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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1200802
審判番号 不服2006-21583  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-27 
確定日 2009-07-13 
事件の表示 特願2004-234003号「灰溶融炉」拒絶査定不服審判事件〔平成17年3月3日出願公開、特開2005-55173号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成12年5月19日に出願した特願2000-147525号(以下「原出願」という。)の一部を平成16年8月11日に新たな特許出願としたものであって、平成18年8月25日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月29日)、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年10月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年10月24日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月24日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の請求項2に記載された発明
本件の補正後の請求項2に係る発明(以下「本件補正発明」という。)は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「炉室内壁部の内側に配設される耐火材と、該耐火材の外側を覆うとともに該耐火材の熱膨張を吸収するスタンプ層と、さらに該スタンプ層の外側に配設される冷却ジャケットとを備えた灰溶融炉において、上記耐火材の内周部側にCr_(2)O_(3)系からなるレンガを配設し、外周部側にSiCまたはカーボン系からなるレンガを配設し、かつ上記耐火材の厚さを250mm?50mmとして、上記耐火材の表面にセルフコーティング層を形成するとともに、上記耐火材を上記炉室内のスラグの流れが速い出滓口の近傍に配設したことを特徴とする灰溶融炉。」
上記補正は、本件補正前の請求項2において、耐火材の配設位置について、「上記耐火材を上記炉室内のスラグの流れが速い出滓口の近傍に配設した」と限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-141868号公報(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「原料を溶融する炉体と、
この炉体内で溶融された溶融物の表面と炉内の雰囲気との境界、前記溶融物と炉底に溜まる貯溜溶融物との境界の各位置と対応する前記炉体の炉壁部分の内部に構成され、各境界と対応した炉壁の内面部分から炉壁の外側へ向かう伝熱性を高めるための、大きな熱伝導率を有する高熱伝導層とを具備したことを特徴とするロックウール用電気溶融炉。」(【請求項1】、下線は当審にて付与。以下同様。)
イ.「【発明が解決しようとする課題】ところが、侵食の進み方は一様でない。
すなわち、炉体の侵食は溶融物表面、すなわち溶融物の表面と炉内の雰囲気との境界で著しい。また電気溶融炉は操業を続けると、ロックウールの原料中に含まれている酸化鉄がカーボン電極、耐火壁の炭素によって還元されて、生成された鉄が次第に炉底に貯溜するが、この溶融鉄(貯溜溶融物)と上記溶融物との境界でも、同様に侵食は著しい。いずれも熱応力が原因の一つとなっている。具体的には、操業を続けると、境界の近傍の炉壁部分だけがえぐり取られたように侵食する。このとき、他の炉壁部分の侵食は軽い。この結果、他の部分は十分に使用に耐える状態であるのに、境界の部分だけが深くえぐれてしまい、他の部分の状況にかかわらず補修が必要となる。
ところが、煉瓦などの補修は、煉瓦積作業における目地の施工上、侵食の激しい部分のみを新しい煉瓦に置き換えることは不可能で、どうしても全体を取り替えなければならない。つまり、他の部分の状況にかかわらず、二つの境界の近傍の侵食状況によって耐火壁の寿命が決定されてしまう。このため、高価な耐火物の消費が多い問題がある上、保守のために行われている炉体の耐火壁の施工し直しの回数も多くなる問題がある。こうした問題点は、上記のようなロックウ-ルを製造する電気溶融炉だけでなく、成分が似ている原料を溶融する電気溶融炉でも起きている。
具体的には、都市ごみの焼却灰、集塵機の集塵灰、下水汚泥灰など、廃棄物償却灰(ごみの最終物)を溶融する電気溶融炉でも、境界の近傍の炉壁部分の侵食は著しく、同種の電気溶融炉においても、保守の点で多くの難点をもたらしていた。 この発明は、このような事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、炉体全体の侵食を平均化することができる電気溶融炉を提供することにある。」(段落【0006】乃至【0010】)
