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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1201315
審判番号 不服2006-21622  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-27 
確定日 2009-07-31 
事件の表示 特願2002-242980「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 81268〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成14年8月23日
審査請求 平成15年9月11日
拒絶理由 平成18年3月1日
手続補正 平成18年4月25日
拒絶査定 平成18年8月30日
審判請求・手続補正 平成18年9月27日
当審拒絶理由 平成20年12月8日
手続補正 平成21年2月2日
当審拒絶理由 平成21年2月13日
手続補正 平成21年4月20日

第2.平成21年4月20日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成21年4月20日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

[本件補正前の請求項1]
「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リールと、メダルの投入後に操作されることによって前記回転リールの回転動作を開始させるスタートスイッチと、このスタートスイッチへの操作により所定の確率でハズレ及び複数の当選役のいずれかを抽選によって決定する当選役抽選手段と、前記複数の回転リールを停止させるストップスイッチと、を備え、前記当選役抽選手段による抽選の結果、前記複数の当選役のいずれかに当選した場合には、この当選役に対応した図柄が引き込み可能な範囲内にあるときに、遊技者がストップスイッチの操作を行った場合には、所定の入賞有効ライン上で前記当選役に対応する図柄を停止させる引込み制御を行う遊技機であって、
前記スタートスイッチへの操作による前記当選役抽選手段の抽選の結果、前記複数の当選役のうち、特定の当選役に当選した場合にのみ、前記引き込み制御が有効となる操作タイミング押し用フラグのオン、及び前記引き込み制御が無効となる操作タイミング押し用フラグのオフを所定の時間毎に切り替える操作タイミング決定手段と、
前記スタートスイッチへの操作によって前記回転リールが回転している状態で、遊技者によって行われた前記スタートスイッチ、前記ストップスイッチ及び貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチのいずれか1つの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断する状態判断手段と、
前記状態判断手段が前記操作タイミング押し用フラグがオンであると判断した場合には、引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があれば前記引き込み制御を前記ストップスイッチを操作したことに応答して行い、前記状態判断手段が前記操作タイミング押し用フラグがオフであると判断した場合には、前記引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があっても、この図柄を前記入賞有効ラインに停止させない蹴飛ばし制御を前記ストップスイッチを操作したことに応答して行う操作タイミング停止制御手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」

[本件補正後の請求項1]
「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リールと、メダルの投入後に操作されることによって前記回転リールの回転動作を開始させるスタートスイッチと、このスタートスイッチへの操作により所定の確率でハズレ及び複数の当選役のいずれかを抽選によって決定する当選役抽選手段と、前記複数の回転リールを停止させるストップスイッチと、を備え、前記当選役抽選手段による抽選の結果、前記複数の当選役のいずれかに当選した場合には、この当選役に対応した図柄が引き込み可能な範囲内にあるときに、遊技者がストップスイッチの操作を行った場合には、所定の入賞有効ライン上で前記当選役に対応する図柄を停止させる引込み制御を行う遊技機であって、
前記スタートスイッチへの操作による前記当選役抽選手段の抽選の結果、前記複数の当選役のうち、特定の当選役に当選した場合にのみ、前記引き込み制御が有効となる操作タイミング押し用フラグのオン、及び前記引き込み制御が無効となる操作タイミング押し用フラグのオフを所定の時間毎に切り替える操作タイミング決定手段と、
前記スタートスイッチへの操作によって前記回転リールが回転している状態で、遊技者によって行われた、貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断する状態判断手段と、
前記状態判断手段が前記操作タイミング押し用フラグがオンであると判断した場合には、引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があれば前記引き込み制御を前記ストップスイッチを操作したことに応答して行い、前記状態判断手段が前記操作タイミング押し用フラグがオフであると判断した場合には、前記引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があっても、この図柄を前記入賞有効ラインに停止させない蹴飛ばし制御を前記ストップスイッチを操作したことに応答して行う操作タイミング停止制御手段と、を備えたことを特徴とする遊技機。」

2.本件補正についての検討

本件補正は、本件補正前の請求項1において「前記スタートスイッチ、前記ストップスイッチ及び貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチのいずれか1つの操作が」とあったものを「貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチの操作が」と変更したものであり、とすれば、択一的な要素を削除したものと捉えられるから、限定的減縮と解することができる。
よって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

