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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1201108
審判番号 不服2008-23541  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-12 
確定日 2009-07-22 
事件の表示 特願2002- 29718「車輪軸受装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月22日出願公開、特開2003-232343〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要
本願は、平成14年(2002年)2月6日の出願であって、平成20年7月31日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、請求人より平成20年9月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月14日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2.平成20年10月14日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年10月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
外端部に車輪固定用のフランジ部を、中間部外周面にフランジ側の内輪軌道を、内端部外周面に嵌合部を、それぞれ有するハブと、
前記嵌合部に嵌合し、外周面に反フランジ側の内輪軌道を有する内輪要素と、
縣架装置に支持する為の取付部を外周面に有し、内周面に前記フランジ側および反フランジ側の内輪軌道に対向するフランジ側および反フランジ側の外輪軌道を形成した外輪相当部材と、
前記フランジ側および反フランジ側の内輪軌道と前記フランジ側および反フランジ側の外輪軌道との間のそれぞれに介装した複数の玉とを具備した車輪軸受装置において、
フランジ側軸受の前記玉のPCDを、反フランジ側軸受の前記玉のPCDより大きくして前記フランジ側軸受の軸受剛性を前記反フランジ側軸受より大きくし、かつ、
前記ハブ外周面には、前記フランジ側の内輪軌道の軸方向反フランジ側端部から、前記内輪要素と前記ハブとの突き当て部に向って小径となり前記突き当て部において前記内輪要素の外周と同一径となる径変化部分を有することを特徴とする車輪軸受装置。」
と補正された。(なお、下線は、請求人が付与した本件補正による補正箇所を示す。)

上記特許請求の範囲の請求項1に係る補正は、出願当初の明細書又は図面の記載に基づき、ハブ外周面に形成する「径変化部分」について「前記フランジ側の内輪軌道の軸方向反フランジ側端部から、前記内輪要素と前記ハブとの突き当て部に向って小径となり前記突き当て部において前記内輪要素の外周と同一径となる径変化部分を有する」(下線部)と構成を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
<刊行物1>
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平2-70107号(実開平4-27216号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、「複列玉軸受装置」に関して、下記の事項ア?キが図面とともに記載されている。
ア;「この考案は、自動車の車輪用軸受やドライブピニオン軸の軸受などに用いられる複列玉軸受装置に関するものである。」(明細書第1頁16行?18行)

イ;「そこで、この考案は、軸受装置を大型化することなく、高負荷側のボールの耐久性を向上させた複列玉軸受装置を提供することを目的としている。」(明細書第4頁1行?3行)

ウ;「〔課題を解決するための手段〕
上記の課題を解決するため、この考案は、荷重中心に近いボール案内溝のボール径を、他方のボール案内溝のボール径より大きく設定した構造を採用したのである。
〔作用〕
上記の構造においては、ボール直径を大きくしたことにより、ボールの耐負荷荷重が大きくなり、ボールの耐久寿命が長くなる。このため、全体として軸受装置の耐久性が向上する。」(明細書第4頁4行?13行)

エ;「第1図は、非駆動側車輪の軸受にこの考案を適用した実施例を示している。
図に示すように、外輪1の内部に挿入される内方部材2は、ハブ3と、そのハブ3先端の軸部4に嵌合する内輪5とから成り、この内輪5は、軸部4の先端にねじ込んだナット6によりハブ3に固着されている。
上記ハブ3の周面と内輪5の外周面には、軸方向に距離を隔てて2列のボール案内溝7b、8bが形成され、一方、外輪1の内周面には、上記ボール案内溝7b、8bにそれぞれ対応してボール案内溝7a、8aが形成されている。
これらボール案内溝のうち、自動車への取付け側になる内側の案内溝7a、7bの案内面は、他方の案内溝8a、8bに対して、直径の大きなボールを案内できるように曲率の大きな曲面で形成されている。」(明細書第4頁15行?第5頁11行)

オ;「また、外輪1に設けた案内溝において、内側の案内溝7aは外側の案内溝8aより大径側に配置されており、ボール9、10を各案内溝に組込んだ際に、ボール9、10とハブ3及び内輪5との内接円の直径が同一となるように設定されている。
また、この実施例においては、上記内側の案内溝7aを、外輪1の外周に設けた取付用フランジ11の真下で肉厚が大きくなった部分に形成しており、これにより、案内溝7aの大径化による外輪肉厚の薄型化を無くし、剛性の低下を防止している。
上記ボール案内溝7a、7b及びボール案内溝8a、8bには、それぞれ保持器12、13で保持された多数のボール9、10が組込まれるが、このボールのうち内側のボール9の直径は、外側のボール10の直径より大きく設定される。
このボール直径の大型化は、両ボール9、10間の中心位置に対する荷重中心のずれ量、すなわち、各ボール9、10に加わる負荷荷重の差に応じて決定され、例えば、標準型の軸受において1ランク上又は2ランク上のサイズの軸受を選定する。」(明細書第5頁12行?第6頁13行)

