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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1201365
審判番号 不服2006-8872  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-08 
確定日 2009-07-30 
事件の表示 特願2002-270957「ウエハー保持体用測温装置及びウエハー保持体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-111586〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年9月18日の出願であって、平成18年3月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月7日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成20年7月4日付けで審尋がなされ、その指定期間内に回答書が提出されず、さらに、平成21年3月11日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の同年5月11日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年5月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】反応容器内に設置され、抵抗発熱体を有するウエハー保持体の温度を測定するための装置であって、一端を閉じた有底筒状体の有底部内に温度測定素子を挿入し、該有底筒状体の有底部の外表面が平面部を有し、該平面部をウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面又は該表面に設けた凹部の平面部に接触させてなり、これら有底筒状体とウエハー保持体の互いに接触する平面部の面粗度がRaで共に5μm以下であって、有底筒状体とウエハー保持体の接触面積が10?1000mm^(2)であることを特徴とするウエハー保持体用測温装置。」

第3 刊行物に記載された発明
1 刊行物1:特開平6-176855号公報
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、「セラミックスヒーター」(発明の名称)に関して、図1とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。)
「【請求項1】 セラミックス基体中に高融点金属からなる抵抗発熱体を埋設してなるセラミックスヒーターにおいて、前記セラミックス基体のウェハーを載置するウェハー加熱面以外の面にネジ部を設け、このネジ部に測温体の先端を固定したことを特徴とするセラミックスヒーター。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、緻密なセラミックス基体中に高融点金属からなる抵抗発熱体を埋設してなる好ましくは半導体ウェハー加熱用のセラミックスヒーターに関するものである。」
「【0005】本発明の目的は上述した課題を解消して、セラミックスヒーターの温度を正確かつ安定に測定することのできる温度測定構造を有するセラミックスヒーターを提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のセラミックスヒーターは、セラミックス基体中に高融点金属からなる抵抗発熱体を埋設してなるセラミックスヒーターにおいて、前記セラミックス基体のウェハーを載置するウェハー加熱面以外の面にネジ部を設け、このネジ部に温度測定用の熱電対を固定したことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】上述した構成において、熱電対をセラミックス基体にネジ止めして固定しているため、熱電対とセラミックス基体との直接接触する面積が従来の例と比べて大きくなり、その結果セラミックスヒーター自体の温度を正確に測定することができる。また、熱電対とセラミックス基体との固定をネジ止めにより行っているため、温度測定時の接触状態が変化しにくく、セラミックスヒーターの温度を安定して測定することができる。
【0008】
【実施例】図1は本発明のセラミックスヒーターの一例の構成を示す図である。図1に示す実施例において、1は窒化珪素等のセラミックスよりなる円盤状のセラミックス基体、2はセラミックス基体1中に埋設したW、Mo等の高融点金属よりなる抵抗発熱体である。この抵抗発熱体2は好ましくは螺旋状に巻回されるとともに、円盤状のセラミックス基体2を平面的にみると、抵抗発熱体2は渦巻形をなすように配置されている。また、セラミックス基体1のウェハー加熱面1a以外の面、図1に示す例ではセラミックス基体1のウェハー加熱面1aと反対側の面に、深さlの雌ネジ部3を設けている。そして、先端部にこの雌ネジ部3と螺合する雄ネジ部4を有するシース5を準備し、シース5の内部に熱電対6を固定した状態で、シース5の雄ネジ部4とセラミックス基体1のネジ部3とを螺合して、熱電対6を内部に固定したシース5をセラミックス基体1に固定している。」
さらに、図1には、「シース5の先端部外表面が、セラミックス基体1のウエハー加熱面1aと反対側の表面に設けられた雌ネジ部3の底部表面に接触した」状態が示されている。
また、図1には、「シース5の先端部外表面と雌ネジ部3の底部表面は、いずれも平面である」ことが、示唆されている。
以上から、刊行物1には、「ウェハーを載置するウェハー加熱面1aを有するセラミックス基体1中に抵抗発熱体2を埋設してなるセラミックスヒーターの温度を測定する温度測定構造において、シース5の内部に熱電対6を固定した状態で、シース5の先端部外表面が、セラミックス基体1のウエハー加熱面1aと反対側の表面に設けられた雌ネジ部3の底部表面に接触したセラミックスヒーターの温度測定構造。」が記載されている。

