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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1201584
審判番号 不服2008-2382  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-04 
確定日 2009-07-14 
事件の表示 平成8年特許願第514821号「非粘着性仕上げ用万能プライマー」拒絶査定不服審判事件〔平成8年5月9日国際公開、WO96/13556、平成10年8月4日国内公表、特表平10-508066〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1995年10月30日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理1994年10月31日、(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成17年6月2日付けの拒絶理由通知に対して、同年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成19年10月30日付けで拒絶査定がされ、平成20年2月4日付けで拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年3月3日付けで手続補正がされ、その後、同年5月21日付けで審尋がされ、これに対して、同年11月17日に回答書が提出されたものである。

第2 平成20年3月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年3月3日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成20年3月3日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を0.5?2.0:1の重量比で含んでなりそしてさらに金属以外の無機充填材フィルム硬化剤を組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%含んでなる組成物。」
を、
「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を0.5?2.0:1の重量比で含んでなりそしてさらに粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤を組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%含んでなる組成物。」
とする補正事項を含むものである。

2 補正の適否について
(1) 新規事項の追加及び補正の目的について
この請求項1の補正は、補正前の「金属以外の無機充填材フィルム硬化剤」をこの出願の願書に最初に添付した明細書の記載に基づき「粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤」と限定して特定するものであるから、同明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、この請求項1の補正は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たすものであり、また平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2) 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(すなわち、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反しないものであるか)どうかについて、以下、検討する。

ア 本件補正発明
平成20年3月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を0.5?2.0:1の重量比で含んでなりそしてさらに粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤を組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%含んでなる組成物。」
(以下、これを「本件補正発明」という。)

イ 刊行物について
本願出願前に頒布された刊行物である特開昭52-18741号公報(原審における拒絶理由の引用文献1。以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
a 「1) 下記(a)ないし(e)の成分、すなわち
(a) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、弗素原子単独かまたは弗素原子と塩素原子との組合わせで完全に置換されたモノエチレン系不飽和炭化水素単量体の重合体、
(b) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、
(1) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、アルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有するアルカリ金属シリケート、および
(2) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、化学量論的量の第3級アミンで中和された構造式

(式中Gは水素またはカルボキシル基であり、→は異性を意味し、Rは少くとも2個の炭素原子を含有する四価有機基であり、各ポリアミド酸単位の2個より多くないカルボニル基は上記四価基のいずれか1個の炭素原子に結合されており、R_(1)は少くとも2個の炭素原子を含有する二価基であり、隣接するポリアミド酸単位各々のアミド基は上記二価基の別の原子に結合されており、そしてnは30℃におけるN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5%溶液として測定した場合少くとも0.1の固有粘度をポリアミド酸に与えるに充分な大きな数である)で表わされるポリアミド酸の塩
からなる結合剤、
(c) ポリアミド酸アミン塩の重量に基づいて約10?90%のN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランまたはホルムアミド、
(d) (a)および(d)の合算重量の約0.2?20重量%の雲母粒子、顔料で被覆された雲母粒子または金属フレーク、および
(e) 液体状担体
からなる被覆組成物。
・・・
23) 基質へのフルオロ重合体被覆の接着性を改良するにあたり、フルオロ重合体被覆を適用する前にその基質を上記第1項の組成物で下引きすることからなる改良。」(特許請求の範囲、請求項1及び23)
b 「フルオロ重合体特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆された調理器具が最近広く使用されるにいたつている。多くのコツクはかかる調理器具をその非粘着性およびその清浄化し易さのために好んで使用している。
金属へのフルオロ重合体の接着性がどちらかと云えば弱いことはよく知られており、そのためかかる調理器具の製造においてはフルオロ重合体トツプコートの適用前にプライマー組成物を金属に適用して接着性を改良することが常法である。」(3頁左下欄12行?右下欄5行)
c 「かかる組成物で下引きされた調理器具は非常に耐久性であるけれどもそれのフルオロ重合体被覆全体は長期間使用後には引掻かれた状態になる傾向がある。
本発明によれば、かかる被覆の引掻き抵抗性はもしプライマー組成物が雲母粒子、顔料被覆された雲母粒子または金属フレークを含有するならば改良されるということが見出された。
本発明の組成物中に使用される雲母粒子、被覆された雲母粒子および金属フレークは商業的に入手し得る任意のものであることができる。これらの粒子およびフレークは10?200ミクロン、好ましくは15?50ミクロンの平均最長寸法を有し、粒子またはフレークの50%以下は約500ミクロン以上の最長寸法を有する。」(3頁右下欄11行?4頁左上欄9行)
d 「雲母、被覆された雲母または金属フレークは通常、全固体分の約0.2?20重量%、好ましくは約2?15重量%、さらに好ましくは約5?12重量%の濃度で本発明の組成物中に在存する。「全固体分」とはフルオロ重合体、雲母、被覆された雲母または金属フレーク、ポリアミド酸塩、顔料およびアルカリ金属シリケートの含量の総計を意味する。」(4頁右上欄12行?左下欄1行)
e 「本発明の組成物中における結合剤はアルカリ金属シリケートおよびポリアミド酸のアミン塩からなる。この結合剤は通常、フルオロ重合体および結合剤の合計重量の約10?90%、好ましくは約20?40%の濃度で組成物中に存在する。
結合剤のアルカリ金属シリケート成分はアルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有する任意のアルカリ金属シリケートであることができる。「痕跡量」とは全く検出し得ないかまたはほとんど検出し得ない程の微少の量を意味する普通の意味で使用されている。
「アルカリ金属」シリケートとはナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウムまたはフランキウムのシリケートを意味する。これらのうちアルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の約1%?12%のアルカリ金属酸化物モル含量を有するリチウムシリケート、ナトリウムシリケートおよびカリウムシリケートの使用がそれらの安定性のために好ましい。またアルカリ金属シリケートの混合物も使用できる。
アルカリ金属シリケート成分は20モル%以上のアルカリ金属酸化物を含有する商業的に入手し得るアルカリ金属シリケートと商業的に入手し得るコロイド状シリカとをブレンドして所望のアルカリ金属酸化物含量を有するアルカリ金属シリケートを得ることにより調製され得る。
アルカリ金属シリケートは通常結合剤の約5?95重量%好ましくは約10?80重量%の濃度で結合剤中に存在する。」(5頁右上欄4行?右下欄2行)
f 「結合剤成分中に使用するのに最も好ましいポリアミド酸塩はビス(4-アミノフエニル)メタンおよびトリメリト酸無水物から製造されついでこれを化学量論的量のトリエチルアミンとジエチル2‐ヒドロキシエチルアミンとの2/1重量比混合物で中和することにより得られるものである。
上記アミン塩は通常結合剤の約5?95重量%、好ましくは約20?90重量%の濃度で結合剤中に存在する。」(6頁左下欄下から6行?右下欄4行)
g 「本発明の組成物中に使用される凝集剤(coalescing agent)は一般的に云えば使用されるポリアミド酸アミン塩を溶解できる有機液体である。この種の有機液体は非常に極性でありしかも100℃以上の沸点を有する。具体例としてはたとえばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランおよびホルムアミドがあげられる。」(6頁右下欄5?12行)
h 「また本発明の組成物は、必要であるかまたは望ましい場合にはたとえば顔料、流動制御剤、表面活性剤および可塑剤のような慣用の添加物をも含有することができ。これらの添加物は通常の理由のために通常の方法でそして通常の量において加えられる。」(7頁右上欄10?15行)
i 「被覆組成物中における全固体分の量は組成物が適用されるべき基質、適用方法、硬化操作などの因子により支配される。通常の場合、組成物は約10?80重量%の固体分を含有する。
組成物は適当な各成分の適量を一緒にして簡単に混合することにより調整され得る。」(7頁右下欄1?6行)
j 「最良の被覆は前記の二重被覆系で得られるけれども、強力に接着性のフルオロ重合体塗料が一回適用操作で得られる。これをなすには本発明の組成物の被覆を5?50ミクロンの厚さ(乾燥時)で適用する。ついでこの被覆を風乾させそして使用されたフルオロ重合体を溶融するに充分高い温度で焼き付ける。
本発明の組成物は金屋調理器具特にフライパンをPTFEで被覆する前に下引きするのに最も有用であるが、しかしまたこの組成物は緊密に結合されたフルオロ重合体被覆を必要とするその他の製品を下引きするためにも使用され得る。」(8頁左上欄5?末行)
k 「実施例
以下のものを記載順序で容器に加えそして混合した。