カ;「上記構造で成る実施例の軸受装置においては、車輪を取付けたハブ3を片持ち支持することにより内側のボール9に大きな荷重が加わっても、ボール9の直径が大型化されて耐負荷能力が大きくなっているため、従来構造に比べてボール9の摩耗が抑制され、長寿命化が図られる。このため、ボール9の寿命により軸受装置の寿命が決定されることが無くなり、装置の耐久性を向上させることができる。
また、上記実施例の構造では、ボールの大径化によって従来構造に比べて耐負荷能力が向上するために、両ボール9、10間の距離を短かくすることにより、軸受装置のコンパクト化を図ることができる。」(明細書第6頁14行?第7頁7行)

キ;「なお、上記の両実施例においては、内側のボールの直径を大きくした例を示したが、キャスタ角やキャンバー角の設定により外側のボールの方に大きな荷重が加わる場合は、その外側のボールの直径を内側のボールより大きく設定する。」(明細書第7頁20行?第8頁4行)

刊行物1に記載された上記記載事項ア?キ及び図面の記載からみて、刊行物1には、下記の発明が記載されているものと認めることができるものである。

【刊行物1に記載された発明】
「ハブ3の外端部に車輪固定用のフランジ部(刊行物1の第1図を参照)を、ハブ3の外周面にボール案内溝8bを、ハブ3の先端の軸部4の外周面に内輪5の嵌合部を、それぞれ有するハブ3と、
前記嵌合部に嵌合し、外周面に内側のボール案内溝7bを有する内輪5と、
自動車へ取り付ける為の取付用フランジ11を外周面に有し、内周面に前記ボール案内溝7b、8bに対向する内側のボール案内溝7a、8aを形成した外輪1と、
前記ボール案内溝7b、8bと前記ボール案内溝7a、8aとの間にそれぞれ介装した複数のボール9、10とを具備した複列玉軸受装置において、
大きな荷重が加わる側の軸受のボールの直径を他の側の軸受のボールの直径よりも大きくして耐負荷能力(軸受剛性)を向上させた複列玉軸受装置。」

(3)対比・判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、「車輪軸受装置」(複列玉軸受装置)を構成する各部材の奏する機能からみて、刊行物1に記載された発明の「複列玉軸受装置」は本願補正発明の「車輪軸受装置」に相当し、以下同様に、「ハブ3」は「ハブ」に、「ハブ3の外端部のフランジ部(刊行物1の第1図参照)」は「車輪固定用のフランジ部」に、「ハブ3の外周面のボール案内溝8b」は「フランジ側の内輪軌道」に、「ハブ3の先端の軸部4」は「嵌合部」に、「ボール案内溝7bを有する内輪5」は「反フランジ側の内輪軌道を有する内輪要素」に、「外輪1」は「外輪相当部材」に、「自動車へ取り付ける為の取付用フランジ11」は「縣架装置に支持する為の取付部」に、「内側のボール案内溝7a」は「反フランジ側の内輪軌道」、「内側のボール案内溝8a」は「フランジ側の外輪軌道」に、「ボール9,10」は「複数の玉」に相当するものと認めることができるものである。

そこで、本願補正発明の用語を使用して、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、
「外端部に車輪固定用のフランジ部を、中間部外周面にフランジ側の内輪軌道を、内端部外周面に嵌合部を、それぞれ有するハブと、
前記嵌合部に嵌合し、外周面に反フランジ側の内輪軌道を有する内輪要素と、
縣架装置に支持する為の取付部を外周面に有し、内周面に前記フランジ側および反フランジ側の内輪軌道に対向するフランジ側および反フランジ側の外輪軌道を形成した外輪相当部材と、
前記フランジ側および反フランジ側の内輪軌道と前記フランジ側および反フランジ側の外輪軌道との間のそれぞれに介装した複数の玉とを具備した車輪軸受装置において、
大きな荷重が加わる側の軸受剛性(耐負荷能力)を他方の側の軸受より大きくした車輪軸受装置。」
で一致しており、下記の点で相違している。

