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審決分類 審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 一部無効 2項進歩性  A23F
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
管理番号 1200664
審判番号 無効2008-800162  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-25 
確定日 2009-05-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3972520号発明「製茶蒸機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件の経緯の概要
本件特許第3972520号の請求項1?5に係る発明についての出願は、平成11年6月30日に出願され、平成19年6月22日にその発明について特許権設定登録がなされ、この特許に対して、平成20年8月25日付で株式会社寺田製作所より特許無効審判が請求され、これに対し、平成20年11月25日付で被請求人から第1回目の答弁書および訂正請求書が提出され、これに対し、平成21年1月8日付で請求人から弁駁書が提出された。この弁駁書において新たに追加された無効理由について、平成21年1月20日付で特許法第131条の2第2項の規定に基づき、請求の理由の補正を許可する決定がなされ、平成21年2月23日付で被請求人から第2回目の答弁書が提出されたものである。
第2 平成20年11月25日付の訂正の可否に対する判断
1.訂正事項
平成20年11月25日付の訂正の内容は、本件特許発明の明細書を当該訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、具体的には、特許請求の範囲について、訂正前の請求項1を下記のとおり訂正し、対応する訂正前の本件明細書段落【0010】を下記のとおり訂正することを求めるものである。

訂正前の特許請求の範囲請求項1
「【請求項1】固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は多数の凸部を有する外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴とする製茶蒸機。」
訂正後の特許請求の範囲請求項1
「【請求項1】固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴とする製茶蒸機。」
訂正前の段落【0010】(一部)
「すなわち請求項1記載の製茶蒸機は、固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は多数の凸部を有する外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴として成るものである。」
訂正後の段落【0010】(一部)
「すなわち請求項1記載の製茶蒸機は、固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであること特徴として成るものである。」
2.訂正事項に対する判断
上記の請求項1及び明細書についての訂正は、訂正前の「外殻板」について「表面が平滑な」であって「茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものである」ことを特定するものである。
上記訂正事項について、被請求人は「外殻板」について、本願の願書に添付した明細書【0027】及び【0020】中の記載に基づいて、「表面が平滑な、茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものである」と限定するものであると主張しているところ、上記請求項1における訂正事項は、特許請求の範囲を減縮するものであると認められる。そして、明細書の上記箇所には、それぞれ「内胴7は表面が平滑な外殻板72によって形成されているため、茶葉やカスの付着はほとんど起こらない。」、「前記凸部72aの形状は、本実施の形態では一例として高さ0.3mm程度の角錐状としたが、内胴7の直径、回転速度等に応じて、茶葉を攪拌するための適宜の表面抵抗が得られるように設計するものとする。」と記載されているから、上請求項1における記訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、本件明細書における訂正事項についても、同様の理由により新規事項の追加に該当せず、請求項1を減縮する訂正に伴い対応する明細書の記載を同様に訂正したものであるから、上記明細書における訂正事項は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項からなる請求項1及び明細書の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書きおよび同条第5項において準用する特許法第126条第3および4項に規定する要件を満たすものである。
