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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41C
管理番号 1200861
審判番号 不服2006-21180  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-21 
確定日 2009-07-16 
事件の表示 平成11年特許願第 48828号「製版装置および製版印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 5日出願公開、特開2000-238230〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年2月25日の出願であって、平成14年4月10日、平成17年2月14日及び同年7月29日に手続補正がなされたが、平成17年7月29日付け手続補正が平成18年8月17日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされたため、これに対し、同年9月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月23日に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正について

1.本件補正は、明細書全文及び図面についてするものであり、特許請求の範囲については、本件補正前に、
「 【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性マスタに主走査方向に複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを接触させ、該サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させながら製版する製版装置において、
画像データの1画素に対応して同時に発熱駆動される微細化発熱体を、上記主走査方向および上記副走査方向にそれぞれ複数配設すると共に該複数の微細化発熱体の全てを直列接続した微細化発熱体群を具備し、該微細化発熱体群を上記主走査方向に複数配列したことを特徴とする製版装置。
【請求項2】
請求項1記載の製版装置において、
上記副走査方向の一方向に沿って延びた後、該副走査方向の他方向に略180度折り返された個別電極の、該折り返される前の上記個別電極と該折り返された後の上記個別電極とに、上記複数の微細化発熱体のうちのそれぞれ少なくとも2個ずつが接続されて形成されており、上記折り返される前後の何れか一方の上記個別電極が上記複数の微細化発熱体を介して共通電極に接続されていることを特徴とする製版装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の製版装置において、
上記微細化発熱体群のうちの上記主走査方向の最外端にそれぞれ位置する上記各微細化発熱体の最外端間の距離を、上記主走査方向における相隣る上記微細化発熱体群の解像度ピッチに対して0.9を乗じた距離以下にしたことを特徴とする製版装置。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性マスタに主走査方向に複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを接触させ、該サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させながら製版する製版装置において、
画像データの1画素に対応して同時に発熱駆動される微細化発熱体を、上記主走査方向に複数配設すると共に該複数の微細化発熱体の全てを直列接続した微細化発熱体群を具備し、該微細化発熱体群を上記主走査方向に複数配列し、
上記製版装置における上記主走査方向の解像度ピッチ未満の副走査送りピッチを設定して製版することを特徴とする製版装置。
【請求項5】
請求項4記載の製版装置において、
上記副走査送りピッチは、上記主走査方向の解像度ピッチの1/2であることを特徴とする製版装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の製版装置において、
上記微細化発熱体群のうちの上記主走査方向の最外端にそれぞれ位置する上記各微細化発熱体の最外端間の距離を、上記主走査方向における相隣る上記微細化発熱体群の解像度ピッチに対して0.9を乗じた距離以下にしたことを特徴とする製版装置。
【請求項7】
請求項1,2または3記載の製版装置において、
上記微細化発熱体群のうちの上記副走査方向の最外端にそれぞれ位置する上記各微細化発熱体の最外端間の距離を、上記副走査方向における上記製版装置の解像度ピッチに対して0.9を乗じた距離以下にしたことを特徴とする製版装置。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一つに記載の製版装置において、
上記サーマルヘッドの温度を検出するサーマルヘッド温度検出手段を有し、
上記サーマルヘッド温度検出手段が検出したサーマルヘッドの温度に応じて、上記サーマルヘッドの上記微細化発熱体に供給する穿孔用エネルギーを、所定の穿孔用エネルギーに調整するサーマルヘッド温度別穿孔エネルギー調整手段を具備することを特徴とする製版装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一つに記載の製版装置において、
実際に上記各微細化発熱体に通電させる通電数を計数する通電数計数手段を有し、
上記通電数計数手段が計数した通電数に応じて、上記サーマルヘッドの上記微細化発熱体に供給する穿孔用エネルギーを、所定の穿孔用エネルギーに調整する通電率別穿孔エネルギー調整手段を具備することを特徴とする製版装置。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一つに記載の製版装置において、
感熱性マスタの穿孔状態として、各穿孔が互いに独立していることを特徴とする製版装置。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか一つに記載の製版装置において、
上記主走査方向に複数配列された上記微細化発熱体群の上記各微細化発熱体に電力を供給する個別電極が、上記各微細化発熱体群ごとに共通に接続されていることを特徴とする製版装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか一つに記載の製版装置を備え、該製版装置により製版された上記マスタを版胴の外周面に巻き付ける版胴と、この版胴上のマスタにインキを供給するインキ供給手段とを具備し、上記版胴上のマスタに印刷用紙を押し付けて少なくとも印刷用紙の片面に印刷を行うことを特徴とする製版印刷装置。
【請求項13】
請求項12記載の製版印刷装置において、
上記インキの温度を検出するインキ温度検出手段を有し、
上記インキ温度検出手段が検出したインキの温度に応じて、上記サーマルヘッドの上記微細化発熱体に供給する穿孔用エネルギーを、所定の穿孔用エネルギーに調整するインキ温度別穿孔エネルギー調整手段を具備することを特徴とする製版印刷装置。」
とあったものを、
「【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性マスタに主走査方向に複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを接触させ、該サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させながら製版する製版装置において、
上記製版装置は、画像データの1画素に対応して同時に発熱駆動される微細化発熱体を、上記主走査方向に複数配設すると共に該複数の微細化発熱体の全てを直列接続した微細化発熱体群を具備し、かつ、該微細化発熱体群を上記主走査方向に複数配列したサーマルヘッドを有し、
上記製版装置における上記副走査方向の副走査送りピッチは、上記微細化発熱体群における上記主走査方向の解像度ピッチの1/2であることを特徴とする製版装置。
【請求項2】
請求項1記載の製版装置において、
上記微細化発熱体群のうちの上記主走査方向の最外端にそれぞれ位置する上記各微細化発熱体の最外端間の距離を、上記主走査方向における相隣る上記微細化発熱体群の解像度ピッチに対して0.9を乗じた距離以下にしたことを特徴とする製版装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の製版装置において、
上記サーマルヘッドの温度を検出するサーマルヘッド温度検出手段を有し、
上記サーマルヘッド温度検出手段が検出したサーマルヘッドの温度に応じて、上記サーマルヘッドの上記微細化発熱体に供給する穿孔用エネルギーを、所定の穿孔用エネルギーに調整するサーマルヘッド温度別穿孔エネルギー調整手段を具備することを特徴とする製版装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の製版装置において、
実際に上記各微細化発熱体に通電させる通電数を計数する通電数計数手段を有し、
上記通電数計数手段が計数した通電数に応じて、上記サーマルヘッドの上記微細化発熱体に供給する穿孔用エネルギーを、所定の穿孔用エネルギーに調整する通電率別穿孔エネルギー調整手段を具備することを特徴とする製版装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の製版装置において、
上記微細化発熱体群を具備したサーマルヘッドにより、感熱性マスタに形成される各穿孔が互いに独立穿孔されることを特徴とする製版装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一つに記載の製版装置において、
上記主走査方向に複数配列された上記微細化発熱体群の上記各微細化発熱体に電力を供給する個別電極が、上記各微細化発熱体群ごとに共通に接続されていることを特徴とする製版装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一つに記載の製版装置を備え、該製版装置により製版された上記マスタを版胴の外周面に巻き付ける版胴と、この版胴上のマスタにインキを供給するインキ供給手段とを具備し、上記版胴上のマスタに印刷用紙を押し付けて少なくとも印刷用紙の片面に印刷を行うことを特徴とする製版印刷装置。
【請求項8】
請求項7記載の製版印刷装置において、
上記インキの温度を検出するインキ温度検出手段を有し、
上記インキ温度検出手段が検出したインキの温度に応じて、上記サーマルヘッドの上記微細化発熱体に供給する穿孔用エネルギーを、所定の穿孔用エネルギーに調整するインキ温度別穿孔エネルギー調整手段を具備することを特徴とする製版印刷装置。」
と補正するものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)

