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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1201012
審判番号 不服2007-30301  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-08 
確定日 2009-07-23 
事件の表示 特願2002-101262「シート材排出機構およびシート材処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月15日出願公開、特開2003-292229〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年4月3日の出願であって,平成19年10月2日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,明細書又は図面について同年12月5日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年12月5日付けの手続補正についての却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成19年12月5日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)を却下する。

〔理由〕
(1)本件補正の概要
本件補正により,特許請求の範囲は,次のとおりに補正された。
「【請求項1】シート材に所定の処理を施すシート材処理装置に搭載されるとともにシート材処理装置から排出されるシート材を積載して収容するシート材収容トレイを備えたシート材排出機構であって、シート材収容トレイの最大収容枚数がシート材収容トレイに収容された状態を満杯状態として検出するとともに、シート材収容トレイの最大収容枚数からシート材処理状況に基づいて決定される収容余力枚数を減じた枚数がシート材収容トレイに収容された状態を予備的満杯状態として検出する検出手段と、該検出手段が予備的満杯状態を検出したときに、予備的満杯状態を検出した旨およびシート材処理装置の処理を停止させるべきタイミングに関する信号をシート材処理装置に対して出力する信号出力手段と、を備え、前記シート材処理装置の処理を停止させるべきタイミングは、部を構成する枚数と収容余力枚数とに基づいて算出される排出可能な部数を排出した後の部の切れ目になるように設定されることを特徴とするシート材排出機構。
【請求項2】複数部数のシート材を排出する際に各部を構成する一群のシート材ごとに仕分けを行う仕分け機能を備えるとともに、前記信号出力手段は、前記仕分け機能が動作している場合には、排出中のシート材を含むn部数目(nは自然数)を構成する一群のシート材のすべてについての処理が終了するタイミングでシート材処理装置の処理を停止すべき旨の信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のシート材排出機構。
【請求項3】前記収容余力枚数は、前記シート材処理装置が連続してシート材の処理をすることが可能な枚数以上に設定されることを特徴とする請求項1または2に記載のシート材排出機構。
【請求項4】シート材に所定の処理を施すシート材処理装置に搭載されるとともにシート材処理装置から排出されるシート材を積載して収容するシート材収容トレイを備えたシート材排出機構であって、シート材収容トレイの最大収容枚数がシート材収容トレイに収容された状態を満杯状態として検出するとともに、シート材収容トレイの最大収容枚数からシート材処理状況に基づいて決定される収容余力枚数を減じた枚数がシート材収容トレイに収容された状態を予備的満杯状態として検出する検出手段と、該検出手段が予備的満杯状態を検出したときに、予備的満杯状態を検出した旨およびシート材処理装置の処理を停止させるべきタイミングに関する信号をシート材処理装置に対して出力する信号出力手段と、を備えたシート材排出機構を搭載したシート材処理装置であって、前記シート材収容トレイが予備的満杯状態において、シート材の処理が中断した場合には、予備的満杯状態が検出されなくなるまで新たなシート材の処理を行わず、かつ、前記検出手段は、第1の予備的満杯検知位置、およびこの第1の満杯検知位置よりも収容余力枚数が少ない第2の予備的満杯検知位置に用紙が達したことをそれぞれ検出するように構成されており、仕分け機能が選択された場合には、第1の予備的満杯検知位置に用紙が達した時に予備的満杯状態を検出する一方で、仕分け機能が選択されない場合には、第2の予備的満杯検知位置に用紙が達した時に予備的満杯状態を検出するように構成されたことを特徴とするシート材処理装置。
【請求項5】処理されるべきシート材の厚さを参照して、前記収容余力枚数を最適化する収容余力枚数最適化手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載のシート材処理装置。」

上記請求項1の補正は,補正前の請求項1に「前記シート材処理装置の処理を停止させるべきタイミングは、部を構成する枚数と収容余力枚数とに基づいて算出される排出可能な部数を排出した後の部の切れ目になるように設定される」という構成要件を加えたものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としている。請求項2及び3については,記載自体に変更はないが,請求項2は請求項1を引用し,請求項3は請求項1または請求項2を引用するものであるから,実質的に上記と同じ内容の補正がなされたものである。請求項4の補正は,補正前の請求項1に補正前の請求項5に記載された構成を加えたものであり,また,請求項5の補正は,引用する請求項を補正前の請求項4または5から補正後の請求項4に変更するものであり,いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としている。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)刊行物
原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された特開2001-26355号公報(以下,「引用刊行物」という)には,図面とともに,次のことが記載されている。

(ア)
「【0002】
【従来の技術】従来、シート処理装置においては、搬送されるシートを、分岐手段によりソートパスとノンソートパスとに分岐し、ソートパスからのシートは、処理トレイにおいて、束整合、必要に応じた綴じ処理等を行って、ソートトレイ(スタックトレイ)に積載し、ノンソートパスからのシートは、そのままノンソートトレイ(サンプルトレイ)に排出している。上記サンプルトレイは、多数枚(例えば、2000枚)が積載可能でああるが、サンプルトレイが積載可能な限度に達すると、上記分岐手段のパスをサンプルトレイ側に切り替えて、後続のシートをサンプルトレイ側に分けて積載していた。」