3.訂正の可否についての結論
以上のとおりであるから、上記請求項1及び明細書の訂正からなる上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書きおよび同条第5項において準用する特許法第126条第3および4項に規定する要件を満たすものであるから、当該訂正を認める。
第3 本件特許発明
平成20年11月25日付の訂正が上述のとおり認められたので、本件特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明のうち、その無効が請求された請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ本件発明1?3という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴とする製茶蒸機。
【請求項2】前記外殻板は金属板を適用したものであることを特徴とする請求項1記載の製茶蒸機。
【請求項3】 前記外殻板における凸部は、内胴の内側に位置するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の製茶蒸機。」

第4 請求人が主張する無効理由の概要
請求人株式会社寺田製作所は、下記の甲第1?3号証を提出し、以下(1)?(3)の無効理由を主張した。
(1)本件訂正により訂正された事項は、技術常識及び一般常識を考慮しても技術的に実施できない事項であり、かつ、不明瞭な記載でもあるので、本件は、特許法第36条第4項及び第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(以下、無効理由1という。)。
(2)本件訂正後の請求項1?3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、無効理由2という。)。
(3)本件訂正後の請求項1?3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(以下、無効理由3という。)。

甲第1号証:実願昭54-104554号(実開昭56-21986号公報)に添付のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭56-58246号(実開昭57-180585号公報)に添付のマイクロフィルム
甲第3号証:特開平6-225696号公報

第5 被請求人の主張
一方、被請求人カワサキ機工株式会社は、請求人の主張に対し、下記の乙第1号証を提出し、訂正請求により訂正された事項は不明瞭なものではなく訂正後の請求項1に係る発明は実施可能であり、本件は特許法第36条に規定する要件を満たしている旨、及び訂正後の請求項1?3に係る発明は、請求人の提出した甲第1?3号証に記載された発明から当業者が容易に発明し得るものではない旨、それぞれ主張している。

乙第1号証:特開平6-225697号公報

第6 当審の判断
1.無効理由1について
(1)本件発明1
本件発明1は、訂正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴とする製茶蒸機。」
(2)無効理由1の概要
これに対して、審判請求人は無効理由1として、訂正された事項は、「内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものである」の下線部が限定された内容であるが、「表面が平滑である外殻板」と「多数の凸部を有する外殻板」という矛盾した構成要素が包含されている。すなわち、「平滑」という用語の説明は本件明細書に記載されておらず、一般的用語解釈によれば「平らでなめらかなこと」と解されるが、平らで、かつ多数の凸部を有せしめることは実施できないし、不明瞭な記載でもあり、このような外殻板を取り付けて成る製茶蒸機に係る本件発明1は実施可能要件を欠如し、かつ請求項1の記載が不明確であるので、本件は特許法第36条第4項及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしてないと主張している。
(3)当審の判断
まず、訂正された事項の「内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり」、「更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり」とは、それぞれ、内胴を構成する外殻板は表面が平滑な素材により形成されるものであること、外殻板には茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるような凸部が多数設けられていること、を意味するものである。
そして、その「表面が平滑な外殻板」であって、「多数の凸部を有する」とは、表面が平滑では、茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られないことは明らかであるから、当業者が技術常識をもって請求項1の「内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり」という記載をみれば、表面が平滑な外殻板に加工を施して多数の凸部を設けたものと理解することができるから、本件請求項1の記載は不明瞭なものとはいえない。
