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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1200990
審判番号 不服2007-4995  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-15 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 特願2004-530530「結合製品の成形方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日国際公開、WO2004/018178〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2003年7月4日(優先権主張2002年7月4日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成18年7月18日付けで拒絶理由が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年2月15日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年3月15日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年5月15日付けで前置報告がなされ、その後、当審において平成20年8月11日付けで審尋がなされ、同年10月6日に回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月15日に提出された手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
結合製品の、挿通孔を有する第1の成形品と、互いに隣接する複数の主成形部の間に前記挿通孔に挿通する挿入部を有する第2の成形品とを射出成形する方法であって、
前記第1の成形品の形状を転写する第1の製品型、該第1の製品型との間に薄肉部を備え、前記挿入部の外径を越えるサイズの一の前記主成形部の形状を転写する一の第2の製品型、前記第1の製品型との間に薄肉部を備え、前記挿入部の外径を越えるサイズの他の前記主成形部の形状を転写する他の第2の製品型、及び前記第1の成形品の挿通孔の形状を転写するピンコアを準備する工程と、
前記挿通孔及び前記挿入部に対応する位置に前記ピンコアを進入させ、前記第1の製品型と前記一の第2の製品型と前記他の第2の製品型との間を遮断する工程と、
前記第1の製品型に第1の樹脂を充填する工程と、
前記挿通孔及び前記挿入部に対応する位置から前記ピンコアを退出させ、前記一の第2の製品型と前記他の第2の製品型との間を開放する工程と、
前記一の第2の製品型と前記他の第2の製品型とに前記第1の樹脂よりも成形収縮率の大きい第2の樹脂を充填する工程と、
を含むことを特徴とする結合製品の成形方法。」

3.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、平成18年7月18日付けの拒絶理由通知及び同年12月15日付けの拒絶査定からみて、本願発明は、以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、これについては、特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開平4-64420号公報
引用文献2:実願昭59-70574号(実開昭60-182644号)
のマイクロフィルム
引用文献3:特開平10-044195号公報

4.引用文献の記載事項
引用文献1?3には、以下の事項が記載されている。

<引用文献1>
(1a)「筒状のケース部材の内部に、その対向面間に跨って、少なくとも一つの羽根部材を配すると共に、該羽根部材の両端部に該ケース部材を貫通して延びる一対の支持軸を一体的に設けて、これらの支持軸により、かかる羽根部材を該ケース部材に対して一軸回りに回動可能に支持せしめて成る樹脂製品を製造する射出成形機であって、
固定盤と、該固定盤に対して接近・離隔方向に移動せしめられる可動盤とを備えた型締装置と、
該型締装置における固定盤および可動盤に対してそれぞれ取り付けられて、型合わせされることにより、前記ケース部材を形成するための第一の成形空間と、前記羽根部材を形成するための第二の成形空間とを、それぞれ内部に形成する金型と、
該金型に対して挿入可能とされて、該金型内に挿入されることにより、前記第二の成形空間内における前記支持軸の形成部位に、それぞれ位置せしめられるコアロッドと、
前記コアロッドが挿入された前記金型内に形成された前記第一の成形空間に対して、第一の樹脂材料を供給せしめて、前記ケース部材を形成する第一の射出装置と、
前記コアロッドが取り出された前記金型内に形成された前記第二の成形空間に対して、第二の樹脂材料を供給せしめて、前記羽根部材を形成する第二の射出装置とを、
有することを特徴とする射出成形機。」(特許請求の範囲)

