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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21V
管理番号 1200267
審判番号 不服2007-19168  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-09 
確定日 2009-07-06 
事件の表示 特願2002-287428号「バックライトユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月22日出願公開、特開2004-127604号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本件出願は、平成14年9月30日の出願であって、平成19年6月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月9日に本件審判請求がなされるとともに、同年8月8日付けで手続補正(前置補正)がなされ、当審合議体による平成21年1月15日付けの、平成19年5月18日付け手続補正書によって補正された請求項に係る発明に対する拒絶理由通知(平成19年8月8日付けの手続補正は却下された。)に応答して、平成21年3月16日付けで手続補正がなされたものである。


2 本願発明

本件出願の請求項1に係る発明は、平成21年3月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 実装基板と、この実装基板の一面に並列に配置される2以上の発光ダイオードと、これら2以上の発光ダイオードと離間した位置で対向するように前記実装基板の一面に配置され、一側面に前記発光ダイオードから発せられる光を受ける受光面を有する導光板とを備えるバックライトユニットであって、
前記発光ダイオードは、前記導光板の受光面と対向して配置される素子基板と、該素子基板の前記受光面と対向する面に実装される発光素子と、該発光素子を前記素子基板に封止する封止体と、前記受光面と略平行の正面発光部及び受光面に対して略直交する左右の側面発光部が露出するように前記封止体の上面全体及び下面全体を覆う一対の遮光部材とを有して構成され、
前記正面発光部及び側面発光部からの発光領域が前記受光面上で隙間なく相互に重なるように、前記受光面から離間した位置に前記発光ダイオードを2以上並べて配置されていることを特徴とするバックライトユニット。」
(以下、「本願発明」という。)


3 引用刊行物とその記載事項

(1)刊行物1の記載内容

(1-1)刊行物1に記載された事項

当審の拒絶理由に引用された、本件出願前に頒布された特開2000-315825号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁性基板上に発光素子チップがボンディングされ、絶縁性基板の面と平行な方向、すなわち側面方向に光を照射するチップ型半導体発光素子に関する。さらに詳しくは、たとえば液晶表示素子のバックライトとする導光板に光を入射する光源とする場合に、発光素子の間隔を広くしても光が導光板に入射しない部分(いわゆるダーク)が小さくなるように指向性を広くすることができる側面発光のチップ型半導体発光素子に関する。」

(イ)「【0006】その結果、一側面から放射される光の束は、その中心方向に強い発光をし、指向性が狭くなる。その結果、図5に示されるように、導光板30の側面側に発光素子20を一定間隔で設置すると、導光板30の発光素子20の間の間隔部では、光の入射がされない、いわゆるダーク31と呼ばれる部分が生じる。このようなダーク31の部分は、導光板30内で反射をして折り返す光により補われるが、直接入射する部分とは輝度が異なり、導光板30の表面全体で、均一な輝度にならないという問題がある。」

(ウ)「【0016】本発明のチップ型半導体発光素子は、その一実施形態の斜視図およびその断面図が図1(a)?(b)に、分解斜視図が図2(a)にそれぞれ示されるように、一対の電極2、3が設けられる矩形状の絶縁性基板1に、n側電極41およびp側電極42がそれぞれ一対の電極2、3と接続される発光素子チップ4が設けられている。そして、発光素子チップ4の周囲が透光性部材6により被覆され、その透光性部材6の少なくとも一部が被覆され、被覆されないで露出する透光性部材6の部分から光を放射させるように光反射部材(ケース)7が設けられている。この光反射部材7により覆われないで露出する透光性部材6の部分が前述の矩形状の一辺Aからその一辺と連結する両側の辺部B、Cの少なくとも一部に亘って露出するように光反射部材7が形成されている。」

(エ)「【0026】本発明によれば、側面発光のチップ型発光素子の発光側面のみならず、その側面に隣接する両側の側面にも透光性部材の露出部分が形成されているため、横方向への光の照射を行うことができ、指向性の広い側面発光のチップ型発光素子となる。その結果、たとえば液晶表示素子用のバックライトの導光板に導入する光源として用いた場合に、発光素子の間隔が大きくてもダーク(光が入射しない部分)の発生がなくなるか、非常に狭くなり面内で均一な輝度のバックライトが得られる。」


