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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1200988
審判番号 不服2007-3762  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 特願2001-148661「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月26日出願公開、特開2002-336512〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成13年5月18日
審査請求 平成14年7月12日
拒絶理由 平成18年9月29日
手続補正 平成18年12月4日
拒絶査定 平成18年12月28日
審判請求 平成19年2月8日
手続補正 平成19年3月9日
拒絶理由・補正却下 平成21年2月4日
手続補正 平成21年4月9日

第2.本願発明

平成21年4月9日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「遊技動作を実現する制御プログラムを格納したIC素子の表面に直接印刷された固有符号と、前記IC素子を搭載した遊技機に固有の管理符号とを対応づけて記憶するデータベースを備える管理システムによって管理され、
製造後の遊技機の照会時に、前記固有符号と前記管理符号の組合せが前記データベースから検出されない場合には、正規のIC素子が搭載されていないと判定される遊技機であって、
前記管理符号は、遊技機メーカによって一意的に付与される符号であって、遊技機に貼着された管理シールに表示されており、
前記固有符号は、ICメーカによって一意的に付与され、ICメーカによってIC素子表面に印刷されており、遊技機の製造最終ラインにおいて、前記IC素子表面から取得した画像データを、特定の文字種とのパターンマッチングによって文字データに変換されて前記データベースに記憶されており、
前記照会時における判定処理では、目視確認された前記管理符号と前記固有符号とを使用して違法改造の有無が判定されることを特徴とする遊技機。」

第3.当審の判断

1.当審拒絶理由について

当審において平成21年2月4日付で通知した拒絶の理由の概要は、平成18年12月4日付の手続補正書における請求項1?7に係る発明は、特開平11-47409号公報 (以下「引用文献1」という。)、特開平10-83144号公報 (以下「引用文献2」という。)、特開平11-267338号公報 (以下「引用文献3」という。)及び特開2001-38027号公報(以下「引用文献4」という。)に記載された発明及び技術に基づいて、遊技機又はその管理システムにおいて通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

2.引用発明について

引用文献1には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。
【0002】
【従来の技術】遊技機の一種であるパチンコ機には、ROMやCPU等の種々の制御素子を内蔵した制御装置が設けられている。かかる制御素子は、パチンコ機の作動内容を制御するものであるため、遊技者にとって都合良く作動するように、不正に取り替えられることがある。このため、制御素子には、他の制御素子と容易に判別できるように、機種名、製造者名等を示した識別情報が表示される。また、制御素子は、一般的に小型で複雑な形状を有しているため、識別情報の表示をする場合には、識別情報が印刷された識別シールを貼着する方法が採用される。
【0024】また、制御素子に表示する識別情報は、2次元コード(たとえば、QR(クイックレスポンス)コード)、目視不可能なフォトルミネッセンス・インクで印刷されるインビジブルコード(インビジブルバーコード、インビジブルQRコード)等のコードによる表示のみとしたり、文字表示のみとしたりすることも可能である。なお、2次元コードによれば、同一内容を文字よりも小さなスペースで表示することができるので、識別情報をコード表示に変更した場合には、制御素子の限られたスペースに多くの情報を表示することができる、というメリットがある。
【0025】なお、遊技機の識別情報の管理システムとしては、たとえば、次のようなものが好適である。すなわち、基板メーカーは、ROMを基板に搭載すると、基板メーカー名、製造年月日、機種名、ROMシリアルナンバー等の識別情報を示すコードが付されたROMシールを、コードラベルプリンタによって発行する。そして、そのROMシールをROM表面に貼着した後に、基板を遊技機メーカーに納品する。遊技機メーカーは、遊技機を組み立てた後、その遊技機の作動状態を検査ラインによってチェックし、チェック完了後に、ROMのコードをコードリーダによって読み取り、しかる後に、レーザマーカによって、ROM表面に遊技機毎のシリアルナンバーを印字する。続いて、基板を収納するカバー部材に、組み立て年月日、機種名、チェック後読み取った基板シリアルナンバー、新基板表示、納入先を示すコードを付す。そして、コードを付した後、基板、カバー部材等を組み立てて、制御装置の製造を完成させる。製造された制御装置は、遊技機の裏カバーに組み付けられ、その接合面には、双方に跨るように、レーザマーカによって、遊技機シリアルナンバーを印字する。そして、ROM及び制御装置のコード、シリアルナンバー等の識別情報をホストコンピュータに入力した後に、遊技機をパチンコホール等に出荷する。一方、遊技機が納入されたパチンコホール等では、ROMのコードをコードリーダで読み取り、基板のカバー部材に付されたコードをコードリーダで読み取り、しかる後に、それらのコードが示す情報と遊技機のシリアルナンバーとを電話回線にて遊技機メーカーのホストコンピュータに送信し、ホストコンピュータに保存されている識別情報と照合することによって、遊技機の制御装置のチェックを実行する。かかる識別情報管理システムを導入することによって、非常に容易に遊技機の識別情報のチェックを行うことができる。
【0028】また、識別情報は、制御素子表面に、互いの色の明度の差が大きくなるように直接付すこともできる。たとえば、図7に示すように、ROM8の表面の一部である白色の識別情報表示部Cに黒色の識別情報C1?C4を付すこともできる。かかる構成を採用した場合であっても、濃度差の大きい識別シール同様に、識別情報のチェックが非常に容易なものとなる。
【0029】なお、上記実施形態においては、本発明の遊技機がパチンコ機である場合の一例について説明したが、本発明の遊技機は、スロットマシーンやテレビゲーム等のパチンコ機以外の遊技機であっても良い。

