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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 D06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1200880
審判番号 不服2007-15023  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-24 
確定日 2009-07-16 
事件の表示 特願2005-161293「ドラム式洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月22日出願公開、特開2005-254003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成11年3月31日に特許出願した特願平11-92093号の一部を同17年6月1日に新たな特許出願としたものであって、同18年12月12日付で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同19年2月5日に意見書と共に手続補正書が提出されたが、同19年4月16日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同19年5月24日に本件審判の請求がされ、その後、同19年6月11日に特許請求の範囲、明細書について再度手続補正書が提出されたものである。

第2 平成19年6月11日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年6月11日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正をすると共にそれに関連して発明の詳細な説明の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前
前面に洗濯物出入口を有すると共にこの洗濯物出入口を開閉する扉を備えた外箱と、
この外箱内に後下がり傾斜状態でサスペンションにより弾性的に下から支持されて設けられ前側に前記洗濯物出入口に後下がりのほぼ筒状のシール部材を介して通じる開口を有する水槽と、
この水槽内に後下がり傾斜状態の軸回りに回転可能に設けられ前側に前記洗濯物出入口に臨む開口を有し内部に洗濯物が収容されるとドラムと、
直流電源回路に接続されたインバータ主回路と、
前記水槽の後面部に設けられ前記ドラムをダイレクトに回転駆動するように設けられ前記インバータ主回路で回転駆動制御されるモータと
を備え、
前記扉は前記洗濯物出入口を前記シール部材の前縁を介して密閉するように構成され、洗い行程における水位は、このシール部材の扉との接触箇所よりも低く設定されていることを特徴とするドラム式洗濯機。

(2)補正後
前面に円形の洗濯物出入口を有すると共にこの洗濯物出入口を開閉する扉を備えた外箱と、
この外箱内に後下がり傾斜状態でサスペンションにより弾性的に下から支持されて設けられ前側に前記洗濯物出入口に後下がりのほぼ筒状のシール部材を介して通じる円形の開口を有する水槽と、
この水槽内に後下がり傾斜状態の軸回りに回転可能に設けられ前側に前記洗濯物出入口に臨む円形の開口を有し内部に洗濯物が収容されるとドラムと、
直流電源回路に接続されたインバータ主回路と、
前記水槽の後面部に設けられ前記ドラムをダイレクトに回転駆動するように設けられ前記インバータ主回路で回転駆動制御されるモータと
を備え、
前記扉は前記洗濯物出入口を前記シール部材の前縁を介して密閉するように構成され、洗い行程における給水水位は、このシール部材の扉との接触箇所よりも低く設定されていることを特徴とするドラム式洗濯機。

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、外箱の洗濯物出入口、水槽の開口及びドラムの開口についてそれぞれ「円形の」という限定を付加すると共に洗い行程における水位について「給水水位」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、一部明らかな誤記を除いて上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「ドラム式洗濯機」であると認める。
(上記1(2)には、ドラムについて「洗濯物が収容されるとドラム」と記載されているが、これは「洗濯物が収容されるドラム」の誤記である。)

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件原出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-201483号公報(以下「引用例1」という。)、特開昭64-32893号公報(以下「引用例2」という。)及び特開平10-201993号公報(以下「引用例3」という。)の記載内容はそれぞれ以下のとおりである。

