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審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01S 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S |
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管理番号 | 1201084 |
審判番号 | 不服2006-19578 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-04 |
確定日 | 2009-07-22 |
事件の表示 | 特願2005-214972「GPS受信機とGPS信号を処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日出願公開、特開2006- 30207〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、1996年10月8日を国際出願日とする出願(特願平9-515151号、以下、「原出願」という。:優先日 1995年10月9日 米国、1996年3月8日 米国)の一部を平成17年7月25日(優先日 1995年10月9日 米国、1996年3月8日 米国)に新たな出願としたものであって、平成18年4月4日付けで手続補正(以下、「補正1」という。)がなされ、平成18年6月1日付け(送達:同年6月6日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正(以下、「本件補正1」という。)がなされ、さらに、同年10月4日付けで手続補正(以下、「本件補正2」という。)がなされたものである。 第2 本件補正1及び本件補正2の適否について 本件補正1及び本件補正2については、補正された順番に従って、まず本件補正1の適否を判断し、つぎに本件補正2の適否を判断する。 (補正の適否を補正された順番に従って判断することについては、知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)10698号の判決(平成18年9月26日言渡し)参照。) 1 本件補正1の適否について 本件補正1の内容は、補正前の特許請求の範囲の請求項中、請求項2ないし請求項39を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除に該当し、また、同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるから、本件補正1を認める。 2 本件補正2についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正2(平成18年10月4日付けの手続補正)を却下する。 [理由] (1)補正の内容 上記のように、本件補正1は認められたので、本件補正2の適否は、本件補正1で補正された明細書及び図面を基準に判断する。 本件補正2の内容は、特許請求の範囲を補正前の 「【請求項1】 移動GPS受信機中の局部発振器を較正する方法であって: 精密搬送波周波数信号を提供する源から前記精密搬送波周波数信号を受信するステップと; 前記精密搬送波周波数信号に自動的にロックし、基準信号を提供するステップと; 前記局部発振器を前記基準信号で較正するステップとを含み、前記局部発振器はGPS信号を捕捉するために使用されることを特徴とする方法。」から、補正後の 「【請求項1】 移動GPS受信機中の局部発振器を較正する方法であって: 精密搬送波周波数信号を提供する源から前記精密搬送波周波数信号を受信するステップと; 前記精密搬送波周波数信号に自動的にロックし、基準信号を提供するステップと; 前記局部発振器を前記基準信号で較正するステップとを含み、前記局部発振器はGPS信号を捕捉するために使用されることを特徴とする方法。 【請求項2】・・・(以下省略) ・・・・・・ 【請求項39】・・・」 と補正するものである。 (2)補正の目的 前記補正は、特許請求の範囲の請求項を増加させる補正であって、補正前の請求項と補正後の請求項に一対一又はこれに準ずるような対応関係があるとは認められないから、特許請求の範囲の減縮に該当しない。(東京高等裁判所平成15年(行ケ)230号の判決(平成16年4月14日言渡し)、知的財産高等裁判所平成17(行ケ)10192号の判決(平成17年4月25日言渡し)参照。) また、前記補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものであるともいえない。 したがって、本件補正2は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 上記のように、本件補正1は認められ、本件補正2は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、本件補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 移動GPS受信機中の局部発振器を較正する方法であって: 精密搬送波周波数信号を提供する源から前記精密搬送波周波数信号を受信するステップと; 前記精密搬送波周波数信号に自動的にロックし、基準信号を提供するステップと; 前記局部発振器を前記基準信号で較正するステップとを含み、前記局部発振器はGPS信号を捕捉するために使用されることを特徴とする方法。」 (以下、「本願発明」という。) 第4 刊行物に記載された発明 1 引用発明1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成5年7月23日に頒布された刊行物である特開平5-180925号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (ア-a)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、一般的に、航行案内システムに関し、特に全世界配置システム(Global Positioning System (GPS)) の衛星を用いて地球上または地表近くの車両を追跡するシステムに関するものである。