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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1200734 |
審判番号 | 不服2007-21754 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-06 |
確定日 | 2009-07-15 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第258031号「二重層を有する半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月12日出願公開、特開平 8-181206〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成7年10月4日の出願(パリ条約優先権 1994年10月5日、ドイツ連邦共和国)であって、平成19年4月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年9月5日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成19年9月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成19年9月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正の内容 本件補正は、補正前の請求項1及び2を補正後の請求項1及び2と補正するものであって、補正後の請求項1及び2は、以下のとおりである。 「【請求項1】 半導体材料の第1の層(2) と、 前記半導体材料の第1の層を覆っている誘電体絶縁層(11)と、 前記誘電体絶縁層(11)を覆っている半導体材料の第2の層(1) と、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とを貫通して形成されてその下の前記半導体材料の第1の層(2) の上面の選択された領域を露出させている少なくとも1つのコンタクト開口(5) と、 この少なくとも1つのコンタクト開口(5) により露出された前記半導体材料の第1の層(2) の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つのコンタクト(3) とを具備している二重層を有する半導体装置において、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とは前記コンタクト開口(5) を除く前記半導体材料の第1の層の上面全体を完全に覆っており、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)の前記コンタクト開口(5) における端部は前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ位置に配置され、前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ距離を隔てて形成されている半導体装置。 【請求項2】 前記第1の層(2) と前記第2の層(1) はポリシリコンから形成されている請求項1記載の半導体装置。」 2.補正内容の整理 補正事項1 補正前の請求項1の「具備し、」を、補正後の請求項1の「具備している二重層を有する半導体装置において」と補正するとともに、補正前の請求項1の「二重層を有する半導体装置。」を補正後の請求項1の「半導体装置。」と補正すること。 補正事項2 補正前の請求項1の「前記コンタクトは前記第1の層の表面に沿った方向で前記第2の層から距離を隔てて形成されている」を、補正後の請求項1の「前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ距離を隔てて形成されている」と補正すること。 補正事項3 補正後の請求項1の「前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ距離を隔てて形成されている」の前に、補正後の請求項1の「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とは前記コンタクト開口(5) を除く前記半導体材料の第1の層の上面全体を完全に覆っており、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)の前記コンタクト開口(5) における端部は前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ位置に配置され、」を追加すること。 補正事項4 補正前の請求項1の「半導体材料の第1の層」、「誘電体絶縁層」、「半導体材料の第2の層」、「コンタクト開口」、「コンタクト」、及び補正前の請求項2の「前記第1の層」、「前記第2の層」を、それぞれ、補正後の請求項1の「半導体材料の第1の層(2)」、「誘電体絶縁層(11)」、「半導体材料の第2の層(1)」、「コンタクト開口(5)」、「コンタクト(3)」、及び補正後の請求項2の「前記第1の層(2)」、「前記第2の層(1)」と補正すること。 3.本件補正についての検討(その1)(特許法第17条の2第3項及び第4項) (1)補正の目的の適否及び新規事項の追加について 補正事項1について 補正事項1についての補正は、本件補正の前後において、「二重層を有する半導体装置」の「二重層を有する」の記載位置を変更したものであり、その技術的意義は変更されておらず、補正事項1についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当する。 