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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 C08J 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 C08J 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08J 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08J |
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管理番号 | 1200669 |
審判番号 | 無効2008-800100 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-06-03 |
確定日 | 2009-05-11 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3832668号発明「生分解性シート及びその製造方法、並びに当該シートを用いた生分解性成型品及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3832668号の請求項1?11に係る発明についての出願は、2004年4月20日(優先権主張2003年4月21日、日本国)を国際出願日とする特願2005-505746号の一部を平成18年6月5日に新たな特許出願としたものであって、同年7月28日にその発明についての特許権の設定登録(請求項の数11)がなされた。 これに対して、平成20年6月3日に、請求人より、請求項1?11に係る発明の特許(以下、「本件特許」という。)について本件無効審判の請求がなされ、同年8月25日付けで被請求人より答弁書及び訂正請求書が提出され、同年10月2日付けで請求人より弁駁書が提出され、同年12月17日付けで請求人及び被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同日に第1回口頭審理が行われ、同日に書面審理への移行が宣言され、そして、平成21年1月15日付けで請求人より上申書が提出され、同年同月16日付けで被請求人より上申書及び訂正請求書の手続補正書(方式)が提出された。 2.訂正請求について 2-1.訂正の内容 平成20年8月25日付け訂正請求書及び平成21年1月16日付け訂正請求書の手続補正書(方式)による訂正請求が求める特許第3832668号についての訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1?3のとおりである。 <訂正事項1> 特許請求の範囲の請求項1における「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とを主成分とする澱粉樹脂」を、「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」と訂正する。 <訂正事項2> 特許請求の範囲の請求項7における「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とを主成分とする澱粉樹脂」を、「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」と訂正する。 <訂正事項3> 特許明細書の段落【0011】、【0016】及び【0026】における「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とを主成分とする澱粉樹脂」を、「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」と訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 2-2-1.訂正事項1及び2について 訂正事項1及び2は、「澱粉樹脂」について、「澱粉質とオレフィン樹脂とを主成分とする」としていたものを、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる」と訂正するものであって、澱粉樹脂の成分を澱粉質とオレフィン樹脂のみに限定するものであるから、当該訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、願書に添付した明細書(以下、「明細書」という。)の段落【0039】において、「原料の割合が、澱粉質が70重量%以上、好ましくは、澱粉質が75?90重量%で、プラスチックが10?25重量%の範囲となる」と記載され、さらに、明細書の段落【0033】において、「澱粉質に混合するプラスチックとしては、・・・特に、成形時の強度を高めるため、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂を好適に使用できる。」と記載されていること、並びに段落【0061】において、「実験で使用した生分解性シートは、澱粉質が70重量%、ポリプロピレンが28重量%、必要に応じて添加した結着剤としてのポリプロピレンが2重量%のもの」とすることがそれぞれ記載されているから、訂正事項1及び2は、明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 さらに、訂正事項1及び2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-2-2.訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1及び2による特許請求の範囲の訂正にともなって、発明の詳細な説明の記載を整合させるために訂正を行うものであることから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項3は、上記2-2-1.において述べたとおり、明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 2-3.むすび したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.本件発明 以上のとおりであるから、訂正後の本件請求項1?11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明11」という。)は、訂正された本件明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。 「【請求項1】 澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより得られることを特徴とする、生分解性シート。 【請求項2】 請求項1に記載の生分解性シートにおいて、該オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有することを特徴とする、生分解性シート。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の生分解性シートを、加熱し真空成形または圧空成形することにより得られることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項4】 請求項3に記載の生分解性成型品において、該生分解性シートの厚みは、0.2?0.8mmであることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項5】 請求項3又は4に記載の生分解性成型品において、該成型品は、機械的強度を高めるための溝及び/又は突起が設けられていることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項6】 請求項3乃至5のいずれかに記載の生分解性成型品において、該生分解性成型品が、澱粉質を養分とする菌を含む食品を収容する容器であることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項7】 澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより生分解性シートを得ることを特徴とする、生分解性シートの製造方法。 【請求項8】 請求項7に記載の生分解性シートの製造方法において、該澱粉樹脂は、澱粉質を70重量%以上となるように、澱粉質及びオレフィン樹脂を混練し、当該混練物を押出成形した後、裁断することにより原料ペレットを形成し、該原料ペレットを乾燥させたものであることを特徴とする、生分解性シートの製造方法。 【請求項9】 請求項8に記載の生分解性シートの製造方法において、前記原料ペレットの乾燥は、原料ペレットの水分含有量が2重量%以下となるように乾燥させることを特徴とする、生分解性シートの製造方法。 【請求項10】 請求項1又は2に記載の生分解性シートを少なくとも1枚積層させ、該シートを加熱して軟化させ、次いで軟化した状態のシートを真空型抜きまたは圧空型抜きをすることにより生分解性成型品を形成することを特徴とする、生分解性成型品の製造方法。 【請求項11】 請求項10に記載の生分解性成型品の製造方法において、真空型抜きまたは圧空型抜きに利用するメス金型の温度は、20?70℃に設定されることを特徴とする、生分解性成型品の製造方法。」 4.請求人の主張 請求人は、審判請求書、平成20年10月2日付け弁駁書、同年12月17日付け口頭審理陳述要領書及び平成21年1月15日付け上申書において、特許第3832668号の請求項1?11に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、証拠方法として以下の甲第2号証の1、甲第2号証の2及び甲第3?11号証を提出し、次の無効にすべき理由を主張している(第1回口頭審理調書参照)。 4-1.無効にすべき理由 <無効理由1> 本件請求項1?11に係る発明は、甲第2号証の1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 <無効理由2> 本件請求項1?11に係る発明は、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 <無効理由3> 本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 <無効理由4> 本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 <無効理由5> 本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 4-2.証拠方法 甲第2号証の1:国際公開第01/51557号 甲第2号証の2:特表2003-519708号公報(甲第2号証の1に 係る国際特許出願について、特許庁長官に提出された翻 訳文の国内公表公報) 甲第3号証:特開平8-150658号公報 甲第4号証:特表平8-507101号公報 甲第5号証:プラスチック加工技術便覧編集委員会編、「プラスチック加 工技術便覧(新版)」、第3版、日刊工業新聞社、昭和51 年9月20日、p.638-641 甲第6号証:村上健吉監修、「押出成形」、第7版、株式会社プラスチッ クス・エージ、1985年12月10日、p.64-68 甲第7号証:特開平6-91747号公報 甲第8号証:特開平1-283123号公報 甲第9号証:特開昭58-168522号公報 甲第10号証:特開平2-14228号公報 甲第11号証:「コンバーテック」、株式会社加工技術研究会、2003 年3月15日、第31巻、第3号、p.22-27 5.甲第2号証の1及び甲第3?11号証の記載事項 請求人が提出した甲第2号証の1及び甲第3?11号証には、以下の事項が記載されているものと認める。 5-1.甲第2号証の1 ここで、摘示内容及び摘示箇所の特定は、甲第2号証の2の対応箇所を用いたものである。 (甲2の1ア) 「【請求項19】 熱可塑性デンプン組成物であって、 溶融状態でかつ冷却前に水分量が約5重量%より少ない熱可塑性デンプン溶融物を形成するための条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相、ここで前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合、約1バールより小さい蒸気圧を有し;かつ 前記熱可塑性相中に分散し、かつ前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で含有される固体粒子充填剤相; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物。 【請求項22】 前記可塑化剤が、前記デンプンおよび可塑化剤の約1から約70重量%の量で含有される請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項28】 前記デンプンが、コーン、ワックスコーン、ポテト、小麦、サトウモロコシ、米、もち米、タピオカ、カッサバ、マニオカ、さつまいも、クズウコン、およびサゴヤシの樹心からなる群から選択される少なくとも1種の原料に由来する、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項32】 前記熱可塑性デンプンが、約3重量%より少ない水分量に予備乾燥された天然のデンプンから形成される、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項33】 前記熱可塑性デンプン溶融物が、溶融状態でかつ冷却前に約3重量%より少ない水分量を有するための条件下で形成される請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項34】 前記熱可塑性デンプン溶融物が、溶融状態でかつ冷却前に約1重量%より少ない水分量を有するための条件下で形成される請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項35】 前記粒子状充填剤が、前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約50容量%の量で含有される、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項42】 前記熱可塑性相が、前記熱可塑性デンプンとブレンドされた少なくとも1種の付加的な熱可塑性ポリマーをさらに含有する、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項52】 前記付加的な熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン、アルキルシロキサン、ポリオレフィンアジピン酸、ポリオレフィンテレピハレート(teraphyhalates)、エチレン-リニル(rinyl)酢酸コポリマー、ビニル樹脂、ポリスチレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項42記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項55】 熱可塑性デンプン対付加的な熱可塑性ポリマーの比が、約1:9から約9:1の範囲である、請求項42記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項79】 前記熱可塑性デンプン組成物が所望の製品に成形可能な溶融材料の形態で存在し、その後その融点または溶融範囲以下に冷却することにより実質的に固化される、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項80】 前記熱可塑性デンプン組成物が、熱可塑性材料として再溶融可能でありかつ所望の製品に再成形可能な、固化された顆粒形態または他の中間体の形態で存在する請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項81】 前記熱可塑性デンプン組成物が、約1ミクロンから約1mmの範囲の厚さを有するフィルムから構成される、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項82】 前記熱可塑性デンプン組成物が、約0.001mmから約1cmの範囲の厚さを有するシートから構成される、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項83】 前記熱可塑性デンプン組成物が、約0.1mmから約10cmの範囲の壁厚を有する成形品から構成される、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項84】 前記熱可塑性デンプン組成物の少なくとも熱可塑性相が生物分解性である、請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項91】 前記熱可塑性デンプン組成物が約100から約200℃の範囲の融点を有する請求項19記載の熱可塑性デンプン組成物。 【請求項93】 請求項19記載の前記組成物から形成される製品。 【請求項95】 熱可塑性デンプン組成物を製造する方法であって、 前記熱可塑性相が、熱可塑性デンプン溶融物を形成する条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱し、かつ少なくとも1種の付加的な熱可塑性ポリマーを前記熱可塑性デンプン溶融物とブレンドすることにより、形成される、熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相を形成する工程;および 前記熱可塑性デンプン組成物の約15重量%より多い量で前記熱可塑性相中に固体粒子状充填剤を分散する工程; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物製造法。 【請求項96】 熱可塑性デンプン組成物を製造する方法であって、 溶融状態でかつ冷却前に約5重量%より少ない水分量を有する熱可塑性デンプン溶融物を形成する条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相を形成する工程、ここで、前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合約1バールより小さい蒸気圧を有し;および 前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で前記熱可塑性相中に固体粒子状充填剤を分散する工程; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物製造法。」(特許請求の範囲の請求項19、22、28、32?35、42、52、55、79?84、91、93、95及び96) (甲2の1イ) 「市販の熱可塑性材料としての「分解されたデンプン」の使用は多くの理由のために制限される。その理由としては、例えば、製法の困難さ、不都合な長期間、機械特性、周囲水分のバラツキに対する高感受性、寸法安定性の悪さ、分解されたデンプンと、水分のバラツキに対して感受性のより低いより疎水性ポリマーとの均一なブレンドを形成する困難さ等である。「分解されたデンプン」および分解されたデンプンと他のポリマーとのブレンドの製造を開示した特許の例としては、Wittwerらの米国特許第4673438号、Sachettoらの米国特許第4,900,361号、Layらの米国特許第5,095,054号、Tokiwaらの米国特許第5,256,711号、Bahrらの米国特許第5,275,774号、Steptoらの米国特許第5,382,611号、Steptoらの米国特許第5,405,564号、Wittwerらの米国特許第5,427,614号等がある。「分解されたデンプン」および他のポリマーのブレンドを含む、「分解されたデンプン」組成物を製造する組成物および方法を開示するために、前記特許を参照して取り込む。 デンプン中に固有に見いだされる水を、デンプンがその分解温度より低温で熱可塑性溶融物を形成可能な、適当な低揮発性の可塑化剤(例えば、グリセリン、ポリアルキレン、オキシド、グリセリンのモノ-およびジ酢酸塩、ソルビトール、他の糖アルコールおよびクエン酸等)で置換することにより、デンプン溶融物中の水の量を多量に減少することが好ましいことが開示されている。これにより、製造性、より高い機械的強度、より良好な機械強度、より良好な長期にわたる寸法安定性、およびデンプン溶融物と他のポリマーとのブレンドの高い容易性が「分解されたデンプン」に比較して改良される。水の殆どまたは全てが工程前または工程中のいずれかにおいて低揮発性の可塑化剤により置換された、熱可塑性デンプン材料は、「熱可塑性的に処理されたデンプン」および「熱可塑性デンプン」等種々に言われる。 水は、天然に含まれる水分量の少なくとも一部を除去するために、予備乾燥されたデンプンを使用することにより、処理前に除去可能である。あるいは、水は、排水または脱気手段を備えたエクストルーダー等を使用することにより、溶融混合物を脱気または排水することにより、工程中に除去できる。熱可塑性デンプンおよび他のポリマーのブレンドを含む、熱可塑性的に処理されたデンプンの製造法を開示した特許の例としては、Tomkaらの米国特許第5,362,777号,Tomkaらの米国特許第5,314,934号,Tomkaらの米国特許第5,280,055号,Tomkaらの米国特許第5,415,827号,Lorcksらの米国特許第5,525,281号,Tomkaらの米国特許第5,663,216号,Tomkaらの米国特許第5,705,536号,Lorcksらの米国特許第5,770,137号,Tomkaらの米国特許第5,844,023号等がある。