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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1200904
審判番号 不服2008-11301  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-02 
確定日 2009-07-16 
事件の表示 特願2005-263148「薄膜トランジスターの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月26日出願公開、特開2006- 24958〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成5年8月19日(パリ条約による優先権主張1992年8月19日、米国)に出願した特願平5-204375号の一部を平成17年9月12日に新たな特許出願としたものであって、平成20年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月2日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明について(その1)
1.本願発明について(その1)
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成20年6月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、このうち、本願の請求項1に係る発明は、
「【請求項1】
薄膜トランジスターであって、前記トランジスターが、
絶縁基板(1)、
前記基板(1)上に堆積され、ソース及びドレイン領域有する再結晶化シリコン層(3)、ここで、前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであり、
前記再結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)を含み、前記ゲート構造が、
前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された100Å以下の厚さを有する第1の酸化物層(113)、
前記第1の酸化物層(113)に接触する、TEOSの低圧分解により形成されたSiO_(2)よりなる100Å乃至150Åの厚さを有する圧縮された第2の酸化物層(115)、
前記第2の酸化物層(115)に接触する伝導領域(13)、及び
前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に5乃至10気圧、800乃至825℃の温度の条件下で成長された第3の酸化物層(111)を含み、
前記第1の酸化物層(113)、前記第2の酸化物層(115)及び前記第3の酸化物層(111)は、前記伝導領域(13)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に配置される
ことを特徴とする薄膜トランジスター。」である。
また、本願の請求項1に係る発明は、末尾の記載が、「薄膜トランジスター」という物の発明であり、方法的に記載してある部分は、物の発明の特徴とは認められないので、方法的に記載してある部分を省いて発明を認定すると、本願の請求項1に係る発明は、
「薄膜トランジスターであって、前記トランジスターが、
絶縁基板(1)、
前記基板(1)上に堆積され、ソース及びドレイン領域有する再結晶化シリコン層(3)、ここで、前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであり、
前記再結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)を含み、前記ゲート構造が、
前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された100Å以下の厚さを有する第1の酸化物層(113)、
前記第1の酸化物層(113)に接触するSiO_(2)よりなる100Å乃至150Åの厚さを有する第2の酸化物層(115)、
前記第2の酸化物層(115)に接触する伝導領域(13)、及び
前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に形成された第3の酸化物層(111)を含み、
前記第1の酸化物層(113)、前記第2の酸化物層(115)及び前記第3の酸化物層(111)は、前記伝導領域(13)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に配置される
ことを特徴とする薄膜トランジスター。」となる。

2.引用刊行物に記載された発明
刊行物1.特開平4-43642号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平4-43642号公報)には、第4図ないし第8図とともに、ゲート絶縁膜の形成方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「2.特許請求の範囲
・・・
(3)半導体の材料としてシリコンを用いたMOS型電界トランジスタのゲート絶縁膜を形成するに際し、
(イ)シリコン表面をプラズマのエネルギーを用いて酸化して酸化膜を形成し、
(ロ)この酸化膜上にプラズマのエネルギーを用いたCVD法によりシリコン酸化膜を堆積させ、
(ハ)次いでこのシリコン酸化膜を酸素プラズマを用いてアニールすることを特徴とするゲート絶縁膜の形成方法。
(4)請求項(3)において、(ロ)および(ハ)の工程を2回以上繰返すことを特徴とするゲート絶縁膜の形成方法。」(第1頁左上欄第4行ないし右下欄第14行)
イ 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、シリコンを半導体としたMOS型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜を低温で形成する方法に関する。
〔従来の技術〕
シリコンを半導体として用いたMOS型電界効果トランジスタ(以下MOSFETという)は半導体集積回路や、アクティブマトリックス方式液晶ディスプレイ用の薄膜トランジスタ(以下TFTという)アレイ等に用いられる主要回路素子である。
上記MOSFETの構造は、例えば第7図に示すように、単結晶シリコン基板、或いは絶縁膜上の厚い多結晶シリコン膜1を半導体として用い、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を設けたもの、或いは、第8図に示すように、石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの等がある。なお図中13はキャリヤを供給、或いは引出すゾーン、ドレイン領域である。
上記ゲート絶縁膜2は、半導体領域となるシリコン膜l或いは5と共にこの素子の特性を決定する最も重要な部分である。」(第2頁左上欄第3行ないし同頁右上欄第7行)
ウ 「次に、ゲート絶縁膜を形成する工程について説明する。
多結晶シリコンTFTの場合も、単結晶シリコンによるMOSFETの場合も、ゲート絶縁膜の形成工程は同一であり、プラズマCVD装置を用いた多結晶シリコンTFTの工程を代表例として説明する。
第4図(a)(b)(c)は工程の一例を示す図で、絶縁基板41上に島状にパターニングした膜厚10nm?数100nmの多結晶シリコン膜42の表面を充分にクリーニングした後、プラズマCVD装置内にセットし、絶縁基板41の温度を400?700℃にして酸素含有ガスによりプラズマ酸化を行ない、シリコン膜42の表面に数nm?数10nmの酸化シリコン膜43を形成する。次いで同じ温度範囲で酸素含有ガスと共にシリコン含有ガスを導入し、膜厚数10nm?数100nmのシリコン酸化膜44を堆積し、全体として数10nm?数100nmのゲート絶縁膜45を形成する。
なお、上記酸化シリコン膜43は、多結晶シリコン膜42の面に形成され、シリコン酸化膜44は絶縁基板41の面にも形成される。
上記2つの工程によってゲート絶縁膜45を形成すると、シリコン酸化膜43を形成する場合と比較して、ゲート絶縁膜45と多結晶シリコン膜42の間の界面特性が向上しゲート絶縁膜45としてのシリコン酸化膜44が高品質化する。
なお、プラズマ酸化法で酸化シリコン膜43を形成すると、膜形成速度が非常に遅くこれ単独で全膜厚を形成するには時間を要し、実用性を失なう。」(第4頁右上欄第10行ないし同頁右下欄第1行)
エ 「また、第5図(a)(b)(c)に示すように、絶縁基板41上の多結晶シリコン膜42の表面に、絶縁基板41の温度を400?700℃として数10nm?数100nmのシリコン酸化膜44を堆積した後、同じ温度範囲下、酸素プラズマ中でアニールすることによりゲート絶縁膜45を形成する。
この場合、酸素プラズマアニール中に酸素原子、或いはイオンが、堆積したシリコン酸化膜44中に拡散し、シリコン酸化膜中の欠陥およびシリコン酸化膜44と多結晶シリコン膜42間の界面の欠陥のアニールが行われゲート絶縁膜45としてのシリコン酸化膜44がアニールされたシリコン酸化膜46となり高品質化される。」(第4頁右下欄第2行ないし同欄第15行)
オ 「また第6図(a)(b)(c)(d)(e)は、上記2つの方法を組合わせたもので表面クリーニングした多結晶シリコン膜42に数nm?数10nmの酸化シリコン膜43を形成し、さらに数10nm以下のシリコン酸化膜44の堆積を行ないこれを酸素プラズマアニールして、アニールされたシリコン酸化膜46とする工程を最低行ない、第6図(d)に示すものをつくる。その後、シリコン酸化膜44の堆積、酸素プラズマアニールをしてアニールされたシリコン酸化膜46とする工程を繰返えす。この場合繰返し回数が多い程、高品質のゲート絶縁膜45が得られる。
上記工程は、ECRプラズマCVD装置、マイクロ波プラズマCVD装置、光CVD装置等いずれを用いても実施可能である。
なお、上記装置ではヒータによる加熱を行なわなくとも比較的高品質のシリコン酸化膜44の堆積が可能であり、シリコン酸化膜の堆積温度としては室温から700℃程度までが使用出来る。」(第4頁右下欄第16行ないし第5頁左上欄第14行)

