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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1201764
審判番号 不服2007-8760  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-28 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 特願2001-110256「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月15日出願公開、特開2002-301205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一、手続きの経緯
本願は、平成13年4月9日の出願であって、平成18年7月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月28日付けで手続補正がなされ、同年11月2日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月22日付けで手続補正がなされ、その後平成19年2月23日付けで、前記平成18年12月22日付けの手続補正の却下の決定及び拒絶査定がなされたところ、平成19年3月28日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同日付け手続補正によって明細書の一部が補正されたものである。

第二、平成19年3月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年3月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(二、1)補正後の本願発明
本件補正は、
(イ)補正前(平成18年12月22日付けの手続補正は既に却下されているので、平成18年9月28日付け手続補正により補正された特許請求の範囲)の請求項1に記載された「摺動板部(94)の発射方向下流側端部」と「発射レール(17)の(前記)外レール(24)側端部」とについて「発射方向位置が略一致しており、」と限定し、
(ロ)補正前の請求項1に記載された「阻止部材(91)」についての記載を、上記平成18年11月2日付け拒絶理由通知書において、「「移動空間から待避する方向に変形又は揺動」し得るのが、「阻止部」ではなく、「阻止部材」もしくは「阻止部材に備えられた摺動板部」であるのであれば、その点を明確にされたい。」との指摘を受けて補正して、
補正後の請求項1の記載を、
「前枠(2)に、発射手段(15)によって発射された遊技球を遊技盤(12)の外レール(24)側に案内する発射レール(17)と、該発射レール(17)と前記外レール(24)との間に落下したファール球を貯留皿(9)へと案内するファール球案内通路(84)と、発射球を検出する発射球検出手段(101)とを備えた弾球遊技機において、前記発射レール(17)の前記外レール(24)側端部(17b)近傍に、前記外レール(24)側から前記発射レール(17)側への遊技球の戻りを阻止する阻止部材(91)を有する戻り球阻止手段(93)を備え、前記阻止部材(91)は、前記発射レール(17)の上方に遊技球の発射方向に向けて設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的又は揺動自在に支持された摺動板部(94)と、この摺動板部(94)の発射方向下流側端部に設けられた阻止部(95)とを備え、前記摺動板部(94)の発射方向下流側端部と前記発射レール(17)の前記外レール(24)側端部(17b)とは発射方向位置が略一致しており、通常時は前記阻止部(95)が前記発射レール(17)上の遊技球の移動空間の少なくとも一部分を遮ることにより前記外レール(24)側から前記発射レール(17)側への遊技球の戻りを阻止すると共に、前記発射レール(17)上を発射方向に移動する遊技球に対しては、その発射レール(17)上を移動中の遊技球により前記摺動板部(94)が押し上げられることにより、前記移動空間から前記阻止部(95)が退避する方向に前記阻止部材(91)が変形又は揺動してその遊技球の通過を許容するように構成され、前記発射球検出手段(101)を、前記阻止部材(91)の長手方向範囲内で且つ前記阻止部(95)の近傍に設けたことを特徴とする弾球遊技機。」(下線部が補正部分)とし、
(ハ)補正前の請求項2乃至5を削除、
するものであるから、
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除及び同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮並びに同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
(二、2)そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

第三、刊行物に記載された発明
刊行物1;特開2000-140237号公報(平成12年5月23日公開)

原査定の拒絶理由通知に引用された特開2000-140237号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】・・・本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、パチンコ機において戻り球を確実に下景品球受皿に回収し、戻り球が球センサに衝突したり、球センサが戻り球を検知したりすることのないパチンコ機を提供するものである。」、
(1b)「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明に係るパチンコ機の下部分であり、図2はその発射レール周辺部を示している。・・・2は発射レールであり、その基端部にて打球杆1のスプリング1Sにより打球されたパチンコ球Pが該発射レール2の先端部から誘導レール3へ飛び移るように、取付部材4を介して遊技盤取付枠5に固定されている。誘導レール3は内側レール3Aと外側レール3Bとから構成されており、両方とも遊技盤6に固定されている。・・・発射レール2と誘導レール3の間には戻り球回収口10があり、該戻り球回収口10は下景品球受皿11と連通している。発射レール2先端部の上方位置には、球センサ13が遊技盤6の空きスペースを利用して固定されている。該球センサ13は例えば近接スイッチのような非接触で検知するタイプのセンサであり、飛走するパチンコ球Pを検知可能な位置に備えられている。該球センサ13の前方位置にはセンサ防護部材14が遊技盤6に固定してあり、さらに該センサ防護部材14には戻り球防止片12が固定してある。戻り球防止片12は例えばばね鋼のような可撓性のある材質からなり、その先端を斜め下方に延ばすようにして設けてある。
【0007】上記の構成による本発明のパチンコ機の実際の動作を以下説明する。上景品球受皿8に貯留されているパチンコ球Pは球供給機構7により一個ずつ発射レール2上に供給され、発射レール2の基端部にて球保持片9で保持される。遊技者の操作により打球機構が働いて打球杆1が往復回動し、パチンコ球Pはスプリング1Sに弾かれて発射レール2上から誘導レール3に向かって発射される。戻り球防止片12は、パチンコ球Pの発射方向への飛走力に対しては球の通過経路を開く方向に撓むので、パチンコ球Pは発射レール2から誘導レール3へと移動し、誘導レール3内を飛走して遊技盤面へと放出される。パチンコ球Pが戻り球となって誘導レール3上を逆走してきた場合、誘導レール3始端部から戻り球回収口10を飛び越えてきた戻り球は、センサ防護部材14あるいは戻り球防止片12に衝突する。このときの力で戻り球防止片12は戻り球の通過経路を閉じる方向に撓むので、衝突した戻り球は戻り球防止片12下方の戻り球回収口10に落下し、下景品球受皿11へ回収されていく。」、
(1c)「【0012】
【発明の効果】本発明のパチンコ機は上記の説明から明らかなように、発射レール先端部の上方位置に設けた球センサの前方位置に、センサ防護部材及び戻り球防止片からなる戻り球防止装置を備えることにより、誘導レール内を逆走してきた戻り球はセンサ防護部材あるいは戻り球防止片に衝突し、戻り球回収口に落下して下景品球受皿へと回収されるので、戻り球が球センサに衝突して故障や破損を引き起こしたり、球センサが戻り球を検知して発射球数データに誤差が生じたりする問題がなくなる。さらに戻り球防止装置を構成するセンサ防護部材において、その前方部位に突起片を形成または円弧を形成することにより、勢いよく衝突してきた戻り球でも円滑に戻り球回収口に落下させることができる。本発明は以上のような理由から、戻り球による種々の問題を解決するパチンコ機を提供することを可能とし、その効果は著大である。」。