成分(5)は激しく混合しながら加えた。添加完了後生成物を10分間攪拌した。ついでそれに以下のものを混合しながら加えた。

得られたプライマー組成物を脱脂したアルミニウムパネル上に約8ミクロンの厚さ(乾燥時)まで噴霧し、ついで風乾させた。
トツプコート組成物は以下のものを混合しながら記載順序で容器に加えることにより調製された。
・・・
得られたトツプコート組成物を(A)で下引きされたパネル上に約20ミクロンの厚さまで墳霧した。ついでパネルを425℃で5分間焼き付けた。
得られた仕上げは被覆された雲母成分を含有しないそれよりも遙かにすぐれた引掻き抵抗性を示した。」(8頁右上欄下から4行?9頁左上欄12行)

ウ 対比・判断
(ア) 刊行物に記載された発明
刊行物1には
a 「下記(a)ないし(e)の成分、すなわち
(a) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、弗素原子単独かまたは弗素原子と塩素原子との組合わせで完全に置換されたモノエチレン系不飽和炭化水素単量体の重合体、
(b) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、
(1) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、アルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有するアルカリ金属シリケート、および
(2) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、化学量論的量の第3級アミンで中和された構造式

(式中Gは水素またはカルボキシル基であり、→は異性を意味し、Rは少くとも2個の炭素原子を含有する四価有機基であり、各ポリアミド酸単位の2個より多くないカルボニル基は上記四価基のいずれか1個の炭素原子に結合されており、R_(1)は少くとも2個の炭素原子を含有する二価基であり、隣接するポリアミド酸単位各々のアミド基は上記二価基の別の原子に結合されており、そしてnは30℃におけるN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5%溶液として測定した場合少くとも0.1の固有粘度をポリアミド酸に与えるに充分な大きな数である)で表わされるポリアミド酸の塩
からなる結合剤、
(c) ポリアミド酸アミン塩の重量に基づいて約10?90%のN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランまたはホルムアミド、
(d) (a)および(d)の合算重量の約0.2?20重量%の雲母粒子、顔料で被覆された雲母粒子または金属フレーク、および
(e) 液体状担体
からなる被覆組成物。」(摘示a)
に関する発明が記載されており、また、
「フルオロ重合体特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆された調理器具が最近広く使用されるにいたつている。多くのコツクはかかる調理器具をその非粘着性およびその清浄化し易さのために好んで使用している。金属へのフルオロ重合体の接着性がどちらかと云えば弱いことはよく知られており、そのためかかる調理器具の製造においてはフルオロ重合体トツプコートの適用前にプライマー組成物を金属に適用して接着性を改良することが常法である。」(摘示b)こと、
「本発明によれば、かかる被覆の引掻き抵抗性はもしプライマー組成物が雲母粒子、顔料被覆された雲母粒子・・・を含有するならば改良されるということが見出された。本発明の組成物中に使用される雲母粒子、被覆された雲母粒子および金属フレークは商業的に入手し得る任意のものであることができる。これらの粒子およびフレ-クは10?200ミクロン、好ましくは15?50ミクロンの平均最長寸法を有し、粒子またはフレークの50%以下は約500ミクロン以上の最長寸法を有する。」(摘示c)こと、
「雲母、被覆された雲母または金属フレークは通常、全固体分の約0.2?20重量%、好ましくは約2?15重量%、さらに好ましくは約5?12重量%の濃度で本発明の組成物中に在存する。」(摘示d)こと、及び
「本発明の組成物中における結合剤はアルカリ金属シリケートおよびポリアミド酸のアミン塩からなる。この結合剤は通常、フルオロ重合体および結合剤の合計重量の約10?90%、好ましくは約20?40%の濃度で組成物中に存在する。・・・アルカリ金属シリケートは通常結合剤の約5?95重量%好ましくは約10?80重量%の濃度で結合剤中に存在する。」(摘示e)こと、
「上記アミン塩は通常結合剤の約5?95重量%、好ましくは約20?90重量%の濃度で結合剤中に存在する。」(摘示f)こと、及び
「本発明の組成物は金屋調理器具特にフライパンをPTFEで被覆する前に下引きするのに最も有用であるが、しかしまたこの組成物は緊密に結合されたフルオロ重合体被覆を必要とするその他の製品を下引きするためにも使用され得る。」(摘示j)こと、
が記載されている。そして、実施例には、ポリアミド酸アミン塩溶液、TiO_(2)で被覆された雲母、及びPTFE分散液を含むプライマー組成物を脱脂したアルミニウムパネル上に約8ミクロンの厚さ(乾燥時)まで噴霧し、ついで風乾させたのち、PTFEを主成分とするトップコート組成物を噴霧する例が示されている(摘示k)。