引用文献1においては「遊技機の識別情報の管理システム」、「かかる識別情報管理システムを導入することによって、非常に容易に遊技機の識別情報のチェックを行うことができる」(段落【0025】)とあり、当該管理システムによって遊技機が「管理される」ものであることは当然のことである。
引用文献1の段落【0025】における「ROMのコード」とは、同段落の「識別情報を示すコードが付されたROMシールを…ROM表面に貼着」における「識別情報を示すコード」を指すことは明らかである。また同段落においては「遊技機毎のシリアルナンバー」、「遊技機シリアルナンバー」、「遊技機のシリアルナンバー」とあるが、いずれも同じものを指すと解される。
引用文献1においては、遊技機メーカやパチンコホール等においては「ROMのコード」を「コードリーダ」によって読み取っている(段落【0025】)が、これは「コードリーダによって、非常に容易にバーコードを読みとることができる。したがって、識別情報のチェックが非常に容易である。」(段落【0018】)と記載があり、このバーコードを用いた例に基づいているために、段落【0025】の実施例ではコードリーダを用いているものと解される。しかし、その一方で、「制御素子に表示する識別情報は、…文字表示のみとしたりすることも可能である。」(段落【0024】)とあるから、この例に基づいて引用発明を認定すれば、バーコードの代わりに文字表示のみとすることとなるが、文字表示からなる情報の読み取りにあたっていわゆるコードリーダは必ずしも用いられないと考えることが自然であるから、引用発明の認定にあたっては「コードリーダ」を用いる点の限定は省いて認定する。
また、引用文献1には「識別情報は、制御素子表面に、互いの色の明度の差が大きくなるように直接付すこともできる。」(段落【0028】)とあるから、この例に限定したものを引用発明として把握することとする。

以上に基づき、引用文献1の記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技機の作動内容を制御するROMを内蔵した制御装置が設けられた遊技機であって、
基板メーカーは、ROMを基板に搭載すると、文字表示のみとしたROMシリアルナンバー等の識別情報を示すコード(以下「ROMのコード」という。)をROM表面に互いの色の明度の差が大きくなるように直接付した後に、基板を遊技機メーカーに納品し、
遊技機メーカーは、遊技機を組み立てた後、その遊技機の作動状態を検査ラインによってチェックし、チェック完了後に、ROMのコードを読み取り、しかる後に、レーザマーカによって、ROM表面に遊技機毎のシリアルナンバー(以下「遊技機シリアルナンバー」という。)を印字し、続いて、基板、カバー部材等を組み立てて、制御装置の製造を完成させ、製造された制御装置は、遊技機の裏カバーに組み付けられ、その接合面には、双方に跨るように、レーザマーカによって、遊技機シリアルナンバーを印字し、そして、ROMのコード、シリアルナンバー等の識別情報をホストコンピュータに入力した後に、遊技機をパチンコホール等に出荷し、
遊技機が納入されたパチンコホール等では、ROMのコードを読み取り、しかる後に、そのコードが示す情報と遊技機シリアルナンバーとを電話回線にて遊技機メーカーのホストコンピュータに送信し、ホストコンピュータに保存されている識別情報と照合することによって、遊技機の識別情報のチェックを行うことができる識別情報管理システム
によって管理される遊技機。」

