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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C11D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C11D
管理番号 1201339
審判番号 不服2007-10781  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-13 
確定日 2009-07-28 
事件の表示 平成7年特許願第113494号「保護的用途」拒絶査定不服審判事件〔平成7年11月28日出願公開、特開平7-310094〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成7年5月12日(パリ条約による優先権主張1994年5月12日、イギリス(GB))の特許出願であって、平成14年5月8日に手続補正書が提出され、平成16年1月27日付けの拒絶理由通知に対して同年7月30日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成19年1月11日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年4月13日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに同年5月11日に手続補正書が提出され、同年7月17日に審判請求書についての手続補正書が提出され、平成20年4月24日付けで審尋が通知され、同年7月10日に回答書が提出されたものである。

第2 平成19年5月11日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年5月11日の手続補正を却下する。
[理由]
1.平成19年5月11日の手続補正の内容
平成19年5月11日の手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】 紡織繊維材料の日光防護率向上方法であって、紡織繊維材料を280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法
【化1】【化2】【化3】【化4】【化5】【化6】【化7】【化8】
(審決注:【化1】?【化8】の化学式省略)
[上記各式中、
R_(1)とR_(2)は互いに独立的にOH、NH_(2) 、O-C_(1)-C_(4 )アルキル、O-アリール、NH-C_(1)-C_(4) アルキル、N(C_(1)-C_(4) アルキル)_(2) 、N(C_(1)-C_(4) アルキル)(C_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキル)、N(C_(1)-C_(4 )ヒドロキシアルキル)_(2) 、NH-アリール、モルホリノ、S-C_(1)-C_(4) アルキル、S-(アリール)またはCl、
R_(3)とR_(4)は互いに独立的にH、C_(1)-C_(4) アルキル、フェニル、または下記式の基【化9】(審決注:【化9】の化学式省略);
R_(5)はH、Cl またはSO_(3) M;
R_(6)はCN,SO_(3) M,S(C_(1)-C_(4) アルキル)_(2) またはS(アリール)_(2) ;
R_(7)はH、SO_(3) M,O-C_(1)-C_(4) アルキル,CN,Cl ,COO-C_(1)-C_(4) アルキルまたはCON(C_(1)-C_(4) アルキル)_(2) ;
R_(8)はH、C_(1)-C_(4) アルキル,Cl またはSO_(3) M;
R_(9)とR_(10) とは互いに独立的にH、C_(1)-C_(4) アルキル,SO_(3) M、ClまたはO-C_(1)-C_(4) アルキル;
R_(11)はHまたはC_(1)-C_(4) アルキル;
R_(12)はH、C_(1)-C_(4) アルキル、CN、Cl ,COO-C_(1)-C_(4) アルキル、CON(C_(1)-C_(4)アルキル)_(2) 、アリールまたはO-アリール;
MはH、Na ,K,Ca 、Mg ,アンモニウム、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラ-C_(1)-C_(4) アルキルアンモニウム、モノ-、ジ-またはトリ-C_(1)-C_(4)ヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC_(1)-C_(4) アルキルとC_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキルとの混合によってジ置換またはトリ置換されたアンモニムであり、
nは0または1である]。」
を、
「【請求項1】 紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法であって、200g/m^(2)以下の密度を有する紡織繊維材料を280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯し、繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにすることを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法
【化1】【化2】【化3】【化4】【化5】【化6】【化7】【化8】
(審決注:【化1】?【化8】の化学式省略)
[上記各式中、
R_(1)とR_(2)と互いに独立的にNH_(2) 、O-C_(1)-C_(4 )アルキル、NH-C_(1)-C_(4) アルキル、 、N(C_(1)-C_(4) アルキル)(C_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキル)、N(C_(1)-C_(4 )ヒドロキシアルキル)_(2) 、NH-フェニルまたはモルホリノ、
R_(3)とR_(4)と互いに独立的にH、フェニル、または下記式の基【化9】(審決注:【化9】の化学式省略);
R_(5)はH、;
R_(6)はSO_(3) M, ;
R_(7)はHまたはCl ;
R_(8)はH、C_(1)-C_(4) アルキル またはSO_(3) M;
R_(9)とR_(10) とは互いに独立的にH、C_(1)-C_(4) アルキル,SO_(3) M、;
R_(11)はC_(1)-C_(4) アルキル;
R_(12)はC_(1)-C_(4) アルキル、;
MはH、Na ,K,Ca 、Mg ,アンモニウム、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラ-C_(1)-C_(4) アルキルアンモニウム、モノ-、ジ-またはトリ-C_(1)-C_(4)ヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC_(1)-C_(4) アルキルとC_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキルとの混合によってジ置換またはトリ置換されたアンモニムであり、
nは0または1である]。」
とする補正を含むものである。

