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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1201345
審判番号 不服2008-5295  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-04 
確定日 2009-07-27 
事件の表示 特願2001- 69088「太陽電池」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月20日出願公開、特開2002-270869〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年3月12日の出願であって、平成19年10月2日付け及び同年12月28日付けで手続補正がなされたところ、平成20年1月25日付けで平成19年12月28日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年3月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月3日付けで手続補正がなされたもので、その請求項に係る発明は、平成19年10月2日付け及び平成20年4月3日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「結晶主軸方向が<100>であり、かつ、第一主表面と第二主表面とのいずれにも{111}面を主体とするテクスチャが形成されていないシリコン単結晶基板の、前記第二主表面を受光面とし、他方、裏面側となる前記第一主表面に窒化シリコン膜が形成され、さらに、該窒化シリコン膜を覆う形で裏面金属電極層が形成され、
前記窒化シリコン膜は、前記裏面金属電極層で反射する金属面反射光と、前記シリコン単結晶基板と前記窒化シリコン膜との境界で反射する境界反射光とが干渉により互いに強め合うよう、40?220nm(ただし、50?100nmを除く)の厚さにて形成されてなることを特徴とする太陽電池。」(以下「本願発明」という。)


2.刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平9-45945号公報(以下「引用例1」という。)には、下記の事項が記載されている。
ア「【請求項1】 P-N接合部を有するシリコンウェハの裏面側にアルミニウムを拡散させると共に、このシリコンウェハに表面電極と裏面電極を設けた太陽電池素子において、前記シリコンウェハの裏面側に多数の透孔部を有する窒化シリコン膜を設け、この透孔部に裏面電極を設けたことを特徴とする太陽電池素子。」

イ「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1(a)?(g)は本発明の太陽電池素子の製造工程を示す図である。まず、同図(a)に示すように、0.2?1.0mm程度の厚みを有するシリコンウェハ1を用意する。このシリコンウェハ1は、CZ法、FZ法、EFG法、或いは鋳造法等で形成された単結晶又は多結晶のシリコンをスライスして形成され、例えばボロン(B)等のP型不純物を含有する。シリコンウェハ1の表面にN層1aを設け、P-N接合部を形成する。層1aの深さは2000Å?1μm程度である。このN層1aはリンを含む気体例えばオキシ塩化リン(POCl_(3) )等を用いることにより形成する。
【0014】次に、同図(b)に示すように、一主面側のN層1aのみを残してN層1aの他の部分を除去する。すなわち、一主面側のみにエッチングのレジスト膜を塗布し、フッ酸(HF)と硝酸(HNO_(3) )との混合液に浸漬して、一主面側以外のN層1aを除去した後にレジスト膜を除去し、シリコンウェハ1を純水で洗浄する。
【0015】次に、同図(c)に示すように、シリコンウェハ1の一主面側に反射防止膜2を形成すると共に、他の主面側に窒化シリコン膜3を形成する。この反射防止膜2はシリコンウェハ1に入射される光を効率よく吸収するための膜であり、その厚みが500?1000Å、屈折率が1.90?2.30程度になるように形成される。例えばシランとアンモニアとの混合ガスをプラズマ化して析出させた窒化シリコン膜等で形成される。具体的には、プラズマCVD装置内でシリコンウェハ1を150?400℃にまで加熱し、ガス圧を0.2?2.0Torrに維持しながら、高周波電圧を印加する。この反射防止膜2の材料としては窒化シリコン膜の他に、一酸化シリコン(SiO)、二酸化シリコン(SiO_(2 ))、二酸化チタン(TiO_(2) )などがある。また、シリコンウェハ1の裏面側の窒化シリコン膜3は、プラズマCVD法などで厚み500?1000Å程度に形成される。
【0016】次に、同図(d)に示すように、窒化シリコン膜3にフォトリソグラフィによって透孔部3aを形成する。この透孔部3aは内径が数10μm程度になり、ピッチが100μm程度になるように形成する。この透孔部3aの形状は円形でも四角形でもいずれでもよい。
【0017】次に、同図(e)に示すように、窒化シリコン膜3上からシリコンウェハ1の他の主面側の全面に、アルミニウムペースト4を塗布して焼き付けることにより、シリコンウェハ1の窒化シリコン膜3の透孔部3aにP^(+) 領域1bを形成する。
【0018】次に、同図(f)に示すように、シリコンウェハ1の他の主面側に塗布したアルミニウムペースト4をエッチング除去した後、シリコンウェハ1の表面側に形成した反射防止膜2を表面電極5の形状に応じて除去する。すなわち、表面電極5のパターンと逆パターンを形づくるように反射防止膜2を除去する。
【0019】次に、同図(g)に示すように、シリコンウェハ1の一主面側の反射防止膜2及び他の主面側の窒化シリコン膜3の除去部分に表面電極5及び裏面電極6を形成する。表面電極5及び裏面電極6は、銀粉末を主成分とするペーストをシリコンウェハ1の表面gび裏面に厚膜手法で塗布して加熱焼成することにより形成する。
【0020】裏面電極6は、窒化シリコン膜3の透孔部3aにも充填され、電極として機能することになる。」