してみると、本件補正発明の記載ぶりに合わせると、刊行物1には、
「脱脂したアルミニウムパネル上のフルオロ重合体被覆用プライマーとして適用可能な組成物であって、
『(a) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、弗素原子で完全に置換されたモノエチレン系不飽和炭化水素単量体の重合体』
および
『(b) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、
(1) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、アルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有するアルカリ金属シリケート、および
(2) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、化学量論的量の第3級アミンで中和された構造式

(式中Gは水素またはカルボキシル基であり、→は異性を意味し、Rは少くとも2個の炭素原子を含有する四価有機基であり、各ポリアミド酸単位の2個より多くないカルボニル基は上記四価基のいずれか1個の炭素原子に結合されており、R_(1)は少くとも2個の炭素原子を含有する二価基であり、隣接するポリアミド酸単位各々のアミド基は上記二価基の別の原子に結合されており、そしてnは30℃におけるN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5%溶液として測定した場合少くとも0.1の固有粘度をポリアミド酸に与えるに充分な大きな数である)で表わされるポリアミド酸の塩
からなる結合剤』
を含んでなりそしてさらに
『(d) 全固体分の約5?12重量%の雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子』
を含むとともに、
『(c) ポリアミド酸アミン塩の重量に基づいて約10?90%のN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランまたはホルムアミド』及び
『(e) 液体状担体』
を含んでなる組成物。」
という発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(イ) 本件補正発明と引用発明との対比
本願明細書において、「滑らかな基質、例えばアルミニウム」(5頁15?16行)と、滑らかな基質としてアルミニウムを例示し、また、本願明細書の実施例1では滑らかな基質として「エッチングを受けさせていない」(24頁10?11行)例を示していることからみて、引用発明における(エッチングを受けさせていない)「脱脂したアルミニウムパネル」は本件補正発明にいうところの「滑らかな基質」に対応し、また、引用発明における「フルオロ重合体被覆」は本件補正発明にいうところの「非粘着性被膜」に対応する。
したがって、引用発明における「脱脂したアルミニウムパネル上のフルオロ重合体被覆用プライマーとして適用可能な組成物であって、」は、本件補正発明における「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、」に対応する。
次に、引用発明における「(a) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、弗素原子で完全に置換されたモノエチレン系不飽和炭化水素単量体の重合体」は、本件補正発明における「フルオロポリマー」に対応する。
次に、引用発明における
「(2) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、化学量論的量の第3級アミンで中和された構造式

(式中Gは水素またはカルボキシル基であり、→は異性を意味し、Rは少くとも2個の炭素原子を含有する四価有機基であり、各ポリアミド酸単位の2個より多くないカルボニル基は上記四価基のいずれか1個の炭素原子に結合されており、R_(1)は少くとも2個の炭素原子を含有する二価基であり、隣接するポリアミド酸単位各々のアミド基は上記二価基の別の原子に結合されており、そしてnは30℃におけるN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5%溶液として測定した場合少くとも0.1の固有粘度をポリアミド酸に与えるに充分な大きな数である)で表わされるポリアミド酸の塩
からなる結合剤」
は、本件補正発明における「ポリマー結合剤」に対応する。
次に、引用発明における「雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子」と本件補正発明との対応関係について検討する。
まず、本件補正発明における「無機充填材フィルム硬化剤」という文言について検討すると、「硬化剤」とは、通常、「熱硬化性樹脂に加えて硬化反応を促進したり,調節するのに用いられる薬剤.」(「化学大辞典3 縮刷版」(1989年8月15日 縮刷版第32刷発行),発行所 共立出版株式会社,499頁の「こうかざい 硬化剤」の項、参照。)を意味するが、例えば本願の請求項7において「無機充填材フィルム硬化剤がケイ酸塩化合物である」と記載されていることなどからみて、本件補正発明における「無機充填材フィルム硬化剤」なるものは通常いうところの「硬化剤」ではないことが明らかであるため、本願の特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができない。
そこで、本願の発明の詳細な説明の記載を参酌して「無機充填材フィルム硬化剤」という文言の意義を検討すると、本願明細書には「無機充填材フィルム硬化剤」という文言の定義はなされておらず、ただ以下の記載がなされている。
「接着を向上させることに加えて非粘着性被膜の耐久性を向上させることが望まれるようになり、そしてこれは、無機充填材であるフィルム硬化剤(film hardener)、例えば粘土などをフルオロポリマーのオーバーコートに添加することで達成された。」(2頁下から4?末行)、
「無機充填材であるフィルム硬化剤成分は、該フルオロポリマーと結合剤の融着をもたらす最終的な焼成温度で熱安定性を示しかつ本組成物に含める他の成分に関しては不活性な1種以上の充填材型材料である。このフィルム硬化剤は、好適には本発明の水分散液形態組成物に均一に分散し得るが溶解しないように水に不溶である。充填材型の材料は、該材料が微細で粒子サイズが一般に1から100ミクロメートル、好適には2から20ミクロメートル(これはフィルム硬化剤成分で通常得られる)であることを意味し、この材料は、該フルオロポリマーオーバーコートを貫通しようとする鋭利なものが貫通するのに抵抗する(この材料自身が堅さまたは粘り強さを有することと、本組成物内に存在させるそれの量の両方の結果として)ことによって該プライマー層に耐久性を与える。」(12頁7?17行)
「個々の組成物で、層をより堅くする目的で無機充填材であるフィルム硬化剤が望まれる場合、即ち耐引っ掻き性を向上させることで耐久性をより高くすることが望まれる場合、また、このようなフィルム硬化剤も顔料製粉操作に加える。」(15頁6?9行)
してみると、本件補正発明における「無機充填材フィルム硬化剤」は、「被覆層をより堅く、即ち耐引っ掻き性を向上させることで耐久性をより高くするために加える無機充填材」を意味するものと認められる。
そして、引用発明における「雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子」は、被覆の引掻き抵抗性を改良するものである(摘示c)し、しかも雲母は無機充填材として周知である(必要なら、例えば、特開平6-9327号公報段落【0050】並びに特開昭64-42239号公報1頁右下欄9?10行及び2頁左上欄下から2行?右上欄2行参照。)ことを考え併せると、引用発明における「雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子」は、本件補正発明における「無機充填材フィルム硬化剤」に対応するものと認められる。また、引用発明における「雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子」が、金属ではないこと及び水不溶性であることは明らかである。
よって、引用発明における「雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子」は、本件補正発明の「金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤」に対応する。

