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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C09B
管理番号 1201338
審判番号 不服2007-7993  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-19 
確定日 2009-07-28 
事件の表示 平成 9年特許願第363244号「有機顔料の表面処理法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月 7日出願公開、特開平10-183003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び特許請求の範囲
本願は、平成9年12月16日(パリ条約による優先権主張1996年12月20日、米国)の出願であって、平成18年11月17日付けで手続補正がされたが、平成18年12月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年3月19日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに平成19年4月18日付けで手続補正がされ、平成19年7月2日付けで手続補正書(方式。審判請求書の手続補正)が提出されたものであって、平成18年11月17日付け及び平成19年4月18日付け手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりである。

【請求項1】
(a)有機顔料を、
(1)有機顔料に対して0.1?100重量%の、1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン、
(2)有機顔料に対して0?100重量%の界面活性剤、そして
(3)有機顔料1重量部に対して5?15重量部の、有機顔料が実質的に不溶である液体、
で処理し、これによって表面処理された有機顔料の液体中懸濁液を形成させ、
(b)この懸濁液を空洞化(cavitating)状態に露呈し、そして
(c)顔料組成物を集める、
ことを含んでなる、顔料組成物の製造法。

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、請求項1に記載された「立体的に混んだ」や「立体的に嵩高な」なる表現では化合物が特定されておらず、不明確であり、(1)におけるアミン、すなわち、「1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン」に含まれる具体的な化合物が不明であるから、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない、という理由を含むものである。

3.当審の判断
本願が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすか否かを判断するに際し、「特許法36条6項2号の解釈」について判示している、知財高裁平成18年(行ケ)第10208号判決を参照する。
同判決は、「特許請求の範囲の記載は,これに基づいて特許出願に係る発明の新規性進歩性等の特許要件が判断され,これに基づいて特許発明の技術的範囲が定められ,これに基づいて特許権の権利範囲が対世的に確定されるなどの特許法の定める種々の機能を持つものである。特許法36条6項2号は,特許請求の範囲がその記載において,特許を受けようとする発明が明確であること,すなわち一の請求項の記載から一の発明を明確に把握することができることを要求しているが,その趣旨は,上記の機能のいずれとも関係する」と判示するとともに、
「特許請求の範囲に記載された化学物質が一定の性質を有することを主要な内容とする発明においては,特許請求の範囲で化学構造の一部分のみを特定し,特定されていない部分は任意の基を意味するという形式の記載は,特定されていない部分が発明の詳細な説明の記載や技術常識を参酌して,当業者が一定の範囲に特定することができるなどの特段の事情がない限り,同じ性質を有しない化学物質や同じ性質を有することが実験等によって確認されていない化学物質までも特許権の権利範囲に含まれてしまう結果となるため,許容されず,結局のところ,特許法36条6項2号の規定に適合するとはいえない。」との判示もしている。

そこで、(1)特許請求の範囲がその記載において、特許を受けようとする発明が明確であるか、(2)本願の特許を受けようとする発明において、特許請求の範囲に記載された化学物質が一定の性質を有することを主要な内容としているか、(3)特定されていない部分が、発明の詳細な説明の記載や技術常識を参酌して、当業者が一定の範囲に特定することができるか、について検討する。

(1)特許請求の範囲がその記載において、特許を受けようとする発明が明確であるか、について
請求項1に記載された「1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン」とは、
「1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置しているアミン」或いは「1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン」と解せられるから、「アミン分子の立体的に混んだ領域」及び「アミン分子の立体的に嵩高な脂肪族基」が特定できれば、請求項1の記載は明確であるといえる。
しかしながら、アミン分子の「立体的に混んだ領域」が具体的にどのような領域であるかについて、また、アミン分子の「立体的に嵩高な脂肪族基」が具体的にどのような脂肪族基であるかについて、学術的に決められているという証拠は提出されておらず、これらの領域或いは脂肪族基が当業者の技術常識であるともいえない。さらに、「立体的に混んだ領域」と「立体的に混んでいない領域」との境界、また、「立体的に嵩高な脂肪族基」と「立体的に嵩高でない脂肪族基」との境界、についても学術的に決められているという証拠は提出されておらず、これらの境界が当業者の技術常識であるともいえない。
そうしてみると、請求項1に記載された「1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン」が具体的にどのような構造のアミンを意味するのか明確に記載されているとはいえず、特許請求の範囲がその記載において、特許を受けようとする発明が明確であるとすることはできない。

