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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C30B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C30B
管理番号 1200255
審判番号 不服2005-1650  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-31 
確定日 2009-07-07 
事件の表示 平成11年特許願第311182号「半導体基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月 3日出願公開、特開2001- 89296〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月1日の出願(パリ条約による優先権主張1998年11月4日、米国、1999年3月15日、米国、1999年8月30日、米国)であって、平成11年12月24日に特許法第36条の2第2項に規定する外国語書面の翻訳文の提出がなされ、平成16年3月9日付けで拒絶理由の通知がなされ、平成16年6月15日に意見書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出されたが、平成16年10月26日付けで拒絶査定がなされ、平成17年1月31日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、平成17年3月2日に明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成17年4月6日に前記審判に係る請求書の手続補正書が提出され、平成20年6月3日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ、平成20年12月4日に回答書が提出されたものである。

2.平成17年3月2日付けの明細書の記載に係る手続補正についての補正却下の決定
(1)補正却下の決定の結論
平成17年3月2日付けの明細書の記載に係る手続補正を却下する。
(2)理由
平成17年3月2日付けの明細書の記載に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)は、請求項1において、「前記第1ドープ領域(210A)を形成するために用いられた所定のシラン流と一致したシラン流を維持しながら第1ドープ領域を除去することによって」なる特定事項を付加する補正を含むものである(以下、「補正1」という。)。
補正1について検討すると、特許法第36条の2第4項の規定により本願の願書に最初に添付した明細書又は図面とみなされた外国語書面の翻訳文(以下、単に「翻訳文」という。)には、第1ドープ領域を形成するステップ(B1)及びそれに続く第2ドープ領域の形成ステップ(B2)に関して、「第1ドープ領域210Aは、ドーパントコントローラに直接供給される120ppmのボロンソースを用い、その後、トリクロロシラン(・・・)で混合し、それを5リットル/分の速度で流すことにより形成される。・・・第2ドープ領域210Bは、1150℃の温度でTCSを5リットル/分で流しながら、120ppmのボロンソースを取り除くことにより形成される。」(翻訳文の明細書の段落【0023】)、「・・・第1ドープ領域をエピタキシャル的に形成し(ステップ415A)、その後、この第1ドープ領域上に第2ドープ領域をエピタキシャル的に形成する(ステップ415B)。」(同段落【0031】)及び「ステップ415Aで形成されたEPI層の第1ドープ領域の厚さは、第1ドーパント濃度が適用される第1期間により決定される。その後、ドーパント濃度を下げて、EPI層の成長を第2ドープ領域の厚さを決定する第2期間の間、継続する。」(同段落【0034】)と記載されており、第2ドープ領域をエピタキシャル的に形成する際に、供給されるドーパントを調整して形成する技術的事項は記載されているものの、「第1ドープ領域を除去する」ことによって第2ドープ領域を形成することについては何ら記載されておらず、また翻訳文の他のすべての記載事項を総合しても導かれる事項とも認められない。よって、「第1ドープ領域を除去する」ことによって第1ドープ領域上に第2ドープ領域を形成することは、翻訳文のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
そうすると、上記補正1は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面とみなされた外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成17年3月2日付けの明細書の記載に係る手続補正は、上記のとおり、補正却下の決定がなされた。
したがって、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、平成16年6月15日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】(A)半導体ウェハ上に、あるドーパント濃度を有する基礎基板(205)を形成するステップと、
(B)前記基礎基板(205)上に、エピタキシャル(EPI)層を形成するステップと、を有する半導体基板の形成方法において、前記(B)のステップは、
(B1)前記基礎基板上のEPI層内に、第1ドープ領域(210A)をエピタキシャル的に形成するステップと、
