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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) A41D
管理番号 1200316
判定請求番号 判定2009-600003  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-08-28 
種別 判定 
判定請求日 2009-01-20 
確定日 2009-07-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第4061336号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す衣類は、特許第4061336号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面ならびにその説明書に示す衣類は、第4061336号特許の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものであって、構成要件ごとにAないしDの符号を付して示せば、次のとおりのものと認める。
A.着用者の体にフィットするように構成された上半身部を有する運動用衣類であって、
B.前記上半身部は、
B-1.伸縮性を有する素材によって形成された前身頃及び後身頃からなる本体部と、
B-2.当該本体部よりも高い緊締力を有する帯状の緊締部とを備え、
C.前記緊締部は、前記後身頃において、
C-1.前記着用者の肩甲骨を囲むように環状に形成された左右一対の第1緊締部と、
C-2.前記着用者の胸椎に対応する位置で前記第1の緊締部同士を連結する第2緊締部とを備えた
D.ことを特徴とする運動用衣類。

第3 イ号衣類
1.イ号図面について
平成21年1月20日付け判定請求書(以下、「判定請求書」という。)に添付されたイ号図面の図1ないし7は、イ号衣類の写真に基づいたもので、10ないし31の番号及び引き出し線が請求人により加筆されたものであるが、これらの図面及び記載事項は、請求人及び被請求人の主張の全趣旨に照らして、イ号衣類を示すものと認められる。

2.イ号図面(図1ないし7)及び甲第1ないし3号証により示される事項
a.着用者の体にフィットするように構成された上半身部を有する衣類であって、
b.前記上半身部は、
b-1.伸縮性を有する素材によって形成された前身頃及び後身頃からなる本体部と、
b-2.当該本体部よりも高い緊締力を有する緊締部とを備え、
c.前記緊締部は、前記後身頃において、
c-1.前記着用者の肩甲骨の上部を囲むとともに、一部が肩甲骨の下部を覆うように環状に形成された左右一対の第1緊締部と、
c-2.前記着用者の胸椎に対応する位置で前記第1の緊締部同士を連結する第2緊締部とを備えた
d.ことを特徴とする衣類。
なお、上記イ号衣類のb-2、c-2に関し、第2緊締部が、帯状であるか否かに争いがあるところ、判定請求書の「6.請求の理由」では、b-2を「当該本体部よりも高い緊締力を有する帯状の緊締部とを備え、」としているが、ここでは、「当該本体部よりも高い緊締力を有する緊締部とを備え、」とした。
また、上記イ号衣類のc-1に関して、判定請求書の「6.請求の理由」では、「前記着用者の肩甲骨を囲むように環状に形成された左右一対の第1緊締部」と示されているものを、ここでは、「前記着用者の肩甲骨の上部を囲むとともに、一部が肩甲骨の下部を覆うように環状に形成された左右一対の第1緊締部」としたが、これは、イ号図面の【図4】や被請求人が提出した平成21年3月16日付け判定請求答弁書(以下、「答弁書」という。)の「6.答弁の趣旨」の(3-2)で示されたイ号衣類の着用状態を示す写真に、イ号衣類を着用した際に、第1緊締部が着用者の肩甲骨の全体を囲むのではなく、一部が肩甲骨の下部を覆うことが示されているから、上記のように認定した。

第4 当審の判断
1.争いのない点について
イ号衣類の構成要件b-1が、本件発明の構成要件B-1を充足していることについては当事者間に争いがない。

2.争点について
(1)構成要件A、Dの充足性について
被請求人は、イ号衣類は、姿勢矯正衣類であって、運動のための衣類ではない旨主張している(答弁書第4ページ第12行ないし第23行等参照)。
しかしながら、運動衣類の技術分野において、衣類の上半身部を体にフィットさせて姿勢を矯正することにより運動を適正に行えるようにすることは、通常に行われていることである(例えば、特開2005-248391号公報、特開2004-263362号公報参照)。
してみれば、イ号衣類も、運動用に使用し得ることは明らかである。
被請求人は、「衣類全体で上半身を圧迫するようになっており、着用者が動くことに対して抵抗感を与えるようになっている。従って、イ号衣類を着用することによって、運動パフォーマンスは向上するどころか、寧ろ運動パフォーマンスは悪化する」と主張しているが(答弁書第4ページ第12行ないし第23行等参照)、イ号衣類が、運動用に使用することを妨げるほどの抵抗感を与えるものであるとは認められない。
よって、イ号衣類は、本件発明の構成要件A、Dを充足する。