2 刊行物2:特開平5-206030号公報
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2には、「加熱装置」(発明の名称)に関して、図1とともに以下の事項が記載されている。
「【0012】・・・端子4の中央付近には例えば平面円形の凹部4bが形成され、凹部4bに面するように雌ネジ4aが形成されている。」
さらに、図1には、「円筒状体5の先端部5aの外表面と端子4の凹部4bの底部表面とは、いずれも平面である」ことが、示唆されている。

3 刊行物3:特開平9-45752号公報
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物3には、「基板処理装置」(発明の名称)に関して、図5とともに以下の事項が記載されている。
図5には、「保護管250aの先端部外表面とホットプレート40の底部表面は、いずれも平面である」ことが、示唆されている。

4 刊行物4:特開2002-190370号公報
当審の拒絶理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物4には、「半導体製造・検査装置用セラミックヒータ」(発明の名称)に関して、図4とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 セラミック基板の表面または内部に発熱体を形成してなるセラミックヒータであって、前記セラミック基板には、測温素子が接触して設けられており、前記測温素子と接触するセラミック基板の面粗度は、Ra≦5μmであることを特徴とする半導体製造・検査装置用セラミックヒータ。
【請求項2】 前記測温素子と接触するセラミック基板の面粗度は、Ra≦2μmである請求項1に記載の半導体製造・検査装置用セラミックヒータ。」
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らも、この技術を採用してシリコンウエハを加熱しようとしたが、その際、ヒータ表面に温度分布が発生してしまうという問題が発生した。そこで、本発明者らは、温度分布の原因について鋭意研究を行った結果、温度制御を行っているにもかかわらず温度分布が発生する理由は、熱電対と接触しているセラミック基板の面粗度が大きく、熱電対と測温素子が点接触となるため、セラミック基板の熱が充分に熱電対まで伝達されず、これが熱電対の測定結果を狂わせていることを突き止めた。
【0006】そこで、本発明者らは、この問題を解消するために更に研究を進めた結果、熱電対と接触しているセラミック基板の面を研磨するか、あるいは、さらに上記セラミック基板の表面に絶縁層を形成することによりその表面を平滑化し、表面の粗度Raを、5μm以下、特に望ましくは2μm以下とすることにより、このような問題が解消できることを知見し、本発明を完成させた。」
「【0009】本発明の半導体製造・検査装置用セラミックヒータにおいて、熱電対などの測温素子が、Ra≦2μmの面粗度を持つセラミック基板と接触した場合には、上記測温素子と上記セラミック基板との接触が面接触に近くなるため、セラミック基板より測温素子に熱が充分に伝達し、セラミック基板の正確な温度測定が可能になる。なお、本発明において、セラミック基板の表面に絶縁層が形成されている場合には、セラミック基板の面粗度は、絶縁層表面の面粗度をいうものとする。Ra>2μmでは、測温素子との接触が点接触となるため、熱が充分に伝達せず、正確な温度測定ができない場合がある。ただし、Raが2?5μmでは、測温素子を横にして接触させるなど、接触面積をある程度確保することで、温度測定の狂いを是正することができる。しかしながら、Raが5μmを超えるとどのような手段をもってしても、正確な温度測定が困難であることがわかった。」
「【0012】また、上記半導体製造・検査装置用セラミックヒータにおいて、上記セラミック基板と上記測温素子とは、上記セラミック基板よりも熱伝導率が高い伝熱板を介して接触していることが望ましい。上記伝熱板により測温素子との接触面積を大きくすることができ、セラミック基板の温度をより正確に測定することができるとからである。」
「【0019】また、この際、熱電対44等の測温素子を内部に有するシースSを、セラミック基板11と接触するように、アルミナパイプPに嵌め込んで固定してもよく、図4に示すように、熱電対44を有するシースSと絶縁層500との間に、金属板等の伝熱板42を配置して熱伝導性を高くしておいてもよい。金属板としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅、貴金属などを使用することができる。また、図4に示したように、伝熱板42とシースSとの接触面積が大きくなるように、伝熱板42に、シースSの先端部分と同様の形状の凹部を設けることが望ましい。」
「【0022】上記セラミック基板と測温素子は、上記した金属板や窒化物セラミック、炭化物セラミック等の材料からなる伝熱板を介して接触していてもよい。このような金属板等の伝熱板は、熱伝導率が高く、熱電対の応答性を改善することができる。また、上記したように、これら伝熱板42に窪みをもうけ、熱電対との接触面積を大きくすると、応答性をさらに改善することができる。」
「【0119】上記表1に示した結果より明らかなように、Raは、0.001μmより小さくなると熱電対との接触面積が逆に小さくなりすぎるため、熱電対の応答性が低下したと考えられる。また、実施例4では、アルミニウム板を介して熱電対が接触しており、Raが大きくなっているものの、応答性の低下は見られなかった。さらに、実施例8?10では、熱電対をシース型にして横にすることにより、接触面積が大きくなり、温度をより正確に測定することができたため、最高温度と最低温度の差が小さくなった。また、熱電対をシース型にして横にすることで接触面積を大きくした場合、Raが5μmまでなら、温度制御が可能であった。」