(1b)「このような本発明に従って構成された射出成形機にあっては、金型内において、ケース部材を形成するための第一の成形空間と羽根部材を形成するための第二の成形空間とが、該羽根部材の支持軸を形成する部位において連通された状態で形成されることとなるが、コアロッドを金型内に挿入せしめることによって、該コアロッドが、かかる支持軸の形成部位に位置せしめられて、該第一の成形空間が第二の成形空間から独立せしめられることとなる。それ故、かかるコアロッドの挿入状態下、第一の成形空間に対して第一の樹脂材料を射出充填することにより、ケース部材を形成することができるのであり、且つ、その際、コアロッドによって、該ケース部材の壁部に対して、羽根部材の支持軸が挿通されるべき通孔が形成され得るのである。そして、かかるケース部材の形成後、コアロッドを金型から取り出すことによって、第二の成形空間が形成されるのであり、それ故、該第二の成形空間に対して第二の樹脂材料を射出充填することにより、羽根部材を形成することができるのであり、且つ、かかる羽根部材にあっては、形成と同時に、その支持軸がケース部材の通孔に対して挿通されて組み付けられることとなるのである。」(第3頁左上欄第20行?左下欄第3行)

(1c)「第一の成形空間42と第二の成形空間44とは、該第一の成形空間42内におけるケース部材14の通孔17形成部位と、該第二の成形空間44内における羽根部材16の支持軸18形成部位とにおいて、互いに連通されており、一つの連続した空間として構成されている。」(第4頁左下欄第10?15行)

(1d)「ロッド部材52が金型20,22内に挿入されることにより、コアロッド部54が、前記第一の成形空間42と第二の成形空間44との連通部位に嵌合されて、該第一の成形空間42が第二の成形空間44から独立せしめられることとなるのである。」(第5頁左上欄第6?11行)

(1e)「このような構造とされた射出成形機によって、前述の如きフィンダクト10を形成するに際して、その作動は、次のようにして行なわれる。先ず、型締装置24の固定盤30および可動盤36に対して、固定金型20および可動金型22を装着せしめた後、可動盤36を固定盤30側に移動せしめて、それら両金型20,22を型閉じすることにより、かかる金型20,22内に第一及び第二の成形空間42,44を形成する。
次いで、それら両金型20,22間に形成されたロッド配設孔50内に配されたロッド部材52を、油圧シリンダ56にて駆動せしめて金型内に挿入することにより、該ロッド部材52のコアロッド部54を、第二の成形空間44内に挿通配置せしめて、第一の成形空間42を第二の成形空間44から独立させる。
その後、第一の射出装置26を型締装置24側に移動せしめて、金型20にノズルタッチさせた状態下、第6図に示されているように、該第一の射出装置26にて、第一の成形空間42に対して、第一の樹脂材料76を射出充填せしめる。即ち、かかる射出操作によって、ケース部材14が射出成形され得るのであり、且つこのようにして形成されたケース部材14にあっては、コアロッド部54の挿通部位において、それぞれ、通孔17が形成されることとなるのである。
そして、かかるケース部材14の成形後、ロッド部材52を油圧シリンダ56にて駆動させて、金型内に形成された第二の成形空間44から取り出して、該第二の成形空間44を現出させる。
その後、第二の射出装置28を型締装置24側に移動せしめて、金型20,22にノズルタッチさせた状態下、第7図に示されているように、該第二の射出装置28にて、第二の成形空間44に対して、第二の樹脂材料78を射出充填せしめる。即ち、かかる射出操作によって、羽根部材16が射出成形され得るのであり、且つこのようにして形成された羽根部材16にあっては、その形成と同時に、支持軸18が、前記ケース部材14の通孔17に対して挿通せしめられて、一体的に組み付けられることとなるのである。」(第5頁右下欄第4行?第6頁右上欄第4行)

(1f)「第一の射出装置26にて第一の成形空間42内に充填される、ケース部材14を形成するための第一の樹脂材料76と、第二の射出装置28にて第二の成形空間44内に充填される、羽根部材16を形成するための第二の樹脂材料78とにあっては、何れも、その材質が特に限定されるものではないが、成形時における羽根部材16とケース部材14との固着が防止され得ると共に、羽根部材16に対して適度な回動性(回動抵抗)が付与され得るように考慮して、適当な組合せが設定されるべきであり、例えば、第一の樹脂材料76としてABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂を用いた場合には、第二の樹脂材料78としてPP(ポリプロピレン)樹脂が好適に用いられることとなる。」(第6頁右上欄第5?19行)

