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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1200993
審判番号 不服2007-7724  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-15 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 特願2002- 5122「記録情報の原本性確認方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月25日出願公開、特開2003-208488〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成14年1月11日の出願であって、平成19年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年3月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。



2.本願発明の認定

本願の請求項1乃至9に係る発明は、平成18年10月19日付けの手続補正書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載されたとおりのものと認められるところ(ただし、後述する誤記を修正した箇所を除く。)、その請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項5】
ユニークなIDが対応付けされてこれを記憶している非接触ICチップを用いて、記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステムであって、
前記記録媒体に記録されるべき記録情報、もしくはこの記録情報から生成した記録情報イメージデータを、プリンタ装置に送信する原本イメージ送信手段と、
前記原本イメージを受信して記録媒体にこれを出力処理するプリンタ装置による前記記録媒体に対する読み込み動作によって得られた、当該記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該プリンタ装置から受け付ける原本ID受付手段と、
前記受け付けた前記非接触ICチップのIDを、非接触ICチップのIDを管理する適宜なデータベースに照合する手段と、
前記照合により、前記受け付けた非接触ICチップのIDが、前記データベースにて予め登録されたIDであるとの結果を得られれば、前記受け付けた前記非接触ICチップのIDに前記記録情報イメージデータを対応付けしてデータベースに記録する原本データ登録手段と、
原本性確認の対象となる記録情報が記録された確認記録媒体に対するリーダ端末による読み込み動作により得られた当該確認記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該リーダ端末から受け付ける確認情報受付手段と、
前記リーダ端末から受け付けた確認情報としてのIDに基づいて、対応する記録情報イメージデータを前記データベースにおいて検索し、この記録情報イメージデータを出力端末に送るイメージ送出手段と、
を含むことを特徴とする原本性確認システム。」


なお、特許請求の範囲の請求項5に記載された「前記受け付けた前記非接触ICチップのIDを、非接触ICチップのIDを管理する適宜なデータベースに照合する手順」は、「前記受け付けた前記非接触ICチップのIDを、非接触ICチップのIDを管理する適宜なデータベースに照合する手段」の誤記であることは明らかであるので、上記の如く認定する。



3.引用例1の認定

原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開平11-78176号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。


(ア)
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、有価証券や著作物等の印刷物の発行を管理することができる印刷物発行管理システム、印刷物発行管理方法及びプリンタに関する。」

(イ)
「 【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術によるシステムでは、印刷物の発行を管理する機能を有さないため、例えば、有価証券、絵画等の著作物、入場券、証明書等の不正印刷を厳格に防止すべき印刷物を印刷することができない。例えば、複製または模造により不正に入手した印刷記録媒体を用いて不正な印刷物を複数生成することも可能だからである。
【0004】
特に、正規の印刷記録媒体を発行する部署と、印刷内容を記憶保管する部署と、印刷を実行する部署とが互いに離れているリモート印刷システムの場合には、各部署が相互に監視することができないため、不正に入手した印刷記録媒体を用いて不正な印刷物を生産されるおそれがある。」

(ウ)
「 【0005】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、正規の印刷記録媒体であることを確認して印刷内容を転送することにより、印刷物の発行を正確に管理できるようにした印刷物発行管理システム、印刷物発行管理方法及びプリンタを提供することにある。」

(エ)
「 【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本発明に係る印刷物発行管理システムでは、印刷記録媒体に識別情報を設定し、識別情報に基づいて印刷物の発行を管理している。
【0007】
請求項1に係る発明では、少なくとも印刷記録媒体に設定された識別情報と該印刷記録媒体の使用状況とを管理する媒体情報管理手段と、供給された前記印刷記録媒体の識別情報を読取って該識別情報を提示してなる印刷内容転送要求を発行し、該印刷内容転送要求に応答して入力される印刷内容を前記印刷記録媒体に印刷することにより印刷物を発行するプリンタと、前記プリンタから前記印刷内容転送要求が発行された場合には、該印刷内容転送要求に係る識別情報に基づいて前記媒体情報管理手段に照会することにより前記プリンタに供給された印刷記録媒体が正規の印刷記録媒体であるか否かを判定し、正規の印刷記録媒体であると判定した場合には前記印刷内容を前記プリンタに転送する印刷内容管理手段と、を備えたことを特徴としている。」

(オ)
「 【0008】
ここで、「識別情報」とは、正規の印刷記録媒体を他の印刷記録媒体から区別するための情報である。識別情報は、例えば、文字や記号等の印字情報、磁気情報、バーコード等の光学的検出情報、透かし等として、あるいは、これらの組合せにより実現することができる。「使用状況」とは、印刷記録媒体の使用状況の意味であり、例えば、印刷記録媒体への印刷が行われたか否か、印刷日時、印刷記録媒体が廃棄されたか否か等の情報を示すものである。「識別情報を提示してなる印刷内容転送要求」とは、識別情報と印刷内容転送要求とが関連付けられていることを意味し、例えば、印刷内容転送要求の信号中に識別情報を含めてもよいほか、印刷内容転送要求の送信の前後に識別情報を送信してもよい。」

(カ)
「 【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0035】
1.第1の実施の形態
図1?図5は、本発明の第1の実施の形態に関わり、図1は、本実施の形態による印刷物発行管理システムの全体を示すブロック図である。本システムは、それぞれ後述するように、主として、媒体情報管理装置1と、コンテンツ管理装置11と、プリンタ21とを含んで構成されている。」