ウ.「【作用】請求項1、請求項2、請求項3に記載の各電気溶融炉によると、溶融物の表面および貯溜溶融物との境界と対応する位置に設けた、熱伝導率が大きな高熱伝導層により、それぞれの境界位置と対応する炉壁の内面から入った熱は、他の内面部分よりも速やかに伝熱して外部へ逃げる(放熱)。
このことは、侵食の最も激しいとされる炉壁部分の熱応力を軽減させることになる。しかも、高熱伝導層の熱を抜く作用により同部分の温度が下げられることで、同部分の表面には溶融物の凝固層が形成されるから、侵食の最も激しいとされる炉壁部分は重点的に保護され、溶融物による侵食作用も軽減される。したがって、炉体の炉壁全体の侵食(消耗)は平均化され、炉壁を構成する耐火物全体の寿命を平均化することができる。
それ故、保守のための炉体の耐火壁の施工し直しを有効的に行うことができる。しかも、施工し直し回数を少なくすることができるので、高価な耐火物の消費を減少させることができる。
請求項4に記載の電気溶融炉によると、他の部分より2倍ないし5倍の値の大きな熱伝導率の耐火物で高熱伝導層を構成することによって、熱応力を軽減させる作用と炉壁部分を保護する作用とを効果的に得ることができた。請求項5に記載の電気溶融炉によると、黒鉛又は炭化珪素で高熱伝導層を構成することによって、望ましい熱伝導性を得ることができた。
請求項6に記載の電気溶融炉によると、熱伝導率が大きい高熱伝導層とその周囲の熱伝導率が小さい炉壁部分とは、同一系統の材料であるために、両者の境界における熱の歪みを小さくすることができ、それによる影響を炉体に与えずにすむ。請求項7に記載の電気溶融炉によると、溶融物と接する部分の表面において、一定厚みをもつ溶融物の凝固層が形成しやすくなった。」(段落【0015】乃至【0019】)
エ.「【実施例】以下、この発明を図1および図2に示す第1の実施例にもとづいて説明する。図2は、この発明を適用した電気溶融炉、例えばロックウール用電気溶融炉の全体の断面を示し、図中1は炉体である。炉体1は、例えば鋼製の炉殻2の内側に耐火物の壁を施工して、炉壁3および炉底4を構成してなる。・・・
図1について説明すれば、10は炉内に貯溜された溶融物7の表面と炉内雰囲気との境界Aと対応する高さ位置となる炉壁3の内部(中間)に埋め込まれた上段側の高熱伝導層である。また11は炉内に貯溜された溶融物7と酸化鉄9との境界Bと対応する高さ位置となる炉壁3の内部(中間)に埋め込まれた下限側の高熱伝導層であり、いづれの高熱伝導層10、11共、同一高さで炉体1の周方向に沿って環状に設けてある。
高熱伝導層10,11は、いずれも炉壁3の厚み方向に沿って延びている。そして、各高熱伝導層10,11の内周面は炉壁3の内面全体に施してある高温耐蝕性の高い耐火物層12に接し、外周面は炉殻2の内面に設けた緩衝断熱層18に接している。なお、緩衝断熱層18は炉壁3を構成する炉殻2と各耐火物との接触性を良好し、熱膨張を吸収するためのものである。
また高熱伝導層10,11は、いずれも境界A,Bの変動を考慮した所定の高さ寸法をもつ。例えば本実施例では、変動の上下限界より、それぞれ150mmを加算した寸法に設定されている。つまり、高熱伝導層10,11の各断面は、この高さ寸法をもつ矩形の断面となる。
また高熱伝導層10,11には、他の炉壁部分の耐火物より、熱伝導率が大きな耐火物が用いられている。具体的には、例えば黒鉛煉瓦、SiC(炭化珪素煉瓦)等の熱伝導率の良い耐火物で高熱伝導層10、11を構成し、それ以外の高熱伝導層10、11を包む周囲の耐火物、すなわち溶融物7に直接触れる耐火物層12をAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦(アルミナ酸化クロム煉瓦)、MgO/Cr_(2)O_(3) 煉瓦(マグネシア酸化クロム煉瓦)などで構成し、その他の耐火物の層13をAl_(2)O_(3)煉瓦(アルミナ煉瓦)、MgO煉瓦(マグネシヤ煉瓦)、MgO/Cr_(2)O_(3)煉瓦(マグネシア酸化クロム煉瓦)、あるいはAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦(アルミナ酸化クロム煉瓦)を主成分とする煉瓦かそれらの粉、顆粒などで構成される不定形の耐火物で構成している。
なお、これら耐火物の熱伝導率の値は、「黒鉛煉瓦,SiC煉瓦:10?20kcal/mh ℃」、「Al_(2)O_(3):1.3?1.9kcal/mh ℃」、「MgO煉瓦:1.3?3.0kcal/mh ℃」、「MgO/Cr_(2)O_(3)煉瓦:2.5?6.0kcal/mh ℃」、「Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦:1.5?3.0kcal/mh ℃」である。
このように熱伝導を抑えた炉壁3に高熱伝導層10,11を埋設したことにより、各境界A,Bに対応した炉壁3の内面部分から炉壁3の外側へ向かう部分に、他の部分より高い伝熱性をもつ高熱伝熱帯を構成している。