3.引用例

当審拒絶理由においても引用された特開2002-177462号公報(以下「引用文献1」という。)には図面と共に以下の技術事項が記載されている。

「本発明を表す好適な実施の形態を、遊技機としてスロットマシンを用いて図面に基づき説明する。」(段落【0037】)
「(リールユニット60)リールユニット60は、特に図示しないが枠体に固定或いは支持された三個のモータと、各々のモータの出力軸に固定された三個の回転リール40とから構成されている。そして、各回転リール40は、合成樹脂からなる回転ドラムと、この回転ドラムの周囲に貼付されるテープ状のリールテープ42とを備えている。このリールテープ42の外周面には、複数個(例えば21個)の図柄61が表示されている。」(段落【0047】)
「メダルの投入若しくはベットスイッチ16の投入を条件に、または、「再遊技(Replay)」時には前遊技から所定時間経過を条件に、スタートスイッチ30を操作すると、リールユニット60が駆動され、三個の回転リール40が回転を開始する。」(段落【0051】)
「その後、ストップスイッチ50の一個を操作すると、当該対応する回転リール40の回転が停止する。そして、ストップスイッチ50を三個全て操作し終わると、三個の回転リール40の回転が全て停止する。このとき、表示窓12の有効入賞ライン上に、予め設定された図柄61が停止すると、ホッパーユニット65を介して所定枚数のメダルが払い出される。なお、メダルを払い出す代わりに、クレジットしても良い。」(段落【0052】)
「入賞には、遊技メダルの払い出しを伴い、遊技者に利益を付与する小役入賞と、この小役入賞よりもさらに大きな利益を遊技者に付与する特別入賞と、遊技メダルの払い出しは無いが、遊技メダルを新たに投入することなく再度の遊技を行うことができる「再遊技(Replay)」とを備えている。そして、その抽選結果がいずれかの入賞となった場合、その入賞に対応した入賞フラグが成立する。」(段落【0053】)
「また、いずれかの入賞フラグが成立中に、対応する入賞図柄61を有効入賞ライン上に揃えることができるか否かは、回転リール40の回転速度が一定の場合、ストップスイッチ50の操作タイミングによるものである。回転リール40の停止は、後述するリール回転停止制御手段120により制御されているものであり、各図柄毎に設けられた停止テーブル121に基づき、停止図柄が決定される。各停止テーブルは、ストップスイッチ50を操作した時点で停止可能な図柄を基準図柄として、その基準図柄から何コマ図柄を移動させて回転リール停止させるかを定めたものであり、入賞が当選している場合には、その移動可能なコマ数の範囲内においてストップスイッチ50が操作されれば、その図柄を引き込んで回転リール40を停止させる。しかし、移動可能なコマ数の範囲内に入賞図柄がない場合には、その図柄を引き込んで回転リール40を停止させることができない。」(段落【0054】)
「(停止テーブル121)停止テーブル121は、ストップスイッチ50を操作した時点で停止可能な図柄を基準図柄として、その基準図柄から何コマ図柄を移動させて回転リール停止させるかを、入賞の有無に応じて各図柄毎に規定したものである。具体的には、停止テーブル121には、一定確率で入賞図柄を引き込んで停止させる入賞図柄停止テーブルと、入賞図柄を蹴飛ばして停止させるハズレ停止テーブルがある。」(段落【0070】)
「(停止テーブル選択手段122)停止テーブル選択手段122は、停止制御選択手段であって、入賞の抽選結果に応じて、あるいは遊技状態が特定の条件を満たしているか否かによって、停止テーブルを選択するためのものである。」(段落【0071】)
「具体的には、停止テーブル選択手段122は、通常遊技中は、入賞の抽選結果が所定の入賞であった場合には、その役の入賞図柄に対応した入賞図柄停止テーブルとハズレ停止テーブルとを抽選により選択し、いずれを用いて停止制御を行うかを決定する。この抽選は、例えば、入賞図柄停止テーブル50パーセント、ハズレ停止テーブル50パーセントの割合で領域を有する抽選テーブルを用いて行う。この二つの領域の割合は、前記入賞判定テーブルの抽選確率と、結果として入賞が確定する確率をどの程度にするかにより設定を定めるものである。」(段落【0072】) 「また、停止テーブル選択手段122は、遊技状態が特定の条件を満たしている場合には、上記した抽選を行うことなく、無条件で入賞図柄停止テーブルを選択する。すなわち、当たり期間を発生させる。ハズレ停止テーブルで停止制御を行うと、入賞図柄が所定位置に停止することは全くないのに比べ、入賞図柄停止テーブルで停止制御を行うと、入賞図柄を引き込み可能なコマ数の範囲内でストップスイッチ50を操作することにより、一定の確率で入賞図柄を所定位置に停止させることが可能である。こうすることにより、遊技状態が特定の条件を満たしている場合には、通常の遊技時に比べ入賞が確定する確率が高くなり、結果的に入賞決定確率が高くなるのである。」(段落【0073】)
「さらに、停止テーブル選択手段122は、遊技状態が特定の条件を満たしている場合には、上記した抽選を行うことなく、無条件でハズレ停止テーブルを選択するようにすることもできる。すなわち、ハズレ期間を発生させる。この場合には、上述の場合とは逆に、遊技状態が特定の条件を満たしている場合には、入賞確定がなくなり、結果的に入賞決定確率が低くなるのである。」(段落【0074】)
「ここで、「遊技状態が特定の条件を満たしている場合」としては、以下のような場合とすることができる。」(段落【0075】)
「(5)抽選により決定する。遊技中に抽選を行い、抽選に当選したことを「特定の条件」とするものである。」(段落【0080】)
「なお、停止テーブル選択手段122は、入賞の抽選結果がハズレの場合には、ハズレ停止テーブルを選択するものとする。」(段落【0081】)