(1g)



」(第3図)

(1h)


」(第4図)

(1i)


」(第5図)

(1j)


」(第6図)

(1k)


」(第7図)

<引用文献2>
(2a)「第4図ないし第6図に示されるように、操作ノブ1の側面部に設けられた横穴に横フイン2を挿通し、該操作ノブ1の先端部に設けられた二叉状の係合溝3内に縦フイン4の側縁部5を遊嵌すると共に該縦フイン4に、上記操作ノブの先端部6が左右方向に通過するに充分な大きさの逃げ穴7を設けた構成とされた、一本の操作ノブによるレジスタのフイン作動機構が提案されている。
このフイン作動機構によれば、操作ノブ1を上下方向に回動すると横フイン2は支軸8を支点として上下方向に回動して上下方向の風向き角度を自在に調節し、また操作ノブ1を左右方向にスライドすると、操作ノブ1の係合溝3内に遊嵌された縦フイン4の側縁部5が係合溝3の溝壁により押されることによつて縦フイン4はその支軸9を支点として左右方向に回動して左右方向の風向き角度を自在に調節するので、一本の操作ノブでレジスタの縦フインと横フインの風向き角度を自在に調節することができるのである。」(第3頁第2行?第4頁第6行)

(2b)


」(第4図)

(2c)


」(第5図)

<引用文献3>
(3a)「連結用リンクロッド30の成形材料として適用されるナイロン等の高融点合成樹脂は、フィン20の成形材料として適用されるポリプロピレン等の低融点合成樹脂と収縮率が相違する。したがって、上記樹脂を適宜選択すれば、上記収縮力の相違を利用してフィン20とリンクロッド30との間の摺動抵抗を適当な大きさに設定することが可能である。」(段落【0041】)