第4 本願発明と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)との対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
(a)刊行物1発明の「ウェハーを載置するウェハー加熱面1aを有するセラミックス基体1中に抵抗発熱体2を埋設してなるセラミックスヒーター」は、本願発明の「抵抗発熱体を有するウエハー保持体」に相当するので、刊行物1発明の「ウェハーを載置するウェハー加熱面1aを有するセラミックス基体1中に抵抗発熱体2を埋設してなるセラミックスヒーターの温度を測定する温度測定構造」は、本願発明の「抵抗発熱体を有するウエハー保持体の温度を測定するための装置」及び「ウエハー保持体用測温装置」に相当する。
(b)刊行物1の図1の「シース5」の形状から明らかなように、刊行物1発明の「シース5」は、本願発明の「一端を閉じた有底筒状体」に相当し、刊行物1発明の「熱電対6」は、本願発明の「温度測定素子」に相当するから、刊行物1発明の「シース5の内部に熱電対6を固定した状態」は、本願発明の「一端を閉じた有底筒状体の有底部内に温度測定素子を挿入し」た状態に相当する。
(c)刊行物1発明の「シース5の先端部外表面」は、本願発明の「該有底筒状体の有底部の外表面」に相当し、刊行物1発明の「セラミックス基体1のウエハー加熱面1aと反対側の表面に設けられた雌ネジ部3」は、本願発明の「ウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面」「に設けた凹部」に相当し、刊行物1発明の「雌ネジ部3の底部表面」と本願発明の「凹部の平面部」とは、「凹部の」「底部表面」で共通しており、さらに、本願発明の「ウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面又は該表面に設けた凹部」は、「ウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面」と「ウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面」「に設けた凹部」との択一的な記載であるから、いずれか一つを選択することで足りるので、刊行物1発明の「シース5の先端部外表面が、セラミックス基体1のウエハー加熱面1aと反対側の表面に設けられた雌ネジ部3の底部表面に接触した」状態は、本願発明の「該有底筒状体の有底部の外表面」「をウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面又は該表面に設けた凹部の」「底部表面」「に接触させ」た状態で共通している。
よって、両者は、
「抵抗発熱体を有するウエハー保持体の温度を測定するための装置であって、一端を閉じた有底筒状体の有底部内に温度測定素子を挿入し、該有底筒状体の有底部の外表面をウエハー保持体のウエハー加熱面と反対側の表面又は該表面に設けた凹部の底部表面に接触させてなることを特徴とするウエハー保持体用測温装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本願発明のウエハー保持体用測温装置は、「反応容器内に設置され」ているのに対して、刊行物1発明の温度測定構造は、そのような記載がない点。