2.上記特許請求の範囲についての補正は、補正前の請求項5を独立形式の記載とした上で、製版装置が具備する「微細化発熱体群」について、サーマルヘッドが具備し、かつ、該サーマルヘッドを製版装置が有すると明記し、さらに、「副走査送りピッチ」について、「副走査方向」のものであると、また、「主走査方向の解像度ピッチ」について、「微細化発熱体群における」ものであると、それぞれ明記して、本件補正後の請求項1とする補正内容を含んでいる。

3.本件補正前の請求項5に係る発明は、「熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性マスタに主走査方向に複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを接触させ、該サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させながら製版する製版装置」に関するものであるから、この製版装置がサーマルヘッドを有していることは明らかであり、「画像データの1画素に対応して同時に発熱駆動される微細化発熱体を、上記主走査方向に複数配設すると共に該複数の微細化発熱体の全てを直列接続した微細化発熱体群」は、そのサーマルヘッドが具備していることも当業者に自明である。
また、「副走査送りピッチ」が、副走査方向の送りに係るものであること、「主走査方向の解像度ピッチ」が、「微細化発熱体群における」ものであることは、いずれも明らかである。
以上のことから、本件補正後の請求項1に記載の事項は、本件補正前の請求項5に記載されていた事項と変わりはないから、本件補正後の請求項1に係る補正は、形式的なものであって、実質的な補正ではない。