(B2)前記第1ドープ領域(210A)上に、第2ドープ領域(210B)をエピタキシャル的に形成するステップと、
からなり、
前記第1ドープ領域(210A)は、前記基礎基板(205)のドーパント濃度以上のドーパント濃度を有し、
前記第2ドープ領域(210B)は、第1ドープ領域(210A)のドーパント濃度以下のドーパント濃度を有し、前記前記第1のドープ領域(210A)は10^(17)cm^(-3)以上のドーパント濃度を有することを特徴とする半導体基板の製造方法。」

4.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平10-050714号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「この発明は、エピタキシャル層を形成した半導体シリコン基板の改良に係り、特に、ドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下のシリコン基板を用いて、気相成長法またはイオン注入法にてドーパント濃度の異なる層を積層することにより、製造が容易で・・・効果を有する半導体シリコン基板とその製造方法に関する。」(段落【0001】)
(イ)「発明者らは、・・・エピタキシャル成長によりDZ層を形成しているので酸素析出が起こり難く、DZ層として高濃度ドープ層を用いているので、ラッチアップ対策としても非常に有効であることを知見し、この発明を完成した。」(段落【0013】)
(ウ)「この発明は、ドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下のシリコン基板において、気相成長法あるいはイオン注入法により、基板上にドーパント濃度が1×10^(18)atoms/cm^(3)以上である第一層とドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下である第二層を順次積層したシリコン基板である。」(段落【0016】)
(エ)「一例を示すと、・・・ドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下のシリコン基板1上に、気相成長法あるいはイオン注入法により、ドーパント濃度が1×10^(18)atoms/cm^(3)以上である第一層2を形成すること・・・。
・・・気相成長法やイオン注入法により形成するため、膜厚やドーパント濃度の制御が容易で、かつ急峻な界面が得られる。
次に、・・・第一層2上に気相成長法あるいはイオン注入法により、ドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下である第二層3、すなわちエピタキシャル層を形成して2層構造となす。先の第一層2は・・・DZ層であり、これによって、気相成長法により形成する場合、DZ-IG処理工程を省略でき、気相成長法あるいはイオン注入法による場合は、DZ層の厚さの制御が可能となる。」(段落【0022】?【0024】)
(オ)「【実施例】
実施例1
以下の実施例に用いた本発明の基板およびエピタキシャル層の構造は次の通りである。
1)外観: ・・・両面鏡面基板
・・・
3)抵抗率: 3?5Ω・cm(ボロン濃度:2.8?4.5×10^(15)atoms/cm^(3))
4)第一層 ・抵抗率:0.001?0.003Ω・cm(ボロン濃度:3.5?13×10^(19)atoms/cm^(3))
・・・
5)第二層 ・抵抗率:?10Ω・cm(ボロン濃度:?l.5×10^(15)atoms/cm^(3))
・・・
第一層と第二層はSiHCl_(3)を原料ガスとした熱CVD法(化学気相成長法)により形成した。」(段落【0031】)

ここで、上記(ア)?(オ)の摘示事項について検討する。
(カ)上記(ア)には「この発明は、エピタキシャル層を形成した半導体シリコン基板の改良」に係ることが記載されているから、上記(ウ)に記載の「第一層と・・・第二層を順次積層したシリコン基板」が「半導体基板」であることは明らかである。
(キ)上記(ウ)に記載されているシリコン基板及び各層のドーパント濃度の大小関係からみて、第一層がシリコン基板のドーパント濃度以上のドーパント濃度を有し、第二層が第一層のドーパント濃度以下のドーパント濃度を有していることは明らかである。
(ク)上記(エ)及び(イ)には、それぞれ「第一層2は・・・DZ層」であること及び「エピタキシャル成長によりDZ層を形成している」ことが記載されているから、第一層をエピタキシャル成長させて形成していることは明らかである。
そうすると、上記(ア)?(オ)の記載事項を本願発明1の記載ぶりに則して記載すると、引用刊行物には、
「ドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下のシリコン基板上に、エピタキシャル層を形成するステップを有するシリコン基板の形成方法において、前記ステップは、
前記シリコン基板上に、第一層をエピタキシャル成長させて形成するステップと、
前記第一層上に、第二層をエピタキシャル成長させて形成するステップと、
からなり、
前記第一層は、前記シリコン基板のドーパント濃度以上のドーパント濃度を有し、
前記第二層は、第一層のドーパント濃度以下のドーパント濃度を有し、前記第一層は10^(18)atos/cm^(3)以上のドーパント濃度を有する半導体基板の製造方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5.対比・検討
本願発明1と引用発明とを対比する。
ここで、
