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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1201366
審判番号 不服2006-9245  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-08 
確定日 2009-07-30 
事件の表示 特願2002-201796「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月12日出願公開、特開2004- 46455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.平成18年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年5月8日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.手続の経緯
本願の手続きの経緯は概略以下の通りである。
平成14年 7月10日 出願
平成16年 4月27日 審査請求
平成17年11月30日 拒絶理由通知
平成18年 2月 1日 意見書
平成18年 2月 1日 補正書
平成18年 3月30日 拒絶査定
平成18年 5月 8日 審判請求
平成18年 5月 8日 補正書
平成20年 9月 9日 審尋
平成20年11月 7日 回答書


2. 本件補正の内容
平成18年5月8日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記の補正前の特許請求の範囲から、下記補正後の特許請求の範囲に補正しようとするものである。

<補正前の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
プロセッサおよびメモリをそれぞれ備えた複数のモジュールと、
複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を監視しており、他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると、全ての前記モジュールに停止を指示する監視手段と、
前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされたアドレスを記録するアドレス記憶手段と、
全ての前記モジュールが停止すると、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリに、前記アドレス記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のあるアドレスについてのみ、他のモジュール内のメモリからコピーするデータコピー手段を有する情報処理装置。
【請求項2】 前記データコピー手段は、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュールに固定的な故障が生じていないときだけデータをコピーする、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】 前記データコピー手段は、ダイレクトメモリアクセスによりデータをコピーする、請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項4】 複数の前記モジュールは互いにクロック同期して同じ処理を同時に実行しており、
前記監視手段は、前記各モジュールのプロセッサによるアクセスのアドレスストローブのタイミングの一致により前記プロセッサの動作の一致を監視する、請求項1?3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】 複数の前記モジュールは互いにクロック同期して同じ処理を同時に実行しており、
前記監視手段は、前記各モジュールのプロセッサによる、アクセスのアドレスストローブのタイミング、該タイミングにおけるコマンドおよびアドレスの一致により前記プロセッサの動作の一致を監視する、請求項1?3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】 前記プロセッサはキャッシュを有しており、
前記監視手段の指示により全ての前記モジュールが停止した後、前記データコピー手段がデータをコピーする前に、ロックステップの外れていないモジュールのプロセッサがキャッシュフラッシュを行い、
前記アドレス記憶手段は、前記キャッシュフラッシュによりデータの書き戻されるアドレスを記録する、請求項1?5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】 前記データコピー手段が前記アドレス記憶手段に記録されている全てのアドレスについてデータのコピーを完了すると、全ての前記モジュールが動作を開始する、請求項1?6のいずれか1項に記載の情報処理装置。」

<補正後の特許請求の範囲>
「【請求項1】
互いにクロック同期して同じ処理を同時に実行しており、プロセッサおよびメモリをそれぞれ備えた複数のモジュールと、
前記プロセッサが設けられているバスと接続しており、複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を前記プロセッサによるアクセスのアドレスストローブのタイミングに基づいて監視しており、前記アドレスストローブを受信したタイミングが他のモジュールと異なっていることにより、他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると、全ての前記モジュールに停止を指示する監視手段と、
前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされたアドレスを記録するアドレス記憶手段と、
全ての前記モジュールが停止すると、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリに、前記アドレス記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のある、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについてアクセスされたアドレスについてのみ、他のモジュール内のメモリからコピーするデータコピー手段を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記データコピー手段は、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュールに固定的な故障が生じていないときだけデータをコピーする、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記データコピー手段は、ダイレクトメモリアクセスによりデータをコピーする、請求項1または2記載の情報処理装置。
【請求項4】
複数の前記モジュールは互いにクロック同期して同じ処理を同時に実行しており、
前記監視手段は、前記各モジュールのプロセッサによる、アクセスのアドレスストローブのタイミング、該タイミングにおけるコマンドおよびアドレスの一致により前記プロセッサの動作の一致を監視する、請求項1?3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサはキャッシュを有しており、
前記監視手段の指示により全ての前記モジュールが停止した後、前記データコピー手段がデータをコピーする前に、ロックステップの外れていないモジュールのプロセッサがキャッシュフラッシュを行い、
前記アドレス記憶手段は、前記キャッシュフラッシュによりデータの書き戻されるアドレスを記録する、請求項1?4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記データコピー手段が前記アドレス記憶手段に記録されている全てのアドレスについてデータのコピーを完了すると、全ての前記モジュールが動作を開始する、請求項1?5のいずれか1項に記載の情報処理装置」


