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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1200970
審判番号 不服2006-12975  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-22 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 特願2002- 95245「印刷システム、印刷装置、印刷データ送信装置、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月14日出願公開、特開2003-291472〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成14年3月29日の出願であって、平成18年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月22日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月21日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。
さらに、平成18年8月31日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成20年6月4日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から同年8月8日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成18年7月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 印刷データを送信する印刷データ送信手段と、
前記印刷データ送信手段によって送信された印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
印刷対象物を着色する処理を行う着色手段と、
少なくとも、前記印刷データ受信手段によって受信された印刷データを解釈する処理、搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理、及び、前記着色手段へ前記印刷データを解釈した結果を供給する処理を行うことにより、前記印刷対象物に対する着色を実行する実印刷処理をする実印刷手段と、
を備える印刷システムにおいて、
少なくとも前記搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理を行うことなく、前記印刷対象物を搬送する処理を行ったと仮定して前記実印刷処理にて行われる他の処理を行う仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段と、
前記仮想印刷要求送信手段によって送信された仮想印刷要求を受信する仮想印刷要求受信手段と、
前記仮想印刷要求受信手段によって仮想印刷要求が受信された場合に、前記印刷データ受信手段によって受信された印刷データに基づき前記仮想印刷処理を行う仮想印刷手段と、
前記印刷データ受信手段によって受信された印刷データに関する前記仮想印刷手段による仮想印刷処理が正常に完了したか否かを示す仮想印刷結果を出力する仮想印刷結果出力手段と、
前記仮想印刷手段による印刷データに基づく仮想印刷処理の開始時から前記仮想印刷手段によって仮想印刷処理された印刷データと同一の印刷データについての前記実印刷手段による実印刷処理が完了するまで当該印刷データ以外の印刷データによる前記仮想印刷処理及び前記実印刷処理を禁止する印刷禁止手段と
を備えることを特徴とする印刷システム。」
から
「 実印刷処理の要求に係る印刷データおよび仮想印刷処理の要求に係る印刷データをそれぞれ送信する印刷データ送信手段と、
前記印刷データ送信手段によって送信された印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
印刷対象物を着色する処理を行う着色手段と、
少なくとも、前記印刷データ受信手段によって受信された前記実印刷処理の要求に係る印刷データを解釈する処理、搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理、及び、前記着色手段へ前記印刷データを解釈した結果を供給する処理を行うことにより、前記印刷対象物に対する着色を実行する実印刷処理をする実印刷手段と、
を備える印刷システムにおいて、
少なくとも前記搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理を行うことなく、前記印刷対象物を搬送する処理を行ったと仮定した場合の該仮想印刷処理に必要な前記印刷対象物の枚数を検知し、前記実印刷処理にて行われる他の処理を行うための、仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段と、
前記仮想印刷要求送信手段によって送信された仮想印刷要求を受信する仮想印刷要求受信手段と、
前記仮想印刷要求受信手段によって仮想印刷要求が受信された場合に、前記印刷データ受信手段によって受信された前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データに基づき前記仮想印刷処理を行う仮想印刷手段と、
前記印刷データ受信手段によって受信された前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データに関する前記仮想印刷手段による仮想印刷処理が正常に完了したか否かを示す仮想印刷結果を出力する仮想印刷結果出力手段と、
前記仮想印刷手段による印刷データに基づく仮想印刷処理の開始時から前記仮想印刷手段によって仮想印刷処理された印刷データと同一の実印刷処理の要求に係る印刷データについての前記実印刷手段による実印刷処理が完了するまで当該印刷データ以外の印刷データによる前記仮想印刷処理及び前記実印刷処理を禁止する印刷禁止手段と
を備えることを特徴とする印刷システム。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「印刷データ」を明確化するべく、「前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データ」及び「実印刷処理の要求に係る印刷データ」と補正するとともに、同じく補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段」に関して、「該仮想印刷処理に必要な前記印刷対象物の枚数を検知」する点を限定したものであるから、上記補正は、全体として、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-160443号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)
(1-a)「【請求項1】 上位装置から出力されてきた印刷データに基づく可視画像を所定の記録媒体上に記録し、出力する印刷装置において、前記上位装置から所定の指示情報を受けた場合、それ以降に受信した印刷データに対しては、装置内部で通常の印刷処理と同様の処理を行ないないながらも、実際の記録媒体上へに記録を不能する手段と、少なくとも、前記手段で印刷処理を行った結果、或はその処理中の状態を前記上位装置に出力する出力手段とを備えることを特徴とする印刷装置。」