[相違点2]本願発明は、「有底筒状体の有底部の外表面」と「凹部」が「平面部」を備えているのに対して、刊行物1発明は、「シース5の先端部外表面」と「雌ネジ部3の底部表面」が平面部を備えていることが明記されていない点。
[相違点3]本願発明は、「これら有底筒状体とウエハー保持体の互いに接触する平面部の面粗度がRaで共に5μm以下」との構成を備えているのに対して、刊行物1発明は、そのような構成を備えていない点。
[相違点4]本願発明は、「有底筒状体とウエハー保持体の接触面積が10?1000mm^(2)である」との構成を備えているのに対して、刊行物1発明は、そのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
刊行物1発明の「セラミックスヒーターの温度測定構造」は、半導体ウェハー加熱用(刊行物1の「【0001】・・・半導体ウェハー加熱用のセラミックスヒーター」参照。)なので、刊行物1発明の「セラミックスヒーターの温度測定構造」も、「反応容器内に設置され」ていることは、明らかであるから、相違点1については、本願発明と刊行物1発明は、実質的には相違していない。
仮に、相違しているとしても、刊行物1発明の「セラミックスヒーターの温度測定構造」を「反応容器内に設置」することは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点2について]
(a)刊行物1の図1には、刊行物1発明の「シース5の先端部外表面と雌ネジ部3の底部表面は、いずれも平面である」ことが、示唆されている。
よって、相違点2については、本願発明と刊行物1発明は、実質的には相違していない。
(b)仮に、相違しているとしても、以下のとおりである。
(b-1)刊行物1の図1には、「シース5の先端部外表面と雌ネジ部3の底部表面は、いずれも平面である」ことが、示唆されている。
(b-2)また、刊行物2の「【0012】・・・端子4の中央付近には例えば平面円形の凹部4bが形成され、凹部4bに面するように雌ネジ4aが形成されている。」という記載から、「端子4の」「凹部4b」の底部表面は、平面であることが、示されており、刊行物2の図1には、「円筒状体5の先端部5aの外表面と端子4の凹部4bの底部表面とは、いずれも平面である」ことが、示唆されている。
(b-3)さらに、刊行物3の図5には、「保護管250aの先端部外表面とホットプレート40の底部表面は、いずれも平面である」ことが、示唆されている。
(b-4)上記の(b-1)ないし(b-3)の記載を考慮すれば、刊行物1発明の「シース5の先端部外表面」と「雌ネジ部3の底部表面」を平面とし、刊行物1発明が、請求項1発明のごとく、「有底筒状体の有底部の外表面」と「凹部」が「平面部」を備えるようにすることは、当業者が適宜選択できた程度のことである。