以上の点を考慮して、本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明は、本件補正発明における
「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を含んでなりそしてさらに金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤を含んでなる組成物。」
に対応するので、この点で本件補正発明と引用発明とは一致するが、両者は以下の点において一応相違すると認められる。
a フルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比について、本件補正発明が「0.5?2.0:1の重量比で」と規定するのに対し、引用発明においてはかかる規定は特になされていない点
b 金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤について、本件補正発明が「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」と規定するのに対し、引用発明においてはかかる規定は特になされていない点
c 金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合について、本件補正発明が「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定するのに対し、引用発明においては「全固体分の約5?12重量%」と規定している点
d 引用発明が「(1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、アルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有するアルカリ金属シリケート」を含む旨規定しているのに対し、本件補正発明はかかる規定は特になされていない点
e 引用発明が「(c) ポリアミド酸アミン塩の重量に基づいて約10?90%のN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランまたはホルムアミド」を含む旨規定しているのに対し、本件補正発明はかかる規定は特になされていない点
f 引用発明が「液体状担体」を含む旨規定しているのに対し、本件補正発明はかかる規定は特になされていない点
(以下、上記の各相違点を、それぞれ項の番号に応じて「相違点a」などという。)

(ウ) 相違点についての判断
a 相違点aについて
引用発明においては「本発明の組成物中における結合剤はアルカリ金属シリケートおよびポリアミド酸のアミン塩からなる。この結合剤は通常、フルオロ重合体および結合剤の合計重量の約10?90%、好ましくは約20?40%の濃度で組成物中に存在する。」(摘示e)とされていることから、引用発明における好ましい例(約20?40%の濃度)においては、フルオロ重合体及び結合剤の重量比は4?1.5:1となる。
(注.引用発明における好ましい例(約20?40%の濃度)について、フルオロ重合体の重量をFとし結合剤の重量をBとすると、B÷(F+B)=0.2?0.4となり、この式を変形すると、F÷B=4?1.5、すなわちF:B=4?1.5:1となる。)
そして、引用発明においては「上記アミン塩は通常結合剤の約5?95重量%、好ましくは約20?90重量%の濃度で結合剤中に存在する。」(摘示f)とされていることから、引用発明における好ましい例(約20?90重量%の濃度)においては、フルオロ重合体及びポリアミド酸のアミン塩からなる結合剤の重量比は20?1.67:1となる。
(注.引用発明における好ましい例(約20?90重量%の濃度)について、ポリアミド酸のアミン塩の重量をAとすると、A÷B=0.2?0.9である。先に示したようにF÷B=4?1.5であるから、これらの関係式からF÷A=20?1.67、すなわちF:A=20?1.67:1となる。)
してみると、フルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比については、本件補正発明と引用発明における好ましい例とは、1.67?2.0:1の重量比の部分で重複しているので、相違点aは実質的な相違点であるとは認められない。
また、プライマー組成物の主要成分であるフルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比を最適化又は好適化することにより、フルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比について、「0.5?2.0:1の重量比で」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

b 相違点bについて
刊行物1には「本発明の組成物中に使用される雲母粒子、被覆された雲母粒子・・・は商業的に入手し得る任意のものであることができる。これらの粒子およびフレ-クは10?200ミクロン、好ましくは15?50ミクロンの平均最長寸法を有し、粒子またはフレークの50%以下は約500ミクロン以上の最長寸法を有する。」(摘示c)と記載されているから、引用発明においては「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」場合を包含しているものと認められるので、相違点bは実質的な相違点であるとは認められない。(注.「ミクロン」は「ミクロメートル」と同義である。)
また、刊行物1には「最良の被覆は前記の二重被覆系で得られるけれども、強力に接着性のフルオロ重合体塗料が一回適用操作で得られる。これをなすには本発明の組成物の被覆を5?50ミクロンの厚さ(乾燥時)で適用する。」(摘示j)ことが記載されており、また、刊行物1の実施例には、ポリアミド酸アミン塩溶液、TiO_(2)で被覆された雲母、及びPTFE分散液を含むプライマー組成物を脱脂したアルミニウムパネル上に約8ミクロンの厚さ(乾燥時)まで噴霧し、ついで風乾させてプライマー組成物を形成する例が示されている(摘示k)。そして、プライマーの厚さ(乾燥時)より大きい粒子サイズを有する雲母粒子又は被覆された雲母粒子を用いれば、雲母粒子又は被覆された雲母粒子がプライマー被覆層の厚さを超えるため所定の厚さのプライマー被覆層を形成することができないのは自明であるから、この点でも、引用発明においては「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」場合を包含しているものと認められるので、相違点bは実質的な相違点であるとは認められない。
そして、例えば、粒子サイズが大きすぎると噴霧するノズルが詰まり、逆に粒子サイズが小さすぎると手間や費用がかさむことは自明であり、また、粒子サイズは被覆層の厚さを考慮して決定しなければならないのは当然である(例えば、刊行物1の実施例の場合のような約8ミクロンの厚さ(乾燥時)の被覆層を形成する場合には、当然、粒子サイズが100ミクロンのものは使えない。)から、諸般の事情を考慮して、粒子サイズを最適化又は好適化することにより、「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