(1-b)「【0002】
【従来の技術】ホストコンピュータから送られる印刷データを、LBPのようなページプリンタで印刷する場合、そのページプリンタが1ページ分のフルビットマップメモリを有さない場合(バンド単位に印刷するページプリンタの場合)には、前記印刷データの内容が複雑すぎたり、データ量が非常に多い場合は印刷できずにエラーとなる場合がある。
【0003】これは、ビットマップイメージを1ページ分の一部いわゆるバンドとして待たざるを得ないためにめ、データの内容が複雑すぎたりデータ量が非常に多くて、データの展開が印刷動作に間に合わなくなるという場合に発生する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような問題を防ぐには、基本的にはプリンタにフルビットマップメモリ分の容量のメモリを搭載すれば良いのであるが、コストアップになる。しかしながら、一方では、ほとんどの場合の印刷には十分対応できるのであるから、必要以上のメモリを搭載させるとしても、そのメモリが無駄になる。
【0005】さて、このようなエラーが発生するか否かは、実際に印刷動作としなければならないが、それでは記録媒体である記録紙が無駄になってしまうという問題が残る。」

(1-c)「【0012】図1において、101は本レーザビームプリンタへデータを送るホストコンピュータ、121?128はホストコンピュータ101と本レーザビームプリンタ間のインタフェース(I/F)信号である。
【0013】また、実施例のレーザビームプリンタは以下の構成を備える。
【0014】102はホストコンピュータ101との信号の授受を行う為のホストI/F、103は装置全体の制御を司るCPU、104はRAMで、更に受信バッファ105、ページメモリ106、ビットマップメモリ107で構成される。110はROMであり、CPU103の動作プログラム(後述する)が格納されているプログラムROM111と文字フォントデータが格納されているフォントROM112とで構成される。114はシステムバスである。
【0015】115は図7に示す印刷部(プリンタエンジン部)にビットマップメモリ107内に展開されたビットマップデータを所定のタイミングで転送する印刷部I/Fであり、116は印刷ドットデータ(パラレル)をシリアル信号に変換し、ビデオ信号として出力する並直列変換器である。また、117は印刷シミュレーション部であり、その詳細は後述する。
【0016】図7を用いて実施例のレーザビームプリンタの印刷部の構成及び動作を説明する。尚、本実施例のレーザビームプリンタはホストコンピュータから文字パターンの登録や定着書式(フォームデータ)などの登録が行える。
【0017】同図において、740はLBP本体であり、外部に接続されているホストコンピュータから供給される文字情報(文字コード)やフォーム情報あるいはマクロ命令などを入力して記憶するとともに、それらの情報に従って対応する文字パターンやフォームパターンなどを作成し、記録媒体である記録紙上に像を形成する。700は操作のためのスイッチおよびLCD表示器などが配されている操作パネル、701はLBP740全体に制御およびホストコンピュータから供給される文字情報などを解析するプリンター制御ユニットであり、図1に示した各回路構成を含んでいる。この制御ユニット701は、主に文字情報を対応する文字パターンをビデオ信号に変換してレーザドライバ702に出力する。レーザドライバ702は半導体レーザ703を駆動するための回路であり、入力されたビデオ信号に応じて半導体レーザ703から発射されるレーザ光704をオンオフ切り替えする。レーザ光704は回転多面鏡705で左右方向に振られ静電ドラム706上を走査する。これにより、静電ドラム706上には文字パターン等の静電潜像が形成される。この潜像は、静電ドラム706周囲の現像ユニット707により現像された後、記録紙に転写される。この記録紙にはカットシートを用い、カットシート記録紙はLBP740に装着した着脱自在の用紙カセット708に収納され、給紙ローラ709および配送ローラ710と711とにより装置内に取り込まれて、静電ドラム706に供給される。そして、現像器707によって静電ドラム706上に付着されたトナー像は、搬送されてきた記録紙に転写される。その後、記録紙は定着器712方向に搬送され、トナーが定着され、最終的に排出ローラ713によって外部に排出される。」

