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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1201410
審判番号 不服2007-30373  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-08 
確定日 2009-07-30 
事件の表示 平成10年特許願第 34631号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月24日出願公開、特開平11-227985〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年2月17日の出願であって、平成19年10月1日付けでなされた拒絶査定に対して、これを不服として、平成19年11月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年11月19日に明細書を対象とする手続補正書が提出されたものである。

第2 平成19年11月19日にした手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成19年11月19日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
【理由】
1.本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりにする補正を含むものである。

<補正後の請求項1>
「像担持体と、
前記像担持体に現像画像を形成する画像形成手段と、
前記像担持体上の前記現像画像を被転写材に転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記被転写材上の前記現像画像を定着する定着手段と、
前記被転写材を供給する給紙手段と、
前記給紙手段から前記転写手段に達する間に設けられ、前記被転写材を一旦停止させて先端を揃えた後前記像担持体上の現像画像に同期して前記転写手段方向に挾持搬送する、正逆回転可能なレジストローラ手段と、
前記レジストローラ手段から前記定着手段に達する間に設けられて前記被転写材を搬送する搬送手段と、
少なくとも前記搬送手段を搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な搬送ユニットと、
前記レジストローラ手段におけるジャム発生時に、前記被転写材が、前記レジストローラ手段から前記搬送手段に亘ってある場合に、前記被転写材後端が前記レジストローラ手段を通過するまで、前記レジストローラ手段を正回転させる制御手段と、
前記レジストローラ手段における前記ジャム発生を表示する表示手段とを具備する事を特徴とする画像形成装置。」

補正前の請求項1の記載は、次のとおりであったところ、補正後の請求項1は、補正前の請求項1について、以下の(a)及び(b)のように補正するものである。

<補正前の請求項1>
「像担持体と、
前記像担持体に現像画像を形成する画像形成手段と、
前記像担持体上の前記現像画像を被転写材に転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記被転写材上の前記現像画像を定着する定着手段と、
前記被転写材を供給する給紙手段と、
前記給紙手段から前記転写手段に達する間に設けられ、前記被転写材を一旦停止させて先端を揃えた後前記像担持体上の現像画像に同期して前記転写手段方向に挾持搬送する、正逆回転可能なレジストローラ手段と、
前記レジストローラ手段から前記定着手段に達する間に設けられて前記被転写材を搬送する搬送手段と、
少なくとも前記搬送手段とを搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な引き出しユニットと、
前記レジストローラ手段におけるジャム発生時に、前記被転写材が、前記レジストローラ手段から前記搬送手段に亘ってある場合に、前記被転写材後端が前記レジストローラ手段を通過するまで、前記レジストローラ手段を正回転させる制御手段とを具備する事を特徴とする画像形成装置。」

<補正事項>
(a)補正前の請求項1に、「少なくとも前記搬送手段とを搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な引き出しユニット」とあるのを、補正後の請求項1で、「少なくとも前記搬送手段を搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な搬送ユニット」と、誤記を訂正する補正。

(b)補正後の請求項1に、「前記レジストローラ手段における前記ジャム発生を表示する表示手段」という事項を新たに追加する補正。

上記補正事項(a)は、明細書の誤記の訂正を目的とするものであるが、上記補正事項(b)は、補正前の請求項1に存在しない「表示手段」を、付加的に追加するものであるから、補正前のいずれの事項をも限定するものではなく、特許請求の範囲の減縮を目的としたものでないことは明らかである。

したがって、本件補正は、特許請求の範囲に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものでないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

参考のため、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、次に検討する。

2.本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の<補正後の請求項1>)により特定されたとおりのものと認める。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平6-219598号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