したがって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)が、特許を受けることができるものか否かを以下検討する。

第3 本願発明

本願発明は、本件補正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2 1.」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

第4 本願出願前に頒布された刊行物の記載事項

1.原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-307243号公報(以下「引用例1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】加熱塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼りあわせてなる感熱孔版原紙の、上記加熱塑性樹脂フィルム側に副走査方向に一対で形成される電極と、該電極の間に配設された発熱体とからなるサーマルヘッドを直接接触させると共に、上記発熱体と直交する方向に上記感熱孔版原紙を相対的に移動させ、上記発熱体の加熱により該加熱塑性樹脂フィルムにドット状の穿孔を施す感熱製版装置において、上記電極間に複数の発熱体を形成したことを特徴とする感熱製版装置。
【請求項2】サーマルヘッドの各一対の電極間に形成される発熱体が2個ないしは4個からなり、該発熱体は同時に発熱すると共に各発熱体がそれぞれ独立した熱ピーク部分を有する請求項1記載の感熱製版装置。」

(2)「【0002】
【従来の技術】感熱孔版装置には、加熱塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とから構成される感熱孔版原紙の搬送方向、即ち副走査方向に一対で形成された電極間に、発熱体が形成されたサーマルヘッドが取り付けられている。上記発熱体は該副走査方向と直交する方向、つまり主走査方向に所定のピッチを置いて一列に形成されている。そして、この発熱体を発熱させて上記加熱塑性樹脂フィルム側に接触させ、感熱孔版原紙に穿孔している。また、発熱体の大きさは感熱孔版原紙の搬送量等で制限されており、例えば、発熱体の主走査方向の長さをaとし、副走査方向の長さをbとすると、そのabの比率が1:2の寸法となっているものや、発熱体の長さbが、発熱体のピッチより大きくなっているものや、あるいは等しいものなどがある。」

(3)「【0009】サーマルヘッド13には図1に示すように、電極17とU字状の中間電極18が主走査方向(紙面左右方向)に平行に形成されており、両者の間には間隙を持たせて発熱体14が配設される。
【0010】電極17は1ドットに2個形成されており、次のドットまでの主走査方向ピッチPaが62.5μm毎に配設される。また、発熱体14は電極17に対応して、一端が電極17に接し他端が中間電極18と接している二つの発熱体から構成される。また、発熱体14は発熱体中央部に発熱温度が高いピーク部をもち、端に行くほど発熱温度が低くなる。
【0011】このような構成から片方の電極17に電気が送られると、二つの発熱体14は略同時に発熱し、図2に示すように、感熱孔版原紙11に開孔19を62.5μmのピッチPaで形成する。一段目が形成されると、感熱孔版原紙11は62.5μmのピッチPbで副走査方向に移動し、図中2段目の開孔19が1段目同様形成される。この時形成される開孔19は、発熱体主走査方向において、従来の開孔1よりも小さくなる。そして、穿孔が施された感熱孔版原紙11を孔版印刷装置の版胴にクランプして印刷すると、図6(a)に示すように、感熱孔版原紙11に穿孔された開孔19を版胴内部のインキ20が通過して印刷用紙21の表面に転写され、画像が形成される。」

(4)図1の記載から、
ア.複数の電極17、複数の発熱体14及び複数のU字状の中間電極18は、それぞれ、主走査方向に並んでいること、および、
イ.1つのU字状の中間電極18の両端の各々に、1つの発熱体14及び1つの電極17がこの順に接続され、中間電極18、2個一組の発熱体14及び2個一組の電極17が副走査方向に配置されてなるグループが、主走査方向の1ドットに1グループが対応するように、主走査方向に62.5μmのピッチPaで配列されていること、
が見て取れる。