「先ず、図3に示すステップ100において、スタートスイッチ30が操作されることにより、スタートスイッチ30がONとなる。そして、次のステップ101に進む。ステップ101において、入賞抽選手段110により抽選処理が行われる。そして、次のステップ102に進む。」(段落【0085】)
「上述したステップ101の抽選処理について、図4のフローを用いて説明する。ステップ200において、入賞抽選手段110の乱数発生手段111により発生された乱数の中から乱数抽出手段112により乱数が抽出される。そして、次のステップ201に進む。」(段落【0089】)
「ステップ201において、抽出された乱数が乱数抽出手段112の内部に記憶される。そして、次のステップ202に進む。ステップ202において、判定手段114により、抽出された乱数と、入賞判定テーブル113の入賞判定領域データとの比較が行われる。そして、次のステップ203に進む。」(段落【0090】)
「ステップ203において、判定手段114により、抽出された乱数が、入賞判定テーブル113のどの入賞領域に含まれるか決定され、抽選処理の評価が決定される。そして、次のステップ204に進む。ステップ204において、リール回転停止制御手段120が、前記ステップ203の評価に基づいて停止テーブルを取得する。そして、抽選処理が終了する。」(段落【0091】)
「上述したステップ204においてリール回転停止制御手段120が行う停止テーブルの取得について、図5を用いて説明する。ステップ300において、リール回転停止制御手段120の停止テーブル選択手段122が、前記判定手段114の評価が入賞かどうか判断する。そして、入賞の場合には、次のステップ301に進む。」(段落【0092】)
「ステップ301において、遊技状態が特定条件に該当するか否かを判断する。遊技状態が特定条件に該当する場合には、入賞図柄停止テーブルを取得する。すなわち、停止テーブル選択手段122が、入賞図柄停止テーブルを選択し決定する。前記ステップ301において、遊技状態が特定条件に該当しないと判断した場合には、次のステップ303に進む。」(段落【0093】)
「ステップ303において、入賞図柄停止テーブルと、ハズレ停止テーブルとの抽選を行う。そして、次のステップ304に進む。ステップ304において、抽選結果がハズレかどうか判断する。ハズレでない場合には、入賞図柄停止テーブルを取得する。すなわち、停止テーブル選択手段122が、入賞図柄停止テーブルを選択し決定する。」(段落【0094】)
「前記ステップ300において判定手段114の評価が入賞でない場合、及び前記ステップ304において、抽選結果がハズレの場合には、ハズレ停止テーブルを取得する。すなわち、停止テーブル選択手段122が、ハズレ停止テーブルを選択し決定する。このようにして停止テーブル121の取得がなされた後、ストップスイッチ50の操作により、取得された停止テーブル121に従ってリールの回転停止処理が行われる。」(段落【0095】)
「(停止テーブル選択手段122の他の実施の形態)ここで、遊技状態が特定条件に該当する場合の停止テーブル121の選択については、上述してきたように、無条件で入賞図柄停止テーブル又はハズレ停止テーブルを選択するものとしてもよいが、特定条件該当の有無により停止テーブル抽選の抽選確率を変更するようにすることもできる。すなわち、停止テーブル選択手段122は、遊技状態が特定条件に該当する場合には、入賞図柄停止テーブル(あるいはハズレ停止テーブル)の当選確率が高い抽選テーブルを用いて停止テーブルの抽選を行い、特定条件に該当しない場合には入賞図柄停止テーブル(あるいはハズレ停止テーブル)の当選確率の低い抽選テーブルを用いて抽選を行うものである。このようにすることにより、特定条件該当時に当たり期間(あるいはハズレ期間)を作りだすこともできる。」(段落【0096】)
「この、停止テーブル121の取得について、図6に示すフローに基づき説明する。ステップ400において、停止テーブル選択手段122が、前記判定手段114の評価が入賞かどうか判断する。そして、入賞でない場合には、ハズレ停止テーブルを取得する。すなわち、停止テーブル選択手段122が、ハズレ停止テーブルを選択し決定する。一方、入賞の場合には、次のステップ401に進む。」(段落【0097】)
「ステップ401において、遊技状態が特定条件に該当するか否かを判断する。遊技状態が特定条件に該当する場合には、次のステップ402に進む。ステップ402において、入賞図柄停止テーブルと、ハズレ停止テーブルとの抽選を行う。この抽選は、例えば、入賞図柄停止テーブルが90パーセントの確率、ハズレ停止テーブルが10パーセントの確率で抽選されるような抽選テーブルを用いて行い、入賞図柄停止テーブルが選択される確率が高くなるようになっている。そして、次のステップ403に進む。」(段落【0098】)
「ステップ403において、抽選結果がハズレかどうか判断する。ハズレの場合には、ハズレ停止テーブルを取得する。すなわち、停止テーブル選択手段122が、ハズレ停止テーブルを選択し決定する。一方、ハズレでない場合には、入賞図柄停止テーブルを取得する。前記ステップ401において、遊技状態が特定条件に該当しない場合には、次のステップ404に進む。」(段落【0099】)
「ステップ404において、入賞図柄停止テーブルと、ハズレ停止テーブルとの抽選を行う。この抽選は、例えば、入賞図柄停止テーブルが10パーセントの確率、ハズレ停止テーブルが90パーセントの確率で抽選されるような抽選テーブルを用いて行い、ハズレ停止テーブルが選択される確率が高くなるようになっている。そして、次のステップ405に進む。」(段落【0100】)
「ステップ405において、抽選結果がハズレかどうか判断する。ハズレの場合には、ハズレ停止テーブルを取得する。すなわち、停止テーブル選択手段122が、ハズレ停止テーブルを選択し決定する。一方、ハズレでない場合には、入賞図柄停止テーブルを取得する。」(段落【0101】)