[相違点3について]
(a)上記[相違点2について]で検討したとおり、刊行物1発明の「シース5の先端部外表面」と「雌ネジ部3の底部表面」を平面とすることについては、本願発明と刊行物1発明は、実質的には相違していないか、当業者が適宜選択できた程度のことである。
(b)刊行物4には、「【0005】【発明が解決しようとする課題】本発明者らも、この技術を採用してシリコンウエハを加熱しようとしたが、その際、ヒータ表面に温度分布が発生してしまうという問題が発生した。そこで、本発明者らは、温度分布の原因について鋭意研究を行った結果、温度制御を行っているにもかかわらず温度分布が発生する理由は、熱電対と接触しているセラミック基板の面粗度が大きく、熱電対と測温素子が点接触となるため、セラミック基板の熱が充分に熱電対まで伝達されず、これが熱電対の測定結果を狂わせていることを突き止めた。」という課題が記載されており、この課題を解消するために、「【0006】そこで、本発明者らは、この問題を解消するために更に研究を進めた結果、熱電対と接触しているセラミック基板の面を研磨するか、あるいは、さらに上記セラミック基板の表面に絶縁層を形成することによりその表面を平滑化し、表面の粗度Raを、5μm以下、特に望ましくは2μm以下とすることにより、このような問題が解消できることを知見し、本発明を完成させた。」、すなわち、「セラミック基板の面粗度」「Raを、5μm以下、特に望ましくは2μm以下」としている。
(c)そして、上記の(a)に記載のごとく、刊行物1発明の「シース5の先端部外表面」と「雌ネジ部3の底部表面」を平面とする場合に、両者の接触を良好にするためには、「セラミックス基体1のウエハー加熱面1aと反対側の表面に設けられた雌ネジ部3の底部表面」の面粗度Raを5μm以下にするだけでなく、「雌ネジ部3の底部表面」と接触して熱を伝導する「シース5の先端部外表面」についても、面粗度Raを5μm以下とすべきことは、当業者が容易に理解できることであるから、刊行物1発明の「シース5の先端部外表面」と「雌ネジ部3の底部表面」の両平面の面粗度Raを5μm以下とし、刊行物1発明が、本願発明のごとく、「これら有底筒状体とウエハー保持体の互いに接触する平面部の面粗度がRaで共に5μm以下」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点4について]
(a)刊行物1には「【0007】【作用】上述した構成において、熱電対をセラミックス基体にネジ止めして固定しているため、熱電対とセラミックス基体との直接接触する面積が従来の例と比べて大きくなり、その結果セラミックスヒーター自体の温度を正確に測定することができる。・・・」、刊行物4には「【0009】・・・測温素子を横にして接触させるなど、接触面積をある程度確保することで、温度測定の狂いを是正することができる。・・・」、「【0012】・・・上記伝熱板により測温素子との接触面積を大きくすることができ、セラミック基板の温度をより正確に測定することができる・・・」、「【0019】・・・伝熱板42とシースSとの接触面積が大きくなるように、伝熱板42に、シースSの先端部分と同様の形状の凹部を設けることが望ましい。」、「【0022】・・・伝熱板42に窪みをもうけ、熱電対との接触面積を大きくすると、応答性をさらに改善することができる。」、「【0119】実施例8?10では、熱電対をシース型にして横にすることにより、接触面積が大きくなり、温度をより正確に測定することができた・・・」と記載されており、熱電対(測温素子)とセラミックス基体(基板)との接触面積が大きい方が温度を正確に測定できることが示唆されている。
(b)また、一般的に、測温において、正確な測温を行うためには、測温素子と測温対象物との接触熱抵抗を小さくする必要があることは、技術常識であり、さらに、一般的に、接触熱抵抗を小さくするために接触面積を大きくすることも、技術常識である。
(c)そして、接触面積をどの程度にするかは、どの程度温度を正確に測定する必要があるかによって、当業者が実験などにより適宜決定し得たことであり、「有底筒状体とウエハー保持体の接触面積が10?1000mm^(2)である」ことにより、当業者の予測を超えた臨界的意義を有するとは認められない。
(d)よって、刊行物1発明において、温度を正確に測定するために、刊行物1発明が、本願発明のごとく、「有底筒状体とウエハー保持体の接触面積が10?1000mm^(2)である」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

また、本願発明の効果についても、刊行物1ないし4に記載された発明及び技術常識から予測された範囲内のものであり、格別のものとは認められない。

したがって、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-27 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-15 
出願番号 特願2002-270957(P2002-270957)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 雅彦  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 小野田 誠
河合 章
発明の名称 ウエハー保持体用測温装置及びウエハー保持体  
代理人 山本 正緒  

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