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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1201347
審判番号 不服2008-9554  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2009-07-27 
事件の表示 平成10年特許願第369795号「遮蔽部材および遮蔽部材を有するレンズ鏡枠」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月14日出願公開、特開2000-193870〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月25日の出願(特願平10-369795号)であって、平成20年3月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成20年4月17日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされた。

2.平成20年4月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年4月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(1)補正後の本願発明
本件補正により、請求項1は、平成20年1月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「第1枠部材の内面に固設され、該第1枠部材に対して相対的に出入移動自在に設けられた第2枠部材の外周面に摺接する弾性材料からなる遮蔽部材において、
前記弾性材料はカーボンブラックが添加されたシリコーンゴム又はカーボンブラックが添加されたウレタンゴムを注型成形法により成形することにより形成され、
少なくとも前記第2枠部材と摺接する前記弾性材料の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を形成したことを特徴とする遮蔽部材。」が、

「主鏡枠とこれに内設され光学系を保持して光軸方向に移動可能な副鏡枠とを有するレンズ鏡枠の前記主鏡枠内面に固着され、前記副鏡枠の外周面に摺接するように設けられていて、前記主鏡枠と前記副鏡枠との隙間を遮蔽する弾性材料からなる遮蔽部材において、
前記弾性部材は、カーボンブラックが添加されたシリコーンゴム又はカーボンブラックが添加されたウレタンゴムを注型成形法により成形することにより形成されており、前記主鏡枠の先端部内周に形成された溝に嵌め込まれ且つ接着剤で固着される円環状の保持部と、前記保持部の内周からその中心方向に斜めに周設されて前記副鏡枠の方向に延び、前記副鏡枠の外周面が摺接する摺接片とを備え、
前記摺接片における前記副鏡枠の外周面との摺接面にダイヤモンドライクカーボン膜が形成されていることを特徴とする遮蔽部材。」と補正された。

[理由]独立特許要件違反
この補正は、補正前の「第1枠部材」を、補正後の「主鏡枠」と変更する補正(以下、補正1という。)、補正前の「該第1枠部材に対して相対的に出入移動自在に設けられた第2枠部材」を、補正後の「光学系を保持して光軸方向に移動可能な副鏡枠」と変更する補正(以下、補正2という。)、補正前の「第2枠部材の外周面に摺接する弾性材料からなる遮蔽部材」を、補正後の「前記副鏡枠の外周面に摺接するように設けられていて、前記主鏡枠と前記副鏡枠との隙間を遮蔽する弾性材料からなる遮蔽部材」と変更する補正(以下、補正3という。)、弾性部材(弾性材料)に関し補正前の「第1枠部材の内面に固設され」ならびに「前記弾性材料はカーボンブラックが添加されたシリコーンゴム又はカーボンブラックが添加されたウレタンゴムを注型成形法により成形することにより形成され」を、補正後の「前記弾性部材は、カーボンブラックが添加されたシリコーンゴム又はカーボンブラックが添加されたウレタンゴムを注型成形法により成形することにより形成されており、前記主鏡枠の先端部内周に形成された溝に嵌め込まれ且つ接着剤で固着される円環状の保持部と、前記保持部の内周からその中心方向に斜めに周設されて前記副鏡枠の方向に延び、前記副鏡枠の外周面が摺接する摺接片とを備え」と変更する補正(以下、補正4という。)、補正前の「少なくとも前記第2枠部材と摺接する前記弾性材料の表面にダイヤモンドライクカーボン膜を形成した」を、補正後の「前記摺接片における前記副鏡枠の外周面との摺接面にダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている」と変更する補正(以下、補正5という。)、及び、補正前の「第1枠部材」、「第2枠部材」を、補正後「主鏡枠」、「副鏡枠」と補正したことに伴いの「主鏡枠と・・・副鏡枠とを有するレンズ鏡枠」を付加した補正(以下、補正6という。)を含むものである。