引用文献1の図6(段落【0097】-【0101】)を参照すれば、入賞抽選処理の結果が入賞であるか否かを判断した上で、入賞であった場合に、次のステップで特定条件に該当するか否かを判断し、さらに、特定条件に該当するか否かに応じて、さらに「停止テーブルの抽選」を行っている。
ここで図6の例における「停止テーブルの抽選」について、実施例では90%の確率で選択(特定条件に該当する場合の入賞図柄停止テーブルの選択、及び特定条件に該当しない場合のハズレ停止テーブルの選択)するように抽選を行っているが、段落【0098】、【0100】に「例えば」とあるように、選択確率をどの程度とするかは適宜設計できることであり、また、段落【0073】には「無条件で入賞図柄停止テーブルを選択」する例や段落【0074】には「無条件でハズレ停止テーブルを選択」する例も記載されているから、引用発明の認定にあたっては「90%の確率」という限定は省いて認定する。
さらに、図6の例における「入賞であった場合」について、ここで入賞について具体的な記載はないが、段落【0072】には「入賞の抽選結果が所定の入賞であった場合には…入賞図柄停止テーブルとハズレ停止テーブルとを抽選により選択し」という記載もあり、また図6の例で「全ての入賞」について一律に停止テーブルを選択することを意図しているとも認められないから、ここで「入賞であった場合」については段落【0072】に記載されている「所定の入賞であった場合」を採用することとする。
また、図6の例における「特定条件」とは、段落【0073】-【0075】における「遊技状態が特定の条件を満たしている場合」における「特定の条件」のことを意味すると認められるが、段落【0075】には「「遊技状態が特定の条件を満たしている場合」としては、以下のような場合とすることができる。」とした上で、段落【0080】には「(5)抽選により決定する。遊技中に抽選を行い、抽選に当選したことを「特定の条件」とするものである。」とあるから、この例に基づけば、特定条件か否かは遊技中に行う抽選によって決定されることとなる。
以上に基づき、引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「外周面には、複数個(例えば21個)の図柄61が表示されている三個の回転リール40と、メダルの投入を条件に操作することによって、三個の回転リール40の回転を開始させるスタートスイッチ30と、スタートスイッチ30が操作されることにより、抽選処理を行い、その抽選結果としてハズレの場合といずれかの入賞となる場合がある入賞抽選手段110と、操作によって前記三個の回転リール40の回転を停止させる三個のストップスイッチ50と、を備え、
前記抽選結果がいずれかの入賞となった場合、その入賞に対応した入賞フラグが成立し、いずれかの入賞フラグが成立中に、対応する入賞図柄61を有効入賞ライン上に揃えることができるか否かは、ストップスイッチ50の操作タイミングによるものであって、入賞が当選している場合には、その移動可能なコマ数の範囲内においてストップスイッチ50が操作されれば、その図柄を引き込んで回転リール40を停止させる遊技機であって、
停止テーブル121として、一定確率で入賞図柄を引き込んで停止させる入賞図柄停止テーブルと、入賞図柄を蹴飛ばして停止させるハズレ停止テーブルとを備え、ハズレ停止テーブルで停止制御を行うと、入賞図柄が所定位置に停止することは全くないのに比べ、入賞図柄停止テーブルで停止制御を行うと、入賞図柄を引き込み可能なコマ数の範囲内でストップスイッチ50を操作することにより、一定の確率で入賞図柄を所定位置に停止させることが可能であり、
入賞の抽選結果が所定の入賞であった場合に、遊技状態が特定条件に該当するか否かを遊技中に行う抽選により決定し、特定条件に該当する場合には、入賞図柄停止テーブルを選択し、特定条件に該当しない場合には、ハズレ停止テーブルを選択する停止テーブル選択手段122と、を備えた遊技機。」