c 相違点cについて
本件補正発明は「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定しているが、本願明細書には実際にプライマー組成物を焼成して焼成重量を算出した例は全く示されておらず、ただ、本願明細書には以下の記載がある。(下線は当審による。)
「結合剤がポリアミン酸塩でありそしてこれが焼成段階でポリアミドイミドに変わる場合、便利さの目的で、出発組成物内に存在させるフルオロポリマーと結合剤の量からフルオロポリマーと結合剤の重量比を決定することができるように、結合剤の重量を出発組成物内に存在させるポリアミン酸の重量として採用することができる。」(11頁末行?12頁6行)
「顔料の比率は個々の顔料および所望色強度に依存する。フィルム硬化剤を存在させる場合、その比率は、本組成物から作成する層の耐久性を向上させるに有効な比率である。その必要量は、一般に、焼成後(水、溶媒、界面活性剤、粘度調節剤および均染剤の如き揮発物を全部追い出した後)の組成物の重量を基準にして5重量%以上であり、10重量%以上が好適である。」(16頁14?19行)
してみると、本件補正発明における「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」は、「(水、溶媒、界面活性剤、粘度調節剤および均染剤の如き揮発物以外の組成物の重量、すなわち、)全固形分(又は全固体分)、を基準にして5?30重量%」と同義であると認められる。
そして、この判断は、審判請求人が、平成20年3月3日付けの審判請求書の手続補正書(方式)において、3.1.3.[1]の項目で「(註) 本願明細書22頁19行?23頁12行に記載のプライマー組成において、Tamol(商標)SN界面活性剤以下の液体成分を除いた固形分の合計は16.85 重量%であり、そのうち、ケイ酸アルミニウムは3.323重量%であるから、固形分(焼成重量)に対するケイ酸アルミニウムの割合は約20重量%となる。」と述べていることとも符合する。
してみると、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合については、本件補正発明と引用発明とは、「組成物の焼成重量を基準にして5?12重量%」である点で重複しているので、相違点cは実質的な相違点であるとは認められない。
また、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合を最適化又は好適化することにより、「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

d 相違点dについて
刊行物1には「結合剤のアルカリ金属シリケート成分はアルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有する任意のアルカリ金属シリケートであることができる。「痕跡量」とは全く検出し得ないかまたはほとんど検出し得ない程の微少の量を意味する普通の意味で使用されている。」(摘示e 。なお、下線は当審による。以下、同様。)と記載されている。このように、引用発明においてはアルカリ金属酸化物モル含量が「痕跡量」、すなわち「全く検出し得ない」場合が包含されているところ、この場合は、二酸化珪素のみが「(1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%」存在することになる。
そして、刊行物1にも「アルカリ金属シリケート成分は20モル%以上のアルカリ金属酸化物を含有する商業的に入手し得るアルカリ金属シリケートと商業的に入手し得るコロイド状シリカとをブレンドして所望のアルカリ金属酸化物含量を有するアルカリ金属シリケートを得ることにより調製され得る。」(摘示e )と記載されているように、プライマー組成物として用いる二酸化珪素の代表例はコロイド状シリカであるところ、本願明細書に「本発明の組成物に接着促進剤、例えばコロイド状シリカおよび燐酸塩化合物、例えば金属の燐酸塩、例えば燐酸Zn、MnまたはFeなどの如き他の添加剤を含めてもよく、」(18頁下から3行?19頁1行)と記載されており、本件補正発明においてはコロイド状シリカの如き他の添加剤を適宜含めてもよいことが明らかであるから、結局、引用発明における「痕跡量のアルカリ金属酸化物を有する場合」は、本件補正発明におけるコロイド状シリカを含む態様と同じであるから、相違点dは実質的な相違点であるとは認められない。

このように、相違点dは実質的な相違点であるとは認められないのであるが、以上述べたような、引用発明における「痕跡量のアルカリ金属酸化物を有する場合」以外の場合についても、念のため、以下、検討しておくことにする。
(i) 本件補正発明は「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を0.5?2.0:1の重量比で含んでなりそしてさらに粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤を組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%含んでなる組成物。」というものであるところ、ここにいう「含んでなり」及び「含んでなる」について文言解釈すると、これらは所定の発明特定事項を含むことを規定しているだけであって、所定の発明特定事項以外のものを含むか否かは任意であることを規定しているので、特許請求の範囲の文言解釈から、本件補正発明においては、当然に、発明特定事項以外の成分であるアルカリ金属酸化物を含有するアルカリ金属シリケート(以下、「アルカリ金属シリケート」という。)を含む態様も包含していると解されること、
(ii) 本件補正発明を具体的に裏付けている実施例1及び2では、本件補正発明における発明特定事項として規定されている以外の成分として、「 Ludox(商標)コロイド状シリカ」、「Tamol(商標)SN界面活性剤」、「トリエタノールアミン 」、「Triton(商標)X-100界面活性剤」、「ジエチルエチルアルコールアミン 」、「トリエチルアミン」、「フルフリルアルコール」及び「N-メチルピロリドン(NMP)」を含むプライマー組成物を使用しているので、この点からも、本件補正発明の組成物において、発明特定事項以外の成分であるアルカリ金属シリケートを含む態様も包含している(すなわち、包含しないとする理由はない)と解されること、
(iii) 本願明細書の記載をみても、発明特定事項として記載されている以外の成分は含まない旨の記載はなく、むしろ「本発明の組成物 ここでは、共粉砕態様において限定したよりも高い度合でフルオロポリマーと結合剤の比率を限定し、水分散液の形態における本発明の組成物に接着促進剤、例えばコロイド状シリカおよび燐酸塩化合物、例えば金属の燐酸塩、例えば燐酸Zn、MnまたはFeなどの如き他の添加剤を含めてもよく、」(18頁下から5行?19頁1行)と、他の添加剤を含めてもよい旨が記載されていること、及び
(iv) アルカリ金属シリケートはコロイド状シリカの一種である(摘示e 参照。)ところ、コロイド状シリカは上記(iii)で引用した本願明細書の記載における接着促進剤に相当するので、本件補正発明においては接着促進剤であるコロイド状シリカの如き添加剤を含めてもよいとされている以上、本件補正発明においてもアルカリ金属シリケートを含む態様が包含されていると解されること、
を勘案すると、引用発明における「痕跡量のアルカリ金属酸化物を有する場合」以外の場合についても、本件補正発明においては任意量のアルカリ金属シリケートを含有する態様が包含されていると認められる。
してみると、何れにしても、相違点dは実質的な相違点であるとは認められない。
しかも、アルカリ金属シリケートを含まないプライマー組成物は周知であるから、引用発明においてアルカリ金属シリケートを含まない組成物とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