また、補正事項1についての補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。 したがって、補正事項1についての補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たす。 補正事項2について 補正事項2についての補正は、補正前の請求項1の「前記コンタクトは前記第1の層の表面に沿った方向で前記第2の層から距離を隔てて形成されている」を、補正後の請求項1の「前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ距離を隔てて形成されている」と発明特定事項を限定するものである。 しかしながら、補正後の請求項1の「前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ距離を隔てて形成されている」の内、「コンタクト(3)」が「前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から」「同じ距離を隔てて形成されている」点に関しては、本願の図4、図5にコンタクト3がコンタクト開口5のほぼ中央に形成されているように記載され、また、本願の明細書に「【0008】図4は、本発明による相互接続構造の平面図を示す。ここにおいて、従来技術とは異り、下部層2は上部層1によって完全にカバーされる。下部層2に対してコンタクト3を形成することができるように、開口5が例えばエッチングによって上部層1に形成される。この場合前記従来の場合と異なって単一の層の厚さしかエッチングされないため、前記のようなスペーサが残ることはない。 【0009】図5は、図4のラインC-Cに沿った断面を示す。図4と関連して既に説明された特徴に加えて、絶縁層(誘電体11)が認められる。 【0010】以上、本発明による構造は、上部層がエッチングされなければならない領域においてエッチングされるべき層の厚さが単一の層の厚さであるため、スペーサの形成が避けられるという利点を有する。」及び、【図面の簡単な説明】に「【図4】 本発明による相互接続構造の平面図。 【図5】 図4のC-Cにおける断面図」と記載されているのみである。 したがって、本願の図面(図4及び図5)のみを根拠として、「コンタクト(3)」が「前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から」「同じ距離を隔てて形成されている」ことが記載されているとは言えないから、補正事項2についての補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 よって、補正事項2についての補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する。 補正事項3 補正事項3についての補正は、補正前の請求項1に、補正後の請求項1の「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とは前記コンタクト開口(5) を除く前記半導体材料の第1の層の上面全体を完全に覆って」いること(補正事項3-1)、及び、「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)の前記コンタクト開口(5) における端部は前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ位置に配置され」ること(補正事項3-2)とに区分して検討する。 補正事項3-1についての補正は、半導体材料の第1の層の上面が、半導体材料の第2の層(1) と誘電体絶縁層(11)とによりどの程度覆われているかについて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、補正事項3-2についての補正は、「半導体材料の第2の層(1)」 と「誘電体絶縁層(11)」との前記コンタクト開口(5) における端部の位置関係について限定するものであるが、「半導体材料の第2の層(1)」と「誘電体絶縁層(11)とを貫通して」「コンタクト開口(5)」が形成されるときに、「半導体材料の第2の層(1)」及び「誘電体絶縁層(11)」との端面は同じ平面として形成されるものであって、「半導体材料の第2の層(1)」と「誘電体絶縁層(11)」との前記コンタクト開口(5) における端部について、「前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ位置に配置され」ると限定するものであるから、補正事項3-2についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 したがって、補正事項3についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、補正事項2についての補正を含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 4.