またこのことは、外殻板に関する本件特許明細書段落【0019】?【0020】の「ここで前記外殻板72について説明すると、このものは一例として請求項2で定義して図3に示すように、厚さ1mm程度のステンレス鋼板をプレス加工する等して凸部72aを形成して成るものである。前記外殻板72の素材としては、ステンレンス鋼板以外の他の金属や、耐熱性の合成樹脂等適宜選択し得るものである。
前記凸部72aの形状は、本実施の形態では一例として高さ0.3mm程度の角錐状としたが、内胴7の直径、回転速度等に応じて、茶葉を攪拌するための適宜の表面抵抗が得られるように設計するものとする。因みに凸部72aの形状としては前記角錐状の他、三角錐状、半円状、半楕円状、スジ状等の適宜の形状が採り得るものである。」という記載、及び、段落【0027】の「そして内胴7内においては、茶葉は凸部72aとの間の抵抗によって適度に攪拌されて蒸気と接触するとともに、攪拌羽根9aによって打圧を受けるためその一部が分離する。このとき内胴7の内周に押し付けられるが、内胴7は表面が平滑な外殻板72によって形成されているため、茶葉やカスの付着はほとんど起こらない。」という記載によっても裏付けられている。
以上のように、本件請求項1の記載は不明確なものとはいえないので、本件発明1に係る製茶蒸機については、当業者が実施できるよう本件明細書に記載されているものともいえる。
したがって、本件請求項1の記載は明確であり、また、本件発明1について当業者が実施できるよう本件発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されている。
2.無効理由2について
請求人は無効理由2として、本件発明1?3は、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。

(1)甲第1及び3号証の記載事項
甲第1号証及び甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

甲第1号証:実願昭54-104554号(実開昭56-21986号公報)に添付のマイクロフィルム
(一の1)「上記した従来の茶葉蒸機は蒸熱処理時間の短い、所謂浅蒸しの蒸熱処理を行うものである。即ち、この茶葉蒸機におけて蒸熱処理時間、云い換えれば網胴内の生茶葉の滞留時間は網胴の傾斜角度によって調節するのである。」(第2頁第10行?第14行)(一の2)「第一図は茶葉蒸機の一例を示すもので、図中符号1は生茶葉投入口、2は蒸気送入口、3は覆胴、4は本考案たる網胴であって、リングギア5に取り付けられて回転する。」(第3頁第17行?第20行)
(一の3)「符号6は網胴5の内面に取付けられた多数のリフタである。網胴5は第二図及び第三図に示す様に金属製の数条の外枠7と金網8とから成っており、外枠7を円筒形に組み立ててこれに金網を張ったものである。この網胴4に取付けられるリフタ6は外枠7を利用してこれに取付けるものであり、外枠7の適所にあらかじめビス穴9をあけておき、これにビスを用いて取付けるものである。」(第4頁第1行?第9行)、と記載され、第二図には、リング状の金属環に帯体が等間隔に複数本設けられた外枠7の内部に円筒状の金網8が張られ、金網の内部には断面形のリフタ6が取り付けられた網胴が記載されている。
甲第3号証:特開平6-225696号公報
(三の1)「【請求項1】生茶葉を炒り加工する炒釜を具えた炒葉機において、前記炒葉機の炒釜は、加工作用面が金属材料で構成され、且つこの加工作用面は金属材料を後加工することによって凹凸が形成されたものであることを特徴とする釜炒り茶製造装置における炒釜の内面構造。」(請求項1)
(三の2)「【請求項2】前記後加工は、多数のピン状ノック片を前記加工作用面に衝突させることにより行われたものであることを特徴とする請求項1記載の釜炒り茶製造装置における炒釜の内面構造。」(請求項2)
(三の3)「【発明の作用】炒釜における加工作用面は、金属素材を後加工することによって金属材料自体に凹凸を形成するという極めて安価な手法により、炒釜の加工作用面が平滑な場合において生ずる茶葉のこびりつき等が回避され、製品品質の劣化をもたらすこ
となく、円滑な茶葉の炒り加工がされる。」(段落【0009】)
(三の4)「すなわち炒釜111は回転ドラム状を成し、その内部に複数条(一例として6条)の攪拌リブ111aを設けるとともに、その外周部は火炉風導112によって囲まれる。そして炒釜111はベアリング113によって可動フレーム102によって回転自在に搭載されるとともに、生茶葉Aの投入側端縁にリングギヤ114を設け、ここに後述する駆動装置13からの回転を受けて、回転駆動される。