4.対比

本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明における「外周面には、複数個(例えば21個)の図柄61が表示されている三個の回転リール40」とは、本願補正発明における「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リール」に相当する。
引用発明における「メダルの投入を条件に操作することによって、三個の回転リール40の回転を開始させるスタートスイッチ30」とは、本願補正発明における「メダルの投入後に操作されることによって前記回転リールの回転動作を開始させるスタートスイッチ」に相当する。
引用発明における「スタートスイッチ30が操作されることにより、抽選処理を行い、その抽選結果としてハズレの場合といずれかの入賞となる場合がある入賞抽選手段110」とは、本願補正発明における「このスタートスイッチへの操作により所定の確率でハズレ及び複数の当選役のいずれかを抽選によって決定する当選役抽選手段」に相当する。
引用発明における「操作によって前記三個の回転リール40の回転を停止させる三個のストップスイッチ50」とは、本願補正発明における「前記複数の回転リールを停止させるストップスイッチ」に相当する。
引用発明における「移動可能なコマ数の範囲内」とは、その後に「その図柄を引き込んで」という記載もあるから、本願補正発明における「引込み可能な範囲内」に相当する。また、引用発明には「対応する入賞図柄61を有効入賞ライン上に揃えることができるか否か」との記載もあるから、引用発明の「その図柄を引き込んで回転リール40を停止させる」とは、本願補正発明における「所定の入賞有効ライン上」に停止させるものであることは明らかである。よって、引用発明における「前記抽選結果がいずれかの入賞となった場合、その入賞に対応した入賞フラグが成立し、いずれかの入賞フラグが成立中に、対応する入賞図柄61を有効入賞ライン上に揃えることができるか否かは、ストップスイッチ50の操作タイミングによるものであって、入賞が当選している場合には、その移動可能なコマ数の範囲内においてストップスイッチ50が操作されれば、その図柄を引き込んで回転リール40を停止させる」とは、本願補正発明における「前記当選役抽選手段による抽選の結果、前記複数の当選役のいずれかに当選した場合には、この当選役に対応した図柄が引き込み可能な範囲内にあるときに、遊技者がストップスイッチの操作を行った場合には、所定の入賞有効ライン上で前記当選役に対応する図柄を停止させる引込み制御を行う」という点に相当するものである。

さらに、引用発明においては「停止テーブル121として、一定確率で入賞図柄を引き込んで停止させる入賞図柄停止テーブルと、入賞図柄を蹴飛ばして停止させるハズレ停止テーブルとを備え、ハズレ停止テーブルで停止制御を行うと、入賞図柄が所定位置に停止することは全くないのに比べ、入賞図柄停止テーブルで停止制御を行うと、入賞図柄を引き込み可能なコマ数の範囲内でストップスイッチ50を操作することにより、一定の確率で入賞図柄を所定位置に停止させることが可能であり」とあるから、引用発明における「入賞図柄停止テーブル」での停止制御が、本願補正発明における「前記引き込み制御」であり、そして引用発明における「ハズレ停止テーブル」での停止制御は、本願補正発明における「前記引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があっても、この図柄を前記入賞有効ラインに停止させない蹴飛ばし制御」に相当する。
引用発明における「入賞の抽選結果が所定の入賞であった場合」とは、引用発明においても「いずれかの入賞」とあり、入賞は複数備えられているものであって、また引用発明においても入賞抽選は「スタートスイッチ30が操作されることにより、抽選処理を行」うものであるから、本願補正発明における「前記スタートスイッチへの操作による前記当選役抽選手段の抽選の結果、前記複数の当選役のうち、特定の当選役に当選した場合」に相当するものである。
本願補正発明は「前記引き込み制御が有効となる操作タイミング押し用フラグのオン、及び前記引き込み制御が無効となる操作タイミング押し用フラグのオフを所定の時間毎に切り替える操作タイミング決定手段」を備えた上で、「…の操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断」して、「前記操作タイミング押し用フラグがオン」又は「前記操作タイミング押し用フラグがオフ」に応じてリールの停止制御を選択しているものである。これに対して、引用発明においても、「遊技状態が特定条件に該当するか否かを遊技中に行う抽選により決定」し、「特定条件に該当する場合」又は「特定条件に該当しない場合」に応じて停止テーブルを選択しているから、本願補正発明における「…の操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断」する点と、引用発明の「遊技状態が特定条件に該当するか否か」の判断は、「所定の状態であるか否かを判断」する点で共通するものである。そして、「所定の状態であると判断した場合」又は「所定の状態でないと判断した場合」に応じてリール制御(停止テーブル)を選択している点でも、両者は共通するものである。さらに、引用発明が、上記判断や上記選択に関して、その手段を備えることは当然であるから、上記判断にかかる「状態判断手段」を備える点、及び上記選択にかかる「制御手段」を備える点でも両者は共通している。