ア 引用例1
(ア)引用例1記載の事項
引用例1には「ドラム式全自動洗濯機」に関連して、以下が記載されている。
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。図1?図2は本発明の実施形態におけるドラム式全自動洗濯機の説明図であって、図1が該洗濯機の正面視縦断面図、図2が側面視縦断面図である。
【0021】図において、1は洗濯機本体、2は回転ドラム、3は撹拌バッフル、4は水槽、5は高圧ホース、6は給水弁、7は循環ダクト、8は排水ダクト、9はフィルターケース、10は循環ポンプ、11は排水弁、12は排水ホース、13は乾燥ユニット、14は回転軸、15はドラムプーリ、16はモータ、17はベルト、18は支持ロット、19は設置足、20は操作パネル、21は制御装置、22は洗剤ケース、23はドア、24は圧力スイッチである。
【0022】洗濯機は、全体がほぼ直方体であって、洗濯機本体1内に軸方向が短いほぼ円柱形状の回転ドラム2と水槽4とが設けられる。この回転ドラム2は水平方向にほぼ沿って回転軸14が配設され、回転軸14に沿った方向の一端部(回転軸とは反対側端部)が開口する洗濯物の投入口2aになっている。また、水槽4にもこの回転ドラム2投入口2aに対応して洗濯物の投入口4aが形成される。さらに、これら投入口2a,4aに対応して洗濯機本体1前面ほぼ中央部に投入口1aが形成される。
【0023】洗濯機本体1投入口1aおよび水槽4投入口4aは、ドア23で開閉するようになっている。そして、洗濯機本体1投入口1aと水槽4開口部4aとの内周縁部には、ゴムなどの弾性材からなるシール材1bが内嵌されている。したがって、ドア23が閉じたときには、ドアの周縁部と投入口1a,4aの内周縁部とで前記シール材1bが挟圧されて、洗濯機本体1および水槽4の水密が保持されるようになっている。
【0024】回転ドラム2は、洗濯物を収容して回転するものであって、回転ドラム2内には、中心軸に向けて突出する山脈状に撹拌バッフル3が形成されると共に、回転ドラム2の内周部から外周部に向けて開口する多数の通水孔2bが設けられている。
【0025】水槽4は前記回転ドラム2を囲んで設けられ、洗濯水(洗剤を含む水、濯ぎ水も含む)を溜めるものである。・・・。」

「【0029】水槽4の中心部を貫通してドラム2の回転中心であって投入口2aの反対側端部に水平な回転軸14が固定して設けられており、この回転軸14にはドラムプーリ15が固定されている。水槽4の下端部にはドラム駆動用モータ16が設けられており、このモータ16の回転軸とドラムプーリ15をベルト17で連結している。これら水槽4、回転軸14、ドラムプーリ15およびドラム駆動用モータ16などは洗濯機本体1に収容されている。
【0030】なお、振動吸収のため、洗濯機本体1から水槽4を防振機能を備えた支持ロット18により複数箇所吊下げ、水槽4を保持し振動を減衰させる構成である。洗濯機本体1の底面には設置足19が複数個設けられ、これらの設置足19で洗濯機本体1を支えている。」

「【0039】使用者は洗濯物をドラム2内に収容し操作パネル20から洗濯コースを選び、運転スイッチを押すことで運転が開始される。制御装置21ではドア23の開閉をできなくするためドアロックを行い、ドラム2内に収容された洗濯物の重量検知を行いマイコン内部の記憶部に記憶される。
【0040】・・・。
【0041】この動作で洗濯物量が検出され制御装置21では洗濯物量に合った洗濯水を水槽4内に給水する。しかし、給水量が多くなると投入口の上部に洗濯水が到達し運転途中でドア23の開閉ができなくなる。この状態を回避するため洗濯水の最大水位を投入口より低い位置に設定している。
【0042】図5は洗濯槽4内の水位レベル例を示し、図6は回転ドラム2洗濯量と給水水位の対応表である。洗濯物重量が例えば標準洗濯容量の60%以上であれば、図5の水位レベル「A」迄の高水位に給水する。また、標準洗濯容量の40%以上であれば、水位レベル「B」迄の中水位に給水する。また、標準洗濯容量の20%以上であれば、図5の水位レベル「C」迄の低水位に給水する。」

上記事項、並びに【図2】及び【図7】を参照すると、「洗濯機本体1投入口1a、水槽4投入口4a及び回転ドラム2投入口2aは、それぞれ円形であること」が、
同様に、【図2】及び【図5】を参照すると、「ドア23は洗濯機本体1投入口1aをシール材1bの前縁と中間部とを介して密閉するように構成されていること」が、
【図5】及び【図6】を参照すると「給水水位がシール材1bのドア23との接触箇所よりも低く設定されていること」が、記載されている。

(イ)引用例1記載の発明
洗濯機本体1投入口1aと水槽4投入口4aとの内周縁部に内嵌されているシール材1bは、上記投入口1a、4aがいずれも円形であることから、ほぼ筒状になっていることを考慮に入れながら、引用例1記載の事項を補正発明に照らして整理すると、引用例1には以下の発明が記載されていると認める。