3. 本件補正が新規事項の追加であるか否かついての検討
本件補正について検討するに、補正後の請求項1記載の「不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについてアクセスされたアドレスについてのみ、他のモジュール内のメモリからコピーする」という技術的事項は、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下当初明細書と記す。)には記載されておらず、また当初明細書の記載からみて自明な事項でもない。
なお、請求人は審判請求書において当該補正の根拠として段落【0063】【0071】を挙げているが、当初明細書の段落【0063】【0071】にはそれぞれ
「【0063】
アクセスの不一致と、不一致となったコンピューティングモジュール100を通知されると、アドレス記憶部701は、不一致が検出したアクセスおよびそれ以降の、各コンピューティングによるライトアクセスについて、アクセスされたアドレスを記録する。」
「【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、タイミング監視部700が、ロックステップの外れを検出すると、アドレス記憶部701が、ロックステップの外れたコンピューティングモジュールにおいてデータが他のコンピューティングモジュールと異なる可能性のあるメモリのアドレスを記録し、再同期化するとき、データ転送部702が、アドレス記憶部701に記録されているアドレスのデータだけをDMA転送によりコピーするので、ロックステップを早期に検出可能であるとともに短い時間でデータコピーが完了させることができ、固定的な故障でない要因によりロックステップの外れたコンピューティングモジュールを早期に運用に組み込むことができる。」
と記載されているだけで、上記技術的事項の直接的な記載は見あたらない。
また、当初明細書等においては、不一致が検出されたアクセス以前の動作についてはなんら言及されていないのであって、アドレス記憶部がこの不一致が検出されたアクセス以前のライトアクセスのアドレスの記憶をしないものである旨、あるいは、データ転送部がアドレス記憶部に記録されているアドレスのデータの中から、不一致が検出されたアクセス以前のライトアクセスに対応するデータ転送を排除するような動作をする旨の説明もなされていないのであるから、上記技術的事項は間接的にも導き出すことができない事項である。
さらに、技術常識に照らしてみても、上記技術的事項を備えていないものでは、明らかに不合理なものになってしまうと言うものでもない。(現に後述の引用文献1記載のものは、かかる技術的事項を採用してはいない。)
すなわち、当初明細書等のすべての記載を総合しても、上記の技術的事項を導き出し得るものではない。