<引用文献>
(a)
「【0015】{プリンター部}次にプリンター部の各部の構成について説明する。
(画像形成手段)図1において、1は像担持体である感光ドラムであって、中心部で軸支されており図の矢印方向に回転駆動される。この感光ドラム1の周囲には、その回転方向にしたがって、前露光ランプ11、一次帯電器2、レーザー発振器等を装備する露光光学系3、電位センサー12、現像装置4、ドラム上光量検知手段13、転写ドラム5、クリーニング装置6が順に配置されている。上記前露光ランプ11及び一次帯電器2において感光ドラム1の表面に均一な帯電量の電荷を与える。次いで露光光学系3により、記録画像信号に応じて変調された例えばレーザービーム等の光線Eをポリゴンミラー3A,レンズ3B等を介して感光ドラム1上に露光させることによって、静電潜像を形成する。更に現像装置4(本実施例においてはイエロー,シアン,マゼンタ,ブラックといった4色の現像剤(以下『トナー』と言う)を夫々収納した4個の現像装置4Y,4C,4M,4Bkを並設し、これらが偏心カム24Y,24C,24M,24Bkの動作により感光ドラム1に対して択一的に近接するように移動可能に構成されている)によって上記静電潜像を顕画像化する。・・・
【0016】(給送手段)給紙ユニット40は、被記録材である記録紙Pを収納するためのカセット41、該カセット41内から記録紙Pを1枚ずつ送り出すためのピックアップローラ42、該ピックアップローラ42から送り出された記録紙Pを転写搬送ユニット50まで搬送するための給紙ローラ43A,43B、搬送ローラ45A,45B,45C及び紙ガイド等が設けられている。
【0017】(搬送手段,レジスト手段)図2において、上記給紙ユニット40から給送された記録紙Pは、搬送部50Aを構成する搬送ガイド48A,48B,48C,48D,48Eにガイドされながら搬送ローラ46,47A,47Bによって搬送される。また44はレジスト手段であるレジストローラ対であって、画像形成のタイミングに合わせて記録紙Pを後述する転写ドラム5に送り出すものである。また48F,48Gは上記レジストローラ対44より転写ドラム5に記録紙Pを導く吸着ガイドである。尚、図中二点鎖線で示すのは、装置本体より引き出し可能な範囲を示すものである。
【0018】・・・更に49A,49Cは搬送される記録紙Pの先端を検知するための記録紙検知センサーであって、搬送部50Aの入り口及びレジストローラ対44の直前の2箇所に取り付けられている。上記記録紙検知センサー49A,49Cにはフォトセンサー等が用いられている。」
「【0021】・・・前記搬送手段50A及び転写ドラム5を有してなる転写搬送ユニット50は、スライダー62A,62Bにより装置本体から手前側に引き出すことが可能に構成されている。これは、ジャム処理或いはメンテナンスを安全,確実,容易に行うためである。」
「【0024】(定着ユニット)また図1において定着ユニット9は、内部にハロゲンヒータ等の熱源を備えた定着ローラ9Aと該定着ローラ9Aに加圧される加圧ローラ9B(加圧ローラ側に熱源を有する場合もある)、上記ローラ対のニップ部に記録紙Pを導くための搬送ベルト9Cと、入口ガイド9D、上記ローラ対から排出された記録紙Pをさらに装置外に搬送するための排紙ローラ対9E等を装備している。画像が転写された記録紙Pは上記定着ローラ9A及び加圧ローラ9B間を通過する際に加熱及び加圧されて転写画像の定着が行われ、排出ローラ対9Eによって装置外に設けた排出トレイ10に搬送排出される。」
「【0026】(制御ユニット)次に上記各ユニットの動作を制御するための制御ユニットについて説明する。制御ユニットは図示しないが、各ユニット内の機構の動作を制御する制御基板やモータドライブ基板等からなる。・・・」
「【0028】上記搬送部50Aにおいて、図2に示すように記録紙Pは搬送ローラ対46A、47A,47B及び搬送ガイド48A,48B,48C,48D,48Eの作用によってレジストローラ対44まで搬送される。このときレジストローラ対44は停止しており、記録紙Pの先端部はニップ部に突き当たって斜行が補正される。・・・その後、画像形成手段が画像形成を開始するタイミングを基準にして一定時間レジストローラ対44及び上記搬送ローラ対46A、47A,47Bは回転を開始する。この回転開始時期は、記録紙Pと感光ドラム1上のトナー画像とが画像転写領域においてちょうど一致するようにタイミングが設定されている。」
「【0029】・・・そして、前述したプロセスにより感光ドラム1上に形成されたトナー画像が転写帯電器5Bによって記録紙表面に転写された後、分離部まで搬送される。・・・」