「前面に円形の洗濯機本体1投入口1aを有すると共にこの洗濯機本体1投入口1aを開閉するドア23を備えた洗濯機本体1と、
この洗濯機本体1内に水平状態で防振機能を備えた支持ロット18により複数箇所吊下げて設けられ前側に前記洗濯機本体1投入口1aに水平のほぼ筒状のシール材1bを介して通じる円形の投入口4aを有する水槽4と、
この水槽4内に水平な回転軸14の軸回りに回転可能に設けられ前側に前記洗濯機本体1投入口1aに臨む円形の投入口2aを有し内部に洗濯物が収容されるドラム2と、
前記水槽4の下端部に設けられ前記ドラム2をベルト17、ドラムプーリ15を介して回転駆動するように設けられたドラム駆動用モータ16と
を備え、
前記ドア23は前記洗濯機本体1投入口1aを前記シール材1bの前縁と中間部とを介して密閉するように構成され、洗い行程における給水の最大水位は、前記洗濯機本体1投入口1aより低い位置に設定され、シール材1bのドア23との接触箇所よりも低く設定されているドラム式全自動洗濯機。」

イ 引用例2
引用例2には以下が記載されている。
(ア)第2頁右上欄第9?14行
「また、衣料の出入操作についても、従来の垂直支持ドラム又は水平支持ドラムは腰を曲げたり、あるいはかがみ込むなど洗濯者の腰部に無理がかかるという問題を有していたが、本発明ではこれも同時に解決することをその目的としている。」

(イ)第3頁左上欄第11行?同頁右上欄第10行
「第1図は本発明の代表的な実施例である洗濯・乾燥機の側断面図である。
まずその構成について説明する。
洗濯・乾燥機は側面からみると前面に一部傾斜面を有するケーシング2をもち、同ケーシング2の前記傾斜部中央に衣料6を出し入れするためのドア2’が取付けられており、内部には支持ブラケット14によって水平に対し角度θをなして設置されるシャフト11により支持された回転ドラム3が収納されている。同回転ドラム3の所定の部位には衣料6をドラム3の回転と共に持ち上げ落下させるためのビータ5、洗濯水7及び乾燥のための循環エア9が出入りするパンチング孔4が開口させてある。
回転ドラム3の前記シャフト11はベアリングユニット12、12’によって2点で支持され、その自由端にはVベルトによって駆動されるVプーリ13が取付けられており、図示されない駆動用モータから回転のための動力を受けるようになっている。」

(ウ)第1図
水平に対し角度θをなして設置されるシャフト11は、後下がり傾斜状態であること。

引用例2記載の事項を整理すると、引用例2には以下の事項が記載されていると認める。
「ドラム式洗濯機において、洗濯物の出入操作を容易にするために、内部に洗濯物が収容されるドラムを、後下がり傾斜状態の軸回りに回転可能に設けること。」

ウ 引用例3
引用例3には以下が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、籠状のドラムの内部に洗濯物を収容し、該ドラムを水平軸を中心に回転させることにより洗濯、或いは洗濯及び乾燥を行なうドラム式洗濯機(ここでは、乾燥の機能を併せ持つものも「洗濯機」と呼ぶ)に関する。」