(1-d)「【0029】1ページ分の印刷データがページメモリ106にストアされると、CPU103はページメモリ106から印刷データを順に読み出して解釈し、必要に応じてROM108内のフォントROM112内に参照する事によってドットデータに変換し、ビットマップメモリ107へストアする。
【0030】ビットマップメモリ107内のデータのストア状態を図3に示す。
【0031】図3において、302は1ライン分のドットデータがストアされており、301はフラグ領域であり、ドットデータがストアされている場合に“1”がセットされる。そして、印刷部I/Fが印刷部へドットデータを送り出すべく読み出した際に0にリセットされる。
【0032】即ち、フラグ領域301によって、そのラインのドットデータが読み出された後なのか、まだ読み出されていないのか、換言すれば、印刷出力済みであるか否か判別できることになる。
【0033】実施例の装置では、このようなフラグ領域301とドットデータ領域302のセットが128ライン分有る。つまり、実施例の装置は、1ページ分の画像を微小バンド単位に記録するものである。ちなみに、これは1ページ分のライン数はA4サイズで8本/mmの印刷密度の場合には約2320ラインであるが、128ラインはこれよりもはるかに小さいものである。これは、コストダウンのためにビットマップメモリの容量を少なくしているためである。
【0034】ビットマップメモリ107へ最初の128ライン分の展開が終了すると、CPU103は印刷部I/F115へ指令を出し、プリントスタート信号144を出力させる。信号141はデフォルト状態ではHIGHレベルであるので、信号144はプリントスタート信号131として、印刷部へ送られる。また、この後、印刷部I/F115は、印刷部から送られてくる公知の水平同期信号及び垂直同期信号に従って、ビットマップメモリ107から上から順にドットデータを読み出しては並列直列変換器116を介して印刷部にビデオ信号の転送をおこなうことになる。
【0035】この間、印刷部I/Fによって読み出されたドットデータのラインは、CPUによって、次に印刷すべきバンドのドットデータの展開処理を行う。すなわち、CPUの書き込み処理と、印刷部I/Fの読み出し処理が、いわゆる追いかけっこすることになる。」