(2)構成要件B-2、C-2の充足性について
構成要件B-2と構成要件C-2に関して争点が共通しているため、ここで併せて検討する。
被請求人は、イ号衣類の「中央の緊締部(本件特許発明に即して言うと、一対の第1の緊締部とした部分の内側部分と第2緊締部とした部分)」は、肩甲骨や体に食い込むような「幅広」のものであり、「帯状」ではないから、構成要件B-2及びC-2を充足しない旨主張している(答弁書第8ページ第17行ないし第9ページ第2行、同第7ページ第11行ないし第8ページ第15行等参照)。なお、被請求人は、イ号衣類において「中央の緊締部」と称しているが、当該箇所は、実質的に本件発明の「第2緊締部」に相当するものであるから、ここでは、「第2緊締部」と呼ぶ。
そして、本件発明の特許明細書には、「第2緊締部」に関して、以下の記載がある。
「【0039】
図6に示すように、運動用衣類40は、第2緊締部22の中央部分にセンターホール32を設けていない、いわゆるツーホール型の運動用衣類となっている点で、第2緊締部22の中央部分にセンターホール32を設けたスリーホール型の運動用衣類である上記実施形態と異なっている。その他の構成については、上記実施形態と同様である。
【0040】
この運動用衣類40では、第2緊締部22における緊締力が運動用衣類1と比べて高くなっているが、運動用衣類1と同様に、第1緊締部21によって体幹の回旋や腕の動作に伴う肩甲骨のあらゆる方向の可動をサポートでき、また、一方の第1緊締部21による緊締力は、第2緊締部22を介して他方の第1緊締部21に伝達される。したがって、運動用衣類40においても、着用者の肩甲骨の可動領域を十分に広げることができ、左右の肩甲骨が連動して運動する際の肩周辺の柔軟性が高められるため、体幹の回旋や腕の動作を伴う各種の運動パフォーマンスの向上が図られる。」
以上の記載から、本件発明の構成要件B-2、C-2で特定される「帯状」の「第2緊締部」は、イ号衣類の「幅広」と同様の形状を包含するものである。
してみれば、イ号衣類は、本件発明の構成要件B-2及びC-2を充足する。