3.対比

ここで、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「ROM」は本願発明の「IC素子」に相当し、引用発明における「識別情報を示すコード(ROMのコード)」は本願発明の「固有符号」に、引用発明における「識別情報管理システム」は本願発明の「管理システム」に相当する。
引用発明における「遊技機毎のシリアルナンバー(遊技機シリアルナンバー)」は本願発明の「遊技機に固有の管理符号」に相当し、また引用発明においても「遊技機メーカーは、…遊技機毎のシリアルナンバーを印字し」とあるから、本願発明の「遊技機メーカによって一意的に付与される」という点も満たされるものである。
引用発明においては「遊技機の作動内容を制御するROM」とあり、技術常識を踏まえればROMが「遊技動作を実現する制御プログラムを格納」したものであることは当然である。
引用発明は「ROMを内蔵した制御装置が設けられた遊技機」であるから、ROMを「搭載した」遊技機であることも明らかである。
引用発明においては、識別情報を示すコードを「ROM表面に互いの色の明度の差が大きくなるように直接付した」とあるから、この点はROM表面に「直接印刷された」という点に相当する。
引用発明は「ホストコンピュータに保存されている識別情報と照合する…識別情報管理システム」であって、ここで「保存されている識別情報」は本願発明における「データベース」に相当するから、引用発明は、識別情報管理システムが「データベースを備える」ものである。そして、引用発明においては「ROMのコード、シリアルナンバー等の識別情報をホストコンピュータに入力」しており、ここで「シリアルナンバー等」とあるが、引用発明においては、パチンコホール等は照合にあたり「遊技機シリアルナンバー」を遊技機メーカーのホストコンピュータに送信しているから、ここで「シリアルナンバー等」は「遊技機シリアルナンバー」をも当然含むと解される。よって、前記データベースが「ROMのコード」と「遊技機シリアルナンバー」とを対応づけて記憶する」ものであることは当然のことである。さらに、引用発明においては「遊技機メーカーは、遊技機を組み立てた後、その遊技機の作動状態を検査ラインによってチェックし、チェック完了後に、ROMのコードを読み取り、…識別情報をホストコンピュータに入力」とあり、ここで「…識別情報をホストコンピュータに入力」とは前記データベースに「記憶」させる点に相当し、また「遊技機を組み立てた後、その遊技機の作動状態を検査ラインによってチェックし、チェック完了後」とは、本願発明の「遊技機の製造最終ラインにおいて」に相当するものであると認められる。
引用発明においては「遊技機が納入されたパチンコホール等では…」とあるから、これ以降の「…送信し、…照合することによって、遊技機の識別情報のチェックを行う」点は「製造後の遊技機の照会」であることは明らかである。そしてパチンコホール等における「ROMのコードを読み取り、しかる後に、そのコードが示す情報と遊技機のシリアルナンバーとを電話回線にて遊技機メーカーのホストコンピュータに送信し、ホストコンピュータに保存されている識別情報と照合することによって、遊技機の識別情報のチェックを行う」という点は、本願発明の「固有符号と管理符号の組合せがデータベースから検出」されるか否かを「照会」する点、及び「照会時における判定処理」において「固有符号と管理符号とを使用して…判定」する点に相当するものであり、そして、その結果として「検出されない場合には、正規のIC素子が搭載されていないと判定」するものであること、及び「違法改造の有無が判定される」ものであることも、引用発明の識別情報管理システムの目的を踏まえれば当然のことである。