(1-e)「【0039】次に、実施例が直接関係する印刷シミュレーション動作について説明する。
【0040】ホストコンピュータ101から送られて来る印刷データは、通常の印刷時のものと変わらないが、シミュレーションの場合はそれがシミュレーションで有る事を示す特別な制御コードが、上記印刷データの先頭に付いてくる。その状態が図6(a)である。
【0041】シミュレーションコードの有無にかかわらず、CPUは印刷データに対して、通常の印刷動作と同じく、ドット変換作業を行ない、最初の128ライン分のドットデータを、ビットマップメモリ107にストアする。
【0042】次に、CPU103は、図6の用紙サイズ情報602から、図5のレジスタ503にライン数データをセットする。ライン数データとは、用紙1枚分のライン数を示すもので、8本/mmの印刷速度の場合、A4サイズで2320、A3サイズで3300である(いずれも十進数)。
【0043】次に、印刷部I/F115に、通常の印刷動作と同じく印刷開始命令を出すと同時に、印刷シミュレーション部117に対してシステムバスを通じてシミュレーション開始命令を出す。
【0044】図5は、印刷シミュレーション部117を更に詳しく説明する図である。
【0045】CPU103からのシミュレーション開始命令は、デコーダ501によって信号511として出力され、フリップフロップ502をセットする。そのため、信号141がLOWレベルとなり、印刷部I/F115からのプリント開始命令144はANDゲート118によりゲートされるため、印刷部へは供給されない(つまり、記録紙の搬送やレーザ素子の駆動等が行われず非印刷動作になる)。
【0046】また、単安定マルチバイブレータ504にトリガがかかるため、パルス信号142が出力される。信号133は、印刷していない状態ではHIGHレベルであるので、信号142は垂直同期信号として印刷部I/F115に認知される。
【0047】また、ANDゲート550が開くので、発振器507の出力が、143として出力され、同じく印刷しない状態では信号132はHIGHレベルであるので、信号143は水平同期信号として印刷部I/F115に認知される。
【0048】信号143のパルス周期は、実際の水平同期信号の周期と同じに設定されている。垂直及び水平同期信号を受けて、印刷部I/F115は通常の印刷動作と同じ動作を行なうし、CPU103もまた通常の印刷動作と同じく129ライン目以降のドットデータをビットマップメモリ107に書き込む。
【0049】カウンタ506は、ライン数が進むに従ってカウントアップし、遂に1ページ分のライン数に達すると、コンパレータ505の/P=Qの出力がLOWレベルになるため、ANDゲート550が閉じ、1ページ分の印刷動作は終了する。以上の信号のタイミングチャートを図4に示す。
【0050】さて、こうした、シミュレーション結果は、図6(b)のようなフォーマット形式のデータでホストコンピュータ101へ伝えられる。ここで、エラーの有無情報606であるが、これは印刷部I/F115の読み出し動作が、CPU103の書き込み動作に追いついてしまった場合はエラーとし、追いつかなかった場合はエラー無しとするものである。
【0051】次に、ホストコンピュータ101上での動作について説明する。ホストコンピュータは汎用のワークステーションやパーソナルコンピュータ等で良く、それ上に動作するOS(オペレーティングシステム)やそれに付随するソフトドライバ(例えばプリンタドライバを監視するドライバ等)、或はアプリケーションのいずれかが図8に示すような処理を実現すればよい。従って、ここではホストコンピュータ101の構成については説明しないが、少なくとも、そのメモリ上には同図の処理を行うプログラムがロードされていることが必要になる。
【0052】ただし、実施例では、同図に基づくプログラムがOSにソフトドライバとして付随させた例を説明する。
【0053】ホストコンピュータ101で動作しているアプリケーションを使用している操作者が、そのアプリケーションで作成した文書(図形、イメージ等を含む)の印刷指示を与えると、その表示画面には例えば通常の印刷を行うのか、シミュレーション印刷を指示・解除を行うのかの選択メニューウインドウが表示される。操作者はこのメニューウインドウを見て、いずれかを選択する。
【0054】シミュレーション印刷指示であると判断した場合には、ステップS801からステップS802に進んで、シミュレーション指示コマンドを上記印刷装置に出力する。この後は、ホストコンピュータ101に備えられたプリンタドライバがアプリケーションから獲得したデータに基づく通常の処理を行うことになる。
【0055】また、シミュレーション解除指示がなされたと判断した場合には、ステップS804に進んで、シミュレーション解除指示コマンドを転送する(このコマンドは特に説明しなかったが、上記説明からすれば容易に想到することができよう)。
【0056】いずれにしても、処理はステップS805に進んで、プリンタがシミュレーション処理中かどうかを判断する。シミュレーション中であると判断した場合には、ステップS806に進んで、図6(b)に示した形式のデータ受信がなされるのを監視する。そのデータの受信が行われると、ステップS807に進んで、受信したエラーの内容をホストコンピュータに備えられた画面に表示する。」

(1-f)図1として、





(1-g)図5として、





(1-h)図7として、




(1-i)図8として、






上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、「刊行物1発明」という。)