(b)
「【0037】ここで全ての動作を停止させてしまうと記録紙を連続的に給紙している場合には、例えば図6(図は分離ジャムを生じた場合を示す)に示すように、ジャム紙P1の次に給紙中の記録紙P2が給紙ユニット40と転写搬送ユニット50とにまたがった状態で停止することが考えられる。この場合、転写搬送ユニット50を装置本体より引き出すことができず、ジャム処理を行うことが非常に困難になる。
【0038】そこで本実施例においては、転写ドラム5及びレジストローラ対44が停止した後に、レジストローラ対44より記録紙搬送方向上流側の搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bを一定時間回転させるようにしている。これによって上記給紙ユニット40と転写搬送ユニット50間にまたがっている記録紙P2が搬送されて先端がレジストローラ対44に突き当たり、該レジストローラ対44と搬送ローラ対47A,47B間で紙P2がたるみ始め、紙のこしによって搬送ガイド48Dが大きく回動してそこに通常の空間部S1(第1空間部)より大きな空間部S2(第2空間部)が形成される。そして、少なくとも記録紙P2の後端が給送ユニット40を通過し、搬送部50Aに搬送されるまで各搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bを回転駆動させた後に停止させる。このとき記録紙P2は上記空間部S2に大きく湾曲した状態で停止している。その後、上記レジストローラ対44間の圧接を解除させて更に吸着ローラ5Gを転写ローラ5より退避させる(これは本実施例において必須の動作ではない)。そして記録紙搬送不良のメッセージを装置の表示部に表示させ、使用者にジャム処理を促す。」
「【0040】ここで、上記転写ドラム5及びレジストローラ対44停止後、搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bを駆動するシーケンスについて具体的に説明する。分離ジャム検知装置51Bにより分離部のジャム発生を検知すると、まず転写ドラム5及びレジストローラ対44を停止させて、次に搬送部50Aの入口近傍の記録紙検知センサー49Aをチェックする。そして、該記録紙検知センサー49Aが遮られていない(ON状態)、即ち記録紙が存在しない場合には搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bの駆動をすぐに停止させる。また上記記録紙検知センサー49Aが遮られており記録紙P2があると検知した場合(OFF状態)には、上記搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bの駆動を停止させずに駆動を続ける。その後上記記録紙検知センサー49Aの監視を続けて、記録紙P2の後端が通過した瞬間(センサー49AはOFF→ON)に搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bの駆動を停止させる。このようにすることで、給送ユニット40と転写搬送ユニット50にまたがって記録紙Pが存在する事態を回避することができる。」

(c)
「【0042】また、図7に示すように、転写部ジャムが生じた場合(転写部ジャム検知装置51Aによるジャム検知の場合)、ジャム紙P1の前の記録紙P0が転写搬送ユニット50と定着ユニット9との間にまたがって存在することが考えられる(本実施例においては、搬送ベルト9Cは転写搬送ユニット50と共に引き出され、入口ガイド9Dは装置本体側に残るように構成されている)。
【0043】この場合も、定着ユニット9は転写搬送ユニット50とは独立に駆動されており、転写ドラム5が停止後に定着ローラ対9A,9Bを駆動させて記録紙P0を排出させることで記録紙P0が転写搬送ユニット50と定着ユニット9との間にまたがって存在する事態を解消することができる。」

