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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01K
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A01K
管理番号 1201319
審判番号 不服2007-30159  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-06 
確定日 2009-07-31 
事件の表示 特願2002-339289「人工魚礁ブロックおよび人工魚礁」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-166655〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月22日の出願であって、平成19年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月6日付けで手続補正がなされたものである。
その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成20年12月22日付けで審尋がなされ、平成21年2月5日に当該審尋に対する回答書が提出された。

2.平成19年12月6日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年12月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1?3は、補正前の以下のもの
「【請求項1】
海底に設置して魚礁を構成する人工魚礁ブロックにおいて、
普通コンクリートで形成された外周部と、
前記外周部内に設けられ、産業廃棄物である貝殻とセメントや石膏などの水硬性物質とに、水を主体とした液体を加えて混練した生配合物を硬化させて得られる貝殻ポーラスコンクリート成形体と、を具備し、
前記貝殻ポーラスコンクリート成形体は、前記外周部内に設けられた際に上面と下面との間で通水性を有するように構成されていることを特徴とする人工魚礁ブロック。
【請求項2】
前記貝殻ポーラスコンクリート成形体は、産業廃棄物である貝殻と砂などの細骨材またはこれに対してさらに砂利その他の粗骨材を加えた構成物と、セメントや石膏などの水硬性物質とに水を主体とした液体を加えて混練した生配合物を硬化させて得られることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁ブロック。
【請求項3】
前記貝殻ポーラスコンクリート成形体は、空隙率が30?60%であることを特徴とする請求項1または2に記載の人工魚礁ブロック。」
から、次のとおりのものに補正された。
「【請求項1】
普通コンクリートで形成された外周部と、前記外周部内に設けられ、産業廃棄物である貝殻とセメントや石膏などの水硬性物質とに水を主体とした液体を加えて混練した生配合物を硬化させて得られ、前記外周部内に設けられた際に上面と下面との間で通水性を有するように構成される貝殻ポーラスコンクリート成形体と、を具備し、海底に設置して魚礁を構成する人工魚礁ブロックにおいて、
前記貝殻の前記水硬性物質に対する重量比を100%としたとき、前記水を主体とした液体の添加量は、前記水硬性物質に対する重量比で10?20%の範囲であることを特徴とする人工魚礁ブロック。
【請求項2】
前記貝殻ポーラスコンクリート成形体に、更に、砂利などの粗骨材を前記水硬性物質に対する重量比で30%添加したとき、前記水を主体とした液体の添加量は、前記水硬性物質に対する重量比で15?30%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の人工魚礁ブロック。
【請求項3】
前記貝殻ポーラスコンクリート成形体に、更に、砂などの細骨材を前記水硬性物質に対する重量比で100%添加したとき、前記水を主体とした液体の添加量は、前記水硬性物質に対する重量比で20?35%の範囲で添加されることを特徴とする請求項2に記載の人工魚礁ブロック。」

(2)判断
上記請求項2に係る補正について検討する。当該補正により、補正前は貝殻ポーラスコンクリート成形体が「細骨材」または「細骨材と粗骨材」をその構成物としていた(即ち「細骨材」は必ず含む)のに対して、補正後は、同成形体が細骨材を含まず「粗骨材」のみをその構成物とするものも包含されるように補正された。
したがって、当該補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、当該補正が請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでないことは明らかである。
以上のとおりであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる目的の何れの事項にも該当しないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