したがって、本願発明と引用発明は、
「遊技動作を実現する制御プログラムを格納したIC素子の表面に直接印刷された固有符号と、前記IC素子を搭載した遊技機に固有の管理符号とを対応づけて記憶するデータベースを備える管理システムによって管理され、
製造後の遊技機の照会時に、前記固有符号と前記管理符号の組合せが前記データベースから検出されない場合には、正規のIC素子が搭載されていないと判定される遊技機であって、
前記管理符号は、遊技機メーカによって一意的に付与される符号であって、
前記固有符号は、遊技機の製造最終ラインにおいて、前記データベースに記憶されており、
前記照会時における判定処理では、前記管理符号と前記固有符号とを使用して違法改造の有無が判定される遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明においては「固有符号は、ICメーカによって一意的に付与され、ICメーカによってIC素子表面に印刷され」ているのに対して、引用発明においては「ROMのコード」は基板メーカーが付与している点。

[相違点2]
本願発明においては「管理符号」は「遊技機に貼着された管理シールに表示され」ているのに対して、引用発明においてはかかる構成がない点。

[相違点3]
本願発明においては、固有符号について、「IC素子表面から取得した画像データを、特定の文字種とのパターンマッチングによって文字データに変換」してデータベースに記憶しているのに対して、引用発明においてはかかる構成がない点。

[相違点4]
本願発明においては、「目視確認された」管理符号と固有符号とを使用して判定を行っているのに対して、引用発明においては目視確認によるものであるか不明である点。

4.相違点にかかる検討

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
引用文献3には以下の記載がある
【0051】(b)制御チップメーカでのチップ製造
制御チップメーカ304では、配付されてきた設置指定書303を確認し、指定されている遊技機10に取り付けるための遊技用演算処理装置200(以下、適宜、制御チップという:図面でも同様)を指定台数分だけ製造する。遊技用演算処理装置200には製造段階で予め固有ID(隠匿演算処理装置固有コード)がセキュリティメモリ215に格納される。製造した遊技用演算処理装置200のケース本体の上面には視認可能な位置に図7に示すように、識別シール306(表示部に相当)が貼付される。図7の例では、3つの遊技用演算処理装置200a?200cを示しており、それぞれのチップのケース本体の上面に識別シール306a?306c(表示部:以下、適宜、306で代表する)が貼付されている。各識別シール306a?306cには、「0012678」、「0012679」、「0012680」という制御チップ番号(所要の個体識別情報に相当)がそれぞれ記録されている。制御チップ番号は制御チップメーカ304での管理番号(例えば、製造した多数の制御チップの通し番号)である。
【0052】なお、識別シール306(表示部)は制御チップ番号(所要の個体識別情報に)を表示するものであるが、表示部は識別シールに制御チップ番号を印字する例に限らず、例えば遊技用演算処理装置200のケース本体に制御チップ番号を刻印するようにしてもよい。その場合、制御チップ番号の刻印箇所が表示部に相当する。また、印字や刻印以外の表示方法を用いてもよい。
【0058】(e)遊技機の納入
前述したように、制御チップメーカ304では設置指定書303に基づいて遊技機10に取り付けるための制御チップ(遊技用演算処理装置200)を指定台数分だけ製造して、制御チップを遊技機製造メーカ302に納入するが、その後、遊技機製造メーカ302では納入された制御チップを遊技機10に組み込んで新台としての遊技機10を遊技店1に納入する。

