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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1200260
審判番号 不服2006-25373  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-09 
確定日 2009-07-06 
事件の表示 平成10年特許願第174658号「段ボール製函機の給紙装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月11日出願公開、特開2000- 7163〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成10年6月22日に出願されたもので、平成18年7月4日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての同年8月30日付け手続補正書が提出されたものの、同年10月10日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものであって、平成18年11月21日付けで補正された審判請求書が提出されている。

2.原査定
原査定の拒絶理由の1つは、以下のとおりのものと認める。

「この出願の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平9-224338号(特開平11-59924号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」

なお、以下、「特願平9-224338号」を「引用先願」と、また、「引用先願の願書に最初に添付された明細書又は図面」を「先願明細書等」という。

3.当審の判断

3-1.本件の発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の請求項1に記載の事項により特定されるものであって、同項の記載は、以下のとおりのものと認める。

「軸方向に間隔を開けた位置に配置され、積層された段ボールシートの前端をそろえる前当板を備えてなり、最下位置の段ボールシートをその前端側から順次次工程に真っ直ぐに給紙するように構成された段ボール製函機の給紙装置において、
前記前当板は、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持することが可能なように、前後方向に移動可能に構成されていることを特徴とする段ボール製函機の給紙装置。」

3-2.先願明細書等の記載
先願明細書等には、以下の記載A?Eが認められる。

A;「【発明の属する技術分野】この発明は、下流側に配設される各種紙工機械に向けて、シート状材を所要角度だけ傾斜した姿勢で送り出し供給することのできる給紙装置に関するものである。
【従来の技術】枚葉の段ボールシート(シート状材)を所要形状に打抜いて、組立て・解体自在な函体の基材となるブランク等を形成する手段として、ロータリーダイカッタが好適に使用されている。このロータリーダイカッタは、所要形状の打抜き刃を湾曲形状のボードに植設したダイを着脱可能に巻装したダイシリンダと、このダイシリンダと軸線を平行にして配設され、前記打抜き刃の刃先を食込み状態で受容するウレタン材質のアンビルを巻装したアンビルシリンダとを備える。そして両シリンダは、歯車列を介して共通に接続される外部駆動源により相互に反対方向に駆動されるようになっている。また両シリンダの上流側には、多数の段ボールシートが積層載置される給紙テーブルと、該テーブル上をシート給送方向の前後に移動するキッカーとを備える給紙装置が配置され、所要のタイミングでキッカーが前進して最下層より段ボールシートを1枚ずつ下流側に向け送り出すようになっている。・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下、同様。)。」(段落【0001】?【0002】)
B;「前記給紙装置11は、段ボールシート14の前端縁14a、前端縁14aと直交する両側端縁14c,14cおよび後端縁14bを支持する2基のフロントガイド26,27、2基のサイドガイド28,29およびバックガイド30を備え、これらガイド26,27,28,29,30によって給紙テーブル22に積載される段ボールシート群を、適正な傾斜姿勢または基準姿勢に支持するよう構成される。すなわち、図4および図5に示す如く、シート給送方向と直交する幅方向に離間する一対のフレーム31,31間に、上下2本のスライド軸32,32が平行に配設され、このスライド軸32,32に2基のフロントガイド26,27および2基のサイドガイド28,29が夫々摺動自在に配設されている。・・・。」(段落【0017】)
C;「【実施例の作用】次に、前述した実施例に係る給紙装置の作用につき説明する。
【段ボールシートを傾斜姿勢で送り出す場合】・・・。」(段落【0024】?【0025】)
D;「次に、オーダ変更によって段ボールシート14が大サイズのものに変わった場合は、図8に示す如く、2基のサイドガイド28,29を、機械中心CLを挟んで相対的に離間移動し、新オーダの段ボールシート14の両側端縁14c,14cに傾斜用支持部42,42が当接するよう位置決めする。また、2基のフロントガイド26,27を機械中心CLを挟んで相対的に離間移動する。このとき、段ボールシート14の前角部E1を通る基準線Lから前端縁14aまでの距離が変わるので、フロントガイド26,27の各傾斜用支持部材36をシート給送方向に移動させ、その傾斜当接面36aを段ボールシート14の前端縁14aに当接可能な位置に臨ませる。更に、前記バックガイド30も対応的に位置調節する。・・・。」(段落【0029】)及び【図8】
E;「前述した実施例では、段ボールシート14の供給姿勢に応じて、フロントガイド26,27の各取付板53に対して傾斜用支持部材36,62,65または基準用支持部材40,61,64を着脱交換することで対応させるよう構成したが、本願はこれに限定されるものでない。すなわち、図19に示す如く、取付板53に対して支持部材70を幅方向一端で傾動自在に配設すると共に、取付板53に回動可能に配設したシリンダ71のピストンロッド71aを支持部材70の他端側に回動自在に枢支する。従って、シリンダ71を正逆付勢すれば、支持部材70を、その当接面70aが基準線Lと平行になる基準位置(図19(a))と基準線Lに対して傾斜する傾斜位置(図19(b))とに位置決めすることができる。これにより、段ボールシート14の基準姿勢または傾斜姿勢での送り出しに対して、シリンダ71を制御するだけで、支持部材70の当接面70aで該シート14の前端縁14aを適正な姿勢で支持し得る。・・・。」(段落【0040】)及び【図19】