3.本願発明について
平成19年12月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月13日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(なお、平成19年8月31日付けの手続き補正は、平成19年9月27日付けで却下されている。)
「海底に設置して魚礁を構成する人工魚礁ブロックにおいて、
普通コンクリートで形成された外周部と、
前記外周部内に設けられ、産業廃棄物である貝殻とセメントや石膏などの水硬性物質とに、水を主体とした液体を加えて混練した生配合物を硬化させて得られる貝殻ポーラスコンクリート成形体と、を具備し、
前記貝殻ポーラスコンクリート成形体は、前記外周部内に設けられた際に上面と下面との間で通水性を有するように構成されていることを特徴とする人工魚礁ブロック。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-197426号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
イ.「【請求項1】 骨材粒径の大きさと、セメントや混和材料の配合を調整することで、任意の大きさの空隙径および崩壊速度を制御できるようにした板状ポーラスコンクリート部材を、海藻類等の着生基質材として、平板状や枠形状とした単体の普通コンクリートブロック、または段積みして形成された普通コンクリートブロック体、あるいは鋼材を枠形状に組んで構成された鋼製枠体、もしくは鋼材とコンクリートとの複合体などの上面や傾斜面に、1個から複数個を一体成形したり、着脱可能なブロックとして一体的に取り付けたことを特徴とする海藻群落形成体。
・・・
【請求項3】 ポーラスコンクリート着生基質部材に、酸化鉄の皮膜を形成したり、骨材とほぼ同じ粒径の鉄片、または鉄ファイバーやスラグ、あるいはカキ、ホタテ、サザエなどの貝殻、もしくは栄養塩を混入したりして形成したことを特徴とする請求項1?2の何れか1つに記載した海藻群落形成体。」(特許請求の範囲)
ロ.「本発明は海藻群落形成体およびそれを用いて形成された海藻礁に係り、海面下における各帯域、特に潮下帯において有効な海藻類の着生や生育を早期に図り、アワビ、サザエやウニなどの植食動物を幼稚仔から育成して成長体まで成長させて、世代交替のサイクルを順調に図ることのできる、各世代の生育場に適応した小型から大型の海藻群落を安価に造成するとともに、海藻の生長にともなって、その周囲のまだ海藻が着生していない岩場や、設置済みまたは同時に設置する単なるコンクリートブロック群に、母藻となって生殖細胞を供給して、周辺に徐々に海藻群落を広げて形成していくことで、広い海域に各種水生生物の棲息場や産卵場も兼ねた海藻礁を提供しようとするものである。」(【発明の属する技術分野】)
ハ.「上記したような本発明によるものの具体的な実施態様を添付図面に示すものについて説明すると、本発明においては図1に示すように、平板状とした普通コンクリートブロック2を製造する際に、表面をフラット形状として予め作成しておいたポーラスコンクリート着生基質部材1を埋設して、一体に形成されるものである。あるいは図2に示すように、平板状とした普通コンクリートブロック2の上面に形成した嵌凹部4に、該ブロック2の表面とほぼ同一高さになるように、フラット形状としたポーラスコンクリート着生基質部材1を嵌め込み、ポーラス部の周囲および底面に、モルタルもしくは接着剤5を充填して、一体的に形成するものである。このように本発明は、海藻類の生殖細胞や遊走子を捕捉しやすく、かつ着生しやすいポーラスコンクリート着生基質部材1を予め作成しておき、その後、耐久性の高い普通コンクリート部を製造する際に埋設して一体、もしくは製造後に接着剤などで一体的とすることによって、2度打ちする手間を省いたものであり、特に一体成形する方法は、型枠リースによって現場でコンクリートを打設して製作する方法に適している。」(【0014】)
ニ.「また、海藻は陸上の植物とは異なり、根は定着するための仮根でしかなく、海藻の種類や大きさにより仮根の大きさも異なるので、目的とする海藻を優先して生育させるためには、仮根の大きさに合わせてポーラスコンクリートの骨材粒径を変えてやらなければならない。さらに、大型の海藻ほど波浪を受ける面積が大きく、剥がそうとする力に対して着生基質部材への仮根の定着力はより大きな力が必要となるので、着生基質部材が崩壊しないように強度をアップしなければならない。これには、骨材を結合しているセメントや混和材料の配合、およびバインダーの水セメント比、空隙率などを調整して、骨材同士の結合力を変えることで、小型から大型海藻までの生育を制御することができる。」(【0016】)
ホ.「近年のリサイクルの高まりから、骨材の代替として、スラグやフライアッシュを混和材料として混入することで、セメント量を減らして目的の強度を得ることもできるし、漁業生産で放置されるカキ、アワビ、サザエ等の貝殻を骨材として、ポーラスコンクリートの一部あるいは全部に使用することで、廃棄物を再度海に帰して有効に利用することができる。」(【0017】)