熱可塑性デンプン組成物、そのブレンド、およびそれから製造される製品の製法および組成物を開示する目的で、前記特許を参照してここに取り込む。」(段落【0015】?【0017】) (甲2の1ウ) 「水または他の可塑化剤を使用してデンプン溶融物を形成するか否かに関わらず、全ての分解されたかつ熱可塑性デンプン材料は市場において制限された。その理由はデンプン溶融物の固有の機械的制限およびその比較的高いコストのためである。多くの人々が何年間も、環境的に健全なポリマーであると同時に所望の機械的およびコスト基準を満たす、「完全な」デンプン/ポリマーブレンドの発見を試みたが、未だ達成されていない。この理由は、最適な合成ポリマーまたは合成ポリマーの混合物、および他の混合剤を見いだし、これにより、前記デンプン/ポリマーブレンドの特性を「最適化」することを強調したためである。一つの欠点は、合成ポリマーおよび他の混合剤の殆どがデンプンより高価であり、デンプン溶融物に比べてこのようなポリマーブレンドのコストが高くなる傾向にあることである。また、別の欠点は、このような添加剤が、材料科学の観点から見た場合、デンプン/ポリマーブレンドの機械特性を少し変えることができるに過ぎないことである。 熱可塑性デンプンブレンドと関連する固有の経済的制限にも関わらず、研究者の焦点は、「完全な」デンプンポリマーブレンドを得られる「完全な」熱可塑性ポリマーまたは他の混合剤を見いだすことをゴールとすることに固執していた。天然に存在するミネラル材料等の非常に安価な充填剤を具体的な他の構造材料に添加するが、分解されたまたは熱可塑性デンプン系内の安価な充填剤としてこれらを使用することは大いに無視されてきた。前記Tomkaの米国特許第5,362,777号は無機充填剤の混入を開示するが、このような充填剤成分は、3重量%またはそれ以下の濃度に制限される。同様に、Wittwerらの米国特許第5,427,614号は、1%またはそれ以下の濃度を有する無機「組織化(texturizing)剤」の使用を開示する。このような低濃度では、無機充填剤は、開示された熱可塑性または分解されたデンプン材料のコストや機械的特性への影響が少ない。」(段落【0019】?【0020】) (甲2の1エ) 「本発明の熱可塑性デンプン組成物を製造するために使用される原材料として、1種またはそれ以上のデンプン誘導体も使用されるが、天然で糊化しないデンプン顆粒を単独でまたは天然のデンプンと組み合わせて使用する。天然のデンプン顆粒は、デンプン溶融物を形成するための適当な可塑化剤の存在下で混合かつ加熱することにより熱可塑性にされる。その後、デンプン溶融物は1種またはそれ以上の非デンプン材料とブレンドされ、特性の改良と得られる熱可塑性デンプン組成物のコスト低減が図られる。最小限には、粒子状充填剤成分が前記デンプン溶融物とブレンドされる。」(段落【0031】) (甲2の1オ) 「得られた熱可塑性デンプン組成物は押出されるか、適当なサイズのビーズ、顆粒、または他の貯蔵可能なかつ供給可能な材料に形成されるか、あるいは、直ぐに、シート、フィルム、または成形品等の所望の製品に成形される。多くの場合、プラスチック産業で通常使用される装置および方法を使用でき、少しの変更、あるいは全く変えるこなく使用される場合もある。 溶融熱可塑性デンプン組成物は、その軟化点または融点以下に冷却されて固化する。「軟化点」または「融点」は、その温度または温度範囲以上の温度で、粒子状熱可塑性デンプン組成物が所望の形状に成形できるように十分に可塑性をもち、流動可能になる温度または温度範囲で、その温度以下ではほぼ安定し自己支持可能な状態に固化する温度をいう。可塑化剤または他の混合剤の量は、約40℃より高い軟化または溶融温度を有する熱可塑性デンプン組成物を生じるように調製される。好ましくは、軟化点または融点は約60から約240℃の範囲にある。より好ましくは、軟化点または融点は約80℃から約220℃の範囲にあり、もっとも好ましくは約100℃から約200℃の範囲にある。」(段落【0033】?【0034】) (甲2の1カ) 「一般に、無機充填剤は、熱可塑性デンプン組成物の約5から約90容量%という広範な範囲で本発明の熱可塑性デンプン組成物に含まれる。無機充填剤の比重に応じて、充填剤を本発明の熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の範囲の量で含むことができる。熱可塑性デンプン組成物のコストを大いに減少する充填剤について、無機充填剤は好ましくは熱可塑性デンプン組成物の約15重量%より多い量で含まれ、より好ましくは約25重量%より多い量で、さらに好ましくは、約35重量%より多い量で、最も好ましくは、約50重量%より多い量で含まれる。」(段落【0038】) (甲2の1キ) 「前記熱可塑性デンプン組成物を製造した場合、ビーズ、顆粒、または他の適当な形状で貯蔵することが可能である。熱可塑性デンプンビーズ、顆粒等、または本発明にしたがって新たに調製された熱可塑性デンプン組成物のバッチは、熱可塑性物および他の材料を成形するために当業界で既知の従来の成形手段を使用して成形可能である。これは、非制限的に、ダイプレスモールド、射出成形、ブロー成形、真空形成、ローリング、押出、フィルムブローイング、積層、コーティング等を例示可能である。」(段落【0048】) (甲2の1ク) 「本発明の利点は、・・・環境にやさしいシート、フィルム、それから得られる製品、および、・・・プラスチック、金属シート等に類似した適当な機械的特性を有する成形品である。別の利点は、このような熱可塑性デンプン組成物から、紙、ポリマーフィルム、または成形可能なプラスチック材料から製品を成形するのに現在使用される製造装置や方法を使用して、多種の容器や他の製品を成形できることである。別の利点は、より高価なデンプンをより安価な充填剤で置換することから得られるコストの削減である。本発明の製品は容易に生物分解可能であり、地球上に普通に見いだされる物質に分解可能であり、・・・物理的特性を従来対比改良するように設計できる。 本発明のこれらの特徴は以下の具体的な説明からより明らかとなる。 発明の実施の形態 I. 導入および普遍的な規定 本発明は、少なくともデンプン、可塑化剤、および無機ミネラル充填剤を含む熱可塑性デンプン組成物を包含する。・・・無機充填剤を含有した熱可塑性デンプン組成物は、従来の熱可塑性材料に類似した多種の製品に成形可能である。」(段落【0050】?【0052】) (甲2の1ケ) 「熱可塑性デンプン組成物は、・・・従来の熱可塑性材料や紙材料の製品に類似した特性の、フィルム、シート、成形品等の、種々の生成物に成形可能である。・・・フィルムおよびシートは、切断可能であり、種々の容器や他の製品に形成できる。本発明に熱可塑性デンプン組成物およびそのシート、フィルム、成形品は、ファーストフード産業で使用されるような使い捨て容器や他の包装材料の大量製造において特に有益である。」(段落【0059】) (甲2の1コ) 「明細書及び与えられた特許請求の範囲で使用されている「熱可塑性デンプン組成物」の語は、いずれの熱可塑性組成物、又は構成として熱可塑性デンプンを有する混合物を含め広く定義される。本発明の内容の範囲において「熱可塑性デンプン組成物」の語の唯一の他の限定は、熱可塑性相を通じて拡散した分離相としての充填剤成分であろう。それゆえ、「熱可塑性デンプン組成物」の語は、後述する充填剤を含むそれらの熱可塑性デンプン材料に限定される。充填剤成分は、有機充填剤、無機充填剤、又は両者を含むことができる。その広い意味において、「充填剤」の語は、繊維性の材料及び粒子状の粒子の両方を含むことができる。熱可塑性デンプン組成物は、熱可塑性相の性質を変えるために他のポリマー材料、架橋剤、相メディエイター、軟化剤、湿潤剤、及び所望の性質を最終熱可塑性デンプン組成物に与えるため他の混合物も選択的に含むことができる。 天然のデンプンは、それ自身、又は充填剤との組み合わせたそれら自身で熱可塑性材料として作用することが一般にできないので、デンプン溶融組成物は、デンプンが熱可塑性に振舞うように引き起こすことができるある種の開始剤をさらに含むと一般に理解されるであろう。全熱可塑性デンプン組成物から熱可塑性デンプン成分を識別するために、「熱可塑性デンプン」又は「熱可塑性デンプン組成物」の語は、熱可塑性溶融物からなる全熱可塑性デンプン組成物の分画をいう。「デンプン溶融物」の語は、溶融した状態のデンプン、及び予め溶融を経たがついで固化したデンプンを広く含むであろう。したがって、「デンプン溶融物」の語は、可塑剤の存在下においてデンプンを溶融することによって元来形成することができる、溶融又は固体状の熱可塑性の処理可能ないずれのデンプン材料と同義であろう。 熱可塑性デンプン組成物の溶融温度で1barより低い蒸気圧を有する低揮発性可塑剤(例えば、グリセリン及びソルビトール)及び溶融温度で1barより高い蒸気圧を有する揮発性溶媒(例えば、水)は、「可塑剤」及び「溶融開始剤」の一般的分類の範囲である。 熱可塑性デンプン組成物は、好適に均質に混合した、少なくとも2つの分離した相、すなわち、熱可塑性相、固体充填剤相、及び他の選択相の混合物であるが、異質である。熱可塑性相は、典型的には、デンプン、可塑剤、及び選択的に1又はそれ以上のポリマー組成物、本質的に単一相を構成するように、デンプンと十分に混合又は拡散させることができる液体を含むであろう。同種材料、又は疎水性及び親水性熱可塑性相の異種混合物のいずれかの熱可塑性相は、上述の温度、温度範囲、又は一連の温度及び温度範囲へ加熱することによって溶融物を形成し、十分冷却したときに再度固化することが一般に可能であるという特徴を有する。そのとき、熱可塑性相は、まず溶融し、他の成分又は相とともに結合するために再固化することができる。 他方、固体充填剤相は、典型的には、多数の独立した粒子、又は溶融物を形成するために相変化を一般に経ない熱可塑性を通じて拡散した繊維からなるであろう。代わりに、充填剤相は、連続熱可塑性相を通じて及び中に散在した分離不連続固体相として残存するであろう。充填剤が熱可塑性相と相互作用することもまた可能であるが、充填剤は、共に成分を混合する際に一般に役立たない。固体充填剤相は、典型的には、無機粒子などの分離した粒子を含む。 他の分離した相は、無機又は有機繊維のいずれかを含む繊維相、無機粒子を含む無機充填剤相、及び、いくつかの理由のためにその相の一部であると考慮されるので熱可塑性相と実質的に混合しない固体、ゲル、液体又は気体であるかもしれない他の有機、又は無機材料を含むことができる。熱可塑性デンプン組成物中のいずれかの相内で各材料は、全材料へ特有の性質を与えるように選択することができるので、コスト、強度、耐久性、分解性、エステティック要求、密度、柔軟性などの、与えられた性能基準に基づく特定用途に最良に適する熱可塑性デンプン材料を微構造的に処理することも可能であろう。 B.熱可塑性デンプン組成物から製造されるシーツ、フィルム、容器及び他の製品 本明細書及び与えられた特許請求の範囲で使用する「シーツ」の語は、ここで述べた熱可塑性デンプン組成物及び方法を使用して製造した、実質的に平らで、波形、カーブしたもの、曲げたもの、生地状のシートのいずれかを含むことを意図するものである。唯一本質的な組成物限定は、結合マトリックス、又は熱可塑性相は、シート製造工程前又は工程中に熱可塑性デンプン溶融物を形成するために処理されたデンプンを含有することである。シートは、無機コーティング、プリンティング、それに積層する他のシートなどを含むことができる。本発明の範囲内でシートは、シートに与えられる特定の用途に依存して厚さを大きく変化させることができる。シートは、約0.001mmと同じ位薄く、又は1cmと同じ位の厚さより大きくすることができ、強度、耐久性、及び/又はバルクは重要な検討材料である。 「フィルム」の語は、「フィルム」は通常非常に薄いシートを言うことを除き、「シート」と本質的に異なるものではない。フィルムは、シートが通常形成される仕方と異なる工程、シートカレンダーよりむしろフィルムブローイングによってしばしば形成される。一般に、フィルムは、約1ミクロンほどの小さいものから約1mmまでの厚さを有するシート状製品として定義されるであろう。「成形した製品」の語は、熱可塑性材料用の公知の技術のいずれの成形方法を使用して熱可塑性デンプン組成物から直接的に、又は間接的に形成される製品を言う。中間体シートを溶融及び除去することによって形成された製品は、この定義の範囲内で「「成形用金型」である。 「改装した製品」の語は、シート、フィルム、完全に再溶融処理することなしに、熱可塑性デンプン組成物から作られる他の製品を言う。「改装した製品」の例は、本発明の熱可塑性デンプン組成物から形成されたシートを切断し、曲げ、その後接着することによって作られた箱である。もちろん、いくつかのスポット接着剤を、別の接着剤を適用することなしに、熱可塑性シートをそれ自体に、又は別のシート又は製品に接着することもできる。 本明細書及び与えられた特許請求の範囲に使用するような「容器」の語は、(限定されないが、食品及び飲料製品を含め)種々のタイプの製品又は対象物を貯蔵、分配、梱包、割り当て、出荷するために使用する、いずれの製品、容器、うつわを含むことを意図する。このような容器の具体的な例は、以下に詳細に明らかにされ、その他の内、ボックス、カップ、「クラムシェル」、ジャー、ボトル、皿、ボウル、トレイ、カートン、ケース、クレイト、シリアルの箱、冷凍食品ボックス、ミルクカートン、バッグ、サック、飲料容器用キャリアー、食器、卵カートン、ふた、ストロー、エンベロープ、又は他のタイプのホルダーを含む。 一体的に形成された容器に加えて、容器と組み合わせて使用される梱包製品も「容器」の語内に含まれることを意図する。このような製品は、例えば、ふた、ライナー、ストロー、パティーション、ラッパー、クッション材料、家庭用品カバー、及び容器内の対象を梱包、貯蔵、出荷、割り当て、提供、処方する際に使用する他のいかなる製品を含む。 本発明の熱可塑性デンプン組成物(容器、フィルム、印刷した材料、そこで製造した他の製品)の利点は、それらの処分は、紙、ペーパーボード、プラスチック、ポリスチレン、ガラス、又は金属製品よりずっと少ない環境への影響を与えることである。本発明のシート及び製品は、両方ともリサイクルが容易であり、たとえリサイクルしなくとも、湿気、圧力、他の環境力へ地球の成分に補完的な成分をさらしたとき、容易に分解及び混合するであろう。デンプン成分は、水にゆっくりと溶融し、その後、微生物作用によって迅速に分解されるであろう。多くの合成ポリマーも、再分解可能である。有機充填剤及び繊維も生分解可能であり、紙と比較して着手するよりより低い量で含まれる。無機充填剤は、不活性で、徐々に地球と適合するであろう。 II相及び成分 A. 熱可塑性相 「相」及び「複数の相」の語は、本発明の熱可塑性組成物との関係で使用したとき、熱可塑性デンプン組成物内で、分離した相、又は合成的な不連続をいう。「物理的な状態」の語は、材料が気体、液体、又は固体のいずれかを言うのに使用する。 「熱可塑性相」の語は、その可塑性又は流動又は再形成する能力が温度の作用として変化するので、そのように定義される。徐々に加熱したとき、それは流れ、十分に冷却したとき、それは実質的に固化する。熱可塑性相は、その溶融温度又は軟化範囲以下に十分に冷却したとき、実質的に固体状態であり、溶融温度又は軟化範囲を超えて加熱したとき、実質的に液体又は半液体状態であろう。一般に、全熱可塑性デンプン組成物がプラスチックであるか固体であるかは、そこに分散した他の相ではなく熱可塑性相の物理的状態によって決定される。したがって、熱可塑性相を加熱してプラスチック性になったとき、全熱可塑性デンプン組成物は、たとえそれが固体粒子又はそこで分離した繊維を含んでいるかもしれないとしても、所望の製品に形成されるように実質的にプラスチックのようにそれ自身振舞うであろう。同様に、熱可塑性相をそれが再固化するように後で十分に冷却したとき、流動可能な液体が実質的に固化組成物内でカプセル化されて残存することができるが、全熱可塑性組成物は、流動可能な材料よりむしろ固体として振舞うであろう。」(段落【0068】?【0078】)) (甲2の1サ) 「熱可塑性相は、一般に熱可塑性デンプン組成物の重量%で約10%?約95%、好ましくは約10%?約90重量%、より好ましくは焼く20%?80重量%、最も好ましくは30%?70重量%からなるであろう。熱可塑性デンプン及び他のポリマーサブ相の相対的濃度は、以下に述べる。」(段落【0082】) (甲2の1シ) 「天然のデンプンに自然に結合した水のいくつか、又は実質的にすべてを除去するために予め乾燥したデンプンを使用することは特に有利かもしれない。一般に、天然非修飾デンプン顆粒は、約10‐20重量%の水を含むであろう。・・・天然の顆粒状態中にデンプンを予め乾燥することが望ましいかもしれない場合、水含有量をデンプン顆粒の約10重量%未満、より好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約3重量%未満に減少させることが好ましい。 ・・・プロセス中に発散、又は脱ガスによる蒸発によってデンプン溶融物から水の実質的な部分を、好ましくは、デンプンの約5重量%未満の濃度へ、より好ましくは約3重量%未満へ、最も好ましくは約1重量%へ冷却、及び再固化前に除去することが適当かもしれない。 ・・・熱可塑性相が、その語を上で定義したように「デンプン溶融物」の100%を含むことが好ましい。それらの例において追加の熱可塑性ポリマーを含む場合、デンプン溶融物は、熱可塑性相の約10%?約90重量%の範囲の濃度、より好ましくは約20%?約80重量%。最も好ましくは、約30%?約70重量%の範囲が好ましい。」(段落【0088】?【0090】) (甲2の1ス) 「本発明の目的のためには、「熱可塑性デンプン」、「熱可塑性デンプン組成物」及び「熱可塑的に処理可能なデンプン」という用語は、デンプン融解物を形成するために低揮発性及び揮発性可塑剤の両者を含む組成物を含むものと解されるべきである。」(段落【0097】) (甲2の1セ) 「一般的に低揮発性可塑剤は、デンプンの約1重量%から約70重量%、より好ましくは約5重量%から50重量%、そして最も好ましくは約10重量%から約30重量%の範囲内の濃度を有するであろう。」(段落【0100】) (甲2の1ソ) 「3.付加的なポリマー 得られる熱可塑性化合物の性質を改善するために、多くの場合、熱可塑性相の中に一つ又はそれ以上の不可的なポリマーを含むことは望ましい。」(段落【0104】) (甲2の1タ) 「デンプンと反応するかもしれない又は反応しないかもしれない他のポリマーが多種存在するが、それでもなお本発明の範囲内で使用することができる。これらにはポリオレフィン、・・・熱可塑性合成樹脂と生分解性脂肪族ポリエステルから得られたコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートコポリマー・・・、及びそのポリマーが熱可塑性デンプン亜相とブレンドされることを許容するであろう温度で熱可塑的に加工することができる、ほとんど任意のコポリマーが含まれる。」(段落【0113】) (甲2の1チ) 「一つ又はそれ以上の付加的な熱可塑性ポリマーが熱可塑性相に含まれている場合には、その一つ又はポリマーは総計として熱可塑性相の、好ましくは約10重量%から約90重量%の範囲内の濃度、より好ましくは約20重量%から約80重量%の範囲内の濃度、そして最も好ましくは約30重量%から約70重量%の範囲内の濃度を有する。」(段落【0119】) (甲2の1ツ) 「本発明の熱可塑性デンプン組成物内の粒子充填剤の濃度は、熱可塑性デンプン組成物の約5重量%ほどの低いものから約90重量%ほどの高いものまで広範な範囲で含むことができる。」(段落【0144】) (甲2の1テ) 「熱可塑性相の性能が、製造される製品の要求される性能基準のために、有力となることが望まれる場合、無機充填剤は、熱可塑性デンプン組成物の約5%?約50重量%の範囲での量で含まれることが好ましい。」(段落【0145】) (甲2の1ト) 「III. 熱可塑性デンプン組成物およびそれから得た物品の製造 A.溶融熱可塑性デンプン組成物の形成 本発明による熱可塑性デンプン組成物を製造するために、まず熱可塑性デンプン組成物の熱可塑性溶融物を作る必要がある。本発明による熱可塑性デンプン組成物を製造する好適な方法は、(1)デンプン組成物が熱可塑性を示すようにして、初期熱可塑相を形成し、(2)随意に1種以上の付加的ポリマーおよび/または他の材料をデンプン溶融物と混合して、多成分熱可塑相を形成し、(3)無機充填剤相、随意的繊維相および他の随意的固体相を含む固体相を熱可塑相に混合し、(4)随意的に空隙相を形成し、(5)溶融状態の熱可塑性デンプン組成物を成形し、および(6)溶融デンプン組成物を軟化点または軟化領域より低い温度に冷却することにより、固形物品を形成することを含む。前記の手順は、例示的なものであって、限定的なものではない。得られる熱可塑性デンプン組成物が所望の特性を有する限り、成分を任意の順序で相互に混合することができる。さらに、組成物をビーズ状に凝固させ、所望の物品に最終成形する前に再溶融することができる。」(段落【0181】) (甲2の1ナ) 「デンプンおよび可塑剤成分の両者の種類および濃度により、広範な温度範囲で溶融デンプン材料を作ることができる。一般に、デンプンに対する可塑剤の比を増やすことにより、デンプン/可塑剤混合物が溶融する温度が低下する傾向がある。逆に、可塑剤に対するデンプンの比を増やすと、デンプンが溶融する温度が増大する傾向がある。デンプンおよび可塑剤の最適比の選択は、所望の溶融温度、溶融デンプン溶融物の所望のレオロジー、熱可塑デンプン組成物の所望の最終特性を含む、多数の要因により決まる。・・・ 前記の観点からは、本発明の範囲内のデンプン/可塑剤混合物は、好ましくは約70?約240℃の範囲の温度(または温度範囲)、より好ましくは約80?約220℃の範囲、および最も好ましくは約100?約200℃の範囲で溶融物を形成することが好ましい。」