ここで、補正1から補正6は、いずれも、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮に該当するので、特許法第17条の2第3項、及び平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下、単に「特許法第17条の2第4項」という。)の規定に適合する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下、単に「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-138334号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の点が記載されている。
ア.【0003】
また、撮影レンズを保持する鏡枠がカメラ本体に対して光軸方向に移動するようにした可動鏡枠を有するカメラにおいては、カメラ本体の前カバーと可動鏡枠との間の間隙からの光線漏れや水、埃等の侵入を防止する必要がある。
・・・
【0005】
また、カメラ等の撮影レンズを保持する複数の鏡枠の間隙の光線漏れまたは水、埃などの侵入等を防止する遮蔽手段を有する鏡枠についても、種々の提案がなされており、例えば、図7に例示するように、回転枠101Aの内周側に、円環形状に形成された遮光部材104Aを配設し、これを移動枠103Aに密着させて遮光するようにしたものがある。
【0006】
なお、図7においては、上記遮光部材104Aの部品形状を、実線によって示しているものであるが、この遮光部材104Aが上記回転枠101Aに装着されて、上記移動枠103Aに密着した状態については、二点鎖線によって図示している。

イ.【0017】
即ち、図1ないし図3に示すように、上記鏡枠は、撮影レンズ10を保持する移動枠3と、カメラ本体(図1においては不図示。図2、図3において符合5によって示す。)に固設される固定枠2と、回動することにより上記撮影レンズ10を保持する上記移動枠3を、その沈胴状態と撮影状態との間で移動させる回転枠1と、例えば天然ゴム、合成ゴム等の遮光性または防水性を有する円環状の弾性部材によって形成され、上記回転枠1と移動枠3との2つの枠間の光線漏れまたは水漏れを防止する遮蔽手段となる遮光部材4によって主に構成されている。

ウ.【0030】
図に示すように本変形例の実施形態においては、遮光部材4が固定枠2cに接着されている。

上記記載事項ア.を参照すれば、移動枠103Aが光軸方向に移動することは明らかである。

上記記載事項イ.を参照すれば、移動枠103Aが撮影レンズ10を保持していることは明らかである。

上記記載事項ア.及び図7から、遮光部材104Aが移動枠103Aの外周面に摺接するように設けられていることは明らかである。

上記記載事項イ.を参照すれば、遮蔽部材が天然ゴム、合成ゴム等の円環状の弾性部材によって形成されていることは明らかである。

図7から、遮蔽部材104Aは、回転枠101Aの先端部内周側に形成された切り欠き部に嵌め込まれた円環状の部分と、円環状の部分の内周からその中心方向に斜めに周設されて移動枠103Aの方向に延び、移動枠103Aの外周面が摺接する摺接部分を備えている点が読み取れる。

上記記載事項、及び各図面から引用例1には、
「回転枠101Aとこの内周側に配置され、撮影レンズ10を保持して光軸方向に移動する移動枠103Aとを有する鏡枠の前記回転枠101Aの内周側に配設され、前記移動枠103Aの外周面に摺接するように設けられていて、前記回転枠101Aと前記移動枠103Aとの間隙の光線漏れまたは水、埃などの侵入等を防止する天然ゴム、合成ゴム等の弾性部材によって形成されている遮蔽部材104Aにおいて、
前記弾性部材は、天然ゴム、合成ゴム等によって形成されており、前記回転枠101Aの先端部内周側に形成された切り欠き部に嵌め込まれた円環状の部分と、前記円環状の部分の内周からその中心方向に斜めに周設されて前記移動枠103Aの方向に延び、前記移動枠103Aの外周面が摺接する摺接部分を備えた遮蔽部材104A。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-249873号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の点が記載されている。
エ.【0032】【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の弾性製品を車両のブレーキ用マスタシリンダに用いられるピストンカップに具体化した第1の実施の形態を図1?図4に基づいて説明する。図2に示すように、車両のブレーキ用マスタシリンダ1は、ブレーキペダルに加えられた力を液圧に変換するものであって、ブレーキ液を貯留する図示しないリザーバと、液圧を発生するシリンダ2とから成り立っている。当該シリンダ2の内部には、その内部を摺動するピストン3が配設されている。また、ピストンの先後端には、それぞれ、ピストン3及びシリンダ2間をシールするための弾性製品としてのピストンカップ4,5が装着されている。
【0033】
本実施の形態においては、両ピストンカップ4,5とも形状は同一であるため、以下には図2の右側のピストンカップ4について説明する。図1に示すように、ピストンカップ4は、ゴム製[例えばEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム)製]の基材6と、該基材6の外周面(摺動面)に設けられたダイヤモンドライクカーボンよりなる被覆層7とを備えている。この被覆層7の膜厚さは、例えば0.05μm?15μmとなっている。