本件補正についての検討(その2)(特許法第17条の2第5項) 仮に、本件補正が、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反せず、かつ、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定を満たし、同条同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、更に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるか否かについて検討する。 4-1.補正後の請求項1は、上記「第2 1.」に記載したとおりである。 4-2.刊行物に記載される発明 刊行物1.特開平5-211287号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開平5-211287号公報には、図1及び図2とともに以下の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 下層導体層と、その表面に接して設けられ、下層電極取り出し用の開口を有する容量絶縁膜と、前記容量絶縁膜の表面に接して設けられ、前記開口の上部に開口を有する上層導体層と、前記開口に露出した表面において前記下層導体層に接し、前記上層導体層とは絶縁して、前記上層導体層上にとり出された下層電極とを有することを特徴とする容量素子。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は半導体集積回路における容量素子の構造に関し、特に導体と絶縁膜で構成される容量素子の構造に関する。 【0002】 【従来の技術】従来の導体と絶縁膜で構成される容量素子の構造を、図3(A),(B)に示す。同図(A)は断面図、同図(B)は平面図である。半導体基板1上のフィールド絶縁膜8上に下層導電膜2が形成され、その上に容量絶縁膜4が形成されている。容量絶縁膜4上に上層導電膜3を、下層導電膜2より小さな面積で形成した後、全面に絶縁膜5を成長させる。上層導電膜3上の絶縁膜5を選択的に開口して上層電極7をとり出し、下層導電膜2上の容量絶縁膜4,絶縁膜5を選択的に開口して下層電極6がとり出された構造となっている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】この従来の導体と絶縁膜で構成される容量素子では、下層導体の電極を設けるために、下層導体の面積を上層導体より大きくしなければならないため、素子の占有面積が必要以上に大きくなるという問題があった。 【0004】また、下層導体より小さくなるように上層導体をエッチングする際に、下層導体上の容量絶縁膜もエッチングにさらすために、下層導体と上層導体との間の容量絶縁膜までエッチングされることとなり、短絡の恐れ、及び容量低減等の素子機能の低下の恐れがある、という問題点があった。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、下層導体層と、その表面に接して設けられ、下層電極取り出し用の開口を有する容量絶縁膜と、容量絶縁膜の表面に接して設けられ、前記開口の上部に開口を有する上層導体層と、前記開口に露出した表面において下層導体層に接し、前記上層導体層とは絶縁して、上層導体層上にとり出された下層電極とを有する容量素子を得る。 【0006】 【実施例】次に本発明について図面を参照して説明する。 【0007】図1(A),(B)は本発明の第1の実施例を示す、容量素子の断面図と平面図である。半導体基板1をフィールド絶縁膜8で分離し、その上に約2000オングストロームの厚さで下層導電膜2を形成する。下層導電膜2は例えば不純物が添加された多結晶シリコンなどが適している。 【0008】次に下層導電膜2上に約300オングストロームの厚さで容量絶縁膜4を気相成長,熱酸化,熱窒化等によって成長させる。この容量絶縁膜4は例えばシリコン窒化膜などが適している。下層導電膜2および容量絶縁膜4上に、不純物が添加された多結晶シリコン等で上層導電膜3を約1000オングストロームの厚さで成長させ、下層導電膜2より大きくなるように加工する。 【0009】次に上層導電膜3および容量絶縁膜4を選択的にエッチングして開口し、下層導電膜2の一部表面を露出させる。次にシリコン窒化膜,シリコン酸化膜などの絶縁膜5を全面に約1000オングストロームの厚さで成長させた後、前記エッチング開口部の下層導電膜2上の絶縁膜5および、上層導電膜3上の絶縁膜5をフォトレジストを用いてパターニングした後にエッチングし、エッチングされた部分にそれぞれ下層電極6,上層電極7を設ける。 【0010】図2は本発明の第2の実施例を示す断面図である。 【0011】半導体基板1をフィールド絶縁膜8で分離し、その上に第1の実施例と同様の下層導電膜2を、横に並べて複数個形成した後、第1の実施例と同様の容量絶縁膜4をすべての下層導電膜2を覆うように成長させ、さらに、第1の実施例と同様の上層絶縁膜3をすべての下層絶縁膜2および容量絶縁膜4を覆うように形成する。 【0012】次に、上層導電膜3および容量絶縁膜4を選択的にエッチングして開口し、すべての下層導電膜2につき、その一部表面を露出させた後、シリコン窒化膜,シリコン酸化膜などの絶縁膜5を全面に約1000オングストロームの厚さで成長させる。 【0013】次に、前記エッチング開口部のすべてにつき、下層導電膜2上の絶縁膜5を、フォトレジストを用いてパターニングし、さらに、すべての下層導電膜2につき、その上部に位置する上層導電膜3の部分について、その上部の絶縁膜5をフォトレジストを用いてパターニングし、エッチングして、エッチングされた部分のそれぞれにつき、下層電極6,または上層電極7を設ける。 