(段落【0184】?【0185】) (甲2の1ニ) 「デンプンと他の成分との間の縮合反応の進展を助長するために、熱可塑相溶融物中の水の量を最小限とすることが好ましい。前記のとおり、これを行う好適な方法は、予備乾燥して、天然デンプン内で固有に結合している水の相当部分、典型的には約10?20%を除去したデンプンを用いることである。予備乾燥デンプンの含水率は、デンプンに対する重量比で、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満、および最も好ましくは約3%未満である。」(段落【0191】) (甲2の1ヌ) 「処理中に熱可塑性デンプン組成物を脱気または換気することにより水を除去する場合には、溶融状態で、デンプン、可塑剤および水の含量を合わせた量の好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約3重量%、および最も好ましくは約1重量%未満の水を組成物が含むように水を除去することが好ましい。」(段落【0193】) (甲2の1ネ) 「B.溶融した熱可塑性デンプン組成物の成形 熱可塑性デンプン組成物が溶融状態になると、プラスチック材料の分野で公知の任意の成形手段を用いて熱可塑性デンプン組成物を非常に広範な物品に成形することができる。さらに、セラミック等の他の材料を形成するのに用いられる多くの成形法を変更して、熱可塑性デンプン組成物、特に無機充填剤の含量が比較的高い熱可塑性デンプン組成物の成形に使うことができる。 多くの場合、まず初めに形成した熱可塑性デンプン組成物をダイから押し出して押出し素線を形成し、これを水浴中で冷却し、次いで個々の小片に切り刻むことにより、熱可塑性デンプン組成物を粒またはビーズに形成する。このような小片を保存し、輸送し、次いで所望により広範な物品の製造に使用する。または、溶融した熱可塑性デンプン組成物を直ちに所望の最終物品に成形することができる。」(段落【0202】?【0203】) (甲2の1ノ) 「本発明の熱可塑性デンプン組成物を所望の物品に形成するのに適当な成形方法は、ブロー成形、膜ブローイング、射出成形、ダイプレス成形、シートを形成するための圧延またはカレンダ加工、シートおよび膜の真空成形を含む真空成形、押出し、ホットプレス、ラミネート、コートおよび実質的に任意の他の公知の成形方法を含む。」(段落【0205】) (甲2の1ハ) 「C.形成後処理 本発明の熱可塑性デンプン組成物から適当な物品が形成されると、これをさらに処理して、所望の機械的または物理的特性を得る。成形後処理は、シートから容器または他の物品を形成する等の、ある物品から別のものへの転換、再溶融、被覆、シートの1軸および2軸伸展、1枚以上の他のシートまたはフィルムを用いたラミネーション、波形成形、シボ寄せ、パーチメント、シートの折り腺付けおよび穴あけ、印刷、膨張および実質的に全ての公知の形成後処理を含む。」(段落【0210】) (甲2の1ヒ) 「D.熱可塑性デンプン組成物から作った物品 本発明の熱可塑性デンプン組成物に微細構造的に設計することのできる広範な特性により、現在のところプラスチック、紙、ボール紙、ポリスチレン、金属、セラミクス等の材料で作られている広範な最終物品を作ることができる。例としては、以下の例示的物品を作ることができる。膜、袋、使い捨てまたは使い捨てではない食品または飲料用容器を含む容器、シリアルの箱、サンドイッチ容器、「貝殻」型容器(ハンバーガー等のファーストフードサンドイッチに用いるヒンジ付容器を含むが、これに限定されない。)、飲用ストロー、プラスチック袋、ゴルフのティー、ボタン、ペン、鉛筆、定規、カセットテープ箱、CD容器、カセットテープ、名刺、おもちゃ、工具、ハロウィーンのマスク、建築用品、冷凍食品箱、牛乳カートン、果汁カートン、ヨーグルト容器、飲料運搬容器(巻付きバスケット型運搬容器、および「6パック」円状運搬容器を含むが、これに限定されない。)、アイスクリームカートン、カップ、フライドポテト容器、ファーストフードの持帰り容器、包装紙等の包装材料、緩衝材、スナック菓子用袋等の可撓性容器、買い物袋等の一端が開いた袋、乾燥シリアル箱等の箱の中袋、多層袋、サック、巻付きケーシング、カバー(特に、昼食等の食料品、事務用品、化粧品、金物、およびおもちゃに取り付けられるプラスチックカバー)を用いて展示される製品の支持カード、コンピュータチップ基板、製品(クッキーおよびキャンディーバー等)を支持するための支持トレー、およびラップ(冷凍庫ラップ、タイヤラップ、精肉店ラップ、肉ラップおよびソーセージラップを含むが、これに限定されない。);ボール紙箱、タバコの箱、菓子箱および化粧品用の箱等の多様な箱;種々の製品(冷凍濃縮ジュース、オートミール、ポテトチップ、アイスクリーム、塩、洗剤および自動車油等)用の回旋または螺旋に巻いた容器、郵送用円筒、材料(包装紙、布材料、ペーパータオルおよびトイレットペーパー等)を巻くためのシートチューブ、およびスリーブ;本、雑誌、カタログ、封筒、粘着テープ、葉書、3つ穴バインダー、ブックカバー、ホルダーおよび鉛筆等の印刷物および事務用品;皿、蓋、ストロー、カトラリー、ナイフ、フォーク、スプーン、ビン、ジャー、ケース、クレート、トレー、調理用トレー、ボール、電子レンジ用ディナートレー、「テレビ」ディナートレー、卵容器、肉包装皿、使い捨て皿、販売皿、パイ皿、および朝食皿、緊急嘔吐物入れ(すなわち嘔吐袋)、実質的に球状物体、おもちゃ、医療用バイアル、アンプル、動物用檻、花火の外殻、模型ロケットエンジン外殻、模型ロケット、被覆、ラミネートおよび果てしない多様な他の物品。」(段落【0213】) (甲2の1フ) 「IV.好適な実施態様の例 本発明による熱可塑性デンプン組成物およびその物品を作る組成物および製造条件をより詳細に教示するために、以下の例を挙げる。例には、シート、膜、ペレット、容器、および他の製造物を含む、熱可塑性デンプン組成物を製造するための種々の混合設計および種々の工程を含む。過去形で書かれた例は実際に実施したものである。過去形で書かれた例は、現実には仮説的または予言的であるが、実際に実施した混合設計またはテストに基いている。」(段落【0214】) (甲2の1ヘ) 「実施例13 熱可塑性デンプン組成物を次の成分(重量部で示している)から形成した。 デンプン 100重量部 グリセリン 15重量部 ソルビトール 15重量部 ポリ-ε-カプロラクトン 130重量部 炭酸カルシウム 260重量部 初期水分含量が17重量%である天然ジャガイモデンプンを含むデンプン、グリセリンおよびソルビトールを、温度160?180℃の2軸オーガー押出し機のバレル内で1分間混和し、熱可塑性デンプン溶融物を形成する。この溶融物を脱気して、絶対含水率をデンプンの約5重量%未満、好ましくは約3重量%未満、および最も好ましくは約1重量%未満とする。その後、デンプン溶融物をポリ-ε-カプロラクトン(PCL)とさらに1分間混和し、170℃に加熱して、熱可塑性デンプンとポリ-ε-カプロラクトンとを含む実質的に均質な熱可塑相を形成する。水が約1%未満に低下するにつれ、熱可塑性デンプン(TPS)および(PCL)の少なくとも一部が交差エステル化され、これによりTPS/PCLコポリマーを形成する。TPS/PCLコポリマーにより、残留するTPSおよびPCLがさらに均一に分散する。次に、炭酸カルシウムを熱可塑相溶融物に加え、1分以下混合して、実質的に均質に混和された、無機的に充填された熱可塑性デンプン組成物を形成する。この組成物をダイより押し出し、凝固した素線を形成するために冷却水浴を通って引き出された、材料の連続素線を形成する。次いで、この素線を個々の片に切断する。これらの片を所望により熱可塑工業で公知の成形方法を用いて、種々の物品のいずれかに再形成する。これから作った物品は、約50重量%の炭酸カルシウム、25重量%のポリ-ε-カプロラクトン、および25重量%の熱可塑性デンプンを含む。これらの物品は、適度に堅く、当業で公知の比較的堅いプラスチック物品と同様の特性を示した。」(段落【0240】?【0241】) (甲2の1ホ) 「実施例14?31 実施例13に記載の組成物および方法を繰り返しす。ただし、次の炭酸カルシウム濃度を有する組成物が得られるように熱可塑性デンプン組成物に加える炭酸カルシウムの量を変える。」(段落【0242】) (甲2の1マ) 「 ![]() 」 (段落【0243】の表6) (甲2の1ミ) 「実施例32?36 熱可塑性デンプン組成物を次の成分(重量部で示している)から形成した。」(段落【0245】) (甲2の1ム) 「 ![]() 」 (段落【0246】の表7) (甲2の1メ) 「実施例37 天然デンプンの代わりに、初期含水率が約1重量%未満の予備乾燥デンプンを用いたという点を除いて、実施例13を繰り返す。デンプン、可塑剤およびPCLから形成して得られた溶融物は、過剰な水蒸気を除去するために顕著な脱気を必要としない。」(段落【0248】) (甲2の1モ) 「実施例39?53 熱可塑性ポリマーの一部または全部を1種以上の次の種類のポリマーで置換することにより実施例13?38を変更し、多成分熱可塑相を形成する。」(段落【0250】) (甲2の1ヤ) 「 ![]() 」 (段落【0251】の表8) 5-2.甲第3号証 (甲3ア) 「【請求項1】 澱粉、エチレン-酢酸ビニル系共重合体ケン化物、脂肪族ポリエステル及び可塑剤よりなる樹脂組成物を、環状ダイよりチューブ状に押出すと共に該チューブ内に吹き込まれた気体の圧力により膨張させ、次いでニップロールによって折り畳むというインフレーション製膜法を実施するにあたり、押出し時の樹脂温度を135?150℃、ニップロール通過時のチューブ温度を30℃以下にそれぞれ設定すると共にブロー比(チューブ径/ダイ径)を2以上、かつ引取り比(ダイギャップ/フィルム厚み)/ブロー比(チューブ径/ダイ径)の比を20以下とすることを特徴とするインフレーション製膜法。」(特許請求の範囲の請求項1) (甲3イ) 「澱粉とEVOHとの配合割合は、重量比で80:20?20:80、殊に70:30?30:70とすることが望ましく、澱粉の割合が余りに少ないときは生分解性ないしは崩壊性が損なわれ、一方その割合が余りに多いときは成形物の機械的物性が不足するようになる。ただし用途によっては、上記配合割合から若干はずれても差し支えないこともある。また、脂肪族ポリエステルの配合量は、20?70重量%であり、該ポリエステルの配合量が70重量%を越えるとインフレーション製膜が困難となり、逆に20重量%未満では製膜されたフィルムの耐湿性やヒートシール性の向上が乏しく、更にはフィルムが裂く易くなる傾向にあり、好ましくは30?60重量%である。」(段落【0010】) (甲3ウ) 「本発明においては、上記において環状ダイより押出される樹脂の温度を135?150℃にすることが必要で、具体的には風冷、水冷等が可能な加熱方式のシリンダー(バレル)を装着した押出機を使用して、該シリンダーから押出される樹脂の温度を135?150℃の範囲内になるように加熱ヒーターの温度を調整する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。上記の樹脂温度が135℃未満ではフィルムにゲルが発生し、又逆に150℃を越えるとメヤニが発生してフィルム表面が荒れたり、分解ガスが発生してフィルムに気泡や気泡痕が入って実用的でない。」(段落【0015】) (甲3エ) 「ニップロールに入る直前のフィルムの温度を30℃以下にして該ロールを通過させることが必須で、具体的にはダイ直後のエアリングで20℃の冷風を吹きつけ、さらに該ニップロールの手前に冷却装置を設けて、加熱ブロー延伸されたチューブ状のフィルムを冷却すればよく、該冷却装置の具体例としては、通水冷却可能な冷却ロールを該フィルムと接するようにニップロールの手前に設けて冷却する方法や冷風をフィルムに吹き付けて冷却するエアリングを多段設けて冷却する方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記のフィルム温度が30℃を越えるとフィルムがブロッキングを起こして実用的でなく、好ましくはフィルム温度を15?27℃にするとよい。」(段落【0016】) 5-3.甲第4号証 (甲4ア) 「実施例24: 押出フィルムの調製のために、修飾デンプンと可塑剤との十分な混合が必須であることがわかった。したがって、直径1インチのスクリュー(L/D=14)および2つのオリフィスダイを有する二軸スクリュー押出機を用いてプロピオン化デンプン粉末(実施例1の方法で調製)とトリアセチンとの21bsの80/20重量%の混合物を押出した。この粉末は90℃(領域1:供給)、100℃(領域2)、105℃(領域3)および100℃(領域4:ダイ)の温度で加工し、ペレット化(または粒状化)して、通常の市販プラスチックペレットを連想させる樹脂ペレットを得た。次に、これらのペレットを、8インチフィルムダイおよび3段の冷却ローラーおよびフィルム巻取機を備え、直径1インチのスクリュー(L/D=24)を有する単軸スクリュー押出機を用いて押出した。温度は93℃(領域1:供給)、121℃(領域2)、121℃(領域3)および121℃(領域4:ダイ)であった。冷却ローラーは約18℃で保った。得られたフィルムは透明で柔軟性があり、冷却ロールの速度に依存しながら1?10ミル(1000分の1インチ)の厚みを有していた。本発明に記載の修飾デンプンの耐湿性の結果として、熱可塑性フィルム上に置かれた水の小滴は表面上に玉となって付着したままであった。透明性、柔軟性および耐湿性の同様な観察が実施例22で調製された溶液流延フィルムについて見られた。」(第39頁第13行?第40頁第2行) 5-4.甲第5号証 (甲5ア) 「(2)冷却ロール これはダイから押出された高温溶融樹脂を冷水が循環する金属ロールで冷却固化させるために用いられる。・・・ (a)冷却能力 冷却ロールの冷却能力向上の手段としてつぎの方法があげられる。 (1)冷却ロール表面温度を下げる。 (2)冷却ロール上での接触長さを大きくする(ロール径を大きくするか、あるいはロール数を増す) 空気冷却区間およびロール冷却区間における冷却効果を二、三の仮定を設けて、計算した結果は、図14・21?14・25^(15))に示したとおりである。」(第639頁第7?19行) (甲5イ) 「 ![]() 」(第640頁 図14・23) (甲5ウ) 「 ![]() 」(第640頁 図14・25) 5-5.甲第6号証 (甲6ア) 「2.4.1 概説 押出成形においては樹脂がダイを吐出後,ダイで与えられた形状をほぼそのままに維持しつつ最終的に所要の寸法・形状にフォーミングあるいはサイジングしながら冷却し固化させる工程がある。この工程については押出成形全体から言えば非常に重要であるにもかかわらず理論的な解析が遅れていた分野である。」(第64頁左欄第1?7行) (甲6イ) 「2.4.2 シート シートの冷却では,厚物シートの場合,通常ダイ出口に接近して加熱されたつや付ロールを3本縦に並べたものが採用され,シートは引取りの途中長時間をかけて徐冷することが行われている。薄物になるほどロール温度を下げても差しつかえなく,また加熱されたつや付ロールの数も減らしている。 IKVのMichaeliら^(1))は上記した3本ロールを用いた場合のシートの冷却過程をいわゆる差分法を用いて解析した。モデルとしては図2.85のようなものが用いられた。ここでダイの出口から引取ロール直前にいたるまで境界条件の異なる八つの領域に分けて、シート表面及び内部の温度分布を追跡した。」(第64頁左欄第8?20行) (甲6ウ) 「 ![]() 」(第64頁 図2.85) (甲6エ) 「図2.89はシート上表面及び下表面の温度をダイ出口から領域6まで追跡したものである。」(第64頁右欄第8?9行) (甲6オ) 「 ![]() 」(第66頁 図2.89) (甲6カ) 「シートの厚みを変えて同じく各領域の温度を測ると図2.90のようになる。」(第66頁左欄第3?4行) (甲6キ) 「 ![]() 」(第66頁 図2.90) (甲6ク) 「インフレーションフィルムの冷却は・・・空冷が多いのでここでは空冷の場合について説明しよう。 ・・・ダイ出口から吐出された樹脂膜はバブル内に閉じ込められた空気によって引き伸ばされていわゆるブローアップされる。・・・LDPEとHDPEについてその吐出口付近、フロストライン、ピンチロール、巻取部での慣用される温度を図2.91に示した。」(第66頁左欄第14行?第67頁左欄第4行) (甲6ケ) 「 ![]() 」(第66頁 図2.91) 5-6.甲第7号証 (甲7ア) 「【請求項6】 超高分子量ポリエチレンからなるスリップシートの製造方法法において、超高分子量ポリエチレンに帯電防止剤、柔軟化剤、滑剤、隠蔽剤の少なくとも一種を加えた組成物を押出成形によってシート化し、さらに1軸もしくは2軸延伸することによって厚さが60?150μmで、JIS B0651記載の触針式表面粗さ測定器によって測定した粗さが、カットオフ値0.8mmで測定した中心線平均粗さRaが0.5?4μmで、最大高さRmaxが1?40μmとすることことを特徴とする超高分子量ポリエチレン製スリップシートの製造方法。」(特許請求の範囲の請求項6) (甲7イ) 「押出成形機1のダイス部2から押出されたシート10は、第1ロール3、第2ロール4及び第3ロール5、第4ロール6a、第5ロール6bを介して移動し、冷却ロール7a及び7bを経て、引き取り装置8によって回収される。」(段落【0030】) (甲7ウ) 「次に冷却ロールについて説明する。冷却ロールは、冷却固定されたフィルムを完全に常温まで冷却するためのロールで、通常20?30℃の冷却水によって冷却されている。」(段落【0038】) 5-7.甲第8号証 (甲8ア) 「1.円形ダイスにより押し出しされた溶融樹脂を冷却し、偏平に折り畳まれたチューブ状フィルム製造方法において、折り畳まれた後フィルム速度をそれぞれ個別に設定できるロールA、ロールB、ロールCを設け、ロール速度比B/A、ロール速度比C/Bが、 1.0<B/A<1.2 0.8<C/B<1.0であり、 かつ加熱装置をロールBとロールCの間に設け、フィルム温度のロールB前をT1、加熱装置通過直後をT2、ロールC前をT3とすると、 T1<T2 5<T3<80℃ となる条件を満たす熱可塑性樹脂製チューブ状フィルムの製造方法。 2.第1請求項記載の加熱装置が加熱槽、ロールがニップロール、熱可塑性樹脂がポリオレフィンであり、加熱槽の後に1組み以上の冷却ロールと同ロールへの圧着ロールを設けたチューブ状フィルムの製造装置。 3.第2請求項の装置で作られるポリオレフィン製チューブ状フィルム。」(特許請求の範囲) (甲8イ) 「本発明の製造方法では、加熱装置の後に1組み以上の冷却ロールと同ロールへの圧着ロールを設けことができる。冷却ロールは、金属製でロール内に循環水を通してロール温度(接するフィルムの温度)をコントロールする駆動ロールである。このための冷却ロールは、2個の冷却ロールの組合せがよく、チューブ状(二重)フィルムを裏表から2段回に冷却方式した方がより均一に冷却できる。」(第3頁左上欄第6?14行) (甲8ウ) 「またロールC前のフィルム温度T3は、5?80℃、好ましくは5?40℃で有り、80℃を越えるとフィルムの巻き取り原反にしわが入り、5℃以下にするには、冷却設備への投資が大きくなり好ましくない。」(第3頁右上欄第7?11行) (甲8エ) 「 ![]() 」(第5頁上欄第1表) 5-8.甲第9号証 (甲9ア) 「熱可塑性樹脂シートまたはフイルムの製造法として、熱可塑性樹脂を溶融状態でTダイを通して押出し成形しシートやフイルムを製造する方法が行なわれており、押出されたシートやフイルムはエヤーナイフ、冷却ロール、タツチロールなどで冷却しながら引取られている。」(第1頁右下欄第1?6行) (甲9イ) 「冷却ロールについては常法により冷却して用いればよく、たとえば5℃以下の冷媒を用いて内部冷却をしたり、エヤー吹付、水冷、バツクアップ冷却ロールなどにより外部冷却する方法やこれらの併用が可能である。冷却ロールの表面温度は30℃以下、通常は10?30℃に保持する。表面温度が高いと得られるシート等の透明性が低下するので好ましくない。しかし、表面温度が低すぎて露点以下になると、水滴によりシート等に肉厚ムラや透明・光沢ムラが発生する。なお、冷却ロールは複数本用いることが一般的であり、各ロールの温度を適宜調節して適切な表面温度として用いる。」(第2頁右上欄第15行?左下欄第7行) 5-9.甲第10号証 (甲10ア) 「(1)水を含む分解澱粉及び少なくとも1種の実質的に水不溶性の合成熱可塑性ポリマーを含む溶融体から得られる配合ポリマー材料。 (2)熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン、ビニルポリマー、ポリアセタール(POM);多縮合物、熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(アルキレンテレフタレート);ポリアリールエーテル;熱可塑性ポリイミド;ポリヒドロキシブチレート(PHB)及び高分子量の実質的に水不溶性のポリアルキレンオキシド又はこれらのコポリマーから成る群より選択される請求項1記載のポリマー材料。 (3)熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン(PE)、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)(PVC)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリアミド(PA)、実質的に水不溶性のポリ(アクリル酸エステル)及び実質的に水不溶性のポリ(メタクリル酸エステル)並びにこれらのコポリマー及びこれらの混合物から成る群より選択される請求項2記載のポリマー材料。 (10)澱粉が、澱粉/水組成物の重量を基準として、約10?20重量%、好ましくは12?19重量%、特に好ましくは14?18重量%の範囲の含水率を有する請求項1?9のいずれか一に記載のポリマー材料。」