(イ)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例において、例えば、スタックトレイにシートが排出中に、スタックトレイの積載限度が検知されると、その「部」の途中でシートが他のサンプルトレイに別れて積載されることになるので、ユーザは、排出シートの取り扱いに不便を生じる。
【0004】シート処理装置に搬送されるシートは、例えば、プリンタや複写機等の機能を備えた多機能の画像形成装置からの画像形成済みシートが搬送されており、複写機からのシートである場合には、シート束としての「部」の枚数を知ることができる。従って、「部」の途中での積載限度の検知があっても、残りのシートが既積載のシートのトレイに継続して積載可能にすることが望ましい。
【0005】本発明は、排出されるシートの「部」が、他のトレイにまたがることなく「部」を区切って積載手段に積載可能にしたシート処理装置及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とするものである。」

(ウ)
「【0025】フィニッシャ500は、折り処理部400を介して搬送されたプリンタ部300からのシートを取り込み、取り込んだ複数のシートを整合して、1つのシート束として束ねる処理、シート束の後端側をステイプルするステイプル処理(綴じ処理)、ソート処理、ノンソート処理、製本処理等のシートの処理を行うためのものである。」

(エ)
「【0035】例えば、スタックトレイ700にシートが積載される場合、スタックトレイ700の下限位置は、下限センサ50により検知される。また、スタックトレイ700上のシートの紙面は、紙面検知手段22により検知される。上記下限センサ50が、スタックトレイ700により検知され、かつ、紙面が紙面検知手段22により検知されると、サンプルトレイ701は、積載限度にあることが検知される。ただし、この積載限度の検知時に、スタックトレイ700は、積載限度の手前にあって、積載限度から適宜の枚数(α枚、例えば100枚)を積載可能になっている。」

(オ)
「【0037】スタックトレイ700は、積載枚数が、例えば、2000枚になっていて、従来は、この値に積載枚数が達すると、スタックトレイ700へのシートの積載を、他方のサンプルトレイ701に切り替えていた。」

(カ)
「【0038】本実施の形態では、スタックトレイ700の積載限度を、例えば、1900枚とし、これが積載限度検知手段50,22により検知されても、α枚(100枚)を追加積載可能にしているので、スタックトレイ700に、任意の「部」の排出中に、スタックトレイ700の積載限度が検知されても、シートを他方のサンプルトレイ701に分割することなく、同一のスタックトレイ700に継続して積載させることができる。
【0039】これにより、積載されるシートの「部」が、2つのトレイ700,701にまたがる現象、及びこれによる出力紙の取り扱い悪さを解消することができる。この場合、スタックトレイ700からサンプルトレイ701へのシート積載の切り替えを、サンプルトレイ701及びスタックトレイ700の下降により行うこともできる。」

上記記載事項(ア)の「上記サンプルトレイは、多数枚(例えば、2000枚)が積載可能でああるが、サンプルトレイが積載可能な限度に達すると、」における2箇所の「サンプルトレイ」は「スタックトレイ」の誤記であり,上記記載事項(エ)における「サンプルトレイ701」は「スタックトレイ700」の誤記と認められる。このことは,記載事項(オ)からも明らかである。そして,上記記載事項(ア)?(エ)及び(カ)からみて,引用刊行物には,次の発明(以下,「引用発明」という)が記載されているといえる。

「フィニッシャ500において処理が行われたシートがスタックトレイ700またはサンプルトレイ701に排出されるシート処理装置であって,スタックトレイ700が,本来の積載限度(例えば2000枚)よりもα枚(例えば100枚)だけ少ないときに,積載限度にあることを検知する積載限度検知手段50,22を備え,スタックトレイ700に任意の「部」を排出している途中でこの積載限度が検知されると,当該「部」の残りのシートの分だけ,スタックトレイ700への積載を継続して行うようにしたシート処理装置。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「フィニッシャ500」及び「スタックトレイ700」は,本願補正発明の「シート材処理装置」及び「シート材収容トレイ」に相当し,引用発明の「スタックトレイ700が,本来の積載限度(例えば2000枚)よりもα枚(例えば100枚)だけ少ないときに,積載限度にあることを検知する積載限度検知手段50,22」は,本願補正発明の「シート材収容トレイの最大収容枚数からシート材処理状況に基づいて決定される収容余力枚数を減じた枚数がシート材収容トレイに収容された状態を予備的満杯状態として検出する検出手段」に相当する。また,引用発明において,スタックトレイ700に任意の「部」を排出している途中で積載限度が検知されると,当該「部」の残りのシートの分だけ,スタックトレイ700への積載を継続して行うように制御が行われる以上,積載限度を検知した信号がフィニッシャ50の動作を制御するために使われることは明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明は,
「シート材に所定の処理を施すシート材処理装置に搭載されるとともにシート材処理装置から排出されるシート材を積載して収容するシート材収容トレイを備えたシート材排出機構であって、シート材収容トレイの最大収容枚数からシート材処理状況に基づいて決定される収容余力枚数を減じた枚数がシート材収容トレイに収容された状態を予備的満杯状態として検出する検出手段と、該検出手段が予備的満杯状態を検出したときに、予備的満杯状態を検出した旨の信号をシート材処理装置に対して出力する信号出力手段を備えたシート材排出機構。」である点で一致し,次の点で一応相違する。