(5)上記(1)ないし(4)から引用例1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「加熱塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼りあわせてなる感熱孔版原紙の上記加熱塑性樹脂フィルム側に、1つのU字状の中間電極18と2個一組の電極17とが副走査方向に一対で形成され、該一対の電極18、17及び該一対の電極の間に配設された2個一組の発熱体からなるグループが主走査方向の1ドットに1グループが対応するように主走査方向に配列されてなるサーマルヘッドを直接接触させると共に、上記発熱体と直交する方向に上記感熱孔版原紙を相対的に移動させ、上記発熱体の加熱により該加熱塑性樹脂フィルムにドット状の穿孔を施す感熱製版装置において、
該感熱孔版装置には、上記サーマルヘッドが取り付けられており、
上記発熱体は主走査方向に並んでおり、
上記各グループにおいて、1つの上記U字状の中間電極18の両端の各々に、1つの上記発熱体及び1つの上記電極17がこの順に接続されており、
上記各グループが、主走査方向の1ドットに1グループが対応するように、主走査方向に62.5μmのピッチPaで配列され、片方の電極17に電気が送られると、上記各グループの2個一組の発熱体は同時に発熱し、感熱孔版原紙に開孔を62.5μmのピッチPaで形成し、一段目の開孔が形成されると、上記感熱孔版原紙を62.5μmのピッチPbで副走査方向に移動する感熱製版装置。」

2.原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-67061号公報(以下「引用例2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0063】まず、図4及び図5において、副走査方向Fの解像度が400DPIに設定された場合について説明する。図5に示すように、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfは、副走査方向Fの解像度400DPIに対応して63.5μm/lineとなる。図4(a)に示すように、サーマルヘッド30の発熱体に通電パルス幅tp1に対応した1つの通電パルスが印加されると、その発熱体の昇温特性は、同図(b)のように略のこぎり波状のカーブを描いて昇温し、降温する。これにより、感熱性孔版マスタ61の穿孔状態は、図5に示すように、各穿孔hが副走査方向F及び主走査方向Sに連結穿孔することなく、副走査方向Fの解像度400DPIに適応した最適な大きさの穿孔hが得られる。
【0064】次に、図6及び図7において、副走査方向Fの解像度が300DPIに設定された場合について説明する。図7に示すように、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfは、副走査方向Fの解像度300DPIに対応して84.7μm/lineとなる。図6(a)に示すように、サーマルヘッド30の発熱体には、1つの画像信号に対して、通電パルス幅tp2及びtp4に対応した2回の連続した通電パルスが印加される。このように2回の連続した通電パルスが印加されると、その発熱体の昇温特性は、同図(b)のように2つの連続したのこぎり波状のカーブを描いて昇温し、降温する。これにより、感熱性孔版マスタ61の穿孔状態は、図7に示すように、各穿孔hが副走査方向Fにのみ大きく穿孔され、しかも副走査方向F及び主走査方向Sに連結穿孔することなく、副走査方向Fの解像度300DPIに適応した最適な大きさの穿孔hが得られる。また、通電パルス幅tp2及びtp4に対応した2回の連続した通電パルスが印加されることで、サーマルヘッド30の発熱体ピーク温度を感熱性孔版マスタ61の穿孔に必要とする温度、すなわち感熱性孔版マスタ61の閾値温度よりむやみに高くすることなく、感熱性孔版マスタ61の副走査方向Fにおける穿孔hの大きさを所望の大きさにすることができるため、これにより、サーマルヘッド30の発熱体に加えられる熱ストレスを少なく、かつ、小さくすることができる。したがって、この例によれば、サーマルヘッド30の寿命を向上することができる利点がある。なお、符号tp3は、通電パルス幅tp2及びtp4の間の通電オフ時間を示す。なお、主走査方向Sの穿孔hの大きさは、図示するほどの影響がなく、図7における穿孔状態ではその特徴を明確にするためこれを無視している。」