したがって、引用発明と本願補正発明は、
「周囲に複数の図柄を表示した複数の回転リールと、メダルの投入後に操作されることによって前記回転リールの回転動作を開始させるスタートスイッチと、このスタートスイッチへの操作により所定の確率でハズレ及び複数の当選役のいずれかを抽選によって決定する当選役抽選手段と、前記複数の回転リールを停止させるストップスイッチと、を備え、前記当選役抽選手段による抽選の結果、前記複数の当選役のいずれかに当選した場合には、この当選役に対応した図柄が引き込み可能な範囲内にあるときに、遊技者がストップスイッチの操作を行った場合には、所定の入賞有効ライン上で前記当選役に対応する図柄を停止させる引込み制御を行う遊技機であって、
前記スタートスイッチへの操作による前記当選役抽選手段の抽選の結果、前記複数の当選役のうち、特定の当選役に当選した場合に、所定の状態であるか否かを判断する状態判断手段と、
前記状態判断手段が所定の状態であると判断した場合には、引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があれば前記引き込み制御を前記ストップスイッチを操作したことに応答して行い、前記状態判断手段が所定の状態でないと判断した場合には、前記引込み可能な範囲内に前記特定の当選役に対応する図柄があっても、この図柄を前記入賞有効ラインに停止させない蹴飛ばし制御を前記ストップスイッチを操作したことに応答して行う制御手段と、を備えた遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
「所定の状態であるか否かを判断する状態判断手段」について、本願補正発明は「前記引き込み制御が有効となる操作タイミング押し用フラグのオン、及び前記引き込み制御が無効となる操作タイミング押し用フラグのオフを所定の時間毎に切り替える操作タイミング決定手段」をさらに設け、「前記スタートスイッチへの操作によって前記回転リールが回転している状態で、遊技者によって行われた、貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断する」状態判断手段であるのに対して、引用発明は「遊技状態が特定条件に該当するか否か」を「遊技中に行う抽選により決定」しており、その余の構成はなく、また、「所定の状態であると判断した場合」又は「所定の状態でないと判断した場合」について、本願補正発明は「前記操作タイミング押し用フラグがオンであると判断した場合」又は「前記操作タイミング押し用フラグがオフであると判断した場合」であるのに対して、引用発明は「特定条件に該当する場合」又は「特定条件に該当しない場合」である点。

5.相違点の判断

上記相違点について検討する。

新たに引用する特開平10-277220号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】…図柄が揃って大当りになるパチンコ機においては、図柄の出現率が予め定められており、遊技者による技術介入の余地が無いに等しい。…遊技機が提示する課題の達成率に基づいて大当りの確率を変化させることによりゲーム性や期待感を向上させると共に、公平な遊技が可能な遊技機を提供することを目的とする。」(段落【0003】)
「第1停止図柄と第2停止図柄とが一致したリーチ状態ならば、遊技者に課題を提示する。即ち、例えば、可変表示装置31の液晶表示ユニット321を利用して、「タッチボタンを指定時間内に10回押せ」というようなメッセージを表示するのである。」(段落【0016】)
「そこで、遊技者は、上記メッセージによって与えられた課題に従ってタッチボタン172を操作する。」(段落【0017】)
「次に、制御系が形成する判定手段は、指定時間内に何回タッチボタン172が押されたかを判定する。即ち、時間内にタッチボタン172が10回押されて課題を達成できたならば、大当りになる確率が高い乱数1から可変表示装置31で表示する第3停止図柄を選択する。このとき、報知手段33を作動させて、課題を達成できたことを報知する。」(段落【0018】)
「一方、時間内にタッチボタンが9回以下しか押されていない場合は、課題を達成できなかったとして、大当りになる確率の低い乱数2から第3停止図柄を選択する。」(段落【0019】)
「上記のようにして、大当りになる確率の異なる乱数から選択した第3停止図柄と、前記リーチ状態になった第1及び第2停止図柄とを比較して、一致するか否かを判定する。即ち、大当りの判定を行う。」(段落【0020】)
「以上本発明を図示した実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限り適宜に実施できる。例えば、…また、課題としては、表示装置が表示するタイミングやスピーカから発する効果音に合せてタッチボタンを押させたり…種々多様な課題を設定できる。」(段落【0031】)
「【発明の効果】…課せられた課題を遊技者がどれだけ達成したかによって大当りになる確率が変化するようにして、大当りになる過程で遊技者に積極的にゲームに参加させて大当りの決定に関与させているので、ゲーム性が著しく向上すると共に、大当りへの期待感や達成感、或いは自らの技術介入による喜びを得ることができる。」(段落【0032】)