従って、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。


4. 本件補正の目的についての検討
次に、本件補正の目的について検討するに、本件補正後の請求項1記載の「前記プロセッサによるアクセスのアドレスストローブのタイミングに基づいて」複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を監視し、「前記アドレスストローブを受信したタイミングが他のモジュールと異なっていることにより」他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出する事は、補正前のいずれの請求項にも記載されていなかった事項である。
この点に関して、請求人は審判請求書において「請求項1と請求項4を統合する補正をしました」と説明しているが、補正前の請求項4には「前記監視手段は、前記各モジュールのプロセッサによるアクセスのアドレスストローブのタイミングの一致により前記プロセッサの動作の一致を監視する」とあり、「アドレスストローブのタイミングの一致」を「プロセッサの動作の一致」としていた(本願発明の詳細な説明における段落【0048】の「より簡易的な具体例として、タイミング監視部700は、アドレスストローブのみを受信し、各コンピューティングモジュール100,200,300から同じサイクルでアドレスストローブが受信されればアクセスが一致したと判断してもよい。」なる記載に対応する発明であった。)のに対し、補正後の請求項1では如何なる場合に「動作の一致」と判断するかの限定がなくなり、単に「前記アドレスストローブを受信したタイミングが他のモジュールと異なっていることにより」「不一致となったモジュールを検出する」もの(発明の詳細な説明における段落【0048】記載の「アクセスの一致の監視の具体例としては、タイミング監視部700は、各コンピューティングモジュール100,200,300から同じサイクルでアドレスストローブが受信され、かつ、そのタイミングで受信されたコマンドおよびアドレスが同じであれば、アクセスが一致したと判断すればよい。」なる別の実施例をも包含する発明)になっている。
従って、上記補正事項は補正前の請求項1と請求項4を統合する補正とも、これをさらに減縮したものとも認め得るものではなく、補正前の請求項1に補正前のいずれの請求項にも記載のなかった新たな限定を付加するものであると認められる。従って、本件補正は請求項1の減縮を目的とする補正事項を含むものである。
そして、本件補正前の請求項1に係る発明が「運用状態から切り離されたコンピューティングモジュールを組み込むときの停止時間の短いフォルトトレラントコンピュータを提供すること」(本願発明の詳細な説明の段落【0013】)を解決しようとする課題としていたのに対し、上記補正事項によって、本件補正後の請求項1に係る発明は、請求人が審判請求書で説示するように、各コンピューティングモジュールの動作不一致の迅速な検出と言う、補正前の請求項1に係る発明では解決し得なかった、新たな課題を解決しようとするものであるから、本件補正は明らかに解決しようとする課題を追加するものであり、補正前のそれと同一であるとは言えない。

従って、本件補正は、単に特許法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」を目的とするものでは無く、特許請求の範囲の減縮をも目的とする補正であると認められるところ、当該特許請求の範囲の減縮は特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」には該当しないものである。
また、本件補正が、単に特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正、同第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかである。

よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。


5. 本件補正の独立特許要件についての検討
さらに、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下に検討する。


(1)本件補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記2.において、補正後の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した通りのものである。


(2)引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由において引用された下記引用文献1、2には、それぞれ、下記引用文献記載事項1-1乃至1-10、2-1が記載されている。


<引用文献1>
特開平10-177498号公報(平成10年6月30日出願公開。)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項14】個々に内部メモリを備えたプロセッサを含み、ロックステップ方式で動作する複数の同期処理セットと、同期はずれイベントを検出し、同期はずれ信号を生成する同期はずれ検出器とを含むシステムであって、個々の処理セットがまた、活動化されてメモリ書込みイベントを記録することができる第1記録機構と、少なくとも限られた数のメモリ書込みイベントを記録するだけの容量を備えた第2記録機構と、同期はずれイベントの場合に、同期はずれ信号を受領して前記第1記録機構を活動化する障害入力と、少なくとも第1および第2記録機構で識別された部分のメモリを、同期はずれ処理セット中で再統合するメモリ再統合機構とを含むことを特徴とする、フォールト・トレラント・コンピュータ・システム。」

<引用文献記載事項1-2>
「【請求項17】 前記第2記録機構が、同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数まで、最近のメモリ更新イベントの記録を維持することを特徴とする、請求項14に記載のフォールト・トレラント・コンピュータ・システム。」

<引用文献記載事項1-3>
「【請求項26】 ロックステップ方式で動作する3つの同期処理セットを含み、前記同期はずれ検出器が同期はずれ処理セットを多数決により決定することを特徴とする、請求項14に記載のフォールト・トレラント・コンピュータ・システム。」

<引用文献記載事項1-4>
「【請求項27】 前記同期はずれ検出器が、残りの2つの処理セットのうち1つを選択し、同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットへの入力を供給して前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのアイドルを引き起こし、メモリ書込みイベントのソフトウェア・ログを維持しながら、前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのうち1つを再統合し、続いて前記ソフトウェア・ログを使用して、前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのうち前記のもう1つを再統合するように配列されることを特徴とする、請求項26に記載のフォールト・トレラント・コンピュータ・システム。」

