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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P
管理番号 1201535
審判番号 不服2007-18268  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-02 
確定日 2009-07-21 
事件の表示 平成 9年特許願第512052号「オープンループステップモータ制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月20日国際公開、WO97/10642、平成11年10月26日国内公表、特表平11-512596〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願の発明
本願は、1996年9月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年9月11日、米国)を国際出願日とする国際出願であって、平成19年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に、同年7月23日に明細書についての補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「モータの動きを制御するための制御システムにおいて、
電流を与えるエネルギー源と、
モータの動作を開始させるために、該モータの共振振動数を通過するように指数関数的に上昇させる仕方で前記モータへ指数関数的に増大する巻線電流を与えるように前記エネルギー源を制御するコントローラとを備えることを特徴とする制御システム。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「指数関数的に上昇させる仕方でモータへ指数関数的に増大する巻線電流を与えるようにエネルギー源を制御するコントローラ」について「モータの共振振動数を通過するように」との限定を付加したものである。
したがって、上記補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-299798号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

・「しかして、前述したエレベータ機構6のキヤリツジ4を昇降移動させる際には所定速度に向けて徐々に加速し定速移動に移行させ、その後、目的とする収納棚等の位置に向けて徐々に減速して停止させるため、ステツプモータ13を駆動させる回転速度パターンは一般に第11図(a)に示すようなものとなる。即ち、パルス速度f_(0)にて始動させた後、時刻t_(1)にてパルス速度がf_(9)なる定速となるようにし、時刻t_(2)まで継続させた後、今度はパルス速度を低下させ時刻t_(3)でf_(0)となるようにする例である。」(2頁左下欄7?17行)

・「目的
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、高出力トルクを必要とする被駆動体用のステツプモータに、無駄な電力消費を生ずることなく効率よくステツプモータを加減速ないしは定速駆動し得るステツプモータ制御方法を提供することを目的とする。」(3頁左上欄8?14行)

・「以下、本発明の一実施例を第1図ないし第4図に基づいて説明する。第5図ないし第11図で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示す。まず、ステツプモータ13の駆動回路において、第6図に示した定電流電力増幅器21に代えて、第2図に示すように可変電流電力増幅器22が用いられている。この可変電流電力増幅器22は例えば第3図に示すように電流制御信号電圧に比例した電流を出力するものである。ここに、可変電流電力増幅器22に対する電流制御信号電圧はCPU17制御の下にD/Aコンバータ18から与えられるものである。
ここに、例えば4相のステツプモータ13の相励磁電流値I_(0)?I_(9)をパラメータとした時、回転速度(パルス速度)と出力トルクとは第4図に示すような関係にある。この特性図によれば、ステツプモータ13から一定のトルクを出力させるためには、パルス速度に応じて相励磁電流の値も増減可変させればよいことがわかる。
しかして、本実施例では、第1図(a)(第11図(a)の場合と同一)に示すようなパルス速度パターンに従いステツプモータ13を駆動するに際し、同図(c)に示すように駆動電流の大きさを可変制御するものである。まず、時刻t=0?t_(1)なる加速期間ではステツプモータ13の相励磁電流の大きさを加速変化に対応させてI_(0)からI_(9)に向けて増加させる。」(3頁右上欄4行?同頁左下欄12行)

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献には次の発明が記載されていると認めることができる。
「ステツプモータを加減速ないしは定速駆動し得る駆動回路において、
電流を出力する可変電流電力増幅器と、
ステツプモータを始動させるために、前記ステツプモータへ増加する相励磁電流を出力するように前記可変電流電力増幅器を制御するCPUとを備える駆動回路。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、その機能・作用からみて、後者の「ステツプモータを加減速ないしは定速駆動し得る駆動回路」は前者の「モータの動きを制御するための制御システム」に相当し、以下同様に、「電流を出力する可変電流電力増幅器」は「電流を与えるエネルギー源」に、「ステツプモータを始動させる」は「モータの動作を開始させる」に、相当する。
また、後者の「ステツプモータへ増加する相励磁電流を出力するように可変電流電力増幅器を制御するCPU」と前者の「モータの共振振動数を通過するように指数関数的に上昇させる仕方で前記モータへ指数関数的に増大する巻線電流を与えるようにエネルギー源を制御するコントローラ」とは、「上昇させる仕方でモータへ増大する巻線電流を与えるようにエネルギー源を制御するコントローラ」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「モータの動きを制御するための制御システムにおいて、
電流を与えるエネルギー源と、
モータの動作を開始させるために、上昇させる仕方で前記モータへ増大する巻線電流を与えるように前記エネルギー源を制御するコントローラとを備える制御システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明では「モータの共振振動数を通過するように指数関数的に」上昇させる仕方で前記モータへ「指数関数的に」増大する巻線電流を与えているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

モータの制御システムの技術分野において、振動を抑制するためにモータの共振振動数をより早く通過させるように回転速度を変更することは、例えば特開平2-219500号公報(2頁左上欄8?14行、2頁右上欄5?10行、3頁右上欄3?8行参照。)及び特開昭51-48112号公報(1頁右下欄13?19行参照。)に開示されているように周知技術である。
また、モータの制御システムの技術分野において、指数関数的に上昇させる仕方でモータへ指数関数的に増大する巻線電流を与えて回転速度を変更することは、例えば特開平4-69074号公報(5頁右下欄8?14行参照、「モータ電流」が本願補正発明の「巻線電流」に相当する。)、特開昭63-92293号公報(3頁右上欄19行?同頁左下欄6行、4頁左上欄12?16行参照。)及び特開昭55-10873号公報(3頁左下欄9?13行、4頁左下欄9?13行参照、「ステツピングモータ」が本願補正発明の「モータ」に相当し、同様に、「励磁電流」が本願補正発明の「巻線電流」に相当する。)に開示されているように、常套手段であると共に、この指数関数的に増大する巻線電流の特性を用いれば、モータの動作開始時に立ち上がりが急峻な特性を与えることができることは明らかである。
よって、モータの制御システムの技術分野に属する引用発明において、振動を抑制するという課題の下に、モータの動作開始時に上記周知技術を適用すると共に、上記常套手段を参酌し、指数関数的に増大する巻線電流による立ち上がりが急峻な特性を利用して、モータの共振振動数をより早く通過させることにより、相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される効果も、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術及び上記常套手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は平成18年9月8日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認める。
「モータの動きを制御するための制御システムにおいて、
電流を与えるエネルギー源と、
モータの動作を開始させるために指数関数的に上昇させる仕方で前記モータへ指数関数的に増大する巻線電流を与えるように前記エネルギー源を制御するコントローラとを備えることを特徴とする制御システム。」(以下「本願発明」という。)

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、「指数関数的に上昇させる仕方でモータへ指数関数的に増大する巻線電流を与えるようにエネルギー源を制御するコントローラ」について「モータの共振振動数を通過するように」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で検討した相違点のうち、「指数関数的に」上昇させる仕方でモータへ「指数関数的に」増大する巻線電流を与えている構成のみとなるため、前記「2.(4)」での検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明及び上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-16 
結審通知日 2009-02-23 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願平9-512052
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02P)
P 1 8・ 121- Z (H02P)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾家 英樹  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 仁木 浩
米山 毅
発明の名称 オープンループステップモータ制御システム  
代理人 大塚 文昭  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  

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