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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1201735
審判番号 不服2006-2557  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-10 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 特願2000-18678「印刷制御装置、印刷制御方法、及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年7月31日出願公開、特開2001-205900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月27日の出願であって、平成17年12月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月13日付けで手続補正がなされ、その後、平成20年5月23日付けで、審査官により作成された前置審査報告書の内容についての審尋がなされたところ、同年7月28日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成18年3月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年3月13日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正内容
平成18年3月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成17年6月20日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、
「複数ページ分の印刷データに基づいて複数部印刷する際に1部ずつ印刷するコレート印刷機能を備えた印刷制御装置において、
コレート印刷指定に係る設定情報を受信するとともに、複数ページ分の印刷データをページ毎に順次受信する受信手段と、
前記受信手段が順次受信する各ページの印刷データを記憶装置に順次格納する格納手段と、
印刷装置を制御する印刷制御手段とを有し、
前記印刷制御手段は、前記受信手段によって受信された設定情報にコレート印刷の実行が指定されている場合に、前記格納手段による全ページ分の印刷データの前記記憶装置への格納完了を待たずに、前記印刷装置に印刷を開始させることを特徴とする印刷制御装置。」
を、
「複数ページ分の印刷データを複数部印刷する際に1部ずつ印刷装置に印刷させるコレート印刷機能を備えたホストコンピュータにおいて、
コレート印刷指定に係る設定情報を受信するとともに、複数ページ分の印刷データをページ毎に順次受信する受信手段と、
前記受信手段が順次受信する各ページの印刷データを記憶装置に順次格納する格納手段と、
前記コレート印刷機能を利用して前記印刷装置にコレート印刷を実行させるランゲージモニタとを有し、
前記ランゲージモニタは、前記受信手段によって受信した前記設定情報に応じて前記印刷装置にコレート印刷を実行させるときは、前記格納手段による全ページ分の印刷データの前記記憶装置への格納完了を待たずに当該印刷データの格納を継続すると共に、前記記憶装置の中から印刷データを即座に取り出して当該印刷データを前記印刷装置に送信することを特徴とするホストコンピュータ。」(下線は補正箇所を示す。)
とする補正事項を含む。
まず、上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「印刷する・・・印刷制御装置」を「印刷装置に印刷させる・・・ホストコンピュータ」とする事項を含むので、このことが新規事項の追加に該当するものであるか否かについて検討しておく。
出願当初の明細書において、「ホストコンピュータ」なる用語は段落【0124】においてのみ使用されており、その記載事項は以下のとおりである。(下線は当審で付与。)
「【0124】
なお、本発明を、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、リーダ、プリンタ等)から構成されるシステムに適用しても、あるいは1つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置、印刷装置等)に適用してもよい。」
一方、出願当初の明細書において、印刷制御装置に関して以下の記載がある。(下線は当審で付与。)

(1a)「【請求項1】 複数ページの原稿を複数部印刷する際に1部ずつ印刷するコレート印刷機能を備えた印刷制御装置において、
複数ページ分の印刷データをページ毎に順次受信する受信手段と、
前記受信手段が順次受信する各ページの印刷データを記憶装置に順次格納する格納手段と、
前記受信手段が最初のページの印刷データを受信すると、印刷装置に印刷を開始させる印刷制御手段と
を有することを特徴とする印刷制御装置。」
(1b)「【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、コレート印刷及び手動両面印刷において印刷データの受信開始から印刷終了までの時間を短縮した印刷制御装置、印刷制御方法、及び記憶媒体を提供することを目的とする。」
(1c)「【符号の説明】
・・・<中略>・・・
101 コンピュータ本体(印刷制御装置)
200 コンピュータ本体(印刷制御装置)」
(1d)印刷制御装置であるコンピュータ本体101及びコンピュータ本体200は、それぞれ、以下に示す【図1】、【図2】に記載されている。
【図1】