一方、炉殻2の外周面には冷却装置16を構成する還流路14が設けられている。還流路14は、例えば高熱伝導層10,11と対応する二点間の部分を覆うように環状の管状体15を設けてなる。この管状体15内に炉殻2の外周面が臨んでいる。この管状体15には、還流路14に水、あるいは他の冷却媒体を還流させるための還流装置17が接続されている。これにより、高熱伝導層10,11を通じ伝熱してくる境界A,Bの近傍の熱の放熱を助けるべく、炉壁3を冷却するようにしている。つぎに、このように構成された電気溶融炉の作用について説明する。」(段落【0020】乃至【0027】)
オ.「ここで、炉壁3の内面および炉底4は、操業中、常に高温(1600℃前後)の溶融物7による強い化学的侵食作用と熱応力を受けているので、侵食して次第に消耗する。
このとき、侵食が最も激しく起こりやすい境界A,Bの位置の炉壁部分には、他の部分より熱伝導率が大きな高熱伝導層10,11が埋設されているから、溶融物7の表面、溶融物7の底層と接する各耐火物層12の表面、すなわち境界A,Bの各位置と対応する炉壁3の内面部分から入る熱は、高熱伝導層10,11を伝熱するために、他の内面部分から入って他の耐火物を伝熱する熱よりも速く伝熱し、炉殻2から還流炉14を流れる冷却水(冷却媒体)へ放熱される。つまり、境界A,Bの位置と対応する炉壁3の内面部分からの熱は、他の部分からのときよりも、速やかに伝熱して外部へ逃げる。
これにより、侵食の最も激しいとされる炉壁部分の熱応力は軽減される。しかも、高熱伝導層10,11の熱を抜く作用により、境界A,Bの位置に対応する炉壁3の内面部分の温度が下げられるので、同部分の表面には溶融物7の凝固層が形成され、侵食の最も激しいとされる炉壁部分を重点的に保護し、溶融物7による化学的侵食作用を軽減する。したがって、炉壁全体の侵食(消耗)は平均化される。つまり、炉壁3を構成する耐火物全体の寿命を平均化することができる。
それ故、炉体3の保守に際しては、従来のように特定の部分で起きる寿命に合わせて炉体3の耐火壁の施工し直しをせずに、炉体3の耐火壁全体の寿命に合わせて炉体3の耐火壁の施工し直しを行うことができ、有効的な保守ができる。しかも、施工し直し回数も少なくすることができるから、高価な耐火物の消費を減少させることができ、保守の点で多くの利点をもたらす。 実験によれば、他の耐火物よりも、高熱伝導層10,11の熱伝導率が2倍あるいはそれ以上の値のときで良好な結果が得られ、2倍ないし5倍の値のときでは、かなり顕著な効果(熱応力を低減させる作用,炉壁部分を保護する作用)が得られた。しかも、実験によれば高熱伝導層10,11を黒鉛、SiC(炭化珪素)で構成すると、望ましい熱伝導性が得られたことが確認できた。
さらに、実験によれば上記実施例のように高熱伝導層10,11を黒鉛、SiCで構成し、他の低熱伝導率の耐火物の層12、13をAl_(2)O_(3)(アルミナ)、MgO(マグネシア)、MgO/Cr_(2)O_(3)(マグネシア酸化クロム)、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)(アルミナ酸化クロム)を構成すると、同一系統の材料であるために、両者の境界における熱の歪みを小さくすることができた。つまり、熱の歪みによる影響を炉体1に与えずにすむ利点をもたらす。
加えて、実験によれば上記実施例のように高熱伝導層10,11の周囲の耐火物のうち、炉内の溶融物7と接する耐火物層12をAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)(アルミナ酸化クロム)で構成すると、耐火物層12の表面に一定の厚みの凝固層を形成しやすく、安定した耐侵食性能(炉壁部分を保護する作用)を得ることができるものであった。なお、特にアルミナと酸化クロムの耐火物では高クロム質の煉瓦又はそれらの粉、顆粒などで構成される不定型の耐火物は有効で、望ましくは酸化クロムが約5%以上のものが顕著な効果を期待できた。」(段落【0029】乃至【0035】)
カ.「・・・図4は、この発明の第3の実施例を示す。
これは、この発明をロックウ-ルを製造する電気溶融炉でなく、同種の電気溶融炉、例えば都市ごみの焼却灰、集塵機の集塵灰、下水汚泥灰など、廃棄物焼却灰30(被処理物)を溶融処理する電気溶融炉に適用したものである。
こうした、ごみの最終物を溶融する電気溶融炉でも、高熱伝導層10,11を設けることにより、先の第1の実施例と同様、侵食の点を改善することができる。
なお、図中31は炉体1の下部に設けられた、炉体1とその炉体1の内蔵物の重量が一定となるように廃棄物焼却灰30の投入量を制御するために用いるロ-ドセルを示す。但し、図3および図4において、第1の実施例と同一構成部分には同一符号を付して、その説明を省略した。」(段落【0040】乃至【0043】)
キ.「【発明の効果】以上説明したように請求項1、請求項2、請求項3に記載の発明によれば、侵食の最も激しいとされる炉壁部分の熱応力を軽減させることができる。とともに高熱伝導層の熱を抜く作用によって形成される溶融物の凝固層により、侵食の最も激しい炉壁部分における侵食作用を軽減することができる。したがって、炉体の炉壁全体の侵食は平均化され、炉壁を構成する耐火物全体の寿命を平均化することができる。」(段落【0046】)