(キ)
「 【0046】
次に、図3には、媒体情報データベース3の一例が示されている。媒体情報データベース3には、各印刷記録媒体に設定された固有の識別情報と、印刷記録媒体に印刷されたコンテンツの内容と、該コンテンツの供給者名と、印刷者名と、印刷日時とが対応付けられて記憶されている。
【0047】
識別情報の欄のIDcとIDfとの間に着目すると、IDd及びIDeが削除されている。これは、例えば、印刷ミスや印刷記録媒体の紛失盗難等が生じた場合に、該当する識別情報をデータベース3から削除するためである。従って、過去に発行された識別情報であっても現在媒体情報データベース3に登録されていない場合には、その識別情報を有する印刷記録媒体を用いて印刷することはできない。このように、印刷ミスや紛失等が生じた場合は、該当する識別情報に係る各欄を削除するため、媒体情報データベース3をコンパクトに形成してメモリ量を低減することができる。但し、これに限らず、例えば、備考欄を設け、備考欄に印刷ミスや盗難紛失等の情報を記憶する構成としてもよい。
【0048】
また、印刷が完了した場合に、印刷者名や印刷日時等が記憶されるため、まだ印刷されていないIDf及びIDgについては、印刷者名等は空欄のままになっている。換言すれば、ある識別情報を有する印刷記録媒体について印刷要求があった場合には、印刷前のはずであるから、該識別情報に関連づけられる他の項目は空欄のはずであり、仮に、印刷者名や印刷日時等が記憶されている場合には、不正な印刷記録媒体であると判断することができる。なお、媒体情報データベース3には、印刷記録媒体の発行日時等を記憶させることもできる。」

(ク)
「 【0049】
1-2 作用
次に、図4及び図5に基づいて本実施の形態の作用を説明する。図4及び図5には、媒体情報管理装置1(「メディア」と表示)、プリンタ21、コンテンツ管理装置11(「コンテンツ」と表示)による処理の流れが示されている。また、各装置間の通信は仮想線で示してある。媒体情報管理装置1での各ステップはSMと表示され、プリンタ21での各ステップはSPと表示され、コンテンツ管理装置11での各ステップはSCと表示される。」

(ケ)
「 【0050】
まず、媒体情報管理装置1から所定の識別情報を有する印刷記録媒体が発行されると(SM1)、この識別情報は、媒体情報データベース3に登録される(SM2)。」

(コ)
「 【0051】
印刷を希望する者は、正規の印刷記録媒体を購入して(SP1)、この印刷記録媒体をプリンタ21にセットする。ID読取部23は、プリンタ21にセットされた印刷記録媒体の識別情報を読取り、転送要求発行部25に識別情報を通知する(SP2)。転送要求発行部25は、通知された識別情報に基づいてコンテンツ転送要求を生成する(SP3)。このコンテンツ転送要求は、通信回線100を介してコンテンツ管理装置11に入力される。なお、コンテンツ転送要求に際して、プリンタ21の情報(印刷者名、プリンタアドレス等)もコンテンツ管理装置11に送信される。」

(サ)
「 【0052】
コンテンツ転送要求を受信したコンテンツ管理装置11は、この転送要求に提示された識別情報を媒体情報管理装置1に照会する(SC1)。媒体情報管理装置1は、媒体情報データベース3を検索することにより、問い合わせされた識別情報に関する情報を確認し、コンテンツ管理装置11に送信する(SM3)。具体的には、例えば、問い合わせに係る識別情報が登録されているか否か、登録されている場合は印刷日時等の各欄の記憶内容がコンテンツ管理装置11に通知される。」

(シ)
「 【0053】
そして、コンテンツ管理装置11は、媒体情報管理装置1からの照会結果に基づいて、プリンタ21からの転送要求が正当であるか否か、即ち、プリンタ21にセットされた印刷記録媒体が正規の印刷記録媒体であるか否かを判定する(SC2)。識別情報が媒体情報データベース3に登録されており、かつ、未印刷であることが確認された場合には、正当な転送要求であると判定されて、要求されたコンテンツがプリンタ21に転送される(SC3)。一方、識別情報が媒体情報データベース3に登録されていない場合や、既に印刷された旨が記憶されている場合には、不正な転送要求であると判定されるため、コンテンツの送信が拒否される(SC4)。」

(ス)
「 【0054】
プリンタ21は、コンテンツ管理装置11からのコンテンツを受信したか否かを監視している(SP4)。コンテンツ管理装置11から送信拒否が通知された場合は、エラー処理を実行する(SP5)。例えば、コンテンツ転送が拒否された旨のメッセージを表示したり、あるいは、セットされた印刷記録媒体をプリンタ21内部に引き込んで取り出し不能に保持したり等のように、種々のエラー処理を行うことができる。」

(セ)
「 【0055】
コンテンツ管理装置11から所望のコンテンツが送信された場合には、該コンテンツに基づいて印刷出力用のイメージデータを生成し(SP6)、印刷を開始する(SP7)。印刷終了が検出されると(SP8)、プリンタ21は、印刷が正常に終了したか否かを含む印刷の終了状態をコンテンツ管理装置11に通知する(SP9)。」

(ソ)
「 【0056】
印刷終了状態を通知されたコンテンツ管理装置11は、印刷が正常に終了したか否かを判定する(SC5)。印刷が正常に終了した場合には、印刷日時、印刷されたコンテンツ内容、印刷者名等の媒体情報が媒体情報管理装置1に送信される(SC6)。一方、例えば、紙づまり等の印刷ミスが生じた場合には、正常に印刷されなかったものと判定され、不良印刷に係る識別情報の削除、即ち、印刷記録媒体の登録削除が媒体情報管理装置1に要求される(SC7)。」

(タ)
「 【0057】
媒体情報管理装置1は、コンテンツ管理装置11から媒体情報を受信したか否かを判定する(SM4)。媒体情報を受信した場合は、媒体情報データベース3の内容を更新する(SM5)。これにより、印刷された印刷記録媒体の識別情報に対応する各欄に、印刷日時や印刷者名等が記憶される。一方、媒体削除要求を受信した場合は、前記SM4で「NO」と判定され、要求された識別情報を媒体情報データベース3から削除する(SM6)。そして、媒体情報管理装置1は、媒体情報データベース3の記憶内容が更新されたことをコンテンツ管理装置11に通知する(SM7)。」

(チ)
「 【0058】
コンテンツ管理装置11は、更新完了通知を受信すると、これにより印刷プロセスが終了したと判定し、プリンタ21に印刷完了通知を行う(SC8)。そして、プリンタ21は、印刷完了通知を受信すると、印刷終了処理を行う(SP10)。印刷終了処理としては、例えば、正常に印刷が行われた場合は、操作パネル上の表示器等を介して印刷が正常に終了した旨を表示することができる。一方、異常終了した場合には、印刷が正常に行われなかったことを表示器等に表示することができる。また、異常終了の場合は、印刷記録媒体をプリンタ21内に留めておき、出力トレイに排紙させない等の処理を行うこともできる。」