【図2】

そして、上記【図1】や【図2】に記載されているような印刷制御装置が含まれる上記段落【0124】に記載されているような、ホストコンピュータ、インターフェース装置、リーダ、プリンタ等から構成されるシステムは、例えば、特開平3-2079号公報(3頁左下欄?右下欄、第4図)、特開平5-212941号公報(【図1】)、特開平8-238811号公報(【図1】、【図2】)、特開平9-34670号公報(【図1】、【図2】)、特開平10-222319号公報(【図2】)、特開平11-48583号公報(【図1】)、特開平11-170631号公報(【図2】)、特開平11-198488号公報(【図1】、【図2】)、特開平11-227302号公報(【図1】)に記載されているが、これらは、いずれも上記【図1】における印刷制御装置としてのコンピュータ本体101に相当するコンピュータにその上位機種であるホストコンピュータが接続されているものであって、コンピュータ本体101に相当するコンピュータがホストコンピュータとされているものではない。
しかしながら、特開平8-244289号公報の【図1】や【図8】等に、印刷装置用のプリントデータを作成するための専用のコンピュータをホスト装置と称することが記載されている。
そこで、補正後の請求項1における「ホストコンピュータ」は、印刷装置に対する専用の制御装置として用いられるコンピュータを意味するものと限定的に解釈することにより、上記補正事項は新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものと判断する。
次に、上記補正事項は、「ホストコンピュータ」が印刷制御手段としての「印刷装置にコレート印刷を実行させるランゲージモニタ」を有しているとともに、この「ランゲージモニタ」が「前記印刷データの格納を継続すると共に、前記記憶装置の中から印刷データを即座に取り出して当該印刷データを前記印刷装置に送信する」ことに限定することを含むが、これらも、特許請求の範囲の減縮を目的とするに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5号の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-40121号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)
(2-a)「【請求項1】印刷部数情報が入力される印刷部数授受手段と、
印刷データをホストコンピュータより受信する通信手段と、
全ページ分の印刷データを記憶する記憶手段と、
前記通信手段により受信した印刷データをその記憶手段へ書き込む書き込み手段と、
その記憶手段に書き込まれた印刷データを読みだす再生手段と、
印刷するデータを用紙に印刷する印刷手段と、
その印刷手段と前記再生手段とを制御し、各ページを1度ずつそのページ順に印刷させる印刷制御手段と、
その印刷制御手段による印刷動作を前記印刷部数情報に基づいて繰り返させる制御手段と、
を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】前記印刷部数授受手段は操作パネルから構成され、その操作パネルは印刷部数設定手段と、印刷部数表示手段とから構成されることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。」

(2-b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリンタにより複数ページの印刷物を複数部印刷する方法に関する。」

(2-c)「【0002】
【従来の技術】従来、プリンタは、印刷部数をホストコンピュータや操作パネルより指示されることにより、印刷データを1度受信しただけで複数部の印刷をする機能を備えていた。しかしながら、このような機能を使用し、複数ページに及ぶ印刷を複数部印刷した場合、第1ページが設定部数連続して印刷され、第2ページが設定部数連続して印刷され、それ以降同様に最終ページまで、各ページが設定部数連続して印刷されていた。その結果、印刷済みの用紙を、図8に示すように第1ページから最終ページまで連続しており各ページが1部ずつの組合せが、設定部数となるように、仕分けする作業が必要であったり、複数のトレーを備え、印刷済みの用紙を、ページ毎に仕分けるソータをプリンタに付加する事が行われたりしていた。」

(2-d)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のソータを付加したプリンタは、複数のトレーを備えることにより、大型化すると言う問題があった。さらに、ソータを付加したプリンタを使用しても、備えたトレー以上の部数のソート印刷を行えないと言う問題もあった。


(2-e)「【0004】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、図8に示すように、第1部の第1ページ31から最終ページ33まで順に印刷され、次に第2部の第1ページ34から最終ページ36まで順に印刷され、それが最終部の最終ページ37まで続く複数部印刷を行い得る、小型のプリンタを提供することを目的とする。」