<引用文献記載事項1-5>
「【0003】添付の図面の図1は、典型的なシステムの一例を示す概観図であり、3つの同じ処理(CPU)セット10、11、12が、共通のクロック16の下で同期(sync)して動作する。」

<引用文献記載事項1-6>
「【0004】図1に示すように、3つの処理セット10、11、12の出力は、処理セット10、11、12の動作を監視する、障害検出ユニット(ボータ)17に供給される。処理セット10、11、12が正常に動作している場合は、これらは同じ出力を生成し、ボータ17に送る。したがって、出力が合致している場合は、ボータ17は、処理セット10、11、12から入出力(I/O)サブシステム18へコマンドを通過させ、動作させる。しかし、各処理セットからの出力が異なる場合は、これは何かが不適当であることを示し、ボータは、I/O動作に影響を与える前に、何らかの補正処置を行う。」

<引用文献記載事項1-7>
「【0030】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態について、同様の参照符号が同様の特徴に関係する添付の図面に関連して、以下に述べる。
【0031】図3は、機能に関して本発明の一例のエレメントを表す、概略的なブロック・ダイアグラムである。図3は、一般に、例えば図1に示すシステムなどのフォールト・トレラント・コンピュータ・システム用の処理セット10/11/12のうち1つを表す図である。」

<引用文献記載事項1-8>
「【0032】図3では、処理エンジン(例えば中央処理装置(CPU))20および内部状態記憶装置(メモリ)22は、内部バス23で接続される。外部接続、例えば内部バス23からの接続13、外部クロック用の入力15、およびハードウェア割込み入力14も設けられる。」

<引用文献記載事項1-9>
「【0062】この例では、処理セット12に、このシステムを同期はずれにするRAMソフト・エラーがあるものと想定する。ボータは同期はずれイベントを検出し、続行する処理セット10を任意に選別し、処理セット11および12をアイドル状態にする。処理セット10、11、および12のそれぞれは、それ自体の主ダーティRAMおよび第2ダーティ・ページ記録を有し、その全てが、同期はずれイベント以降に特異にダーティにされたデータを捕捉する。
【0063】処理セット11を再統合するために、処理セット10のダーティRAM、処理セット10の第2ダーティ・ページ記録、処理セット11のダーティRAM、および処理セット11の第2ダーティ・ページ記録においてダーティであると挙げられた全てのページを、処理セット10から処理セット11までコピーする。
【0064】その後、処理セット12を再統合するために、処理セット10のダーティRAM、処理セット10の第2ダーティ・ページ記録、処理セット12のダーティRAM、および処理セット12の第2ダーティ・ページ記録においてダーティであると挙げられた全てのページを、処理セット10から処理セット12までコピーする。」

<引用文献記載事項1-10>
「処理セット10」「処理セット11」および「処理セット12」と「ボータ17」が「内部バスからの接続13」によって接続されている「モジュラ三重化フォールト・トレラント・コンピュータ・システムを示す概観図」(【図1】より)


<引用文献2>
特開昭63-175937号公報(昭和63年7月20日出願公開)

<引用文献記載事項2-1>
「3台以上のプロセッサを多重化し、各プロセッサの出力を多数決論理回路によりチェックして、プロセッサの障害を検出するようにした情報処理装置において、
前記多数決論理回路によりプロセッサの障害を検出した場合、全プロセッサの動作を一旦停止し、障害を起こしたプロセッサの内部状態を正常なプロセッサの内部状態と同一にした後、全プロセッサの動作を再開させることを特徴とする障害回復方式。」(特許請求の範囲第1項)


(3)引用発明の認定

ア.引用文献1には上記引用文献記載事項1-1記載の通りの「個々に内部メモリを備えたプロセッサを含み、ロックステップ方式で動作する複数の同期処理セットと、同期はずれイベントを検出し、同期はずれ信号を生成する同期はずれ検出器とを含むシステムであって、個々の処理セットがまた、活動化されてメモリ書込みイベントを記録することができる第1記録機構と、少なくとも限られた数のメモリ書込みイベントを記録するだけの容量を備えた第2記録機構と、同期はずれイベントの場合に、同期はずれ信号を受領して前記第1記録機構を活動化する障害入力と、少なくとも第1および第2記録機構で識別された部分のメモリを、同期はずれ処理セット中で再統合するメモリ再統合機構とを含むことを特徴とする、フォールト・トレラント・コンピュータ・システム。」が記載されている。