(特許請求の範囲第1?3項、第10項) (甲10イ) 「ここで、限定量の水を含む澱粉を、上記記載のような密閉容器内で加熱して分解澱粉の溶融体を生成させると、同等の粘度値を有する熱可塑性合成材料から製造した溶融体と同様の流動性を示し、水を含む分解澱粉から製造された溶融体を、実質的に水不溶性の無水熱可塑性合成ポリマーによって生成された溶融体によって処理しうることが見出された。この意味において、2種類の又は溶融した材料は、特に溶融体を凝固させた後においてその特性の興味深い組み合わせを示す。 一つの極めて重要な特徴は、かかる熱可塑性合成材料と配合されたかかる分解澱粉の驚くべき改良された寸法安定性である。例えば、分解澱粉に僅か1重量%の後述するような熱可塑性合成ポリマーを配合することによって、上述したような細長いロッドに関して、2日後に4%未満の収縮しか観察されない。 本発明は、水を含む分解澱粉及び少なくとも1種類の実質的に水不溶性の合成熱可塑性ポリマーを含む溶融体から得られる配合ポリマー材料に関する。」(第3頁右下欄第15行?第4頁左上欄第15行) (甲10ウ) 「合成ポリマーに対する水含有分解澱粉の比は、0.1:99.9?99.9:0.1であってよい。しかしながら、分解澱粉が最終的な材料の特性に大きく寄与することが好ましい。したがって、分解澱粉が全組成物の少なくとも50重量%、より好ましくは70?99.5重量%存在する、即ち、合成ポリマーが全組成物の50重量%以下、より好ましくは30?0.5重量%の濃度で存在することが好ましい。 合成ポリマー0.5?15重量%及び水含有分解澱粉99.5?85重量%の混合物は、得られる材料の特性において大きな改良を示す。ある用途においては、澱粉/水成分に対する合成ポリマーの比0.5:99.5?5:99.5重量%、特に0.5:99.5?2:98重量%が好ましい。 合成ポリマーは、処理のために、通常の公知の添加剤を含んでいてもよい。 澱粉を、好ましくは分解澱粉と同等の粒径に粒化されている合成ポリマーと混合させる前に分解及び粒化することが好ましい。しかしながら、天然澱粉又は予め押出し、粒化又は粉化させた澱粉を粉化又は粒化されたプラスチック材料と共に、任意の所望の混合物中又は順番で処理することができる。 実質的に分解された澱粉/水組成物又は粒状物は、好ましくは、澱粉/水成分の約10?20重量%、好ましくは12?19重量%、特に好ましくは14?18重量%の範囲の含水率を有する。 ここでの含水率は、全組成物中の澱粉/水成分を基準とするものであり、実質的に水不溶性の合成熱可塑性ポリマーの重量をも含む全組成物の重量を基準とするものではない。澱粉/水成分が溶融体生成の間に所定の含水率を有することが重要である。」(第5頁右上欄第12行?右下欄第7行) (甲10エ) 「本発明の澱粉材料は、増量剤、充填剤、滑剤、可塑化剤及び/又は着色剤のような添加剤を含んでいてもよく、また、これらを混合してもよい。」(第6頁右上欄第16?19行) 5-10.甲第11号証 (甲11ア) 「ワーナーランバート社は、熱可塑性ポリマーと分解デンプンを混合した組成物の製法特許^(1))を提案し、既に実用化されている。」(第22頁左欄第33?36行) (甲11イ) 「熱可塑性デンプンの主原料は、デンプン、グリセリン、水とわずかな量の可食性副原料である。」(第22頁中央欄第22?24行) (甲11ウ) 「(9)他のポリマーとの混和性 汎用熱可塑性デンプンは、他のポリマーとの混和性に配慮され製造されている。・・・PE、ポリプロピレン(PP)・・・等の汎用熱可塑性ポリマーと混和して使用することができる。」(第23頁中央欄第20?34行) (甲11エ) 「熱可塑性デンプンは、100%でインフレーションフィルム、Tダイフィルム、Tダイシートを製造することができる。また、他の熱可塑性ポリマーとドライブレンドで製造することもできる。」(第24頁中央欄第33行?右欄第3行) (甲11オ) 「<参考文献> 1)グスタブ・ライ他(ワーナーランバート・カンパニー):特公平7-57827」(第27頁右欄第22?24行) 6.当審の判断 6-1.無効理由1についての判断 6-1-1.本件発明1及び2についての検討 6-1-1-1.甲第2号証の1に記載された発明 摘示(甲2の1ア)の請求項19及び請求項93の記載からみて、甲第2号証の1には、「熱可塑性デンプン組成物であって、 溶融状態でかつ冷却前に水分量が約5重量%より少ない熱可塑性デンプン溶融物を形成するための条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相、ここで前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合、約1バールより小さい蒸気圧を有し;かつ 前記熱可塑性相中に分散し、かつ前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で含有される固体粒子充填剤相; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物から形成される製品。」が記載されている。 ここで、摘示(甲2の1ア)の請求項42には、「熱可塑性相」が、「熱可塑性デンプンとブレンドされた少なくとも1種の付加的な熱可塑性ポリマーをさらに含有する」と記載され、「付加的な熱可塑性ポリマー」について、同請求項52には「ポリオレフィン」であることが、摘示(甲2の1タ)には、「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」であることがそれぞれ記載されているところ、「ポリエチレン」及び「ポリプロピレン」が「ポリオレフィン」に含まれるものであることは明らかなことであって、さらに摘示(甲2の1チ)には、付加的な熱可塑性ポリマーは、「総計として熱可塑性相の、好ましくは約10重量%から約90重量%の範囲内の濃度」を有することが記載されている。 また、摘示(甲2の1コ)には、「本発明のシート及び製品は、・・・湿気、圧力、他の環境力へ地球の成分に補完的な成分をさらしたとき、容易に分解及び混合するであろう。デンプン成分は、水にゆっくりと溶融し、その後、微生物作用によって迅速に分解されるであろう。多くの合成ポリマーも、再分解可能である。有機充填剤及び繊維も生分解可能であり、紙と比較して着手するよりより低い量で含まれる。無機充填剤は、不活性で、徐々に地球と適合するであろう。」と記載されており、形成される製品は、生分解性を有するものであると認められる。 そして、摘示(甲2の1ネ)には、「熱可塑性デンプン組成物が溶融状態になると、プラスチック材料の分野で公知の任意の成形手段を用いて熱可塑性デンプン組成物を非常に広範な物品に成形することができる。・・・多くの場合、まず初めに形成した熱可塑性デンプン組成物をダイから押し出して押出し素線を形成し、これを水浴中で冷却し、次いで個々の小片に切り刻むことにより、熱可塑性デンプン組成物を粒またはビーズに形成する。このような小片を保存し、輸送し、次いで所望により広範な物品の製造に使用する。または、溶融した熱可塑性デンプン組成物を直ちに所望の最終物品に成形することができる。」と記載されており、熱可塑性デンプン組成物を溶融させて製品が形成されるものと認められる。 さらに、摘示(甲2の1オ)には、「得られた熱可塑性デンプン組成物は・・・シート、フィルム、または成形品等の所望の製品に成形される。」と記載されており、熱可塑性デンプン組成物から形成される製品は、シートを含むものであると認められる。 してみると、甲第2号証の1には、「熱可塑性デンプン組成物であって、 溶融状態でかつ冷却前に水分量が約5重量%より少ない熱可塑性デンプン溶融物を形成するための条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相、ここで前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合、約1バールより小さい蒸気圧を有し、熱可塑性デンプンとブレンドされた少なくとも1種の付加的な熱可塑性ポリマーをさらに含有し、付加的な熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンであって、総計として熱可塑性相の約10重量%から約90重量%の範囲内の濃度を有し;かつ 前記熱可塑性相中に分散し、かつ前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で含有される固体粒子充填剤相; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物を溶融させて形成される生分解性シート。」の発明(以下、「甲2の1シート発明」という。)が記載されているといえる。 6-1-1-2.本件発明1と甲2の1シート発明との対比 本件発明1と甲2の1シート発明とを対比すると、甲2の1シート発明における「デンプン」、「ポリオレフィン」及び「熱可塑性デンプン組成物」は、本件発明1における「澱粉質」、「オレフィン樹脂」及び「澱粉樹脂」にそれぞれ相当するものと認められる。 してみると、本件発明1と甲2の1シート発明とは、「澱粉質とオレフィン樹脂を含む澱粉樹脂を融解し、シート状に成形することにより得られる生分解性シート。」である点で一致しているが、以下の点において相違している。 <相違点1> 澱粉樹脂について、本件発明1は、澱粉質を70重量%以上含むのに対し、甲2の1シート発明は、かかる規定がなされていない点 <相違点2> 澱粉樹脂について、本件発明1は、澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなるものであるのに対し、甲2の1シート発明は、デンプン及び少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンに付加的な熱可塑性ポリマーであるポリオレフィンをさらに含有した熱可塑性相と、固体粒子充填剤相を含んで構成されるものである点 <相違点3> 本件発明1は、澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより得られるものであるのに対し、甲2の1シート発明は、かかる規定がなされていない点 6-1-1-3.判断 まず、上記相違点2について検討すると、本件発明1における「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」について、被請求人は、口頭審理陳述要領書において、「得られる生分解性シートは、澱粉質及びオレフィン樹脂以外の成分の充填剤、結着剤、可塑化剤等を含みうるものではない」(第3頁第28?29行)及び「澱粉質の含有量には、原則として水分量は含まれていない」(第4頁第3?4行)としている。ここで、本件発明1における「澱粉樹脂」に相当する、甲2の1シート発明における「熱可塑性デンプン組成物」は、可塑化剤及び固体粒子充填剤相を必須の成分としており、これらの成分を取り除き、熱可塑性相におけるデンプンとポリオレフィンのみからなる澱粉樹脂を生分解性シートとしたものが甲第2号証の1に記載されていると認めることはできない。 したがって、相違点2は実質的なものである。 6-1-1-4.請求人の主張の検討 「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」について、請求人は、以下のとおり主張している。 「本件訂正明細書中には、本件特許発明が澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂だけではなく、プラスチックとしてオレフィン樹脂以外の各種プラスチックを用いること、各種添加剤を添加することができるという記載があり、甲第2号証の1(合議体注釈:明らかな誤記なので修正して摘記した。以下同じ。)と同じように、澱粉質とオレフィン樹脂を主成分とする澱粉樹脂が記載されている(段落[0045]?[0047]参照)。 そして、本件訂正明細書中の記載をみても、澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂が、添加剤を加えた澱粉樹脂より効果の面で格別の差異が生じるものではなく、効果の差異を主張できるような記載もない。 澱粉樹脂中に添加剤などの他の成分を添加するか、しないかは、本件特許発明において本質的な事項ではないのである。 このように原料を限定した訂正発明1に対して、甲第2号証には、澱粉質、オレフィン樹脂などの合成ポリマー、固体粒子状充填剤などの添加剤を含む熱可塑性デンプン組成物が記載されている。 そして、甲第2号証には、それだけではなく、原料である澱粉質とポリマーの澱粉樹脂に、甲第2号証発明の、固体粒子状充填剤、可塑剤を添加して熱可塑性デンプン組成物にするに至った背景が先行技術文献等を挙げつつ記載されている(段落[0008]?[0029])。 例えば、甲第2号証には添加剤を添加したものを原料とすることに関連して、背景技術の記載及び添加剤の役割の記載があり、成形しやすくするため可塑剤、かさ上げの材料として安い充填剤を用いていることが記載されている(段落[0019]?[0020]、[0030]?[0038])。また、可塑剤及び充填剤などの添加剤といった他の成分を添加しない原料、すなわち、『澱粉質とポリマーのみからなる澱粉樹脂』についての問題点、改善すべき点なども記載され、原料が課題として認識され、その課題を解決するために添加剤が加えられたものであることが開示されているといえる。つまり、『澱粉質とポリマーのみからなる澱粉樹脂』は、甲第2号証に記載の背景技術の記載にある先行技術文献等における原料として知られ、かつ当該技術分野において周知の原料として用いられていた、又はそのような原料が記載されているといえるのである。 また、澱粉質とポリマーからなる澱粉樹脂が当該技術分野において周知の原料として用いられているものであることは、甲第2号証の背景技術の記載(段落[0015]、[0017]、[0019]及び[0020])にある先行技術文献並びに本書に周知例として添付した甲第10及び11号証(特開平2-14228号公報、「コンバーテック」2003年3月、第22?27頁、(株)加工技術研究会参照)の記載から明らかである。・・・ 以上のとおり、甲第2号証には、周知の原料である「澱粉質とオレフィン樹脂などの合成ポリマーのみからなる澱粉樹脂」をよりよく成形加工を行うことができ、生分解性にも影響のないような添加剤を添加した熱可塑性デンプン組成物としたものだけが記載されているのではなく、その背景技術として挙げられ及び周知である『澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂』も記載されている又は記載されているに等しいのである。」(弁駁書第5頁第17行?第7頁第14行) 「甲第2号証について 「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」について記載している上記弁駁書第6頁22?25行及び第10頁6?11行において、甲第2号証の記載については、段落[0015]、[0017]、[0019]及び[0020]を拳げている。 段落[0015]には、先行技術として「分解されたデンプン」及び分解されたデンプンと他のポリマーとのブレンドの製造を開示した例を挙げた記載がある。そして、段落[0017]には、エクストルーダー等を使用することで水分を含んだデンプンが溶融混合物となり、脱気又は排水することにより水が工程中に除去できるとの記載から、分解されたデンプンとポリマーが澱粉樹脂溶融物となることが記載されているといえる。 段落[0019]には、従来完全なデンプン/ポリマーブレンドの発見を試みたが達成できていないと言いつつも、原因が費用対効果にある主旨のことが記載され、デンプンと合成ポリマーのブレンドを原料として用いた研究がなされていた事実が記載されている。・・・ そして、甲第2号証の発明の背景技術を記載している箇所には、澱粉を原料として用いる技術分野において、100%澱粉を原料として成形加工すること自体は従来行われていたことで、成形品の品質面で問題があり、成形品の品質の向上のため各種材料を澱粉に添加して求める性質が得られる原料の開発が進められてきたことを記載している。その添加するものとして、合成ポリマー、充填剤、可塑剤などの材料をいろいろ変えた先行技術が文献を例示しつつ記載されている。 上記甲第2号証の背景技術の記載から、澱粉のみを原料とすることは例示がなくても周知といえることであり、その事実に加えて前記摘示記載にある澱粉に合成ポリマーを加えた先行技術が記載されていることから、十分に澱粉質とポリマーとからなる澱粉樹脂が材料として周知であるといえるものである。 加えて、澱粉に用いられるポリマーとしてオレフィン樹脂が周知の汎用熱可塑性樹脂として用いられていることを併せみると、甲第2号証の記載から、『澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂』が本件特許の出願当時、周知の原料として用いられていたといって差し支えないものである。 甲第10号証について 甲第10号証には、分解澱粉と水不溶性の合成熱可塑性ポリマーを含む溶融体から得られる配合ポリマー材料が請求項1に、請求項2及び3には、熱可塑性ポリマーが例示され、ポリオレフィン、さらに、具体例としてポリエチレン、ポリプロピレンが記載されている。 また、甲第10号証の第3頁下右欄15行?第4頁上左欄15行には、溶融した分解澱粉と溶融熱可塑性樹脂とで溶融配合ポリマー材料を形成すること、第5頁上右欄12行?同頁下右欄7行には、合成ポリマーに対する水含有分解澱粉の比が、0.1:99.9?99.9:0.1であってよいこと、分解澱粉が最終的な材料の特性に大きく寄与することが好ましく、分解澱粉が70?99.5重量%存在する、即ち、合成ポリマーが全組成物の30?0.5重量%の濃度で存在することがより好ましいこと、及び第6頁上右欄16?19行に本発明の澱粉材料は添加剤を含んでもよい旨記載されている。 前記摘示記載から、本件特許の出願の10年以上前の平成2年には、澱粉質と合成ポリマーとからなる澱粉樹脂材料が既に知られていたこと、さらに、澱粉とともに用いる合成ポリマーとして、オレフィン樹脂が用いられていたことも明らかである。 以上のとおり、甲第10号証の記載から、澱粉を原料として用いる技術分野において、『澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂』が、本件特許の出願当時、周知の原料として用いられていたといえる。 甲第11号証について 甲第11号証には、デンプンの可塑化の歴史の項で、ワーナーランバート社は、熱可塑性ポリマーと分解デンプンを混合した組成物の製法特許を提案し、既に実用化されていると記載し、特公平7-57827号公報(甲第10号証の公告公報であります。)を挙げている。このように当該技術分野の関係者の間では、澱粉と熱可塑性ポリマーとからなる澱粉樹脂は周知の原料と認識しているものである。 甲第11号証は、従来のようにポリマーを混和するとなく、熱可塑性が付与された変性澱粉(本件特許の澱粉質は、天然澱粉のみではなく、物理的変性及び化学的変性した澱粉をも含むものである本件特許明細書段落[0030]、段落[0031]参照)を開発することに成功した技術を紹介するものである。 甲第11号証には、同時に、熱可塑性デンプン(変性澱粉)は他のポリマーとの混和使用すること、具体的な他のポリマーとして、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの汎用熱可塑性ポリマーを使用できることが記載されている(第23頁中央欄(9))。 さらに、甲第11号証には、熱可塑性デンプンは、100%でインフレーションフィルム、Tダイフィルム、Tダイシートを製造することができ、また、他の熱可塑性ポリマーとドライブレンドで製造することもできると記載されている。 以上のとおり、甲第11号証の記載から、本件特許で用いている『澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂』が、本件特許の出願当時、澱粉を原料として用いる技術分野において周知の原料であることを裏付けているといえる。」(口頭審理陳述要領書第6頁第22行?第10頁第6行) 「本件特許発明の生分解性シートの原料として『澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂』は、 (a)甲第2号証の1の背景技術に記載されている生分解性原料の技術開発が澱粉のみから澱粉にポリマー、充填剤等の添加剤を添加する方向へと進められてきた経緯や、 (b)甲第2号証の1記載の発明がポリマーに加えて充填剤を添加した澱粉樹脂を生分解性シートの原料とするようになった経緯、すなわち、充填剤を添加することによりコスト的に安い原料とするためであって、生分解性シートとするためには必ず充填剤を添加することが求められるものでない(充填剤を添加しない原料とすることに阻害要因があるものではない)と解される記載があることさらに、 (c)『澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂』は甲第10および11号証として提出した刊行物に記載されているとおり生分解性の原料として周知の原料であることを考慮すれば、甲第2号証の1に記載されているか、記載されているに等しいものであるといえる。」(上申書第3頁第22行?第4頁第3行) 上記した弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書における請求人の主張からみて、その主張の要旨は、上申書の(a)?(c)であると認められるから、これらについて以下に検討する。 6-1-1-4-1.(a)についての検討 請求人が挙げた甲第2号証の1における段落【0015】?【0017】、【0019】及び【0020】(摘示(甲2の1イ)及び(甲2の1ウ))の記載をみても、甲第2号証の1において、「澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂」から成形した生分解性シートが先行技術として存在していたことが具体的に記載されているとは認められないし、その主張もない。 