上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物には、次の発明が記載されている。
「炉壁3の内側に施工される耐火物と、炉殻2と、耐火物の外周面で炉殻2の内面に設けられている熱膨張を吸収する緩衝断熱層18と、炉殻2の外周面に設けられている冷却水を流す還流路14とを備えた廃棄物焼却灰30を溶融処理する電気溶融炉において、
耐火物の内周部側に約5%以上の酸化クロムを含む高クロム質、高温耐蝕性のAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦を設け、
耐火物の外周部側にSiC煉瓦、黒鉛煉瓦で構成した高熱伝導層11を設け、
Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦の表面に一定厚みの凝固層を形成し、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦を侵食が最も激しく起こりやすい溶融物の底層である境界Bの位置の炉壁部分に設け、
侵食が最も激しく起こりやすい炉壁部分における浸食作用を軽減させ、施工し直し回数を少なくさせ、高価な耐火物の消費を減少させた廃棄物焼却灰30を溶融処理する電気溶融炉。」
(3)対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明を対比する。
刊行物に記載された発明の「炉壁3の内側に施工される耐火物」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「炉室内壁部の内側に配設される耐火材」に相当し、以下同様に、
「耐火物の外周面で炉殻2の内面に設けられている熱膨張を吸収する緩衝断熱層18」は「耐火材の外側を覆うとともに該耐火材の熱膨張を吸収するスタンプ層」に、
「炉殻2の外周面に設けられている冷却水を流す還流路14」は「スタンプ層の外側に配設される冷却ジャケット」に、
「廃棄物焼却灰30を溶融処理する電気溶融炉」は「灰溶融炉」に、
「Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦の表面に一定厚みの凝固層を形成し」は「耐火材の表面にセルフコーティング層を形成する」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物に記載された発明の「耐火物の内周部側に約5%以上の酸化クロムを含む高クロム質、高温耐蝕性のAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦を設け」と本件補正発明の「耐火物の内周部側にCr_(2)O_(3)系からなるレンガを配設し」とは、「耐火物の内周部側にCr_(2)O_(3)を含むレンガを配設」する点で共通する。
また、刊行物に記載された発明の「耐火物の外周部側にSiC煉瓦、黒鉛煉瓦で構成した高熱伝導層11を設け」と本件補正発明の「外周部側にSiCまたはカーボン系からなるレンガを配設し」とは、「外周部側にSiCまたはカーボンを含むレンガを配設」する点で共通する。
刊行物に記載された発明の「Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦を侵食が最も激しく起こりやすい溶融物の底層である境界Bの位置の炉壁部分に設け」と本件補正発明の「耐火材を炉室内のスラグの流れが速い出滓口の近傍に配設した」とは、「耐火材を耐久性が著しく劣った炉室内壁部分に配設」する点で共通するものである。
したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「炉室内壁部の内側に配設される耐火材と、該耐火材の外側を覆うとともに該耐火材の熱膨張を吸収するスタンプ層と、さらに該スタンプ層の外側に配設される冷却ジャケットとを備えた灰溶融炉において、
上記耐火材の内周部側にCr_(2)O_(3)を含むレンガを配設し、外周部側にSiCまたはカーボンを含むレンガを配設し、上記耐火材の表面にセルフコーティング層を形成するとともに、
上記耐火材を耐久性が著しく劣った炉室内壁部分に配設した灰溶融炉。」
[相違点1]
Cr_(2)O_(3)を含むレンガ、SiCを含むレンガ、及び、カーボンを含むレンガについて、
本件補正発明では、Cr_(2)O_(3)系からなるレンガ、SiC系からなるレンガ、及びカーボン系からなるレンガであるのに対して、
刊行物に記載された発明では、約5%以上の酸化クロムを含む高クロム質、高温耐蝕性のAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦、SiC煉瓦、及び、黒鉛煉瓦である点。
[相違点2]
本件補正発明では、耐火材の表面にセルフコーティング層を形成するために、耐火材の厚さを250mm?50mmとしたのに対して、
刊行物に記載された発明では、耐火材の表面にセルフコーティング層を形成するが、耐火材の厚さについて不明である点。
[相違点3]
耐火材を配設する耐久性が著しく劣った炉室内壁部分が、