これらの記載によれば、引用例1には、
「海底に設置して海藻礁を構成する海草群落形成体において、
普通コンクリートで形成された枠形状の普通コンクリートブロックと、
前記普通コンクリートブロックに取り付けられ、廃棄物である貝殻に水及びセメントを加えた配合物から構成した板状ポーラスコンクリート部材と、を具備した海草群落形成体。」
との発明(以下、「引用例1に記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-209946号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
ヘ.「本発明に係る護岸ブロックの生産方法の要旨は、普通コンクリートと透水性コンクリートとの2種類のコンクリートを一体化させてなる護岸ブロックの生産方法であって、少なくとも当該両コンクリートの間に椰子繊維マットを介在させて形成することである。」(【0007】)
ト.「本発明に係る護岸ブロックによれば、外側に普通コンクリートが配設され内側に透水性コンクリートが配設されてなる護岸ブロックであるので、護岸用若しくは根固め用のブロックとしての強度を有するとともに、その内側の透水性コンクリートにより水生植物等の植物が育成されたり、自生することが出来るものなので、河川の緑化に適したものとなる。また、この護岸ブロックの設置場所も、適宜数の護岸ブロックを配設すればよいので、護岸工事の自由度が大きくなる。」(【0009】)
チ.「次に、本発明に係る護岸ブロックとその生産方法について図面を参照して説明する。図1乃至図2は、本発明に係る護岸ブロック1の上方向と下方向からの斜視図である。 護岸ブロック1は、その本体略中央部に設けられた孔(貫通している場合と貫通していない場合の両方を含む)を有する普通コンクリートでなるブロック本体2と、該ブロック本体2の孔に透水性コンクリートが打設されてなる透水性コンクリート体3と、少なくとも前記ブロック本体2と透水性コンクリート体3との間に介在された椰子繊維マット4とから構成されている。」(【0011】?【0012】)

(3)対比
そこで、本願発明と引用例1に記載の発明とを比較すると、引用例1に記載の発明の「海藻礁」、「廃棄物」、「配合物」、「セメント」、「板状ポーラスコンクリート部材」及び「海草群落形成体」は、それぞれ本願発明の「漁礁」、「産業廃棄物」、「生配合物」、「水硬性物質」、「貝殻ポーラスコンクリート成形体」及び「人工魚礁ブロック」に相当する。
したがって両者は、
「海底に設置して魚礁を構成する人工魚礁ブロックにおいて、
普通コンクリートで形成された部材と、
前記部材に取り付けられ、産業廃棄物である貝殻とセメントや石膏などの水硬性物質とに、液体を加えて混練した生配合物を硬化させて得られる貝殻ポーラスコンクリート成形体と、を具備した人工魚礁ブロック。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]水硬性物質に、本願発明では水を主体とした液体を加えているのに対して、引用例1に記載の発明では水を加えている点。

[相違点2]本願発明においては、普通コンクリートで形成された部材が貝殻ポーラスコンクリート成形体の外周部とされ、貝殻ポーラスコンクリート成形体が該外周部内に設けられるとともに上面と下面との間で通水性を有するように構成されているのに対して、引用例1に記載の発明の普通コンクリートで形成された部材及び貝殻ポーラスコンクリート成形体はそのように構成されていない点。

(4)判断
[相違点1]について
本願明細書及び図面に「水を主体とした液体」の水以外の液体についてなんら記載されていないこと、及び「水硬性物質」に液体を加えることの目的が物質を硬化させるためであろうことを考慮すると、当該相違点に実質的な差異はない。
[相違点2]について
引用例2には、透水性コンクリートを水生植物の着床部として用いたブロックであって、普通コンクリートで成型した外周部内に透水性コンクリートをを設け、該透水性コンクリートの上面と下面との間で通水性を有するように構成された水生植物育成のためのブロック(以下「引用例2に記載の発明」という。)が記載されている。
引用例1に記載の発明も引用例2に記載の発明も、ともに水生植物の育成を目的とするものであること、引用例1に記載の発明の貝殻ポーラスコンクリート成形体が透水性コンクリートであること、及び水生植物の育成に通水性の確保が重要なことはよく知られた事項であること(上記3.(1)ト.参照。)を考慮すると、引用例1に記載の発明の貝殻ポーラスコンクリート成形体に引用例2に記載の発明を適用することにより、普通コンクリートで形成された外周部内に貝殻ポーラスコンクリート成形体が設けられるとともに該ポーラスコンクリートの上面と下面との間で通水性を有するように構成する点に格別の困難性はない。
したがって、当該相違点に係る本願発明の特定事項は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の発明に基づき、当業者が容易に想到しえたものである。

また、本願発明の作用効果も、上記各発明から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、前記審尋に対して提出された回答書に記載されている「請求項2を削除する」という補正(案)を参酌しても、引用例1の上記イ.及びニ.に記載されているとおり、ポーラスコンクリートを構成する各要素の配合比率はその用途や目的によって適宜調整可能であること、及び請求項1?3(上記2.(1)参照)に記載された各要素の配合比率が、本願明細書及び図面の記載を参酌する限りにおいては、従来周知のもの(たとえば特開2000-41525号公報【0025】参照。)と比較して、格別の技術的意味を有するとはいえないことから、上記判断に変わりはない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-19 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-09 
出願番号 特願2002-339289(P2002-339289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01K)
P 1 8・ 57- Z (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 人工魚礁ブロックおよび人工魚礁  
代理人 橘 哲男  
代理人 橘 哲男  

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