(あ)引用発明の「第一層」及び「第二層」が、それぞれ本願発明1における「第1のドープ領域」及び「第2のドープ領域」に相当することは明らかである。また、引用発明における「ドーパント濃度が1×10^(16)atoms/cm^(3)以下のシリコン基板」は、上記4(オ)記載の実施例によれば、「ボロン濃度:2.8?4.5×10^(15)atoms/cm^(3)」といったある所定量のドーパント濃度を有しており、その上にエピタキシャル層を形成する基板として用いられているから、当該シリコン基板は本願発明1における「あるドーパント濃度を有する基礎基板」に相当するといえる。
(い)本願発明1のステップ(B1)及び(B2)における「エピタキシャル的に形成」なる文言は、日本語として必ずしも明確ではないが、本願の翻訳文の明細書には「EPI層210は第1ドープ領域210Aと第2ドープ領域210Bを有し、これらはエピタキシャルプロセスで形成される」(翻訳文の明細書の段落【0021】)と記載されていることからみて、上記「エピタキシャル的に形成」とは「エピタキシャル成長によって形成」の意味であると解される。
(う)引用発明におけるドーパント濃度の単位「atoms/cm^(3)」は、技術常識からして、「atoms」を省略した本願発明のドーパント濃度の単位「cm^(-3)」と同じ単位量であり、「10^(18)」は「10×10^(17)」であるから、引用発明1の第一層のドーパント濃度「10^(18)atos/cm^(3)以上」が本願発明の第1ドープ領域のドーパント濃度「10^(17)cm^(-3)以上」の範囲に含まれることは明らかである。
そうすると、両発明は、
「(B)あるドーパント濃度を有する基礎基板上に、エピタキシャル(EPI)層を形成するステップを有する半導体基板の形成方法において、前記(B)のステップは、
(B1)前記基礎基板上に、第1ドープ領域をエピタキシャル的に形成するステップと、
(B2)前記第1ドープ領域上に、第2ドープ領域をエピタキシャル的に形成するステップと、
からなり、
前記第1ドープ領域は、前記基礎基板のドーパント濃度以上のドーパント濃度を有し、
前記第2ドープ領域は、第1ドープ領域のドーパント濃度以下のドーパント濃度を有し、前記前記第1のドープ領域は10^(17)cm^(-3)以上のドーパント濃度を有することを特徴とする半導体基板の製造方法」
である点で一致し、
(a)本願発明1が「(A)半導体ウェハ上に、あるドーパント濃度を有する基礎基板を形成するステップ」を有するのに対して、引用発明にはかかるステップがない点(相違点(a))、
(b)本願発明1が「基礎基板上のEPI層内」に第1ドープ領域を形成しているのに対して、引用発明では第1ドープ領域の形成される部分が特定されていない点(相違点(b))、
で相違する。
上記相違点について検討する。
・相違点(a)について
引用刊行物には、半導体ウェハ上に基礎となるシリコン基板を形成することについては記載されていないものの、所望の半導体デバイス特性に応じて、当該基礎基板を半導体ウェハ上に形成する工程を採用する程度のことは、当業者が適宜成し得ることにすぎない。
・相違点(b)について
本願発明1における「(B1)前記基礎基板上のEPI層内に、第1ドープ領域(210A)をエピタキシャル的に形成するステップ」は、「(B)前記基礎基板(205)上に、エピタキシャル(EPI)層を形成するステップ」の中の一ステップであり、当該EPI層は第1ドープ領域及び第2ドープ領域からなるものであるから(翻訳文の明細書の段落【0021】)、上記B1ステップにおける「基礎基板上のEPI層内」とは、第2ドープ領域が形成される基礎基板上の部分を意味していることは明らかである。
一方、引用刊行物には、上記摘示事項4(エ)に「第二層3、すなわちエピタキシャル層」との記載があるように、第二層をエピタキシャル層と称してはいるものの、上記摘示事項4(ウ)に記載のとおり、第一層及び第二層は、本願発明1同様、基礎基板上に順次積層してエピタキシャル成長させて形成しているのであるから、当該第一層が形成される基礎基板の部分は、第二層が形成される部分であることは明らかである。
そうすると、引用発明においても、本願発明1の「EPI層内」に相当する部分に第一層が形成されていることになるから、上記相違点(b)は、単に文言上相違するものであって、実質的な相違点であるとは認められない。
そして、本願の翻訳文の明細書及び図面を参照しても、本願発明1が引用発明に比して、当業者が予測し得ない格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
したがって、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-10 
結審通知日 2009-02-12 
審決日 2009-02-24 
出願番号 特願平11-311182
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (C30B)
P 1 8・ 121- WZ (C30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横山 敏志五十棲 毅  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 天野 斉
木村 孔一
発明の名称 半導体基板の製造方法  
代理人 朝日 伸光  
代理人 岡部 正夫  
代理人 産形 和央  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 臼井 伸一  
代理人 本宮 照久  
代理人 越智 隆夫  

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