オ.【0082】【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の弾性製品によれば、特に、摺動部品として用いられた場合には、優れた耐摩耗性を発揮しうるという優れた効果を奏する。
【0083】
また、シール部品として用いられた場合には、被シール部材に対する固着による不具合の発生を防止することができるという優れた効果を奏する。
さらに、流体透過防止部材として用いられた場合には、複雑な形状を有していたり、頻繁に変形しうる場合であっても、流体の透過を抑制することができるという優れた効果を奏する。

また、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-352152号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の点が記載されている。
カ.【0011】
そして、中にはフランジ3A,3Bを両サイドに有し、それと同心に巻き軸3C,両端の長ボス3D,短ボス3Eを有するスプール3に35mm幅パーフォレーション付きフィルム1が巻かれて装填され、両端部の長ボス3D短ボス3Eがキャップ6の中心部の孔6Dで受けられ、該キャップ6の外周部のはめこみ部6Eが前記胴部2の側端部にはめこまれている。先端部2Aと後端部2Bの重なり部も含めてキャップされ、しかも2A,2Bのスライドにより、胴部2の外径も異なってくるのでキャップ6は、柔軟性があり、しかも2A,2Bのスライドが可能なようにするために滑り性が良くなければならない。更に遮光性が良くなければならない。そこで本実施例ではカーボン入りのシリコンゴムを使用した。

また、本願出願前の平成10年12月4日に頒布された刊行物である特開平10-319430号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の点が記載されている。
キ.【0087】
この遮光部33は、黒色材料であれば何でもよいが、例えば、カーボンブラック等の顔料を混入させたシリコンゴムを用いることができる。シリコンゴムは、ディスペンサー装置で基板接続部12に沿って直線状に描写形成するとよい。他に、黒色レジストを印刷で塗布することも可能である。

また、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-335935号公報(以下、「周知例3」という。)には、以下の点が記載されている。
ク.【0008】【発明が解決しようとする課題】
上記の従来のラバースプリングは、特開昭60-264012号公報、および特開昭63-237320号公報に開示されるように、加硫ゴムの圧縮成形やシリコンゴムの注型成形によって製造される。

また、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-169910号公報(以下、「周知例4」という。)には、以下の点が記載されている。
ケ.【0044】
このようにして得られた本発明のシリコーンゴム組成物は、注型成形、金型加圧成形、押し出し成形などの種々の成形法によって所望の形状のシリコーンゴムに成形することができる。

また、本願出願前に頒布された刊行物である実願平4-3696号(実開平5-64841号)のCD-ROM(以下、「周知例5」という。)には、以下の点が記載されている。
コ.【図1】、【図2】から、第一の防水シール部材20、第二の防水シール部材21が、固定鏡筒19,中間鏡筒12の先端部内周に形成された溝に嵌め込まれた点が読み取れる。