ここで、上記摘記事項ウないしオより、第6図(b)の酸化シリコン膜43は、多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成された酸化シリコン膜であり、第6図(e)のシリコン酸化膜46,46は、いずれも、シリコン酸化膜を堆積後、酸素プラズマ中でのアニールによりアニールされたシリコン酸化膜であることは明らかである。

よって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「絶縁基板と、前記絶縁基板上に島状にパターニングした多結晶シリコン膜と、前記多結晶シリコン膜の上に形成したゲート絶縁膜とを含み、
前記ゲート絶縁膜が、前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜と、前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜と、前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜からなることを特徴とする薄膜トランジスタ。」

刊行物2.特開平3-292718号公報
原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物2(特開平3-292718号公報)には、第1図とともに、「結晶性半導体薄膜の製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「[実 施 例]
以下本発明に係る結晶性半導体薄膜の製造方法をSOI構造の形成に適用した実施例につき図面を参照しながら説明する。
第1図(a)に示すように、絶縁性基体1上に多結晶Si膜2と非晶性Si膜3を積層する。多結晶Si膜2はたとえば560℃でCVD法により形成し、非晶性Si膜3を250℃でプラズマCVD法により膜厚300Å程度に形成する。
次に、第1図(b)に示すように、絶縁膜4を形成した後、レーザービーム5を照射する。レーザービーム5の強度は絶縁膜4と非晶性Si膜3の膜厚と膜質によって異なる。絶縁膜4を膜厚1000Å程度のSiO_(2)膜としすると、例えばキセノンレーザーによるレーザービーム5照射を行なえば、レーザービームによる最適照射強度は300mJ/cm^(2)である。このレーザービーム5の照射により非晶性Si膜3を融解した後冷却固化して、第1図(c)に示す再結晶Si膜6になる。
第1図(c)に示した再結晶Si膜6と多結晶Si膜2の界面は少し融解するが、再結晶Si膜6と多結晶Si膜2との熱膨張率はほとんど等しく、再結晶Si膜6がレーザービーム5の照射によって融解した後固化して形成される際も剥離することはない。また、多結晶Si膜2が存在することにより、再結晶Si膜6の核発生密度数は小さく制限される効果を有し、再結晶Si膜6の平均結晶粒径は、多結晶Si膜2の平均結晶粒径より大きくなる。」(第2頁左上欄第15行ないし同頁左下欄第4行)

3.対比
上記1.において方法的な記載が物の発明の特徴ではないとして認定した本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明12」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比する。
(a)刊行物1発明の「絶縁基板」は、本願発明12の「絶縁基板(1)」に相当する。
(b)刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」は、本願発明12の「結晶化シリコン層」に相当する。
(c)刊行物1発明の「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた」「シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」は、本願発明12の「第1の酸化物層(113)」に相当する。
(d)刊行物1発明の「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた」「シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」は、本願発明12の「前記第1の酸化物層(113)に接触するSiO_(2)よりなる」「第2の酸化物層(115)」に相当する。
(e)刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」は、本願発明12の「前記第1の酸化物層(113)と前記」「結晶化されたシリコン層(3)の間に形成された第3の酸化物層(111)」に相当する。
(f)刊行物1発明の「薄膜トランジスタ」は、本願発明12の「薄膜トランジスター」に相当する。

