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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1201476
審判番号 不服2007-4708  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-15 
確定日 2009-07-29 
事件の表示 特願2002- 80528「コンテンツ配信用プログラムおよびコンテンツ配信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 3日出願公開、特開2003-281172〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年3月22日の出願であって、平成19年1月4日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年2月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月14日付けで手続補正がなされたものである。


第2.平成19年3月14日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年3月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項4は、
「ユーザにより配信要求された曲コンテンツデータの曲コンテンツ特定情報を取得する曲コンテンツ特定情報取得手段と、
配信日時の属性および前記ユーザの属性の少なくとも1つに応じて、対応する付随音声コンテンツデータの付随音声コンテンツデータ特定情報を取得する付随音声コンテンツデータ特定情報取得手段と、
前記曲コンテンツ特定情報によって特定された前記曲コンテンツデータ、および、前記付随音声コンテンツデータ特定情報によって特定された前記付随音声コンテンツデータを取得し、付随音声コンテンツデータ再生タイミングを設定する情報を含む、取得された前記曲コンテンツデータに、取得された前記付随音声コンテンツデータを付加して配信データを作成する配信データ作成手段、
を有することを特徴とする曲コンテンツ配信装置。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項4に記載した発明を特定するために必要な事項である「コンテンツデータ」、「コンテンツ特定情報」を、それぞれ、「曲コンテンツデータ」、「曲コンテンツ特定情報」に限定し、同じく「付随コンテンツデータ」、「付随コンテンツデータ特定情報」を、それぞれ、「付随音声コンテンツデータ」、「付随音声コンテンツデータ特定情報」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記補正後の請求項4に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表平11-503549号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「本発明は、ポータブル受信機に対してオーディオ情報信号を供給するための装置及び方法に関するものであり、本発明においては、複数の受信機が一つの情報送信機システムからサービスを受け、受信された情報の内容はユーザーによって選択又は影響されたものであり、そのユーザーに特に合っているものである。」(第4ページ第3?6行)
(2)「中央システムは、それぞれが識別子を持つ複数の予め定められたオブジェクトに関する情報のライブラリー、通信チャンネルを通して複数の受信機にライブラリーからの情報を同時に送信するためのシステム、及び、識別子に基づいて通信帯域又はその帯域中のチャンネルから各々情報を受信し出力を通してユーザーに情報を送る複数の移動受信機を保持する。情報は好ましくはオーディオ情報であり、出力は好ましくはポータブルオーディオトランスデューサである。更に、必要なオブジェクト識別子がそれぞれの移動受信機から提供され、中央システムにアップリンクされる。」(第12ページ第16?23行)
(3)「例えばCD音楽アルバムから歌の45秒クリップが予め定められた場合、これはオブジェクト識別子に応答して受信機に送信される。」(第17ページ第13?14行)
(4)「ユーザーに送出されるオーディオ情報の内容を決定するために、特定の受信機又はユーザーに対応するデータを中央システムに提供することができる。この情報は、登録及びインタービュー過程の間又はシステムの特別の使用の間に多数のセッションにわたって集められる。ユーザーの特性をこのように記憶し、送出内容を制御するために用いることができる。これらの特性は、識別子コードに対応する情報の選択が演繹的に行われない場合又は完全に行われない場合、又はユーザーの特性に基づいて付加的情報をユーザーに案内する必要である場合に特に利用することができる。これらの識別されたユーザー特性により、更に音楽セレクション及び/又は付加的マーケティング関連情報の統計的絞り込みが可能になる。オーディオクリップに関して、説明ナレーションを提供することもできる。」(第17ページ第26行?第18ページ第8行)
(5)「更に、このシステムは、ユーザーに他のセレクションを提案するか、又はオーディオ情報として又は可視ディスプレイを通して、識別されたオブジェクトと関係のない情報を提供する。」(第18ページ第13?15行)