(ツ)
「 【0059】
そして、このようにして発行された印刷物は、その性質に応じて利用されるが、利用の可否は利用管理装置31によって判断することができる。例えば、入場券や会員証の場合は、入り口に設けたID読取部33によって識別情報を読取り(読取りステップ)、この識別情報を媒体情報管理装置1に照会する(照会ステップ)。照会の結果、正当な印刷物であると判定された場合には(判定ステップ)、ドアロックを解除する等の制御信号を出力すればよい(制御ステップ)。利用管理装置31における処理の流れは自明であるため、省略する。」

(テ)
「 【0072】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明に係る印刷物発行管理システムによれば、印刷記録媒体と印刷内容と印刷機構とをそれぞれ独立に管理し、識別情報に基づいて印刷進行を監視することができるため、印刷物の発行を正確に管理して不正な印刷物の発行を未然に防止することができる。」


以上の引用例1の記載によれば、引用例1には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例1の上記(ウ)の「本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、正規の印刷記録媒体であることを確認して印刷内容を転送することにより、印刷物の発行を正確に管理できるようにした印刷物発行管理システム、印刷物発行管理方法及びプリンタを提供することにある。」という記載、

引用例1の上記(カ)の「図1?図5は、本発明の第1の実施の形態に関わり、図1は、本実施の形態による印刷物発行管理システムの全体を示すブロック図である。本システムは、それぞれ後述するように、主として、媒体情報管理装置1と、コンテンツ管理装置11と、プリンタ21とを含んで構成されている。」という記載、

引用例1の上記(キ)の「次に、図3には、媒体情報データベース3の一例が示されている。媒体情報データベース3には、各印刷記録媒体に設定された固有の識別情報と、印刷記録媒体に印刷されたコンテンツの内容と、該コンテンツの供給者名と、印刷者名と、印刷日時とが対応付けられて記憶されている。」という記載、

引用例1の上記(オ)の「ここで、「識別情報」とは、正規の印刷記録媒体を他の印刷記録媒体から区別するための情報である。識別情報は、例えば、文字や記号等の印字情報、磁気情報、バーコード等の光学的検出情報、透かし等として、あるいは、これらの組合せにより実現することができる。」という記載(なお、「磁気情報」が磁気ストライプ等の「磁気担体」に記憶されることは技術常識である。)から、

引用例1には、「固有の磁気担体が対応付けされてこれを記憶している磁気情報を用いて、印刷記録媒体の発行を正確に管理するためのコンテンツ管理装置」が開示されていると認められる。


(b)
上記(a)の「固有の磁気担体が対応付けされてこれを記憶している磁気情報を用いて、印刷記録媒体の発行を正確に管理するためのコンテンツ管理装置」という開示、

引用例1の上記(シ)の「そして、コンテンツ管理装置11は、媒体情報管理装置1からの照会結果に基づいて、プリンタ21からの転送要求が正当であるか否か、即ち、プリンタ21にセットされた印刷記録媒体が正規の印刷記録媒体であるか否かを判定する(SC2)。識別情報が媒体情報データベース3に登録されており、かつ、未印刷であることが確認された場合には、正当な転送要求であると判定されて、要求されたコンテンツがプリンタ21に転送される(SC3)。」という記載、

引用例1の上記(セ)の「コンテンツ管理装置11から所望のコンテンツが送信された場合には、該コンテンツに基づいて印刷出力用のイメージデータを生成し(SP6)、印刷を開始する(SP7)。」という記載から、から、

引用例1には、「前記印刷記録媒体に記録されるべきコンテンツをプリンタに送信する手段」が開示されていると認められる。


(c-1)
上記(a)の「固有の磁気担体が対応付けされてこれを記憶している磁気情報を用いて、印刷記録媒体の発行を正確に管理するためのコンテンツ管理装置」という開示、

上記(b)の「前記印刷記録媒体に記録されるべきコンテンツをプリンタに送信する手段」という開示、

引用例1の上記(セ)の「コンテンツ管理装置11から所望のコンテンツが送信された場合には、該コンテンツに基づいて印刷出力用のイメージデータを生成し(SP6)、印刷を開始する(SP7)。印刷終了が検出されると(SP8)、プリンタ21は、印刷が正常に終了したか否かを含む印刷の終了状態をコンテンツ管理装置11に通知する(SP9)。」という記載から、

引用例1には、「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し記録媒体にこれを出力するプリンタ」が開示されていると認められる。


(c-2)
上記(a)の「固有の磁気担体が対応付けされてこれを記憶している磁気情報を用いて、印刷記録媒体の発行を正確に管理するためのコンテンツ管理装置」という開示、

上記(c-1)の「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し記録媒体にこれを出力するプリンタ」という開示、

引用例1の上記(コ)の「印刷を希望する者は、正規の印刷記録媒体を購入して(SP1)、この印刷記録媒体をプリンタ21にセットする。ID読取部23は、プリンタ21にセットされた印刷記録媒体の識別情報を読取り、転送要求発行部25に識別情報を通知する(SP2)。転送要求発行部25は、通知された識別情報に基づいてコンテンツ転送要求を生成する(SP3)。このコンテンツ転送要求は、通信回線100を介してコンテンツ管理装置11に入力される。なお、コンテンツ転送要求に際して、プリンタ21の情報(印刷者名、プリンタアドレス等)もコンテンツ管理装置11に送信される。」という記載、

引用例1の上記(サ)の「コンテンツ転送要求を受信したコンテンツ管理装置11は、この転送要求に提示された識別情報を媒体情報管理装置1に照会する(SC1)。」という記載から、

引用例1には、「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し記録媒体にこれを出力するプリンタによる前記印刷記録媒体に対する読取りによって得られた、当該印刷記録媒体が記憶している磁気担体の識別情報を、当該プリンタから受信する手段」が開示されていると認められる。