よって、生分解性シートの原料としての「澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂」は、甲第2号証の1に記載されているか、記載されているに等しいものと認めることはできない。 6-1-1-4-2.(b)についての検討 摘示(甲2の1ウ)には、甲2の1シート発明において、「ポリマーに加えて充填剤を添加した澱粉樹脂を生分解性シートの原料とするようになった経緯、すなわち、充填剤を添加することによりコスト的に安い原料とするため」であることについては記載が認められるが、甲第2号証の1のいずれの記載においても、澱粉樹脂に充填剤及び可塑化剤を添加しないことについての記載は認められない。 さらに、請求人が主張する「生分解性シートとするためには必ず充填剤を添加することが求められるものでない(充填剤を添加しない原料とすることに阻害要因があるものではない)」点については、無効理由1の判断にあたって、甲第2号証の1に記載された発明か否かが論点であるから、検討の余地もないが、仮に充填剤を除くことができ、それが記載されているとしても、可塑化剤についてまでも除くことができることが記載されているとは認められない。 6-1-1-4-3.(c)についての検討 摘示(甲10ア)の記載によれば、甲第10号証に記載のものは、澱粉に水が含まれることを必須とし、具体的には、含水率が約10?20重量%を有するものであって、甲第10号証のその他の記載をみても、「澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂」が甲第10号証に記載されているとは認められない。 また、摘示(甲11イ)の記載によれば、甲第11号証に記載のものにおける熱可塑性デンプンは、「グリセリン、水とわずかな量の可食性副原料」を含むものであって、甲第11号証のその他の記載をみても、「澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂」が甲第11号証に記載されているとは認められない。 よって、「澱粉質とポリマーとのみからなる澱粉樹脂」は甲第10および11号証として提出した刊行物に記載されているとおり生分解性の原料として周知の原料であるという請求人の主張を採用することはできない。 なお、請求人は、先に述べたとおり、弁駁書において、「本件訂正明細書中には、本件特許発明が澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂だけではなく、プラスチックとしてオレフィン樹脂以外の各種プラスチックを用いること、各種添加剤を添加することができるという記載があり、甲第2号証と同じように、澱粉質とオレフィン樹脂を主成分とする澱粉樹脂が記載されている(段落[0045]?[0047]参照)。 そして、本件訂正明細書中の記載をみても、澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂が、添加剤を加えた澱粉樹脂より効果の面で格別の差異が生じるものではなく、効果の差異を主張できるような記載もない。 澱粉樹脂中に添加剤などの他の成分を添加するか、しないかは、本件特許発明において本質的な事項ではないのである。」と主張しているが、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」について、甲第2号証の1に記載されておらず、甲第10及び11号証から周知であるともいえない以上、この主張を採用する余地はない。 6-1-1-4-4.請求人の主張の検討についての小括 上述のとおりであるから、請求人の上記主張を採用することはできない。 6-1-1-5.本件発明1についての小括 したがって、相違点1及び3について更に検討するまでもなく、本件発明1と甲2の1シート発明とは、実質的に相違するものであるから、本件発明1は、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-1-6.本件発明2についての判断 本件発明2は、本件発明1を引用する生分解性シートに係る発明であって、本件発明1の発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)であるオレフィン樹脂を更に具体化したものであり、本件発明1と甲2の1シート発明との対比については上述のとおりであるから、本件発明2も、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-2.本件発明3?6についての検討 6-1-2-1.甲第2号証の1に記載された発明 摘示(甲2の1ア)の請求項19及び請求項93の記載からみて、甲第2号証の1には、「熱可塑性デンプン組成物であって、 溶融状態でかつ冷却前に水分量が約5重量%より少ない熱可塑性デンプン溶融物を形成するための条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相、ここで前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合、約1バールより小さい蒸気圧を有し;かつ 前記熱可塑性相中に分散し、かつ前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で含有される固体粒子充填剤相; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物から形成される製品。」が記載されている。 ここで、摘示(甲2の1ハ)には、「本発明の熱可塑性デンプン組成物から適当な物品が形成されると、これをさらに処理して、所望の機械的または物理的特性を得る。成形後処理は、シートから容器または他の物品を形成する」と記載されていることから、甲第2号証の1に記載の「熱可塑性デンプン組成物から形成される製品」において、上記6-1-1-1.で述べたとおり「製品」は「シート」を含むものであって、この「シート」から更に他の「物品」が形成されるものと認められる。 そして、甲2の1シート発明については、上記6-1-1-1.において認定したとおりであるから、甲第2号証の1には、「熱可塑性デンプン組成物であって、 溶融状態でかつ冷却前に水分量が約5重量%より少ない熱可塑性デンプン溶融物を形成するための条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相、ここで前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合、約1バールより小さい蒸気圧を有し、熱可塑性デンプンとブレンドされた少なくとも1種の付加的な熱可塑性ポリマーをさらに含有し、付加的な熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンであって、総計として熱可塑性相の約10重量%から約90重量%の範囲内の濃度を有し;かつ 前記熱可塑性相中に分散し、かつ前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で含有される固体粒子充填剤相; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物を溶融させて形成される生分解性シートから形成される物品。」の発明(以下、「甲2の1物品発明」という。)が記載されているといえる。 6-1-2-2.本件発明3と甲2の1物品発明との対比 本件発明3と甲2の1物品発明とを対比すると、上記6-1-1-2.で述べた対比に加え、甲2の1物品発明における「生分解性シートから形成される物品」は、本件発明1における「生分解性成型品」に相当するものと認められる。 してみると、本件発明3と甲2の1物品発明とは、「澱粉質とオレフィン樹脂を含む澱粉樹脂を融解し、シート状に成形することにより得られる生分解性シートより得られる生分解性成型品。」である点で一致しているが、上記6-1-1-2.における相違点1?3に加えて、以下の点において相違している。 <相違点4> 生分解性成型品について、本件発明3は、生分解性シートを、加熱し真空成形または圧空成形することにより得られるものであるのに対し、甲2の1物品発明は、かかる規定がなされていない点 6-1-2-3.判断 上記相違点のうち、相違点2については、上記6-1-1-3.において判断したとおり、実質的なものである。 6-1-2-4.本件発明3についての小括 したがって、相違点1、3及び4について更に検討するまでもなく、本件発明3と甲2の1物品発明とは、実質的に相違するものであるから、本件発明3は、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-2-5.本件発明4?6についての判断 本件発明4?6は、本件発明3を引用して、これを更に限定する生分解性成型品に係る発明であって、本件発明3と甲2の1物品発明との対比、判断については上述のとおりであるから、本件発明4?6も、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-3.本件発明7?9についての検討 6-1-3-1.甲第2号証の1に記載された発明 上記6-1-1-1.で述べたとおり、甲第2号証の1には、甲2の1シート発明が記載されており、更に、摘示(甲2の1ノ)には、「本発明の熱可塑性デンプン組成物を所望の物品に形成するのに適当な成形方法は、・・・シートを形成するための圧延またはカレンダ加工、シートおよび膜の真空成形を含む真空成形、押出し・・・他の公知の成形方法を含む。」と記載されている。 してみると、甲第2号証の1には、「甲2の1シート発明に係る生分解性シートの成形方法」の発明(以下、「甲2の1シート製法発明」という。)が記載されているといえる。 6-1-3-2.本件発明7と甲2の1シート製法発明との対比 本件発明7と甲2の1シート製法発明との対比について、本件発明7は、本件発明1に係る生分解性シートの単なる製造方法であると認められるところ、本件発明1と甲2の1シート発明との対比は、上記6-1-1-2.で述べたとおりであるから、本件発明7と甲2の1シート製法発明とは、「澱粉質とオレフィン樹脂を含む澱粉樹脂を融解し、シート状に成形することにより生分解性シートを得る生分解性シートの製造方法。」である点で一致しているが、上記6-1-1-2.における相違点1?3の点において相違している。 6-1-3-3.判断 上記相違点のうち、相違点2については、上記6-1-1-3.において判断したとおり、実質的なものである。 6-1-3-4.本件発明7についての小括 したがって、相違点1及び3について更に検討するまでもなく、本件発明7と甲2の1シート製法発明とは、実質的に相違するものであるから、本件発明7は、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-3-5.本件発明8及び9についての判断 本件発明8及び9は、本件発明7を引用して、これを更に限定する生分解性シートの製造方法に係る発明であって、本件発明7と甲2の1シート製法発明との対比、判断については上述のとおりであるから、本件発明8及び9も、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-4.本件発明10及び11についての検討 6-1-4-1.甲第2号証の1に記載された発明 上記6-1-1-1.で述べたとおり、甲第2号証の1には、甲2の1シート発明が記載されており、更に、摘示(甲2の1ハ)には、「本発明の熱可塑性デンプン組成物から適当な物品が形成されると、これをさらに処理して、所望の機械的または物理的特性を得る。成形後処理は、シートから容器または他の物品を形成する等の、ある物品から他のものへの転換・・・を含む。」と記載されており、熱可塑性デンプン組成物からシートが形成され、更に、他の物品を成形する方法が実質的に記載されているものと認められる。 してみると、甲第2号証の1には、「熱可塑性デンプン組成物であって、 溶融状態でかつ冷却前に水分量が約5重量%より少ない熱可塑性デンプン溶融物を形成するための条件下でデンプンおよび少なくとも1種の可塑化剤を混合しかつ加熱することにより形成される熱可塑性デンプンを含有する熱可塑性相、ここで前記少なくとも1種の可塑化剤が、前記熱可塑性相が溶融状態にある場合、約1バールより小さい蒸気圧を有し、熱可塑性デンプンとブレンドされた少なくとも1種の付加的な熱可塑性ポリマーをさらに含有し、付加的な熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンであって、総計として熱可塑性相の約10重量%から約90重量%の範囲内の濃度を有し;かつ 前記熱可塑性相中に分散し、かつ前記熱可塑性デンプン組成物の約5から約95重量%の量で含有される固体粒子充填剤相; を含んで構成される熱可塑性デンプン組成物を溶融させて形成される生分解性シートから形成される物品 の成形方法。」の発明(以下、「甲2の1物品製法発明」という。)が記載されているといえる。 6-1-4-2.本件発明10と甲2の1物品製法発明との対比 本件発明10と甲2の1物品製法発明との対比について、本件発明10は、実質的に本件発明1に係る生分解性シートを用いた生分解性成型品の製造方法であると認められるところ、本件発明1については、上記6-1-1-2.及び6-1-1-3.で述べたところから、本件発明10と甲2の1物品製法発明とは、「澱粉質とオレフィン樹脂を含む澱粉樹脂を融解し、シート状に成形することにより得られる生分解性シートより生分解性成型品を形成する生分解性成型品の製造方法。」である点で一致しているが、上記6-1-1-2.における相違点1?3に加えて、以下の点において相違している。 <相違点5> 生分解性成型品について、本件発明10は、生分解性シートを少なくとも1枚積層させ、該シートを加熱して軟化させ、次いで軟化した状態のシートを真空型抜きまたは圧空型抜きをすることにより形成するものであるのに対し、甲2の1物品製法発明は、かかる規定がなされていない点 6-1-4-3.判断 上記相違点のうち、相違点2については、上記6-1-1-3.において判断したとおり、実質的なものである。 6-1-4-4.本件発明10についての小括 したがって、相違点1、3及び5について更に検討するまでもなく、本件発明10と甲2の1物品製法発明とは、実質的に相違するものであるから、本件発明10は、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-4-5.本件発明11についての判断 本件発明11は、本件発明10を引用して、これを更に限定する生分解性成型品の製造方法に係る発明であって、本件発明10と甲2の1物品製法発明との対比、判断については上述のとおりであるから、本件発明11も、甲第2号証の1に記載された発明ではない。 6-1-5.無効理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1によっては、本件特許を無効にすることはできない。 6-2.無効理由2についての判断 6-2-1.本件発明1及び2についての検討 6-2-1-1.対比・判断 本件発明1と甲2の1シート発明との一致点及び相違点は、上記6-1-1-2.のとおりであって、このうち、相違点2について検討すると、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」は、上記6-1-1-3.及び6-1-1-4.において検討したように、甲第2号証の1、甲第10及び11号証には記載されていない。 次いで、甲第2号証の1、甲第10及び11号証における「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」の示唆の有無について検討する。 まず、甲2の1シート発明は、摘示(甲2のア)の請求項19に記載のように、可塑化剤を含有することが必須なものであるところ、甲第2号証の1には、可塑化剤を含有させなくても良いことを示唆する記載は認められない。 また、甲第10号証に記載されたポリマー材料に係る発明は、摘示(甲10ア)の特許請求の範囲第1項の記載からみて、水を含む分解澱粉が必須なものであるところ、甲第10号証には、分解澱粉が水を含まなくても良いことを示唆する記載は認められない。 そして、甲第11号証には、摘示(甲11イ)において、「熱可塑性デンプンの主原料は、デンプン、グリセリン、水とわずかな量の可食性副原料」と記載されており、摘示(甲11ウ)に記載のように、かかる熱可塑性デンプンは、PE、ポリプロピレン(PP)等の汎用熱可塑性ポリマーと混和して使用することができるものであるが、甲第11号証には、グリセリンや水等を原料としなくとも良いことを示唆する記載は認められない。 したがって、甲第2号証の1、甲第10及び11号証には、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」が示唆されてもいない。 さらに、甲第3?9号証は、上記5-2.?5-8.における摘記事項からみて、シートやフィルムを製造する際の冷却条件が開示されたものであって、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」について記載も示唆もないことは明らかである。 よって、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された各発明、並びに甲第10及び第11号証に記載されている周知技術から、本件発明1における「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」を導き出すことはできない。 6-2-1-2.請求人の主張の検討 請求人は、弁駁書において、以下のとおり主張している。 「被請求人の容易性についての主張は、証拠方法に『記載がない』から容易ではないと主張しているに等しいのである。容易性の判断は技術常識、周知技術等を勘案して容易か容易でないかを判断すべきものである。 請求人が、無効理由1において主張したように、甲第2号証には、原料である澱粉質とポリマーの澱粉樹脂に、甲第2号証発明の固体粒子状充填剤、可塑剤を添加してなる熱可塑性デンプン組成物に関することだけでなく、先行技術文献等を挙げつつ、甲第2号証の組成物に至った背景技術の説明も記載されている。 その背景技術を説明する記載から、『澱粉質とポリマーのみからなる澱粉樹脂』についての問題点、改善すべき点が認識されていただけでなく、『澱粉質とポリマーのみからなる澱粉樹脂』が、甲第2号証に記載の先行技術文献等において原料として知られていたものであり、かつ当該技術分野において周知の原料として用いられているものであることは明らかである。周知の原料であることは、甲第2号証の背景技術の記載(段落[0015]、[0017]、[0019]及び[0020])にある先行技術文献並びに甲第10及び11号証からも裏付けられる。 また、甲第2ないし4号証並びに甲第10及び11号証に記載されているとおり、澱粉質とともに用いるポリマーとしてオレフィン樹脂は周知慣用されていることであるから、前記澱粉質に混合するポリマーにオレフィン樹脂を用いて、澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂を原料として用いることは、当業者が容易に想到し得るものである。・・・ 一方、本件特許の明細書中には、訂正発明が澱粉質とオレフィン樹脂のみからなる澱粉樹脂だけではなく、プラスチックとしてオレフィン樹脂以外の各種プラスチックを用いること、各種添加剤を添加することができるという記載があり、甲第2号証と同じように、同じ澱粉質とオレフィン樹脂を主成分とする澱粉樹脂が記載されている。本件特許明細書中の記載をみても、澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂が添加剤を加えた澱粉樹脂より効果の面で格別の効果を奏するものではなく、また、澱粉樹脂中に添加剤などの他の成分を添加するかしないかは、本件特許発明において本質的な事項ではないのである。 したがって、生分解性シートの原料として、甲第2号証発明の『添加剤等の他の成分を含有した澱粉質とオレフィン樹脂を主成分とした澱粉樹脂』に代えて、相違点1の『澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂』を用いることは、当業者が容易になし得ることである。」(弁駁書第9頁第22行?第11頁第13行) しかしながら、上述のとおり、甲第2号証の1及び甲第3?9号証において、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」が記載も示唆されておらず、甲第10及び11号証の記載から「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」が当該技術分野において周知であるとは認められない以上、甲2の1シート発明において、生分解性シートを得るための熱可塑性デンプン組成物の原料として含まれていた可塑化剤や充填剤などを取り除き、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」とすることが当業者にとって容易であるということはできない。 また、請求人が主張する、澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂が添加剤を加えた澱粉樹脂より効果の面で格別の効果を奏するものではない点について、甲2の1シート発明において必須とされている成分を除くことによって「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」とすることは、置換可能な原料の単なる選択によってなされることではないから、阻害要因があると認められることであって、「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」とすることによる格別の効果が本件特許明細書に具体的に記載されていないからといって、これを想到することが、当業者にとって容易であるということはできない。 