イ.そして、該システムは、上記引用文献記載事項1-2の通り「前記第2記録機構が、同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数まで、最近のメモリ更新イベントの記録を維持」するものである。

ウ.また、該システムは、上記引用文献記載事項1-3の通り「ロックステップ方式で動作する3つの同期処理セットを含み、前記同期はずれ検出器が同期はずれ処理セットを多数決により決定」し、上記引用文献記載事項1-4の通り「前記同期はずれ検出器が、残りの2つの処理セットのうち1つを選択し、同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットへの入力を供給して前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのアイドルを引き起こし、メモリ書込みイベントのソフトウェア・ログを維持しながら、前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのうち1つを再統合し、続いて前記ソフトウェア・ログを使用して、前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのうち前記のもう1つを再統合するように配列される」ものでもある。

エ.また、上記引用文献記載事項1-5、1-7の記載等からみて、上記「同期処理セット」も「共通のクロックの下で同期して動作する」ものを前提としていることは明らかである。

オ.また、上記引用文献記載事項1-8、1-10からも明らかなよう、上記「同期はずれ検出器」は「同期処理セット」の「プロセッサ」に「内部バス」で接続されている。

カ.そして、上記引用文献記載事項1-9の記載から見て上記「メモリ再統合機構」は上記「アイドル」の後「同期はずれ処理セット」ではない「処理セット」における第1および第2記録機構で識別された部分のメモリを「同期はずれ処理セット」のメモリ「までコピーする」ことを行っている。

以上のア?カより、引用文献1には下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「個々に内部メモリを備えたプロセッサを含み、ロックステップ方式で動作する複数の同期処理セットと、同期はずれイベントを検出し、同期はずれ信号を生成する同期はずれ検出器とを含むシステムであって、個々の処理セットがまた、活動化されてメモリ書込みイベントを記録することができる第1記録機構と、少なくとも限られた数のメモリ書込みイベントを記録するだけの容量を備えた第2記録機構と、同期はずれイベントの場合に、同期はずれ信号を受領して前記第1記録機構を活動化する障害入力と、少なくとも第1および第2記録機構で識別された部分のメモリを、同期はずれ処理セット中で再統合するメモリ再統合機構とを含むことを特徴とする、フォールト・トレラント・コンピュータ・システム
であって
前記第2記録機構が、同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数まで、最近のメモリ更新イベントの記録を維持し、
ロックステップ方式で動作する3つの同期処理セットを含み、前記同期はずれ検出器が同期はずれ処理セットを多数決により決定するものであり、
前記同期はずれ検出器が、残りの2つの処理セットのうち1つを選択し、同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットへの入力を供給して前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのアイドルを引き起こし、メモリ書込みイベントのソフトウェア・ログを維持しながら、前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのうち1つを再統合し、続いて前記ソフトウェア・ログを使用して、前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのうち前記のもう1つを再統合するように配列されるものであり、
上記3つの同期処理セットが、共通のクロックの下で同期して動作し、
上記同期はずれ検出器は上記同期処理セットのプロセッサとバスで接続されており、
上記メモリ再統合機構は、上記アイドルの後、上記同期はずれ処理セットではない処理セットにおける上記第1および第2記録機構で識別された部分のメモリを上記同期はずれ処理セットのメモリまでコピーするものである
フォールト・トレラント・コンピュータ・システム。」


(4)対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

ア.引用発明は「コンピュータ・システム」であるから、本願発明と同様に「情報処理装置」と言えるものである。

イ.また、引用発明における「複数の同期処理セット」は、本願発明における「複数のモジュール」に対応付けられるものであるところ、前者は「共通のクロックの下で同期して動作し」、「個々に内部メモリを備えたプロセッサを含」むのであるから、後者と同様に「互いにクロック同期して同じ処理を同時に実行しており、プロセッサおよびメモリをそれぞれ備えた複数のモジュール」とも言えるものである。