上記の段落【0016】で例示された遊技者への課題に代えて、段落【0031】における「表示装置が表示するタイミングやスピーカから発する効果音に合せてタッチボタンを押させ」るという遊技者への課題を適用すれば、引用文献2には、
「第1停止図柄と第2停止図柄とが一致したリーチ状態ならば、遊技者に、表示装置が表示するタイミングやスピーカから発する効果音に合せてタッチボタンを押せ、という課題を提示し、
遊技者は、与えられた課題に従ってタッチボタンを操作し、
制御系が形成する判定手段は、課題を達成できた場合は、大当りになる確率が高い乱数1から第3停止図柄を選択し、課題を達成できなかった場合は、大当りになる確率の低い乱数2から第3停止図柄を選択する。」
という技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものである。

引用発明は、「所定の入賞であった場合」という特定の条件の場合に、上記抽選の結果、遊技者に有利な停止テーブルと不利な停止テーブルとを選択しているが、引用文献2記載の技術も、「リーチ状態」という特定の条件の場合に、「遊技機が提示する課題が達成できたか否か」によって、遊技者にとって有利な大当り確率状態と不利な大当り確率状態とを選択しているものであるから、両者は、特定の条件下における判定の結果に応じて遊技者にとって有利な状態と不利な状態とを選択するという点で共通しているものである。
引用発明における「遊技状態が特定の条件を満たしているか否か」の判断は、遊技中における抽選で行っているが、そのような抽選による判定は引用文献2において解決しようとする課題である「遊技者による技術介入」が無いという点に当てはまるものであって、また、引用文献2記載の技術は大当り判定におけるものであるが、特定の判定結果に応じて遊技者にとって有利・不利となり得るというものであれば、引用文献2記載の技術を採用することによって「技術介入性を持たせ遊技者に積極的にゲームに参加させる」という引用文献2に記載の目的は達成できるものである。よって、引用発明における「遊技状態が特定の条件を満たしているか否か」という判定について、引用発明における「遊技中に行う抽選」に代えて、引用文献2記載の技術における「表示装置が表示するタイミングやスピーカから発する効果音に合せてタッチボタンを押せ、という課題を提示し、遊技者は、与えられた課題に従ってタッチボタンを操作し、判定手段は、課題を達成できたか否かの判定を行う」という点を適用して、その判定の結果に基づいて停止テーブルを選択するようにすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到できたことである。

また、引用文献2記載の技術における遊技者への課題である「表示装置が表示するタイミングやスピーカから発する効果音に合せてタッチボタンを押せ」とは、遊技者のタッチボタンの操作がそのタイミングに合致するか否かを判断するものと認められるから、当該表示(又は音)が表示される(発せられる)タイミングは、本願補正発明における「操作タイミング押し用フラグのオン」に相当し、また当該表示(又は音)が表示されない(発せられない)タイミングは、「操作タイミング押し用フラグのオフ」に相当し、引用文献2記載の技術も両者を切り替えているものである。そして、当該表示(又は音)がどのようなタイミングで表示される(発せられる)かは不明であるが、操作者が操作タイミングをはかる以上、予測可能性をもって表示する(音を発する)ことは当然想到できることであるから、その表示(又は音)を「所定の時間毎」とすることも当業者が容易に設計できたことである。
また、引用文献2はタッチボタンを使用しているが、遊技中(ゲーム中)においてベットスイッチを所定の操作手段として使用する例も、特開2002-85637号公報(「たたケタタけ」ボタン、段落【0050】-【0053】参照)や特開2001-187182号公報(段落【0118】、【0145】、【0146】参照)にあるように本件出願前において周知技術に過ぎない。

よって、本願補正発明の相違点にかかる構成とすることは、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点の判断のむすび]

したがって、上記相違点にかかる本願補正発明の構成とすることは、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づき当業者が容易に想到できたことであるから、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものである。