本件補正発明では、炉室内のスラグの流れが速い出滓口の近傍であるのに対して、
刊行物に記載された発明では、侵食が最も激しく起こりやすい溶融物の底層である境界Bの位置である点。

(4)当審の判断
(4-1)相違点1について
まず、Cr_(2)O_(3)を含むレンガについて検討する。
本件補正発明の「Cr_(2)O_(3)系からなるレンガ」について、本願明細書の発明の詳細な説明に「Cr_(2)O_(3)の成分はレンガ中に、約30?95重量%の割合で配合されている。」(段落【0008】)との記載がある。
一方、刊行物に記載された発明の「Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦」は、約5%以上の酸化クロムを含む高クロム質煉瓦である。そして、上記摘記事項オに「高熱伝導層10,11の周囲の耐火物のうち、炉内の溶融物7と接する耐火物層12をAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)(アルミナ酸化クロム)で構成すると、耐火物層12の表面に一定の厚みの凝固層を形成しやすく、安定した耐侵食性能(炉壁部分を保護する作用)を得ることができるものであった。・・・望ましくは酸化クロムが約5%以上のものが顕著な効果を期待できた。」と記載されているように、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦は、耐火物層12の表面に一定の厚みの凝固層を形成しやすいという性質を有するものであり、この効果をさらに良く達成するために、溶融物の物性、炉の形状等を考慮し、煉瓦を構成するAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)の酸化クロムの含有量を実験等を通して、上記約5%以上の範囲の中から最適な数値のものに決定することは、当業者が適宜なし得たものである。したがって、刊行物に記載された発明のAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦について、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)の酸化クロムの含有率を約30%以上となるようにすることは、当業者が容易になし得たものである。
次に、SiCを含むレンガについて検討する。
刊行物に記載された発明において、SiC煉瓦の熱伝導率は、
必要とされる熱伝導率に応じた煉瓦のSiC含有率や煉瓦のSiCに混合する組成物とその割合、溶融物の物性、炉の形状等といった諸要素を総合勘案して当業者が適宜決定し得る事項である。
したがって、刊行物に記載された発明のSiC煉瓦を、本件補正発明の「SiC系からなるレンガ」に置き換えることは、当業者が容易になし得たものである。
さらに、カーボンを含むレンガについて検討する。前記SiCを含むレンガについての検討事項と同様に、刊行物に記載された発明の黒鉛煉瓦を、本件補正発明の「カーボン系からなるレンガ」に置き換えることは、当業者が容易になし得たものである。
(4-2)相違点2について
刊行物に記載された発明は、耐火物の内周部側に約5%以上の酸化クロムを含む高クロム質、高温耐蝕性のAl_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦を設け、耐火物の外周部側にSiC煉瓦、黒鉛煉瓦で構成した高熱伝導層11を設けることにより、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦の表面に一定厚みの凝固層を形成し、これにより、上記摘記事項オに記載されているように「安定した耐侵食性能を得ることができる」ものであることから、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦とSiC煉瓦、黒鉛煉瓦それぞれの煉瓦の厚さ、及び両者を合わせた煉瓦の厚さをどのような値とするのかは、必要とされる耐侵食性能に応じて当業者が決定し得る事項である。
ところで、本件補正発明では、耐火材の表面にセルフコーティング層を形成するために耐火材の厚さを250mm?50mmとしている。そして、本願明細書の発明の詳細な説明に「耐火材11の厚さは、230mmの厚さのときに、最もCr_(2)O_(3)レンガの表面温度が低くなり、それ以上耐火材11の厚さを厚くすると、Cr_(2)O_(3)の温度が高くなるのが分かっており、耐火材11は250mm程度の厚さまで使用できる」(段落【0013】)との記載がある。一方、図6には、Cr_(2)O_(3)レンガの表面温度について、炉内からの距離(「耐火材の厚さ」に相当する。)が230mmまでの温度までしか示されていたいため、炉内からの距離厚さを230mmより厚くした場合に、Cr_(2)O_(3)レンガの表面温度が高くなるか否かは不明である。したがって、本件補正発明において、耐火材11の厚さを250mm?50mmとしたことの臨界的意義を確認することができない。