5.対比
5-1.引用文献1に記載された発明の認定
摘示(1a)の記載は、「射出成形機」に係るものであるが、摘示(1e)には、この射出成形機によってフィンダクトを形成する際の作動について記載されており、これは、摘示(1a)に記載の「射出成形機」を用いた射出成形方法であると認められるから、引用文献1には、「筒状のケース部材の内部に、その対向面間に跨って、少なくとも一つの羽根部材を配すると共に、該羽根部材の両端部に該ケース部材を貫通して延びる一対の支持軸を一体的に設けて、これらの支持軸により、かかる羽根部材を該ケース部材に対して一軸回りに回動可能に支持せしめて成る樹脂製品を製造する射出成形機を用いた射出成形方法であって、
固定盤と、該固定盤に対して接近・離隔方向に移動せしめられる可動盤とを備えた型締装置と、
該型締装置における固定盤および可動盤に対してそれぞれ取り付けられて、型合わせされることにより、前記ケース部材を形成するための第一の成形空間と、前記羽根部材を形成するための第二の成形空間とを、それぞれ内部に形成する金型と、
該金型に対して挿入可能とされて、該金型内に挿入されることにより、前記第二の成形空間内における前記支持軸の形成部位に、それぞれ位置せしめられるコアロッドと、
前記コアロッドが挿入された前記金型内に形成された前記第一の成形空間に対して、第一の樹脂材料を供給せしめて、前記ケース部材を形成する第一の射出装置と、
前記コアロッドが取り出された前記金型内に形成された前記第二の成形空間に対して、第二の樹脂材料を供給せしめて、前記羽根部材を形成する第二の射出装置とを、
有する射出成形機を用いた射出成形方法。」が記載されている。
ここで、摘示(1b)において、「コアロッドによって、該ケース部材の壁部に対して、羽根部材の支持軸が挿通されるべき通孔が形成され得る」と記載されていることから、コアロッドは、ケース部材の壁部に対して、羽根部材の支持軸が挿通されるべき通孔を形成するものであると認められる。
また、摘示(1c)において、「第一の成形空間42と第二の成形空間44とは、該第一の成形空間42内におけるケース部材14の通孔17形成部位と、該第二の成形空間44内における羽根部材16の支持軸18形成部位とにおいて、互いに連通され」と記載され、さらに、摘示(1d)において、「コアロッド部54が、前記第一の成形空間42と第二の成形空間44との連通部位に嵌合されて」と記載されていることから、コアロッドは、連通されたケース部材の通孔形成部位と羽根部材の支持軸形成部位に嵌合されるものであると認められる。
そして、摘示(1b)及び(1e)の記載から、引用文献1に記載された射出成形機を用いた射出成形方法は、コアロッドを金型内に挿入せしめることによって、コアロッドを羽根部材の支持軸の形成部位に位置せしめて、第一の成形空間を第二の成形空間から独立せしめ、第一の成形空間に対して第一の樹脂材料を射出充填することにより、ケース部材を形成し、コアロッドを金型から取り出すことによって、第二の成形空間を形成し、第二の成形空間に対して第二の樹脂材料を射出充填することにより、羽根部材を形成するものと認められる。
さらに、摘示(1f)には、「第一の樹脂材料76としてABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂を用いた場合には、第二の樹脂材料78としてPP(ポリプロピレン)樹脂が好適に用いられる」ことが記載されている。
してみると、引用文献1には、「筒状のケース部材の内部に、その対向面間に跨って、少なくとも一つの羽根部材を配すると共に、該羽根部材の両端部に該ケース部材を貫通して延びる一対の支持軸を一体的に設けて、これらの支持軸により、かかる羽根部材を該ケース部材に対して一軸回りに回動可能に支持せしめて成る樹脂製品を製造する射出成形機を用いた射出成形方法であって、
固定盤と、該固定盤に対して接近・離隔方向に移動せしめられる可動盤とを備えた型締装置と、
該型締装置における固定盤および可動盤に対してそれぞれ取り付けられて、型合わせされることにより、前記ケース部材を形成するための第一の成形空間と、前記羽根部材を形成するための第二の成形空間とを、それぞれ内部に形成する金型と、
該金型に対して挿入可能とされて、該金型内に挿入されることにより、前記第二の成形空間内における前記支持軸の形成部位に、それぞれ位置せしめ、連通されたケース部材の通孔形成部位と羽根部材の支持軸形成部位に嵌合され、ケース部材の壁部に対して、羽根部材の支持軸が挿通されるべき通孔を形成するコアロッドと、
前記コアロッドが挿入された前記金型内に形成された前記第一の成形空間に対して、第一の樹脂材料であるABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂を供給せしめて、前記ケース部材を形成する第一の射出装置と、
前記コアロッドが取り出された前記金型内に形成された前記第二の成形空間に対して、第二の樹脂材料であるPP(ポリプロピレン)樹脂を供給せしめて、前記羽根部材を形成する第二の射出装置とを、
有する射出成形機を用いて、
コアロッドを金型内に挿入せしめることによって、コアロッドを羽根部材の支持軸の形成部位に位置せしめて、第一の成形空間を第二の成形空間から独立せしめ、第一の成形空間に対して第一の樹脂材料であるABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂を射出充填することにより、ケース部材を形成し、コアロッドを金型から取り出すことによって、第二の成形空間を形成し、第二の成形空間に対して第二の樹脂材料であるPP(ポリプロピレン)樹脂を射出充填することにより、羽根部材を形成する射出成形方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

