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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1201006
審判番号 不服2007-23929  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-30 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 平成10年特許願第301267号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月 9日出願公開、特開2000-126423〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成10年10月22日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成19年6月12日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年8月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年9月19日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成20年12月3日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年2月3日に回答書が提出されている。

第二.平成19年9月19日付の手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年9月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。
「遊技島に固定される外枠と、
該外枠に対して開閉自在に設置される内枠と、
前記外枠又は前記内枠の一方に固定され、前記外枠又は前記内枠の他方側の先端が開口した筒状の保持部材と、
前記保持部材の内部に収容されることで保持され、前記外枠又は前記内枠の他方に設けられた被検出部が当接しているか否かを検出することにより前記内枠の開閉状態を検出する内枠開閉検出手段と、
を備え、
前記保持部材の内部には、前記内枠開閉検出手段における、前記被検出部と当接する側とは反対側を支持するとともに、前記内枠開閉検出手段が前記被検出部により押されたとき、前記内枠開閉検出手段が前記反対側に変位するように弾性変形可能な弾性変形部が設けられている
ことを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって変更又は追加された箇所)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「前記外枠又は前記内枠の一方に固定された保持部材」を「前記外枠又は前記内枠の一方に固定され、前記外枠又は前記内枠の他方側の先端が開口した筒状の保持部材」に変更し、この変更によって、「保持部材」の形状を具体化(下位概念化)することで、「保持部材」に対する「内枠開閉検出手段」および「弾性変形部」の関係をそれぞれ「前記保持部材の内部に収容されることで保持され、前記外枠又は前記内枠の他方に設けられた被検出部が当接しているか否かを検出することにより前記内枠の開閉状態を検出する内枠開閉検出手段」、「前記保持部材の内部には、前記内枠開閉検出手段における、前記被検出部と当接する側とは反対側を支持するとともに、前記内枠開閉検出手段が前記被検出部により押されたとき、前記内枠開閉検出手段が前記反対側に変位するように弾性変形可能な弾性変形部が設けられている」と補正したものであるから、請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4?297288号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
【0002】【従来の技術】パチンコ機は、島台に取付けられ、外枠に対して前枠が、前枠に対してガラス枠がそれぞれ開閉自在に設けられるとともに、これらの枠体が不用意に開放しないように施錠装置が設けられている。・・・
【0009】・・・図8は島台に設置したパチンコ機を示す正面図である。以下、これらの図面に基づき詳細に説明する。
【0024】パチンコ機18には、前枠10用の施錠爪28、28と、ガラス枠12用の施錠爪114と、外枠20に固定された固定爪116と、第二の解錠手段112とが組み込まれている。これらは、各メーカーにより多少異なり、周知の構造である。解錠手段112は、前枠10に固設された細長基板120と、細長基板120にスライド可能に設けられた係合突片122と、係合突片122と係合してスライドするスライド長片124、スライド長片124の両端と施錠爪28、28とを回動自在に連結する回動軸126、126と、施錠爪28、28を細長基板120に回動自在に連結する回動軸128、128と、施錠爪28を施錠状態に保持するための引っ張りばね130と、施錠爪114を施錠状態に保持するための引っ張りばね132と、細長基板120に固設されたシリンダ錠118と、シリンダ錠118の裏側に突設され係合突片122と係合するピン134とから概略構成されている。
【0025】ここで、シリンダ錠118へ鍵136を挿入し右へ回動すると、ピン134が右へ回動して係合突片122に当接しこれを押し上げる。係合突片122の押し上げに伴い、スライド長片124が上方へスライドし、軸128、128を中心に施錠爪28、28が下方へ回動する。すると、施錠爪28、28と固定爪116、116との係合が外れて前枠10が開放する。・・・
【0026】検出部140、142はマイクロスイッチによって構成される。前枠10用の検出部140は、前枠10が閉成されマイクロスイッチに接触したときに接点が開になり、前枠10が開放されマイクロスイッチから離れたときに接点が閉になるように、マイクロスイッチを外枠20に固設したものである。ガラス枠12用の検出部142は、ガラス枠12が開放されマイクロスイッチに接触したときに接点が開になるように、ガラス枠12が開放されマイクロスイッチから離れたときに接点が閉になるように、マイクロスイッチをパチンコ盤144に固設したものである。
と記載されており、摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「島台98に設置される外枠20と、
該外枠20に対して開閉自在に設けられる前枠10と、
前記外枠20に固設され、前記前枠10が閉成されたときに接点が開になり、前記前枠10が開放されたときに接点が閉になる検出部140と、
を備えたパチンコ機18。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「島台98」は、本願補正発明の「遊技島」に相当し、以下同様に、
「設置される」は「固定される」に、
「外枠20」は「外枠」に、
「設けられる」は「設置される」に、
「前枠10」は「内枠」に、
「固設され」は「固定され」に、
「パチンコ機18」は「遊技機」に、各々相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「検出部140」は、「前記前枠10」が閉成されたときに接点が開になり、「前記前枠10」が開放されたときに接点が閉になるものであるから、「前記前枠10」が当接しているか否かを検出することにより「前記前枠10」の開閉状態を検出するものであり、引用発明の「前枠10」は、「検出部140」が検出しようとする被検出部の機能を兼ねているものと認められ、引用発明の「前記前枠10が閉成されたときに接点が開になり、前記前枠10が開放されたときに接点が閉になる検出部140」は、本願補正発明の「前記内枠に設けられた被検出部が当接しているか否かを検出することにより前記内枠の開閉状態を検出する内枠開閉検出手段」に実質的に相当する。