したがって、刊行物に記載された発明において、相違点2に係る本件補正発明の構成を採用することには、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせない。
(4-3)相違点3について
刊行物には、上記摘記事項カに「炉体1の下部に設けられた、炉体1とその炉体1の内蔵物の重量が一定となるように廃棄物焼却灰30の投入量を制御するために用いるロ-ドセルを示す。」との記載があるように、灰溶融炉に廃棄物焼却灰30を投入しても、炉体1の内蔵物の重量が一定となるように制御されるものであるから、灰溶融炉からは、内蔵物が何らかの排出部より排出されるものであることは明らかである。
そして、灰溶融炉において、排出口である出滓口を炉壁側の底部のスラグ溶融層の底よりも若干上方に設けることは、本願の原出願の出願前に周知の技術事項である(例えば、a)特開平7-42924号公報の段落【0003】及び【図3】や、b)特開平7-77319号公報の段落【0024】及び【図2】や、c)特開平10-267234号の段落【0013】及び【図1】を参照のこと。)。
したがって、刊行物に記載された発明において、溶融物の排出口である出滓口の位置について明記されていないが、上記周知の技術事項に倣って、排出口である出滓口を炉壁側の底部の溶融層の底よりも若干上方に設けることは、当業者が容易になし得たものである。
そして、刊行物に記載された発明は、Al_(2)O_(3)/Cr_(2)O_(3)煉瓦を侵食が最も激しく起こりやすい溶融物の底層である境界Bの位置の炉壁部分に設けられるものであり、刊行物に記載された発明に、上記周知の技術事項を適用し、排出口である出滓口を側壁底部の溶融層の底よりも若干上方に設けたものは、結果として、排出口である出滓口が溶融物の底層である境界の位置の近傍に位置することとなる。
(4-4)まとめ
本件補正発明が奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項が奏する効果から当業者が予測できる範囲内のものである。 ゆえに、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
よって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年10月24日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年7月24日付けで手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「炉室内壁部の内側に配設される耐火材と、該耐火材の外側を覆うとともに該耐火材の熱膨張を吸収するスタンプ層と、さらに該スタンプ層の外側に配設される冷却ジャケットとを備えた灰溶融炉において、上記耐火材の内周部側にCr_(2)O_(3)系からなるレンガを配設し、外周部側にSiCまたはカーボン系からなるレンガを配設し、かつ上記耐火材の厚さを250mm?50mmとして、上記耐火材の表面にセルフコーティング層を形成することを特徴とする灰溶融炉。」

(2)刊行物
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項、及び、刊行物に記載された発明は、前記「2.(2)刊行物」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
本願発明は、前記「2.[理由]」で検討した本件補正発明において、耐火材の配設位置について、「上記耐火材を上記炉室内のスラグの流れが速い出滓口の近傍に配設した」とあったところをその限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比及び(4)当審の判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、上記判断を行うに際して、本件補正発明及び本願発明の「炉室内壁部」には、炉を構成する壁全体及び炉を構成する壁の一部の両者が含まれるものとして判断を行った。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-11 
結審通知日 2009-05-12 
審決日 2009-06-01 
出願番号 特願2004-234003(P2004-234003)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23G)
P 1 8・ 575- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平城 俊雅  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
会田 博行
発明の名称 灰溶融炉  
代理人 奥山 尚一  
代理人 深川 英里  
代理人 中村 綾子  
代理人 有原 幸一  
代理人 河村 英文  
代理人 岡本 正之  
代理人 吉田 尚美  
代理人 森本 聡二  
代理人 松島 鉄男  
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