2.本件補正の補正事項について
(1)補正事項1
「紡織繊維材料の日光防護率向上方法であって、」を「紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法であって、」とする。
(2)補正事項2
「紡織繊維材料を」を「200g/m^(2)以下の密度を有する紡織繊維材料を」とする。
(3)補正事項3
「280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、」を「280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯し、繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにすることを特徴とする方法であって、」とする。
(4)補正事項4
「使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法」を「使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法」とする。
(5)補正事項5
【化1】?【化8】で表される蛍光増白剤の化学構造式中の符号R_(1)?R_(12)で示される置換基としてマーカッシュ形式で記載されている置換基の一部を削除する。

3.本件補正の適否について
(1)新規事項について
補正事項1は補正する事項からみて、補正事項2は本件出願の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0003】の記載「軽い夏物衣料は通常200g/m^(2)以下の密度であり」からみて、補正事項3は本件当初明細書の段落【00015】の記載「本発明の使用法によって使用される洗剤で洗濯された紡織繊維材料は、280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1種またはそれ以上を、繊維材料の重量を基準にして、好ましくは、0.005乃至0.5重量%、特に0.01乃至0.2重量%含有する」からみて、補正事項4、5は補正する事項からみて、何れの補正事項も本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであるから、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法17条第2項に規定する要件を満たすものである。
(2)補正の目的要件について
補正事項3は、「280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯し、繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにすることを特徴とする方法であって、」と補正することで、「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有する」という事項を追加するものである。
しかし、補正前の請求項に係る発明の発明特定事項である「280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、」では、繊維材料が蛍光増白剤を含有する量が特定事項とされていないので、追加される「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有する」という特定事項は、補正前の請求項に係る発明の発明特定事項を限定するものとは認められない。
また、この補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する補正を含むものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成14年5月8日の手続補正書、及び平成16年7月30日の手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の発明は下記のとおりのものである。
「紡織繊維材料の日光防護率向上方法であって、紡織繊維材料を280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法
【化1】【化2】【化3】【化4】(審決注:【化1】?【化4】の化学式省略)
【化5】


【化6】【化7】【化8】 (審決注:【化6】?【化8】の化学式省略)
[上記各式中、
R_(1)とR_(2)は互いに独立的にOH、NH_(2) 、O-C_(1)-C_(4 )アルキル、O-アリール、NH-C_(1)-C_(4) アルキル、N(C_(1)-C_(4) アルキル)_(2) 、N(C_(1)-C_(4) アルキル)(C_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキル)、N(C_(1)-C_(4 )ヒドロキシアルキル)_(2) 、NH-アリール、モルホリノ、S-C_(1)-C_(4) アルキル、S-(アリール)またはCl、
R_(3)とR_(4)は互いに独立的にH、C_(1)-C_(4) アルキル、フェニル、または下記式の基【化9】(審決注:【化9】の化学式省略);
R_(5)はH、Cl またはSO_(3) M;
R_(6)はCN,SO_(3) M,S(C_(1)-C_(4) アルキル)_(2) またはS(アリール)_(2) ;
R_(7)はH、SO_(3) M,O-C_(1)-C_(4) アルキル,CN,Cl ,COO-C_(1)-C_(4) アルキルまたはCON(C_(1)-C_(4) アルキル)_(2) ;
R_(8)はH、C_(1)-C_(4) アルキル,Cl またはSO_(3) M;
R_(9)とR_(10) とは互いに独立的にH、C_(1)-C_(4) アルキル,SO_(3) M、ClまたはO-C_(1)-C_(4) アルキル;
R_(11)はHまたはC_(1)-C_(4) アルキル;
R_(12)はH、C_(1)-C_(4) アルキル、CN、Cl ,COO-C_(1)-C_(4) アルキル、CON(C_(1)-C_(4)アルキル)_(2) 、アリールまたはO-アリール;
MはH、Na ,K,Ca 、Mg ,アンモニウム、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラ-C_(1)-C_(4) アルキルアンモニウム、モノ-、ジ-またはトリ-C_(1)-C_(4)ヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC_(1)-C_(4) アルキルとC_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキルとの混合によってジ置換またはトリ置換されたアンモニムであり、
nは0または1である]。」(以下、「本願発明」という。)