(2)本願の特許を受けようとする発明において、特許請求の範囲に記載された化学物質が一定の性質を有することを主要な内容としているか、について
本願明細書の段落0001には、「本発明は、有機顔料を、空洞化状態下に、ある種の立体障害された及び/または嵩高な第1級アミン及び随時分散剤で表面処理することによる、例えばプラスチック及び他の高分子材料への改良された分散性を有する顔料組成物の製造法に関する。」と記載され、同段落0003には、「顔料分散液へのアミンまたはアミン誘導体の使用は公知である。例えば、・・・を開示している。しかしながら、これらの2つの特許は、・・・本発明の決定的な特徴である立体障害された及び/または第1級アミン及び空洞化状態の使用を開示していない。」と記載され、段落0004、0005にも、同様に従来技術の記載に続けて「しかしながら、この特許は立体障害された及び/または第1級アミン及び空洞化状態の使用、即ち本発明の決定的な特徴を開示していない。」、「しかしながら、この特許は有機顔料の、本発明の決定的な特徴である立体障害された及び/または第1級アミンでの処理、即ち本発明の決定的な特徴を開示していない。」と記載され、ここで「または第1級アミン」は「または嵩高な第1級アミン」の誤記と認められるが、いずれにしても、アミン化合物を特定のものとすることは、「本発明の決定的な特徴」としているのである。
そうしてみると、特定のアミン化合物で処理することは本発明の決定的特徴であり、すなわち、本願の特許を受けようとする発明において、特許請求の範囲に記載された化学物質が一定の性質を有することを主要な内容としているといえるから、「本発明の決定的な特徴」であるアミン化合物について、「立体障害」という学術用語は存在するものの、「立体障害」の定性的意味が明らかであったとしても、どのようなアミン化合物まで包含されるものであるのかが明確にされていない以上、発明として明確である、とすることはできない。

(3)特定されていない部分が、発明の詳細な説明の記載や技術常識を参酌して、当業者が一定の範囲に特定することができるか、について
本願明細書の段落0015には、「立体障害された第1級アミン(a)(1)は、1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミンである。」と記載され、この説明からすると、請求項1に記載された「1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン」とは、「立体障害された第1級アミン」といえるところ、「立体障害」なる語は、学術用語として化学に関する辞典類に項目として挙げられているが(必要なら、社団法人日本化学会編「第2版標準化学用語辞典」、平成17年3月31日、丸善株式会社、719頁、「立体障害」の項;化学大辞典編集委員会編「化学大辞典9 縮刷版」、1989年8月15日縮刷版第32刷、共立出版株式会社、613頁、「立体障害」の項、等参照)、具体的にどのような基を意味するのかまでは記載されていない。
また、本願明細書の段落0016には、「特に好適な立体障害された第1級アミン(a)(1)は、」として、同段落0017?0019に説明されているが、これに限定されている旨の記載はなく、また、このような説明から、どのようなアミンが立体障害されたものでありどのようなアミンが立体障害されたものでないのか、当業者なら明確に把握できる、ともいえない。さらに、同段落0020には、「他の適当な第1級アミン(a)(1)は、アミノ基が立体的に混んだ炭素原子に直接結合していないが、上述した意味において立体的に嵩高な基に結合している化合物を含む。」と記載され、ここでいう「立体的に嵩高な基」が特許請求の範囲の請求項1にいう「立体的に嵩高な脂肪族基」と同義か否か明確にはわからないうえ、この段落及びこれに続く段落0021、0022においても、好適なアミンや上市されているものが例示されているに留まる。
しかも、実施例を参照しても、本願明細書の段落0034に「立体障害された且つ嵩高な第1級アミン次の本発明による立体障害された且つ嵩高な第1級アミンを実施例で使用した。」として、続く段落0035にアミンA、アミンBが記載されるのみであり、「立体障害された且つ嵩高な第1級アミン」の代表的な化合物は記載されているものの、どのようなアミン化合物までが包含されるものであるのか、やはり明確とはいえない。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成19年7月2日付け手続補正書(方式。審判請求書の手続補正書)の、「[III]拒絶査定が取り消されるべき理由 (2)拒絶理由2」において、「請求項1に記載の『1つまたはそれ以上の第1級アミノ基がアミン分子の立体的に混んだ領域に位置し或いは立体的に嵩高な脂肪族基に結合するアミン』については、明細書の段落[0015]乃至[0022]において極めて詳細に説明されており、当業者にとっては、本願発明で使用できるアミンの範囲は極めて明確であります。従って、アミン化合物が『特定』されていないが故に不明確であるとの拒絶査定備考欄における認定は失当であり、本願発明におけるアミン化合物は特定するまでもなく明確である、と請求人は考えます。」と主張する。
しかしながら、本願明細書の段落0015?0022を参照しても請求項1に係る発明が明確であるとはいえないことは、上記(3)に示したとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
したがって、本願の特許を受けようとする発明において、特許請求の範囲に記載されたアミンを主要な内容としているところ、特許請求の範囲の記載においても、発明の詳細な説明の記載や技術常識を参酌しても、この出願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとすることはできない。

4.むすび
以上のとおり、この出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、その余のことを検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願平9-363244
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫛引 智子  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 有機顔料の表面処理法  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  
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