「ホストコンピュータ101と、前記ホストコンピュータ101から出力されてきた印刷データをドットデータに変換し、該ドットデータを印刷部に転送し、該印刷データに基づく可視画像を、現像ユニット707によって所定の記録媒体上に記録し、出力するレーザビームプリンタ740と、からなるシステムであって、
前記レーザビームプリンタ740は、
前記ホストコンピュータ101からシミュレーション指示を受けた場合、それ以降に受信した印刷データに対しては、プリンタ内部で通常の印刷処理と同様の処理を行ないながらも、実際の記録媒体上への記録を不能にする、シミュレーション部117を備え、
前記シミュレーション部117で印刷処理を行った結果と、エラーの有無情報606とを前記ホストコンピュータ101に送信し、前記ホストコンピュータ101に備えられた画面に表示する、システム。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における
「記録媒体」、
「現像ユニット707」、
「通常の印刷処理」、
「プリンタ内部で通常の印刷処理と同様の処理を行ないながらも、実際の記録媒体上への記録を不能にする」構成(処理)、
「シミュレーション指示」、
「印刷データをドットデータに変換」する構成(処理)、
「該ドットデータを印刷部に転送」する構成(処理)、
「シミュレーション部117で印刷処理を行った結果と、エラーの有無情報606」は、それぞれ、
本願補正発明における
「印刷対象物」、
「印刷対象物を着色する処理を行う着色手段」、
「実印刷処理」、
「仮想印刷処理」、
「仮想印刷要求」または「仮想印刷処理の要求」、
「印刷データを解釈する処理」、
「前記着色手段へ前記印刷データを解釈した結果を供給する処理」、
「仮想印刷処理が正常に完了したか否かを示す仮想印刷結果」に相当する。
また、刊行物1発明における「ホストコンピュータ101」及び「前記ホストコンピュータ101から出力されてきた印刷データをドットデータに変換し、該ドットデータを印刷部に転送し、該印刷データに基づく可視画像を、現像ユニット707によって所定の記録媒体上に記録し、出力するレーザビームプリンタ740」は、本願補正発明における「印刷システム」を構成するものであって、「印刷データを送信する印刷データ送信手段」、「印刷データを受信する印刷データ受信手段」、「印刷対象物に対する着色を実行する実印刷処理をする実印刷手段」、及び、「(印刷対象物の)搬送機構」等を備えることは自明の事項である。
したがって、刊行物1発明における
「ホストコンピュータ101と、前記ホストコンピュータ101から出力されてきた印刷データをドットデータに変換し、該ドットデータを印刷部に転送し、該印刷データに基づく可視画像を、現像ユニット707によって所定の記録媒体上に記録し、出力するレーザビームプリンタ740と、からなるシステム」は、
本願補正発明における
「実印刷処理の要求に係る印刷データおよび仮想印刷処理の要求に係る印刷データをそれぞれ送信する印刷データ送信手段と、
前記印刷データ送信手段によって送信された印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
印刷対象物を着色する処理を行う着色手段と、
少なくとも、前記印刷データ受信手段によって受信された前記実印刷処理の要求に係る印刷データを解釈する処理、搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理、及び、前記着色手段へ前記印刷データを解釈した結果を供給する処理を行うことにより、前記印刷対象物に対する着色を実行する実印刷処理をする実印刷手段と、を備える印刷システム」に相当する。
さらに、刊行物1発明における
「前記ホストコンピュータ101からシミュレーション指示を受けた場合、それ以降に受信した印刷データに対しては、プリンタ内部で通常の印刷処理と同様の処理を行ないながらも、実際の記録媒体上への記録を不能にする、シミュレーション部117」、
「前記シミュレーション部117で印刷処理を行った結果と、エラーの有無情報606とを前記ホストコンピュータ101に送信し、前記ホストコンピュータ101に備えられた画面に表示する」構成は、それぞれ、
本願補正発明における
「前記仮想印刷要求受信手段によって仮想印刷要求が受信された場合に、前記印刷データ受信手段によって受信された前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データに基づき前記仮想印刷処理を行う仮想印刷手段」、
「前記印刷データ受信手段によって受信された前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データに関する前記仮想印刷手段による仮想印刷処理が正常に完了したか否かを示す仮想印刷結果を出力する仮想印刷結果出力手段」に相当し、かつ、
刊行物1発明において、「レーザビームプリンタ740」の「シミュレーション部117」は「前記ホストコンピュータ101からシミュレーション指示を受け」るのであるから、
刊行物1発明における「ホストコンピュータ101」、「レーザビームプリンタ740」が、それぞれ、
「少なくとも前記搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理を行うことなく、前記実印刷処理にて行われる他の処理を行うための、仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段」、「前記仮想印刷要求送信手段によって送信された仮想印刷要求を受信する仮想印刷要求受信手段」に相当する構成を有することは明らかである。