6-2-1-3.本件発明1についての小括 したがって、相違点1及び3について更に検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-1-4.本件発明2についての判断 本件発明1を引用して、これを更に限定する生分解性シートに係る発明である本件発明2についても上述のとおりであるから、本件発明2も、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-2.本件発明3?6についての検討 6-2-2-1.本件発明3についての対比・判断 本件発明3と甲2の1物品発明との対比については、上記6-1-2-2.のとおりであって、その判断については、上記6-2-1-1.において検討したとおりである。 よって、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された各発明、並びに甲第10及び第11号証に記載されている周知技術から、本件発明3における「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」を導き出すことはできない。 6-2-2-2.本件発明3についての小括 したがって、相違点1、3及び4について更に検討するまでもなく、本件発明3は、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-2-3.本件発明4?6についての判断 本件発明3を引用して、これを更に限定する生分解性成型品に係る発明である本件発明4?6についても上述のとおりであるから、本件発明4?6も、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-3.本件発明7?9についての検討 6-2-3-1.本件発明7についての対比・判断 本件発明7と甲2の1シート製法発明との対比については、上記6-1-3-2.のとおりであって、その判断については、上記6-2-1-1.において検討したとおりである。 よって、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された各発明、並びに甲第10及び第11号証に記載されている周知技術から、本件発明7における「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」を導き出すことはできない。 6-2-3-2.本件発明7についての小括 したがって、相違点1及び3について更に検討するまでもなく、本件発明7は、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-3-3.本件発明8及び9についての判断 本件発明7を引用して、これを更に限定する生分解シートの製造方法に係る発明である本件発明8及び9についても上述のとおりであるから、本件発明8及び9も、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-4.本件発明10及び11についての検討 6-2-4-1.本件発明10についての対比・判断 本件発明10と甲2の1物品製法発明と対比については、上記6-1-4-2.のとおりであって、その判断については、上記6-2-1-1.において検討したとおりである。 よって、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された各発明、並びに甲第10及び第11号証に記載されている周知技術から、本件発明10における「澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」を導き出すことはできない。 6-2-4-2.本件発明10についての小括 したがって、相違点1、3及び5について更に検討するまでもなく、本件発明10は、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-4-3.本件発明11についての判断 本件発明10を引用して、これを更に限定する生分解成型品の製造方法に係る発明である本件発明11についても上述のとおりであるから、本件発明11も、甲第2号証の1及び甲第3?9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6-2-5.無効理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由2によっては、本件特許を無効にすることはできない。 6-3.無効理由3についての判断 6-3-1.請求人の主張 請求人が主張する無効理由3の内容は、以下の無効理由3-1及び3-2のとおりと認められる。 <無効理由3-1> 「本件特許明細書中に唯一記載されている実施例1では、原料澱粉質70重量%と記載しているが、その実施例の説明からすると、ペレットを作るときは、含水状態であると解される。とすると、澱粉質は10?30%の含水率を有するもので、通常でも、10?20重量%の水分が含まれるのであるから、乾燥後は、水分が出て行った分:7?14重量%だけ、実質的な澱粉質は70重量%より低下することは明らか、相対的に実施例1では、ポリエチレンの重量割合は増えることになる。そして、低下した重量分は、結着剤をポリエチレンと合計量が30重量%となるように添加すると記載されているが、重量割合は、段落[0039]の記載から、好ましくは10?30重量%の範囲となるように入れるのであるから、すでに範囲を逸脱した条件の上にさらにポリプロピレンを加えた場合、30%以上となりえないにもかかわらず、水分減少分を加えてしまうとさらに逸脱した条件で実施例1が行われていることとなる。 とすると、実施例1は本件特許発明の実施例とはいえない。 また、仮に、澱粉質の重量%が乾燥状態のものとしても、当然に、周囲の水分を吸いやすいものであるから、水分が除かれた量の分ポリプロピレンを加えることとなる、しかし、ここでも、すでにポリエチレンは30重量%含有しているのであるから、ポリプロピレンを加えた、本件発明のプラスチック含有量の条件を満足しなくなるのである。結着剤の添加について触れている実施例の意味するところが不明であるといえる。 したがって、乾燥させた後の水分含有量のみ規定し、いかなる水分含有量の澱粉を用いるのか全く記載がないから、請求項に記載の発明を実施するために必要な澱粉樹脂が本件明細書の記述からは不明であり、調製できない。」(審判請求書第52頁第19行?第53頁第17行) 「原料ペレットの乾燥状態が確定したからといって、原料である澱粉質の量とオレフィン樹脂の量との重量比が明確になったとはいえない。 何故ならば、原料澱粉として水分含有状態のものであれば、実質澱粉の量は見掛けより少なくなり、水分を除去した状態のものであれば、そのまま実質澱粉の重量比となる。 ところが、実施例では、原料ペレットを作成するための「トウモロコシ澱粉質70重量%、ポリエチレン30重量%・・・」との記載があり、また、訂正前後の請求項1及び7において、「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂と又はのみからなる澱粉樹脂を・・・」との記載があり、段落[0030]では「澱粉質の原料としては、トウモロコシ・・・」などの記載がある。それらの記載のみでは、水分を含んだものを意味するのか含まないものを意味するのか不明であり、特許請求の範囲に記載の発明がいずれのものなのかも不明であるといえる。」(弁駁書第13頁第13?26行) <無効理由3-2> 「本件特許明細書には、請求項に記載した以上にその製造方法を説明するところがなく、製造方法の実際については、実質上みるべきものがない。」(審判請求書第53頁第18?20行) 「被請求人は、『澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより得られた』ことを発明特定事項としている。 製造方法で規定された物及び方法の発明である以上、当然、その製造方法の特徴となるところを理解できるように、前記製造方法を裏付ける記載が具体的に記載されてしかるべきである。 ところが、本件特許の明細書中には、段落[0043]に請求項の記載と同じ記載があるだけで実施例では、180℃で融解して165℃近傍に維持し、二軸ローラにより厚さ0.5mmの生分解性シートに形成したと記載するのみで、ローラをどの程度に冷却してシートに形成したのか、さらに、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ると記載していながら、具体的に冷却温度をどの温度にし、どのように冷却したのか記載がない。 被請求人が主張する前記発明特定事項に対応する、生分解性シートを融解、成形、冷却及び巻き取りという一連の製造方法を裏付ける実施例はなく、本件特許の明細書中にも前記請求項に記載された以上の一連の製造方法を裏付ける記載もないのである。」(弁駁書第14頁第2?19行) 6-3-2.無効理由3-1についての検討 無効理由3-1についての請求人の主張は、具体的には、本件特許明細書の実施例1の記載不備を指摘するものと認められる。すなわち、実施例1において、原料ペレットは、トウモロコシ澱粉質70重量%とポリエチレン30重量%を混練し、押し出し、裁断したものであるが、原料ペレットを製造するための原料澱粉質の水分含有量は記載されていない。また、原料ペレットの乾燥による澱粉質中の水分含有量の減少により、ポリエチレンの重量割合は30%以上になると考えられることから、原料ペレットの乾燥後、ポリエチレンとの合計重量が30重量%となるように結着剤としてのポリプロピレンを添加できるものか不明ということにある。 しかしながら、本件発明1?11における澱粉樹脂について、「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂」であることは明確であるところ、如何なる水分含有量の澱粉質を用いるのかが不明であったとしても、本件発明1?11における澱粉樹脂が明確なのであるから、この澱粉樹脂が調製できないとはいえない。 してみると、本件特許明細書の実施例1に何らかの記載不備があるにしても、出願時の技術常識に基づいて、当業者が本件発明1?11を実施しようとした場合に、実施することができないとまでいうことはできない。 よって、本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。 6-3-3.無効理由3-2についての検討 無効理由3-2についての請求人の主張は、具体的には、生分解性シートの製造におけるローラの冷却温度や、ロール状に巻き取る際の温度が記載されていないということにある。 しかしながら、請求人は、無効理由1及び2の主張において、冷却ロールを用いてシート状にすることは周知の技術としているところ、周知の技術である以上、当業者が本件発明1?11を実施しようとした場合に、出願時の技術常識に基づいて実施することができるものと認められる。 よって、本件特許明細書における発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?11の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない。 6-3-4.無効理由3についてのまとめ 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由3によっては、本件特許を無効にすることはできない。 6-4.無効理由4についての判断 6-4-1.請求人の主張 請求人が主張する無効理由4の内容は、以下の無効理由4-1、4-2及び4-3のとおりと認められる。 <無効理由4-1> 本件発明1?11について、「発明の詳細な説明に記載した唯一の実施例1は請求項1ないし11に記載の発明の実施例とはいえないもので、発明の詳細な説明には本件特許発明を裏付ける記載がないものであり、請求項1ないし11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。」(審判請求書第54頁第12?16行) 「訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び7に係る発明は、本件特許の明細書中において原料の『澱粉樹脂』が不明であり、製造方法も訂正後の請求項1及び7に係る発明を記載したものか不明であるから、審判請求書『7-4.(3)(4)』に記載した理由により訂正後の請求項1及び7に係る発明は本件特許の明細書に記載されていないものである。 また、訂正後の請求項1及び7が本件特許の明細書に記載された発明でないから、そうである以上、訂正後の請求項1又は7を引用する請求項2ないし6又は請求項8ないし11は同様の理由により本件特許の明細書に記載された発明であるとはいえないのである。」(弁駁書第15頁第7?17行) <無効理由4-2> 「請求項2に係る発明について、『オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有する』と記載するが、発明の詳細な説明の段落[0033]には、『ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が好適に使用される』と記載されているだけであり、この段落以外に具体的な記述はないのであるから、結局のところ、『ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有するポリオレフィン樹脂』というものは発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないのである。」(審判請求書第54頁第17?24行) 「オレフィン樹脂といった場合、ホモポリマーからオレフィン樹脂のグラフト、共重合体あるいはブレンドまでも含み得る非常に広いオレフィン樹脂材料を意味することは技術常識である。 また、材料を表現する際に本件特許の明細書中でも使い分けて使用されているところ、本件特許の明細書中には段落[0033]に記載されている、精々、ポリエチレン系、ポリプロピレン系の樹脂を例示する程度である。 一方、具体的な実施例に至っては、ポリエチレン、ポリプロピレンと記載し、技術常識から狭い限定的に解される材料のものしか記載がない。 それにもかかわらず、訂正後の請求項2には『該オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有すること』というように、『オレフィン樹脂』という非常に広い材料にまで拡張している。また、実施例にも、そのような『オレフィン樹脂』という材料に『ポリエチレン又はポリプロピレン』のいずれかを含有するといった概念まで広げ得るだけの記載がない。 しかも、澱粉と、オレフィン樹脂といわれる疎水性、非極性ポリマーとが混合均一化が難しいこともよく知られており、澱粉にオレフィン樹脂という広い概念の樹脂材料のすべてについて添加し、本件特許の発明にいうところの澱粉樹脂を形成し得るものであるとは到底いうことはできないから、被請求人の主張する記載を基に請求項2に記載の発明が開示されているとはいえないし、本件特許の訂正明細書に記載されているとはいえない。」(弁駁書第15頁第19行?第16頁第14行) <無効理由4-3> 「請求項10に係る発明について、『生分解性シートを少なくとも1枚積層させ、シートを加熱して軟化させ、次いで、軟化した状態のシートを真空型抜き又は圧空型抜きをする』と記載されているが、生分解性シートを何かに積層したものを軟化させ、真空型抜き又は圧空型抜きをする製造方法は明細書中に記載がないのであるから、請求項10に記載の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないのである。」(審判請求書第54頁第25行?第55頁第4行) 「段落[0058]には『生分解性シートを2層以上積層し』と記載されている。つまり、本件特許の訂正明細書中には生分解性シートのみを1層以上積層したシートを用いて成形することは記載されている。 しかし、請求項10には『生分解性シートを少なくとも1枚積層させ』と記載され、無効理由5でも主張しているとおり、その記載の前後の文章構成から暖昧で多義的であって、他のシート等に生分解性シートを1層以上積層すると記載されていると解することができることから、そのようなものは本件特許の明細書中には記載されていないと主張しているのであり、審判請求書『7-4.(4)』で記載したとおりの理由により請求項10に記載の発明は本件特許の明細書に記載された発明ではないものを包含するものである。」(弁駁書第16頁第16?26行) 6-4-2.無効理由4-1についての検討 上記6-3-2.において述べたように、本件特許明細書の実施例1に何らかの記載不備があり、原料となる「澱粉樹脂」が必ずしも明確でない不備があるにしても、本件発明1?11における澱粉樹脂の組成について、本件特許明細書の段落【0039】において、「原料の割合が、澱粉質が70重量%以上、好ましくは、澱粉質が75?90重量%で、プラスチックが10?25重量%の範囲となる」と記載され、さらに、明細書の段落【0033】において、「澱粉質に混合するプラスチックとしては、・・・特に、成形時の強度を高めるため、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂を好適に使用できる。」と記載されていること、並びに段落【0061】において、「実験で使用した生分解性シートは、澱粉質が70重量%、ポリプロピレンが28重量%、必要に応じて添加した結着剤としてのポリプロピレンが2重量%のもの」とすることがそれぞれ記載されている。 よって、本件発明1?11が発明の詳細な説明に記載したものでないとまではいえない。 6-4-3.無効理由4-2についての検討 無効理由4-2についての請求人の主張は、要するに、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレンとしか記載がないにもかかわらず、「オレフィン樹脂」という非常に広い材料にまで拡張することはできないということと認められる。 しかしながら、請求人は、ポリエチレン、ポリプロピレンの記載からオレフィン樹脂まで拡張することはできないとする合理的疑いに至る具体的な根拠を示していないこと、並びにポリエチレンやポリプロピレンは、オレフィン樹脂の代表的樹脂であることは技術常識であることから、本件特許明細書における発明の詳細な説明に開示された「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」を「オレフィン樹脂」の範囲まで拡張ないし一般化できないとはいえない。 よって、本件発明1?11が発明の詳細な説明に記載したものでないとまではいえない。 6-4-4.無効理由4-3についての検討 無効理由4-3についての請求人の主張は、要するに、本件発明10は、他のシート等に生分解性シートを1層以上積層すると記載されていると解されるが、そのようなものは発明の詳細な説明に記載されていないということにあると認められる。 しかしながら、本件特許明細書の段落【0058】には、「上記説明では、生分解性シートを1層で利用する方法を説明したが、該シートを2層以上積層し、上述した方法と同様に、該シートの軟化点まで加熱し、型抜き成型することも可能である。」と記載されており、本件特許明細書の記載全般からみて、本件発明10は、「請求項1又は2に記載の生分解性シート」を1層のみ、又は当該生分解性シートを2層以上としたものから生分解性成型品を形成するものであると認められるから、請求人が主張する「他のシート等に生分解性シートを1層以上積層する」態様が本件発明10に含まれないことは明らかである。 よって、本件発明10が発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。 6-4-5.無効理由4についてのまとめ 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由4によっては、本件特許を無効にすることはできない。 6-5.無効理由5についての判断 6-5-1.請求人の主張 請求人が主張する無効理由5の内容は、以下の無効理由5-1、5-2及び5-3のとおりと認められる。 <無効理由5-1> 「請求項1及び2並びにそれらを引用する請求項2ないし6及び請求項8ないし11において、『澱粉質を70重量%以上含みかつオレフィン樹脂を主成分とする澱粉樹脂』と記載しているが、澱粉樹脂中の澱粉質の含有量を重量%で表示しているが、この重量%は水分含有量を含めたものなのか、澱粉質の実質含有量なのか明確でなく、澱粉樹脂に占める澱粉質の量が定まらず、請求項に記載の発明が不明である。 以下詳述する。 ここに記載の『澱粉質を70重量%含む澱粉樹脂』とは、融解する樹脂であることは文脈より明らかである。そして、澱粉樹脂に占める澱粉質の量が70重量%以上と記載するのみで、ポリオレフィン樹脂と混ぜて澱粉樹脂を形成する際に用いる澱粉の含有量として規定するものか、すなわち、含水状態の澱粉ペースの量なのか、乾燥させた澱粉ベースの量なのか、どこにも記載はない。澱粉は10?30%の含水率を有することが知られており、通常でも、10?20重量%の含水率のものであるから、澱粉質を70重量%含む澱粉樹脂とは、どの段階での乾燥後は、水分が出て行った分7?14重量%変化してしまうことを考慮すると、この重量%の基準がどちらを基準にしての重量%なのかにより実質的な澱粉質は70重量%を大きく変動した値を取ることとなるから、『澱粉質を70重量%含む澱粉樹脂』と記載する請求項1,7及びそれらを引用する各請求項に記載の発明は明確ではない。」(審判請求書第55頁第12行?