ウィンドウ74に含まれている二つの文書ウィンドウ72aおよび72bを含む。垂直スクロール・バー76および水平スクロール・バー78が文書ウィンドウ72aの一部として含まれている。各スクロール・
バーは、スクロール・ボタン80および82ならびにスクロール・バーの両端にある1対の矢印アイコン84、86および88、90を有している。スクロール・バーおよびその付属の機構を操作することができるよう、可視ポインタ92(この例では矢じり)が従来技術と同様な方法で設けられてい
る。
【0019】ポインタ92は、コンピュータのプロセッサに接続された従来のハードウェア装置、たとえばマウス、感電パッド、ジョイスティックまたはジョイスティック型アクチュエータ、トラック・ボールなどによって制御することができる。GUIは、同じく従来技術で提供されている他の任意の機構、たとえばメニュー・コマンド94および一つ以上のツールバー96を含むこともできる。一つのアプリケーション・ウィンドウ74ならびに二つの文書ウィンドウ72aおよび72bしか示されていないが、当業者であれば、本発明を、表示装置70上に複数のアプリケーション・ウィンドウを提示するGUIまたは一つのアプリケーション・ウィンドウ中に三つ以上の文書ウィンドウを提示するGUIにも適用できることを認識するであろう。
【0020】スクロール・バー76および78は、従来技術のスクロール・バーの機能のすべてを、以下さらに説明する追加的機能とともに提供する。換言するならば、従来技術の場合と同様に、ユーザは、矢印アイコン84、86、88または90の一方をクリックするか、矢印アイコンとスクロー
ル・ボタン80または82との間の区域をクリックするか、スクロール・ボタンを矢印アイコンの一方に向けてドラッグすることにより、ウィンドウの中の文書(テキストであろうと、図形であろうと、他のタイプの文書であろうと)をスクロールすることができる。従来技術の場合と同様に、これらのマウス・コマンドは、左マウス・ボタンを使用して実行される(従来のポインティング・デバイスは、普通は左ボタンおよび右ボタンと呼ばれる少なくとも二つのボタンを提供する)。
【0021】この従来技術のスクロール機能に加えて、本発明のGUIは、ウィンドウ72aのスクロールをウィンドウ72bのスクロールに連動させることができる、すなわち、第一のウィンドウのスクロール機能の起動が第二のウィンドウのスクロール機能の起動を生じさせる連動スクロール・バー相互作用を提供する簡単かつ効果的な方法を提供する。この相互作用を達成する一つの方法は、ポインタ92がスクロール・バーの一方またはスクロール・バー・ボタンに重なっている間にユーザが右マウス・ボタンを押したときポップアップ(「コンテキスト」または「従属」)メニュー98を生成する方法である。メニュー98上の選択肢は「連動」としてもよい。ユーザが「連動」をクリックすると、マウス・ポインタが、タスク特定のポインタ・アイコン(たとえば小さな重なり合う2枚のウィンドウの絵)に変化する(場合によっては)。そこで、ユーザは、マウスを第二のウィンドウ72bに移し、連動させるスクロール・バー(またはボタン)をクリックする。すると、二つの異なるウィンドウからの二つのスクロール・バーが連動する。その後は、ユーザが二つのスクロール・バーのいずれかをスクロールさせるだけで、両方のウィンドウがいっしょにスクロールする。すなわち、ウィンドウ72aのスクロールがウィンドウ72bのスクロールを生じさせ、ウィンドウ72bのスクロールがウィンドウ72aのスクロールを生じさせる。三つ以上のウィンドウをこのように連動させることもできる。」