(3)構成要件C-1の充足性について
本件発明の構成要件C-1である「前記着用者の肩甲骨を囲むように環状に形成された左右一対の第1緊締部」に関して、第1緊締部が、肩甲骨の下部を覆うようなものも包含すると解釈できるか否かが争われているので、この点について検討する。
本件発明の構成要件C-1に関し、本件特許明細書には、次のような記載がある。
「【0023】
第1緊締部21は、着用者の肩甲骨及び肩甲骨回りの筋肉群をサポートする部分であり、図2に示すように、左右一対に形成されている。第1緊締部21は、肩甲骨よりも上側及び外側に延在する第1の部分25と、肩甲骨よりも内側及び下側に延在する第2の部分26とによって構成され、全体として肩甲骨の形状に沿った環状をなしている。より具体的には、第1の部分25は、着用状態において、着用者の頸部付近から肩甲骨よりも上側に延在すると共に、肩甲骨の角部分の形状に沿って下方にカーブし、肩甲骨よりも外側に延在している。第1の部分25の幅寸法は、その全体にわたって約2.5cmとなっている。」
「【0025】
また、環状の第1緊締部21の内側の領域には、本体部10が露出する部分(以下、この部分を「サイドホール31」と称す)がそれぞれ設けられている。これらのサイドホール31は、肩甲骨及び肩甲骨回りの筋肉群に作用する緊締力を調整する部分として機能する。なお、サイドホール31に該当する部分の本体部10を構成する素材は、本体部10の他の部分よりも低い緊締力を有する素材を用いてもよい。」
「【0027】
より具体的には、第1の部分27は、襟部13の形状に合わせて下向きの緩やかなカーブを描き、第1緊締部21の第2の部分26のうち、肩甲骨よりも内側の部分の略上半分同士を連結している。また、第2の部分28は、第1の部分27よりも大きな曲率で上向きのカーブを描き、第1緊締部21の第2の部分26のうち、肩甲骨よりも内側の部分の略下半分同士を連結している。」
「【0031】
このような運動用衣類1では、着用状態において、第1緊締部21による緊締力が肩甲骨及び肩甲骨回りの筋肉群に作用し、着用者が体幹の回旋や腕の動作を行おうとする際に、肩甲骨の可動領域が広がるようにサポートされる。このとき、第1緊締部21は、肩甲骨を囲むように環状に形成されているため、体幹の回旋や腕の動作に伴う肩甲骨のあらゆる方向の動きをサポート可能となっている。」
上記段落【0023】に記載されているように、本件特許明細書に示された第1緊締部は、肩甲骨よりも上側及び外側に延在する第1の部分と、肩甲骨よりも内側及び下側に延在する第2の部分とによって構成されているものであり、第1緊締部が肩甲骨の下部を覆う構成は、本件特許明細書に記載も示唆もされていない。
さらに、本件特許明細書の上記摘記箇所の記載からみて、本件発明の、第1緊締部は、着用者の肩甲骨及び肩甲骨回りの筋肉群をサポートすることにより、肩甲骨の可動領域を広げることを目的としたものであり、第1緊締部を着用者の肩甲骨を囲むように環状としているのは、肩甲骨及び肩甲骨回りの筋肉群に作用する緊締力を調整することを目的としているものといえる。
そして、肩甲骨を押さえ付けるように上から緊締力を及ぼせば、肩甲骨が動きにくくなり肩甲骨の可動領域を広げるために適切でないことを考慮すれば、本件発明の「前記着用者の肩甲骨を囲むように環状に形成された」とは、肩甲骨上にかからないように環状に形成されたことと解すべきである。
よって、イ号衣類の構成要件c-1は、本件発明の構成要件C-1を充足しない。
なお、請求人は、本件発明のものも、環状部の一部が肩甲骨上にかかる場合があり、そのような場合であっても環状部がおおよそ肩甲骨の外側を囲む位置に配置されていれば上記肩甲骨の動きをサポートする機能への支障はない旨、また、イ号衣類の緊締部は肩甲骨の動きを大幅に阻害するものでない旨主張している(平成21年5月14日付け審判事件弁駁書第3ページ第17行ないし第29行、同第4ページ第1行ないし第15行)。
しかしながら、イ号衣類のように、明らかに肩甲骨の下部を覆うように第1緊締部が配置されているものにおいては、肩甲骨を覆うように緊締している箇所において、肩甲骨の移動を阻害するように作用するものであり、本件発明の目的に反するものであるから、請求人の上記主張は採用できない。

第5 むすび
以上のように、イ号衣類は、構成要件C-1については充足しないから、本件イ号衣類は、本件発明の技術範囲に属しない。また、本件特許の請求項2ないし4に係る発明は、いずれも請求項1に係る発明の「前記着用者の肩甲骨を囲むように環状に形成された左右一対の第1緊締部」を構成要件として含むものであるから、イ号衣類は、請求項2ないし4に係る発明の技術的範囲に属さない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-06-29 
出願番号 特願2007-511755(P2007-511755)
審決分類 P 1 2・ 0- ZB (A41D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
登録日 2007-12-28 
登録番号 特許第4061336号(P4061336)
発明の名称 運動用衣類  
代理人 鰺坂 和浩  
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