第4 原査定の理由及び刊行物の記載事項
1.原査定は、「この出願については、平成16年1月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2によって、拒絶をすべきものである。」というものであるところ、その「理由」は、「本願の請求項1?29に係る発明は、引用文献3?9に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」という理由を含むものである。
上記の理由で引用された引用文献3は、本件出願前(優先日前)に頒布された刊行物である、特開平2-295985号公報(以下、「刊行物1」という。)である。

2.刊行物1に記載された事項
刊行物1には以下の事項が記載されている。
1-1「

」(【特許請求の範囲】)

1-2「

」(5頁左上欄18行?5頁左上欄末行)

1-3「

」(7頁左上欄6行?左下欄5行)
1-4「

」(10頁左下欄1行?右下欄18行)
1-5「

」(6頁右下欄16行?7頁左上欄5行)

第5 当審の判断
1.刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「式(I)(審決注:(I)の化学構造式及び化学構造式中の符号「R」、「R_(3)」、「M」についての記載は「第4 2.1-1」参照)のジベンゾフラニルビフェニル化合物。」(摘記1-1の請求項1)に関し記載するものであって、刊行物1には、その化合物を「洗剤中に配合して使用する方法」(摘記1-1の請求項7)、及び、「式(I)の化合物は繊維材料、特にポリアミド、ウール、木綿・・・の蛍光増白のために使用される」(摘記1-2)ことが記載されているところ、その「洗剤中に配合して使用する方法」の実施例として、「実施例11」に「式(103)の化合物を使用し」て、「実施例10と同様に操作を実施した」方法、すなわち、実施例10の洗剤顆粒中の「式(102)の化合物の代りに式(103)の化合物を使用した」洗剤顆粒を用いて、実施例10に記載されている「木綿各10gの試験布を5片」に対し、実施例10に記載されている洗濯、すすぎ洗い、脱水からなる「洗濯操作を3回くり返し」た後、木綿試験布の白色度を測定する方法が記載されていると認められ(摘記1-4)、また、式(103)の化合物は下記の化学式を有し「UV吸収スペクトル:λmax=353nm」であることが記載されている(摘記1-3)。




そして、刊行物1に記載される「木綿」の「試験布」は、紡織して製造された繊維材料であるから、「紡織繊維材料」である。

そうすると、刊行物1には、
「紡織繊維材料の蛍光増白方法であって、紡織繊維材料を353nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式であらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法


」という発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているということができる。

2.対比
本願発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「蛍光増白方法」及び本願発明の「日光防護率向上方法」は、共に紡織繊維材料の性能改善方法であり、また、刊行物発明の式(103)の化合物は、本願発明の【化5】の「R_(8)がC_(3)アルキル、R_(9)がC_(3)アルキル,R_(10)がSO_(3)M、MがNa」の化合物に相当するから、
両者は、
「紡織繊維材料の性能改善方法であって、紡織繊維材料を353nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式であらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法



で一致し、以下(i)の点(以下、「相違点(i)」という。)で一応相違するということができる。
(i) 性能改善方法が、本願発明は「日光防御率向上方法」であるのに対し、刊行物発明は「蛍光増白方法」である点

