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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1201726 |
審判番号 | 不服2008-6510 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-17 |
確定日 | 2009-08-04 |
事件の表示 | 特願2001-310971「油受及びトランスファ・ケース・ハウジング・アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-160542〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明の特定 本願は、平成13年10月9日(パリ条約による優先権主張2000年10月10日(US)米国)の出願であって、その請求項1ないし6に係る発明は、平成14年1月9日付け、平成18年11月29日付け及び平成19年9月11日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1及び6に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明6」という。)は、次のとおりである。 【請求項1】 第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に一体に形成したタンクを持つエンジン油受と、 前記第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に固定するようにした第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分とを備え、 前記第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分を、前記第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分とは別に形成し、 前記第1及び第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分が互いに組合って完全なトランスファ・ケース・ハウジングを形成するようにして成る、 組合わせのエンジン油受及びトランスファ・ケース・ハウジング・アセンブリ。 【請求項6】 自動車に固定するようにした組合せのエンジン油受及びトランスファ・ケースにおいて、 前記エンジン油受に、第1のハウジング部分に一体に形成したタンク部分を設け、 前記トランスファ・ケースに、第2のハウジング部分を設けて、 前記エンジン油受の前記第1のハウジング部分と、前記トランスファ・ケースの前記第2のハウジング部分とを相互にボルト締めして、入力軸及び出力軸の間にトルクを差動的に伝える1組のギヤを保持するようにした完全なハウジングを形成するようにした、組合せのエンジン油受及びトランスファ・ケース。 2 引用刊行物とその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-43626号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「この発明は、パワープラント構造に関する。」(第1ページ左欄第13行) イ 「第1図?第6図は本発明の実施例を示すもので、20は4輪駆動車の車体前部に横置きされるエンジン本体、21はそのシリンダブロック、22はその下部のオイルパンである。 … そして、トランスミッションからの軸駆動力を伝達するためのセンタデファレンシャル、フロントデファレンシャルおよびトランスファを収装するトランスファケース24が、オイルパン22の側面にオイルパン22と一体に形成される。 … 他方、オイルパン22は底壁28を有する箱型に形成されると共に」(第2ページ上段右欄第7行ないし同ページ下段左欄第10行) 以上の点を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認める。 「底壁28を有し箱型に形成されたオイルパン22と、トランスファケース24とを備え、トランスファケース24が、オイルパン22の側面にオイルパン22と一体に形成されている、オイルパン22及びトランスファケース24・アセンブリ。」(以下、「引用発明1」という。) 「自動車に固定するようにしたオイルパン22及びトランスファケース24において、前記オイルパン22は底壁28を有した箱型に形成され、トランスファケース24が、オイルパン22の側面にオイルパン22と一体に形成され、トランスファケース24内にトランスミッションからの軸駆動力を伝達するためのセンタデファレンシャル、フロントデファレンシャルおよびトランスファを収装するようにした、オイルパン22とトランスファケース24。」(以下、「引用発明2」という。) 同様に、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平3-5243号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ウ 「この発明は四輪駆動車の動力伝達装置に係り、特にデファレンシャル保持部がトランスファケースに固定できる四輪駆動車の動力伝達装置に関する。」(第1ページ左欄第16行ないし第19行) エ 「前記ケース部18は、トランスミッション6のライト側に配置されるライトケース20とトランスミッション6のレフト側に配置されるレフトケース22とトランスファケース24とにより構成されている。」(第4ページ上段左欄第5行ないし第9行) オ 第1図より、2つの別に形成されたトランスファケース24・ハウジングが看取できる。 3 本願発明1に対し 3-1 対比 本願発明1と引用発明1を対比すると、後者の「底壁28を有し箱型に形成されたオイルパン22」は前者の「タンクを持つエンジン油受」に相当し、後者の「オイルパン22及びトランスファケース24・アセンブリ」は前者の「エンジン油受及びトランスファ・ケース・ハウジング・アセンブリ」に相当する。 してみると、両者は、本願発明1の表記に倣えば、 「タンクを持つエンジン油受を備えた、エンジン油受及びトランスファ・ケース・ハウジング・アセンブリ。」である点で一致し、次の点で相違している。 〈相違点1〉 本願発明1は、「第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に一体に形成した」タンクを持つエンジン油受と、「前記第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に固定するようにした第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分とを備え、前記第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分を、前記第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分とは別に形成し、前記第1及び第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分が互いに組合って完全なトランスファ・ケース・ハウジングを形成するようにして成る、組合わせの」エンジン油受及びトランスファ・ケース・ハウジング・アセンブリであるのに対し、引用発明1は、トランスファケース24が、オイルパン22の側面にオイルパン22と一体に形成されている、オイルパン22及びトランスファケース24・アセンブリであって、上記した第1及び第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分を備えていない点。 