以上を総合すると、両者は、
「遊技島に固定される外枠と、
該外枠に対して開閉自在に設置される内枠と、
前記外枠に固定され、前記内枠に設けられた被検出部が当接しているか否かを検出することにより前記内枠の開閉状態を検出する内枠開閉検出手段と、
を備えた遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明には、「前記外枠又は前記内枠の一方に固定され、前記外枠又は前記内枠の他方側の先端が開口した筒状の保持部材」を有し、かつ、「内枠開閉検出手段」は、「保持部材の内部に収容されることで保持され」るのに対し、引用発明は、「保持部材」に相当する構成が設けられているか否か明らかでない点。
[相違点2]本願補正発明には、「前記保持部材の内部には、前記内枠開閉検出手段における、前記被検出部と当接する側とは反対側を支持するとともに、前記内枠開閉検出手段が前記被検出部により押されたとき、前記内枠開閉検出手段が前記反対側に変位するように弾性変形可能な弾性変形部が設けられている」のに対し、引用発明には、「弾性変形部」に相当する構成がない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
被検出部が当接しているか否かを検出する検出手段を内部に収容することで保持する保持部材、及び、この保持部材の先端を開口した筒状とすることは、特開昭62?69412号公報(特に、第1図、第2図参照;「ケーシング2」が「保持部材」に相当する)、実願昭49-77192号(実開昭51-5962号)のマイクロフィルム(特に、第1図参照;「外筒1」が「保持部材」に相当する)にも記載されているように、周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
そして、引用発明に記載された「検出部140」に周知技術1を適用し、「前枠10」側の先端が開口した筒状の保持部材を「外枠20」に設け、保持部材の内部に、「前枠10」の開閉状態を検出する「検出部140」を保持することは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に想到できることである。

[相違点2について]
被検出部の当接を検出する検出手段の変位量が過大となった場合でも、検出手段への衝撃を吸収することは、検出手段を用いる際に、必要に応じて考慮される課題であり、そのため構造として、検出手段を内部に収容して保持する保持部材の内部に、検出手段における、被検出部と当接する側とは反対側を支持するとともに、検出手段が被検出部に押されたとき、検出手段が反対側に変位するように弾性変形可能な弾性変形部を設けることも、例えば、特開昭62?69412号公報(特に、第2頁右上欄第1行?同頁右下欄第6行参照;「保持部材」、「弾性変形部」として「ケーシング2」、「緩衝用スプリング7」が相当する)や特開平9?86844号公報(特に、段落【0014】参照;「保持部材」、「弾性変形部」として「保護具13」、「緩衝ばね14」が相当する)に記載されているように周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。そうしてみると、検出部140を保持する筒状の保持部材を外枠20に設ける際に、枠の歪みなどによる被検出部と検出部との若干の位置関係の変化によって、被検出部が検出部を押下する量が過大となる場合を考慮して、検出部への衝撃を吸収するために、該筒状の保持部材に周知技術2を採用して、相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に想到できることである。

さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、周知技術1、2に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成19年9月19日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年6月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。
「遊技島に固定される外枠と、該外枠に対して開閉自在に設置される内枠と、
前記外枠又は前記内枠の一方に固定された保持部材と、前記保持部材に保持され、前記外枠又は前記内枠の他方に設けられた被検出部が当接しているか否かを検出することにより前記内枠の開閉状態を検出する内枠開閉検出手段と、
を備え、前記保持部材には、前記内枠開閉検出手段における、前記被検出部と当接する側とは反対側を支持するとともに、前記内枠開閉検出手段が前記被検出部により押されたとき、前記内枠開閉検出手段が前記反対側に変位するように弾性変形可能な弾性変形部が設けられていることを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明の「保持部材」の形状について、「前記外枠又は前記内枠の他方側の先端が開口した筒状」の限定がなくなり、本願補正発明の「保持部材」を上位概念化するとともに、「内枠開閉検出手段」と「保持部材」との関係について、「内枠開閉検出手段」が「保持部材の内部に収容されることで保持され」を「保持部材に保持され」と簡略化され、同様にして「弾性変形部」についても「保持部」の「内部」に設けられている点を単に「保持部」に設けられているものと簡略化するものである。
そうすると、本願発明の構成要件の一部を下位概念化するとともに複雑化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、及び、周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、及び、周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-15 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-01 
出願番号 特願平10-301267
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽高橋 三成  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 足立 勉  
代理人 足立 勉  

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