(d)
上記(c-2)の「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し記録媒体にこれを出力するプリンタによる前記印刷記録媒体に対する読取りによって得られた、当該印刷記録媒体が記憶している磁気担体の識別情報を、当該プリンタから受信する手段」という開示、

引用例1の上記(サ)の「コンテンツ転送要求を受信したコンテンツ管理装置11は、この転送要求に提示された識別情報を媒体情報管理装置1に照会する(SC1)。媒体情報管理装置1は、媒体情報データベース3を検索することにより、問い合わせされた識別情報に関する情報を確認し、コンテンツ管理装置11に送信する(SM3)。具体的には、例えば、問い合わせに係る識別情報が登録されているか否か、登録されている場合は印刷日時等の各欄の記憶内容がコンテンツ管理装置11に通知される。」という記載から、

引用例1には、「前記受信した前記磁気担体の識別情報を、磁気担体の識別情報を管理する媒体情報データベースに問い合わせる手段」が開示されていると認められる。


(e)
上記(d)の「前記受信した前記磁気担体の識別情報を、磁気担体の識別情報を管理する媒体情報データベースに問い合わせる手段」という開示、

引用例1の上記(シ)の「そして、コンテンツ管理装置11は、媒体情報管理装置1からの照会結果に基づいて、プリンタ21からの転送要求が正当であるか否か、即ち、プリンタ21にセットされた印刷記録媒体が正規の印刷記録媒体であるか否かを判定する(SC2)。識別情報が媒体情報データベース3に登録されており、かつ、未印刷であることが確認された場合には、正当な転送要求であると判定されて、要求されたコンテンツがプリンタ21に転送される(SC3)。一方、識別情報が媒体情報データベース3に登録されていない場合や、既に印刷された旨が記憶されている場合には、不正な転送要求であると判定されるため、コンテンツの送信が拒否される(SC4)。」

引用例1の上記(ソ)の「印刷終了状態を通知されたコンテンツ管理装置11は、印刷が正常に終了したか否かを判定する(SC5)。印刷が正常に終了した場合には、印刷日時、印刷されたコンテンツ内容、印刷者名等の媒体情報が媒体情報管理装置1に送信される(SC6)。一方、例えば、紙づまり等の印刷ミスが生じた場合には、正常に印刷されなかったものと判定され、不良印刷に係る識別情報の削除、即ち、印刷記録媒体の登録削除が媒体情報管理装置1に要求される(SC7)。」という記載、

引用例1の上記(キ)の「次に、図3には、媒体情報データベース3の一例が示されている。媒体情報データベース3には、各印刷記録媒体に設定された固有の識別情報と、印刷記録媒体に印刷されたコンテンツの内容と、該コンテンツの供給者名と、印刷者名と、印刷日時とが対応付けられて記憶されている。・・・(中略)・・・識別情報の欄のIDcとIDfとの間に着目すると、IDd及びIDeが削除されている。これは、例えば、印刷ミスや印刷記録媒体の紛失盗難等が生じた場合に、該当する識別情報をデータベース3から削除するためである。従って、過去に発行された識別情報であっても現在媒体情報データベース3に登録されていない場合には、その識別情報を有する印刷記録媒体を用いて印刷することはできない。このように、印刷ミスや紛失等が生じた場合は、該当する識別情報に係る各欄を削除するため、媒体情報データベース3をコンパクトに形成してメモリ量を低減することができる。但し、これに限らず、例えば、備考欄を設け、備考欄に印刷ミスや盗難紛失等の情報を記憶する構成としてもよい。・・・(中略)・・・また、印刷が完了した場合に、印刷者名や印刷日時等が記憶されるため、まだ印刷されていないIDf及びIDgについては、印刷者名等は空欄のままになっている。換言すれば、ある識別情報を有する印刷記録媒体について印刷要求があった場合には、印刷前のはずであるから、該識別情報に関連づけられる他の項目は空欄のはずであり、仮に、印刷者名や印刷日時等が記憶されている場合には、不正な印刷記録媒体であると判断することができる。なお、媒体情報データベース3には、印刷記録媒体の発行日時等を記憶させることもできる。」という記載から、

引用例1には、「前記問い合わせにより、前記受信した磁気担体の識別情報が、前記データベースにて予め記憶された識別情報であるとの結果を得られれば、前記受信した前記磁気担体の識別情報に前記コンテンツを対応付けしてデータベースに記憶する手段」が開示されていると認められる。


以上の引用例1の記載によれば、引用例1には下記の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「固有の磁気担体が対応付けされてこれを記憶している磁気情報を用いて、印刷記録媒体の発行を正確に管理するためのコンテンツ管理装置であって、
前記印刷記録媒体に記録されるべきコンテンツをプリンタに送信する手段と、
該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し記録媒体にこれを出力するプリンタによる前記印刷記録媒体に対する読取りによって得られた、当該印刷記録媒体が記憶している磁気担体の識別情報を、当該プリンタから受信する手段と、
前記受信した前記磁気担体の識別情報を、磁気担体の識別情報を管理する媒体情報データベースに問い合わせる手段と、
前記問い合わせにより、前記受信した磁気担体の識別情報が、前記データベースにて予め記憶された識別情報であるとの結果を得られれば、前記受信した前記磁気担体の識別情報に前記コンテンツを対応付けしてデータベースに記憶する手段と、
を含むことを特徴とするコンテンツ管理装置。」



4.引用例2の認定

原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、特開2001-229199号公報には、次の事項が記載されている。

(ア)
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICチップ入りペーパを用いた情報管理方法に関し、特にICチップ入りペーパの位置情報を用いて、ICチップ入りペーパが保存する書類情報の管理を行うのに好適な情報管理方法に関する。」

(イ)
「 【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ICペーパを用いることで、書類の情報を電子データとして管理し、その結果、書類に記載されている情報の検索および管理を容易に実現する。また、ファイルに挿入されたICペーパのもつ電子データを、そのファイルごとに一括して管理し、さらに位置検出方法を用いて、そのファイルの位置を検出することで、そのファイルに挿入されているICペーパの位置を、ICペーパのもつ電子データとともに把握することを可能にしている。その際、情報の検索の時間を短縮することができる。」