また、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-319028号公報(以下、「周知例6」という。)には、以下の点が記載されている。
サ.【0012】
図1及び図2は、本発明の第一実施例での要部を示す断面図である。これらの図1及び図2では、カメラ10の後方が図の上方であり、カメラ10の前方が図の下方とされている。ボディ11の環状シール面30は、裏蓋17の閉成方向(カメラ10の前方)に向かうにつれて被密閉開口31の中心側から外側に向けて拡径するテーパ面として形成されている。
【0013】
他方、裏蓋17には、内面周縁部に沿って環状溝23が形成されており、この環状溝23には環状シール部材20が嵌め込まれて接着剤等によって固着されている。この環状シール部材20は、環状溝23から脱出する方向(同図の下方)に向かうにしたがって先細となる断面形状を有しており、裏蓋17の閉成時に環状シール面30に対して弾接する先端部を突起部21としている。

また、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-70430号公報(以下、「周知例7」という。)には、以下の点が記載されている。
シ.【0015】
これらの装置を用い、次のようにして本発明の低摩擦抗菌性カテーテルを製造した。
実施例1
図1に示す装置の真空容器1内に、シリコンゴムからなる被成膜カテーテル基体Sを搬入し、基体Sの生体装着時に体内に挿入される部分が露出するとともに残部が遮蔽板40で覆われるようにして、図示しない回転治具に支持させた。次いで、容器1内を排気装置11の運転により1×10^(-6)Torr以下の真空度とした。その後、プラズマ原料ガス供給部3からメタン(CH_(4) )ガスを容器1内が2×10^(-3)Torrになるまで導入すると共に、高周波電源22から電極21に周波数13.56MHz、電力200Wの高周波電力を印加して、電極21と電極23との間にグロー放電を生じさせ、前記導入したメタンガスをプラズマ化し、このプラズマの下で、カテーテル基体S外周面に膜厚5000ÅのDLC(Diamond Like Carbon) 膜を形成した。

また、本願出願前の平成10年11月10日に頒布された刊行物である特開平10-298440号公報(以下、「周知例8」という。)には、以下の点が記載されている。
ス.【0013】
本発明の炭素膜片含有高分子材料において、前記の潤滑性のある炭素膜は、代表的にはDLC(Diamond Like Carbon) 膜とすることができる。DLC膜は、潤滑性良好で且つ高硬度であり、また比較的低温で形成できる等成膜を容易に行うことができる。本発明の炭素膜片含有高分子材料の製造方法の(a)工程においては、プラズマCVD法においてDLC膜形成のために一般に行われているように、成膜圧力を10^(-3)?数Torr程度、膜形成される電力印加電極の温度を200℃程度以下とすることによりDLC膜を得ることができる。

セ.【0016】
本発明の炭素膜片含有高分子材料において、炭素膜片が窒素-炭素化合物を含むときには該膜片はより高硬度なものとなり、フッ素-炭素化合物を含むときには該膜片の潤滑性が向上して該膜片を含む高分子材料全体の潤滑性が一層優れたものとなる。また、本発明の炭素膜片含有高分子材料及びその製造方法において、前記高分子材料はゴム及び樹脂のうちの少なくとも1種の材料とすることができる。
【0017】
ゴムとしては、天然ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等を例示できる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「回転枠101A」は本願補正発明の「主鏡枠」に相当し、以下、同様に「内周側に配置され」は「内設され」に、「撮影レンズ10」は「光学系」に、「移動枠103A」は「副鏡枠」に、「鏡枠」は「レンズ鏡枠」に、「回転枠101Aの内周側に配設され」は「主鏡枠内面に固着され」に、「前記回転枠101Aと前記移動枠103Aとの間隙の光線漏れまたは水、埃などの侵入等を防止する天然ゴム、合成ゴム等の弾性部材」は「前記主鏡枠と前記副鏡枠との隙間を遮蔽する弾性材料」に、「円環状の部分」は「円環状の保持部」に、「摺接部分」は「摺接片」に、それぞれ相当する。