5-2.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「樹脂製品」、「ケース部材」、「支持軸」、「羽根部材」、「第一の成形空間」、「第二の成形空間」及び「コアロッド」は、本願発明における「結合製品」、「第1の成形品」、「挿入部」、「第2の成形品」、「第1の製品型」、「他の第2の製品型」及び「ピンコア」にそれぞれ相当するものと認められる。
ここで、引用発明における羽根部材が、支持軸の外径を越えるサイズであることは、引用文献1の摘示(1g)である第3図において示された羽根部材16と支持軸18の関係からみても明らかなことである。
してみると、本願発明と引用発明とは、「結合製品の、挿通孔を有する第1の成形品と、前記挿通孔に挿通する挿入部を有する第2の成形品とを射出成形する方法であって、
前記第1の成形品の形状を転写する第1の製品型、前記挿入部の外径を越えるサイズの他の前記主成形部の形状を転写する他の第2の製品型、及び前記第1の成形品の挿通孔の形状を転写するピンコアを準備する工程と、
前記挿通孔及び前記挿入部に対応する位置に前記ピンコアを進入させる工程と、
前記第1の製品型に第1の樹脂を充填する工程と、
前記挿通孔及び前記挿入部に対応する位置から前記ピンコアを退出させる工程と、
前記他の第2の製品型に第2の樹脂を充填する工程と、
を含む結合製品の成形方法。」である点で一致しているが、以下の点において相違している。

<相違点1>
第2の成形品について、本願発明は、「互いに隣接する複数の主成形部の間に前記挿通孔に挿通する挿入部を有する」ものであるのに対し、引用発明は、通孔に挿通される支持軸が一体的に設けられた羽根部材である点

<相違点2>
本願発明は、「第1の製品型との間に薄肉部を備え、前記挿入部の外径を越えるサイズの一の前記主成形部の形状を転写する一の第2の製品型」を準備する工程を有するのに対し、引用発明は、かかる工程を有していない点

<相違点3>
他の第2の製品型について、本願発明は、「第1の製品型との間に薄肉部を備え」と規定しているのに対し、引用発明は、かかる規定がなされていない点

<相違点4>
ピンコアを進入させることによって、本願発明は、「第1の製品型と前記一の第2の製品型と前記他の第2の製品型との間を遮断する」ものであるのに対し、引用発明は、第一の成形空間を第二の成形空間から独立させるものである点

<相違点5>
ピンコアを退出させることによって、本願発明は、「前記一の第2の製品型と前記他の第2の製品型との間を開放する」ものであるのに対し、引用発明は、第二の成形空間を形成するものである点

<相違点6>
第2の樹脂について、本願発明は、「第1の樹脂よりも成形収縮率の大きい」と規定しているのに対し、引用発明は、かかる規定がなされていない点

6.判断
上記各相違点について、以下に検討する。

6-1.相違点3についての検討
まず、相違点3について検討する。
本願発明における薄肉部について、平成19年3月15日に提出された手続補正書によって補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の段落【0027】によれば、「金型Mにおける第1の成形品2と第2の成形品4との間には、これらの間に隙間を確保するための薄肉部12が形成されている。」とされており、他の第2の製品型において、「第1の製品型との間に薄肉部を備え」るとは、第1の製品型と他の第2の製品型との間に隙間が設けられていることであるといえる。
ここで、引用文献1の摘示(1h)?(1k)である第4?7図からみて、第一の成形空間42(「第1の製品型」に相当)と第二の成形空間44(「他の第2の製品型」に相当)との間に隙間があることは明らかであって、引用発明においても、第一の成形空間と第二の成形空間との間に薄肉部が形成されているものと認められるから、相違点3は、実質的な相違点ではない。

6-2.相違点1についての検討
例えば、引用文献2の摘示(2a)?(2c)、並びに特開平4-20742号公報の第2図及び第3図において示されているように、羽根部材の支持軸にフランジを設けることは周知の技術的事項である。さらに、該フランジは、羽根部材とともに支持軸を介して主成形部を形成するものであることは明らかである。
してみると、引用発明において、羽根部材とともに支持軸を介して主成形部を形成し、「互いに隣接する複数の主成形部の間に前記挿通孔に挿通する挿入部を有する」第2の成形品とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、第2の成形品を「互いに隣接する複数の主成形部の間に前記挿通孔に挿通する挿入部を有する」ものとすることにより、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