(2-f)「【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明のプリンタは図1に示すように、印刷部数情報が入力される印刷部数授受手段1と、印刷データをホストコンピュータより受信する通信手段2と、全ページ分の印刷データを記憶する記憶手段3と、前記通信手段2により受信した印刷データをその記憶手段3へ書き込む書き込み手段4と、前記記憶手段3に書き込まれた印刷データを読みだす再生手段5と、印刷するデータを用紙に印刷する印刷手段6と、その印刷手段6と前記再生手段5とを制御し、各ページを1度ずつそのページ順に印刷させる印刷制御手段7と、その印刷制御手段7による印刷動作を前記印刷部数情報に基づいて繰り返させる制御手段8とを備える。尚、前記印刷部数授受手段1は印刷部数設定手段と、印刷部数表示手段とから構成される操作パネルから構成されてもよい。」

(2-g)「【0006】
【作用】上記の構成を有する本発明によれば、印刷部数授受手段1により印刷部数情報が入力される。また、通信手段2により印刷データをホストコンピュータより受信する。
【0007】そして、書き込み手段4によりその受信した全ページ分の印刷データを記憶手段3へ書き込む。
【0008】次に、制御手段8は、印刷部数情報に基づいて印刷制御手段7の印刷動作を繰り返させる。その印刷制御手段7とは、印刷手段6と再生手段5とを制御し、各ページを1度ずつそのページ順に印刷させる印刷動作を行わせるものである。」

(2-h)「【0010】図2は、本実施例のプリンタの構成を示すブロック図である。
【0011】本プリンタは、プリンタコントローラ11と、プリンタエンジン12とハードディスク13とにより構成される。
【0012】前記プリンタコントローラ11は、周知のCPU14、ROM15、RAM16と、前記プリンタエンジン12の制御を行うプリンタエンジンインターフェース(以下I/Fと略す)17と、図示しないホストコンピュータから印刷データを受信するホストI/F18と、前記ハードディスク13を制御するハードディスクI/F19とにより構成される。
【0013】前記ROM15は、CPU14がホストI/F18を制御してホストコンピュータから印刷データを受信し、プリンタエンジンI/F17を制御してプリンタエンジン12により印刷を行うまでのプログラム20を格納している。また、文字を印刷するためのフォントデータ21も格納している。
【0014】前記RAM16は、ホストI/F18より受信した印刷データをCPU14が展開して形成するビットマップデータを格納するページメモリ22、印刷データより指示された印刷部数23、印刷ページ数24、印刷ページ25を格納している。
【0015】前記ホストI/F18により、ホストコンピュータから受信する印刷データは、PostScriptと同様なページ記述を行うデータ列であり、描画コマンド、印刷部数設定コマンド、ページ終了コマンド、データ終了コマンドに分類される。描画コマンドは、文字もしくは図形を表わすコマンドであり、RAM16上のページメモリ22にビットマップデータとして展開される。また、印刷部数設定コマンドは、印刷する部数を指定するコマンドであり、1以上の値をとる整数値を含んでおり、その値はRAM16上の印刷部数23に記憶される。また、ページ終了コマンドは、1ページ分の印刷データの終了を表わすコマンドである。また、データ終了コマンドは、ホストコンピュータから受信される印刷データの終了を示すコマンドである。」