e 相違点eについて
本願明細書には、以下の記載がある。
「このポリアミン酸塩は、一般に、N,N-ジメチルアセトアミド中0.5重量%溶液として30℃で測定して少なくとも0.1のインヘレント粘度を示すポリアミン酸として入手可能である。これは、米国特許第4,014,834号(Concannon)に詳述されているように、合着剤(coalescing agent)、例えばN-メチルピロリドンなどおよび粘度低下剤(viscosity-reduing agnet)、例えばフルフリルアルコールなどに溶解しそして第三級アミン、好適にはトリエチルアミンと反応して水に溶ける塩を形成する。次に、その結果として生じたポリアミン酸塩含有反応媒体は上記フルオロポリマー水分散液と一緒にブレンド可能でありかつ上記合着剤および粘度低下剤は水に混和し得ることから、このブレンドでは均一なコーティング組成物が得られる。このようなブレンドは、上記フルオロポリマー水分散液の凝集を起こさせないように過剰な撹拌を用いないで単に上記液体を混合することで達成可能である。
この結合剤成分の別の例はポリエーテルスルホンであり、これは水に難溶であるが、水に混和し得る有機溶媒、例えばN-メチルピロリドンなどに溶解する能力を有し、その結果として生じる溶液は、上記フルオロポリマー水分散液と一緒に均一にブレンド可能である。ポリエーテルスルホン類は、ガラス転移温度が約230℃で持続運転温度が約170℃から190℃である非晶質の熱可塑性ポリマー類である。
本発明の別の態様において、本組成物は、有機溶媒、例えばN-メチルピロリドンなどに溶融粘度が1X10^(2)から1X10^(7)Pa・sの範囲のフルオロポリマー、例えばPTFE微粉末などと、結合剤、例えばポリアミン酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンまたはポリエーテルスルホンなどと、充填材であるフィルム硬化剤を分散物として入れた形態であり、好適には、上記結合剤の少なくとも一部を有機溶媒と界面活性剤に溶解させて用いる。このような態様は、プライマー層を金属片に塗布する場合(これをコイルコーティングと呼ぶ)に特に有用である。上記PTFE微粉末は、本組成物が水分散液形態の本発明の態様で用いるに便利な形態になり得るように、水分散重合で製造可能である。」(10頁8行?11頁14行)
また、本願明細書の発明の詳細な説明における実施例1及び2では、N-メチルピロリドンを含むプライマー組成物を用いている(23頁11行及び24頁8行以下。)。
してみると、本件補正発明においては、ポリマー結合剤を溶解するために必要な任意量のN-メチルピロリドンを含有する態様が包含されているので、相違点eは実質的な相違点であるとは認められない。

f 相違点fについて
本願明細書に「本組成物を好適には該ポリマーとフィルム硬化剤が入っている水分散液の形態にし、該結合剤を溶液の状態にする。」(5頁2?3行)と記載されているように、本件補正発明は水を液体状担体とする態様を含むものである。
また、先に「e」で述べたように、本件補正発明においては、N-メチルピロリドンを含有する態様が包含されているので、本件補正発明においてはN-メチルピロリドンを液体状担体とする態様を含むものである。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明における実施例1及び2では、脱イオン水、フルフリルアルコール及びN-メチルピロリドンを含むプライマー組成物を用いている(23頁5、10及び11行並びに24頁8行以下。)。
してみると、本件補正発明においては、水及びN-メチルピロリドン等の「液体状担体」を含有する態様が包含されているので、相違点fは実質的な相違点であるとは認められない。

(エ) 効果について
相違点a?相違点dにおいては容易想到性についての判断が含まれているので、相違点a?相違点dについて本願補正発明が格別顕著な効果を奏するか否かについて検討すると、本願明細書を検討しても、本願補正発明が相違点a?相違点dにより格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
すなわち、そもそも、本願明細書の実施例1及び2で使用しているプライマー組成物は「顔料とケイ酸アルミニウムとポリアミン酸塩(NMP/フルフリルアルコール中でポリアミン酸とトリエチルアミンを反応させることで調製)と燐酸第二鉄を水中で共粉砕することにより、上記d.の水分散液を生じさせた。」(23頁下から8?5行)という方法で製造しているところ、「(フィルム硬化剤であるケイ酸アルミニウムと)燐酸第二鉄」を用いる点、及び「(顔料やフィルム硬化剤やポリマー結合剤を)共粉砕する」点は本件補正発明の発明特定事項とはなっておらず、これらの点は本願の請求項3、8、9、10及び11に係る発明における発明特定事項であるにすぎない。
そして、本願明細書には、「(フィルム硬化剤であるケイ酸アルミニウムと)燐酸第二鉄」を用いることにより、以下の効果を奏することが記載されている。
「ここでは、共粉砕態様において限定したよりも高い度合でフルオロポリマーと結合剤の比率を限定し、水分散液の形態における本発明の組成物に接着促進剤、例えばコロイド状シリカおよび燐酸塩化合物、例えば金属の燐酸塩、例えば燐酸Zn、MnまたはFeなどの如き他の添加剤を含めてもよく、このような燐酸塩化合物はまた本組成物が有機溶媒媒体に入っている組成物である態様でも有効である。このような燐酸塩をケイ酸塩であるフィルム硬化剤と組み合わせると、共粉砕段階を用いない場合でも、本プライマー層が基質に対して示す接着力が評価できるほど向上する。」(18頁下から4行?19頁5行)
また、本願明細書には、「(顔料やフィルム硬化剤やポリマー結合剤を)共粉砕する」ことにより、以下の効果を奏することが記載されている。
「共粉砕態様 本発明の組成物を製造する好適な態様では、該フィルム硬化剤と結合剤溶液と顔料を共粉砕することで、溶解している結合剤が入っている顔料水分散液を生じさせる。このような共粉砕を行うと該非粘着性仕上げの耐久性および該プライマー層が基質に対して示す接着力の両方が向上することを見い出し、これは、本発明の別の予想外な結果である。」(13頁下から5行?14頁1行)
「如何なる場合でも、上記結合剤溶液を顔料と一緒に共粉砕すると、顔料の粒子が脱凝集を受けるか或は凝集していない粒子のサイズが小さくなる一方でその溶解しているポリマー結合剤の存在下で粉砕作用を受けるお陰で上記結合剤との密な混合物が溶液状態で達成されることにより、上記顔料の粒子サイズが小さくなる。この結合剤溶液を添加した後に行う製粉(共粉砕)は、少なくともこの共粉砕を受けさせた分散液から最終的に生じさせる焼成層が基質に対して示す接着力で評価できるほどの改良を得るにとって、使用する個々の製粉装置および共粉砕時間に関して有効である。」(14頁15?23行)
「このフィルム硬化剤を上記ポリマー結合剤溶液と一緒に共粉砕すると、予想外に、これらの成分を個別に粉砕して調製した同じ層組成物と比較して、層の耐久性またはその層を含む被膜の非粘着性が向上する。」(15頁下から2行?16頁1行)
「水分散液組成物に関して上述した向上(この場合には、共粉砕した水分散液をフルオロポリマー水分散液に添加する)を、コーティング用媒体として水の代わりに有機液体を用いた場合に得ることができる。フルオロポリマーのプライマーを用いた金属片のコイルコーティングは、現在のところ、フルオロポリマー用の有機溶媒担体を用いて、上記フルオロポリマーを上記担体中に粒子、特にPTFE微細粉末として存在させることで行われている。本発明のこのような態様に従い、上記フルオロポリマーと顔料とポリマー結合剤とフィルム硬化剤を全部、界面活性剤と一緒に有機溶媒媒体中で共粉砕することで固体材料が入っている分散液を生じさせることで、この上に記述した、向上した接着を得る。」(18頁3?12行)
以上のように、「(フィルム硬化剤であるケイ酸アルミニウムと)燐酸第二鉄」を用いる点、及び「(顔料やフィルム硬化剤やポリマー結合剤を)共粉砕する」点は本件補正発明の発明特定事項ではなく、しかも、「(フィルム硬化剤であるケイ酸アルミニウムと)燐酸第二鉄」を用いたり、「(顔料やフィルム硬化剤やポリマー結合剤を)共粉砕する」ことにより、非粘着性仕上げの耐久性、及び/又はプライマー層が基質に対して示す接着力等が向上するのであるから、本願明細書の実施例1及び2において、d.のプライマー組成物を用いて非粘着性仕上げの耐久性、及び/又はプライマー層が基質に対して示す接着力等が向上することを示しても、それらの効果は、本願の請求項3、8、9、10及び11に係る発明が奏する効果にすぎず、本件補正発明自体が奏する効果であるとは認められない。
したがって、本願補正発明が相違点a?相違点dにより格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