3-2 相違点の判断 刊行物1には上記相違点1に係る事項の「第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に一体に形成したタンクを持つエンジン油受と、前記第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に固定するようにした第2のトランスファ・ケース・ハウジング部分とを別に形成する」との明記はないものの、自動車の伝動装置の技術分野において、ケーシングをいかなるパーツに分割して構成するかは、当業者が通常の創作能力をもって決定し得る程度の事項であって、設計変更の域を出ないものである。 そして、前記摘示事項ウないしオによれば、刊行物2には「2つの別に形成されたトランスファケース24・ハウジング」なる事項が記載されており、引用発明1に刊行物2記載の事項を適用することを妨げる特段の事情も窺えない。 そこで、刊行物2の記載事項に接した当業者であれば、引用発明1のトランスファケース24を2つの別に形成されたハウジングに分割して組み合わせるようにすることは、容易に認識できる事項であって、引用発明1のトランスファケース24を2つの別に形成されたハウジングにすると、第1のトランスファケース24ハウジングに一体に形成した底壁28を有し箱型に形成されたオイルパン22と、前記第1のトランスファケース24ハウジングに固定するようにした第2のトランスファケース24ハウジングとを備えることは、明らかである。 したがって、引用発明1に刊行物2記載の事項を適用し適宜設計変更を加えて、トランスファケース24を2つの別に形成されたハウジングとして、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 また、本願発明1が奏する効果も、引用発明1及び刊行物2記載の事項により、当業者であれば予測できる事項であって、格別なものとは認められない。 3-3 小括 よって、本願発明1は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4 本願発明6に対し 4-1 対比 本願発明6と引用発明2を対比すると、後者の「オイルパン22」は前者の「エンジン油受」に相当し、以下同様に、「トランスファケース24」は「トランスファ・ケース」に、「底壁28を有した箱型」は「タンク部分」に、それぞれ相当する。 してみると、両者は、本願発明6の表記に倣えば、 「自動車に固定するようにしたエンジン油受及びトランスファ・ケースにおいて、前記エンジン油受に、タンク部分を設けた、エンジン油受及びトランスファ・ケース。」である点で一致し、次の点で相違している。 〈相違点2〉 本願発明6は、自動車に固定するようにした「組合せの」エンジン油受及びトランスファ・ケースにおいて、前記エンジン油受に、「第1のハウジング部分に一体に形成した」タンク部分を設け、「前記トランスファ・ケースに、第2のハウジング部分を設けて、前記エンジン油受の前記第1のハウジング部分と、前記トランスファ・ケースの前記第2のハウジング部分とを相互にボルト締めして、入力軸及び出力軸の間にトルクを差動的に伝える1組のギヤを保持するようにした完全なハウジングを形成するようにした、組合せの」エンジン油受及びトランスファ・ケースであるのに対し、引用発明2は、トランスファケース24が、オイルパン22の側面にオイルパン22と一体に形成され、トランスファケース24内にトランスミッションからの軸駆動力を伝達するためのセンタデファレンシャル、フロントデファレンシャルおよびトランスファを収装するようにしたものであって、上記した前記エンジン油受の前記第1のハウジング部分と、前記トランスファ・ケースの前記第2のハウジング部分とを相互にボルト締めして、入力軸及び出力軸の間にトルクを差動的に伝える1組のギヤを保持するようにした完全なハウジングを形成するようにしたものではない点。 4-2 相違点の判断 刊行物1には上記相違点2に係る事項の「前記エンジン油受の前記第1のハウジング部分と、前記トランスファ・ケースの前記第2のハウジング部分とを相互にボルト締めして、入力軸及び出力軸の間にトルクを差動的に伝える1組のギヤを保持するようにした完全なハウジングを形成するようにした」との明記はないものの、自動車の伝動装置の技術分野において、ケーシングを分割してそれぞれをボルト締めして完全なハウジングとすることは、当業者が通常の創作能力をもって決定し得る程度の事項であって、設計変更の域を出ないものである。 そして、前記摘示事項ウないしオ及び第1図によれば、刊行物2には「2つの別に形成されたトランスファケース24・ハウジングを結合して、入力軸及び出力軸の間にトルクを差動的に伝える1組のギヤを保持するようにした完全なハウジングを形成するようした」事項が記載されており、引用発明2に刊行物2記載の事項を適用することを妨げる特段の事情も窺えない。 そこで、刊行物2の記載事項に接した当業者であれば、引用発明2のトランスファケース24を2つの別に形成されたハウジングに分割してそれぞれをボルト締めして完全なハウジングとすることは、容易に認識できる事項であって、その際、入力軸及び出力軸の間にトルクを差動的に伝える1組のギヤを保持するようにした完全なハウジングが形成されることは明らかである。 したがって、引用発明2に刊行物2記載の事項を適用し適宜設計変更を加えて、トランスファケース24を2つの別に形成されたハウジングに分割してそれぞれをボルト締めして完全なハウジングとして、上記相違点2に係る本願発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 また、本願発明6が奏する効果も、引用発明2及び刊行物2記載の事項により、当業者であれば予測できる事項であって、格別なものとは認められない。 4-3 小括 よって、本願発明6は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、審判請求人は、平成20年5月7日付け手続補正書における【請求理由】においては、上記した「本願請求項1及び請求項6に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである」の点に関しては、何ら反論を行っていないが、平成19年9月11日付け意見書において、「刊行物1には、第1のトランスファ・ケース・ハウジング部分に一体に形成したエンジン油受はなんら開示されていません。…刊行物2には、2つの別に形成されたトランスファ・ケース・ハウジング部分は記載されていますが、エンジン油受と一体に形成したトランスファ・ケース・ハウジング部分は開示されていません。」(2.〈理由1〉に関しまして)と述べ、本願発明に進歩性がある旨主張している。 確かに、審判請求人が述べている如く、刊行物1及び刊行物2の記載事項は上記したとおりではあるが、引用発明1又は引用発明2に刊行物2記載の事項を適用して、本願発明1及び本願発明6の進歩性が否定されることは上述したとおりである。 よって、審判請求人の上記主張は採用することができない。 5 まとめ 以上により、本願の請求項1及び請求項6に係る発明(本願発明1及び本願発明6)は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本願は、特許請求の範囲の他の請求項を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-06 |
結審通知日 | 2009-02-17 |
審決日 | 2009-03-13 |
出願番号 | 特願2001-310971(P2001-310971) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関口 勇、中屋 裕一郎 |
特許庁審判長 |
溝渕 良一 |
特許庁審判官 |
山岸 利治 藤村 聖子 |
発明の名称 | 油受及びトランスファ・ケース・ハウジング・アセンブリ |
代理人 | 真田 雄造 |
代理人 | 尾原 静夫 |