第56頁第5行) <無効理由5-2> 「請求項2に係る発明について、『オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有する』と記載するが、発明の詳細な説明の段落[0033]には、『ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が好適に使用される』と記載されているだけであり、この段落以外に具体的な記述はないのであるから、結局のところ、『ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有するポリオレフィン樹脂』というものはいかなるポリオレフィン樹脂なのか明確であるとはいえないのである。」(審判請求書第56頁第6?13行) <無効理由5-3> 「請求項10に係る発明について、『生分解性シートを少なくとも1枚積層させ』と記載されているが、何に少なくとも1枚生分解性シートを積層するのか不明であり、真空成形又は圧空成形できるシートがいかなるものか不明であり、請求項10に記載の発明が明確であるとはいえない。」(審判請求書第56頁第14?18行) 6-5-2.無効理由5-1についての検討 本件発明1?11における澱粉樹脂が、「澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる」ことは、請求項1?11の記載から明らかであり、水分含有量について、本件特許明細書の段落【0042】を参酌すれば、「好適には、原料ペレット中の水分含有量が2重量%以下、好適には0.2?0.4重量%となるように、即ち、可能な限り水分量が少なくなるように、乾燥させることが望ましい。」とされていることから、「澱粉質を70重量%含む澱粉樹脂」の意味するところは明らかであり、本件発明1?11が明確でないとはいえない。 6-5-3.無効理由5-2についての検討 訂正後の本件請求項2に記載の「オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有する」との表現は、「オレフィン樹脂」の成分が「ポリエチレン又はポリプロピレン」であるかのようにも解し得るが、本件特許明細書の段落【0033】の記載からみて、用いられるオレフィン樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等であることを意味するものであることは明らかである。 よって、本件発明2が明確でないとはいえない。 6-5-4.無効理由5-3についての検討 上記6-4-4.で述べたように、本件発明10は、「請求項1又は2に記載の生分解性シート」を1層のみ、又は当該生分解性シートを2層以上としたものから生分解性成型品を形成するものであって、生分解性シートを他のシートに積層するものではない。 よって、本件発明10が明確でないとはいえない。 6-5-5.無効理由5についてのまとめ 以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由5によっては、本件特許を無効にすることはできない。 7.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明1?11に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 生分解性シート及びその製造方法、並びに当該シートを用いた生分解性成型品及びその製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、生分解性シート及びその製造方法、並びに当該シートを用いた生分解性成型品及びその製造方法に関し、特に、燃焼させてもダイオキシン等の有害物質を発生せず、生分解性に優れるため環境問題にも有効な生分解性シート及びその製造方法、並びに当該シートを用いた生分解性成型品及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 現在、広く利用されているプラスチック製品は、廃棄されると自然界中で分解することが難しく、通常、分解には200?400年もの歳月が必要とされる。また焼却処分する場合には、ダイオキシンなどの有毒ガスを発生し、大気・土壌汚染の原因ともなっていた。 【0003】 これに対し、自然界中で生物により分解可能である、従来のプラスチック製品に代わる材料及びそれを用いた成型品が切望されている。 【0004】 特開平6-32386号公報においては、生分解性に優れた澱粉に着目し、断熱性や耐水性を改善するため、穀物、澱粉、植物性蛋白質、及び繊維質の粉状物、該粉状物からの造粒物、並びに穀物粒から選ばれる少なくとも1つからなる原料を、密閉成形型に入れ、加熱した後減圧し結着させ、容器状に成形する、生分解性発泡容器の製造方法が開示されている。 【特許文献1】特開平6-32386号公報 【0005】 また、澱粉とプラスチック等の樹脂とを混合した澱粉樹脂として、特開平9-296076号公報においては、コーンスターチあるいはポテトスターチあるいはその他の澱粉40?80%、脂肪5?15%、水0.5?2%、ポリプロピレン又はポリエチレンあるいはその他のプラスチック3?10%、グリセリン1?5%、蛋白質2?8%、及びエチレンメタクリル酸ないしエチレンアクリル酸10?25%を配合してなる、生分解性可能な澱粉樹脂が開示されている。また、容器等の成型品の製造方法としては、直接射出成形する方法が提案されている。 【特許文献2】特開平9-296076号公報 【0006】 しかしながら、特開平6-32386号公報のように澱粉質を多く含む原料から得られる容器等の成型品は、澱粉質間の結着力がプラスチックなどと比較して弱く、十分な機械的強度を得るためには、容器の厚みが増し、使用する材料も多くなるためコスト的に高価なものとなる。 【0007】 また、澱粉質を多く含む原料を直接密閉成形型に入れて成形するためには、澱粉質が多く含まれるため、粘性が高く、高温になると変色・発泡が発生し、安定した成型品が得られ難いという欠点を有する。 【0008】 また、特開平9-296076号公報のように澱粉樹脂を利用する場合には、射出成形で容器等を成形するに際し、強度を保つため澱粉質を50重量%程度に抑える必要がある。しかしながら、澱粉質の含有量の低下は、自然界中での分解速度を低下させ、焼却した場合のダイオキシンの発生量の増加や焼却温度の上昇等の問題を生じる。また、澱粉質を含有しているため、射出成形時の温度管理が難しく、粘性も高くなるため、製造設備の高コスト化や、量産化が困難となるなどの問題を招く。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の課題は、上述した問題を解決し、澱粉質の含有量が70重量%以上、好ましくは75?90重量%以上と高く、生分解性に優れると共に、成形性も良好な、生分解性シート及び当該シートを用いた生分解性成型品を提供し、しかも簡易かつ経済的な製造方法も提供することである。 【0010】 本発明の他の目的は、機械的強度も良好で、通気性及び保水性に優れた生分解性シート及び当該シートを用いた生分解性成型品を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより得られる生分解性シートであることを特徴とする。 【0012】 また、好ましくは、請求項2に係る発明のように、請求項1に記載の生分解性シートにおいて、該オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有することを特徴とする。 【0013】 また、請求項3に係る発明のように、請求項1又は2に記載の生分解性シートを、加熱し真空成形または圧空成形することにより得られる生分解性成型品であることを特徴とする。 特に、請求項4に係る発明のように、請求項3に記載の生分解性成型品において、該生分解性シートの厚みは、0.2?0.8mmであることを特徴とする。 【0014】 しかも、請求項5に係る発明のように、請求項3又は4に記載の生分解性成型品において、該成型品は、機械的強度を高めるための溝及び/又は突起が設けられていることを特徴とする。 【0015】 また、好ましくは、請求項6に係る発明のように、請求項3乃至5のいずれかに記載の生分解性成型品において、該生分解性成型品が、澱粉質を養分とする菌を含む食品を収容する容器であることを特徴とする。 【0016】 また、請求項7に係る発明は、澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより生分解性シートを得る生分解性シートの製造方法であることを特徴とする。 【0017】 好ましくは、請求項8に係る発明のように、請求項7に記載の生分解性シートの製造方法において、該澱粉樹脂は、澱粉質の含量が70重量%以上となるように、澱粉及びオレフィン樹脂を混練し、当該混練物を押出成形した後、裁断することにより原料ペレットを形成し、該原料ペレットを乾燥させたものであることを特徴とする。 【0018】 そして、好ましくは、請求項9に係る発明のように、請求項8に記載の生分解性シートの製造方法において、原料ペレット中の水分含有量が2重量%以下、好ましくは0.2?0.4重量%となるように乾燥させることを特徴とする。 【0019】 また、請求項10に係る発明は、請求項1又は2に記載の生分解性シートを少なくとも1枚積層させ、該シートを加熱して軟化させ、次いで軟化した状態のシートを真空型抜きまたは圧空型抜きをすることにより生分解性成型品を形成することを特徴とする生分解性成型品の製造方法であり、特に、請求項11に係る発明では、請求項10に記載の生分解性成型品の製造方法において、前記型抜きに利用するメス金型の温度は、20?70℃に設定されることを特徴とする。 【発明の効果】 【0020】 請求項1に係る発明のように、澱粉質を70重量%以上、好ましくは75重量%?90重量%含むため、極めて生分解性が良く、しかも、該原料を120?180℃、好ましくは150?170℃、より好ましくは165℃近傍に保持しながら溶融し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取るため、澱粉質の熱的変性による変色や発泡を抑え、均一なシートを得ることが可能となる。 【0021】 しかも、澱粉質以外にはオレフィン樹脂、特に請求項2のようにポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有させているため、成形時の適度の流動性や成形後の結着性を確保することが可能となる。 さらには、該シートを成形して生分解性成型品を得る場合には、機械的強度も良好で、通気性及び保水性に優れた生分解性シートを用いた生分解性成型品を提供することができる。 【0022】 請求項3に係る発明のように、澱粉質を多く含むため粘性の高くかつ温度管理が難しい原料であっても、生分解性シートから加熱し真空成形または圧空成形することにより、プラスチック製シートで多用されている加熱真空成形機または加熱圧空成形機を用いて、容易に均質な成型品を得ることが可能となる。 【0023】 また、生分解性シートから成型品を形成するため、密閉成形型入・圧縮成形や、射出成形などと比較しても、請求項4に係る発明のように、0.2?0.8mmの薄いシートを引き延ばして成形することが可能となるため、原料の消費量を抑制し、低コスト化を達成することが可能となる。 【0024】 しかも、成型品の厚みを薄くすることで、脆弱となる機械的強度を補強するため、請求項5に係る発明のように、溝又は突起を設けることで容易に、強度を高めることが可能となる。 【0025】 さらに、原料として澱粉質を多く含むため、従来のプラスチック製成型品と比較して、通気性及び保水性が高く、澱粉質を養分として供給することも可能となるため、請求項6に係る発明のように、納豆菌などのように澱粉質を養分をして取り込む特性のある菌を生きたまま含有している食品を収容する容器として利用することにより、プラスチック製成型品より長期に渡り、生きた菌を含有する食品を提供することが可能となる。 【0026】 請求項7のように、澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより得られた生分解性シートを成形するため、澱粉質の熱的変性による変色や発泡を抑え、均一なシートを得ることが可能となる。しかも、澱粉質以外にはオレフィン樹脂を含有させているため、成形時の適度の流動性や成形後の結着性を確保することが可能となる。さらに、該シートを成形して生分解性成型品を得る場合には、機械的強度も良好で、通気性及び保水性に優れた生分解性シートを用いた生分解性成型品の製造方法を提供することができる。 【0027】 請求項8に係る発明のように、該澱粉樹脂は、澱粉質を含む原料をペレット状に成形し、該ペレットを融解してシートを形成するため、原料ペレットを成形する工程と、シートを成形する工程等が分離でき、各工程の管理が容易になると共に、製造拠点の分散化も可能となるため、生産性の向上及び製造リスクの分散、製造コストの低減が実現できる。また、例えばシート状の成形は二軸攪拌機を使用して実施することができ、得られるシートの厚さが均一に保持できる。 【0028】 また、原料ペレットにおいては、澱粉質やプラスチックが均一に混合されており、シートの生産量が変動しても、原料ペレットの供給量を調整することにより、常に均質なシートを製造することができる。しかも、請求項9に係る発明のように、原料ペレットを乾燥させる工程を経ることにより、含有水分量を調整でき、必要に応じて融解時に添加する結着剤の特性とも相まって、特性の安定した生分解性シートを製造することが可能となる。 【0029】 請求項10に係る発明により、生分解性シートを、1枚又は所望する厚さになるまで積層し、該シートが軟化する温度まで加熱した状態で、真空型抜きまたは圧空型抜きすることにより、均質な厚みを保持しながら必要な形状に加工することが可能となる。また、請求項11に係る発明のように、型抜きに利用するメス金型の温度は、20?70℃に設定することにより、シートの成形性、離型性を良好に保持することが可能となる。特に、メス金型の温度が20℃未満となると、シートの伸張性が低下し成形性が劣化する。また、70℃を超えると成形品の金型からの離型性が低下することとなる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0030】 以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。 本発明で用いる澱粉質としては、本発明に係る生分解性成型品が、食品に関連するものとして使用されることもあることから、利用者の安全性を考慮する観点から、天然物由来の澱粉質が望ましいが、必要に応じて、加工(変性)澱粉、及びこれらの混合物を使用することも可能である。澱粉質の原料としては、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、タピオカ、サゴ、キャッサバ、豆、葛、ワラビ、蓮、ヒシなどが利用できるが、特に原材料が安く大量に入手できる点から、トウモロコシがより好ましい。 【0031】 加工澱粉としては、天然澱粉に種々の物理的変性を行ったもの、例えば、α-澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等や、天然澱粉に種々の酵素変性を行ったもの、例えば、加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース分解澱粉、アミロペクチン分解澱粉等、天然澱粉に種々の化学処理をしたもの、例えば、酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、酸化処理を行ったジカルボン酸澱粉、アシル化を行ったアセチル澱粉、その他の化学変性澱粉誘導体、例えば、エステル化処理を行ったエステル澱粉、エーテル化処理を行ったエーテル化澱粉、架橋剤で処理した架橋澱粉、2-ジメチルアミノエチルクロライドでアミノ化したようなカチオン化澱粉等がある。エステル化澱粉としては、酢酸エステル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、キサントゲン酸エステル化澱粉、アセト酢酸エステル化澱粉等、エーテル化澱粉としては、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉等、カチオン化澱粉としては、澱粉と2-ジメチルアミノエチルクロライドや2-ジエチルアミノエチルクロライドの反応物、澱粉と2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの反応物など、架橋澱粉としては、ホルムアルデヒド架橋澱粉、アルデヒド架橋澱粉、ジアルデヒド架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉などがある。 【0032】 本発明では、澱粉質にプラスチック等の樹脂を混合した、いわゆる澱粉樹脂を原料として用いている。これは、澱粉質のみの原料に更に、耐水性、耐熱性、機械的強度、加熱成形時の流動性等を付与するために混合されるものであり、好ましくは、原料中10?30重量%、さらに好適には15?25重量%となるように混合する。 【0033】 澱粉質に混合するプラスチックとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリルまたはポリメタクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、ポリエステル系樹脂またはリサイクルポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタ-ル系樹脂等、前記樹脂の1種ないし2種以上を混合して使用することができる。本発明では、特に、成形時の強度を高めるため、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂を好適に使用できる。 【0034】 次に澱粉質とプラスチックなどの原料から直接、生分解性シートや生分解性成型品を製造することも可能であるが、本発明に係る生分解性のシートや成型品は、澱粉質を70重量%、好ましくは75?90重量%含有するため、温度管理が難しく、更に製造コストの低減を図るため、従来のプラスチック製シートや容器などの製造ラインを再利用する観点から、まず、原料を均一に混合した原料ペレットを製造し、該原料ペレットを必要な量だけ融解させて、生分解性シートを形成するものである。 【0035】 また、生分解性成型品については、原料ペレットを融解して、射出成型することも可能ではあるが、高濃度の澱粉質を有する原料のため、温度管理の難しさや高い粘性のため、厚みが薄くかつ均質な成型品を得るには、一旦、シート状に加工した上で、該シートを軟化し、真空型抜きまたは圧空型抜き成型する方法が、量産が可能で、より低コストで良質な製品を得ることができる。 【0036】 さらに、原料から原料ペレットを、次いで該原料ペレットを用いて生分解性シートを、そして該生分解性シートを用いて生分解性成型品を製造するというように、製造工程を複数のプロセスに分離することにより、製造工程の管理が容易になると共に、製造拠点の分散化も可能となるため、生産性の向上及び製造リスクの分散、製造コストの低減が実現できる。 【0037】 原料ペレットの製造方法としては、原料である澱粉質とプラスチック等を均一に混合し、製造された原料ペレットが、通常の保管・搬送状態でも、形状や特性を維持することが可能となる方法であるなら、公知の混練や融解による混合方法が利用可能である。 【0038】 ただし、澱粉質の温度管理を適正に行う観点から、エクストルーダなどの温度制御が容易にできる混練機械を利用した方法が、より望ましい。 【0039】 エクストルーダを用いた原料ペレットの製造方法の好適例を説明すると、製造機械は、互いに内向きに旋回する二軸のエクストルーダを利用し、原料供給タンクを少なくとも一つ、望ましくは二つ以上、該軸の方向に配置する。例えば、第1の供給タンクからは澱粉質を、第2の供給タンクからはプラスチックを、各々供給すると共に、二軸のエクストルーダにより、原料を粉砕、混練しながら軸方向に搬送する。また、各供給タンクは温度制御がされており、澱粉質は、大気温度、プラスチックは100?160℃程度に保持される。原材料の時間当たりの供給量は、エクストルーダの一端側から押し出される粘稠状の原料混合物における原料の割合が、澱粉質が70重量%以上、好ましくは澱粉質が75?90重量%で、プラスチックが10?25重量%の範囲となるように、各供給タンクの供給量を調整する。 【0040】 エクストルーダから押し出される粘稠状の原料混合物を、冷却し、所定の長さに裁断して、原料ペレットを形成する。 【0041】 次に、澱粉質生分解性シートの製造方法について好適例により説明する。 【0042】 また、澱粉質は、とうもろこし等の澱粉質を製造する原料から澱粉質を取り出す調製をする際、または上記原料ペレットを製造する際、さらには保管している際に、水分を含有あるいは空気中の水分を吸湿するなど、澱粉質は、湿気を含み易い性質があるため、原料ペレットを乾燥させる。乾燥方法としては、熱風乾燥など公知の技術が利用可能である。好適には、原料ペレット中の水分含有量が2重量%以下、好適には0.2?0.4重量%となるように、即ち、可能な限り水分量が少なくなるように、乾燥させることが望ましい。 【0043】 次いで、乾燥させた原料ペレットを融解させ、好適には180℃程度の温度で融解させ、エアー冷却しながら、融解物の温度を120?180℃、好ましくは150?170℃に、より好ましくは165℃近傍に維持し、二軸ローラを利用してシート状に成形する。また、ローラを水冷却しながらシート状に成形することも可能である。その後、シートを空気又は自然冷却により冷却、好ましくは60℃以下に冷却し、ロール状に巻き取る。シート形成時の延伸用ローラは、一軸ローラでも可能であるが、一軸の場合は、駆動ローラの負担が大きく温度上昇を招き、生分解性シートの発泡、変色の原因となる場合もあるため、二軸ローラを用いることが好ましい。