上記ア及びイから、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「P-N接合部を有する単結晶のシリコンウェハの裏面側にアルミニウムを拡散させると共に、このシリコンウェハに、銀粉末を主成分とする、表面電極と裏面電極を設けた太陽電池素子において、前記シリコンウェハの裏面側に多数の透孔部を有する厚み500?1000Å程度に形成された窒化シリコン膜を設け、この透孔部にも充填された裏面電極を設けた太陽電池素子。」


(2)原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平6-310740号公報(以下「引用例2」という。)には、下記の事項が記載されている。
ア「【0002】
【従来の技術】従来、太陽電池の光電変換効率を高めるために、半導体基板の光入射側と反対側の裏面上に上記半導体基板と同一導電型で、かつ、より高濃度の裏面電界層を設ける構造が知られている。この裏面電界層は、裏面近傍で発生したキャリアを内部電界により半導体基板内部へ押し戻し、光電変換効率を高める働きをしている(以後、この働きを「裏面電界効果」という)。例えば、P型シリコン基板の場合に、上記P型シリコン基板の裏面にアルミペーストを印刷焼成する方法、または、ボロンやアルミニウムを拡散する方法により裏面電界層を形成していた。あるいは、上記P型シリコン基板の裏面に、P^(+)型微結晶シリコン層を設ける方法によりヘテロ接合の裏面電界層を形成していた。このように裏面電界層をP^(+)型微結晶シリコン層とした時には、通常、P^(+)型微結晶シリコン層上に裏面電極を形成していた。ここで、光学的には、P^(+)型微結晶シリコン層は、P型シリコン基板より広い禁制帯幅をもつため、裏面電界層内での光の吸収ロスが減り、一方、裏面電極は、入射光を反射して光電変換効率を高める働きもしている(以後、この働きを「裏面反射効果」という)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、P型シリコン基板の裏面に、P^(+)型微結晶シリコン層、裏面電極の順に形成された太陽電池の入射光の利用は充分でなく、さらに、光電変換効率を向上することが望まれていた。
【0004】また、入射光の利用効率を高める方法の1つとして、裏面反射効果を向上する方法があるが、そのためにP^(+)型微結晶シリコン層と裏面電極との間に、例えば、熱酸化膜(700?1000℃の熱酸化)を挿入することが考えられるが、このような比較的高温の熱処理を行うと、微結晶シリコン層表面が荒れたり、微結晶シリコン層中の水素が抜けたり、構造緩和により比抵抗等の特性が変わってしまうため、その結果、裏面電界効果が得られず、現実的には、酸化膜等の絶縁膜を形成することができないといった問題点があった。
【0005】そこで、本発明の目的は、裏面電界効果、あるいは裏面反射効果をより向上することができ、高い開放電圧と短絡電流を有し、光電変換効率を向上できる太陽電池とその製造方法を提供することにある。」

イ「【課題を解決するための手段】本発明は、第1導電型の半導体基板と、該半導体基板の光入射側に形成された第2導電型の半導体層と、上記半導体基板の上記光入射側と反対側の裏面上に形成された第1導電型でかつ上記半導体基板より高濃度の裏面電界層と、該裏面電界層上に形成された裏面電極とを有する太陽電池において、上記裏面電界層と上記裏面電極との間に絶縁膜層を設けることを特徴とするものである。
【0007】また、本発明は上記太陽電池において、上記絶縁膜層が窒化シリコン膜または酸化シリコン膜であることを特徴とするものである。」

ウ「【0009】
【作用】本発明によれば、微結晶シリコン層と裏面電極との間に微結晶シリコン層より低屈折率の絶縁層を設けることにより半導体基板内に反射される光量を増加して、裏面反射効果をより高めることができ、光発生電流を増加させることができる。
【0010】また、本発明による製造方法によれば、裏面電界効果をより高めることができ、開放電圧を高めることができる。」