更にこの炒釜111の加工作用面111Bである内面は適宜の金属素材を円筒状に加工したものであるが、その表面は平滑ではなく、茶葉Aの投入口側から全長の約2/3位までの全周面にわたって凹凸111bが形成されている。そして特に本発明での特徴的構成は炒釜111を構成している金属素材を直接凹凸加工することにより凹凸111bを形成する。この凹凸加工の最も経済的及び有効的な手法としては、図8に示すようにピン状の多数のノック片Pが衝撃的に出没するブラストマシンBを、平板状態の金属板素材にあてがい、この表面に例えば0.1?0.3mm程度の凹凸111bを形成するようにし、その後これを曲成加工して例えば円胴状にしたものである。なお多少高価となるが、凹凸加工するのにプレス加工または旋盤加工等の手法を用いても構わない。勿論このような炒釜111の加工作用面111Bの構造は、あらゆる形態の炒釜にも適用できることはいうまでもない。
更に炒釜111内には排蒸官116が設けられるものであって、炒釜111における生茶葉Aの投入側からその全長1/3程度の範囲まで延長形成される。そて排蒸官116はその先端をメッシュ状に開口させた排蒸孔116aを有するとともに、…(以下、省略)。」(段落【0013】?【0015】)、と記載されている。

(2)対比・判断
(2-1)本件発明1
本件発明1は、本件特許明細書の記載によれば、「製茶工場における製茶蒸機には、網胴回転式(無攪拌)、網胴回転攪拌式、送帯式等があるが、このうち現在では網胴回転攪拌式のものが主流となっている。
このものは固定された鉄板製の外胴内に、円筒形の金網でできた内胴を配して成るものであり、内胴内に供給された茶葉は、この内胴の回転と傾斜並びに攪拌軸の回転によって混合されながら排出側に移動する際に、蒸気潜熱によって蒸されるというものである。
このように前記内胴には、蒸気の透過が成されることの他に、その表面抵抗によって茶葉を攪拌することが求められるものであって、従来より内胴の構成としては、枠部材に対して金網を円筒状に巻回した構成が採られており、上記の内胴に要求される特性については充分に満足できるものであった。
ところが上述した従来の内胴(網胴)の構成は、メンテナンスの点では必ずしも好ましいものではなかった。つまり、金網は金属線を織ったものであるため、メッシュの部分の他にも金属線が重なり合った部分に茶葉が詰まってしまうことがあり、一旦このような部分に詰まってしまった茶葉は、ブラシ等を用いても完全に取り除くことは困難であった。
そして金網に茶葉が詰まったままになると、このものが後日腐って悪臭を発したり、運転中の更なる目詰まりを助長して蒸気の通りを悪くしてしまう等の不具合が生じるため、金網に詰まった茶葉の除去は頻繁に且つ確実入念に行う必要がある。」(本件特許明細書段落【0002】?【0004】)、及び「ところで近時、深蒸し茶が好まれる傾向にあって、深蒸し茶を製造する場合には、前記内胴の側周をステンレス鋼板で被覆することで、内胴内に位置する茶葉の蒸し効率を高めることが行われているが、この場合にもやはり内胴に対する茶葉の付着についての問題は発生する。
更に深蒸し専用の製茶蒸機では、内胴全体をステンレス鋼板で形成したものも存在するが、この場合にも内胴の回転によって茶葉を攪拌するための表面抵抗を得るために、ステンレス鋼板の内側に金網を貼り付けているため、茶葉の付着についての問題はやはり回避できないものであった。」(本件特許明細書段落【0007】?【0008】)、という従来技術が有する問題点を解決するためになされたものである。
そしてそのために、本件特許明細書に、「すなわち請求項1記載の製茶蒸機は、固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は多数の凸部を有する外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、内胴に対する茶葉あるいはカスの付着を、従来の金網を用いた内胴に比べて著しく防止することができ、メンテナンスを容易に行うことができる。」(本件特許明細書段落【0010】)と記載されているように、内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有せしめることにより、「そして内胴7内においては、茶葉は凸部72aとの間の抵抗によって適度に攪拌されて蒸気と接触するとともに、攪拌羽根9aによって打圧を受けるためその一部が分離する。
このとき内胴7の内周に押し付けられるが、内胴7は表面が平滑な外殻板72によって形成されているため、茶葉やカスの付着はほとんど起こらない。」(本件特許明細書段落【0027】)というメンテナンスの容易な製茶蒸機を提供するものである。

(2-2)対比、判断
そこでまず、本件発明1と甲第1号証に記載された発明を比較すると、甲第1号証の製茶蒸機における覆胴、回転する網胴、網胴を構成する外枠、及び網胴の内側に設けられたリフタは、それぞれ、本件発明1の外胴、内胴、内胴を構成する外枠、及び茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られる多数の凸部に相当するので、両者は、固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、内胴に茶葉を撹拌するための多数の凸部を設けたものである点で共通するが、内胴の外枠に取り付ける内胴本体及び多数の凸部が、前者では、表面が平滑な外殻板であり、多数の凸部はその外殻板に設けられているのに対して、後者では、金網であり、多数の凸部は、金網でなく内胴を構成する外枠に設けられている点、で相違する。