してみると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「 実印刷処理の要求に係る印刷データおよび仮想印刷処理の要求に係る印刷データをそれぞれ送信する印刷データ送信手段と、
前記印刷データ送信手段によって送信された印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
印刷対象物を着色する処理を行う着色手段と、
少なくとも、前記印刷データ受信手段によって受信された前記実印刷処理の要求に係る印刷データを解釈する処理、搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理、及び、前記着色手段へ前記印刷データを解釈した結果を供給する処理を行うことにより、前記印刷対象物に対する着色を実行する実印刷処理をする実印刷手段と、
を備える印刷システムにおいて、
少なくとも前記搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理を行うことなく、前記実印刷処理にて行われる他の処理を行うための、仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段と、
前記仮想印刷要求送信手段によって送信された仮想印刷要求を受信する仮想印刷要求受信手段と、
前記仮想印刷要求受信手段によって仮想印刷要求が受信された場合に、前記印刷データ受信手段によって受信された前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データに基づき前記仮想印刷処理を行う仮想印刷手段と、
前記印刷データ受信手段によって受信された前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データに関する前記仮想印刷手段による仮想印刷処理が正常に完了したか否かを示す仮想印刷結果を出力する仮想印刷結果出力手段と
を備える、印刷システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]:本願補正発明においては、「前記仮想印刷手段による印刷データに基づく仮想印刷処理の開始時から前記仮想印刷手段によって仮想印刷処理された印刷データと同一の実印刷処理の要求に係る印刷データについての前記実印刷手段による実印刷処理が完了するまで当該印刷データ以外の印刷データによる前記仮想印刷処理及び前記実印刷処理を禁止する印刷禁止手段」を備えるのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。

[相違点2]:仮想印刷処理に関して、本願補正発明においては、「前記印刷対象物を搬送する処理を行ったと仮定した場合の該仮想印刷処理に必要な前記印刷対象物の枚数を検知し」ているのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。


(3)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
前置報告書において、原審審査官が指摘しているとおり、「1つの印刷ジョブを実行している間に他の印刷ジョブの処理を行わないようにする技術は、本願出願前に周知の技術」である。(必要ならば、特開平6-71979号公報、特開2000-158762号公報に加えて、特開平6-106793号公報、特開平7-205497号公報等参照。)
また、刊行物1発明の印刷システムにおいては、本願補正発明と同様に、RAMの容量等、システムのリソースが必ずしも十分ではないために、「メモリーフル」のようなエラーが発生するのであるから、限られたリソースを用いて仮想印刷処理を行っている間に、他のジョブを受け付ければ、処理が遅くなったり、エラーが発生するなどの支障が生じる懸念があることは明らかである。
そうすると、印刷システムに印刷禁止手段を備える際に、禁止する期間を「仮想印刷処理の開始時から前記仮想印刷手段によって仮想印刷処理された印刷データと同一の実印刷処理の要求に係る印刷データについての前記実印刷手段による実印刷処理が完了するまで」とし、かつ、禁止する「他の印刷処理」を、「仮想印刷処理及び実印刷処理」とすることは、適宜為し得る設計的事項である。
したがって、刊行物1発明において、相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2について)
相違点2に関して、「印刷処理」に先だって、「印刷処理に必要な印刷対象物の枚数を検知」することは、例えば、原審の拒絶査定において提示された、特開平10-181163号公報に示されるように、従来周知の事項である。
したがって、仮想印刷処理においても、「印刷処理に必要な印刷対象物の枚数を検知」する程度のことは、当業者が適宜採用できる設計的事項である。