エ「【0013】次に、上記太陽電池の製造方法について、図2に基づき説明する。図2は、上記太陽電池の製造フローを示す図である。
【0014】まず、単結晶のP型シリコン基板11(100mmφ、300μm厚、比抵抗:数Ωcm)を洗浄した後、表面が凹凸になるように異方性エッチングを行った。ここで、単結晶のP型シリコン基板のかわりに、多結晶のP型シリコン基板を用いることもできる。この場合の表面凹凸形成は、レーザを用いて溝を掘ったり、機械的に溝を掘る方法により行う。
【0015】次に、オキシ塩化燐(POCl_(3))を用いた気相拡散によって燐(P)をP型シリコン基板11の表面にN型層12を拡散してPN接合を形成した。続いて、熱酸化によりシリコン酸化膜層13(パッシベーション膜)を形成してから、光入射側に窒化シリコン膜からなる反射防止膜層14をプラズマCVD法により形成した。反射防止膜層14として常圧CVD法による酸化チタン膜(TiO_(2))、あるいは、真空蒸着法によるアルミナ膜(Al_(2)O_(3))を用いることもできる。次に、光入射側と反対側のP型シリコン基板11の裏面側をエッチングして、裏面側に形成されているN型層12を除去した。この裏面エッチングは、N型層12の形成方法として燐添加されたシリコン酸化物ガラス(PSG)液のような塗布液を用いて片面だけに拡散して形成した場合には不要である。
【0016】次に、プラズマCVD法により、P^(+)型微結晶シリコン層16を膜厚200nmでP型シリコン基板11の裏面側に形成した。上記プラズマCVD法によるP^(+)型微結晶シリコン層16の形成条件として、例えば、ガス種はSiH_(4)(またはSi_(2)H_(6))とH_(2)とB_(2)H_(6)の混合ガス、ガス流量比はH_(2)/SiH_(4)=150,B_(2)H_(6)/SiH_(4)=0.01、ガス圧力は20Pa、基板温度は150℃、RFパワーは100W(13.56MHz)である。この条件は、一実施例であり、上記条件に限定されず、一般的なプラズマCVD法の条件であれば成膜できるがガス流量比はH_(2)/SiH_(4)≧100,B_(2)H_(6)/SiH_(4)<0.02が適当であり、基板温度は100?200℃が最適である。
【0017】次に、プラズマCVD法により、窒化シリコン膜からなる透明絶縁膜層17を膜厚200nmでP^(+)型微結晶シリコン層16上に形成する。上記プラズマCVD法による透明絶縁膜層17の形成条件として、例えば、ガス種は、SiH_(4)とNH_(3)とN_(2)の混合ガス、ガス流量比はNH_(3)/SiH_(4)=1.5,N_(2)/SiH_(4)=5、ガス圧力は100Pa、基板温度は150℃、RFパワーは100W(13.56MHz)である。この条件は、一実施例であり、上記条件に限定されず、一般的なプラズマCVD法の条件であればよいが、基板温度は50?200℃が最適であり、この50℃とは、基板加熱を行わないという意味である。同様にして、上記透明絶縁膜層17をプラズマCVD法による酸化シリコン膜で形成することができる。その形成条件は、一般的なプラズマCVD法の条件であればよいが、この時のガス種は、例えばSiH_(4)とO_(2)の混合ガスとなり、基板温度は50?200℃が適当である。このようにして形成された窒化シリコン膜または酸化シリコン膜からなる透明絶縁膜層17の屈折率はP^(+)型微結晶シリコン層16の屈折率より低い。この屈折率の違いにより多重反射等により裏面反射効果を高めることができる。なお、上記P^(+)型微結晶シリコン層16と透明絶縁膜層17とは、どちらもプラズマCVD法で形成することができるので、それらは別々のプラズマCVD装置で形成することも、単室のプラズマCVD装置で連続的に形成することもできるが、複数の反応室を有するプラズマCVD装置でそれぞれ専用の反応室で連続に形成してもよい。
【0018】次に、フォトエッチング法を用いて、透明絶縁膜層17のパターニングを行い、微結晶シリコン層と金属電極との接触部分を設けてから、真空蒸着法でアルミニウム(Al)や銀(Ag)などの金属をP型シリコン基板11の裏面全面に蒸着(蒸着温度は室温?100℃)し、裏面電極18を形成する。続いて、フォトエッチング法を用いて光入射側のシリコン酸化膜層13及び反射防止膜層14を加工して、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)の順に金属を蒸着(蒸着温度は室温?100℃)により堆積して、リフトオフ法により、グリッド電極15を形成する。
【0019】最後に、250℃、10分の熱処理を行い、太陽電池は完成する。この熱処理の温度範囲は200?300℃が最適であり、時間は30分以下、熱処理雰囲気は、窒素(N_(2))ガス、水素(H_(2))ガス、アルゴン(Ar)ガス、空気が適当である。なお、この熱処理は電極とP^(+)型微結晶シリコン層16あるいはN型層12との接触をよくするばかりでなく、P^(+)型微結晶シリコン層16の構造緩和と不純物の活性化を行っている。」