一方、甲第3号証には、炒葉機の回転する回転胴からなる炒釜において、加工作用面が金属材料で構成され、金属材料を後加工することによって形成された凹凸を有する釜炒り茶製造装置が記載されているが、甲第1号証の製茶蒸機と甲第3号証の製茶炒機は、前者が、茶葉を蒸すという蒸気で茶葉を加熱し、内胴で直接加熱するものではないのに対して、後者が、茶葉を炒るという加熱した内胴で直接茶葉を加熱するものであり、茶葉の加熱装置といってもその加熱の仕方、目的において異なるものである。その相違により、甲第3号証の炒釜の凸部は、凹凸部がない平滑な場合において生じる茶葉のこびりつき等を回避するものであるのに対して、甲第1号証のものは茶葉を撹拌するためのものであって、そもそも内胴で直接加熱することに伴う茶葉がこびりつくという問題がないのであるから、当業者が甲第3号証の炒釜の凸部を甲第1号証の網胴の凸部に適用するとは考えられない。
また、本件発明1の内胴と甲第3号証に記載の炒釜は、その用途、構成及び効果が相違するのであるから、甲第1号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明をたとえ適用したとしても、当業者が本件発明1を発明することはできない。
したがって、本件発明1は、甲第1及び3号証に記載された事項から当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

(2-3)本件発明2、3について
本件発明2は、本件発明1の外殻板を金属板と具体化または限定したものであり、また、本件発明3は、本件発明1と2の外殻板における凸部を、内胴の内側に位置すると具体化または限定したものであるので、本件発明2、3についても、本件発明1と同様の理由で、甲第1、3号証に記載された事項から、当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
3.無効理由3について
請求人は無効理由3として、本件発明1?3は、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証:実願昭56-58246号(実開昭57-180585号公報)に添付のマイクロフィルム
(二の1)「(1)は多孔の回転胴で金網で形成され、茶葉の供給側外周に歯輪(2)が固定され、これと噛合う駆動歯車(3)で回転する。回転胴(1)内には多数の撹拌翼(15)を取り付ける。
(4)は回転胴(1)の供給側に設けられた茶葉の供給室、(5)は回転胴(1)の末端に設けられた茶葉の排出室である。これら供給室(4)回転胴(1)排出室(5)を囲んでその外周に気密胴(6)を設ける。」(第3頁第9行?第16行)、と記載されている。
(2)対比・判断
まず、本件発明1と甲第2号証に記載された発明を比較すると、甲第2号証の生茶葉蒸機、気密胴、回転胴、及び回転胴内に取り付けた撹拌翼は、それぞれ、本件発明1の製茶蒸機、外胴、内胴、及び内胴に設けられた茶葉を撹拌するための表面抵抗が得られる多数の凸部に相当し、両者は、固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、内胴に茶葉を撹拌するための多数の凸部を設けたものである点で共通するが、(イ)内胴が、前者では、表面が平滑な外殻板であり、その外殻板に多数の凸部を設け、その外殻板を外枠に対して取り付けてなるものであるのに対して、後者では、金網で形成され、多数の凸部が取り付けたものである点、及び(ロ)前者では、蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるのに対して、後者では先下り状態にして回転させることは記載されていない点、の2点で相違する。
しかしながら、(イ)の相違点については、上記2.(2-2)で述べたように、甲第2号証の蒸機と甲第3号証の炒機は、加熱の仕方、目的において異なり、甲第2号証の蒸機の撹拌翼は茶葉を撹拌するためのものであって、甲第3号証の炒機のような茶葉がこびりつくという問題がないのであるから、当業者が甲第2号証の回転胴の凸部に甲第3号証の炒釜の凸部を適用することは考えられず、また上記(イ)の相違点の構成は甲第1号証にも記載されていないので、結局、甲第2号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明を適用しても、当業者が本件発明1を想到することはできない。
また、本件発明2、3についても、上記2.(2-3)で述べた理由により、本件発明1と同様の理由で、甲第2号証に記載された発明に甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された発明を適用しても、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本件発明1?3は、甲第1?3号証に記載された事項から当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
第7 結び
以上の通りであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件の請求項1ないし3に係る発明の特許を無効とすることができない。