ここで、上記記載事項(1)?(4)を中心に、引用例の記載事項全体を参酌すれば、上記記載事項(1)?(4)でいう「オーディオ情報」、「クリップ」、「オーディオクリップ」は、上記記載事項(2)でいう「オブジェクト」の例であり、該「クリップ」と「オーディオクリップ」は同じものを指し、共に上記「オーディオ情報」の部分を指していると認められる。そして、以上の事項に上記記載事項(3)を併せ見れば、該「オブジェクト」は音楽オブジェクトの場合もあり得るものと認められる。
また、上記記載事項(2)?(4)を中心に、引用例の記載事項全体を参酌すれば、上記記載事項(2)?(4)でいう「識別子」、「オブジェクト識別子」、「識別子コード」は、いずれも同じものを指し、それは、オブジェクトを特定するための情報であり、ユーザがオブジェクトの配信を要求する際に使用され得る情報であると認められる。
さらに、上記記載事項(4)、(5)を中心に、引用例の記載事項全体を参酌すれば、上記記載事項(5)でいう「識別されたオブジェクトと関係のない情報」は、上記記載事項(4)でいう「付加的情報」の例であり、上記記載事項(5)でいう「オーディオ情報として・・・識別されたオブジェクトと関係のない情報を提供する。」は、上記記載事項(4)でいう「付加的情報」が音声情報の場合もあり得ることを示していると認められる。また、該記載事項(4)によれば、該「付加的情報」は、ユーザの特性に応じて案内され得るものであり、オブジェクトに付加されて配信されるものと認められる。

してみれば、引用例には、「ユーザにより配信要求された音楽オブジェクトの識別子を取得し、取得した識別子によって特定された音楽オブジェクトに、ユーザの特性に応じて、対応する音声の付加的情報を付加し、配信する、オーディオ情報配信装置。」の発明(以下「引用例記載発明」という。)が開示されていると認められる。

3.対比
本願補正発明と引用例記載発明とを比較すると、以下の対応関係が認められる。
(1)引用例記載発明の「音楽オブジェクト」は、本願補正発明の「曲コンテンツデータ」に相当する。
(2)引用例記載発明の「識別子」は、本願補正発明の「曲コンテンツ特定情報」に相当する。
(3)引用例記載発明の「ユーザの特性に応じて」は、本願補正発明の「配信日時の属性および前記ユーザの属性の少なくとも1つに応じて」に包含される。
(4)引用例記載発明の「音声の付加的情報」は、本願補正発明の「付随音声コンテンツデータ」に相当する。
また、引用例記載発明のオーディオ情報配信装置は、その機能からみて、当然に「曲コンテンツ特定情報取得手段」と呼び得るものと、「曲コンテンツデータに付随音声コンテンツデータを付加して配信データを作成する配信データ作成手段」と呼び得るものを有しており、全体としてみれば、「曲コンテンツ配信装置」とも呼び得るものである。

したがって、本願補正発明と引用例記載発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ユーザにより配信要求された曲コンテンツデータの曲コンテンツ特定情報を取得する曲コンテンツ特定情報取得手段と、
前記曲コンテンツ特定情報によって特定された前記曲コンテンツデータに、配信日時の属性および前記ユーザの属性の少なくとも1つに応じて、対応する付随音声コンテンツデータを付加して配信データを作成する配信データ作成手段、
を有する曲コンテンツ配信装置。」である点。

(相違点1)
本願補正発明の「曲コンテンツ配信装置」は、「付随音声コンテンツデータ特定情報を取得する付随音声コンテンツデータ特定情報取得手段」を有しているのに対し、引用例記載発明の「オーディオ情報配信装置」は、該「付随音声コンテンツデータ特定情報を取得する付随音声コンテンツデータ特定情報取得手段」に相当する手段を有しているとは限らず(引用例には、「付随音声コンテンツデータ特定情報」に相当するものについての記載がない。)、また、それに伴い、本願補正発明の「配信データ作成手段」は、「前記付随音声コンテンツデータ特定情報によって特定された前記付随音声コンテンツデータを取得し、」なる機能をも有しているのに対し、引用例記載発明の「配信データ作成手段」は、該「前記付随音声コンテンツデータ特定情報によって特定された前記付随音声コンテンツデータを取得し、」に相当する機能を有しているとは限らない点。

(相違点2)
本願補正発明の付随音声コンテンツデータが付加される「曲コンテンツデータ」は、「付随音声コンテンツデータ再生タイミングを設定する情報」を含むのに対し、引用例記載発明の音声の付加的情報が付加される「音楽オブジェクト」は、「音声の付加的情報の再生タイミングを設定する情報」を含むものではない点。