3-3.先願明細書等の発明
先願明細書等には、記載Aによれば、給紙装置についての発明が記載され、これは、函体の基材となるブランク等を形成する工程の装置手段に段ボールシートを給紙する装置に係るものと認められる。
そこで、先願明細書等に記載された上記給紙装置を具体的に見ていくと、記載Dが段ボールシートを傾斜姿勢、即ち、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて送り出す場合の上記給紙装置について記載するものであることは、記載Cなどの記載からして、明かである。
そして、記載Dには、傾斜用支持部材36,36を、各々、有する2基のフロントガイド26,27が記載され、これらは、記載Bを参照しつつ、特に【図8】をみると、スライド軸32,32に摺動自在に配設されていることが見て取れ、そして、これらフロントガイド26,27は、スライド軸32,32の軸方向に間隔を開けた位置に配置されているから、結局のところ、傾斜用支持部材36,36もスライド軸32,32の軸方向に間隔を開けた位置に配置されていると認められる。更に、上記傾斜用支持部材36,36は、記載Dによれば、シート給送方向に移動され、その傾斜当接面36a,36aを段ボールシート14の前端縁14aに当接可能な位置に臨ませるよう構成されており、傾斜用支持部材36,36は、積層された段ボールシートの前端をそろえるものであると共に、上述したように、記載Dが段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて送り出す場合について記載するものであることから、これら傾斜用支持部材36,36は、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持することが可能なように、シート給送方向に移動可能に構成されているということができる。
一方、記載Eには、取付板53に取り付けられた支持部材70が記載され、該支持部材70は、上述した給紙装置を前提技術として、その傾斜用支持部材36,36に係る技術を、傾斜姿勢、即ち、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて送り出す場合と基準姿勢で送り出す場合とに共用できるように、変更したものと認められる。そして、この基準姿勢で送り出す場合とは、先願明細書等の記載全体の趣旨からして、積層された段ボールシートの最下位置の段ボールシートをその前端側から、順次、函体の基材となるブランク等を形成する工程の装置手段に真っ直ぐに給紙することであることは明らかであるし、上記支持部材70が、先に述べたように、上述した給紙装置を前提技術として傾斜用支持部材36,36に係る技術を変更したものであることから、スライド軸32,32の軸方向に間隔を開けた位置に配置され、積層された段ボールシートの前端をそろえるものと認められる。また、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて送り出す場合とは、上記支持部材70が、同じく傾斜用支持部材36,36に係る技術を変更したものであることから、該支持部材70は、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持することが可能なように、前後方向に移動可能に構成されているものと認められる。更に、該支持部材70が板状といえるものであることは、記載Eの【図19】から、明かである
以上の検討を踏まえると、先願明細書等には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「スライド軸32,32の軸方向に間隔を開けた位置に配置され、積層された段ボールシートの前端をそろえる板状の支持部材70を備えてなり、最下位置の段ボールシートをその前端側から、順次、函体の基材となるブランク等を形成する工程を有する装置手段に真っ直ぐに給紙するように構成された給紙装置において、支持部材70は、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持することが可能なように、前後方向に移動可能に構成されている、給紙装置。」