(2-i)「【0018】次に、印刷データの解析の処理過程を図4のフローチャートを参照し詳細に説明する。
【0019】まず、印刷データを受信する(S11)。この受信ステップは、ホストI/F18が受信制御を行うことにより、以下に説明する印刷データの解析の処理途中で多重に発生することはない。従って、印刷データの解析の処理が並列に処理されることはない。
【0020】次に、印刷データが、印刷部数設定コマンドであるかどうかの比較をする(S12)。もし、印刷データが、印刷部数設定コマンドであったならば、CPU14は、印刷部数をRAM16中の印刷部数23に記憶させる(S13)。
【0021】また、印刷データが、印刷部数設定コマンドでなければ、印刷データが、印刷する文字もしくは図形を指示する描画コマンドであるかどうかの比較をする(S14)。もし、印刷データが、描画コマンドであったならば、CPU14は、その描画コマンドに従い、ページメモリ22に描画する(S15)。詳細には、描画コマンドが文字の描画を指示するコマンドであれば、文字コードを含んでおり、CPU14は、その文字コードにより、ROM15上のフォントデータ21を参照し、その文字の形状をページメモリ22にビットマップデータとして展開する。描画コマンドが図形を示す描画コマンドであれば、図形の形状を示すパラメータを含んでおり、CPU14は、数値計算を行い、その形状をページメモリ22にビットマップデータとして展開する。この描画コマンドは、従来より使用されているPostScript等のコマンド体系を、そのまま使用すればよい。また、その場合描画コマンドに従った、ページメモリ22への描画(S15)も、従来より使用されているPostScriptインタープリタ等を、そのまま使用して行えばよい。
【0022】また、印刷データが、描画コマンドでなかったならば、印刷データがページ終了コマンドであるかどうかの比較をする(S16)。もし、印刷データがページ終了コマンドであったならば、ページ終了処理を行う。詳細には、図5のフローチャートに示すように、CPU14は、RAM16上のページメモリ22に保存されたビットマップデータをプリンタエンジンI/F17へ転送し、プリンタエンジン12を制御してプリントを実行する(S21)。その後、ハードディスクI/F19を制御し、ページメモリ22に保存されたビットマップデータをハードディスク13に記憶させる(S22)。さらに、RAM4上のページメモリ22をクリアし(S23)、印刷ページ数24に1を加算する(S24)。
【0023】また、図4のS16において印刷データがページ終了コマンドでなかったならば、印刷データがデータ終了コマンドあるかどうかの比較をする(S18)。もし、印刷データが、データ終了コマンドであったならば、データ終了処理を行う(S19)。詳細には、図7のフローチャートに示すように、まず、CPU14はRAM16上の印刷部数23が1であるかどうかを比較する(S41)。もし、印刷部数23が1であったならば、RAM16上のページメモリ22をクリアし(S44)、印刷ページ数24に0を設定し(S45)、データ終了処理を終了する。また、印刷部数23が1でなければ、ハードディスク13に保存されたビットマップデータをページメモリ22に1ページから最終ページまで順に読みだし、全ページの印刷を行う(S42)。次に印刷部数23より1減算し(S43)印刷部数23が1であるかどうかの比較(S41)のステップへもどす。
【0024】このS41?S43のステップのループを、S41のステップにおいて印刷部数23が1となるまで繰り返すことにより、全ページの印刷が終了コマンド受信時に印刷部数23に設定されていた数値-1回行われる。これに、ページ終了データ受信時に印刷した1部と合わせると、指定された印刷部数印刷された事になる。そこで、RAM16上のページメモリ22をクリアし(S44)、印刷ページ数24に0を設定し(S45)、データ終了処理を終了する。
【0025】次に、図7のS42における全ページ印刷の制御を、図6のフローチャートを参照し、詳細に説明する。まず、CPU14はRAM16上の印刷ページ25に1を設定する(S31)。次に、ハードディスクI/F19を制御し、1ページ目のビットマップデータをページメモリ22へハードディスク13より読みだす(S32)。それを、プリンタエンジンI/F17へ転送し、プリンタエンジン12を制御してプリントを実行する(S33)。次に、印刷ページ25と印刷ページ数24を比較する(S34)。もし、等しくなければ、印刷ページ25に1を加算する(S35)。そして、次のページのビットマップデータのページメモリ22への読みだし(S31)のステップへもどす。この、S32?S35のステップのループを、S34のステップにおいて印刷ページ25が印刷ページ数24と等しくなるまでくりかえす。これにより、全ページの印刷が行われる。」