(2)「【0073】上記実施例において説明したように、サーマルヘッドの発熱部の発熱体における副走査方向の寸法は、感熱孔版印刷装置の解像度を示す副走査方向の解像度に対応した送りピッチに対応したある一つの値を持つ。例えば、図8(a)に示すように、主走査方向S及び副走査方向F共に300DPI(ドット/インチ)の解像度を有する感熱孔版印刷装置の場合、それに使用されるサーマルヘッドの発熱部の発熱体サイズは、主走査方向長50μm、副走査方向長60μmとなっていて、このサーマルヘッドによる感熱性孔版マスタ61の穿孔状態は、同図(a)のようになる。また、副走査方向Fの解像度を上げて印刷画像品質を向上させることを考えた場合であって、例えば、図8(b)に示すように、主走査方向Sの解像度300DPI、副走査方向Fの解像度400DPIとした場合におけるサーマルヘッドの発熱部の発熱体サイズは、主走査方向長50μm、副走査方向長40μmとなっている。これによる感熱性孔版マスタ61の穿孔状態は、同図(b)のようになる。
【0074】ところで、同一原稿から製版するための製版に要する製版時間は、1ラインのライン周期が同一の場合、副走査方向の解像度により異なり、それが高解像度であるほど長くなる。つまり、上述したように、主走査方向及び副走査方向共に300DPIの解像度を有する感熱孔版印刷装置で印刷した場合、その印刷画像品質は落ちるものの、製版時間は短くなる。逆に、主走査方向300DPI、副走査方向400DPIの解像度を有する感熱孔版印刷装置で印刷した場合、その製版時間は長くなるものの、印刷画像品質は向上する。
【0075】また、同一のサーマルヘッドを用いた感熱孔版印刷装置で副走査方向の解像度を変えることを考えた場合であって、例えば、図9(a)に示すように、主走査方向S及び副走査方向F共に300DPI用の解像度を持ったサーマルヘッドを用いた場合、副走査方向Fの解像度が300DPIであるときには良好な印刷画像品質を与える最適な穿孔径となるものの(図9(b)参照)、副走査方向Fの解像度を400DPIに変えたときには、各穿孔が副走査方向Fに繋がった連結穿孔となってしまい(図9(c)参照)、印刷用紙へのインキ転移量が増大し、先に排紙された印刷済用紙表面のインキが、次に排紙された印刷済用紙の裏面へ転移してその印刷済用紙の裏面を汚損してしまう、いわゆる裏移りという不具合が発生する。
【0076】一方、例えば、図10(a)に示すように、主走査方向300DPI、副走査方向400DPI用の解像度を持ったサーマルヘッドを用いた場合、副走査方向Fの解像度が400DPIであるときには良好な印刷画像品質を与える最適な穿孔径となるものの(図10(c)参照)、副走査方向Fの解像度を300DPIに変えたときには、各穿孔が副走査方向Fに離れすぎて印刷用紙上でのインキの滲みが追従せず、白スジが発生してしまうことがある(図10(b)参照)。」

(3)「【図面の簡単な説明】
・・・・(略)・・・・
【図9】実施例を補足説明する図であって、図9(a)は主走査方向及び副走査方向の解像度が300DPI用のサーマルヘッドの発熱体寸法を示し、図9(b)は副走査方向の解像度を300DPIに設定した場合の、図9(c)は副走査方向の解像度を400DPIに変えて設定した場合の感熱性孔版マスタの穿孔状態をそれぞれ示す。
【図10】実施例を補足説明する図であって、図10(a)は主走査方向の解像度が300DPI、副走査方向の解像度が400DPI用のサーマルヘッドの発熱体寸法を示し、図10(b)は副走査方向の解像度を300DPIに変えて設定した場合の、図10(c)は副走査方向の解像度を400DPIに設定した場合の感熱性孔版マスタの穿孔状態をそれぞれ示す。」

(4)「【符号の説明】
・・・・(略)・・・・
61 感熱性孔版マスタ
・・・・(略)・・・・
F 副走査方向
S 主走査方向」

(5)主走査方向及び副走査方向の解像度が300DPI用のサーマルヘッドの発熱体寸法を示す図9(a)の記載から、発熱体形状は副走査方向に長い長方形で、発熱体サイズは主走査方向長50μm、副走査方向長60μmであることが見て取れ、図9(a)の主走査方向及び副走査方向の解像度が300DPI用のサーマルヘッドを用いて副走査方向の解像度を300DPIに設定した場合の感熱性孔版マスタの穿孔状態を示す図9(b)の記載から、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが84.7μmであることが見て取れ、図9(a)の主走査方向及び副走査方向の解像度が300DPI用のサーマルヘッドを用いて副走査方向の解像度を400DPIに変えて設定した場合の感熱性孔版マスタの穿孔状態を示す図9(c)の記載から、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが63.5μmであることが見て取れる。

(6)主走査方向の解像度が300DPI、副走査方向の解像度が400DPI用のサーマルヘッドの発熱体寸法を示す図10(a)の記載から、発熱体形状は主走査方向に長い長方形で、発熱体サイズは主走査方向長50μm、副走査方向長40μmであることが見て取れ、図10(a)の主走査方向の解像度が300DPI、副走査方向の解像度が400DPI用のサーマルヘッドを用いて副走査方向の解像度を300DPIに変えて設定した場合の感熱性孔版マスタの穿孔状態を示す図10(b)の記載から、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが84.7μmであることが見て取れ、図10(a)の主走査方向の解像度が300DPI、副走査方向の解像度が400DPI用のサーマルヘッドを用いて副走査方向の解像度を400DPIに設定した場合の感熱性孔版マスタの穿孔状態を示す図10(c)の記載から、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが63.5μmであることが見て取れる。