加えて、相違点aについては、プライマー組成物を金属に適用すれば接着性が改良されるのは自明である(例えば、摘示a の第23項及び摘示b 参照。)こと、刊行物1には「得られた仕上げは被覆された雲母成分を含有しないそれよりも遙かにすぐれた引掻き抵抗性を示した。」(摘示k)ことが記載されていること、及び本願明細書には本件補正発明が引用発明に対して格別顕著な効果を奏することを裏付ける記載が示されていないこと、を勘案すれば、本願補正発明が相違点aにより格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
また、相違点bについては、本願明細書には、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤について、本件補正発明が「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」と規定することにより如何なる効果を奏するのかは記載されていないし、しかも本願明細書の実施例1及び2で使用しているプライマー組成物における金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の粒子サイズは不明であるから、本件補正発明が「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」と規定することによる効果は不明である。さらに、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤について、本件補正発明が「粒子サイズが1?100ミクロメートルである」と規定することにより、引用発明に対して格別顕著な効果を奏することを裏付ける記載もない。したがって、本願補正発明が相違点bにより格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
また、相違点cについては、本件補正発明において、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合を「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定する理由は、本願明細書における、
「本組成物で用いる上記フィルム硬化剤の量が少量、例えばフルオロポリマーと結合剤とフィルム硬化剤を一緒にした重量を基準にして5重量%未満であると、プライマー層の耐久性に関してはほとんど効果が得られない。」(13頁7?10行)、及び
「フィルム硬化剤を存在させる場合、その比率は、本組成物から作成する層の耐久性を向上させるに有効な比率である。その必要量は、一般に、焼成後(水、溶媒、界面活性剤、粘度調節剤および均染剤の如き揮発物を全部追い出した後)の組成物の重量を基準にして5重量%以上であり、10重量%以上が好適である。この仕上げ用組成物から生じさせる層の他の特性を悪化させないでそれを含有させることができる量は一般に30重量%以下である。」(16頁14?21行)
という記載からみて、プライマー層の耐久性を向上させ、仕上げ用組成物から生じさせる層の他の特性を悪化させないためであると認められる。
しかしながら、本願明細書の具体例である実施例1及び2においては、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合を「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定することによる効果が示されていない(言い換えると、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合を5重量%未満にしたり、30重量%より多くした場合の効果が示されていない)から、本件補正発明が金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合を「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定することによる効果は不明である。さらに、金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合について、本件補正発明が「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定することにより、引用発明に対して格別顕著な効果を奏することを裏付ける記載もない。したがって、本願補正発明が相違点cにより格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
また、相違点dについては、本件補正発明が、アルカリ金属シリケートを含まないプライマー組成物を用いることにより、引用発明に対し格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
そして、以上述べた以外の点においても、本願補正発明が格別顕著な効果を奏するものと認めるべき根拠は見いだせない。

(オ) 小括
以上のとおり、上記各相違点は実質的な相違点であるとは認められないから、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)であるので、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができない。
また、上記各相違点は当業者が容易に想到し得るものであり、また、本願補正発明が上記各相違点により格別顕著な効果を奏するものとも認められないから、本件補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正発明は特許法29条1項3号及び同2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、この補正は平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、その余の点を検討するまでもなく、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたから、本願発明は、拒絶査定時の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を0.5?2.0:1の重量比で含んでなりそしてさらに金属以外の無機充填材フィルム硬化剤を組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%含んでなる組成物。」
(以下、これを「本願発明」という。)

2 原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、その出願前に頒布された引用文献1(特開昭52-18741号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明は、その出願前に頒布された引用文献1(特開昭52-18741号公報)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という事項を含むものである。

3 当審の判断
(1) 刊行物について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開昭52-18741号公報)は、先に「第2 2(2)イ」に示した刊行物1と同じものであるので、以下、これを「第2 2(2)イ」と同様に「刊行物1」という。
そして、刊行物1の記載事項は、先に「第2 2(2)イ」に記載したとおりである。

(2) 対比・判断
ア 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、先に「第2 2(2)ウ(ア)」に示したとおりの事項が記載されているので、本願発明の記載ぶりに合わせると、
「脱脂したアルミニウムパネル上のフルオロ重合体被覆用プライマーとして適用可能な組成物であって、
『(a) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、弗素原子で完全に置換されたモノエチレン系不飽和炭化水素単量体の重合体』
および
『(b) (a)および(b)の固体分の合算重量の約10?90重量%の、
(1) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、アルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有するアルカリ金属シリケート、および
(2) (1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、化学量論的量の第3級アミンで中和された構造式