ウ.引用発明における「同期はずれ検出器」は、本件補正発明における「監視手段」に対応付けられるものである。
そして、前者は「上記同期処理セットのプロセッサとバスで接続されて」いるのであるから、後者と同様に「前記プロセッサが設けられているバスと接続して」いると言える。
また、前者は「同期はずれ処理セットを多数決により決定するもの」であるから、後者と同様に「複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を」「監視して」いると言える。
さらに、前者は「残りの2つの処理セットのうち1つを選択し、同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットへの入力を供給して前記同期はずれ処理セットおよび残りの処理セットのアイドルを引き起こ」すものであるところ、「アイドル」状態では「処理セット」の処理が進行しなくなるのであるから、「処理セット」は「停止」しているとも言え、前者と後者は「他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると」「前記モジュールに停止を指示する」点で共通する。
よって、引用発明における「同期はずれ検出器」と、本件補正発明における「監視手段」とは「前記プロセッサが設けられているバスと接続しており、複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を」「監視しており、」「他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると、」「前記モジュールに停止を指示する監視手段」と言える点で共通する。

エ.引用発明における「第1記録機構」および「第2記録機構」は、本件本補正発明における「アドレス記憶手段」に対応づけられるものである。
「第1記録機構」は「同期はずれイベントの場合に」「活動化」されるのであるから、「前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると」記録を開始するものである。
また「第2記録機構」は「同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数まで、最近のメモリ更新イベントの記録を維持」するものであるから、「前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると」記録を維持するものである。
そして、「第1記録機構」は「メモリ書込みイベントを記録する」ものであり、しかも、「第2記録機構」は、「最近のメモリ更新イベントの記録を維持」するものであるから、該「第1記録機構」および「第2記録機構」とによって「不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされた」イベントの記録「を記録する」「記憶手段」が構成されているとも言えるものである。
一方、本件補正発明における「アドレス記憶手段」が記憶する「アドレス」も「イベントの記録」と言えるものである。
従って、引用発明における「第1記録機構」および「第2記録機構」と、本件補正発明における「アドレス記憶手段」とは「前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされた」イベントの記録「を記録する」「記憶手段」である点で共通する。

オ.引用発明における「メモリ再統合機構」は、本件補正発明における「データコピー手段」に対応付けられる。
そして、前者は「上記アイドルの後」に「コピーする」ものであるから、後者と同様に「前記モジュールが停止すると」「コピーするデータコピー手段」と言えるものである。
また、前者における「上記同期はずれ処理セットのメモリ」とは、後者における「動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリ」に他ならないものであり、前者における「上記同期はずれ処理セットではない処理セットにおける」「メモリ」とは後者における「他のモジュール内のメモリ」に他ならない。
さらに、前者における「上記第1および第2記録機構で識別された部分のメモリを」コピーすることは、後者における「前記アドレス記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のある、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについてアクセスされたアドレスについてのみ」コピーすることに対応付けられるものであるところ、いずれも「前記記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のある」イベントの記録「について」コピーするものである点では共通すると言える。
従って、引用発明における「メモリ再統合機構」と、本件補正発明における「データコピー手段」とは、「前記モジュールが停止すると、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリに、前記記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のある」イベントの記録「について」「、他のモジュール内のメモリからコピーするデータコピー手段」である点で共通する。

よって、本件補正発明と引用発明とは下記一致点で一致し、下記相違点1?4で相違する。

<一致点>
「互いにクロック同期して同じ処理を同時に実行しており、プロセッサおよびメモリをそれぞれ備えた複数のモジュールと、
前記プロセッサが設けられているバスと接続しており、複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を監視しており、他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると、前記モジュールに停止を指示する監視手段と、
前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされた」イベントの記録を記録する記憶手段と、
前記モジュールが停止すると、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリに、前記記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のあるイベントの記録について、他のモジュール内のメモリからコピーするデータコピー手段を有する情報処理装置。」