(2-j)「【0026】以上、本実施例によれば、ソータを付加することなく図8に示すように、第1部の第1ページ31から最終ページ33まで順に印刷され、次に第2部の第1ページ34から最終ページ36まで順に印刷され、それが最終部の最終ページ37まで続く印刷を行い得る、小型のプリンタを提供することができる。さらに、印刷する部数も、ソータを使用した場合のようにトレーの数に制限を受けることなく大量部数行うことができる。また、複数部印刷の際にも、ホストコンピュータより印刷部数分のデータを送信する必要がなく、ホストコンピュータの使用効率を向上させることが出来る。さらに、ビットマップデータを保存することにより、2部目以降の印刷時に描画コマンドの展開を繰り返す必要がなく、高速に複数部の印刷を行うことが出来る。
【0027】尚、前記実施例においては、印刷部数23の設定を、ホストから転送された印刷データ中の印刷部数設定コマンドにより行っているが、プリンタに操作パネルを備え、そのパネルより印刷部数を設定してもよい。この場合、ホストコンピュータになんら手を加えることなく複数部の印刷を行うことができる。」

(2-k)「【0031】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本発明のプリンタによれば、印刷部数授受手段へ印刷部数情報を与え、ホストコンピュータより通信手段へ全ページ分の印刷データを1度送信するのみで、図8に示すように、第1部の1ページから最終ページまで順に印刷され、次に第2部の1ページから最終ページまで順に印刷され、それが印刷部数情報で示した印刷部数続く印刷を行い得る。」

(2-l)図1は、以下に示すものである。

(2-m)図2は、以下に示すものである。

(2-n)図4は、以下に示すものである。

(2-o)図5は、以下に示すものである。

(2-p)図6は、以下に示すものである。


引用例に記載されているハードディスク13に格納されている印刷データはビットマップデータであり、上記図6に示されるように、ハードディスクから取り出されて即座に印刷手段6に送信されるということができることを考慮に入れて、上記摘記事項を総合して勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用例記載発明」という。)が、実質的に記載されている。

「複数ページ分の印刷データを複数部印刷する際に一部ずつ印刷手段6に印刷させる全ページ印刷機能を備えたプリンタコントローラにおいて、
全ページ印刷指定に係る印刷部数情報を受信するとともに、複数ページ分の印刷データをページ毎に順次受信する受信手段(RAM16等)と、
前記受信手段が順次受信する各ページの印刷データをハードディスク13に順次格納する格納手段(ハードディスクI/F19等)と、
前記全ページ印刷機能を利用して前記印刷手段6に全ページ印刷を実行させる制御手段8を備え、
前記制御手段8は、前記受信手段によって受信した前記印刷部数情報に応じて前記印刷手段6に印刷を実行させるときは、前記ハードディスク13による全ページ分の印刷データの前記ハードディスク13への格納完了を待たずに当該印刷データの格納を継続すると共に、前記ハードディスク13の中から印刷データを即座に取り出して当該印刷データを前記印刷手段6に送信するプリンタコントローラ。」

(3)本願補正発明1(前者)と引用例記載発明(後者)の対比
後者の「印刷手段6」、「全ページ印刷機能」、「全ページ印刷指定」、「全ページ印刷」、「ハードディスク13」は、それぞれ、前者の「印刷装置」、「コレート印刷機能」、「コレート印刷指定」、「コレート印刷」、「記憶装置」に相当する。
また、前記(1)で指摘した理由により、「前者」における「ホストコンピュータ」は、プリンタに対する専用の制御装置としてのコンピュータを意味すると考えられるから、後者の「プリンタコントローラ」は前者の「ホストコンピュータ」に相当する。
そして、後者の「全ページ印刷指定に係る印刷部数情報」も「コレート印刷指定に係る設定情報」の一種であるということができ、「制御手段8」と前者の「ランゲージモニタ」は、ともに制御手段である点で共通する。
そうすると、両者は、
「複数ページ分の印刷データを複数部印刷する際に1部ずつ印刷装置に印刷させるコレート印刷機能を備えたホストコンピュータにおいて、
コレート印刷指定に係る設定情報を受信するとともに、複数ページ分の印刷データをページ毎に順次受信する受信手段と、
前記受信手段が順次受信する各ページの印刷データを記憶装置に順次格納する格納手段と、
前記コレート印刷機能を利用して前記印刷装置にコレート印刷を実行させる制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記受信手段によって受信した前記設定情報に応じて前記印刷装置にコレート印刷を実行させるときは、前記格納手段による全ページ分の印刷データの前記記憶装置への格納完了を待たずに当該印刷データの格納を継続すると共に、前記記憶装置の中から印刷データを即座に取り出して当該印刷データを前記印刷装置に送信するホストコンピュータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(3-1)相違点1
前者は、「コレート印刷指定に係る設定情報」に応じて、コレート印刷実行を行うものであるのに対して、後者の「コレート印刷指定に係る設定情報」は「全ページ印刷指定に係る印刷部数情報」であって、設定情報に応じてコレート印刷(全ページ印刷)を行うものではない点。

