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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1200897
審判番号 不服2007-27840  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-11 
確定日 2009-07-16 
事件の表示 特願2001-382610「スリットバルブ及びそれを取り付けた容器用キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 3日出願公開、特開2003-182753〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年12月17日の出願であって、平成19年9月5日付けでなされた拒絶査定に対し、これを不服として平成19年10月11日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年11月6日に明細書を対象とする手続補正書が提出されたものである。

第2 平成19年11月6日にした手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成19年11月6日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりにする補正を含むものである。

「【請求項1】
所定値よりも高い圧力によって開放されるスリットを有するスリット面と、このスリット面と周壁を介してつながり容器用のキャップ本体に固定保持される保持部とを備えるスリットバルブにおいて、
前記スリットバルブは、その周壁及び保持部の内壁がストレートに繋がる形状であって、スリット面側の厚みが保持部側の厚みよりも薄いものであると共に、
その保持部に、このスリットバルブを前記キャップ本体に固定保持する際に用いられるスリットバルブ押さえに設けた凸部が嵌合する凹部を備えることを特徴とするスリットバルブ。」

補正前の請求項2の記載は次のとおりであったところ(請求項2は請求項1を引用)、補正後の請求項1は、補正前の請求項2について、以下の(a)及び(b)のように限定を加えるものといえる。

「【請求項1】
所定値よりも高い圧力によって開放されるスリットを有するスリット面と、このスリット面と周壁を介してつながる保持部とを備えるスリットバルブにおいて、
前記スリットバルブは、その保持部の内壁がストレートな形状であって、スリット面側の厚みが保持部側の厚みよりも薄いものであることを特徴とするスリットバルブ。
【請求項2】
前記スリットバルブは、容器用のキャップ本体に固定保持されるものであって、その保持部に、このスリットバルブを前記キャップ本体に固定保持する際に用いられるスリットバルブ押さえが嵌合する嵌合部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスリットバルブ。」

(a)補正前に「周壁を介してつながる保持部」とあるのを、「周壁を介してつながり容器用のキャップ本体に固定保持される保持部」と、保持部が保持される箇所を具体的に限定しているとともに、補正前に「その保持部に、このスリットバルブを前記キャップ本体に固定保持する際に用いられるスリットバルブ押さえが嵌合する嵌合部を備える」とあるのを、「その保持部に、このスリットバルブを前記キャップ本体に固定保持する際に用いられるスリットバルブ押さえに設けた凸部が嵌合する凹部を備える」と、スリットバルブ押さえと保持部の嵌合部の形状が凸部と凹部であることを、具体的に限定している。
(b)補正後の請求項1は、スリットバルブの形状に関して、補正前に、「前記スリットバルブは、その保持部の内壁がストレートな形状」とあるのを、「前記スリットバルブは、その周壁及び保持部の内壁がストレートに繋がる形状」と、スリットバルブの内壁の形状をより具体的に限定している。

したがって、この補正は、補正前の請求項2に記載されていた発明を特定するために必要な事項を減縮するものである。また、この補正により、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないことは明らかである。
そこで、補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、次に検討する。

2.本願補正発明
本件補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されたとおりのものと認める。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-240554号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<引用文献>
(a)「【0010】弾性弁20は、上記キャップ本体10の中間筒部13内面に固着筒部21の下部を、かつ上記上方筒部16の下方延長形成部分16a外面に固着筒部21の上部を、それぞれ嵌合させ、又その固着筒部21の外面中間に周設した係合突条22を上記係合溝部14内へ係合させて固着筒部21を抜け止めし、更に、その固着筒部21の内面から内向きフランジ状の水平壁23を介して起立する主筒部24の上端に、半球面状に下方へ彎曲する弾性壁25を横設し、該弾性壁の下面外周部に周設した環状突条26の上端が囲む弾性壁部分にスリット27を穿設している。該スリットは、後述するように図1が示す補助キャップ30を閉塞させた状態では開口し、かつ図3が示す閉蓋状態では、切り離し面相互が圧接して閉塞する。又図示実施形態では、スリット27を一文字状に穿設したが、十字状或いはY字状等、収納液体の粘度、使用量等を勘案して適宜形状に穿設し、又スリット27は、図3が示す状態で容器体内が相当高圧化した場合に弾性壁25が弾性変形して開口するよう形成している。」(段落【0010】)
また、図面の図1の記載からも明らかなように、弾性壁25の厚みは水平壁23の厚みより薄いものであると認められる。

(b)「次に、容器体胴部を弾性圧搾して容器体内を加圧すると、スリット27が開口して収納液体が注出される。又該状態から胴部の圧搾を解放すると、スリット27は一旦閉塞するが、再び開口して外気が容器体内へ吸入され、容器体内の負圧化が解消され、該負圧状態の解消でスリット27が閉塞する。」(段落【0012】)