以上の記載及び図面の記載を総合すれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
「感光ドラム1と、
前記感光ドラム1にトナー画像を形成する露光ランプ11、一次帯電器2、露光光学系3、電位センサー12及び現像装置4と、
前記感光ドラム1上の前記トナー画像を記録紙に転写する転写帯電器5Bと、
前記転写帯電器5Bにより転写された前記記録紙上の前記トナー画像を定着する定着ユニット9と、
前記記録紙を供給する給紙ユニット40と、
前記給紙ユニット40から前記転写帯電器5Bに達する間に設けられ、前記記録紙を一旦停止させて先端を揃えた後前記感光ドラム1上のトナー画像に同期して前記転写帯電器5B方向に挾持搬送する、レジストローラ対44と、
前記レジストローラ対44から前記定着ユニット9に達する間に設けられて前記記録紙を搬送する搬送ベルト9Cと、
少なくとも前記搬送ベルト9C、前記転写ドラム5、前記搬送手段50Aを搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な転写搬送ユニット50と、
ジャム発生時に、前記記録紙が、前記搬送手段50Aの入り口に設けられた記録紙検知センサー49Aにより検知されており、給紙ユニット40と転写搬送ユニット50にまたがって存在している場合に、記録紙の後端を記録紙検知センサー49Aが検知するまで、搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bを駆動させる制御手段と、
前記ジャム発生を表示する表示部とを具備する画像形成装置。」

4.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「感光ドラム1」、「トナー画像」、「露光ランプ11、一次帯電器2、露光光学系3、電位センサー12及び現像装置4」、記録紙」、「転写帯電器5B」、「定着ユニット9」、「給紙ユニット40」、「レジストローラ対44」、「搬送ベルト9C」が、それぞれ本願補正発明の「像担持体」、「現像画像」、「画像形成手段」、「被転写材」、「転写手段」、「定着手段」、「給紙手段」、「レジストローラ手段」、「搬送手段」に相当する。
すると、本願補正発明と引用発明との両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
【一致点】
「像担持体と、
前記像担持体に現像画像を形成する画像形成手段と、
前記像担持体上の前記現像画像を被転写材に転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記被転写材上の前記現像画像を定着する定着手段と、
前記被転写材を供給する給紙手段と、
前記給紙手段から前記転写手段に達する間に設けられ、前記被転写材を一旦停止させて先端を揃えた後前記像担持体上の現像画像に同期して前記転写手段方向に挾持搬送する、レジストローラ手段と、
前記レジストローラ手段から前記定着手段に達する間に設けられて前記被転写材を搬送する搬送手段と、
少なくとも前記搬送手段を搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な搬送ユニットと、を具備する画像形成装置。」
【相違点1】
本願補正発明では、レジストローラ手段が正逆回転可能であるのに対し、引用発明では、レジストローラ対44が正逆回転可能であるか否か不明である点。
【相違点2】
本願補正発明では、ジャム時に被転写材が、「前記レジストローラ手段から前記搬送手段に亘ってある場合」において、「前記被転写材後端が前記レジストローラ手段を通過するまで、前記レジストローラ手段を正回転」させているのに対し、引用発明では、ジャム時に記録紙が、「前記搬送手段50Aの入り口に設けられた記録紙検知センサー49Aにより検知されており、給送ユニット40と転写搬送ユニット50にまたがって存在している場合」において、「記録紙の後端を記録紙検知センサー49Aが検知するまで、搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bを駆動」させており、ジャム時の記録紙の位置及び当該記録紙を搬送するための手段が異なる点。
【相違点3】
本願補正発明では、表示手段が、「前記レジストローラ手段における前記ジャム発生を表示する」ものであるのに対し、引用発明では、表示部が、「記録紙搬送不良のメッセージを表示する」ものである点。

5.判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
引用発明のレジストローラ対を正逆回転可能とすることに、何ら技術的困難性はなく、必要に応じて当該レジストローラ対を正逆回転可能とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、このような構成を採用することにより、格別の技術的意義をもたらすものでもなく、その効果も当業者が予想し得る程度のものである。