6.補正却下の決定におけるむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年2月2日付の手続補正におけるものであって、上記第2.[理由]1.において本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.当審拒絶理由

平成21年2月13日付の当審拒絶理由の概要は、平成21年2月2日付の手続補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

3.判断

本願の請求項1には、「前記スタートスイッチへの操作によって前記回転リールが回転している状態で、遊技者によって行われた前記スタートスイッチ、前記ストップスイッチ及び貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチのいずれか1つの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断する状態判断手段」との記載(以下「検討記載事項」という。)がある。ここで、「いずれか1つの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断」とは、スタートスイッチ操作、ストップスイッチ操作及びベットスイッチ操作のすべてが判断対象であり、これらのうちの1つでも回転リールが回転している状態で操作された場合に判断を行うことを意味するものである。

これは、平成21年2月2日付の手続補正と同日付で提出された意見書においても、本願の請求項1における「前記スタートスイッチへの操作によって前記回転リールが回転している状態で、遊技者によって行われた前記スタートスイッチ、前記ストップスイッチ及び貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチのいずれか1つの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断する状態判断手段と、」という構成を発明特定事項(ウ)とした上で、当該構成について、
「(B)回転中はその機能を失っているベットスイッチおよびスタートスイッチ(押下してもベットや回転をしない。)と、その機能を失っていないストップスイッチ(押下したら回転リールが停止する。)を選択スイッチとして適用した点(発明特定事項(ウ))

また、上記(B)によって、目押しに自信のない遊技者であれば、押下しても回転リールの挙動に影響を与えないベットスイッチやスタートスイッチをタイミング良く押下した後に、失敗しないようにゆっくり目押しを行うようにすることができる一方で、自信のある遊技者であれば引き込み範囲内および引き込み制御が両方とも有効となるタイミングでストップスイッチを押下するようにして、自己の技量の高さを確認するというように、遊技者のレベルに応じた選択の途を与えることができるという効果を奏します。」
と主張していることからも裏付けられる。

しかし、当初明細書等には「更に、操作タイミング押しの操作対象部をストップスイッチに限ることはなく、ベットボタン、スタートスイッチなど通常の遊技機の入力対象となる入力部にしてもよい。」(段落【0078】)との記載があるが、これは操作タイミング押しの操作対象部を、実施例の「ストップスイッチ」から「ベットボタン」又は「スタートスイッチ」に変更してもよいことを記載したにすぎず、「スタートスイッチ、前記ストップスイッチ及び貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチのいずれか1つの操作が、前記操作タイミング押し用フラグがオン及びオフのいずれかの状態のときに行われていたかを判断する」ことを記載したものではない。そして、当初明細書等の他の箇所においても、上記検討記載事項について示唆する記載もない。

そして、平成21年2月2日付の手続補正前(平成18年9月27日付の手続補正)においては、「遊技者が所定の操作を行った操作タイミングが、前記第1及び第2の操作タイミングのどちらと合っているかを判断する状態判断手段」(【請求項1】)及び「前記所定の操作は、前記ストップスイッチを操作すること、前記回転リールの回転を開始させるスタートスイッチを操作すること及び、貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチを操作することのいずれか1つである」(【請求項2】)と記載があったものの、上記請求項2は、上記請求項1の「所定の操作」に対して、「前記ストップスイッチを操作すること」、「前記回転リールの回転を開始させるスタートスイッチを操作すること」及び「貯蓄されたメダルをメダル投入に代えるベットスイッチを操作すること」のいずれか1つを適用することを意味すると解されるものであって、3つの操作のいずれか1つでも操作された場合に判断を行うという意味とはならない。これは、上記請求項2において、「前記所定の操作は…」における「操作」に対応するものが、「ストップスイッチを操作」、「…スタートスイッチを操作」、「…ベットスイッチを操作」の各操作であると解されるからであり、上記請求項2が「前記所定の操作は、…ストップスイッチ、…スタートスイッチ及び…ベットスイッチのいずれか1つの操作である」とは記載されていなかったことにも注意すべきである。なお、上記請求項2の記載は当初明細書等の段落【0078】に記載のあるものであり、当初明細書等の開示の範囲である。

以上によれば、上記検討記載事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではなく、当初明細書等の記載によって開示された技術的事項に対し、新たな技術的事項を導入するものである。

よって、本願発明は、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものである。

第4.むすび

以上のとおり、本件補正は却下され、そして、本願発明は特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の本願の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-29 
結審通知日 2009-06-03 
審決日 2009-06-16 
出願番号 特願2002-242980(P2002-242980)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 55- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
池谷 香次郎
発明の名称 遊技機  
代理人 小林 和憲  

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