すると、本願発明12と刊行物1発明とは、
「薄膜トランジスターであって、前記トランジスターが、
絶縁基板、
前記基板上に堆積された結晶化シリコン層、
前記結晶化シリコン層上に形成された第1の酸化物層、
前記第1の酸化物層に接触するSiO_(2)よりなる第2の酸化物層、及び
前記第1の酸化物層と前記結晶化されたシリコン層の間に形成された第3の酸化物層を含む
ことを特徴とする薄膜トランジスター。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明12は、「ソース及びドレイン領域」を「有する再結晶化シリコン層(3)」を有し、「前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」るのに対して、刊行物1発明は、「多結晶シリコン膜」を有する点。
相違点2
本願発明12は、「前記再結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)」を有するのに対して、刊行物1発明は、上記構成を備えているか否か明らかでない点。
相違点3
本願発明12は、「前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された」「第1の酸化物層(113)」が「100Å以下の厚さを有する」のに対して、刊行物1発明は、「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」を有しており、「酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の膜厚が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」である点。
相違点4
本願発明12は、「前記第1の酸化物層(113)に接触するSiO_(2)よりなる」「第2の酸化物層(115)」が「100Å乃至150Åの厚さを有する」のに対して、刊行物1発明は、「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」を有しており、「酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の膜厚が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」である点。
相違点5
本願発明12は、「前記第2の酸化物層(115)に接触する伝導領域(13)」を有するのに対して、刊行物1発明は、このような記載がない点。
相違点6
本願発明12は、「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に形成された第3の酸化物層(111)」を有するのに対して、刊行物1発明は、「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」を有する点。
相違点7
本願発明12は、「前記第1の酸化物層(113)、前記第2の酸化物層(115)及び前記第3の酸化物層(111)は、前記伝導領域(13)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に配置される」のに対して、刊行物1発明は、上記構成を備えているか否か明らかでない点。

4.当審の判断(その1)
以下において、相違点1ないし7について検討する。
相違点1について
(a)刊行物1の第8図及び適記事項イには、「石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第2行)が記載され、また、2つの「ドレイン領域」「13」(第2頁右上欄第3行及び第4行)も記載されている。そして、刊行物1の第8図の2つの「ドレイン領域」「13」のうちの一方は、通常、ソース領域と呼ばれている。
(b)すると、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」も、刊行物1の第8図の「多結晶シリコン薄膜5」と同様に、ソース領域とドレイン領域を有することは明らかであるから、相違点1のうち、本願発明12が、「ソース及びドレイン領域」を「有する」「結晶化シリコン層(3)」を有する点については、本願発明12と刊行物1発明とは、実質的に相違しない。
(c)刊行物2の第1図(c)には、「再結晶Si膜6」が示されている。 そして、刊行物2には、「第1図(a)に示すように、絶縁性基体1上に多結晶Si膜2と非晶性Si膜3を積層する。」、「次に、第1図(b)に示すように、絶縁膜4を形成した後、レーザービーム5を照射する。」、「このレーザービーム5の照射により非晶性Si膜3を融解した後冷却固化して、第1図(c)に示す再結晶Si膜6になる。」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第14行)ことが記載されているから、刊行物2の第1図(c)に示される、絶縁性基体1と絶縁膜4との間のシリコン膜は、「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜であって、本願発明12の「前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」ることに相当するので、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜は、本願発明12の「再結晶化シリコン層(3)」に相当するとともに、「前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」ることに相当する。
(d)ここで、半導体装置の構成要素を形成するための半導体層を単層で構成するか複数の層(積層)で構成するかは、いずれも慣用手段にすぎないから、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明12のごとく、「ソース及びドレイン領域有する再結晶化シリコン層(3)、ここで、前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」るとの構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点2について
(a)上記「相違点1について」の(a)及び(b)での検討を考慮すると、刊行物1には、実質的に、「ソース領域」、「ドレイン領域」、「ソース領域」と「ドレイン領域」の間に「ゲート絶縁膜2」と「MOSゲート電極3」を備えた「薄膜トランジスタ」が記載されている。
(b)刊行物1発明が実質的に備えている、「ゲート絶縁膜2」と「MOSゲート電極3」とを併せたものを、慣用的な表現として、「ゲート構造」と呼ぶことにより、刊行物1発明は、実質的に、本願発明12のごとく、「前記」「結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)を含」むようなものとなることは明らかであり、「ゲート構造」を備えることについては、本願発明12と刊行物1発明とは、実質的に相違しない。
(c)上記(a)、(b)及び上記「相違点1について」の(c)及び(d)における検討を考慮すると、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明12の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすること、更には、刊行物1発明が、本願発明12のごとく、「前記再結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)」を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