<相違点1>
本件補正発明における監視手段が「全ての」前記モジュールに停止を指示するのに対し、引用発明においては、「同期はずれ処理セット」および「残りの処理セット」のみをアイドルさせている点。

<相違点2>
本件補正発明における記憶手段が「アドレス」を記録する「アドレス」記憶手段であるのに対し、引用発明は「イベントの記録」として「アドレス」そのものを記録するものではない点。

<相違点3>
本件補正発明における監視手段が「前記プロセッサによるアクセスのアドレスストローブのタイミングに基づいて」監視しており、「前記アドレスストローブを受信したタイミングが他のモジュールと異なっていることにより、」不一致となったモジュールを検出するのに対し、引用文献1においては「3つの処理セット10、11、12の出力」の「合致」を監視する旨の記載(上記引用文献記載事項1-6参照)はあるものの、「同期はずれ検出器」の具体的な構成の明示は無く、「アドレスストローブ」を用いるか否かは不明である点。

<相違点4>
本件補正発明におけるデータコピー手段が「不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについてアクセスされたアドレスについてのみ」コピーするのに対し、引用発明は「前記第2記録機構が同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数まで、最近のメモリ更新イベントの記録を維持し」ているため、「同期はずれイベント」以前の「メモリ更新イベント」も再統合に用いられる可能性がある点。


(5)判断
以下、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
上記引用文献2(特に上記引用文献記載事項2-1参照)には、引用発明と同様に、プロセッサを多重化し多数決論理により障害を検出するようにした情報処理装置の障害回復方式において、全プロセッサの動作を一旦停止する技術思想が記載されており、同様に障害回復に関する技術であるところの引用発明へこの技術思想の転用を試みることは、当業者の通常の創作能力の発揮に他ならないものであるかから、引用発明における「同期はずれ処理セット」および「残りの処理セット」のみをアイドルさせる構成を、引用文献2記載のものの如く「全プロセッサ」すなわち「全てのモジュール」に停止を指示する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
更新イベントの記録を「アドレス」で行うことは、当業者が必要に応じて適宜採用している周知慣用技術に他ならないものである(例えば、特開平09-034741号公報(平成9年2月7日出願公開。特に【請求項4】。)、特開昭63-292336号公報(昭和63年11月29日出願公開。特に第2頁上右欄第17行?同頁下左欄第2行。)等参照。)から、引用発明におけるイベントの記録として「アドレス」を採用することは、当業者であれば適宜になし得た設計変更に過ぎないものである。

<相違点3について>
アドレスストローブのタイミングに基づいて装置の異常を監視することは、当該分野においては古くから適宜に採用されていた周知慣用技術に過ぎないものである(例えば、特開昭62-031441号公報(昭和62年2月10日出願公開。特に第4頁上右欄第7行?同頁下右欄第2行。)や特開平06-342381号公報(平成6年12月13日出願公開。特に段落【0082】【0083】。)等参照。)から、引用発明における「同期はずれ検出器」を「アドレスストローブ」を用いるものとして、「前記プロセッサによるアクセスのアドレスストローブのタイミングに基づいて」監視して、「前記アドレスストローブを受信したタイミングが他のモジュールと異なっていることにより、」不一致となったモジュールを検出するものとすることは、当業者であれば適宜に採用し得た設計的事項に過ぎないものである。

<相違点4について>
引用発明においては「第2記録機構」は「同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数まで、最近のメモリ更新イベントの記録を維持」するものであるところ、メモリ使用量の節約は当業者が通常追求する設計上の課題に他ならず、引用発明における「第2記録機構」が行う「最近のメモリ更新イベント」の「記録」の「維持」を「同期はずれイベントに続いて前記第1記録機構を活動化する時間をカバーするのに十分な数」の下限に設定することは当業者が通常想到する設計的事項である。
そしてこのように設定された場合には、メモリ再統合機構では必然的に「同期はずれイベント」以前の「メモリ更新イベント」の再統合はなされない。
従って、引用発明において「不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについてアクセスされたアドレスについてのみ」コピーするようになすことも、当業者が適宜に設定し得る設計的事項に過ぎないものである。