また、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、審判費用は、請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
製茶蒸機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を攪拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴とする製茶蒸機。
【請求項2】前記外殻板は金属板を適用したものであることを特徴とする請求項1記載の製茶蒸機。
【請求項3】前記外殻板における凸部は、内胴の内側に位置するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の製茶蒸機。
【請求項4】前記外枠と、外殻板とを固定するための部材は、攪拌羽根からずれた位置に作用させることを特徴とする請求項1、2または3記載の製茶蒸機。
【請求項5】前記外枠と、外殻板との間にはスペーサを介在させることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の製茶蒸機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は製茶蒸機における蒸し胴に関するものであり、特に蒸し胴に対する茶葉の付着を防止して、メンテナンスを容易にすることのできる製茶蒸機に係るものである。
【0002】
【発明の背景】
製茶工場における製茶蒸機には、網胴回転式(無攪拌)、網胴回転攪拌式、送帯式等があるが、このうち現在では網胴回転攪拌式のものが主流となっている。
このものは固定された鉄板製の外胴内に、円筒形の金網でできた内胴を配して成るものであり、内胴内に供給された茶葉は、この内胴の回転と傾斜並びに攪拌軸の回転によって混合されながら排出側に移動する際に、蒸気潜熱によって蒸されるというものである。
【0003】
このように前記内胴には、蒸気の透過が成されることの他に、その表面抵抗によって茶葉を攪拌することが求められるものであって、従来より内胴の構成としては、枠部材に対して金網を円筒状に巻回した構成が採られており、上記の内胴に要求される特性については充分に満足できるものであった。
【0004】
ところが上述した従来の内胴(網胴)の構成は、メンテナンスの点では必ずしも好ましいものではなかった。つまり、金網は金属線を織ったものであるため、メッシュの部分の他にも金属線が重なり合った部分に茶葉が詰まってしまうことがあり、一旦このような部分に詰まってしまった茶葉は、ブラシ等を用いても完全に取り除くことは困難であった。
そして金網に茶葉が詰まったままになると、このものが後日腐って悪臭を発したり、運転中の更なる目詰まりを助長して蒸気の通りを悪くしてしまう等の不具合が生じるため、金網に詰まった茶葉の除去は頻繁に且つ確実入念に行う必要がある。
【0005】
このため前記内胴を製茶蒸機本体から取り外せるような構成を採って、一日の作業が終了した時点で内胴を取り外して洗浄するという、煩わしい作業が必要とされるばかりでなく、その際のブラシによる摺擦が金網の耐久性を低下させてしまうことにもつながっていた。
そして耐久性の低下した金網の一部が運転中に欠落した場合には、攪拌羽根等の他の部材に著しい損傷を与えてしまうこともあった。
【0006】
そこで前記のようなカスの付着に対する対策として本出願人は特開平11-32679号「製茶蒸機における網胴の管理構造」及び特開平11-56239号「製茶蒸機における蒸気供給胴の管理構造」等の発明を成し、カスの除去を積極的に図る試みも行っているが、メンテナンスの点では更なる改善の余地があった。
【0007】
ところで近時、深蒸し茶が好まれる傾向にあって、深蒸し茶を製造する場合には、前記内胴の側周をステンレス鋼板で被覆することで、内胴内に位置する茶葉の蒸し効率を高めることが行われているが、この場合にもやはり内胴に対する茶葉の付着についての問題は発生する。
【0008】
更に深蒸し専用の製茶蒸機では、内胴全体をステンレス鋼板で形成したものも存在するが、この場合にも内胴の回転によって茶葉を攪拌するための表面抵抗を得るために、ステンレス鋼板の内側に金網を貼り付けているため、茶葉の付着についての問題はやはり回避できないものであった。
【0009】
【解決を試みた技術課題】
本発明はこのような背景を認識して成されたものであって、特に内胴に対する茶葉の付着を防止して、メンテナンスを容易にすることのできる新規な製茶蒸機の開発を試みたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち請求項1記載の製茶蒸機は、固定された外胴内に内胴を配して蒸し胴を構成し、この蒸し胴の中心軸を水平よりやや先下り状態にして回転させるとともに、この蒸し胴内に蒸気を供給して蒸し胴内を通過する茶葉を蒸す装置において、前記内胴は表面が平滑な外殻板によって形成されるものであり、更にこの外殻板は茶葉を攪拌するための表面抵抗が得られるように、多数の凸部を有するものであり、前記外殻板を外枠に対して取り付けて成るものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、内胴に対する茶葉あるいはカスの付着を、従来の金網を用いた内胴に比べて著しく防止することができ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