相違点3について
(a)本願発明12の「第1の酸化物層(113)」は、「前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された」と記載されているが、実際には、本願発明12は、「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に形成された第3の酸化物層(111)」を備えているから、本願発明12の「第1の酸化物層(113)」と「再結晶化シリコン層(3)」との間には、「第3の酸化物層(111)」が存在していることは明らかである。
したがって、本願発明12の「前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された」「第1の酸化物層(113)」とは、「前記再結晶化シリコン層(3)」の上方「に形成された」「第1の酸化物層(113)」という意味であり、「薄膜トランジスター」の構成要素としての、「再結晶化シリコン層(3)」と「第1の酸化物層(113)」は、直接には接触していない。
(b)一方、刊行物1発明の「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」も、「多結晶シリコン膜」の上方にある。
したがって、相違点3については、実質的には、本願発明12が「再結晶化シリコン層(3)」を有するのに対して、刊行物1発明が「多結晶シリコン膜」を有する点で、相違している。
(c)しかしながら、上記「相違点1について」の(c)及び(d)において検討したとおり、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明12の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
(d)また、刊行物1発明の「膜厚数10nm以下」は、「膜厚数100Å以下」のことであるから、本願発明12の「100Å以下の厚さを有する」ことの「100Å以下」と、数値範囲が重なっており、絶縁膜の厚さをどの程度とするかは、求められる特性に応じて適宜設定し得るものである。
(e)さらに、刊行物1発明では、「シリコン酸化膜」が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」であるが、「酸素プラズマアニール」した後であっても、「シリコン酸化膜」の膜厚は、それほど変わるものではない。
したがって、刊行物1発明の「酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の厚さを、本願発明12のように、「100Å以下」とすることは、当業者が適宜設定し得た程度のことである。

相違点4について
(a)刊行物1発明の「膜厚数10nm以下」は、「膜厚数100Å以下」のことであるから、本願発明12の「100Å乃至150Åの厚さを有する」ことの「100Å乃至150Å」と、数値範囲が重なっており、絶縁膜の厚さをどの程度とするかは、求められる特性に応じて適宜設定し得るものである。
(b)また、刊行物1発明では、「シリコン酸化膜」が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」であるが、「酸素プラズマアニール」した後であっても、「シリコン酸化膜」の膜厚は、それほど変わるものではないので、刊行物1発明の「シリコン酸化膜」の厚さを、本願発明12のように、「100Å乃至150Å」とすることは、当業者が適宜設定し得た程度のことである。

相違点5について
(a)刊行物1の第8図及び摘記事項イには、「石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第2行)が記載されている。
そして、「MOSゲート電極3」は、本願発明12の「伝導領域(13)」に相当する。
(b)すると、刊行物1発明の「ゲート絶縁膜」のうちの一番上の膜である、「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の上に、刊行物1の第8図に記載の「MOSゲート電極3」を設け、刊行物1発明が、本願発明12のごとく、「前記第2の酸化物層(115)に接触する伝導領域(13)」を有するようになすことは、当業者が適宜なし得たものである。

相違点6について
(a)刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」は、その上の「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」と、その下の「多結晶シリコン膜」との間にあるので、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」と、本願発明12の「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に形成された第3の酸化物層(111)」とは、その配置関係に違いはないが、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」は、「多結晶シリコン膜」の上に設けられており、本願発明12の「第3の酸化物層(111)」は、「再結晶化されたシリコン層(3)」の上に設けられているから、刊行物1発明と本願発明12とにおいて、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」と、本願発明12の「再結晶化されたシリコン層(3)」とは、「層」が相違している。
(b)しかしながら、上記「相違点1について」の(c)及び(d)において検討したとおり、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明12の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。

相違点7について
(a)刊行物1の第8図及び摘記事項イには、「石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第2行)が記載されている。
すると、「ゲート絶縁膜2」は、「MOSゲート電極3」と「多結晶シリコン薄膜5」の間に配置されることになるから、刊行物1発明の「ゲート絶縁膜」である、「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」、「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」及び「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」も、通常は、「MOSゲート電極」と「多結晶シリコン膜」の間に配置されることになる。
(b)したがって、相違点7については、本願発明12が「再結晶化されたシリコン層(3)」を有し、刊行物1発明が「多結晶シリコン膜」を有する以外は、相違しないものである。
そして、上記「相違点1について」の(c)及び(d)において検討したとおり、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明12の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。

第2の2 本願発明について(その2)
1.本願発明について(その2)
本願の請求項1に係る発明において、仮に、方法的に記載してある部分にも特徴があるとして、上記「第2 1.」に記載した、本願の「請求項1」に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と刊行物1発明とを対比する。