(ウ)
「 【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0007】
図1は、本発明の実施の形態を示すフローチャートである。図2は本発明の処理を行わせる装置構成を示すブロック図である。図3はICチップへ電子データを書き込む機能、またはICチップから電子データを読み出す機能のうち少なくとも一方の機能を有するICリーダライタ(以下では単にICリーダライタと呼ぶ)付きのICチップ入り書類ファイル(以下ではICファイルと呼ぶ)、およびICペーパ10の構成図である。」

(エ)
「 【0008】
図2、図3において、ICペーパ10とは、ICチップ11を載せた紙であり、紙の部分とICチップ11の部分は一体となったものである。なお、ICチップ11に記憶させる電子データの内容は、必ずしも紙の部分に記載されている情報と一致する必要はない。また電子データの形式についても特に限定せず、一定の規則に従った保存方法で、ICチップに記憶させてあるものとする。例としては、CSVファイル形式、XMLファイル形式、ビットマップファイル形式などが挙げられる。破線で囲んだ部分1はICファイルを示している。ICファイル1は、一つまたは複数のICチップ3と、ICリーダライタ4とを、内部もしくは外部に持つ書類ファイルである。位置検出装置20は、ICファイル1の位置を検出する機能を有する装置である。記憶装置40、中央処理装置50、出力装置60は、一つまたは複数のICファイル1が持つ電子データ、およびICファイル1の位置情報を管理するコンピュータである。」


以上の引用例2の記載によれば、引用例2には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例2の上記(エ)の「図2、図3において、ICペーパ10とは、ICチップ11を載せた紙であり、紙の部分とICチップ11の部分は一体となったものである。」という記載、

引用例2の上記(イ)の「本発明では、ICペーパを用いることで、書類の情報を電子データとして管理し、その結果、書類に記載されている情報の検索および管理を容易に実現する。また、ファイルに挿入されたICペーパのもつ電子データを、そのファイルごとに一括して管理し、さらに位置検出方法を用いて、そのファイルの位置を検出することで、そのファイルに挿入されているICペーパの位置を、ICペーパのもつ電子データとともに把握することを可能にしている。その際、情報の検索の時間を短縮することができる。」という記載、
及び、引用例2の【図2】及び【図3】には、「ICチップ3」と「ICリーダライタ4」とは接触していないことより、
「ICチップ3」は非接触式であることを示唆していることから、

引用例2には、「非接触式のICチップを備えたICペーパ」が開示されていると認められる。

(b)
引用例の上記(ウ)の「図1は、本発明の実施の形態を示すフローチャートである。図2は本発明の処理を行わせる装置構成を示すブロック図である。図3はICチップへ電子データを書き込む機能、またはICチップから電子データを読み出す機能のうち少なくとも一方の機能を有するICリーダライタ(以下では単にICリーダライタと呼ぶ)付きのICチップ入り書類ファイル(以下ではICファイルと呼ぶ)、およびICペーパ10の構成図である」という記載から、

引用例2には、「ICチップへ電子データを書き込む機能、またはICチップから電子データを読み出す機能のうち少なくとも一方の機能を有するICリーダライタ」が開示されていると認められる。


以上の引用例2の記載によれば、引用例2には下記の発明(以下、「引用例2発明」という。)が開示されていると認められる。

「非接触式のICチップを備えたICペーパと、
ICチップへ電子データを書き込む機能、またはICチップから電子データを読み出す機能のうち少なくとも一方の機能を有するICリーダライタ。」



5.引用例3の認定
原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された、特開2001-297328号公報には、次の事項が記載されている。

(ア)
「 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、印鑑照合端末装置および印鑑照合システム並びに印鑑照合プログラムを記憶した媒体に関し、特に、金融機関等の渉外業務において用いられる印鑑照合端末装置および印鑑照合システム並びに印鑑照合プログラムを記憶した媒体に関する。」

(イ)
「 【0002】
【従来の技術】
現在、金融機関の渉外業務では、一般的に依頼書を営業店へ持ち帰った後、印鑑票と依頼書の印鑑の照合を行っている。しかしながら、依頼書を営業店へ持ち帰った後に印鑑照合を行うと、依頼書に捺印された印鑑が誤っていた等の際に再び渉外員が顧客のもとへ出向かなければならず、印鑑の訂正に多大な時間と手間を要し、効率が悪いものであった。」

(ウ)
「 【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した「印鑑登録・照合装置」のように、登録印影情報を可般形記憶媒体に保存し携行する場合、可般形記憶媒体の盗難や紛失等により登録印影情報が第三者に知られる危険性がある。
【0006】
そこで、この発明は、登録印影情報が漏洩する危険性が無く、渉外員が顧客のもとで印鑑照合を行うことのできる印鑑照合端末装置および印鑑照合システム並びに印鑑照合プログラムを記憶した媒体を提供することを目的とする。」

(エ)
「 【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係る印鑑照合端末装置および印鑑照合システム並びに印鑑照合プログラムを記憶した媒体の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、印鑑照合システムの構成を示すブロック図である。同図に示す印鑑照合システムは、渉外員等が携帯する印鑑照合端末1と、これに接続される画像入力装置2、携帯型通信装置3、営業店等に設置されるサーバ4を具備して構成される。」

(オ)
「 【0023】
印鑑照合端末1は、渉外員による印鑑照合作業を補助するデータ等を生成する印鑑照合演算部11と、画像入力装置2とのインタフェイスとなる画像入力制御部12、画像入力装置2から入力された画像の歪みを補正する画像歪補正部13、携帯型通信装置3とのインタフェイスとなる通信制御部14、サーバ4から送信される暗号化された印影画像を復号する画像復号部15、各種情報や画像等を表示する表示部16とこれを制御する表示制御部17、渉外員による操作指示やデータを入力するキー入力部18とこれを制御するキー入力制御部19を具備して構成される。」

(カ)
「 【0024】
また、サーバ4は、登録印鑑の印影画像を格納する印影データベース41と、印影データベース41から所望の印影画像を検索する印影検索部42、印影画像を暗号化する印影暗号化部43、印鑑照合端末1と携帯型通信端末3を介して通信を行う通信制御部44、印鑑照合端末1との通信に先立ち、印鑑照合端末1や渉外員等を認証する認証部45を具備して構成される。」