(本願補正発明が奏する効果に関して)
そして、上記相違点1及び2によって、本願補正発明が奏する「他の印刷ジョブが仮想印刷処理と実印刷処理との間に仮想印刷処理を行ってしまうことにより、他の印刷ジョブが、印刷対象物の残量が十分であると誤判定してしまうといった不都合を防止する」、「自己の印刷ジョブの実印刷を確実に印刷させ、かつ、自己の印刷ジョブの実印刷により、他の印刷ジョブの仮想印刷処理が誤判定してしまうことを防止し、自己の印刷ジョブの印刷処理が他の印刷ジョブの印刷処理の邪魔をしない」(平成20年8月8日付け回答書第4頁)といった効果も、他のユーザーに印刷処理を邪魔されないように、仮想印刷処理開始から実印刷処理終了までの間、プリンタを独占することと実際上何ら異ならないから、刊行物1に記載された事項及び周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(4)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成18年7月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?11に係る発明は、平成17年10月28日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「印刷データを送信する印刷データ送信手段と、
前記印刷データ送信手段によって送信された印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
印刷対象物を着色する処理を行う着色手段と、
少なくとも、前記印刷データ受信手段によって受信された印刷データを解釈する処理、搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理、及び、前記着色手段へ前記印刷データを解釈した結果を供給する処理を行うことにより、前記印刷対象物に対する着色を実行する実印刷処理をする実印刷手段と、
を備える印刷システムにおいて、
少なくとも前記搬送機構を駆動することで前記印刷対象物を搬送する処理を行うことなく、前記印刷対象物を搬送する処理を行ったと仮定して前記実印刷処理にて行われる他の処理を行う仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段と、
前記仮想印刷要求送信手段によって送信された仮想印刷要求を受信する仮想印刷要求受信手段と、
前記仮想印刷要求受信手段によって仮想印刷要求が受信された場合に、前記印刷データ受信手段によって受信された印刷データに基づき前記仮想印刷処理を行う仮想印刷手段と、
前記印刷データ受信手段によって受信された印刷データに関する前記仮想印刷手段による仮想印刷処理が正常に完了したか否かを示す仮想印刷結果を出力する仮想印刷結果出力手段と、
前記仮想印刷手段による印刷データに基づく仮想印刷処理の開始時から前記仮想印刷手段によって仮想印刷処理された印刷データと同一の印刷データについての前記実印刷手段による実印刷処理が完了するまで当該印刷データ以外の印刷データによる前記仮想印刷処理及び前記実印刷処理を禁止する印刷禁止手段と
を備えることを特徴とする印刷システム。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1-a)?(1-i)で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「前記仮想印刷処理の要求に係る印刷データ」及び「実印刷処理の要求に係る印刷データ」に関して、「前記仮想印刷処理の要求に係る」又は「実印刷処理の要求に係る」を削除し、かつ、「仮想印刷処理を要求するための仮想印刷要求を送信する仮想印刷要求送信手段」に関して、「該仮想印刷処理に必要な前記印刷対象物の枚数を検知」する点を削除したものである。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-14 
結審通知日 2009-05-20 
審決日 2009-06-05 
出願番号 特願2002-95245(P2002-95245)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司清水 督史  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 一宮 誠
山下 喜代治
発明の名称 印刷システム、印刷装置、印刷データ送信装置、プログラム  
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