相違点;本願補正発明では、「フランジ側軸受の前記玉のPCDを、反フランジ側軸受の前記玉のPCDより大きくして前記フランジ側軸受の軸受剛性を前記反フランジ側軸受より大きくし、かつ、前記ハブ外周面には、前記フランジ側の内輪軌道の軸方向反フランジ側端部から、前記内輪要素と前記ハブとの突き当て部に向って小径となり前記突き当て部において前記内輪要素の外周と同一径となる径変化部分を有する」ように構成されるものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、大きな荷重が加わる側(本願補正発明の「フランジ側の軸受」に相当)のボール(玉)の直径を他方の側の軸受(本願補正発明の「反フランジ側の軸受」に相当)のボールの直径よりも大きくし、かつ、外輪1に設けた内側の案内溝7a(大きな荷重が加わる側の案内溝)は外側の案内溝8a(他方の側の案内溝)より大径側に配置されており、ボール9、10を各案内溝に組込んだ際に、ボール9、10とハブ3及び内輪5との内接円の直径が同一となるように設定されているものである点。

上記相違点について検討するに、本願補正発明のようにフランジ側軸受の負荷容量(本願補正発明の「軸受剛性」に実質的に相当)を大きくする手段として、フランジ側軸受のボール(玉)のPCDを反フランジ側軸受のボールのPCDより大きくし、かつ、内輪2(ハブ)の外周面には、フランジ側の内輪軌道の軸方向反フランジ側端部から、内輪2の反フランジ側の内輪軌道に向けて小径となり内輪2の反フランジ側の内輪軌道と同一径となるように内輪2の外周面を形成することは、本願出願前当業者に周知の複列の軸受構造を備えた車輪軸受装置の大きな負荷(大きな荷重)が加わる側の軸受の負荷容量を大きくする手段の一つ(例えば、特開昭57-6125号公報の第4頁右上欄19行?左下欄9行及び第7図参照)にすぎないものである。
そして、上記周知の複列の軸受構造を備えた車輪軸受装置の大きな負荷(大きな荷重)が加わる側の軸受の負荷容量を大きくする手段を上記刊行物1に記載された発明のような反フランジ側の内輪を別途形成してハブに嵌合する形式の複列玉軸受装置に適用することを妨げる格別の事情は認めることができないものである。
してみると、刊行物1に記載された発明及び上記本願出願前当業者に周知の事項(フランジ側軸受のボール(玉)のPCDを反フランジ側軸受のボールのPCDより大きくしてフランジ側の負荷容量(軸受剛性)を大きくすること、及び、複列の軸受間の内輪(ハブ)外周面の径変化部分の形状)を知り得た当業者であれば、大きな荷重が加わる側の軸受(フランジ側の軸受)の負荷容量(軸受剛性)を大きくする手段として、刊行物1に記載されたようなボールの直径を大きくする手段に代えて、上記周知のボールのPCDを大きくする手段を採用するとともに、ハブ3のボール案内溝8bの軸方向反フランジ側端部から、ハブ3と内輪5の突き当て部に向って小径とし、突き当て部においてハブ3の外周面と内輪5のボール案内溝7bの外周とが同一径となるような径変化部分を有するようにハブ3の外周面を形成することにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、必要に応じて容易に想到することができる程度の事項であって、格別創意を要することではない。

また、本願補正発明の効果について検討しても、刊行物1に記載された発明及び上記本願出願前当業者に周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえないものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び本願出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ところで、請求人は、審判請求書(平成20年11月26日付けの手続補正書の【本願発明が特許されるべき理由】の「(d)引用文献について」の項参照)において、「これら周知例には前審で指摘のごとく『フランジ側軸受の前記玉のPCDを、反フランジ側軸受の前記玉のPCDより大きくして前記フランジ側軸受の軸受剛性を前記反フランジ側軸受より大きく』する構成の開示はあるとはいえても、これを耐久性のみを考慮した引用文献1(上記刊行物1)に組み合わせる動機付けはでてこないと思料します。また、これら周知例には本願発明(上記本願補正発明)のもう一つの特徴である『ハブ外周面には、フランジ側の内輪軌道の軸方向反フランジ側端部から、内輪要素とハブとの突き当て部に向って小径となり突き当て部において内輪要素の外周と同一径となる径変化部分を有する』という構成については、開示も示唆もなく、したがって、例えこれら周知例を引用文献1に組合わせても、この特徴による上記の効果を奏することはできません。」旨主張するとともに、当審が通知した審尋に対する平成21年4月10日付けの回答書において、上記本願補正発明の構成に基づく効果についてさらに主張している。