(キ)
「 【0041】
次に、印鑑照合端末1を使用した渉外業務の流れについて説明する。図6は、印鑑照合端末1を使用した渉外業務の流れを示すフローチャートである。
【0042】
まず渉外員は、渉外員IDとパスワードおよび登録印の復号鍵を設定する(ステップ301)。営業店では復号鍵からその渉外員へ登録印影を送信するときに使用する暗号化鍵を生成し(ステップ302)、渉外員IDと関連付けて保管する。」

(ク)
「 【0043】
その後、渉外員が客先を訪問し、依頼書を受け取った時点で印鑑照合端末1を使用し、渉外員IDとパスワードを入力して営業店のサーバ4に送信する(ステップ304)。渉外員IDとパスワードを受信したサーバ4では、渉外員IDとパスワードに基づいた認証を行い、認証が成功すると、印影データベース41への接続を許可する(ステップ305)。」

(ケ)
「 【0044】
続いて、渉外員が口座番号を入力し(ステップ306)、これがサーバ4へ送信されると、サーバ4では、受信した口座番号に基づいて印影データベース41を検索して対応する登録印影の画像を取得し(ステップ307)、渉外員IDに対応する暗号鍵で登録印影を暗号化して印鑑照合端末1に送信する(ステップ308)。印鑑照合端末1は、暗号化された登録印影を受信すると、渉外員が入力する復号鍵に基づいて登録印影の画像を復号する(ステップ309)。」

(コ)
「 【0045】
次に、渉外員が依頼書から被照合印影を読み取ると(ステップ310)、照合処理演算(ステップ311)、照合支援表示(ステップ312)が行われ、これに基づいて、渉外員が依頼書に捺印されている印鑑が正しいものであるかどうかを判定する(ステップ313)。印鑑が正しくない場合は(ステップ313でNO)、その場で顧客に印鑑の訂正を依頼し照合作業を再度行う。そして、正しい印鑑が捺印されると(ステップ313でYES)、渉外員は、依頼書を営業店に持ち帰り(ステップ314)、事務処理を開始する(ステップ315)。」


以上の引用例3の記載によれば、引用例3には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例3の上記(カ)の「また、サーバ4は、登録印鑑の印影画像を格納する印影データベース41と、・・・(中略)・・・を具備して構成される。」という記載から、

引用例3には、「登録印鑑の印影画像を格納する印影データベース41を具備することを特徴とするサーバ」が開示されていると認められる。


(b)
引用例3の上記(イ)の「現在、金融機関の渉外業務では、一般的に依頼書を営業店へ持ち帰った後、印鑑票と依頼書の印鑑の照合を行っている。しかしながら、依頼書を営業店へ持ち帰った後に印鑑照合を行うと、依頼書に捺印された印鑑が誤っていた等の際に再び渉外員が顧客のもとへ出向かなければならず、印鑑の訂正に多大な時間と手間を要し、効率が悪いものであった。」という記載、

引用例3の上記(カ)の「また、サーバ4は、登録印鑑の印影画像を格納する印影データベース41と、印影データベース41から所望の印影画像を検索する印影検索部42、印影画像を暗号化する印影暗号化部43、印鑑照合端末1と携帯型通信端末3を介して通信を行う通信制御部44、・・・(中略)・・・を具備して構成される。」という記載、

引用例3の上記(ク)の「その後、渉外員が客先を訪問し、依頼書を受け取った時点で印鑑照合端末1を使用し、渉外員IDとパスワードを入力して営業店のサーバ4に送信する(ステップ304)。渉外員IDとパスワードを受信したサーバ4では、渉外員IDとパスワードに基づいた認証を行い、認証が成功すると、印影データベース41への接続を許可する(ステップ305)。」という記載、

引用例3の上記(ケ)の「続いて、渉外員が口座番号を入力し(ステップ306)、これがサーバ4へ送信されると、・・・(後略)・・・」という記載から、

引用例3には、「印鑑が捺印された依頼書に対する口座番号を受け付ける手段を具備することを特徴とするサーバ」が開示されていると認められる。


(c)
上記(a)の「登録印鑑の印影画像を格納する印影データベース41を具備することを特徴とするサーバ」という開示、

上記(b)の「印鑑が捺印された依頼書に対する口座番号を受け付ける手段を具備することを特徴とするサーバ」という開示、

引用例3の上記(ケ)の「続いて、渉外員が口座番号を入力し(ステップ306)、これがサーバ4へ送信されると、サーバ4では、受信した口座番号に基づいて印影データベース41を検索して対応する登録印影の画像を取得し(ステップ307)、渉外員IDに対応する暗号鍵で登録印影を暗号化して印鑑照合端末1に送信する(ステップ308)。」という記載から、

引用例3には、「前記口座番号に基づいて、対応する印影画像を印影データベースにおいて検索し、この印影画像を印鑑照合端末に送る手段を具備することを特徴とするサーバ」が開示されていると認められる。


以上の引用例3の記載によれば、引用例3には下記の発明(以下、「引用例3発明」という。)が開示されていると認められる。

「登録印鑑の印影画像を格納する印影データベースと、
印鑑が捺印された依頼書に対する口座番号を受け付ける手段と、
前記口座番号に基づいて、対応する印影画像を印影データベースにおいて検索し、この印影画像を印鑑照合端末に送る手段と、
を具備することを特徴とするサーバ。」



6.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

(1)
引用例1発明の「固有の識別情報」、「印刷記録媒体」、「コンテンツ」、「プリンタ」、「印刷出力用のイメージデータ」、「識別情報を管理する媒体情報データベース」は、それぞれ、

本願発明の「ユニークなID」、「記録媒体」、「記録情報」、「プリンタ装置」、「記録情報イメージデータ」、「IDを管理する適宜なデータベース」に相当する。


(2)
引用例1発明の「固有の磁気担体が対応付けされてこれを記憶している磁気情報を用いて、印刷記録媒体の発行を正確に管理するためのコンテンツ管理装置」と、

本願発明の
「ユニークなIDが対応付けされてこれを記憶している非接触ICチップを用いて、記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステム」であって、
「原本性確認の対象となる記録情報が記録された確認記録媒体に対するリーダ端末による読み込み動作により得られた当該確認記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該リーダ端末から受け付ける確認情報受付手段と、
前記リーダ端末から受け付けた確認情報としてのIDに基づいて、対応する記録情報イメージデータを前記データベースにおいて検索し、この記録情報イメージデータを出力端末に送るイメージ送出手段と、
を含む」こととは、