【0014】 【発明の効果】以上説明したように本発明は、上層導体と容量絶縁膜の一部を選択的にエッチングして下層導体の表面を露出させることにより、下層電極をとり出す構造としたので、下層電極を設ける為に下層導体を上層導体より大きく形成する必要がなくなり、従来の容量素子に比べて素子面積を縮小することができるという効果を有する。例えば容量シリコン窒化膜厚約400オングストロームで約100fFの容量素子では、従来では約100μm^(2)の素子面積であったのに対して本発明の構造を用いると約60μm^(2)となり、約40%縮小することができる。 【0015】また、上層導体をエッチングする際、下層導体の表面の一部を露出させて下層電極を設ける目的で、その部分のみエッチングを行うので、目的以外の容量絶縁膜の部分をエッチングにさらして損傷することがなく、容量変動等を防ぐことができるという効果を有する。」 ・図1及び「次に下層導電膜2上に約300オングストロームの厚さで容量絶縁膜4を気相成長,熱酸化,熱窒化等によって成長させる。この容量絶縁膜4は例えばシリコン窒化膜などが適している。」(【0008】段落)との記載より、容量絶縁膜4が下層導電膜2を覆って形成されることは明らかである。 ・図1、「下層導電膜2および容量絶縁膜4上に、不純物が添加された多結晶シリコン等で上層導電膜3を約1000オングストロームの厚さで成長させ、下層導電膜2より大きくなるように加工する。」(【0008】段落)及び「次に上層導電膜3および容量絶縁膜4を選択的にエッチングして開口し、下層導電膜2の一部表面を露出させる。次にシリコン窒化膜,シリコン酸化膜などの絶縁膜5を全面に約1000オングストロームの厚さで成長させた後、前記エッチング開口部の下層導電膜2上の絶縁膜5および、上層導電膜3上の絶縁膜5をフォトレジストを用いてパターニングした後にエッチングし、エッチングされた部分にそれぞれ下層電極6,上層電極7を設ける。」(【0009】段落)との記載より、多結晶シリコンの上層導電膜3が容量絶縁膜4を覆って形成されること、エッチング開口部が上層導電膜3及び容量絶縁膜4を貫通して形成されていること、及び、エッチング開口部の下層導電膜2上に下層電極6が接続されていること、は明らかである。 ・図1及び【0009】段落の記載より、エッチング開口部において、上層導電膜3の側面と容量絶縁膜4の側面は、同じエッチング工程により形成されているから、ほぼ同じ位置に形成されていることは、明らかである。 ・図1及び【0009】段落の記載より、下層電極6は、絶縁膜5により、上層導電膜3及び容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において隔てられていることは明らかである。 したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「多結晶シリコンの下層導電膜2と、 前記下層導電膜2を覆う容量絶縁膜4と、 前記容量絶縁膜4を覆う多結晶シリコンの上層導電膜3と、 前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4とを貫通して形成されたエッチング開口部と、 前記エッチング開口部において前記下層導電膜2と接続された下層電極6とを備え、 前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4は、前記エッチング開口部以外の前記下層導電膜2のほぼ全面を覆っており、 前記上層導電膜3の内側の側面と前記容量絶縁膜4の内側の側面とは、ほぼ同じ位置に形成され、 前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において隔てられて形成されている容量素子。」 4-3.対比 補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物発明」という。)とを対比検討する。 (a)刊行物発明の「多結晶シリコンの下層導電膜2」及び「多結晶シリコンの上層導電膜3」が半導体材料から形成されていることは明らかであるから、刊行物発明の「多結晶シリコンの下層導電膜2」及び「多結晶シリコンの上層導電膜3」は、補正発明の「半導体材料の第1の層(2)」及び「半導体材料の第2の層(1)」に相当する。 (b)刊行物発明の容量絶縁膜4は、誘電体絶縁層であることは明らかであるから、上記(a)での検討をも考慮すると、刊行物発明の「前記下層導電膜2を覆う容量絶縁膜4」は、補正発明の「前記半導体材料の第1の層を覆っている誘電体絶縁層(11)」に相当する。 (c)上記(a)及び(b)での検討をも考慮すると、刊行物発明の「前記容量絶縁膜4を覆う多結晶シリコンの上層導電膜3」は、補正発明の「前記誘電体絶縁層(11)を覆っている半導体材料の第2の層(1)」に相当する。 (d)刊行物発明において、「エッチング開口部」により、「多結晶シリコンの下層導電膜2」の上面の一部の領域が露出されていることは明らかであるから、刊行物発明の「前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4とを貫通して形成されたエッチング開口部」は、補正発明の「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とを貫通して形成されてその下の前記半導体材料の第1の層(2) の上面の選択された領域を露出させている少なくとも1つのコンタクト開口(5) 」に相当する。 (e)刊行物発明の「下層電極6」が「エッチング開口部」により露出された「下層導電膜2の表面に形成され」ており、「エッチング開口部」により露出された「下層導電膜2の表面」が「下層導電膜2」の選択された領域であることも明らかであって、刊行物発明の「下層電極6」と、補正発明の「コンタクト(3)」とは、いずれも、刊行物発明の「多結晶シリコンの下層導電膜2」または補正発明の「半導体材料の第1の層(2)」と他の導体部分を接続するための導電性接続部材である点において共通し、刊行物発明の「前記エッチング開口部において前記下層導電膜2の表面に形成された下層電極6」は、補正発明の「この少なくとも1つのコンタクト開口(5) により露出された前記半導体材料の第1の層(2) の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つのコンタクト(3)」に対応する。 (f)刊行物発明の「下層導電膜2」と「上層導電膜3」が2重の層構造であることは明らかであるから、刊行物発明も、補正発明と同様に「二重層」を実質的に備えていることは明らかである。 (g)刊行物1の図1及び【0009】段落の記載より、「エッチング開口部」は、絶縁膜5を形成する前の開口部であるから、刊行物発明の「前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4」は、「前記エッチング開口部以外の前記下層導電膜2」の上面全面を覆っていることは明らかであるから、刊行物発明の「前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4は、前記エッチング開口部以外の前記下層導電膜2のほぼ全面を覆って」いることは、補正発明の「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とは前記コンタクト開口(5) を除く前記半導体材料の第1の層の上面全体を完全に覆って」いることに相当する。 (h)刊行物発明の「前記上層導電膜3の内側の側面と前記容量絶縁膜4の内側の側面」が、補正発明の「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)の前記コンタクト開口(5) における端部」に相当するから、刊行物発明の「前記上層導電膜3の内側の側面と前記容量絶縁膜4の内側の側面とは、ほぼ同じ位置に形成され」ることは、補正発明の「前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)の前記コンタクト開口(5) における端部は前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ位置に配置され」ることに相当する。 (i)上記(g)においても検討したとおり、「エッチング開口部」は、絶縁膜5を形成する前の開口部であり、刊行物発明の「前記上層導電膜3の内側の側面と前記容量絶縁膜4の内側の側面」は、「エッチング開口部」の側面となっていることは明らかであるから、刊行物発明の「前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において隔てられて形成されている」ことは、補正発明の「前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で」「隔てて形成されている」ことに相当する。 (j)刊行物1の図2には、複数の「容量素子」を形成した構造が記載されており、また、「容量素子」が半導体装置の一部を構成することは明らかであるから、刊行物発明の「容量素子」は、補正発明の「半導体装置」に相当する。 したがって、補正発明と刊行物発明とは、 「半導体材料の第1の層(2) と、 前記半導体材料の第1の層を覆っている誘電体絶縁層(11)と、 前記誘電体絶縁層(11)を覆っている半導体材料の第2の層(1) と、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とを貫通して形成されてその下の前記半導体材料の第1の層(2) の上面の選択された領域を露出させている少なくとも1つのコンタクト開口(5) と、 この少なくとも1つのコンタクト開口(5) により露出された前記半導体材料の第1の層(2) の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つの導電性接続部材とを具備している二重層を有する半導体装置において、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)とは前記コンタクト開口(5) を除く前記半導体材料の第1の層の上面全体を完全に覆っており、 前記半導体材料の第2の層(1) と前記誘電体絶縁層(11)の前記コンタクト開口(5) における端部は前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ位置に配置され、前記導電性接続部材は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で隔てて形成されている半導体装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 「このコンタクト開口(5) により露出された前記半導体材料の第1の層(2) の表面に形成されている「導電性接続部材」」の「導電性接続部材」として、補正発明が、「コンタクト(3)」を備えるのに対して、刊行物発明が、「下層電極6」を備えている点。 