ここで、上記(a)に、「弾性弁20は、上記キャップ本体10の中間筒部13内面に固着筒部21の下部を、かつ上記上方筒部16の下方延長形成部分16a外面に固着筒部21の上部を、それぞれ嵌合させ、又その固着筒部21の外面中間に周設した係合突条22を上記係合溝部14内へ係合させて固着筒部21を抜け止めし」と記載されているように、引用文献1の水平壁23は、キャップ本体10に固定保持されるものである。してみれば、以上の記載および図面の記載を総合すれば、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「所定値よりも高い圧力によって開放されるスリット27を有する弾性壁25と、この弾性壁25と主筒部24を介してつながり容器用のキャップ本体10に固定保持される水平壁23とを備える弾性弁20において、前記スリットバルブは、弾性壁25の厚みが水平壁23の厚みよりも薄いものである弾性弁。」

4.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「弾性壁25」、「主筒部24」、「キャップ本体10」、「水平壁23」、「弾性弁20」がそれぞれ、本願補正発明の「スリット面」、「周壁」、「キャップ本体」、「保持部」、「スリットバルブ」に相当する。
すると、本願補正発明と引用発明との両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「所定値よりも高い圧力によって開放されるスリットを有するスリット面と、このスリット面と周壁を介してつながり容器用のキャップ本体に固定保持される保持部とを備えるスリットバルブにおいて、前記スリットバルブは、スリット面側の厚みが保持部材側の厚みよりも薄いものであるスリットバルブ。」
【相違点1】
本願補正発明では、スリットバルブが、「その周壁及び保持部の内壁がストレートに繋がる形状」であるのに対し、引用発明では、主筒部24と水平壁23の内壁がストレートに繋がる形状であるかどうか不明である点。
【相違点2】
本願補正発明では、「その保持部に、このスリットバルブを前記キャップ本体に固定保持する際に用いられるスリットバルブ押さえに設けた凸部が嵌合する凹部を備える」のに対し、引用発明では、弾性弁20をキャップ本体10にスリットバルブ押さえを用いることなく固定保持させている点。

5.判断
そこで、相違点1、2について検討する。
(1)相違点1について
内容物の円滑な吐出のためにスリットバルブの内壁を滑らかな形状とすることが好適であることは、当業者にとって明らかであるとともに、スリットバルブの内壁をストレート形状とすることは、特開平11-91817号公報(特に、図5など参照)、国際公開第01/032552号(特に、Fig1など参照)に開示されているように、スリットバルブの技術分野において、通常に採用されている形状である。
してみれば、スリットバルブの内壁の形状としてストレート形状を採用することは、当業者であれば容易になし得ることというべきであるから、引用発明の主筒部24及び水平壁23の内壁を、ストレートに繋がる形状とし、上記相違点1で挙げた本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

(2)相違点2について
スリットバルブをキャップ本体に固定保持する手段として、どのような構成を採用するかは、当業者であれば、公知の技術に基づいて適宜なし得るものであるとともに、そのような固定保持する手段として、スリットバルブ押さえを用いることや、スリットバルブ押さえに凸部を設けるとともに当該凸部が嵌合する凹部を保持部に設けることは、特開平11-91817号公報(特に、挟持板22、突起21、凹溝33など参照)、特開平11-310279号公報(特に、基板40、50、突出環46、55、係合溝33など参照)に開示されているように、スリットバルブの技術分野において、本願出願前の周知技術である。
してみれば、引用発明の弾性弁を固定保持する手段として、上述した周知な構成を採用し、上記相違点2で挙げた本願補正発明の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

また、本願補正発明の効果も当業者が予想し得る程度のものである。

6.補正却下の決定のむすび
したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成19年11月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年8月17日に補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載されている事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
所定値よりも高い圧力によって開放されるスリットを有するスリット面と、このスリット面と周壁を介してつながる保持部とを備えるスリットバルブにおいて、
前記スリットバルブは、その保持部の内壁がストレートな形状であって、スリット面側の厚みが保持部側の厚みよりも薄いものであることを特徴とするスリットバルブ。
【請求項2】
前記スリットバルブは、容器用のキャップ本体に固定保持されるものであって、その保持部に、このスリットバルブを前記キャップ本体に固定保持する際に用いられるスリットバルブ押さえが嵌合する嵌合部を備えることを特徴とする請求項1に記載のスリットバルブ。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載は、上記第2、【理由】、「3.引用文献」に記載したとおりのものである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記第2、【理由】、「2.本願補正発明」に記載した本願補正発明の、保持部が「容器用のキャップ本体に固定保持される」という保持箇所の特定、また、スリットバルブ押さえと保持部の嵌合部の形状が凸部と凹部であるという特定、さらに、スリットバルブの保持部の内壁のみならず保持部と周壁の内壁がストレートに繋がる形状であるという特定を省いたものであり、その他の構成については、本願補正発明と差違がない。
そうすると、本願発明の構成要素をすべて含み、さらに他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2、【理由】、「4.対比」、及び「5.判断」で検討したように、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-15 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-01 
出願番号 特願2001-382610(P2001-382610)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
発明の名称 スリットバルブ及びそれを取り付けた容器用キャップ  
代理人 杉村 憲司  
代理人 来間 清志  
代理人 澤田 達也  
代理人 杉村 興作  
代理人 藤谷 史朗  

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