GPSは、多数の衛星を基本とした無線配置システムであり、各GPS衛星がデータを送信し、ユーザがGPS衛星の選択したものからアンテナまでの距離を正確に測定し、その後公知の三角測定法を用いて、位置、速度及び時間パラメータを高精度に計算することができるようにしたものである。GPSが与えた信号は全世界で連続的に受信することができる。GPSは、空間、制御及びユーザ部として知られている3つの主要部分からなる。」 (ア-b)「【0005】GPS受信器は、アンテナ集合体、RF集合体、及びGPSプロセッサ集合体等を含む、多数のサブシステムから構成されている。・・・【0006】RF集合体は、LバンドのGPS信号を都合のよりIF周波数と混合するものである。種々の既知の技術を用いて、PRNコード変調Lバンド信号を、コード補正を加えて追跡し、衛星から信号を送信した時間を測定する。受信したLバンド信号のドプラシフト(doppler shift)も、搬送追跡ループを介して測定する。コード補正及び搬送追跡機能は、アナログまたはデジタル処理を用いることによって、実現することができる。」 (ア-c)「【0014】【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の主要な目的は、低帯域データリンクを用いて数百の車両またはプラットホームの追跡を可能とする、GPS衛星を用いた、低価格の車両及びその他の対象の追跡システムを提供することである。 【0015】本発明の他の目的は、高い軌道の衛星用に最適化されたアンテナシステムを用いることにより、及びVLSワークステーションにマッピング支援機能を用いて、システムが短期間の間に受信しなくてはならない衛星の数を減少させることによって、高地の市街地でも正確に機能する性能を有する、GPS衛星を用いた低価格の車両追跡システムを提供することである。」 (ア-d)「【0019】次に、図1のブロック図を参照すると、本発明の車両追跡システムは、主としてアンテナ10、センサ20、通信リンク30、VLSワークステーション40及びGPS基準受信器60とを備えている。・・・ 【0021】センサ20の代表的な実施では、簡素化された周波数合成方法、温度補償クリスタル発振器(TCXO)21またはその他の低価格発振器、簡素化されたデジタル信号プロセッサ(DSP)22、及び省略した計算処理を採用している。センサ20のブロック図を図2及び3に示す。センサ20内の周波数合成は、温度補償クリスタル発振器21によって発生される6.1539MHzの発振周波数(FO)を基にしている。局部発振周波数(LO)は、局部発振器23で発生され、256xFO=1575.3984MHzである。2の乗算器のべき乗によって、位相ロックループ(PLL)25の設計を簡素化することができる。PLLは、局部発振器23の周波数をクリスタル発振器21のそれに固定するために用いられるものである。結果として得られる中間周波数(IF)は1575.42MHz-256FO=21.6KHzとなる。 【0022】このIFはDCより十分高いので、正負ドプラシフト間で、区別することができる。これはDCと十分近いので、スペクトルノイズの折り返しによる相関ノイズの増加を最少に抑えることができる。DSPチップに用いられるサンプリングクロックは、FO/3=2.01513MHzであり、この周波数は、1.023MBSのチップレートには関連しないことにおいて、理想的なものである。固定小数点のみを必要とする、従来のマイクロコンピュータ24を用いる。センサ20を、特定の用途に応じて、1乃至8個のDSPチャンネル22で構成することができる。各DSPチャンネル22の詳細は図4に示されているが、C/Aコード相関を行ない、デジタルGPS信号上のL-バンド信号ドプラを除去する、カスタムゲートアレイを備えている。誤差同相(I)及び直角(Q)信号を、早い、遅い、及び素早いコード位相に対して1ミリ秒の間蓄積し、信号追跡のためマイクロコンピュータに供給される。追跡用マイクロコンピュータを用いて、追跡すべきGPS衛星を選択し、コード及びキャリア追跡ループを閉じる。」 上記摘記事項(ア-a)及び(ア-b)より、「車両を追跡するシステムのGPS受信器のRF集合体」が読み取れる。 上記摘記事項(ア-d)における「センサ20」は上記摘記事項(ア-b)における「GPS受信器」に相当するものであることが明らかであって、上記摘記事項(ア-d)の「センサ20内の周波数合成は、温度補償クリスタル発振器21によって発生される6.1539MHzの発振周波数(FO)を基にしている。」、 「位相ロックループ(PLL)25の設計を簡素化することができる。PLLは、局部発振器23の周波数をクリスタル発振器21のそれに固定するために用いられるものである。」との記載より、「温度補償クリスタル発振器(TCXO)21によって発振周波数(FO)を発生し、前記局部発振器23の局部発振周波数(LO)を温度補償クリスタル発振器(TCXO)21の発振周波数(FO)に固定するための位相ロックループ(PLL)25を備え」ることが読み取れる。また、上記摘記事項(ア-d)の「結果として得られる中間周波数(IF)は1575.42MHz-256FO=21.6KHzとなる。」との記載から、「局部発振器23は、前記RF集合体において中間周波数(IF)を得るために用いられる」ことが読み取れる。 したがって、上記摘記事項(ア-a)ないし(ア-d)並びに図面の図1ないし図3より、引用例1には次の発明が記載されているものと認める。 「車両を追跡するシステムのGPS受信器のRF集合体に含まれる局部発振器23の局部発振周波数(LO)を温度補償クリスタル発振器(TCXO)21の周波数に固定するための方法であって、 温度補償クリスタル発振器(TCXO)21によって発振周波数(FO)を発生し、 前記局部発振器23の局部発振周波数(LO)を温度補償クリスタル発振器(TCXO)21の発振周波数(FO)に固定するための位相ロックループ(PLL)25を備え、 前記局部発振器23は、前記RF集合体において中間周波数(IF)を得るために用いられることとする方法。」 (以下、「引用発明1」という。) 第5 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「車両を追跡するシステムのGPS受信器のRF集合体に含まれる局部発振器23」は、本願発明の「移動GPS受信機中の局部発振器」に相当する。 イ 引用発明1の「温度補償クリスタル発振器(TCXO)21」は、温度補償の無い周知なクリスタル発振器との比較において、より精密な周波数信号を基準信号として出力し、局部発振器23の局部発振周波数(LO)を該基準信号の発振周波数(FO)に固定するためのものであることが明らかであるから、引用発明1の「温度補償クリスタル発振器(TCXO)21によって発振周波数(FO)を発生し」と、本願発明の「精密搬送波周波数信号を提供する源から前記精密搬送波周波数信号を受信するステップと;前記精密搬送波周波数信号に自動的にロックし、基準信号を提供するステップ」とは、「精密な周波数信号としての基準信号を提供するステップ」の点で共通する。 ウ また、引用発明1の「局部発振器23の局部発振周波数(LO)を温度補償クリスタル発振器(TCXO)21の発振周波数(FO)に固定するための位相ロックループ(PLL)25を備え」ることは、位相ロックループ(PLL)25によって、温度補償クリスタル発振器(TCXO)21の発振周波数(FO)を基準信号として、局部発振器23の局部発振周波数(LO)を当該基準信号で較正することに相当することが明らかであるから、本願発明の「局部発振器を前記基準信号で較正するステップ」に相当する。 エ さらに、引用発明1の「RF集合体において中間周波数(IF)を得るために用いられること」は、GPS信号を中間周波数に変換することであって、GPS信号を捕捉するために使用されるものであることが明らかであるから、引用発明1の「局部発振器23は、RF集合体において中間周波数(IF)を得るために用いられること」は、本願発明の「局部発振器はGPS信号を捕捉するために使用されること」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違している。 [一致点] 「移動GPS受信機中の局部発振器を較正する方法であって: 精密な周波数信号としての基準信号を提供するステップと; 前記局部発振器を前記基準信号で較正するステップとを含み、前記局部発振器はGPS信号を捕捉するために使用されることを特徴とする方法。」 [相違点] 精密な周波数信号としての基準信号を提供するステップについて、 本願発明は「精密搬送波周波数信号を提供する源から前記精密搬送波周波数信号を受信するステップと;前記精密搬送波周波数信号に自動的にロックし、基準信号を提供するステップ」であるのに対して、 引用発明では「温度補償クリスタル発振器(TCXO)21によって発振周波数(FO)を発生し」である点。 第6 当審の判断 上記相違点について検討する。 精密な周波数信号としての基準信号を提供する技術として、送信源からの精密な搬送波周波数信号を受信し、前記精密な搬送波周波数信号に自動的にロックし、基準信号を発生して提供する方法は周知技術である(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である、特開平5-155397号公報には、「超精密かつ超高安定なクロックを発生するためのクロック発生器21で発生されたクロック信号をアンテナ22によって送出する地上局20を備え、 クロック受信機13は、復調部132で地上局20で生成された超精密クロック信号を検出し、 クロック再生装置12は、位相同期回路で受信クロック信号に同期したクロック信号を再生出力する、 高精密かつ高安定なクロック信号でGPS受信機を駆動させる方法。」が記載されている。(段落【0004】?【0005】、【0012】?【0015】参照。))。 したがって、引用発明1の温度補償クリスタル発振器(TCXO)21によって発振周波数(FO)を発生することに代えて、精密な周波数信号としての基準信号を提供するステップとして上記周知技術を採用し、本願発明のように構成することは当業者が容易に想到できたことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって格別のものではない。 よって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 まとめ 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第8 本件補正2を適法とした場合の予備的検討 仮に、本件補正2を適法とした場合の特許法第29条第2項違反についても検討する。 1 特許法第29条第2項について 本件補正2が認められた場合、審理の対象とすべき明細書及び図面は本件補正2により補正されたものとなるところ、請求項1及びそれに対応する発明の詳細な説明の記載事項は、本件補正1により補正されたものと同一である。 したがって、本件補正2によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記「第4」ないし「第7」に記載した理由と同様の理由により特許を受けることができない。 第9 むすび 以上のとおり、本件補正2を却下したとしても、却下せずに認めたとしても、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-03 |
結審通知日 | 2009-02-17 |
審決日 | 2009-03-02 |
出願番号 | 特願2005-214972(P2005-214972) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 有家 秀郎 |
特許庁審判長 |
飯野 茂 |
特許庁審判官 |
山下 雅人 下中 義之 |
発明の名称 | GPS受信機とGPS信号を処理する方法 |
代理人 | 紺野 正幸 |
代理人 | 山川 茂樹 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 黒川 弘朗 |
代理人 | 山川 政樹 |