(5)「【0027】先に指摘したように、本発明は、オペレーティング・システムのレベルで実現することができるが、アプリケーションの中で実現して、オペレーティング・システムによっては管理されない、子ウィンドウの機構どうしの連動を提供することもできる。たとえば、アプリケーションは、複数の画像イメージを表示する(または他のマルチメディア・コンテンツを提示する)ため、DVD記憶装置を制御するための複数のウィンドウを提供するかもしれない。各画像ウィンドウには、VCR様の制御機構(再
生、ポーズ、リバースなど)を設けてもよい。したがって、本発明を使用して、異なるウィンドウの間でこれらの制御機構の選択的な連動、たとえば、いずれかのウィンドウの「再生」ボタンを押すと、すべてのウィンドウがそれぞれの画像イメージを再生し、いずれかのウィンドウの「ポーズ」ボタンを押すと、すべてのウィンドウがそれぞれの再生を休止するなどの連動を提供してもよい。
【0028】本発明は、従来技術のウィンドウ操作技術を上回るいくつかの利点を有している。第一に、スクロール・バー、ツールバー・アイコン、
ウィンドウ制御ボタンまたは他の可視記号との現在の挙動およびユーザ対話を保持する。第二に、見かけの複雑さを増すことなく、これらの機構の機能性を拡張する。第三に、ユーザが、二つ以上のウィンドウの間でナビゲー
ション挙動を速やかかつ容易に結び付けることを可能にする。また、本発明は、対応するキーボート・コマンド(ならびにグラフィカル・ボタン)どうしを連動させて、ウィンドウ間で連動相互作用を提供したり、ツールバー・アイコン間で連動相互作用を提供したりすることもできる。」

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「アプリケーションの中で実現して複数の文書(テキストであろうと、図形であろうと、他のタイプの文書であろうと)をアプリケーション・ウィンドウに同時に表示、スクロールするコンピュータ・システムであって、
ポインタがマウスによって制御され、ユーザは、矢印アイコンの一方をクリックするか、矢印アイコンとスクロール・ボタンとの間の区域をクリックするか、スクロール・ボタンを矢印アイコンの一方に向けてドラッグすることにより、文書をスクロールすることができ、
さらに、一の文書のスクロールが他の文書のスクロールを生じさせることができるコンピュータ・システム。」