しかしながら、本願補正発明の「ハブ外周面には、フランジ側の内輪軌道の軸方向反フランジ側端部から、内輪要素とハブとの突き当て部に向って小径となり突き当て部において内輪要素の外周と同一径となる径変化部分を有する」という技術的事項は、出願当初の図3から見てとることができるにすぎないものであって、その径変化部分の具体的な形状も出願当初の明細書に記載されていないだけでなく、上記径変化部分を有することの技術的意義についても出願当初の明細書には何ら記載も示唆もされていないものである。
また、請求人が主張する上記技術的事項(ハブ外周面の径変化部分の形状)を採用したことに基づく効果も、小径となる径変化部分としたこと(例えば、上記特開昭57-6125号公報の第7図の径変化部分形状を参照)から生じる自明の効果といい得るものであって、格別なものとは認めることができないものである。
そして、本願補正発明において、「フランジ側軸受の前記玉のPCDを、反フランジ側軸受の前記玉のPCDより大きくして前記フランジ側軸受の軸受剛性を前記反フランジ側軸受より大きく」することの技術的意義について検討しても、フランジ側の軸受(大きな荷重が加わる側の軸受)の軸受剛性(負荷容量)を大きくする手段の一つとして上記技術的事項を採用したにすぎないものであって、このような技術的事項が本願出願前当業者に周知の事項にすぎないものであることは上記のとおりである。
また、上記周知の事項は複列玉軸受構造の車輪軸受装置であれば反フランジ側の内輪を別体とした車輪軸受装置にも採用することができるものであって、刊行物1に記載された発明のようなハブ3と反フランジ側の内輪5とを別体としてハブ3に内輪5を嵌合した複列玉軸受装置(車輪軸受装置)の大きな荷重が加わる側の軸受(本願補正発明でいうところの「フランジ側軸受)の耐負荷能力(軸受剛性)を大きくする手段(ボール径を大きくする手段)に代えて上記周知の事項(フランジ側軸受の玉のPCDを、反フランジ側軸受の玉のPCDより大きくする手段)を採用することを妨げる格別の事情がないことも上記のとおりである。
さらに、フランジ側軸受の玉のPCDを反フランジ側軸受の玉のPCDよりも大きくした場合には、ハブ3のフランジ側軸受のボール案内溝8bと内輪5の反フランジ側軸受のボール案内溝7bとの間を所望の小径となる径変化部分で接続する(本願補正発明のような径変化部分とする)ことも、上記周知の事項を知り得た当業者であれば、格別創意を要することでないことも上記のとおりである。
よって、請求人の上記審判請求書及び回答書での主張は採用することができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明(本件補正後の請求項1に係る発明)が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年10月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項3に係る発明は、平成17年2月4日付け、平成19年5月28日付け及び平成19年10月22日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
外端部に車輪固定用のフランジ部を、中間部外周面にフランジ側の内輪軌道を、内端部外周面に嵌合部を、それぞれ有するハブと、
前記嵌合部に嵌合し、外周面に反フランジ側の内輪軌道を有する内輪要素と、
縣架装置に支持する為の取付部を外周面に有し、内周面に前記フランジ側および反フランジ側の内輪軌道に対向するフランジ側および反フランジ側の外輪軌道を形成した外輪相当部材と、
前記フランジ側および反フランジ側の内輪軌道と前記フランジ側および反フランジ側の外輪軌道との間のそれぞれに介装した複数の玉とを具備した車輪軸受装置において、
フランジ側軸受の前記玉のPCDを、反フランジ側軸受の前記玉のPCDより大きくして前記フランジ側軸受の軸受剛性を前記反フランジ側軸受より大きくし、かつ、
前記ハブ外周面には、前記フランジ側の内輪軌道と、前記内輪要素と前記ハブとの突き当て部との間に、前記フランジ側の内輪軌道よりも小径となるような径変化部分を有することを特徴とする車輪軸受装置。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平2-70107号(実開平4-27216号)のマイクロフィルム(上記刊行物1)の記載事項は、前記「2.(2)引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で対比した本願補正発明のハブ外周面に形成する「径変化部分」の構成について「前記突き当て部において前記内輪要素の外周と同一径となる」との構成を省いたものに実質的に相当するものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに構成を限定したものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び本願出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び本願出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1に記載された発明及び本願出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2及び請求項3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-01 
出願番号 特願2002-29718(P2002-29718)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16C)
P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨岡 和人山崎 勝司  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 川上 益喜
岩谷 一臣
発明の名称 車輪軸受装置  
代理人 井上 義雄  

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