(相違点1)
本願補正発明は,シート材収容トレイの最大収容枚数がシート材収容トレイに収容された状態を満杯状態として検出する検出手段を備えるのに対して,引用発明は,そのような検出手段を備えていない点。

(相違点2)
予備的満杯状態を検出したとき,本願補正発明は,部を構成する枚数と収容余力枚数とに基づいて算出される排出可能な部数を排出した後の部の切れ目になるように設定されるタイミングで,シート材処理装置の処理を停止させるのに対して,引用発明は,排出中の「部」の残りのシートをスタックトレイに排出した時点で,スタックトレイへの排出を停止させる点。

上記相違点1について検討する。シート集積装置の満杯状態を検知することは,特開2000-1258号公報や特開平3-13454号公報に示されるように(後者の刊行物においては2頁左上欄参照),従来からよく知られている周知技術である。引用発明において,スタックトレイが本来の積載限度に達していないことを確認する等の必要に応じて,満杯状態の検出手段も併せて設けること,すなわち相違点1は,当業者が適宜なし得たことである。なお,本願補正発明において,満杯状態の検出が何に使われるのかは不明である。

上記相違点2について検討する。本願補正発明における「部を構成する枚数と収容余力枚数とに基づいて算出される排出可能な部数」とは,排出可能な最大の部数であるとは限らない。本願補正発明を引用する形式で記載された請求項2には,「排出中のシート材を含むn部数目(nは自然数)を構成する一群のシート材のすべてについての処理が終了するタイミングでシート材処理装置の処理を停止すべき旨の信号を出力する」と記載されており,同請求項は,予備的満杯状態を検出したときに排出中である「部」の残りのシートを排出した時点で,次の「部」のシートのすべてをシート材収容トレイにさらに積載可能な状況であっても,ただちに処理を停止する形態のものに特定したと解されるから,本願補正発明は,このような形態を含むというべきである。そうしてみると,相違点2について,実質的な相違点といえるのは,本願補正発明は,シート材処理装置の処理を停止させるのに対して,引用発明は,シートのスタックトレイへの排出は停止させるものではあるが,シート材処理装置の処理を停止させるものであるとはいえない点である。この点について,さらに検討する。前記記載事項(カ)における「この場合、スタックトレイ700からサンプルトレイ701へのシート積載の切り替えを、サンプルトレイ701及びスタックトレイ700の下降により行うこともできる。」との記載を参照すると,引用発明において,排出中の「部」の残りのシートをスタックトレイ700に排出し終わったとき,スタックトレイ700からサンプルトレイ701に切り替えることで,継続して次の「部」のシートを排出・積載可能とすることも考えられるが,排紙トレイが積載限度になると画像形成装置の動作を停止させることが技術常識であることを考慮すると,フィニッシャ500からのシートの排出を停止し,スタックトレイ700から積載されたシートが取り除かれるなど,所定の条件の下で,シートの排出を再開可能とすることも,当業者であれば容易に想到し得たというべきである。したがって,相違点2は,当業者が技術常識に基づいて容易に想到し得たことである。

したがって,本願補正発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,平成19年8月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

「シート材に所定の処理を施すシート材処理装置に搭載されるとともにシート材処理装置から排出されるシート材を積載して収容するシート材収容トレイを備えたシート材排出機構であって、シート材収容トレイの最大収容枚数がシート材収容トレイに収容された状態を満杯状態として検出するとともに、シート材収容トレイの最大収容枚数からシート材処理状況に基づいて決定される収容余力枚数を減じた枚数がシート材収容トレイに収容された状態を予備的満杯状態として検出する検出手段と、該検出手段が予備的満杯状態を検出したときに、予備的満杯状態を検出した旨およびシート材処理装置の処理を停止させるべきタイミングに関する信号をシート材処理装置に対して出力する信号出力手段と、を備えたことを特徴とするシート材排出機構。」

4.刊行物及びその記載内容
引用刊行物及びその記載事項は,前記「2.(2)刊行物」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は,前記「2.」で検討した本願補正発明から「前記シート材処理装置の処理を停止させるべきタイミングは、部を構成する枚数と収容余力枚数とに基づいて算出される排出可能な部数を排出した後の部の切れ目になるように設定される」との限定を省略したものである。
してみると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(3)対比・判断」に記載したとおり,引用発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

6.むすび
原査定は,妥当である。
したがって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-21 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-08 
出願番号 特願2002-101262(P2002-101262)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西藤 直人  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 熊倉 強
谷治 和文
発明の名称 シート材排出機構およびシート材処理装置  
代理人 特許業務法人楓国際特許事務所  
代理人 小森 久夫  
代理人 小澤 壯夫  

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