「ユニークなIDが対応付けされてこれを記憶している担体を用いるサーバシステム」という点で一致し、

・本願発明では、「担体」は「非接触ICチップ」であるのに対し、引用例1発明では、「担体」は「磁気担体」である点、

・本願発明は「記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステム」であり、
「原本性確認の対象となる記録情報が記録された確認記録媒体に対するリーダ端末による読み込み動作により得られた当該確認記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該リーダ端末から受け付ける確認情報受付手段と、
前記リーダ端末から受け付けた確認情報としてのIDに基づいて、対応する記録情報イメージデータを前記データベースにおいて検索し、この記録情報イメージデータを出力端末に送るイメージ送出手段と、
を含む」のに対し、
引用例1発明は「記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステム」ではなく、上記各手段を備えていない点、

で相違する。


(3)
引用例1発明の
「前記印刷記録媒体に記録されるべきコンテンツをプリンタに送信する手段と、
該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し記録媒体にこれを出力するプリンタによる前記印刷記録媒体に対する読取りによって得られた、当該印刷記録媒体が記憶している磁気情報の識別情報を、当該プリンタから受信する手段」と、

本願発明の
「前記記録媒体に記録されるべき記録情報、もしくはこの記録情報から生成した記録情報イメージデータを、プリンタ装置に送信する原本イメージ送信手段と、
前記原本イメージを受信して記録媒体にこれを出力処理するプリンタ装置による前記記録媒体に対する読み込み動作によって得られた、当該記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該プリンタ装置から受け付ける原本ID受付手段」とは、

「前記記録媒体に記録されるべき記録情報を、プリンタ装置に送信する送信手段と、
これを出力処理するプリンタ装置による前記記録媒体に対する読み込み動作によって得られた、当該記録媒体が実装する担体のIDを、当該プリンタ装置から受け付ける原本ID受付手段」という点で一致し、

・本願発明では、「記録情報から生成した記録情報イメージデータ」を「原本イメージ」としてプリンタ装置に送信し「前記原本イメージを受信して」これを出力処理するのに対し、引用例1発明では、「記録情報」(「コンテンツ」)をプリンタに送信し「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し」これを出力処理する点、

・本願発明では、「担体」は「非接触ICチップ」であるのに対し、引用例1発明では、「担体」は「磁気担体」である点、

で相違する。


(4)
引用例1発明の「前記受信した前記磁気担体の識別情報を、磁気担体の識別情報を管理する媒体情報データベースに問い合わせる手段」と、

本願発明の「前記受け付けた前記非接触ICチップのIDを、非接触ICチップのIDを管理する適宜なデータベースに照合する手段」とは、

「前記受け付けた前記担体のIDを、担体のIDを管理する適宜なデータベースに照合する手段」という点で一致し、

本願発明では、「担体」は「非接触ICチップ」であるのに対し、引用例1発明では、「担体」は「磁気担体」である点、

で相違する。


(5)
引用例1発明の「前記問い合わせにより、前記受信した磁気担体の識別情報が、前記データベースにて予め記憶された識別情報であるとの結果を得られれば、前記受信した前記磁気担体の識別情報に前記コンテンツを対応付けしてデータベースに記憶する手段」と、

本願発明の「前記照合により、前記受け付けた非接触ICチップのIDが、前記データベースにて予め登録されたIDであるとの結果を得られれば、前記受け付けた前記非接触ICチップのIDに前記記録情報イメージデータを対応付けしてデータベースに記録する原本データ登録手段」とは、

「前記照合により、前記受け付けた担体のIDが、前記データベースにて予め登録されたIDであるとの結果を得られれば、前記受け付けた前記担体のIDに前記記録情報に関するデータを対応付けしてデータベースに記録する原本データ登録手段」という点で一致し、

・本願発明では、「担体」は「非接触ICチップ」であるのに対し、引用例1発明では、「担体」は「磁気担体」である点、

・本願発明の「記録情報に関するデータ」は「記録情報イメージデータ」であるのに対し、引用例1発明の「記録情報に関するデータ」は「記録情報」(「コンテンツ」)である点、

で相違する。


(6)
したがって、両者は、

「ユニークなIDが対応付けされてこれを記憶している担体を用いるサーバシステムであって、
前記記録媒体に記録されるべき記録情報を、プリンタ装置に送信する送信手段と、
これを出力処理するプリンタ装置による前記記録媒体に対する読み込み動作によって得られた、当該記録媒体が実装する担体のIDを、当該プリンタ装置から受け付ける原本ID受付手段と、
前記受け付けた前記担体のIDを、担体のIDを管理する適宜なデータベースに照合する手段と、
前記照合により、前記受け付けた担体のIDが、前記データベースにて予め登録されたIDであるとの結果を得られれば、前記受け付けた前記担体のIDに前記記録情報に関するデータを対応付けしてデータベースに記録する原本データ登録手段と、
を含むことを特徴とするシステム。」

である点で一致し、

(相違点1)
本願発明では、「担体」は「非接触ICチップ」であるのに対し、引用例1発明では、「担体」は「磁気担体」である点、


(相違点2)
本願発明では、「記録情報から生成した記録情報イメージデータ」を「原本イメージ」としてプリンタ装置に送信し「前記原本イメージを受信して」これを出力処理するのに対し、引用例1発明では、「記録情報」(「コンテンツ」)をプリンタに送信し「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し」これを出力処理する点、


(相違点3)
本願発明の「記録情報に関するデータ」は「記録情報イメージデータ」であるのに対し、引用例1発明の「記録情報に関するデータ」は「記録情報」(「コンテンツ」)である点、