3.判断
(1)相違点(i)について
本願発明における「日光防御率向上」効果も、刊行物発明における「蛍光増白」効果も、化合物

の特性の一端を表したもので、両効果共々洗濯後に紡織繊維材料にこの化合物が残存して奏される効果であるといえる。
そうしてみると、本願発明と刊行物発明とは、紡織繊維材料を同じ化合物を含有する洗剤で洗濯し、洗濯後に紡織繊維材料にこの化合物を残存させて、その紡織繊維材料にその性能の付与を図ろうとする方法として同じであり、本願発明は「日光防護率向上方法」であり、刊行物発明は「蛍光増白方法」であっても、両発明の実施の形態に何らの差もないから、相違点(i)には、実質的な相違はない。

なお、念のため、「蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することにより性能改善を図ろうとする方法」について、本願明細書中に記載されている操作、条件と、刊行物1に記載されている操作、条件とに相違があるものか否かについても検討しておく。
本願明細書の実施例6(段落【0028】)には、蛍光増白剤化合物(23)


を0.1%添加した洗剤を用いた日光防護率を向上する方法、すなわち、
「漂白し、シルケット加工した綿布の試料片50gを、下記組成(重量%)を有する洗剤4gを含有している水道水(ドイツ硬度12°)1リットル中に入れて洗濯した:
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 8.0%
獣脂アルコールテトラデカンエチレングリコールエーテル(EO14モル)
2.9%
ナトリウムセッケン 3.5%
トリポリリン酸ナトリウム 43.8%
ケイ酸ナトリウム 7.5%
ケイ酸マグネシウム 1.9%
カルボキシメチルセルロース 1.2%
EDTA 0.2%
硫酸ナトリウム 21.2%
FWA(蛍光増白剤化合物23) 0.1%
水 9.7%
いずれも洗剤に対する重量%である。
洗濯は40℃において15分間行なった。そのあと、試料布片を冷水道流水で30秒間すすぎ洗いし、乾燥した。洗濯処理を3回繰り返した。3回目の洗濯後に、試料片を160℃においてアイロンがけした。洗濯された試料片の白色度(W)を、 Ganz 法に従ってDCI/SF500 分光光度計を使用して測定した。・・・ 日光保護率SPFは・・・試料布片を透過した紫外線を測定することによって決定した。」が記載されている。
一方、蛍光増白方法である、刊行物発明の実施例と言い得る、刊行物1の実施例11の「実施例10と同様に操作を実施した。ただし、式(102)の化合物の代りに式(103)の化合物を使用した。3回洗濯した後、高い白色度が得られた。」という方法は、実施例10の記載からみて(摘記1-4)、洗剤の組成(審決注:刊行物1の実施例10で用いた洗剤顆粒は、実施例10の記載中にある各成分を実施例10の記載中にある重量の比率となるように用い(実施例10の記載中にある各成分についての重量の総和は94.6gと算出される)て噴霧乾燥し、残存湿分が約5%の洗剤顆粒としたものであるから、洗剤顆粒100g中の蛍光増白剤化合物(103)の重量は下記*印の計算式から「約0.1g」と算出されるので、実施例11の洗剤顆粒中の蛍光増白剤化合物(103)の重量%は約0.1重量%と算出される。*実施例11の洗剤顆粒100g中の蛍光増白剤化合物(103)の重量=[0.1g]×[95g/94.6g]=約0.1g)、洗剤4gを1lの水に溶解したという洗剤溶解液中の洗剤濃度、及び洗濯、すすぎ、乾燥の一連の洗濯処理工程の設定条件が、上記した本願発明の実施例6の洗剤の組成、洗剤溶解液中の洗剤濃度、及び洗濯、すすぎ、乾燥の一連の洗濯処理工程の設定条件と極めて類似したものであることから、洗剤の組成、洗剤溶解液中の洗剤濃度、及び洗濯、すすぎ、乾燥の一連の洗濯処理工程の設定条件を参酌したとしても、本願発明と刊行物発明とは、紡織繊維材料を353nmの波長領域の放射線を吸収する

の蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯するという方法の実施の形態には何ら違いがないものといえる。
そうすると、「蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することにより性能改善を図ろうとする方法」について、本願明細書中に記載されている操作、条件を勘案して判断しても、相違点(i)には実質的な相違はない、という判断に変わりはない。

(2)まとめ
したがって、本願発明は、その出願前(優先日前)に頒布された刊行物である刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることはできないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許を受けることはできないものであるから、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