「【0019】
【実施例】以下、本発明に係るドラム式洗濯機の一実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明によるドラム式洗濯機の要部を示す側面断面図、図2はこのドラム式洗濯機の要部を示す背面断面図、図3はモータ部分の詳細構造を示す側面断面図である。
【0020】本実施例のドラム式洗濯機では、外槽2の背面中央に直流ブラシレスモータ10、詳しくはアウターロータ形の偏平構造を有する直流ブラシレスモータが取り付けられ、このモータ10のアウターロータ11に固定された主軸7が直接回転駆動されるようになっている。
【0021】モータ10の構造は図3に示すように、内周側において外槽2背面にステータホルダ14が固定され、ステータホルダ14の周囲には互いに絶縁されたコアが主軸7と略同心円周上に複数形成されており、各コアには電線が巻回されてステータ15を成している。一方、モータ10の外周側に配設されるアウターロータ11は、周囲が軸方向に折曲げられた略円盤形状を有する樹脂製のロータ部材12とステータ15の外周と所定のギャップを保ってロータ部材12の内周面に取り付けられた永久磁石13とから成っている。永久磁石13はロータ部材12の内周面に沿ってN極とS極とが交互に複数配列される構造となっている。主軸7はステータホルダ14の内側に設けられている軸受8にて回転自在に支持されており、主軸7の末端はロータ部材12にネジ等により固定されている。
【0022】ステータ15の各巻線に図示しない制御回路から所定の電流が供給されると、ステータ15からギャップを隔てて対向する永久磁石13に磁路が形成され、これによりアウターロータ11は回転する。この結果、主軸7は回転駆動され、これに連結しているドラム3が回転する。
【0023】このような直流ブラシレスモータを回転駆動するための制御回路としては周知のインバータ制御回路を利用することができ、これによりドラム3の回転数を零から定格回転数近傍まで任意に且つ応答性よく制御することができる。」

引用例3記載の事項を、図面を参照しつつ整理すると、引用例3には以下の事項が記載されていると認める。
「ドラム式洗濯機において、水槽である外槽2の後面部に設けられドラム3をダイレクトに回転駆動するように設けられインバータ制御回路で回転駆動制御されるモータ10を備えること。」

(3)対比
補正発明と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明の「洗濯機本体1投入口1a」、「ドア23」及び「洗濯機本体1」は、それぞれ補正発明の「洗濯物出入口」、「扉」及び「外箱」に相当することが明らかである。
引用例1記載の発明の水槽4における「防振機能を備えた支持ロット18」は、水槽を弾性的に支持するサスペンションであるという限りで、補正発明の「サスペンション」と、同様に、「シール材1b」は、ほぼ筒状のシール部材であるという限りで、「シール部材」と共通しており、また、「投入口4a」は「開口」ということができるものである。そうすると、引用例1記載の発明の「水槽4」は、外箱内にサスペンションにより弾性的に支持されて設けられ前側に前記洗濯物出入口にほぼ筒状のシール部材を介して通じる円形の開口を有する水槽であるという限りで、補正発明の「水槽」と共通している。
また、引用例1記載の発明のドラム2における「投入口2a」も「開口」ということができるものであり、この「ドラム2」は、水槽内に軸回りに回転可能に設けられ前側に前記洗濯物出入口に臨む円形の開口を有し内部に洗濯物が収容されるドラムであるという限りで、補正発明の「ドラム」と共通している。
また、引用例1記載の発明の「ドラム駆動用モータ16」は、水槽に設けられ前記ドラムを回転駆動するように設けられたモータであるという限りで、補正発明の「モータ」と共通している。
また、引用例1記載の発明は、「ドラム式全自動洗濯機」として表現されているが、補正発明と同様に「ドラム式洗濯機」としても表現できるものである。

したがって、補正発明と引用例1記載の発明とは、以下の点で一致している。
「前面に円形の洗濯物出入口を有すると共にこの洗濯物出入口を開閉する扉を備えた外箱と、
この外箱内にサスペンションにより弾性的に支持されて設けられ前側に前記洗濯物出入口にほぼ筒状のシール部材を介して通じる円形の開口を有する水槽と、
この水槽内に軸回りに回転可能に設けられ前側に前記洗濯物出入口に臨む円形の開口を有し内部に洗濯物が収容されるドラムと、
前記水槽に設けられ前記ドラムを回転駆動するように設けられたモータと
を備え、
前記扉は前記洗濯物出入口を前記シール部材を介して密閉するように構成され、洗い行程における給水水位は、このシール部材の扉との接触箇所よりも低く設定されているドラム式洗濯機。」

そして、補正発明と引用例1記載の発明とは、以下の4点で相違している。
ア 相違点1
補正発明では、水槽及びドラムが後下がり傾斜状態で設けられており、シール部材も後下がりであるのに対して、引用例1記載の発明では、水槽、ドラム及びシール部材がいずれも水平状態で設けられている点。