(1-2)刊行物1の記載及び図面より、刊行物1に記載されていることが明らかな事項

(a)上記記載(イ)及び【図5】より、刊行物1に従来の技術として記載されているものは、発光素子20と離間した位置で対向するように配置された導光板30を備えることが明らかであるが、当該事項並びに上記記載(ア)及び(エ)より、刊行物1には、並列に配置される2以上のチップ型半導体発光素子と、これら2以上のチップ型半導体発光素子と離間した位置で対向するように配置され、一側面にチップ型半導体発光素子から発せられる光を受ける受光面を有する導光板とを備えるバックライトが記載されていることが明らかである。

(b)上記記載(ウ)及び(エ)並びに【図1】より、絶縁性基板1は透光性部材6の下面全体に位置していることが明らかである。

(c)上記記載(イ)及び上記記載(エ)の「その結果、たとえば液晶表示素子用のバックライトの導光板に導入する光源として用いた場合に、発光素子の間隔が大きくてもダーク(光が入射しない部分)の発生がなくなるか、非常に狭くなり面内で均一な輝度のバックライトが得られる。」という記載より、刊行物1に記載のバックライトは「発光領域が前記受光面上で隙間なく相互に重なるように、前記受光面から離間した位置に前記チップ型半導体発光素子を2以上並べて配置」するものを包含していることは明らかである。


(1-3)引用発明

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

「並列に配置される2以上のチップ型半導体発光素子と、これら2以上のチップ型半導体発光素子と離間した位置で対向するように配置され、一側面に前記チップ型半導体発光素子から発せられる光を受ける受光面を有する導光板とを備えるバックライトであって、前記チップ型半導体発光素子は、発光素子チップ4を絶縁性基板1に封止する透光性部材6と、絶縁性基板1の矩形状の一辺Aからその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分が露出するように前記透光性部材6の上面を覆う光反射部材7及び前記透光性部材6の下面全体を覆う絶縁性基板1とを有して構成され、絶縁性基板1の矩形状の一辺Aからその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分からの発光領域が前記受光面上で隙間なく相互に重なるように、前記受光面から離間した位置に前記チップ型半導体発光素子を2以上並べて配置されているバックライト。」


4 対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「チップ型半導体発光素子」、「バックライト」、「発光素子チップ4」、「絶縁性基板1」、「透光性部材6」及び「光反射部材7」は、それぞれ本願発明の「発光ダイオード」、「バックライトユニット」、「発光素子」、「素子基板」、「封止体」及び「遮光部材」に相当する。

引用発明の「絶縁性基板1の矩形状の一辺Aからその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分が露出するように前記透光性部材6の上面を覆う光反射部材7及び前記透光性部材6の下面全体を覆う絶縁性基板1とを有」する構成に関し、上記記載(ア)、(エ)の記載より、絶縁性基板1の矩形状の一辺Aに対応する透光性部材6の部分は、導光板の受光面に対向して配置されることは明らかであり、また、導光板の受光面と平行であることは明らかであることから、引用発明の絶縁性基板1の矩形状の一辺Aに対応する透光性部材6の部分及びその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分は、それぞれ本願発明の「受光面と略平行の正面発光部」及び「受光面に対して略直交する左右の側面発光部」に対応するものである。すなわち、引用発明の「絶縁性部材1の矩形状の一辺Aからその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分が露出する」ことは、本願発明の「受光面と略平行の正面発光部及び受光面に対して略直交する左右の側面発光部が露出する」ことにほかならない。そして、上記記載(ウ)及び(エ)の記載並びに【図1】を総合的に参酌すると、絶縁性基板1は、透光しないことは明らかであるので、引用発明の「絶縁性基板1」は遮光部材とすることができる。すなわち、引用発明と本願発明とは、「前記受光面と略平行の正面発光部及び受光面に対して略直交する左右の側面発光部が露出するように前記封止体の上面及び下面全体を覆う遮光部材とを有」する限りにおいて共通している。

また、前記したように、引用発明の絶縁性基板1の矩形状の一辺Aに対応する透光性部材6の部分及びその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分は、それぞれ本願発明の「受光面と略平行の正面発光部」及び「受光面に対して略直交する左右の側面発光部」に対応するものであるから、引用発明の「絶縁性基板1の矩形状の一辺Aからその一辺と連結する両側の辺部B、Cに対応する透光性部材6の部分からの発光領域」は、本願発明の「正面発光部及び側面発光部からの発光領域」に対応している。

してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。


<一致点>
「並列に配置される2以上の発光ダイオードと、これら2以上の発光ダイオードと離間した位置で対向するように配置され、一側面に前記発光ダイオードから発せられる光を受ける受光面を有する導光板とを備えるバックライトユニットであって、前記発光ダイオードは、発光素子を素子基板に封止する封止体と、前記受光面と略平行の正面発光部及び受光面に対して略直交する左右の側面発光部が露出するように前記封止体の上面及び下面全体を覆う遮光部材とを有して構成され、前記正面発光部及び側面発光部からの発光領域が前記受光面上で隙間なく相互に重なるように、前記受光面から離間した位置に前記発光ダイオードを2以上並べて配置されているバックライトユニット。」


<相違点1>
本願発明が、実装基板を有し、発光ダイオード及び導光板を、実装基板に配置しているのに対して、引用発明では、実装基板の有無及び、発光ダイオード及び導光板を、いかに固定するのかについて明らかでない点。

<相違点2>
本願発明では、発光ダイオードが、「前記導光板の受光面と対向して配置される素子基板と、該素子基板の前記受光面と対向する面に実装される発光素子」を有するのに対して、引用発明では、素子基板は導光板の受光面と対向して配置されておらず、発光素子は素子基板の受光面と対向する面に実装されていない点。

<相違点3>
本願発明が、「前記受光面と略平行の正面発光部及び受光面に対して略直交する左右の側面発光部が露出するように前記封止体の上面全体及び下面全体を覆う一対の遮光部材とを有して構成され」ているのに対して、引用発明では、「前記受光面と略平行の正面発光部及び受光面に対して略直交する左右の側面発光部が露出するように前記封止体の上面及び下面全体を覆う遮光部材とを有して構成され」てはいるものの、遮光部材は封止体の上面全体を覆ってはいない点。


5 相違点についての検討(容易想到性の判断)

上記各相違点について検討する。

(1)<相違点1>に関して

発光ダイオード及び導光板を実装基板に配置するバックライトユニットは周知の技術である(例えば国際公開第01/069693号の第9頁第2行?第5行及び【図3(a)】、特開平7-235207号公報の【0002】段落及び【図10】、特開平7-131072号公報の第3頁第4欄第2行?第14行及び第4頁第5欄第24行?第31行並びに【図1】及び【図7】参照。以下「周知技術1」という。)。よって、引用発明のバックライトユニットに周知技術1を適用し、発光ダイオード及び導光板を、実装基板に配置する程度のことは当業者であれば容易に想到し得る。


(2)<相違点2>に関して

発光ダイオード及び発光ダイオードから発せられる光を受ける導光板を有するバックライトユニットの発光ダイオードにおいて、導光板の受光面と対向して配置される素子基板と、該素子基板の前記受光面と対向する面に実装される発光素子を備えることは周知の技術である(例えば特開平11-175009号公報の【0021】段落及び【0043】段落並びに【図6】及び【図7】、特開平10-247412号公報の【0026】段落及び【図5】?【図8】参照。以下「周知技術2」という。)。よって、引用発明のバックライトユニットに周知技術2を適用し、バックライトユニットの発光ダイオードにおいて、導光板の受光面と対向して配置される素子基板と、該素子基板の前記受光面と対向する面に実装される発光素子を備えることは、当業者であれば容易に想到し得る。


(3)<相違点3>に関して

発光ダイオード及び発光ダイオードから発せられる光を受ける導光板を有するバックライトユニットの発光ダイオードにおいて、発光素子から発せられる光の漏れを防止するために、発光素子を封止した封止体の上面全体及び下面全体を覆う一対の遮光部材を有することは周知の技術である(例えば特開平11-175009号公報の【0029】段落、【0034】段落及び【0062】段落並びに【図1】及び【図2】、特開平10-247412号公報の【0026】段落及び【0030】段落並びに【図5】?【図8】参照。以下「周知技術3」という。)。よって、引用発明のバックライトユニットに周知技術3を適用し、バックライトユニットの発光ダイオードにおいて、遮光部材を、封止体の上面全体及び下面全体を覆う一対の遮光部材とすることは、当業者であれば容易に想到し得る。

(4)効果について

本願発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術1?3から、当業者であれば予測できる範囲のものにすぎない。


(5)総合判断

本願発明は、引用発明及び記周知技術1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-12 
結審通知日 2009-05-13 
審決日 2009-05-26 
出願番号 特願2002-287428(P2002-287428)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 藤井 昇
金丸 治之
発明の名称 バックライトユニット  
代理人 浅川 哲  

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