6-3.相違点2についての検討
例えば、上記6-2.において述べた特開平4-20742号公報に記載の支持軸にフランジを設けた羽根部材も、射出成形により形成されるものであって(第2頁左下欄第4?7行参照)、この形成手段も、当業者にとって周知であるといえる。
してみると、引用発明において、羽根部材の支持軸の他端にフランジのような主成形部を射出成形によって形成するために、フランジのような主成形部の成形空間を金型に設けることとし、「挿入部の外径を越えるサイズ」の一の主成形部の形状を転写する「一の第2の製品型」を設けることは、当業者が容易になし得ることである。
さらに、上記6-1.において検討したように、引用発明における第一の成形空間と第二の成形空間との間には隙間が設けられており、支持軸にフランジのような主成形部を設ける場合も同様に、第一の成形空間とフランジのような主成形部の成形空間との間に隙間を設けることとして、「第1の製品型との間に薄肉部を備え」る一の第2の製品型とすることも、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
そして、隙間を有することによって第2の成形品が回動し易くなることは、当業者が予測可能なことであって、格別顕著な効果とは認められない。

6-4.相違点4及び5についての検討
本願発明における、ピンコアの進入による第1の製品型と一の第2の製品型と他の第2の製品型との間の遮断は、本願明細書によれば、「ピンコア8が挿通孔1及び挿入部3に対応する位置7に進入する」ことによってなされるものである(段落【0028】)。そして、当該ピンコアが進入する位置である「挿通孔1及び挿入部3に対応する位置7」は、引用発明における、コアロッドが金型に挿入されて位置せしめられる「連通されたケース部材の通孔形成部位と羽根部材の支持軸形成部位」に相当するものである。
また、本願発明における、ピンコアの退出による一の第2の製品型と他の第2の製品型との間の開放は、本願明細書によれば、「挿通孔1及び挿入部3に対応する位置7からピンコア8を退出させる」ことによってなされるものである(段落【0030】)。そして、当該ピンコアが退出する位置である「挿通孔1及び挿入部3に対応する位置7」は、上記のとおり、引用発明における、コアロッドが金型に挿入されて位置せしめられる「連通されたケース部材の通孔形成部位と羽根部材の支持軸形成部位」に相当するものである。
してみると、本願発明と引用発明とのピンコア進退位置は一致するものであり、当該ピンコアの進退操作によって、「結合製品の、挿通孔を有する第1の成形品と、前記挿通孔に挿通する挿入部を有する第2の成形品」におけるそれぞれの成形品を成形するためのキャビティ(空間)を形成する点で、本願発明と引用発明は共通するものであるといえるから、相違点4及び5は、実質的な相違点ではない。

6-5.相違点6についての検討
本願明細書において、「第1の可塑性樹脂Aとしては、例えばABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)が適用できる。これの成形収縮率は約7/1000である。」(段落【0029】)及び「第2の可塑性樹脂Bとしては、例えばポリプロピレンを適用できる。これの成形収縮率は約16/1000である。」(段落【0031】)とされており、これらは、引用発明における第一の樹脂材料及び第二の樹脂材料に等しいものであって、引用発明においても、第二の樹脂材料は、第一の樹脂材料よりも成形収縮率が大きいものである。
そして、例えば、引用文献3の摘示(3a)にも記載されているように、結合部品間の成形収縮率の差によって摺動抵抗が設定されることは、当業者にとって明らかなことであり、挿入される部品の成形収縮率が大きいければ円滑な回動操作ができるようになることは、当業者が予測可能なことであって、格別顕著な効果とは認められない。

6-6.まとめ
したがって、本願発明は、引用文献1?3に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-15 
結審通知日 2009-05-18 
審決日 2009-06-11 
出願番号 特願2004-530530(P2004-530530)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 行剛  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 小野寺 務
亀ヶ谷 明久
発明の名称 結合製品の成形方法  
代理人 楠本 高義  

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