3-4.対比判断

1)本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「板状の支持部材70」は、本件発明の「前当板」に対応しており、本件発明は、引用発明とは、
「軸方向に間隔を開けた位置に配置され、積層された段ボールシートの前端をそろえる前当板を備えてなり、最下位置の段ボールシートをその前端側から順次次工程に真っ直ぐに給紙するように構成された給紙装置において、前記前当板は、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持することが可能なように、前後方向に移動可能に構成されている、給紙装置。」である点で一致し、本件発明は、給紙装置に関し、「段ボール製函機の給紙装置」である点(以下、「相違点A」という。)において、一応、相違していると認められる。

2)これに対し、請求人は、審判請求書において、要するに、本件発明は、前当板が段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持している状態において、次工程には真っ直ぐに給紙するように構成されていることを前提に、引用発明とは、相違点Aの他にも相違点があると主張するので、検討する。
本件発明は、先に「3-1」で述べたとおりのもので、特に、「前当板は、段ボールシートの前端を前後方向に斜めに傾けて支持することが可能なように、・・・」との記載事項を、いわゆる、発明特定事項としていることを見れば、請求人の主張する上記前提は、本件発明の発明特定事項の基づかないもので、採用することはできない。

3)相違点Aについて検討する。
引用発明は、先に「3-3」で認定したとおりの給紙装置で、これは、函体の基材となるブランク等を形成する工程を有する装置手段に段ボールシートを給紙するように構成されているものである。そして、ブランク等を函体にまで形成する装置手段は、この出願前に周知慣用のものであるから、引用発明において、函体の基材となるブランク等を形成する工程を有する装置手段に引き続き、更に、函体にまで形成する装置手段を配し、引用発明の給紙装置を段ボール製函機の給紙装置とすることは、単に、設計上の差異に過ぎず、相違点Aは、実質的には、相違点とは言えず、本件発明は、引用発明と同一といわざるを得ない。
この点について、更に検討すると、本件明細書等には、本件発明における段ボール製函機が如何なる装置手段から構成されているかについての記載はなく、例えば、その段落【0002】には、従来の段ボール製函機の給紙装置についての記載ではあるが、「積上げられた段ボールシート7の最下位置のシート7aは、キッカ8により一端側から蹴り出され、一点鎖線で示す如く、他端側のフィードロール9に達すると、次には、フィードロール9により引っ張られて、次の加工工程(例えば印刷部10)に送られるようになっている。」とあるだけで、この印刷部10に例示される加工工程に係る装置手段くらいしか、段ボール製函機における上記装置手段についての記載はなく、結局のところ、本件発明が対象とする給紙装置は、段ボール製函に関するという程度の技術的意味しか無く、この点においては、何ら、引用発明と変わるところがないと言わざるを得ないものであるが、いずれにしても、上述したように、相違点Aは、実質的には、相違点とは言えず、本件発明は、引用発明と同一といわざるを得ないものである。

4.結び
本件発明は、引用発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が引用発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、出願人が引用先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができず、原査定は、妥当である。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-15 
審決日 2009-05-26 
出願番号 特願平10-174658
審決分類 P 1 8・ 161- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永石 哲也  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 佐野 健治
村上 聡
発明の名称 段ボール製函機の給紙装置  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  

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