4.対比
引用発明の文書(テキストであろうと、図形であろうと、他のタイプの文書であろうと)は、テキストに限定されるものではなく、引用例には上記
3.(5)のようにDVD記憶装置の画像イメージについても記載があり、引用発明は一般の画像に適用できるものといえ、その画像をスクロールすることは画像の操作といえ、アプリケーション・ウィンドウに表示するので画像表示システムといえるものであり、Webブラウザもアプリケーションの一種であるから、本願発明と引用発明とは、アプリケーション上において複数の画像を一画面に同時に表示・操作する画像表示システムである点で共通する。
引用発明は文書をスクロールすることができるものであり、スクロールは上記3.(2)のように所与のファイルが表示するには大きすぎる場合に表示の範囲内でファイルを動かすものであるから、本願発明の「部分的領域抽出画像表示手段」とは、画像領域内の特定の領域のみを抽出してアプリケーション上に表示する機能の点で共通する。
引用発明は、ポインタがマウスによって制御され、ユーザは、矢印アイコンの一方をクリックするか、矢印アイコンとスクロール・ボタンとの間の区域をクリックするか、スクロール・ボタンを矢印アイコンの一方に向けてドラッグすることにより、文書をスクロールすることができるものであるか
ら、本願発明の「部分的領域変更手段」と、マウスのドラッグ等による基準座標の変化に伴い、抽出した画像を表示させる領域を前記基準座標の変化量だけ変更する機能の点で共通する。
引用発明は、一の文書のスクロールが他の文書のスクロールを生じさせることができるので、抽出表示された一の画像に対してスクロールの画像操作が行われた場合に、表示している他の全ての画像領域に対し同じ操作を同期させて行うことができるといえる。
本願発明の「拡大・縮小・回転等の画像操作」には、本願の明細書に
「 【0017】
例えば、マウスをドラッグすること(ステップS8)により、部分的領域抽出画像表示手段401により部分領域抽出画像ペアを決定し(ステップS9)、さらには部分的領域変更手段402及び同期画像操作手段403により該画像ペアを一緒に移動させることができる(ステップS10)。
……
【0020】
部分的領域変更手段402は、この状態で、マウスの操作により画像の移動・拡大などが要求された場合、例えば移動なら画像Aの表示座標系を変更する。このとき、ブラウザ上の表示領域は変化しないが表示座標系が変化するため、ブラウザ上はあたかも画像Aが移動したかのように見えるのであ
る。
【0021】
また、同期画像操作手段403とは、マウスの操作により画像の移動・拡大などが要求された場合、前述の画像Aに対する処理を画像Bにも同時に行うことで、画像Aと画像Bの双方の表示座標系を変化させるものであ
る。このとき、ブラウザ上の画像A,Bの表示領域は変化しないがそれぞれの表示座標系が同量の変化をするため、ブラウザ上はあたかも画像A・Bが同じように移動・拡大したかのように見える。」
と記載されているように、スクロールと同じ移動の態様がある。
したがって、引用発明は、本願発明の「同期画像操作手段」と、抽出表示された画像に対して画像操作が行われた場合に、表示している全ての画像領域に対し同じ操作を同期させて行う機能の点で共通する。
引用発明は、アプリケーションの中で実現して複数の文書(テキストであろうと、図形であろうと、他のタイプの文書であろうと)をアプリケーション・ウィンドウに同時に表示、スクロールするコンピュータ・システムであるから、上記本願発明の各手段と共通する機能は、アプリケーションによって実行されるといえる。
なお、引用発明は、前述のように、画像といえる複数の文書をアプリケーション・ウィンドウに同時に表示するものであるが、その具体的な態様は文書はアプリケーション・ウィンドウに含まれる文書ウィンドウに表示されるものである。
これに対して本願発明では、その実施例では引用発明のようなウィンドウ枠を表示するようなウィンドウに表示するものではないが、上記のとおり
「画像領域」に表示するものであり、その具体的な態様は例えば上記段落
【0020】に記載されたように、「ブラウザ上の表示領域は変化しないが表示座標系が変化するため、ブラウザ上はあたかも画像Aが移動したかのように見える」ものである。
しかし、本願発明では、その「画像領域」に画像を表示する具体的な態様が特定されているわけではないし、引用発明の具体的な態様である文書ウィンドウも、画像といえる文書を表示する、アプリケーション上の表示領域といえるものであり、この文書ウィンドウの点に相違があるとはいえない。
以上のことから、本願発明と引用発明とを対比すると、次の点で一致す
る。

「アプリケーション上において複数の画像を一画面に同時に表示・操作する画像表示システムであって、該システムは、
画像領域内の特定の領域のみを抽出して前記アプリケーション上に表示する部分的領域抽出画像表示手段と、
マウスのドラッグ等による基準座標の変化に伴い、前記抽出した画像を表示させる領域を前記基準座標の変化量だけ変更する部分的領域変更手段と、
前記抽出表示された画像に対して画像操作が行われた場合に、表示している全ての画像領域に対し同じ操作を同期させて行う同期画像操作手段と、を有し、
前記各手段はアプリケーションによって実行されることを特徴とする画像表示システム。」

また次の点で相違する。

相違点
本願発明は、アプリケーションが所定のプラグインが組み込まれたWebブラウザであるのに対して、引用発明では、アプリケーションについての特定がない点。

5.相違点に対する判断
画像を表示及び操作するアプリケーションとして、プラグインが組み込まれたWebブラウザは普通のものであり、本願発明では所定のプラグインが具体的に特定されていないし、発明の詳細な説明においてもよく知られたプラグインが示されているだけである。
したがって、引用発明においてもアプリケーションを所定のプラグインが組み込まれたWebブラウザとして、相違点を本願発明のようにすることに困難な点はない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、拒絶査定は、平成19年3月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由によってなされたものであるが、引用例は、上記3.のとおり、平成18年12月6日付けで通知された拒絶の理由に引用されたものであるから、再度この引用例を引用して拒絶の理由を通知する必要はない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-07 
結審通知日 2009-05-12 
審決日 2009-05-26 
出願番号 特願2002-162648(P2002-162648)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白石 圭吾  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 原 光明
廣川 浩
発明の名称 画像表示システムおよびそのコンピュータプログラム  
代理人 安形 雄三  

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