2.引用刊行物に記載された発明
刊行物1及び2に記載された事項及び刊行物1に記載された発明は、上記「第2 2.」に記載されたとおりである。

3.対比
(a)刊行物1発明の「絶縁基板」は、本願発明1の「絶縁基板(1)」に相当する。
(b)刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」は、本願発明1の「結晶化シリコン層」に相当する。
(c)刊行物1発明の「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた」「シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」は、本願発明1の「第1の酸化物層(113)」に相当する。
(d)刊行物1発明の「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた」「シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」は、本願発明1の「前記第1の酸化物層(113)に接触するSiO_(2)よりなる」「第2の酸化物層(115)」に相当する。
(e)刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」は、本願発明1の「前記第1の酸化物層(113)と前記」「結晶化されたシリコン層(3)の間に」形成「された第3の酸化物層(111)」に相当する。
(f)刊行物1発明の「薄膜トランジスタ」は、本願発明1の「薄膜トランジスター」に相当する。
すると、本願発明1と刊行物1発明とは、
「薄膜トランジスターであって、前記トランジスターが、
絶縁基板、
前記基板上に堆積された結晶化シリコン層、
前記結晶化シリコン層上に形成された第1の酸化物層、
前記第1の酸化物層に接触するSiO_(2)よりなる第2の酸化物層、及び
前記第1の酸化物層と前記結晶化されたシリコン層の間に形成された第3の酸化物層を含む
ことを特徴とする薄膜トランジスター。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点8
本願発明1は、「ソース及びドレイン領域」を「有する再結晶化シリコン層(3)」を有し、「前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」るのに対して、刊行物1発明は、「多結晶シリコン膜」を有する点。
相違点9
本願発明1は、「前記再結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)」を有するのに対して、刊行物1発明は、上記構成を備えているか否か明らかでない点。
相違点10
本願発明1は、「前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された」「第1の酸化物層(113)」が「100Å以下の厚さを有する」のに対して、刊行物1発明は、「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」を有しており、「酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の膜厚が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」である点。
相違点11
本願発明1は、「前記第1の酸化物層(113)に接触するSiO_(2)よりなる第2の酸化物層(115)」が「TEOSの低圧分解により形成されたSiO_(2)よりなる100Å乃至150Åの厚さを有する圧縮された」ものであるのに対して、刊行物1発明は、「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」を有しており、「酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の膜厚が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」である点。
相違点12
本願発明1は、「前記第2の酸化物層(115)に接触する伝導領域(13)」を有するのに対して、刊行物1発明は、このような記載がない点。
相違点13
本願発明1は、「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に5乃至10気圧、800乃至825℃の温度の条件下で成長された第3の酸化物層(111)」を有するのに対して、刊行物1発明は、「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」を有する点。
相違点14
本願発明1は、「前記第1の酸化物層(113)、前記第2の酸化物層(115)及び前記第3の酸化物層(111)は、前記伝導領域(13)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に配置される」のに対して、刊行物1発明は、上記構成を備えているか否か明らかでない点。

4.当審の判断(その2)
以下において、相違点8ないし14について検討する。
相違点8について
(a)刊行物1の第8図及び摘記事項イには、「石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第2行)が記載され、また、2つの「ドレイン領域」「13」(第2頁右上欄第3行及び第4行)も記載されている。そして、刊行物1の第8図の2つの「ドレイン領域」「13」のうちの一方は、通常、ソース領域と呼ばれている。
(b)すると、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」も、刊行物1の第8図の「多結晶シリコン薄膜5」と同様に、ソース領域とドレイン領域を有することは明らかであるから、相違点8のうち、本願発明1が、「ソース及びドレイン領域」を「有する」「結晶化シリコン層(3)」を有する点については、本願発明1と刊行物1発明とは、実質的に相違しない。
(c)刊行物2の第1図(c)には、「再結晶Si膜6」が示されている。
そして、刊行物2には、「第1図(a)に示すように、絶縁性基体1上に多結晶Si膜2と非晶性Si膜3を積層する。」、「次に、第1図(b)に示すように、絶縁膜4を形成した後、レーザービーム5を照射する。」、「このレーザービーム5の照射により非晶性Si膜3を融解した後冷却固化して、第1図(c)に示す再結晶Si膜6になる。」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第14行)ことが記載されているから、刊行物2の第1図(c)に示される、絶縁性基体1と絶縁膜4との間のシリコン膜は、「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜であって、本願発明1の「前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」ることに相当するので、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜は、本願発明1の「再結晶化シリコン層(3)」に相当するとともに、「前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」ることに相当する。
(d)ここで、半導体装置の構成要素を形成するための半導体層を単層で構成するか複数の層(積層)で構成するかは、いずれも慣用手段にすぎないから、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明1のごとく、「ソース及びドレイン領域有する再結晶化シリコン層(3)、ここで、前記再結晶化シリコン層(3)は、層化構造を有するシリコン層から形成されたものであ」るとの構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

相違点9について
(a)上記「相違点8について」の(a)及び(b)での検討を考慮すると、刊行物1には、実質的に、「ソース領域」、「ドレイン領域」、「ソース領域」と「ドレイン領域」の間に「ゲート絶縁膜2」と「MOSゲート電極3」を備えた「薄膜トランジスタ」が記載されている。
(b)刊行物1発明が実質的に備えている、「ゲート絶縁膜2」と「MOSゲート電極3」とを併せたものを、慣用的な表現として、「ゲート構造」と呼ぶことにより、刊行物1発明は、実質的に、本願発明1のごとく、「前記」「結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)を含」むようなものとなることは明らかであり、「ゲート構造」を備えることについては、本願発明1と刊行物1発明とは、実質的に相違しない。
(c)上記(a)、(b)及び上記「相違点8について」の(c)及び(d)における検討を考慮すると、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明1の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすること、更には、刊行物1発明が、本願発明1のごとく、「前記再結晶化シリコン層(3)に接触し、ソース及びドレイン領域(5)の間に位置するゲート構造(9)」を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