イ 相違点2
補正発明では、水槽がサスペンションにより下から支持されているのに対して、引用例1記載の発明では、水槽がサスペンションにより吊下げられている点。

ウ 相違点3
補正発明では、直流電源回路に接続されたインバータ主回路を備えており、モータが、水槽の後面部に設けられドラムをダイレクトに回転駆動するように設けられ前記インバータ主回路で回転駆動制御されるのに対して、引用例1記載の発明では、そのようになっていない点。

エ 相違点4
補正発明では、扉は洗濯物出入口をシール部材の前縁を介して密閉するように構成されているのに対して、引用例1記載の発明では、シール部材の前縁だけでなく中間部も介して密閉するように構成されている点。

(4)相違点の検討
ア 相違点1について
上記(2)イ末尾で認定したように、引用例2には「ドラム式洗濯機において、洗濯物の出入操作を容易にするために、内部に洗濯物が収容されるドラムを、後下がり傾斜状態の軸回りに回転可能に設けること。」なる事項が記載され、これにより、洗濯者の姿勢が改善されることから、この事項を水槽及びドラムが水平状態で設けられている引用例1記載の発明に適用することは、必要に応じてなしうる事項にすぎない。
その際、引用例1記載の発明もそうであるように、ドラムと水槽は一体的なものであること、及び洗濯水量の削減の観点からみて、ドラムだけでなく水槽も後下がり傾斜状態で設けるように構成することに、格別の困難性は見当たらない。
そして、水槽及びドラムを後下がり傾斜状態で設ける場合には、シール部材も後下がりとすることが当然必要となる。

イ 相違点2について
ドラム式洗濯機において、水槽をサスペンションにより下から支持することは、例えば、原審における拒絶の査定の際に挙げられた特開平10-263291号公報の図1に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を引用例1記載の発明に適用して補正発明のように構成することに格別の困難性は見当たらない。

ウ 相違点3について
上記(2)ウ末尾で認定したように、引用例3には「ドラム式洗濯機において、水槽である外槽2の後面部に設けられドラム3をダイレクトに回転駆動するように設けられインバータ制御回路で回転駆動制御されるモータ10を備えること。」が記載されており、この事項を引用例1記載の発明に適用して、モータを、水槽の後面部に設けられドラムをダイレクトに回転駆動するように設けられインバータ主回路で回転駆動制御されるように構成することに格別の困難性は見当たらない。
また、インバータ主回路を直流電源回路に接続することは、特に例示するまでもない従来周知の事項であり、直流電源回路に接続されたインバータ主回路を備えることは、上記適用に当たって適宜なし得る単なる設計的事項にすぎない。

エ 相違点4について
補正発明の扉はシール部材の前縁を介して密閉するのに対して、引用例1記載の発明はシール部材の前縁だけでなく中間部も介して密閉するが、シール部材の「前縁」による密閉か、「前縁だけでなく中間部も介して」密閉するかは、必要に応じて適宜決定すればよい設計的事項にすぎない。

オ 補正発明の効果について
請求人は、傾斜配置によるスペースの有効利用、ドラム内に溜めうる水量の増加という効果を主張する。
しかし、かかる効果は、引用例1記載の発明に、引用例2記載の事項、引用例3記載の事項、及び上記従来周知の各事項を適用することにより、当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

カ したがって、補正発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の事項、引用例3記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし3に係る発明は、平成19年2月5日付手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、補正発明について指摘したと同じ誤記を除いて上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「ドラム式洗濯機」である。

2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。

3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、外箱の洗濯物出入口、水槽の開口及びドラムの開口についてそれぞれ「円形の」という限定を削除すると共に洗い行程における水位について「給水」という限定を削除するものである。
そうすると、本件出願の発明を構成する事項のすべてを含み、さらに他の限定を付加する補正発明が上記第2の2(4)カで示したとおり、引用例1記載の発明、引用例2記載の事項、引用例3記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件出願の発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-02 
出願番号 特願2005-161293(P2005-161293)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (D06F)
P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡本 健太郎稲垣 浩司  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 鈴木 敏史
小椋 正幸
発明の名称 ドラム式洗濯機  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  
代理人 佐藤 強  
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