以上によれば、引用文献3には「制御チップメーカ304が、遊技機10に取り付けるための遊技用演算処理装置200を指定台数分だけ製造し、製造した遊技用演算処理装置200のケース本体の視認可能な位置に制御チップメーカ304での管理番号(例えば、製造した多数の制御チップの通し番号)である制御チップ番号を印字又は刻印し、制御チップ(遊技用演算処理装置200)を遊技機製造メーカ302に納入する」という技術(以下「引用文献3記載の技術」という。)が記載されていると認められる。
ここで、引用文献3における「制御チップメーカ304」とは、本願発明における「ICメーカ」に相当し、引用文献3における「制御チップ番号」とは「制御チップメーカ304での管理番号」であるから、本願発明同様「ICメーカによって一意的に付与され」るものであり、また引用文献3では「制御チップメーカ304が、制御チップ番号を印字又は刻印」しており、本願発明同様「ICメーカによってIC素子表面に印刷」されるものである。
引用発明においてはROMのコードは基板メーカーが付しているが、引用文献3記載の技術においては制御チップメーカ304が直接遊技機製造メーカ302に納入しているから基板メーカーを介する必要性はなく、そして引用文献3における「遊技用演算処理装置200」は遊技プログラムを格納しているROM202を含んでなる(段落【0036】-【0037】参照)ものであって、引用発明のROMに対して引用文献3記載の技術を適用することに何ら困難性はないから、引用発明に引用文献3記載の技術を適用して、相違点1にかかる本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点2について]
引用発明においては「遊技機シリアルナンバー」は、ROM表面と、制御装置と裏カバーとの接合面に印字するとあるが、遊技機を特定する符号を付与するにあたってどのような方法を採用するかは適宜設計できることに過ぎない。なお、引用文献4には「管理番号は、製造番号等の各遊技制御基板の製造時等に設定付与される番号であり、刻印、シール等によって各遊技制御基板に添付表示されている。また、管理番号は遊技制御基板が取り付けられた遊技機にも表示されている。この管理番号によりただ一つの遊技制御基板が特定できるように、管理番号として重複のない連続番号等が付与される。」(段落【0079】)とあるようにシールを用いる例も公知である(以下「引用文献4記載の技術」という。)。
よって、引用発明に引用文献4記載の技術を適用して、相違点2にかかる本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点3について]
引用文献2の【従来の技術】欄には以下の記載がある。
【0008】したがって、液晶表示基板を製造する過程においては、液晶表示基板に印刷される基板IDを正確に読み取る、すなわち、正確に文字認識する必要があるので、従来の液晶表示基板製造装置では、基板IDを撮像するテレビカメラとこの画像から基板IDを文字認識するための文字認識部とからなる専用の文字認識装置を用いていた。
【0009】この文字認識装置は、基板IDが印刷されているエリアと文字認識部が文字認識を行うエリア(以下、文字読み取りエリアと記す)とを一致させるために、±0.5mm程度の位置合わせ精度で位置決めをする必要があった。したがって、従来の液晶表示基板製造装置では、まず、液晶表示基板をテレビカメラの下で停止させ、次に、液晶表示基板を四方から固定する固定装置で所定の位置に液晶表示基板を固定することによって、位置合わせを行っていた。
【0010】位置合わせが終了したならば、次に、文字認識装置はテレビカメラが撮像した画像から文字認識エリア内の画像を抽出し、文字認識部が抽出した画像をたとえば頭から順番に文字認識した後、この認識結果を当該製造装置を制御・管理する情報処理装置に転送していた。

以上によれば、引用文献2には、製造する過程において、製品にかかるIDをテレビカメラによって撮像し、文字認識装置によってその画像を文字認識し、この認識結果を情報処理装置に転送するという技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。
引用発明も、製造ラインにおいて製品にかかる識別情報の読み取りを行うものであるから、引用発明における文字表示のみとしたROMのコードの読み取りにおいて、引用文献2記載の技術を適用して、相違点3にかかる本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点4について]
引用発明においては、「遊技機が納入されたパチンコホール等では、ROMのコードを読み取り」とあるが、パチンコホール等においてどのようにしてROMのコード読み取っているのか不明である。同様に「遊技機シリアルナンバー」についても、パチンコホール等においてどのようにして確認しているのか不明である。
しかし、引用発明において、ROMのコードは「文字表示のみ」からなるものであって、そもそも「文字表示」とは人間の目で認識可能な表示と解することが常識的である。引用発明における遊技機シリアルナンバーも、印字されたナンバー(番号)であって、同様に人間の目で認識可能と解される。
とすれば、パチンコホール等において、識別情報のチェックのためにそれらの情報を送信するにあたり、「目視確認」によってそれらの情報を読み取ることも、引用発明に基づき、当業者にとって容易に想到できたことである。

5.当審の判断についてのむすび

そうすると、相違点1?4にかかる本願発明の構成は、引用発明及び引用文献2?4記載の技術から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2?4記載の技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび

以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-20 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-09 
出願番号 特願2001-148661(P2001-148661)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 野中 誠一  

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