第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1.引用発明の「加熱塑性樹脂フィルム」、「感熱孔版原紙」、「サーマルヘッド」、「感熱製版装置」及び「発熱体」は、それぞれ、本願発明の「熱可塑性樹脂フィルム」、「感熱性マスタ」、「サーマルヘッド」、「製版装置」及び「発熱体」に相当する。

2.引用発明の「感熱性マスタ(感熱孔版原紙)」は、「『熱可塑性樹脂フィルム(加熱塑性樹脂フィルム)』と多孔性支持体とを貼りあわせてなる」ものであるから、「熱可塑性樹脂フィルムを有している」点で、本願発明の「感熱性マスタ」と一致する。

3.引用発明の「サーマルヘッド」は、「該一対の電極18、17及び該一対の電極の間に配設された2個一組の発熱体からなるグループが主走査方向の1ドットに1グループが対応するように主走査方向に配列されてなる」ものであるから、「複数の発熱体を備えた」点で、本願発明の「サーマルヘッド」と一致する。このことと、引用発明において「発熱体は主走査方向に並んで」いることとから、引用発明の「サーマルヘッド」と本願発明の「サーマルヘッド」とは、「主走査方向に複数の発熱体を備えた」点でも一致するといえる。

4.引用発明の「加熱塑性樹脂フィルムにドット状の穿孔を施す」は、本願発明の「製版する」に相当する。また、引用発明において、「発熱体は主走査方向に並んで」いるから、引用発明の「上記発熱体と直交する方向に上記感熱孔版原紙を相対的に移動させ」るとの事項は、本願発明の「サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させ」るとの事項に相当する。これらのことと、引用発明の「製版装置」は、「『感熱孔版原紙の上記加熱塑性樹脂フィルム側に』、『サーマルヘッドを直接接触させると共に』、『上記感熱孔版原紙を相対的に移動させ』、『加熱塑性樹脂フィルムにドット状の穿孔を施す』」ものであることとから、引用発明の「製版装置」と本願発明の「製版装置」とは、「感熱性マスタに主走査方向に複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを接触させ、該サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させながら製版する」点で一致するといえる。

5.引用発明は、「各グループにおいて、1つのU字状の中間電極18の両端の各々に、1つの発熱体及び1つの電極17がこの順に接続されている」から、引用発明の各グループにおける「2個一組の発熱体」は、中間電極18を介して「直列接続している」といえる。また、引用発明において、「発熱体は主走査方向に並んでおり」、「各グループの2個一組の発熱体は同時に発熱し」、「サーマルヘッド」は、2個一組の発熱体を含むグループが主走査方向の1ドットに1グループが対応するように主走査方向に配列されてなるものであるから、引用発明の「発熱体」と本願発明の「微細化発熱体」とは、「発熱素子」である点で一致し、引用発明の「各グループの2個一組の発熱体」と本願発明の「微細化発熱体群」とは、「発熱素子のセット」として1単位を構成している点で一致し、「同時に発熱駆動される発熱素子を、上記主走査方向に複数配設すると共に該複数の発熱素子の全てを直列接続した」ものである点で一致し、「サーマルヘッド」に「具備(配列)」されている点で一致し、かつ、「主走査方向に複数配列した」ものである点でも一致する。

6.引用発明の「製版装置(感熱孔版装置)」には、「サーマルヘッドが取り付けられて」いるから、引用発明の「製版装置」と本願発明の「製版装置」とは、「サーマルヘッドを有」する点で一致する。

7.上記1.ないし6.から、本願発明と引用発明とは、
「熱可塑性樹脂フィルムを有する感熱性マスタに主走査方向に複数の発熱体を備えたサーマルヘッドを接触させ、該サーマルヘッドに対して上記感熱性マスタを上記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動させながら製版する製版装置において、
上記製版装置は、同時に発熱駆動される発熱素子を、上記主走査方向に複数配設すると共に該複数の発熱素子の全てを直列接続した発熱素子のセットを具備し、かつ、該発熱素子のセットを上記主走査方向に複数配列したサーマルヘッドを有する製版装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記発熱素子が、本願発明では「微細化発熱体」であるのに対して、引用発明では「発熱体」ではあるが「微細化」発熱体といえるものかどうか不明であり、前記「同時に発熱駆動される発熱素子を、上記主走査方向に複数配設すると共に該複数の発熱素子の全てを直列接続した発熱素子のセット」が、本願発明では、「微細化発熱体群」であるのに対して、引用発明では、「発熱体群」とはいえるものであるが「微細化発熱体群」といえるものかどうか不明である点。