(2)相違点2について
引用発明において、記録紙が、給紙ユニット40と転写搬送ユニット50との間にまたがって存在している場合に、搬送ローラ対45C、46A、47A,47Bを駆動させる制御を行っているのは、上記3.(b)に記載されているように、転写搬送ユニット50を装置本体から引き出す際に、記録紙が引き出しの妨げとなることを防止するためであり、本願補正発明と同様の目的で制御をしているものである。そして、装置本体から引き出す構成を、どのようなものとするかは、装置の全体構成などに応じて、適宜変更すべきものであるとともに、装置本体から引き出される構成に応じて、記録紙の装置本体の引き出しの妨げとなる位置が異なることは、当業者にとって明らかなことである。してみれば、引用発明の装置本体から引き出される構成を変更したり、また、当該変更に応じて、上記のような制御をする条件である記録紙の位置や、当該制御のために駆動させる構成を変更したりすることは、当業者であれば当然になし得ることというべきである。
そして、搬送手段を含む搬送ユニットが装置本体から引き出されるものにおいて、被転写材がレジストローラ手段から搬送手段に亘ってある場合に、当該被転写材が、搬送ユニットと装置本体とにまたがって存在する蓋然性が高い構成は周知である(例えば、特開昭60-262757号公報(特に、ユニット3等参照)、特開平6-186800号公報(特に、図5、部品ユニット62等参照)、特開平8-87227号公報(特に、図1、図7、図9等参照)、特開平8-286445号公報(特に、出入部材A等参照。)等参照。)。
してみれば、引用発明の転写搬送ユニット50に上記周知な構成を採用するとともに、その際に、被転写材がレジストローラ手段から搬送手段に亘ってある場合に、レジストローラ手段を駆動させるようにし、本願補正発明の上記相違点2の構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
なお、本願補正発明のものは、本願明細書の段落【0024】などに記載されているように、被転写材を下流に搬送することにより、未定着トナー像による中継ローラ26a側の汚損を防止するという効果を奏するものであるが、未定着のトナー像により装置などが汚損されることは、通常に知られた課題(例えば、特開平8-202099号公報、特開平8-143181号公報、特開平6-186810号公報等参照。)であるから、被転写材を下流に搬送した場合に、上流側である中継ローラ26a側を汚損させないという効果を奏することは、当業者であれば予想し得る程度のものである。

(3)相違点3について
ジャムの表示をどのような場合に行うかは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得るものであるから、引用発明の表示部によるジャム表示を、レジストローラ手段におけるジャム発生時に行うようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第3 本願発明について
平成19年11月19日にした明細書を対象とする手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年9月10日になされた手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「像担持体と、
前記像担持体に現像画像を形成する画像形成手段と、
前記像担持体上の前記現像画像を被転写材に転写する転写手段と、
前記転写手段により転写された前記被転写材上の前記現像画像を定着する定着手段と、
前記被転写材を供給する給紙手段と、
前記給紙手段から前記転写手段に達する間に設けられ、前記被転写材を一旦停止させて先端を揃えた後前記像担持体上の現像画像に同期して前記転写手段方向に挾持搬送する、正逆回転可能なレジストローラ手段と、
前記レジストローラ手段から前記定着手段に達する間に設けられて前記被転写材を搬送する搬送手段と、
少なくとも前記搬送手段とを搭載して装置本体のフロント側に引き出し可能な引き出しユニットと、
前記レジストローラ手段におけるジャム発生時に、前記被転写材が、前記レジストローラ手段から前記搬送手段に亘ってある場合に、前記被転写材後端が前記レジストローラ手段を通過するまで、前記レジストローラ手段を正回転させる制御手段とを具備する事を特徴とする画像形成装置。」

第4 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載は、上記「第2 3.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記第2、【理由】、「2.本願補正発明」に記載した本願補正発明の、「搬送ユニット」を、「引き出しユニット」と言い換えたとともに、「前記レジストローラ手段における前記ジャム発生を表示する表示手段」という特定を省いたものであり、その他の構成については、本願補正発明と差違がない。
そうすると、本願発明の構成要素をすべて含み、さらにその他の構成要素を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2、【理由】、「4.対比」、及び「5.判断」で検討したように、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-28 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-15 
出願番号 特願平10-34631
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
P 1 8・ 572- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
発明の名称 画像形成装置  
代理人 竹花 喜久男  
代理人 竹花 喜久男  

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