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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1201332
審判番号 不服2006-20634  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-15 
確定日 2009-07-27 
事件の表示 平成10年特許願第180607号「唇および爪用化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月18日出願公開、特開2000- 16912〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年6月26日の出願であり、平成18年8月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月15日に拒絶査定に対する審判請求がされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成18年7月24日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「コウジ酸および/またはその誘導体を有効成分とすることを特徴とする唇および爪用化粧料。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願日前に頒布されたことが明らかな刊行物である、特開昭62-108804号公報(原査定の引用文献2である。以下、「引用例1」という。)及び特開平1-275515号公報(原査定の引用文献1である。以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

引用例1;
(1-a)「コウジ酸及び/又はその塩と下記一般式(1)で表わされる2-ヒドロキシベンゾフェノン化合物の1種または2種以上を含有することを特徴とする化粧料。
一般式(1) (略) 」(特許請求の範囲第1項)
(1-b)「本発明は美白作用や肌荒れ改善作用に優れた化粧料に関するものであり、さらに詳しくは、コウジ酸を安定に配合してなる化粧料おもに美白化粧料に関するものである。」(2頁左上欄2?5行)
(1-c)「前記コウジ酸及びベンゾフェノン化合物Iに加えて水溶性高分子物質を含有せしめた化粧料はさらに好ましい整肌作用を有するものである。これは恐らく、皮膚上に於て、水溶性高分子物質がビヒクルとなり、有効成分であるコウジ酸を効果的に角質層へ移行せしめ、経皮吸収を増大させることによるものと思われる。」(3頁右上欄9?15行)
(1-d)「本発明により提供される化粧料としては、クリーム、乳液、化粧水、パウダー、リップクリーム、リップカラー、アンダーメークアップ、サンケアなど多くのものが挙げられ」(3頁左下欄3?6行)
(1-e)「以上の如く、本発明に適用される化粧料は皮膚に連用することにより、肌のはり、つや、なめらかさ、くすみなどに好ましい効果を発揮し、特に肌のはりを良好に保つこと及び肌のくすみの改善に顕著な効果を有するものである。」(5頁左下欄1?5行)

引用例2;
(2-a)「コウジ酸を含有することを特徴とするメイクアップ化粧料。」(特許請求の範囲)
(2-b)「本発明は、皮膚のがさつきを防止し、しっとり感を与え、しかも化粧くずれを防ぐメイクアップ化粧料に関するものである。」(1頁左欄8?10行)
(2-c)「本発明の有効成分であるコウジ酸は、アスペルギルス属、ペニシリウム属、エスカリキア属、アセトバクター属、グルコノバクタ-属に属する菌の培養により得られた公知の物質である。」(1頁右欄12?15行)
(2-d)「本発明のメイクアップ化粧料の剤型は粉体配合型でパウダー等の粉末状、ファンデーション、アイシャドウ、チークシャドウ等の粉体プレス状、ファンデーション等の粉末-油プレート状、リップスチック等の粉末-油スチック状、乳液状ファンデーション等の粉体-乳化状が挙げられる。」(2頁左上欄6?11行)

3.対比・判断
引用例1の特許請求の範囲第1項に記載された化粧料を引用発明として、本願発明との対比・判断を行う。
摘示事項(1-b)(1-c)の記載によれば、引用発明の化粧料は、美白作用や肌荒れ改善作用に優れるものであって、コウジ酸をその有効成分とするものであるから、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、「コウジ酸を有効成分とする化粧料。」である点で一致し、本願発明が、「唇および爪用化粧料」であるのに対し、引用発明では、使用部位の限定がされていない点で相違するものと認められる。

ここで、本願発明における「唇および爪用化粧料」の意味について検討する。
「唇および爪用化粧料」という記載は、「唇にも爪にも使用できる化粧料」のみを意味するものとも、「唇にも爪にも使用できる化粧料」以外に「唇用化粧料」や「爪用化粧料」も包含するものとも解釈できるものと認められるが、特許請求の範囲の記載からはそのいずれであるかを特定することができない。
そこで、本願明細書の記載をみると、段落【0012】に、「爪表面のざらつきおよびツヤの消失などの損傷を防ぐ目的で、ネイルエナメルやネイルエナメルリムーバーに直接コウジ酸および/またはその誘導体を配合しても良い。」として、唇には適用されない化粧料が記載されており、また、効果試験についても、一つの処方について、唇への効果試験と爪への効果試験の両方を行っているわけではない。さらに、出願当初の請求項2に、「前記局所が、唇または爪である請求項1記載の局所使用用化粧料。」と記載されていたことを勘案すれば、本願発明における「唇および爪用化粧料」とは、「唇にも爪にも使用できる化粧料」のみを意味するものではなく、「唇用化粧料」及び「爪用化粧料」も、本願発明における「唇および爪用化粧料」に包含されるものと認められる。

そうすると、引用例1には、提供される化粧料として、リップクリーム、リップカラーが例示されている(摘示事項(1-d))ことから、引用発明の化粧料を、唇用化粧料とすることは、当業者が容易になし得るものである。
そして、本願発明の効果、すなわち、唇の皮剥けや切れなどの唇の荒れやくすみを防ぎ、かつ、唇に透明感を与えることについても、引用例1に記載されている「肌のはり、つや、なめらかさ、くすみなどに好ましい効果を発揮し、特に肌のはりを良好に保つこと及び肌のくすみの改善に顕著な効果を有する」(摘示事項(1-e))という効果は、「本発明により提供される化粧料として」挙げられている「クリーム、乳液、化粧水、パウダー、リップクリーム、リップカラー、アンダーメークアップ、サンケアなど」(摘示事項(1-d))に及ぶものと考えられるから、唇に対しても、はり、つや、なめらかさ、くすみなどに好ましい効果を奏することが期待できる。また、引用例2にも、引用例1と同様、コウジ酸を有効成分とする化粧料が開示されており、該化粧料は、「皮膚のがさつきを防止し、しっとり感を与え」るものであって(摘示事項(2-a))、唇用化粧料も例示されている(摘示事項(2-d))ことからも、唇に対して、がさつきを防止し、しっとり感を与える効果が、やはり期待できる。
したがって、上記本願発明の効果は当業者が、予想し得る程度のものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-27 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-15 
出願番号 特願平10-180607
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋  
特許庁審判長 内田 淳子
特許庁審判官 弘實 謙二
森田 ひとみ
発明の名称 唇および爪用化粧料  
代理人 庄子 幸男  

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