相違点2:
同時に発熱駆動され、かつ、全てを直列接続した複数の発熱素子のセットにおける「発熱素子」が、本願発明では、画像データの1画素に対応して同時に発熱駆動されるのに対して、引用発明では、何に対応して同時に発熱駆動されるのか明確でない点。

相違点3:
本願発明の製版装置における「副走査方向の副走査送りピッチ」は、発熱素子のセットにおける「主走査方向の解像度ピッチの1/2である」のに対して、引用発明の製版装置において、感熱孔版原紙を62.5μmのピッチPbで副走査方向に移動するから、副走査方向の副走査送りピッチは62.5μmであり、前記各グループが、主走査方向の1ドットに1グループが対応するように、主走査方向に62.5μmのピッチPaで配列されているから、発熱素子のセットにおける主走査方向の解像度ピッチも62.5μmである点。

第6 判断
上記相違点1ないし3について検討する。

1.相違点2について
引用発明の感熱製版装置は、「1つのU字状の中間電極18と2個一組の電極17とが副走査方向に一対で形成され、該一対の電極18、17及び該一対の電極の間に配設された2個一組の発熱素子(発熱体)からなるグループが主走査方向の1ドットに1グループが対応するように主走査方向に配列されてなるサーマルヘッドを直接接触させると共に、上記発熱素子と直交する方向に上記感熱孔版原紙を相対的に移動させ、上記発熱素子の加熱により該加熱塑性樹脂フィルムにドット状の穿孔を施す」ものであるから、「ドット状の穿孔」を「1ドット分」施すには、「1グループ」に属する「2個一組の発熱素子」を用いることになることが明らかなところ、感熱製版装置で用いる基本的な記録データは、印刷時の「印刷画像の画素」に対応するように孔版紙に穿孔(ドット)を形成することができるようにするために、画像データの画像のある部分を”1”、画像のない部分を”0”として展開したようなデータになっている(例.特開平9-1772号公報(【0005】及び【0006】参照。以下「技術常識1」という。)から、引用発明の感熱製版装置に用いる画像データを、画像のある部分を”1”、画像のない部分を”0”として展開した各々の部分、すなわち「画像データの画素」の各々に対応して「1ドット分」の「ドット状の穿孔を施す」ことができるように、「1ドット」に対応するように主走査方向に配列されたグループの2個一組の発熱素子、すなわち「主走査方向に複数配設すると共に該複数の発熱素子の全てを直列接続した発熱素子のセットの発熱素子」が、画像データの1画素に対応して同時に発熱駆動されるようにすることは、当業者が設計上当然に考慮すべきことであるものと認められる。
よって、上記相違点2は、感熱製版装置で用いる基本的な記録データに関する技術常識1に基づいて当業者が容易になし得た程度のことである。

2.相違点1及び3について
(1)上記「第4 2.」の(1)ないし(6)の記載からみて、引用例2には、次のアないしウの技術事項が記載されているものと認められる。
ア 「発熱部の発熱体サイズが主走査方向長50μm、副走査方向長60μmとなっているサーマルヘッドを用いて、主走査方向及び副走査方向共に300DPIの解像度を有し、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが84.7μmである感熱孔版印刷装置で印刷した場合、その印刷画像品質は落ちるものの製版時間は短くなるが、その際、サーマルヘッドを、主走査方向300DPI、副走査方向400DPI用の解像度を持ったサーマルヘッドに変えた場合、各穿孔が副走査方向Fに離れすぎて印刷用紙上でのインキの滲みが追従せず、白スジが発生してしまう」こと。
イ 「発熱部の発熱体サイズが主走査方向長50μm、副走査方向長60μmとなっているサーマルヘッドを用いて、副走査方向Fの解像度を400DPIに変え、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが63.5μmとしたときには、各穿孔が副走査方向Fに繋がった連結穿孔となってしまい、印刷用紙へのインキ転移量が増大し、先に排紙された印刷済用紙表面のインキが、次に排紙された印刷済用紙の裏面へ転移してその印刷済用紙の裏面を汚損してしまう、いわゆる裏移りという不具合が発生する」こと。
ウ 「発熱部の発熱体サイズが主走査方向長50μm、副走査方向長40μmとなっているサーマルヘッドを用いて、主走査方向300DPI、副走査方向400DPIの解像度を有し、感熱性孔版マスタ61の送りピッチPfが63.5μmである感熱孔版印刷装置で印刷した場合、その製版時間は長くなるものの、良好な印刷画像品質を与える最適な穿孔径となり印刷画像品質が向上する」こと。