(相違点4)
本願発明は「記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステム」であり、
「原本性確認の対象となる記録情報が記録された確認記録媒体に対するリーダ端末による読み込み動作により得られた当該確認記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該リーダ端末から受け付ける確認情報受付手段と、
前記リーダ端末から受け付けた確認情報としてのIDに基づいて、対応する記録情報イメージデータを前記データベースにおいて検索し、この記録情報イメージデータを出力端末に送るイメージ送出手段と、
を含む」のに対し、
引用例1発明は「記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステム」ではなく、上記各手段を備えていない点、

で相違する。



7.相違点の判断

(1)相違点1について

各種情報を記憶するために、磁気担体を用いたり非接触ICチップを用いたりすることは、情報処理分野における常套手段であり、しかも、

・引用例2発明には、「非接触式のICチップを備えたICペーパ」が開示されていること、

・本審判請求人(本出願人)による、特開2001-134672号公報(特に、段落【0015】を参照)には、
「非接触で電子的に読み書き可能なICチップを印刷や書き込みが可能な面を有したシートに組み込んだICシート(以下、電子シートと呼ぶ)」が開示されていること、

から、印刷や書き込みが可能な面を有した記録媒体に「非接触ICチップ」を組み込むことは、周知技術である。

したがって、引用例1発明において、引用例2発明を含む当該周知技術を適用し、「磁気担体」を「非接触ICチップ」に変更することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

プリンタ装置に出力処理(印刷処理)に関して、「記録情報から生成した記録情報イメージデータ」を「原本イメージ」としてプリンタ装置に送信し「前記原本イメージを受信して」これを出力処理するという、プリンタ装置がイメージデータを受け取って出力処理を行うことは、情報処理分野における常套手段である。

したがって、引用例1発明に対して、当該常套手段を適用して、「記録情報」(「コンテンツ」)をプリンタに送信し「該コンテンツを受信して印刷出力用のイメージデータを生成し」これを出力処理する代わりに、
「記録情報から生成した記録情報イメージデータ」を「原本イメージ」としてプリンタ装置に送信し「前記原本イメージを受信して」これを出力処理するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(3)相違点3について

イメージデータを提供可能に記録しておく場合、
記録容量の増大よりも迅速な提供処理を優先して、イメージデータそのものを記録しておくか、
変換処理に伴う提供処理の遅れよりも記録容量の低減を優先して、イメージデータの元となる情報を記録しておくかは、
処理を行う情報処理装置の性能等によって適宜決定されるような、情報処理分野における周知の設計的事項である。

したがって、引用例1発明に対して、当該周知の設計的事項を適用して、「記録情報に関するデータ」を「記録情報」(「コンテンツ」)とする代わりに、「記録情報に関するデータ」を「記録情報イメージデータ」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。


(4)相違点4について

引用例1の上記(イ) の「ところで、上述した従来技術によるシステムでは、印刷物の発行を管理する機能を有さないため、例えば、有価証券、絵画等の著作物、入場券、証明書等の不正印刷を厳格に防止すべき印刷物を印刷することができない。例えば、複製または模造により不正に入手した印刷記録媒体を用いて不正な印刷物を複数生成することも可能だからである。」という記載から明らかなように、
引用例1発明の「印刷記録媒体」は、有価証券、絵画等の著作物、入場券、証明書等、「原本性の確認」を必要とされるものである。


そして、「原本性の確認」を行う事例として印影照合があることは世間常識であるが、当該印影照合に関連した引用例3発明に、

「登録印鑑の印影画像を格納する印影データベースと、
印鑑が捺印された依頼書に対する口座番号を受け付ける手段と、
前記口座番号に基づいて、対応する印影画像を印影データベースにおいて検索し、この印影画像を印鑑照合端末に送る手段と、
を具備することを特徴とするサーバ。」
(なお、「口座番号」及び「印鑑照合端末」が、本願発明の「ID」及び「出力端末」に相当すること、
「登録印鑑の印影画像」が本願発明の「記録情報イメージデータ」に略対応することは明らかである。)

とあるように、入手した書類(又はその一部)の情報と、予めデータベースに登録された情報とを比較可能に構成することよって、原本性の確認を行うことは、周知技術である。


しかも、
・引用例2発明には、
「非接触式のICチップを備えたICペーパと、
ICチップへ電子データを書き込む機能、またはICチップから電子データを読み出す機能のうち少なくとも一方の機能を有するICリーダライタ。」
が開示されていること、

・本審判請求人(本出願人)による、特開2001-134672号公報(特に、段落【0015】、【0048】乃至【0049】を参照)には、

非接触で電子的に読み書き可能なICチップを印刷や書き込みが可能な面を有したシートに組み込んだ電子シートと、
当該電子シートに組み込まれたICチップからデータを読み出すICリーダとを備える印刷物検証装置、
が開示されていること、

から把握できるように、記録媒体に備えられた非接触ICチップを読み出し処理を行うリーダ端末や、リーダ端末を備える出力端末は、情報処理分野における周知技術である。


したがって、引用例1発明の「印刷記録媒体」に対して「原本性の確認」も可能とするべく、
引用例1発明に対して、引用例3発明を適用することによって「媒体情報データベース」に記録される情報を基に「記録情報(イメージデータ)」の照合を可能とするべく、当該周知技術にあるようなリーダ端末及び出力端末を付加すること、
すなわち、引用例1発明の装置を、
「原本性確認の対象となる記録情報が記録された確認記録媒体に対するリーダ端末による読み込み動作により得られた当該確認記録媒体が実装する非接触ICチップのIDを、当該リーダ端末から受け付ける確認情報受付手段と、
前記リーダ端末から受け付けた確認情報としてのIDに基づいて、対応する記録情報イメージデータを前記データベースにおいて検索し、この記録情報イメージデータを出力端末に送るイメージ送出手段と、
を含む」ように構成し、「記録媒体に記録された記録情報の原本性を確認するサーバシステム」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。



8.むすび

したがって、本願発明は、引用例1乃至3発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-22 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-08 
出願番号 特願2002-5122(P2002-5122)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮久保 博幸  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 和田 財太
小曳 満昭
発明の名称 記録情報の原本性確認方法およびシステム  
代理人 一色国際特許業務法人  

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