相違点10について
(a)本願発明1の「第1の酸化物層(113)」は、「前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された」と記載されているが、実際には、本願発明1は、「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に形成された第3の酸化物層(111)」を備えているから、本願発明1の「第1の酸化物層(113)」と「再結晶化シリコン層(3)」との間には、「第3の酸化物層(111)」が存在していることは明らかである。
したがって、本願発明1の「前記再結晶化シリコン層(3)上に形成された」「第1の酸化物層(113)」とは、「前記再結晶化シリコン層(3)」の上方「に形成された」「第1の酸化物層(113)」という意味であり、「薄膜トランジスター」の構成要素としての、「再結晶化シリコン層(3)」と「第1の酸化物層(113)」は、直接には接触していない。
(b)一方、刊行物1発明の「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」も、「多結晶シリコン膜」の上方にある。
したがって、相違点10については、実質的には、本願発明1が「再結晶化シリコン層(3)」を有するのに対して、刊行物1発明が「多結晶シリコン膜」を有する点で、相違している。
(c)しかしながら、上記「相違点8について」の(c)及び(d)において検討したとおり、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明1の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
(d)また、刊行物1発明の「膜厚数10nm以下」は、「膜厚数100Å以下」のことであるから、本願発明1の「100Å以下の厚さを有する」ことの「100Å以下」と、数値範囲が重なっており、絶縁膜の厚さをどの程度とするかは、求められる特性に応じて適宜設定し得るものである。
(e)さらに、刊行物1発明では、「シリコン酸化膜」が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」であるが、「酸素プラズマアニール」した後であっても、「シリコン酸化膜」の膜厚は、それほど変わるものではない。
したがって、刊行物1発明の「酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の厚さを、本願発明1のように、「100Å以下」とすることは、当業者が適宜設定し得た程度のことである。

相違点11について
(a)種々な方法で、酸化物層が形成できることは、周知のことであり、本願発明1のように、「TEOSの低圧分解により」「SiO_(2)」を形成することも、周知技術である。
(b)また、刊行物1発明の「膜厚数10nm以下」は、「膜厚数100Å以下」のことであるから、本願発明1の「100Å乃至150Åの厚さを有する」ことの「100Å乃至150Å」と、数値範囲が重なっており、絶縁膜の厚さをどの程度とするかは、求められる特性に応じて適宜設定し得るものである。
(c)刊行物1発明では、「シリコン酸化膜」が「酸素プラズマアニール」する前に「膜厚数10nm以下」であるが、「酸素プラズマアニール」した後であっても、「シリコン酸化膜」の膜厚は、それほど変わるものではないので、刊行物1発明の「シリコン酸化膜」の厚さを、本願発明1のように、「100Å乃至150Å」とすることは、当業者が適宜設定し得た程度のことである。
(d)さらに、本願発明1の「第2の酸化物層(115)」は「圧縮され」ているが、刊行物1発明では、「シリコン酸化膜」が「酸素プラズマアニール」されており、刊行物1の上記摘記事項エの「酸素プラズマアニール中に酸素原子、或いはイオンが、堆積したシリコン酸化膜44中に拡散し、シリコン酸化膜中の欠陥およびシリコン酸化膜44と多結晶シリコン膜42間の界面の欠陥のアニールが行われゲート絶縁膜45としてのシリコン酸化膜44がアニールされたシリコン酸化膜46となり高品質化される。」(第4頁右下欄第9ないし15行)という記載によれば、「酸素プラズマアニール」により「シリコン酸化膜」が「高品質化される」から、本願発明1の「第2の酸化物層(115)」が「圧縮され」ていることと類似の作用・効果を奏するものと認められ、刊行物1発明が、本願発明1のごとく、「第2の酸化物層(115)」が「圧縮され」ているとの構成を備えるようにすることは、格別なことではなく、当業者が適宜なし得たものである。

相違点12について
(a)刊行物1の第8図及び摘記事項イには、「石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第2行)が記載されている。
そして、「MOSゲート電極3」は、本願発明1の「伝導領域(13)」に相当する。
(b)すると、刊行物1発明の「ゲート絶縁膜」のうちの一番上の膜である、「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」の上に、刊行物1の第8図に記載の「MOSゲート電極3」を設け、刊行物1発明が、本願発明1のごとく、「前記第2の酸化物層(115)に接触する伝導領域(13)」を有するようになすことは、当業者が適宜なし得たものである。