上記アないしエから、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「第1導電型の半導体基板と、該半導体基板の光入射側に形成された第2導電型の半導体層と、上記半導体基板の上記光入射側と反対側の裏面上に形成された第1導電型でかつ上記半導体基板より高濃度の裏面電界層と、該裏面電界層上に形成された裏面電極とを有する太陽電池において、上記裏面電界層と上記裏面電極との間に窒化シリコン膜または酸化シリコン膜である透明絶縁膜層を設け、透明絶縁膜層と裏面電界層の屈折率の違いによる多重反射等により裏面反射効果を高めた太陽電池。」


3.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「単結晶のシリコンウエハ」、「シリコンウェハの裏面側」、「銀粉末を主成分とする裏面電極」は、それぞれ、本願発明の「シリコン単結晶基板」、「裏面側となる第一主面」、「裏面金属電極層」に相当する。
また、引用発明1において、「シリコンウェハの裏面側」の反対側は、表面電極が設けられた受光面であるから、本願発明の「受光面となる第二主面」に相当する。
また、引用発明1は、引用例1における引用発明1の製造工程の記載から(上記2.(1) イ参照。)、シリコンウエハのいずれの主面も、{111}面を主体とするテクスチャが形成されていないことが明らかである。

したがって、本願発明と引用発明1とは、
「第一主表面と第二主表面とのいずれにも{111}面を主体とするテクスチャが形成されていないシリコン単結晶基板の、前記第二主表面を受光面とし、他方、裏面側となる前記第一主表面に窒化シリコン膜が形成され、さらに、該窒化シリコン膜を覆う形で裏面金属電極層が形成される太陽電池。」の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点:
(イ)本願発明のシリコン単結晶基板は、「結晶主軸方向が<100>」であるのに対して、引用発明1の単結晶のシリコンウエハは、そのようなものであるのか不明である点。
(ロ)本願発明の窒化シリコン膜は、「前記裏面金属電極層で反射する金属面反射光と、前記シリコン単結晶基板と前記窒化シリコン膜との境界で反射する境界反射光とが干渉により互いに強め合うよう、40?220nm(ただし、50?100nmを除く)の厚さにて形成されてなる」ものであるのに対して、引用発明の窒化シリコン膜は、「多数の透孔部を有する厚み500?1000Å程度に形成された」ものである点。


4.判断
上記相違点について検討する。
(イ)本願発明のシリコン単結晶基板において、「結晶主軸方向が<100>」であるとは、本願明細書の【発明の詳細な説明】の【0003】段落等の記載によると、主面が(100)面であることを意味するものと認められるところ、太陽電池のシリコン単結晶基板として、主面が(100)面のものは本願の出願前に周知(特開平9-219531号公報(【0014】段落)、特開平6-244444号公報(【0019】段落)参照。)であり、引用発明1の単結晶のシリコンウエハとして、その主面が(100)面のものを用いて、引用発明1を上記相違点(イ)に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(ロ)引用発明2の「透明絶縁膜層と裏面電界層の屈折率の違いによる多重反射等により裏面反射効果を高めた」との構成は、多重反射光の干渉により裏面反射率を高めたことを意味することは当業者にとって明らかであり、多重反射光の干渉により裏面反射率を高めるためには、透明絶縁膜層と裏面電界層の屈折率の違いの他に透明絶縁層の厚みをも考慮すべきことも当業者にとって明らかである(必要なら、特開昭61-93678号公報(第2頁左下欄第7?12行)参照。)。
また、引用文献2の上記2.(2)ウによれば、引用発明2は、裏面反射効果を向上させ、光電変換効率を向上させたものといえる。
一方、本願発明において窒化シリコン膜の厚さを「40?220nm(ただし、50?100nmを除く)」にて形成したのは、本願明細書の【0011】、【0028】、【0035】?【0037】段落によると、内部反射効率向上により、内部反射率が93%を超えると光キャリア生成割合が急増し高出力太陽電池が得られ、一例として変換効率が14.5%から14.8%に向上するからであるところ、引用発明1においても、裏面反射効果を向上させ光電変換効率を向上させるために、上記引用発明2の「透明絶縁膜層と裏面電界層の屈折率の違いによる多重反射等により裏面反射効果を高めた」との構成を適用し、裏面電極で反射する反射光と、シリコンウエハと窒化シリコン膜との境界で反射する反射光とが干渉により互いに強め合うようになして、上記相違点(ロ)に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明1、2及び上記周知技術から予測しうる程度のものである。

したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び上記周知技術から当業者が容易に発明することができたものである。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-02 
結審通知日 2009-06-03 
審決日 2009-06-16 
出願番号 特願2001-69088(P2001-69088)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 三橋 健二
田部 元史
発明の名称 太陽電池  
代理人 菅原 正倫  
代理人 菅原 正倫  

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