(式中Gは水素またはカルボキシル基であり、→は異性を意味し、Rは少くとも2個の炭素原子を含有する四価有機基であり、各ポリアミド酸単位の2個より多くないカルボニル基は上記四価基のいずれか1個の炭素原子に結合されており、R_(1)は少くとも2個の炭素原子を含有する二価基であり、隣接するポリアミド酸単位各々のアミド基は上記二価基の別の原子に結合されており、そしてnは30℃におけるN,N-ジメチルアセトアミド中の0.5%溶液として測定した場合少くとも0.1の固有粘度をポリアミド酸に与えるに充分な大きな数である)で表わされるポリアミド酸の塩
からなる結合剤』
を含んでなりそしてさらに
『(d) 全固体分の約5?12重量%の雲母粒子又は顔料で被覆された雲母粒子』
を含むとともに、
『(c) ポリアミド酸アミン塩の重量に基づいて約10?90%のN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランまたはホルムアミド』及び
『(e) 液体状担体』
を含んでなる組成物。」
という発明(以下、「第2 2(2)ウ(ア)」と同様に「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 本願発明と引用発明との対比
先に「第2 2(2)ウ(イ)」に示した対応関係を考慮して本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明は、本件補正発明における
「滑らかな基質上の非粘着性被膜用プライマーとして適用可能な組成物であって、フルオロポリマーおよびポリマー結合剤を含んでなりそしてさらに金属以外の無機充填材フィルム硬化剤を含んでなる組成物。」
に対応するので、この点で本件補正発明と引用発明とは一致するが、両者は以下の点において一応相違すると認められる。
(ア) フルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比について、本願発明が「0.5?2.0:1の重量比で」と規定するのに対し、引用発明においてはかかる規定は特になされていない点
(イ) 金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合について、本願発明が「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定するのに対し、引用発明においては「全固体分の約5?12重量%」と規定している点
(ウ) 引用発明が「(1)および(2)の固体分の合算重量の約5?95重量%の、アルカリ金属酸化物および二酸化珪素の全モル数の痕跡量から約20%の範囲内にアルカリ金属酸化物モル含量を有するアルカリ金属シリケート」を含む旨規定しているのに対し、本願発明はかかる規定は特になされていない点
(エ) 引用発明が「(c) ポリアミド酸アミン塩の重量に基づいて約10?90%のN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、クレゾール酸、スルホランまたはホルムアミド」を含む旨規定しているのに対し、本願発明はかかる規定は特になされていない点
(オ) 引用発明が「液体状担体」を含む旨規定しているのに対し、本願発明はかかる規定は特になされていない点
(以下、上記の各相違点を、それぞれ項の番号に応じて「相違点(ア)」などという。)

ウ 相違点についての判断
(ア) 相違点(ア)について
先に「第2 2(2)ウ(ウ)a」において示した理由と同様の理由により、相違点(ア)は実質的な相違点であるとは認められないし、またフルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比について、「0.5?2.0:1の重量比で」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

(イ) 相違点(イ)について
先に「第2 2(2)ウ(ウ)c」において示した理由と同様の理由により、相違点(イ)は実質的な相違点であるとは認められないし、また金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤の含有割合を最適化又は好適化することにより、「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。

(ウ) 相違点(ウ)について
先に「第2 2(2)ウ(ウ)d」において示した理由と同様の理由により、相違点(ウ)は実質的な相違点であるとは認められないし、また、引用発明においてアルカリ金属シリケートを含まない組成物とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(エ) 相違点(エ)について
先に「第2 2(2)ウ(ウ)e」において示した理由と同様の理由により、相違点(エ)は実質的な相違点であるとは認められない。

(オ) 相違点(オ)について
先に「第2 2(2)ウ(ウ)f」において示した理由と同様の理由により、相違点(オ)は実質的な相違点であるとは認められない。

エ 効果について
先に「第2 2(2)ウ(エ)」において示した理由と同様の理由により、本願発明が格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
(ただし、相違点bについての判断は除く。)

オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書についての平成20年3月3日付け手続補正書の「3.2.1」の項において、「審査官は、原査定において、『本願発明は引用文献1記載の発明に対して相違するものでな』い、と認定されている。
しかしながら、引用文献1には、プライマー組成物において、
(1) フルオロカーボン重合体とポリマー結合剤(ポリアミド酸の塩)を0.5?2.0:1の重量比で使用し、これを、
(2) 組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%の粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤と組み合わせて使用する
ことについて何ら記載も示唆もされていない。」
と主張している。
しかしながら、(1)の点については、先に「第2 2(2)ウ(ウ)a」において述べたように、フルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比について、本願発明と引用発明における好ましい例とは、1.67?2.0:1の重量比の部分で重複しているので、相違点aは実質的な相違点であるとは認められないし、また、プライマー組成物の主要成分であるフルオロポリマー及びポリマー結合剤の重量比を最適化又は好適化することにより、フルオロポリマーとポリマー結合剤について、「0.5?2.0:1の重量比で」と規定することは当業者が容易に想到し得ることである。
また、(2)の点については、平成20年3月3日付けの手続補正は却下されたから、「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%の粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤と組み合わせて使用する」点は本願発明に含まれないものとなった。
しかも、念のため「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%の粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤と組み合わせて使用する」点を検討しても、先に「第2 2(2)ウ(ウ)b」及び「第2 2(2)ウ(ウ)c」において述べたことから理解されるように、「組成物の焼成重量を基準にして5?30重量%の粒子サイズが1?100ミクロメートルである金属以外の水不溶性無機充填材フィルム硬化剤と組み合わせて使用する」点は実質的な相違点であるとは認められないし、しかも、そのように規定することは当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、請求人の主張は審決の結論を左右するものではない。

(3) 小括
以上のとおり、上記各相違点は実質的な相違点であるとは認められないから、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)であるので、特許法29条1項3号の規定に該当し特許を受けることができないものである。
また、上記各相違点は当業者が容易に想到し得るものであり、しかも、本願発明が上記各相違点により格別顕著な効果を奏するものとも認められないから、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法29条1項3号及び同2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-05 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願平8-514821
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C09D)
P 1 8・ 121- Z (C09D)
P 1 8・ 113- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小柳 正之山田 泰之  
特許庁審判長 唐木 以知良
特許庁審判官 鈴木 紀子
杉江 渉
発明の名称 非粘着性仕上げ用万能プライマー  
代理人 竹林 則幸  
代理人 高木 千嘉  
代理人 結田 純次  
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