引用発明の「天然ゴム、合成ゴム等によって形成されており」と、本願補正発明の「カーボンブラックが添加されたシリコーンゴム又はカーボンブラックが添加されたウレタンゴムを注型成形法により成形することにより形成されており」とは、「ゴムにより形成されており」の点で一致する。

引用発明の「切り欠き部」と、本願補正発明の「溝」とは、「凹部」である点で一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「主鏡枠とこれに内設され光学系を保持して光軸方向に移動可能な副鏡枠とを有するレンズ鏡枠の前記主鏡枠内面に固着され、前記副鏡枠の外周面に摺接するように設けられていて、前記主鏡枠と前記副鏡枠との隙間を遮蔽する弾性材料からなる遮蔽部材において、
前記弾性部材は、ゴムにより形成されており、前記主鏡枠の先端部内周に形成された凹部に嵌め込まれた円環状の保持部と、前記保持部の内周からその中心方向に斜めに周設されて前記副鏡枠の方向に延び、前記副鏡枠の外周面が摺接する摺接片とを備えている遮蔽部材。」の発明である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点1;
弾性部材が、本願補正発明は、「カーボンブラックが添加されたシリコーンゴム又はカーボンブラックが添加されたウレタンゴムを注型成形法により成形することにより形成されて」いるのに対して、引用発明は、そのような限定がない点。

相違点2;
凹部が、本願補正発明は、「溝」であるのに対して、引用発明は、「切り欠き部」である点。

相違点3;
弾性部材が、本願補正発明は、「接着剤で固着される」のに対して、引用発明は、そのような限定がない点。

相違点4;
本願補正発明は、摺接片における副鏡枠の外周面との摺接面にダイヤモンドライクカーボン膜が形成されているのに対して、引用発明は、そのような限定がない点。

(4)当審の判断
相違点1について
カーボンブラックが添加されたシリコーンゴムは、従来周知(上記周知例1、2参照)の技術事項であり、また、シリコーンゴムを注型成形することも従来周知(上記周知例3、4参照)の技術事項である。
してみれば、引用発明に周知の技術事項を適用して、上記相違点1に係る発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易である。

相違点2、3ついて
シール部材(引用発明の「弾性部材」に相当する。)を溝に固着することは、従来周知(上記周知例5、6参照)の技術事項である。また、シール部材を接着剤で固着することも、従来周知(上記周知例6、及び、上記引用例1の記載事項ウ.参照)の技術事項である。
してみれば、引用発明に周知の技術事項を適用して、上記相違点2、3に係る発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易である。

相違点4について
引用例2には、摺動面からの異物の侵入を防ぐという意味で、引用発明の「弾性部材」に相当するピストンカップ4、5の外周面(摺動面)にダイヤモンドライクカーボンよりなる被覆層を備えた点が記載されている。
なお、引用例2のピストンカップは、ゴム製と記載されているものの、シリコーンゴムとまでは限定されていない。しかし、シリコーンゴムからなる製品にダイヤモンドライクカーボンよりなる被覆層を設けることも、従来周知(上記周知例7、8参照)の技術事項である。
してみれば、引用発明に、引用例2に記載された発明及び周知の技術事項を適用して、上記相違点4に係る発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易である。

そして、本願補正発明によってもたされる効果は、上記引用発明、引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1、引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年4月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成20年1月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、同手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、上記「2.(1)補正後の本願発明」の項に記載されたとおりのものである。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、前記「2.(2)引用例」に記載したとおりである。

(3)対比・当審の判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「2.(1)補正後の本願発明」で述べた構成の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)対比」、「2.(4)当審の判断」に記載したとおり、引用例1、引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、引用例2に記載された発明、及び従来周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-28 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-16 
出願番号 特願平10-369795
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊岡 智代  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 今関 雅子
森林 克郎
発明の名称 遮蔽部材および遮蔽部材を有するレンズ鏡枠  
代理人 奈良 武  

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