また請求項2記載の製茶蒸機は、前記要件に加え、前記外殻板は金属板を適用したものであることを特徴として成るものである。
この発明によれば、多数の凸部を有する外殻板として、市販されている汎用の金属板を用いることで内胴を安価に構成することができる。
【0012】
また請求項3記載の製茶蒸機は、前記要件に加え、前記外殻板における凸部は、内胴の内側に位置するようにしたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、茶葉を攪拌するのに必要な表面抵抗を得ることができるため、従来の網胴と同様に蒸熱処理を良好に行うことができる。
【0013】
更にまた請求項4記載の製茶蒸機は、前記要件に加え、前記外枠と、外殻板とを固定するための部材は、攪拌羽根からずれた位置に作用させることを特徴として成るものである。
この発明によれば、攪拌羽根と外殻板(内胴)との間隔を、従来の金網を用いた内胴と攪拌羽根との間隔よりも狭くすることが可能となり、内胴内での茶葉の流れを円滑にすることができる。
【0014】
更にまた請求項5記載の製茶蒸機は、前記要件に加え、前記外枠と、外殻板との間にはスペーサを介在させることを特徴として成るものである。
この発明によれば、金網を張設することを前提として設計された既存の外枠に対して、金網よりも薄い金属板を張設したときにも、内胴の内径寸法を同一値とすることができるため、部材の共通化が図れる。また内胴内の保温性が良くなるため蒸し効率が向上する。更にまたスペーサが金属板の補強部材として機能するため、金属板の損傷を防止する。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の製茶蒸機1について、図面に基づいて説明する。この装置は茶葉の供給がなされる固定胴2と、蒸気の供給がなされる蒸気室3と、この蒸気室3に連接するとともに供給された茶葉の蒸し加工を行う蒸し胴5とを主要部材として成る。
【0016】
前記固定胴2、蒸気室3及び蒸し胴5は可動機枠F1に設置されるともに、この可動機枠F1は固定機枠F2に対して、蒸し胴5側が下方に位置するように傾斜角度を調節可能に軸支されている。
前記固定胴2には茶葉の投入口2aが設けられるとともに、ここに図示しない生葉流量計より供給される生茶葉が投入される。
また前記蒸気室3には蒸気供給口3aが設けられるとともに、ここに図示しないボイラより蒸気が供給される。
【0017】
前記蒸し胴5は、前記可動機枠F1に固定される外胴6と、この外胴6の内部に設けられるとともに前記可動機枠F1に具えた支持ローラ7aにより回転自在に支持される内胴7とを主要部材として成る。
前記外胴6は鉄板等により形成された一例として断面形状八角形の箱体であって、適宜取付金具を用いて前記可動機枠F1に固定される。
【0018】
また前記内胴7は、円筒形に枠組みされた外枠たる内胴フレーム71の内側に、凸部72aを有する外殻板72を、カシメピン73を用いて張設して成るものであり、適宜の回転駆動機構により回転するものである。
なお前記外殻板72の張設態様は、請求項3で定義したように内胴7の内側に凸部72aが位置するようにして、外枠たる内胴フレーム71に対して取り付けるものとする。
【0019】
ここで前記外殻板72について説明すると、このものは一例として請求項2で定義して図3に示すように、厚さ1mm程度のステンレス鋼板をプレス加工する等して凸部72aを形成して成るものである。前記外殻板72の素材としては、ステンレンス鋼板以外の他の金属や、耐熱性の合成樹脂等適宜選択し得るものである。
【0020】
前記凸部72aの形状は、本実施の形態では一例として高さ0.3mm程度の角錐状としたが、内胴7の直径、回転速度等に応じて、茶葉を攪拌するための適宜の表面抵抗が得られるように設計するものとする。
因みに凸部72aの形状としては前記角錐状の他、三角錐状、半円状、半楕円状、スジ状等の適宜の形状が採り得るものである。
【0021】
なお前記凸部72aを形成するにあたっては、上述したプレス加工の他に、凸部72aを別部材として形成し、このものを外殻板72の表面に固着させるようにしてもよい。
【0022】
なお前記内胴フレーム71と、外殻板72とは、ステープラ等を適用したカシメピン73を用いて固定するものであり、このカシメピン73を打ち込む位置については、請求項4で定義するとともに図4に示したように、後述する攪拌羽根9aからずれた位置とする。
【0023】
なお前記内胴7は周方向において通気状態を有しない、いわゆる深蒸し仕様のものであるが、希望加工仕様(例えば深蒸しと普通蒸しとの中間)によっては前記内胴7(外殻板72)の胴部の一部を周方向において通気状態を有する状態にするものであって、この場合、適宜孔を穿設する。
【0024】
また前記内胴7内にはそのほぼ中心を通るようにして攪拌軸9が位置するものであって、この攪拌軸9には複数の攪拌羽根9aが取り付けられるとともに、適宜の回転駆動機構により回転する。