相違点13について
(a)本願発明1の「5乃至10気圧、800乃至825℃の温度の条件下で成長」することは、本願の明細書の発明の詳細な説明に記載の「高圧酸化」の条件の一部と認められる。
そして、例えば、以下の周知文献1ないし4に記載されるように、薄膜トランジスタにおいて、ゲート絶縁膜を高圧酸化により形成することは、従来周知である。
周知文献1.特開昭64-35959号公報(第1図、及び、第2頁左上欄第12行ないし同頁左下欄第1行参照)には、「従来のTFTの一例を第1図に示す。このTFTは、絶縁基板1上に活性層5、ゲート絶縁膜4、ゲート電極6、ソース2、ドレイン3を形成した後、層間絶縁膜7を堆積し、そして層間絶縁膜7にコンタクトホール16を開けた後、金属電極配線8を作製してなるものである。ここでゲート絶縁膜4は次のa)またはb)に示す様なプロセスにより作製している。
a)1100℃、3%HCl/97%O_(2)によるドライ酸化
b)950℃、H_(2)/O_(2)によるパイロジェニック酸化
ゲート絶縁膜として熱酸化膜を用いた場合、Si-SiO_(2)の界面準位密度が低く、現在のところ最も優れた特性を持っている。しかしながら、熱酸化膜作製の温度は950℃以上と高いので、使用できる絶縁基板の種類が限られ、基板もしくは雰囲気中に存在する不純物が活性層中にオートドーピングする問題がある。
こうした欠点を改善する方法としては以下の様なものがある。
(1)高圧酸化
高圧容器の中で酸素雰囲気中で低温で酸化膜を作製する。
・・・(1),(2)の方法は活性層の酸化反応を低温で行っており」と、記載されている。
周知文献2.特開平2-84772号公報(第1図、及び、第2頁左下欄第13行ないし第4頁左下欄第17行参照)には、「半導体装置として薄膜トランジスタに本発明を応用した場合を例にとって実施例を説明する。」(第2頁左下欄第13行及び第14行)、「続いて前記不純物未添加シリコン薄膜1-6を固相成長させ第1図(d)に示すよう再結晶化未添加シリコン薄膜1-7(以後、i-シリコン薄膜と略す)を形成する。」(第3頁右下欄第5ないし8行)、「次に第1図(f)に示されているように、ゲート酸化膜1-9を形成する。該ゲート酸化膜の形成方法としてはLPCVD法、あるいは光励起CVD法、あるいはプラズマCVD法、ECRプラズマCVD法、あるいは高真空蒸着法、あるいはプラズマ酸化法、あるいは高圧酸化法などのような500℃以下の低温方法がある。該低温方法で成膜されたゲート酸化膜は、熱処理することによってより緻密で界面準位の少ない優れた膜となる。」(第4頁左上欄第8ないし16行)ことが、記載されている。
周知文献3.特開平4-206775号公報(第1頁右下欄第2行ないし第2頁左上欄第1行参照)には、「例えばコプラナ型薄膜トランジスタの場合には、セラミックやガラス等からなる基板上にポリシリコン層(半導体層)をパターン形成し、このポリシリコン層を酸化シリコン等からなるゲート絶縁膜で覆い、ポリシリコン層のチャンネル領域に対応する部分のゲート絶縁膜上にゲート電極を形成した構造となっている。
ところで、このような構造の薄膜トランジスタでは、基板の材質がガラスであると、ガラスが軟化しないようにするために、プロセス温度を600℃以下に抑える必要がある。このため、酸化シリコン等からなるゲート絶縁膜の形成方法に制約を受けることになる。
すなわち、熱処理による酸化法は、ポリシリコン層を酸化雰囲気中で加熱するだけで酸化シリコンからなるゲート絶縁膜を形成することができ、最も簡単な方法であるが、この場合、10気圧程度の雰囲気中で加熱する高圧酸化法を採用してもプロセス温度が600℃以上となるので、この方法を採用することはできない。」(第1頁右下欄第2行ないし第2頁左上欄第1行)ことが、記載されている。
周知文献4.欧州特許出願公開第474289号明細書には、「次いで、このポリシリコン層の選定部分を腐食により除去してこのポリシリコン層に所望とする島を形成し、酸化珪素層の選定区域を露出する。次いで薄いゲート酸化物層をこれらの島に、この島を高圧下 650℃以下の温度で酸化することによって形成する。550 ?650 ℃の温度範囲および5?50気圧の圧力を用いるのが好ましい。」(第3頁第18行ないし第21行の訳文)、「【請求項6】 (a) 最初の比較的に厚い酸化珪素層を半導体基板に形成し; (b) 比較的に薄いポリシリコン層を前記最初の酸化珪素層に 650℃以下の温度で堆積し; (c) 前記比較的に薄いポリシリコン層を窒素雰囲気中で焼もどしし; (d) 前記比較的に薄いポリシリコン層の選定部分を腐食により除去して前記最初の酸化珪素層の選定部分を露出し、および島を前記比較的に薄いポシリコン層に形成し; (e) 少なくとも1つの前記島を高圧下約 650℃以下の温度で酸化して薄いゲート酸化物層を前記比較的に薄いポリシリコン層の前記島に形成し; (f) 第2の比較的に厚いポリシリコン層を前記ゲート酸化物層に堆積し; (g) 前記第2ポリシリコン層を多くドープし、反応性イオン腐食によって形成するドープされた第2ポリシリコン層の部分を腐食除去してゲートを形成し; (h) 前記ゲートに横方に隣接する前記ポシリコン層の前記島の形成する露出区域を比較的に少なくドープして少なくドープされたソースおよびドレイン区域を形成し; (i) 比較的に薄い酸化珪素層を前記ゲートに、および前記隣接する少なくドープされたソースおよびドレイン区域に設け; (j) 前記少なくドープされたソースおよびドレイン区域に隣接する前記ポリシリコン層の前記島の露出区域を比較的に多くドープして比較的に多くドープされたソースおよびドレイン区域を形成し; (k) 前記ソースおよびドレイン区域を 600?750 ℃の温度で焼もどしし;および (l) 形成したデバイスを水素プラズマによって約 400℃以下の温度で水素化する各段階からなることを特徴とする減少した逆漏れ電流を示す薄膜トランジスタの製造方法。【請求項7】 前記島の前記高圧酸化を5?50気圧下 550?650 ℃の温度で行う請求項6記載の方法。」(請求項6及び7の訳文)が記載されている。
(b)また、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」は、その上の「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」と、その下の「多結晶シリコン膜」との間にあるので、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」と、本願発明1の「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に」「成長された第3の酸化物層(111)」とは、その配置関係に違いはないが、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」は、「多結晶シリコン膜」の上に設けられており、本願発明1の「第3の酸化物層(111)」は、「再結晶化されたシリコン層(3)」の上に設けられているから、刊行物1発明と本願発明1とにおいて、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」と、本願発明1の「再結晶化されたシリコン層(3)」とは、「層」が相違している。
(c)しかしながら、上記「相違点8について」の(c)及び(d)において検討したとおり、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明1の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。
(d)上記(a)で検討したように、従来周知の高圧酸化について、上記周知文献には、「高圧容器の中で酸素雰囲気中で低温で酸化膜を作製する。」(周知文献1)、「高圧酸化法などのような500℃以下の低温方法がある。」(周知文献2)、「10気圧程度の雰囲気中で加熱する高圧酸化法を採用してもプロセス温度が600℃以上となる」(周知文献3)、「高圧酸化を5?50気圧下 550?650 ℃の温度で行う」(周知文献4)と記載されており、これらの記載は、高圧酸化時において、基板の耐熱温度を考慮して、「500℃以下」(周知文献2)、「550?650 ℃の温度」(周知文献4)等の温度に設定しているのであって、それ以上の温度においても、基板が耐熱性を備えるのであれば、より高い温度、例えば、800℃ないし825℃において、高圧酸化処理を行う方が、形成されたシリコン酸化膜の膜質が高品質であることは、当業者に取って周知の技術事項である。
したがって、基板の耐熱性が高いのであれば、高圧酸化の処理温度として、800℃ないし825℃を選択することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。
(e)すると、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」の代わりに、周知技術である「高圧酸化」を採用するに当たり、基板の耐熱性を考慮して、刊行物1発明が、本願発明1のごとく、「前記第1の酸化物層(113)と前記再結晶化されたシリコン層(3)の間に5乃至10気圧、800乃至825℃の温度の条件下で成長された第3の酸化物層(111)」を設けたものとなすことは、当業者が容易になし得た程度のことと認める。