[なお、平成19年5月11日の手続補正は、上記「第2」に記したとおり却下すべきものであるが、請求人は回答書において補正の却下の決定をされるべきものではない旨の主張をしているので、以下に、仮に却下しないものとした場合の当審の判断を添える。

第I 本願発明
この出願の発明は、平成14年5月8日の手続補正書、平成16年7月30日の手続補正書、及び、平成19年5月11日の手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書(仮)」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1の発明は下記のとおりのものである。
「紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法であって、200g/m^(2)以下の密度を有する紡織繊維材料を280乃至400nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤の1つまたはそれ以上を含有する洗剤で洗濯し、繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにすることを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式のいずれかであらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする紡織繊維材料の日光防護率を向上する方法
【化1】【化2】【化3】【化4】(審決注:【化1】?【化4】の化学式省略)
【化5】


【化6】【化7】【化8】(審決注:【化6】?【化8】の化学式省略)
[上記各式中、
R_(1)とR_(2)と互いに独立的にNH_(2) 、O-C_(1)-C_(4 )アルキル、NH-C_(1)-C_(4) アルキル、 、N(C_(1)-C_(4) アルキル)(C_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキル)、N(C_(1)-C_(4 )ヒドロキシアルキル)_(2) 、NH-フェニルまたはモルホリノ、
R_(3)とR_(4)と互いに独立的にH、フェニル、または下記式の基【化9】(審決注:【化9】の化学式省略);
R_(5)はH、;
R_(6)はSO_(3) M, ;
R_(7)はHまたはCl ;
R_(8)はH、C_(1)-C_(4) アルキル またはSO_(3) M;
R_(9)とR_(10) とは互いに独立的にH、C_(1)-C_(4) アルキル,SO_(3) M、;
R_(11)はC_(1)-C_(4) アルキル;
R_(12)はC_(1)-C_(4) アルキル、;
MはH、Na ,K,Ca 、Mg ,アンモニウム、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラ-C_(1)-C_(4) アルキルアンモニウム、モノ-、ジ-またはトリ-C_(1)-C_(4)ヒドロキシアルキルアンモニウム、またはC_(1)-C_(4) アルキルとC_(1)-C_(4) ヒドロキシアルキルとの混合によってジ置換またはトリ置換されたアンモニムであり、
nは0または1である]。
(以下、「本願発明(仮)」という。)

第II 原査定の理由及び刊行物の記載事項
1.原査定及びその理由
原査定及びその理由は、上記「第4 1.」に記載したものと同じである。

2.刊行物1に記載された事項
刊行物1に記載された事項は、上記「第4 2.」に記載したものと同じである。

第III 当審の判断
1.刊行物1に記載された発明
刊行物1に記載された発明は、上記「第5 1.」に記載した刊行物発明と同じ下記の発明である。
「紡織繊維材料の蛍光増白方法であって、紡織繊維材料を353nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式であらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法



」(以下においても「刊行物発明」という。)

2.対比
本願発明(仮)と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「蛍光増白方法」及び本願発明の「日光防護率向上方法」は、共に紡織繊維材料の性能改善方法であり、また、刊行物発明の式(103)の化合物は、本願発明(仮)の【化5】の「R_(8)がC_(3)アルキル、R_(9)がC_(3)アルキル,R_(10)がSO_(3)M、MがNa」の場合に相当するから、
両者は、
「紡織繊維材料の性能改善方法であって、紡織繊維材料を353nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法であって、使用される蛍光増白剤が下記式であらわされる蛍光増白剤であることを特徴とする方法



で一致し、以下(I)?(III)の点(以下、それぞれ「相違点(I)」?「相違点(III)」という。)で一応相違するということができる。

(I)性能改善方法が、本願発明は「日光防御率向上方法」であるのに対し、刊行物発明は「蛍光増白方法」である点
(II)紡織繊維材料が、本願発明は「200g/m^(2)以下の密度を有する紡織繊維材料」であるのに対し、刊行物発明はそのような限定がなされていない点
(III)紡織繊維材料を353nmの波長領域の放射線を吸収する蛍光増白剤を含有する洗剤で洗濯することを特徴とする方法が、本願発明は「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにする」であるのに対し、刊行物発明はそのような限定がなされていない点