4.判断

(1)(相違点1)について
引用例記載発明の「音楽オブジェクトの識別子を取得し」なる構成にも見られるように、一般に、情報を、「情報を特定するための情報」(識別子)を用いて管理するようにし、必要とする情報を該「情報を特定するための情報」を介して取得するようにすることは、ごく普通に行われていることである。
してみれば、引用例記載発明の「ユーザの特性に応じて、対応する音声の付加的情報を付加し」なる機能を実現するにあたり、音声の付加的情報(付随音声コンテンツデータ)を、該音声の付加的情報(付随音声コンテンツデータ)を特定するための情報(付随音声コンテンツデータ特定情報)介して取得するようにし、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)(相違点2)について
原査定の備考欄に「引用文献等5」として例示された特開平10-134029号公報の「従来の技術」の記載欄である段落【0005】には、「特開平8-83224号公報のマルチメディアメールシステムでは、描画情報に時刻を持たせることによって、前記音声とポインティングデバイスによる描画を記録時と同じタイミングで受信側でも再生を可能とする構成を有している。」なる記載がある。
該記載によれば、原査定において審査官も説示するように、「付随データの再生タイミングを送信側で設定すること」が、本願出願前に、コンテンツ再生の技術分野において周知であったことが認められる。
また、引用例記載発明においても、音声の付加的情報は、送信側で音楽オブジェクトに付加するものであるから、その再生タイミングも送信側で設定するのが好ましい場合は、当然に想定される。
してみれば、引用例記載発明における音声の付加的情報の再生タイミングを送信側で設定するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、引用例記載発明において、音声の付加的情報の再生タイミングを送信側で設定しようとした場合には、該再生タイミングは、「音楽オブジェクト」との関係において定めるのが普通であるから、該「音楽オブジェクト」に「音声の付加的情報の再生タイミングを設定する情報」を含めるようにすることも、当業者が容易に想到し得たことである。
以上のとおりであるから、引用例記載発明の音声の付加的情報が付加される「音楽オブジェクト」を、「音声の付加的情報の再生タイミングを設定する情報」を含むものとすること、換言すれば、引用例記載発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の構成を採用することも、当業者が容易に想到し得たことである。

なお、平成19年3月14日付けの審判請求書についての手続補正書の3の(5)の項の記載や平成21年4月17日付け回答書の3の項の記載によれば、この点に関し、審判請求人は、「上記特開平10-134029号公報に記載されている『付加情報』は、本願補正発明における『曲コンテンツデータ』に対応する『マルチメディアメッセージ』に元々含まれているものであり、本願補正発明における『付随音声コンテンツデータ』や引用例記載発明の『音声の付加的情報』のように『曲コンテンツデータ』や『音楽オブジェクト』に配信時に付加されるものではないから、該特開平10-134029号公報の記載を根拠に上記相違点2の克服が容易であったということはできない」といった趣旨の主張をしたいのではないかと推察されるが、そのような主張は以下の理由で採用できない。
すなわち、上記特開平10-134029号公報に記載されるような周知のものにおける「付加情報」がいわゆるマルチメディアメッセージに含まれる情報であっても、「何らかの情報に付随するデータの再生タイミングを送信側で設定すること」が周知であったという事実に変わりはなく、上記「周知のものにおける『付加情報』がいわゆるマルチメディアメッセージに含まれる情報である」という事実は、上記相違点2についての判断内容を左右するものではない。

(3)本願補正発明の効果について
本願補正発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明及び上記各周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成19年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「ユーザにより配信要求されたコンテンツデータのコンテンツ特定情報を取得するコンテンツ特定情報取得手段と、
配信日時の属性および前記ユーザの属性の少なくとも1つに応じて、対応する付随コンテンツデータの付随コンテンツデータ特定情報を取得する付随コンテンツデータ特定情報取得手段と、
前記コンテンツ特定情報によって特定された前記コンテンツデータ、および、前記付随コンテンツデータ特定情報によって特定された前記付随コンテンツデータを取得し、付随コンテンツデータ再生タイミングを設定する情報を含む、取得された前記コンテンツデータに、取得された前記付随コンテンツデータを付加して配信データを作成する配信データ作成手段、
を有することを特徴とするコンテンツ配信装置。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、上記「第2.」の「2.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「コンテンツデータ」、「コンテンツ特定情報」を、それぞれ、「曲コンテンツデータ」、「曲コンテンツ特定情報」に限定する限定事項、「付随コンテンツデータ」、「付随コンテンツデータ特定情報」を、それぞれ、「付随音声コンテンツデータ」、「付随音声コンテンツデータ特定情報」に限定する限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2.」に記載したとおり、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-18 
結審通知日 2009-05-26 
審決日 2009-06-08 
出願番号 特願2002-80528(P2002-80528)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梅本 達雄紀田 馨  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 長島 孝志
和田 財太
発明の名称 コンテンツ配信用プログラムおよびコンテンツ配信装置  
代理人 祖父江 栄一  
代理人 浅見 保男  
代理人 高橋 英生  
代理人 武山 吉孝  
代理人 鈴木 隆盛  

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