そしてこの攪拌羽根9aと、前記内胴7との間の間隔は、5?6mm程度と、従来の網を用いた内胴のとき(9mm)よりも狭く設定するものとする。
【0025】
なお以上述べた製茶蒸機1の構成は、従来公知の網胴回転攪拌式の製茶蒸機1をベースにした構成であったが、この他に網胴回転式(無攪拌)や、種々の改変を加えた構造とすることもできる。
【0026】
本発明の製茶蒸機1は一例として上述のように構成されるものであり、以下この装置の作動態様と、メンテナンスの態様について説明する。
製茶工場における蒸し工程を担う製茶蒸機1に対しては、生葉流量計より適量の茶葉が固定胴2における投入口2aに対して投入されるものであり、この茶葉は可動機枠F1の傾斜及び攪拌軸9の回転によって蒸気室3を経て蒸し胴5における内胴7内に至る。
【0027】
そして内胴7内においては、茶葉は凸部72aとの間の抵抗によって適度に攪拌されて蒸気と接触するとともに、攪拌羽根9aによって打圧を受けるためその一部が分離する。
このとき内胴7の内周に押し付けられるが、内胴7は表面が平滑な外殻板72によって形成されているため、茶葉やカスの付着はほとんど起こらない。
【0028】
ただし、茶葉より浸出した灰汁のねばり等によって、外殻板72の表面に異物が付着する場合もあるが、その量は従来の金網を用いた内胴と比べると極めて少量である。
このような場合には、装置の停止後に、蒸気供給口3a等からホースを挿入して水洗いすることで、容易に異物を取り除くことができる。
【0029】
【他の実施の形態】
なお上述の基本となる実施の形態では、内胴7を構成する部材は、本発明を実施するための専用部材を用いることを前提としたものであったが、ここで既存の製茶蒸機の部品を流用した場合の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、請求項5で定義するとともに図5(a)に示すように、前記外枠たる内胴フレーム71と、外殻板72との間には、ステンレス板等を適用したスペーサ74を介在させるものである。
【0030】
つまり既存の製茶蒸機において内胴を形成するために用いていた金網は図5(b)に示すように、厚さ3mmであり、一方、本発明で用いる外殻板72は厚さ1mmであるので、2mm厚のスペーサ74を用いれば、結果的に内胴7の内径寸法を、既存のものと同寸法とすることができる。
このことは前記攪拌羽根9aとの間隔の設定等の際に、関連部材の設計変更を要さなくするため、むやみにコストアップを招くことがない。
【0031】
またこのような構成によると、内胴7内部の保温性が向上するため、内胴7内に位置する茶葉の蒸し効率を高めることができる。
また前記外殻板72は、厚さ1mmと比較的薄いため、内胴7内に茶葉とともに小石が入り込んでしまった場合には外殻板72の破損の恐れがあるが、スペーサ74が補強部材として機能するため、このような危険を回避することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、特に深蒸し茶を製造する製茶蒸機1において、内胴7に対する茶葉の付着を防止するため、茶葉の腐敗による悪臭に起因する品質低下を招かない。またメンテナンスを容易にすることができるため、内胴7を常に清浄な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る蒸機を一部拡大して示す正面図である。
【図2】
同上側面図である。
【図3】
凸部を有する外殻板並びにこれを用いて形成される内胴を示す斜視図である。
【図4】
内胴におけるカシメピンと攪拌羽根との位置関係を一部透視して示す平面図並びに側面図である。
【図5】
既存の内胴フレームに対して外殻板または金網を取り付けた様子を対比して示す側面図である。
【符号の説明】
1 製茶蒸機
2 固定胴
2a 投入口
3 蒸気室
3a 蒸気供給口
5 蒸し胴
6 外胴
7 内胴
7a 支持ローラ
9 攪拌軸
9a 攪拌羽根
71 内胴フレーム
72 外殻板
72a 凸部
73 カシメピン
74 スペーサ
F1 可動機枠
F2 固定機枠
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-03-16 
結審通知日 2009-03-18 
審決日 2009-03-31 
出願番号 特願平11-184750
審決分類 P 1 123・ 121- YA (A23F)
P 1 123・ 537- YA (A23F)
P 1 123・ 536- YA (A23F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 騎見高  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 鈴木 恵理子
上條 肇
登録日 2007-06-22 
登録番号 特許第3972520号(P3972520)
発明の名称 製茶蒸機  
代理人 東山 喬彦  
代理人 岩堀 邦男  
代理人 東山 喬彦  

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