(3-2)前者は、制御手段が「ランゲージモニタ」であると特定されているのに対して、後者はそのように特定されていない点。

(4)相違点についての判断
(4-1)相違点1について
コレート印刷機能を有するプリンタコントローラにおいて、設定情報に応じてコレート印刷を行うことは、前記特開平5-212941号公報(【図2】)、特開平11-48583号公報(【0061】、【図4】)、特開平11-170631号公報(【0058】、【0059】)、特開平11-198488号公報(【図4】)、特開平11-227302号公報(【0024】、【図10】)の他に、特開平4-250084号公報(【0013】、【0021】)、特開平5-238114号公報(【0014】)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、引用例記載発明において、全ページ印刷機能に加えて、例えばスタック印刷モードを付加し、設定情報に応じて、全ページ印刷を実行することにより、相違点に係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜行う事項である。

(4-2)相違点2について
前記(2-h)で摘記した箇所、及び、上記図4ないし図6の記載等からみて、引用例における制御手段8は、コレート印刷機能(全ページ印刷機能)を利用して印刷装置(印刷手段6)にコレート印刷(全ぺージ印刷)を実行させるものであり、本願補正発明1における「ランゲージモニタ」と同じ機能を有するものである。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

(4-3)審判請求人の主張についての検討
審判請求人は、審判請求書及び審尋の回答書において、本願補正発明1におけるホストコンピュータは、PC(パーソナルコンピュータ)であり、本願補正発明1は、PC側における処理の高機能化の時流に乗って成された発明であって、印刷を実行するプリンタやMFPが高機能か低機能かに関係なく、ホストコンピュータが有する機能でコレート印刷を短時間で実行できるようにしたものである旨主張している。
しかしながら、前記(1)で指摘したように、本願補正発明1における「ホストコンピュータ」は、印刷装置に対する専用の制御装置として用いられるコンピュータを意味するものであって、一般的なPC(パーソナルコンピュータ)を意味するものではないので、上記審判請求人の主張を採用することはできない。

(4-4)まとめ
以上のとおり、引用例記載発明において、相違点1に係る構成を有するものとすることは、当業者が適宜行う事項であり、相違点2は実質的な相違点でない。
また、引用例記載発明において、相違点1に係る構成と相違点2に係る構成を組み合わせたことにより、当業者が予期せぬ格別の効果が奏せられるものでもない。

(5)補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3,本願発明について
平成18年3月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし請求項13に係る発明は、平成17年6月20日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、前記「2.(1)」において摘記したとおりである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明1は、前記「2.」で検討した本願補正発明1における構成要件である「印刷装置に印刷させる・・・ホストコンピュータ」を「印刷する・・・印刷制御装置」と上位概念化し、同じく「印刷装置にコレート印刷を実行させるランゲージモニタ」を「印刷装置を制御する印刷制御手段」と上位概念化し、印刷制御手段としての「ランゲージモニタ」がコレート印刷を実行させるときに「前記印刷データの格納を継続すると共に、前記記憶装置の中から印刷データを即座に取り出して当該印刷データを前記印刷装置に送信する」との構成を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由により、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-02 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-23 
出願番号 特願2000-18678(P2000-18678)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 一宮 誠
木村 史郎
発明の名称 印刷制御装置、印刷制御方法、及び記憶媒体  
代理人 別役 重尚  

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