相違点14について
(a)刊行物1の第8図及び摘記事項イには、「石英ガラス等の透明絶縁基板4上に多結晶シリコン薄膜5を半導体として設け、上面にゲート絶縁膜2を形成し、これを介してMOSゲート電極3を接続したもの」(第2頁左上欄第19行ないし同頁右上欄第2行)が記載されている。
すると、「ゲート絶縁膜2」は、「MOSゲート電極3」と「多結晶シリコン薄膜5」の間に配置されることになるから、刊行物1発明の「ゲート絶縁膜」である、「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」、「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」及び「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」も、通常は、「MOSゲート電極」と「多結晶シリコン膜」の間に配置されることになる。
(b)したがって、相違点14については、本願発明1が「再結晶化されたシリコン層(3)」を有し、刊行物1発明が「多結晶シリコン膜」を有する以外は、相違しないものである。
そして、上記「相違点8について」の(c)及び(d)において検討したとおり、刊行物1発明の「多結晶シリコン膜」に代えて、刊行物2に記載の「再結晶Si膜6」と「多結晶Si膜2」から構成される「積層」されたシリコン膜を採用して、刊行物1発明が、本願発明1の「再結晶化シリコン層(3)」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものである。

なお、審判請求人は、平成20年7月11日付けの審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書において、「補正後の本件発明の構造においては、顕著な効果をもたらす。即ち、本件発明の構成により、漏れ路(低Do)の減少、及びTFTの絶縁破壊及び電荷フルエンス特性を減少させる。更に、TFTゲート誘電体厚の更なるスケールダウンを可能とし、高ON状態電流を得ることを可能とする。」と主張しているが、これらの効果について、本願の発明の詳細な説明に、詳しい説明や実験結果等の記載が一切なく、さらに、これらの効果の比較対象がどのようなゲート絶縁膜であるのかの記載もないため、効果の説明が不十分であり、どの程度特性が向上するのか理解することができないため、これらの効果は、確認することができない。
また、本願発明1の「第1の酸化物層(113)」、「第2の酸化物層(115)」及び「第3の酸化物層(111)」からなる3層のゲート絶縁膜について、「第3の酸化物層(111)」は、膜厚が記載されておらず、また、「第1の酸化物層(113)」は、「100Å以下の厚さ」と、膜厚の上限は記載されているものの、膜厚の下限が記載されていないので、これらの「第3の酸化物層(111)」と「第1の酸化物層(113)」が、それぞれ、極薄の膜厚の場合に、所期の効果を奏するかどうかは、疑問である。 さらに、本願の発明の詳細な説明及び図面の記載のみでは、刊行物1発明の「前記多結晶シリコン膜の表面に酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜」、「前記酸素含有ガスによるプラズマ酸化により形成した酸化シリコン膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」及び「前記シリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜の上に設けられた膜厚数10nm以下のシリコン酸化膜を堆積後酸素プラズマアニールしたシリコン酸化膜」からなる3層のゲート絶縁膜と比較した効果の差についても確認できないことは明らかである。
よって、上記の審判請求人の主張は、採用できない。

第2の3 まとめ
したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)と、物の発明においては方法的な記載が物の発明の特徴ではないとして認定した本願の請求項1に係る発明(本願発明12)とは、いずれも、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-23 
審決日 2009-03-06 
出願番号 特願2005-263148(P2005-263148)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雄一  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 安田 雅彦
近藤 幸浩
発明の名称 薄膜トランジスターの製造方法  
代理人 朝日 伸光  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 岡部 正夫  
代理人 越智 隆夫  
代理人 臼井 伸一  

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