融解時の温度が200℃、特に220℃を超えると、溶融用容器内で、澱粉質が硬化・発泡し、均質なシートを形成すること難しくなる。また、シート形成時の温度が180℃を超えると、形成されたシートに気泡の発生が目立ち、また、一旦温度が下がり再度上昇すると、変色が発生し易くなる。さらに、120℃より低い温度では、融解した原料の粘性が高く、均質な厚み・密度を有するシートが形成できない。また、好適範囲である150?170℃、更に好適である165℃近傍であると、シート製造時の異臭の発生を防止できるとともに、発泡現象を有効に抑制でき、良質なシートが得られるとともに生産時間が短くなるため生産コストが低下し望ましい。 【0044】 得られたシートは、澱粉質とプラスチックとが完全に結合した状態にないと考えられ、多孔性であり、通気性が良好であるとともに、保水性も優れるものである。 【0045】 更に、必要に応じて、原料ペレットの融解時に結着剤を添加しても良い。結着剤は、シート状に成形した際の、澱粉質間又は澱粉質とプラスチックとの結着性能を高め、形状保持性を向上させることを目的として使用される。かかる結着剤を添加することにより、シート成形後の引張強度等の機械的強度が増加し、生分解性シートの取扱い、及び、生分解性成型品に再加工する際の、製造工程における搬送作業等を安定的に行うことが可能となり、更に、シート状態での長期保管も可能となる。 【0046】 かかる結着剤としては、原料ペレット中に含まれるプラスチックと同様の高分子樹脂を使用することができるが、成形強度を高める点から、ポリプロピレンが好適に使用できる。また、ポリエチレンを添加することにより伸張性を改善することができる。 【0047】 また、生分解性シートの耐水性や吸湿防止、また保存時の変色防止などを目的として、種々の添加剤を添加することも可能である。結着剤や添加剤の添加量は、シート状に成形した際のシート中の澱粉質の含有量が70重量%以上、好ましくは75?90重量%となる範囲であれば、任意に調整可能であるが、原料ペレットから乾燥工程で減少した水分量に相当する量を添加するように構成することが、望ましい。 【0048】 このような製造方法により、1mm以下の汎用性の高い均質な生分解性シートが形成でき、特に、0.005mm程度までは、均質な生分解性シートの形成が可能であることが確認されている。また、後述する生分解性成型品に利用するものとしては、生分解性シートの厚みが0.2?0.8mm程度が好ましい。 【0049】 次に、生分解性成型品の製造方法について好適例により説明する。 【0050】 生分解性シートは、加熱ヒータ中を搬送される際に、加温させられて軟化し、好適には該シートの軟化点温度付近まで加温させられて上昇させられ、成型品に対応した金型で型抜き成形される。特に、容器などの均一な厚みを必要とする成型品を製造する際には、真空型抜き成型または圧空成形が好ましく、真空型抜き成形の場合には、メス金型に真空吸着されると共に、該メス金型と嵌合するオス金型により、型抜きが行なわれ、そしてメス金型に吸着した状態で、急速に20?70℃の範囲の温度に冷却される。 【0051】 この際のメス金型温度は、20?70℃に保持することが望ましく、これはシートの成形性や金型から成形品を離型するのに好適な温度だからである。つまり、20℃未満である場合には、シートの伸張性が低下し成形性が劣化する。また、70℃を超えると成形品の金型からの離型性が低下することとなる。 【0052】 ただし、離型性を改善するためには、離型剤を塗布して、離型性を良好にすることも可能である。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンを原料に含む場合には、メス金型温度を80℃程度にまで上昇させて、シート表面に離型剤を塗布したものを用いることにより、成形品を製造することが可能である。 【0053】 シートを軟化させて型抜きする際、型抜きのショット時間に応じて、シートを軟化させる環境条件を種々変化させることができ、例えばショット時間(型抜き1回あたりの時間)が9?10秒の場合にはシートを加温するヒータ温度を380?400℃に、またショット時間が11?14秒の場合には280?300℃に、さらにショット時間が15?20秒の場合には180?220℃に調整し、型抜き時にシートが最適な軟化状態を保持するよう、ヒータ温度やヒータ空間のシートの通過時間を設定することが好ましい。このように、容器成形時の温度管理を型抜き時間(ショット時間)との関連で行うことにより、製造コストを大幅に低下させることができる。 【0054】 また、真空成形の際の真空の程度は、型抜き成形が実施できれば特に限定されないが、例えば、その程度をメス型の吸引量で表すと、40m^(3)/時?200m^(3)/時であることができる。さらに、シートに対して上方にメス金型を、下方にオス金型を配置し、メス金型では空気を吸引すると共に、オス金型側から空気を送風するよう構成する。これにより、軟化したシートに空気を吹き付けながらシートを押し上げ、メス金型の吸引力によりシートをメス金型の壁面に吸着させ、シートを適切に引き伸ばしながら、均質な厚みの容器を形成する。 【0055】 上記の製造方法によれば、例えば、容器の深さが10?60mm程度のものである場合には、1mm以下、好ましくは0.2?0.8mm、より好ましくは0.4?0.5mm程度の厚みの生分解性シートを利用することにより、容易に均質な容器を形成することが可能となる。 【0056】 また、圧空成形の場合には、例えば成形する容器の深さが約2cm以下の場合に、圧空成形機を用いて成形することも可能である。圧空成形する場合の型抜きの温度条件等は、上記真空成形の場合と同様である。 【0057】 得られた成形品は、澱粉質とプラスチックとが完全に結合した状態にないと考えられ、多孔性であり、通気性が良好であるとともに、保水性も優れるものである。 【0058】 上記説明では、生分解性シートを1層で利用する方法を説明したが、該シートを2層以上積層し、上述した方法と同様に、該シートの軟化点まで加熱し、型抜き成型することも可能である。 【0059】 さらに、成型品の成形時に、型抜きで残ったバリについては、溶融することにより再生分解性シートの原料とすることが可能であるため、生分解性シートの製造工程に還元し、再利用することも可能である。 【0060】 成型品形成時の生分解性シートの軟化点温度について説明する。図1は、本発明に係る生分解性シートの軟化点温度を測定したものである。 【0061】 実験で使用した生分解性シートは、澱粉質が70重量%、ポリプロピレンが28重量%、必要に応じて添加した結着剤としてのポリプロピレンが2重量%のものであり、シートの厚みが0.5mmである。 【0062】 測定方法としては、示差走査熱量測定方法(DSC3100;MACSCIECE社製)を利用し、毎分1℃で温度を上昇させながら、1秒毎の吸熱速度の変化を測定したものである。 【0063】 図1のグラフが示すように、116?124℃付近に軟化点が存在し、本発明に係る澱粉質を多量に含む生分解性シートは、主として115?125℃に軟化点が存在する。 【0064】 また、本発明に係る生分解性シートは、軟化点における吸熱速度が、ポリプロピレンなどより1.5倍程度高いため、通常のプラスチック製成型品の製造と比較しても、より厳密な温度管理が必要であることが理解される。 【0065】 生分解性成型品としては、食品などの包装に利用される使い捨て容器や、使い捨てフォークやスプーンなどの食器、各種梱包に利用されるスペース材やクッション材として利用することも可能である。また、生分解性シートを薄く成形し、熱融着などを利用して、ごみ袋や包装袋、使い捨て衣類などを形成することも可能である。 【0066】 厚みが薄く、立体的形状を必要とする生分解性成型品においては、上述したように、一旦、生分解性シートを形成し、該シートを加熱し真空型抜き又は圧空型抜きすることにより、成型品全体にわたり均質な厚みの成型品を得ることが可能となる。特に、厚みの薄い容器を形成することにより、原材料の消費を抑え、低コスト化できると共に、廃棄した場合でも、ゴミの容量を抑え、生分解の速度も速くなるなど、極めて有用な効果を得ることができる。 【0067】 図2は、本発明に係る生分解性成型品の一つである、使い捨て容器を示す図である。 【0068】 図2(a)は、容器の上方から見た図であり、図2(b)は、図2(a)の一点鎖線A,Bにおける断面形状を示すものである。 【0069】 容器の厚みを減少すると、容器側面の機械的強度が減少するため、従来のプラスチック製容器と同様に取り扱うことが困難となる。このため、機械的強度を高めるため、容器の側面に溝又は突起を形成することが、好ましい。 【0070】 図2は、縦横の長さが約80?100mm、深さ約30mm程度の容器1であるが、該容器を0.5?1mmの生分解性シートを加熱真空型抜きで形成すると共に、幅1?2mm程度、深さ1mm程度の溝を、図2(a)に示すように、容器1の側面及び底面に、符号2?4のように形成することにより、通常のプラスチック(ポリプロピレン)製容器と同等の機械的強度が確保できた。 【0071】 溝は、機械的強度を強化すべき面に形成することで、ある程度の改善が期待できるが、容器の立体形状に対する変形を防止するためには、図2(a)のように、少なくとも連続する2つの面に渡る共通の溝2?4を形成することが、好ましい。また、溝同士を符号3のように交差させることにより、溝同士の機械的結合力も高めることが可能となり、より強度の高い容器が形成できる。さらに、溝の交差点に、該溝より高い又は広い形状を有する突起5を形成することにより、溝同士の結び付きをより強固にすることが可能となる。 【0072】 本発明に係る生分解性シートや生分解性成型品は、廃棄されても自然分解し、環境への負荷の軽減に役立つものであるが、それ自体が澱粉質を多量に含み、更には、通気性及び保水性が良好であるため、澱粉質を養分とする菌が含まれる食品を、上述した生分解性容器で包装することにより、菌を生きた状態で流通・保存することが可能となる。 【0073】 例えば、納豆菌、パン酵母菌、乳酸菌、麹菌などのように、食品の製造過程だけでなく、納豆、パン生地、乳酸食品、酒類など、流通過程でも菌を生きた状態に保つことが必要な食品においては、特に、本発明に係る生分解性容器は、利用価値が高いものである。 【実施例】 【0074】 以下、本発明に係る実施例について説明する。 【0075】 (実施例1) 原料として、トウモロコシ澱粉質70重量%、ポリエチレン30重量%を、二軸のエクストルーダにより混練し、エクストルーダから押し出される原料混合物を、0.5?5mmの長さに裁断して、原料ペレットを形成した。 【0076】 原料ペレットを、熱風を当てながら、水含有量が0.2重量%となるまで乾燥させた。乾燥した原料ペレットに、結着剤としてポリプロピレンを、上記ポリエチレンとの合計重量が30重量%となるように添加して、180℃で融解し、融解した原料を、空気冷却しながら165℃近傍に維持し、二軸ローラにより、厚さ0.5mmの生分解性シートを形成した。 【0077】 (材質及び溶出試験) 実施例1の試料について、「合成樹脂製の器具又は容器包装規格試験(ポリエチレン)」(厚生省告示第20号)に基づき、材質試験及び溶出試験を実施した。結果は、次のとおりであり、実施例1の試料が上記規格に適合するものであることがわかる。 ・材質試験 カドミウム・・・・1ppm未満(規格基準100ppm以下) 鉛・・・・・・・10ppm未満(同100ppm以下) ・溶出試験 重金属(Pbとして)・・・1ppm未満(同1ppm以下) 過マンガン酸カリウム消費量・・・1.5ppm以下(同10ppm以下) 蒸発残留物(n-ヘプタン浸出)・・84ppm以下(同150ppm以下) 同(20%エタノール浸出)・・9ppm以下(同30ppm以下) 同(水浸出)・・・11ppm以下(同30ppm以下) 同(4%酢酸浸出)・・・11ppm以下(同30ppm以下) 【0078】 (生分解性シートの物性試験) 実施例1の生分解性シートについて、「ポリエチレン分解性地膜シート」(Q/12XT3832-99)に基づき試験を行った。試験結果を表1に示す。 【0079】 引張り強度や断裂伸張率は、試料を鉄アレー型に成形し、幅は10mm、有効長さは40mm、試料全長は120mm、試験速度は500±50mm/分とし、5つのサンプルを試験した平均値を示している。 【0080】 また、直角に亀裂を入れた試験では、試験速度を200±20mm/分とし、破断時の最大値を測定した。 【0081】 【表1】 ![]() 【0082】 (生分解性シートの分解性能試験) 実施例1と同様に生分解性シートを製造する際に、澱粉質の含有量を0?80重量%の範囲で変化させ、シートの厚さを0.5mmとなるように成形した試験体を用いて、「プラスチック、微生物行為の判定」(ISO846)に基づき試験を行った。試験結果を表2に示す。 【0083】 ただし、試験期間は30日であり、使用した菌は、黒曲菌である。 菌の繁殖面積と繁殖レベルとの関係は、次のとおりである。 繁殖レベル0:無繁殖 同レベル1:目で確認できなく顕微鏡の下で見える状態。 同レベル2:目で確認できる繁殖面積が25%未満 同レベル3:目で確認できる繁殖面積が50%未満 同レベル4:はっきり繁殖することを確認できる繁殖面積が50%超 同レベル5:大量に繁殖し繁殖面積が100%のもの 【0084】 【表2】 ![]() 【0085】 上記試験結果により、本発明に係る生分解性シートは、衛生的に極めて安全であることがわかる。しかも、機械的特性がポリエチレン製シートと同等以上であり、生分解性も優れたものであることが理解される。 特に、生分解性においては、澱粉質を60重量%以上含むものにおいては、菌の繁殖面積も全体におよび、極めて良好な生分解性能を示すことが確認できる。 【0086】 (実施例2) 次に、ポリエチレンをポリプロピレンに代えた以外は、実施例1と同様な製造方法により、厚さ0.5mmの生分解性シートを形成し、該シートを加熱して軟化させ、真空型抜きにより、図2に示すような生分解性容器を成形した。 【0087】 (生分解性容器の強度試験等) 実施例2の生分解性容器を、ポリプロピレン製容器の代わりとして、納豆製造ライン(納豆を容器に入れると共に、容器上面をフィルムで封止する作業を自動化した生産ライン)で使用したところ、容器の凹みや、傷・ひび割れ・へこみ等の発生が無く、従来のポリプロピレン製容器と比較しても、同等の機械的強度を有していることが確認された。 【0088】 しかも、実施例2で利用した生分解性シートとポリプロピレン・シートと対し、動的粘弾性測定を行ったところ、本発明の生分解性シートは、-30℃においてもポリプロピレン・シートと同等以上の特性を有し、冷凍食品等の容器としても好適であることが確認された。 【0089】 (生分解性容器の菌含有食品の保存性試験) また、実施例2の生分解性容器と通常のポリエチレン製容器に、各々納豆食品を入れ、フィルムで封止し、常温における保存状態を確認した。 【0090】 ポリエチレン製容器においては、2週間で、納豆が黒色に変色し、納豆菌の多くが死滅していることが確認されるが、生分解性容器においては、1ヶ月経過後においても、納豆菌が生きており、しかも粘り気が増加しており、菌の繁殖が進んでいることが確認された。 【産業上の利用可能性】 【0091】 本発明によれば、生分解性に優れると共に、成形性が良好な生分解性シートや該シートを利用した生分解性成型品を安価に提供することが可能となる。 【0092】 すなわち、厚みが薄く、立体的形状を必要とする生分解性成型品においては、上述したように、一旦、生分解性シートを形成し、該シートを加熱真空型抜きすることにより、成型品全体にわたり均質な厚みの成型品を得ることが可能となる。特に、厚みの薄い容器を形成することにより、原材料の消費を抑え、低コスト化できると共に、廃棄した場合でも、ゴミの容量を抑え、生分解の速度も速くなるなど、極めて有用な効果を得ることができる。 【0093】 また、本発明に係る生分解性シートや生分解性成型品は、強度も十分に有するとともに、廃棄されても自然分解を例えば6ヶ月?1年で分解し、環境への負荷の軽減に役立つものであるが、それ自体が澱粉質を多量に含むため、澱粉質を養分とする菌が含まれる食品を、上述した生分解性容器で包装することにより、菌を生きた状態で流通・保存することが可能となる。 【0094】 本発明の製造方法によれば、前記本発明の生分解性シート及び該シートを利用した生分解性成型品を、特に大きな設備投資を要することなく、市場で使用されているプラスチック製の容器を製造する既存の装置を用いることができ、簡便かつ極めて経済的に大量に量産できる方法を提供することができる。 【0095】 本発明に係る生分解性シートや生分解性成型品は、澱粉質を多量に含むため、澱粉質を養分とする菌が含まれる食品を、本発明の生分解性シートまたは生分解性容器で包装することにより、菌を生きた状態で流通・保存することが可能となる。 【0096】 例えば、納豆菌、パン酵母菌、乳酸菌、麹菌などのように、食品の製造過程だけでなく、納豆、パン生地、乳酸食品、酒類など、流通過程でも菌を生きた状態に保つことが必要な食品においては、特に、本発明は利用価値が高いものである。 【0097】 さらに、生分解性成型品としては、食品などの包装に利用される使い捨て容器や、使い捨てフォークやスプーンなどの食器、各種梱包に利用されるスペース材やクッション材として利用することができる。また、生分解性シートを薄く成形し、熱融着などを利用して、ごみ袋や包装袋、使い捨て衣類などを形成することも可能となる。 【図面の簡単な説明】 【0098】 【図1】本発明に係る生分解性シートの吸熱速度変化を示す線図である。 【図2】本発明に係る生分解性容器一例の上面図(a)及び断面図(b)である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより得られることを特徴とする、生分解性シート。 【請求項2】 請求項1に記載の生分解性シートにおいて、該オレフィン樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかを含有することを特徴とする、生分解性シート。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の生分解性シートを、加熱し真空成形または圧空成形することにより得られることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項4】 請求項3に記載の生分解性成型品において、該生分解性シートの厚みは、0.2?0.8mmであることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項5】 請求項3又は4に記載の生分解性成型品において、該成型品は、機械的強度を高めるための溝及び/又は突起が設けられていることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項6】 請求項3乃至5のいずれかに記載の生分解性成型品において、該生分解性成型品が、澱粉質を養分とする菌を含む食品を収容する容器であることを特徴とする、生分解性成型品。 【請求項7】 澱粉質を70重量%以上含みかつ該澱粉質とオレフィン樹脂とのみからなる澱粉樹脂を温度120?180℃で融解し、冷却を施したローラでシート状に成形すると共に、60℃以下に冷却してロール状に巻き取ることにより生分解性シートを得ることを特徴とする、生分解性シートの製造方法。 【請求項8】 請求項7に記載の生分解性シートの製造方法において、該澱粉樹脂は、澱粉質を70重量%以上となるように、澱粉質及びオレフィン樹脂を混練し、当該混練物を押出成形した後、裁断することにより原料ペレットを形成し、該原料ペレットを乾燥させたものであることを特徴とする、生分解性シートの製造方法。 【請求項9】 請求項8に記載の生分解性シートの製造方法において、前記原料ペレットの乾燥は、原料ペレットの水分含有量が2重量%以下となるように乾燥させることを特徴とする、生分解性シートの製造方法。 【請求項10】 請求項1又は2に記載の生分解性シートを少なくとも1枚積層させ、該シートを加熱して軟化させ、次いで軟化した状態のシートを真空型抜きまたは圧空型抜きをすることにより生分解性成型品を形成することを特徴とする、生分解性成型品の製造方法。 【請求項11】 請求項10に記載の生分解性成型品の製造方法において、真空型抜きまたは圧空型抜きに利用するメス金型の温度は、20?70℃に設定されることを特徴とする、生分解性成型品の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-03-04 |
結審通知日 | 2009-03-09 |
審決日 | 2009-03-30 |
出願番号 | 特願2006-156625(P2006-156625) |
審決分類 |
P
1
113・
113-
YA
(C08J)
P 1 113・ 537- YA (C08J) P 1 113・ 121- YA (C08J) P 1 113・ 536- YA (C08J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大熊 幸治、天野 宏樹 |
特許庁審判長 |
渡辺 仁 |
特許庁審判官 |
亀ヶ谷 明久 野村 康秀 |
登録日 | 2006-07-28 |
登録番号 | 特許第3832668号(P3832668) |
発明の名称 | 生分解性シート及びその製造方法、並びに当該シートを用いた生分解性成型品及びその製造方法 |
代理人 | 田村 爾 |
代理人 | 三輪 昭次 |
代理人 | 竹林 則幸 |
代理人 | 杉村 純子 |
代理人 | 杉村 純子 |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 田村 爾 |
代理人 | 石井 淑久 |