相違点2 補正発明が、「前記コンタクト(3) は、前記コンタクト開口(5) の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層(1) および前記誘電体絶縁層(11)の端部から前記半導体材料の第1の層(2) の表面に沿った方向で同じ距離を隔てて形成されている」との構成を備えているのに対して、刊行物発明が「前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において隔てられて形成されている」との構成を備えている点。 4-4.相違点についての検討 以下において、各相違点について検討する。 相違点1について (a)本願明細書の【0008】段落ないし【0010】段落、図4及び図5には、「コンタクト3」について、「図4は、本発明による相互接続構造の平面図を示す。ここにおいて、従来技術とは異り、下部層2は上部層1によって完全にカバーされる。下部層2に対してコンタクト3を形成することができるように、開口5が例えばエッチングによって上部層1に形成される。」(【0008】段落)と記載され、図4には、開口5のほぼ中央部に「コンタクト3」が記載され、図5に示された図4の断面図には、下部層2の表面のほぼ中央部に「コンタクト3」が記載されている。 しかしながら、下部層2に形成された「コンタクト3」と他の導電部材とどのように接続するか、「コンタクト3」が、どの段階で、どのように形成されるか、どの程度の大きさであるかについて何ら記載されていない。 (b)また、補正発明において、「半導体材料の第1の層(2)」は誘電体絶縁層(11)に覆われており、さらに、誘電体絶縁層(11)は「半導体材料の第2の層(1)」に覆われているから、「半導体材料の第1の層(2)」を外部の導電部材と導電接続するためには、コンタクト(3)を介して接続することが必要であることは明らかである。 (c)刊行物発明においては、下層導電膜2と外部と導電接続を図るために、下層電極6が形成されていることは明らかであって、単に、下層導電膜2と外部と導電接続するための導体(コンタクトための部材)としての機能を果たすためであれば、下層電極6は、エッチング開口部の形成により露出された下部導電膜2の表面の一部に形成されれば十分であること、言い換えると、下層導電膜2の大きさを必要に応じて適宜変更できることは、当業者にとって明らかである。 (d)上記(a)ないし(c)を考慮すると、相違点1については、補正発明と刊行物発明とは、実質的に相違しない。 (e)仮に、相違するとしても、刊行物発明において、「下層電極6」として、下部導電膜2の露出された表面の一部に形成する導体に、導体である「下層電極6」の形状を適宜変更して、刊行物発明が、補正発明の如く、「コンタクト開口(5)により露出された前記半導体材料の第1の層(2)の表面の選択された領域に形成されている」「コンタクト(3)」を備えたものとすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。 相違点2について (a)刊行物1の図1においては、下層電極6は、容量絶縁膜4と上層導電膜3との側面から、下層導電膜2の表面において、絶縁膜5の厚さだけ隔てられていることは明らかである。 (b)上記「相違点1について」において検討したとおり、刊行物発明において、下部導電膜2と外部と導電接続を図るために、下層電極6が形成されていることは明らかであって、単に、下層導電膜2と外部との導電接続するための導体(コンタクトための部材)としての機能を果たすためであれば、下層電極6は、エッチング開口部の形成により露出された下層導電膜2の表面の一部に導体が形成されていれば十分であることは当業者にとって明らかである。 (c)また、刊行物1の図1に記載される絶縁膜5は、下層導電膜2と導電接続された下層電極6と、上層導電膜3とが接触することを防止するために設けられたことは明らかである。さらに、上記(b)において検討したとおり、下層導電膜2と外部と導電接続するためであれば、下層導電膜2に形成する導電接続部(コンタクト)は下層導電膜2の一部の上に形成すれば良く、そのような導電接続部(コンタクト)と外部とを導電接続するための導電部材は、単に、導電的に接続できればよいことは当業者にとって明らかである。 (d)しかしながら、仮に、下層導電膜2の導電接続部(コンタクト)が小さく、導電接続部と導電的に接続する導電部材が小さく、細いものであったとしても、装置または素子の集積化を考慮すると、下層導電膜2から外部への導電接続のための導電部材と上層導電膜3との接触を防止するためには、導電接続のための導電部材と上層導電膜3との間に絶縁層(膜)を備えたものとするのが常套手段である。 (e)ここで、上記(d)において検討した、導電接続のための導電部材と上層導電膜3との間の絶縁防止の必要性がなければ、刊行物1の図1に記載される絶縁膜5も不要であることは明らかである。 (f)また、エッチング開口部により露出された、下層導電膜2の表面の一部に、外部と導電接続するための導電接続部(コンタクト)を形成する際には、設計上、導電接続部(コンタクト)とエッチング開口部の側面となる、容量絶縁膜4と上層導電膜3からの距離は、耐電圧等を考慮して等しい距離とすることは、技術常識である。 (g)上記(a)を考慮すると、刊行物発明において、「前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において」実質的に同じ距離を「隔てられて形成され」ており、仮に、「同じ距離」隔てていないとしても、刊行物発明において、「前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において」実質的に同じ距離を「隔てられて形成され」たものとすることは、当業者が容易になし得たものである。 (h)したがって、相違点2については、補正発明と刊行物発明とは、実質的に相違しておらず、仮に、相違しているとしても、当業者が容易になし得たものである。 よって、補正発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、仮に、補正発明が刊行物1に記載された発明でないとしても、補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4-5.独立特許要件についてのむすび したがって、補正発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定する要件を満たさず、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項により準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反し、仮に、本件補正が、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反せず、かつ、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。 よって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成19年9月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び9に係る発明は、平成18年10月25日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 半導体材料の第1の層と、 前記半導体材料の第1の層を覆っている誘電体絶縁層と、 前記誘電体絶縁層を覆っている半導体材料の第2の層と、 前記前記半導体材料の第2の層と前記誘電体絶縁層とを貫通して形成されてその下の前記半導体材料の第1の層の上面の選択された領域を露出させている少なくとも1つのコンタクト開口と、 この少なくとも1つのコンタクト開口により露出された前記半導体材料の第1の層の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つのコンタクトとを具備し、 前記コンタクトは前記第1の層の表面に沿った方向で前記第2の層から距離を隔てて形成されている二重層を有する半導体装置。」 第4 刊行物に記載された発明 刊行物1には、上記「第2 4-2.」に記載されたとおりの事項が記載され、以下の発明(以下、「刊行物発明2」という。)が記載されている。 「多結晶シリコンの下層導電膜2と、 前記下層導電膜2を覆う容量絶縁膜4と、 前記容量絶縁膜4を覆う多結晶シリコンの上層導電膜3と、 前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4とを貫通して形成されたエッチング開口部と、 前記エッチング開口部において前記下部導電膜2の表面に形成された下層電極6とを備え、 前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において隔てられて形成されている容量素子。」 第5 対比 (a)刊行物発明2の「多結晶シリコンの下層導電膜2」及び「多結晶シリコンの上層導電膜3」が半導体材料から形成されていることは明らかであるから、刊行物発明2の「多結晶シリコンの下層導電膜2」及び「多結晶シリコンの上層導電膜3」は、本願発明の「半導体材料の第1の層」及び「半導体材料の第2の層」に相当する。 (b)刊行物発明2の容量絶縁膜4は、誘電体絶縁層であることは明らかであるから、上記(a)での検討をも考慮すると、刊行物発明2の「前記下層導電膜2を覆う容量絶縁膜4」は、本願発明の「前記半導体材料の第1の層を覆っている誘電体絶縁層」に相当する。 (c)上記(a)及び(b)における検討をも考慮すると、刊行物発明2の「前記容量絶縁膜4を覆う多結晶シリコンの上層導電膜3」は、本願発明の「前記誘電体絶縁層を覆っている半導体材料の第2の層」に相当する。 (d)刊行物発明2の「エッチング開口部」により、刊行物発明2の「多結晶シリコンの下層導電膜2」の上面の一部の領域が露出されていることは明らかであるから、刊行物発明2の「前記上層導電膜3と前記容量絶縁膜4とを貫通して形成されたエッチング開口部」は、本願発明の「前記半導体材料の第2の層と前記誘電体絶縁層とを貫通して形成されてその下の前記半導体材料の第1の層の上面の選択された領域を露出させている少なくとも1つのコンタクト開口」に相当する。 (e)刊行物発明2の「下層電極6」が「エッチング開口部」により露出された「下層導電膜2の表面に形成され」ており、「エッチング開口部」により露出された「下層導電膜2の表面」が「下層導電膜2」の選択された領域であることも明らかであって、刊行物発明2の「下層電極6」と、本願発明の「コンタクト」とは、いずれも、刊行物発明2の「多結晶シリコンの下層導電膜2」または本願発明の「半導体材料の第1の層」と他の導体部分を接続するための導電性接続部材である点において共通し、刊行物発明2の「前記エッチング開口部において前記下層導電膜2の表面に形成された下層電極6」は、本願発明の「この少なくとも1つのコンタクト開口により露出された前記半導体材料の第1の層 の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つのコンタクト」に対応する。 (f)刊行物発明2の「下層導電膜2」と「上層導電膜3」が2重の層構造であることは明らかであるから、刊行物発明2も、本願発明の「二重層」を実質的に備えていることは明らかである。 (g)刊行物発明2の「エッチング開口部」は、絶縁膜5を形成する前の開口部であり、刊行物発明2の「前記上層導電膜3の内側の側面と前記容量絶縁膜4の内側の側面」は、「エッチング開口部」の側面となっていることは明らかであるから、刊行物発明2の「前記下層電極6は、前記上層導電膜3及び前記容量絶縁膜4から前記下層導電膜2の表面において隔てられて形成されている」ことは、本願発明の「前記コンタクトは、前記コンタクト開口の側面壁を構成している前記半導体材料の第2の層および前記誘電体絶縁層の端部から前記半導体材料の第1の層の表面に沿った方向で距離を隔てて形成されている」ことに相当する。 (h)刊行物1の図2には、複数の「容量素子」を形成した構造が記載されており、また、「容量素子」が半導体装置の一部を構成することは明らかであるから、刊行物発明2の「容量素子」は、本願発明の「半導体装置」に相当する。 したがって、本願発明と刊行物発明2とは、 「半導体材料の第1の層と、 前記半導体材料の第1の層を覆っている誘電体絶縁層と、 前記誘電体絶縁層を覆っている半導体材料の第2の層と、 前記半導体材料の第2の層と前記誘電体絶縁層とを貫通して形成されてその下の前記半導体材料の第1の層の上面の選択された領域を露出させている少なくとも1つのコンタクト開口と、 この少なくとも1つのコンタクト開口により露出された前記半導体材料の第1の層の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つの導電性接続部材とを具備し、 前記導電性接続部材は、前記半導体材料の第1の層の表面に沿った方向で前記第2の層から距離を隔てて形成されている二重層を有する半導体装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 「この少なくとも1つのコンタクト開口により露出された前記半導体材料の第1の層の表面の選択された領域に形成されている少なくとも1つの導電性接続部材」の「導電接続部材」として、本願発明が、「コンタクト」を備えているのに対して、刊行物発明2が「エッチング開口部」を備えている点。 第6 当審の判断 相違点1について (a)本願明細書の【0008】段落ないし【0010】段落、図4及び図5には、「コンタクト3」について、「図4は、本発明による相互接続構造の平面図を示す。ここにおいて、従来技術とは異り、下部層2は上部層1によって完全にカバーされる。下部層2に対してコンタクト3を形成することができるように、開口5が例えばエッチングによって上部層1に形成される。」(【0008】段落)と記載され、図4には、開口5のほぼ中央部に「コンタクト3」が記載され、図5に示された図4の断面図には、下部層2の表面のほぼ中央部に「コンタクト3」が記載されている。 しかしながら、下部層2に形成された「コンタクト3」と他の導電部材とどのように接続するか、「コンタクト3」が、どの段階で、どのように形成されるか、どの程度の大きさであるかについて何ら記載されていない。 (b)また、本願発明において、「半導体材料の第1の層」は誘電体絶縁層に覆われており、さらに、誘電体絶縁層は「半導体材料の第2の層に覆われているから、「半導体材料の第1の層」を外部の導電部材と導電接続するためには、コンタクトを介して接続することが必要であることは明らかである。 (c)刊行物発明2においては、下層導電膜2と外部と導電接続を図るために、下層電極6が形成されていることは明らかであって、単に、下層導電膜2と外部と導電接続するための導体(コンタクトための部材)としての機能を果たすためであれば、下層電極6は、エッチング開口部の形成により露出された下部導電膜2の表面の一部に形成されれば十分であること、言い換えると、下層導電膜2の大きさを必要に応じて適宜変更できることは、当業者にとって明らかである。 (d)上記(a)ないし(c)を考慮すると、相違点1については、本願発明と刊行物発明とは、実質的に相違しない。 (e)仮に、相違するとしても、刊行物発明2において、「下層電極6」として、下部導電膜2の露出された表面の一部に形成する導体に、導体である「下層電極6」の形状を適宜変更して、刊行物発明2が、本願発明の如く、「コンタクト開口により露出された前記半導体材料の第1の層 の表面の選択された領域に形成されている」「コンタクト」を備えたものとすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得たものである。 よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、仮に、本願発明が刊行物1に記載された発明でないとしても、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願は、請求項2に係る発明については検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-10 |
結審通知日 | 2009-02-17 |
審決日 | 2009-03-02 |
出願番号 | 特願平7-258031 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 早川 朋一、河口 雅英 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
橋本 武 棚田 一也 |
発明の名称 | 二重層を有する半導体装置 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 橋本 良郎 |