してみると、本件補正発明の構成は引用文献1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(6)小結
従って、仮に本件補正が特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。


6.むすび
以上の通り、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定にも違反するものであり、さらに、仮に本件補正が特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。

従って、本件補正は特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

よって、上記補正却下の決定の結論の通り決定する。



第2.本願発明について

1.手続きの経緯・本願発明の認定
本願の手続きの経緯の概略は上記第1.1.記載の通りのものであり、さらに、平成18年5月8日付けの手続補正は上記第1.のとおり却下された。
従って、本願の請求項1?7に係る発明は、平成18年2月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された通りのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」と言う。)は、上記第1.2.に補正前の特許請求の範囲の【請求項1】として記載した通りのものである。


2.引用文献の記載内容・引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1、2にはそれぞれ上記第1.5.(2)記載の引用文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記第1.5.(3)で認定した通りの引用発明が記載されていると認められる。


3.対比・判断
以下、本願発明と引用発明とを比較する。

(1)引用発明は「コンピュータ・システム」であるから、本願発明と同様に「情報処理装置」と言えるものである。

(2)引用発明における「複数の同期処理セット」は、本願発明における「複数のモジュール」に相当する。

(3)引用発明における「同期はずれ検出器」は、本願発明における「監視手段」に対応付けられるものであるところ、両者は「複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を監視しており、他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると、」「前記モジュールに停止を指示する監視手段」である点で共通する。

(4)引用発明における「第1記録機構」および「第2記録機構」は、本願発明における「アドレス記憶手段」に対応付けられるものであるところ、両者は「前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされた」イベントの記録「を記録する」「記憶手段」である点で共通する。

(5)引用発明における「メモリ再統合機構」は、本願発明における「データコピー手段」に対応付けられるものであるところ、両者は「前記モジュールが停止すると、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリに、前記記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のある」イベントの記録「についてのみ、他のモジュール内のメモリからコピーするデータコピー手段」である点で共通する。

よって、本願発明と引用発明とは、
「プロセッサおよびメモリをそれぞれ備えた複数のモジュールと、
複数の前記モジュールのプロセッサの動作の一致を監視しており、他のモジュールのプロセッサと動作が不一致となったモジュールを検出すると、前記モジュールに停止を指示する監視手段と、
前記監視手段により、いずれかのモジュールのプロセッサの動作が他のモジュールと不一致となったことが検出されると、不一致が検出されたアクセスおよびそれ以降の、前記各モジュールのプロセッサによるライトアクセスについて、アクセスされたイベントの記録を記録する記憶手段と、
前記モジュールが停止すると、動作が他のモジュールと不一致となったことが前記監視手段により検出された前記モジュール内のメモリに、前記記憶手段に記録された、他のモジュールと異なる可能性のあるイベントの記録についてのみ、他のモジュール内のメモリからコピーするデータコピー手段を有する情報処理装置。」
である点で一致し、上記第1.5.(4)に記した相違点1および2と同じ相違点が有ると言える。

しかしながら、上記相違点1および2については上記第1.5.(5)で判断した通りであるから、引用発明における「同期はずれ処理セット」および「残りの処理セット」のみをアイドルさせる構成を、引用文献2記載のものの如く「全プロセッサ」すなわち「全てのモジュール」に停止を指示する構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、また、引用発明におけるイベントの記録として「アドレス」を採用することは、当業者であれば適宜になし得た設計変更に過ぎないものである。

してみると、本願発明の構成は引用文献1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。

よって、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-28 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-16 
出願番号 特願2002-201796(P2002-201796)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 正典▲高▼橋 正▲徳▼鳥居 稔  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 鈴木 匡明
久保 光宏
発明の名称 情報処理装置  
代理人 木村 明隆  
代理人 机 昌彦  
代理人 浅井 俊雄  

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