3.判断
(1)相違点(I)について
相違点(I)は、相違点(i)と同じである。
したがって、相違点(I)は、上記「第5 3.(1)」に記載した、相違点(i)についてした判断の理由と同じ理由が適用できるから、実質的な相違はない。

(2)相違点(II)について
本件出願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第94/04515号パンフレット(1994年3月3日国際公開)には、「繊維又は布帛のSPF等級を増大させる方法」(特許請求の範囲 請求項1)の発明が記載されているところ、その発明の背景技術として、「200g/m^(2)より低い密度を有する材料について、・・・綿は5?15のSPF等級を有する。それで、綿・・・のような軽量布帛で作られたシャツを着た人は、若し長期間日光に露出されると尚UVR放射線の顕著な線量を受けることになる。」(2頁7行?15行)と記載されている。
また、本件出願の優先日前に頒布された刊行物ではないが、「日本紡績協会監修 「綿花から織物まで 2001」2001年12月1日12版 財団法人日本綿業技術経済研究所発行 170頁」には、「第五表 織布設計表(例)」とタイトルした表中の「品種」の項に「ブロード」と、「織上」の項に「幅97cm」、「長110.5m」、「量目15.10kg」と記載されている。そこで、ブロードの密度を、「織上」の項に記載される数値に基づいて計算すると、141g/m^(2)と算出される。
以上の記載にもみられるように、200g/m^(2)以下の密度は、軽量布帛あるいはブロードにおいて自明のものであるから、刊行物1にも「木綿」の「試験布」の密度として「200g/m^(2)以下の密度」が記載されているに等しいものと認められる。
そうしてみると、相違点IIには実質的な相違はない。

(3)相違点(III)について
本願発明(仮)は、「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにする」ものであるが、「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにする」ために、洗濯する際の蛍光増白剤の濃度をどのような濃度にするのかという条件設定や、すすぎ洗い等の条件設定について本願明細書(仮)には何らの説明もされていない。
また、本願明細書(仮)の実施例には、洗剤中の蛍光増白剤の含有量や洗剤の使用量、すすぎ洗いについての設定された条件が記載されているものの、洗濯処理後の「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして何重量%の蛍光増白剤を含有する」ものか記載がされていないため、実施例通りにすれば、本願発明(仮)の「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにする」とし得るものか不明である。
が、ひとまず、実施例どおりにすれば本願発明(仮)の「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有するようにする」ことが達成し得るものとして、相違点IIIについて検討を進める。
そこで、本願明細書(仮)の実施例6で行われている「綿布の試料片50g」に対する洗濯処理(本願明細書(仮)の段落【0028】)と、「木綿各100gの試験布5片」に対する刊行物1の実施例11で行われている洗濯処理(摘記1-4)とを比べてみる。
そうすると、使用する蛍光増白剤化合物、及び該蛍光増白剤化合物の洗濯液中の濃度、冷流水によりすすぎを行う等で一致し、洗濯温度が本願明細書(仮)の実施例6では40℃で行われ、すすぎ後に乾燥しているのに対し、刊行物1の実施例11では30℃で行われ、すすぎ後に脱水している等の点で差があるが、それらの差により、「繊維材料がその繊維材料の重量を基準にして0.005乃至0.5重量%の蛍光増白剤を含有する」量が大きく異なるとは推認できないから、相違点IIIについても、実質的な相違があるとは考えられない。

(4)まとめ
したがって、本願発明(仮)は、その出願前(優先日前)に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることはできないものである。

第IV むすび
以上のとおり、本願発明(仮)は特許を受けることはできないものであるから、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、平成19年5月11日の手続補正を却下しないものとした場合であっても結論が変わるものではない。]
 
審理終結日 2009-02-27 
結審通知日 2009-03-02 
審決日 2009-03-16 
出願番号 特願平7-113494
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C11D)
P 1 8・ 572- Z (C11D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之井上 典之  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 保護的用途  
代理人 高梨 憲通  
代理人 岡部 正夫  
代理人 越智 隆夫  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 藤野 育男  
代理人 臼井 伸一  
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