(2)引用発明において、副走査方向の副走査送りピッチは62.5μmであり、発熱素子のセットにおける主走査方向の解像度ピッチも62.5μmである(上記相違点3参照。)から、引用発明は、上記(1)アの「主走査方向及び副走査方向共に300DPIの解像度を有」する感熱孔版印刷装置と同様に、主走査方向及び副走査方向共に同じ解像度を有する感熱製版装置であるところ、上記(1)アに対する上記(1)ウのように副走査方向の解像度を高くすると、引用発明の感熱製版装置も印刷画像品質を向上することが可能であることは、当業者に自明のことである。
してみると、引用発明の感熱製版装置において、印刷画像品質を向上させる目的で副走査方向の解像度を高くするとともに、各穿孔が副走査方向に離れすぎて印刷用紙上でのインキの滲みが追従せず、白スジが発生してしまう(上記(1)ア参照。)ことがなく、各穿孔が副走査方向に繋がった連結穿孔となってしまい、印刷用紙へのインキ転移量が増大し、先に排紙された印刷済用紙表面のインキが、次に排紙された印刷済用紙の裏面へ転移してその印刷済用紙の裏面を汚損してしまう、いわゆる裏移りという不具合が発生する(上記(1)イ参照。)こともなく、良好な印刷画像品質を与える最適な穿孔径となる(上記(1)ウ参照。)ようにするため、引用発明の「発熱素子(発熱体)」の副走査方向長を小さくするとともに、副走査方向の解像度を高めるべく「副走査方向の副走査送りピッチ」を小さくすることは、引用例2に記載された上記(1)アないしウの技術事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。

(3)引用発明の「発熱素子(発熱体)」の副走査方向長を小さくすると(上記(2)参照。)、当該「発熱素子(発熱体)」は、微細化されることになるから、当該発熱素子(発熱体)は、「微細化発熱体」といえ、その発熱素子のセット(各グループの2個一組の当該発熱素子)は、「微細化発熱体群」といえる。
よって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。

(4)引用発明において、「発熱素子(発熱体)」の副走査方向長を小さくするとともに、副走査方向の解像度を高めるべく「副走査方向の副走査送りピッチ」を小さくする際(上記(2)参照。)、その副走査方向の解像度及び感熱孔版原紙の送りピッチをいかなる値のものにするかは当業者が設計に際して決定すべきものというべきところ、副走査方向の解像度を主走査方向の解像度の2倍になるように高めるとともに感熱孔版原紙の送りピッチを「微細化発熱体群(上記(3)参照。)」の主走査方向の解像度ピッチの1/2とすること、すなわち、本願発明でいう「副走査方向の副走査送りピッチは、微細化発熱体群における主走査方向の解像度ピッチの1/2である」となすことは、設計上の事項以上のものではない(例えば、特開平3-140259号公報の特許請求の範囲、2頁左上欄15行?同頁右上欄1行、2頁右上欄16?19行、第1図及び第9図の記載参照。同公報には、主走査方向に配列されている発熱抵抗体の主走査方向の間隔が「2×Px」であるとき、副走査方向での印字間隔が「Px付近の値であるPy」とする技術事項が記載されているといえる。ここで、「副走査方向での印字間隔」は「副走査方向の副走査送りピッチ」であるといえ、「主走査方向に配列されている発熱抵抗体の主走査方向の間隔」は「主走査方向の解像度ピッチ」であるといえるから、副走査方向の副走査送りピッチは、主走査方向の解像度ピッチの1/2であるとの技術事項が記載されているといえる。そして、同公報に具体的に記載されている装置は熱転写型の印字装置であるが、同様に、引用発明などの製版装置において、副走査方向の副走査送りピッチを、主走査方向の解像度ピッチの1/2となしてもよいことは明らかである。なお、同公報において、Pxは発熱部の主走査方向での間隔であるから、第1図に記載されている「Px」は「2×Px」の明らかな誤記である。)。

(5)したがって、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の構成となすことは、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。

3.効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2に記載された事項から当業者が予測することができた程度のものである。

4.まとめ
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-01 
出願番号 特願平11-48828
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 裕子  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 藏田 敦之
長島 和子
発明の名称 製版装置および製版印刷装置  
代理人 本多 章悟  
代理人 樺山 亨  

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