(1d)また、要部正面図である【図2】、及びセンサ防護部材の実施の形態を示す要部正面図である【図4】に示された事項を併せると、これら図面には「戻り球防止片12は、発射レール2の先端部の上方前方にパチンコ球Pの発射方向に向けて設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的に支持され、発射方向下流側端部を斜め下方に延ばすようにして設けてある」との技術事項が示されている。

したがって、引用刊行物1には、
「発射レール2は、その基端部にて打球杆1のスプリング1Sにより打球されたパチンコ球Pが該発射レール2の先端部から誘導レール3へ飛び移るように、取付部材4を介して遊技盤取付枠5に固定され、
前記誘導レール3は遊技盤6に固定され、
前記発射レール2と前記誘導レール3の間には、下景品球受皿11と連通している戻り球回収口10が備えられた、パチンコ機において、
発射レール2先端部の上方位置には飛走するパチンコ球Pを検知可能な球センサ13が遊技盤6に固定され、該球センサ13の前方位置にはセンサ防護部材14が遊技盤6に固定され、さらに該センサ防護部材14には戻り球防止片12が固定してあり、該戻り球防止片12は、ばね鋼のような可撓性のある材質からなり、発射レール2の先端部の上方前方にパチンコ球Pの発射方向に向けて設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的に支持され、発射方向下流側端部を斜め下方に延ばすようにして設けてあり、該センサ防護部材14及び該戻り球防止片12は戻り球防止装置を構成し、
遊技者の操作により打球機構が働いて打球杆1が往復回動し、パチンコ球Pがスプリング1Sに弾かれて発射レール2上から誘導レール3に向かって発射されると、戻り球防止片12は、パチンコ球Pの発射方向への飛走力に対しては球の通過経路を開く方向に撓むので、パチンコ球Pは発射レール2から誘導レール3へと移動し、誘導レール3内を飛走して遊技盤面へと放出され、
パチンコ球Pが戻り球となって誘導レール3上を逆走してきた場合、誘導レール3始端部から戻り球回収口10を飛び越えてきた戻り球は、戻り球防止片12に衝突し、戻り球防止片12は戻り球の通過経路を閉じる方向に撓むので、衝突した戻り球は戻り球防止片12下方の戻り球回収口10に落下し、確実に下景品球受皿11へ回収される、パチンコ機。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

第四、本願補正発明と引用発明1との比較・検討
(四、1)引用発明1の「打球機構」は本願補正発明の「発射手段(15)」に相当し、以下同様に、「発射」は「発射」に、「パチンコ球P」は「遊技球」に、「遊技盤6」は「遊技盤(12)」に、「誘導レール3」は「外レール(24)」に、「発射レール2」は「発射レール(17)」に、「戻り球」は「ファール球」に、「下景品球受皿11と連通している戻り球回収口10」は「貯留皿(9)へと案内するファール球案内通路(84)」に、「飛走するパチンコ球Pを検知可能な球センサ13」は「発射球を検出する発射球検出手段(101)」に、「パチンコ機」は「弾球遊技機」に、「戻り球防止片12」は「阻止部材(91)」に、「戻り球防止装置」は「戻り球阻止手段(93)」に、「球の通過経路」は「遊技球の移動空間」に、それぞれ相当する。
(四、2)引用発明1の「戻り球防止片12」は「戻り球防止装置を構成」し、遊技球の戻りを阻止するものであるから、引用発明1は本願補正発明の「阻止部材(91)を有する戻り球阻止手段(93)」に相当する構成を備えているといえる。
(四、3)引用発明1の「発射レール2」は、「パチンコ球Pが該発射レール2の先端部から誘導レール3へ飛び移るように、取付部材4を介して遊技盤取付枠5に固定され」ているから、引用発明1は本願補正発明の「発射された遊技球を外レール(24)側に案内する発射レール(17)」に相当する構成を備えている。また、引用発明1の「発射レール2と誘導レール3の間に備えられ、下景品球受皿11と連通している戻り球回収口10」は「戻り球を回収」するものであるから、引用発明1は本願補正発明の「発射レール(17)と外レール(24)との間に落下したファール球を貯留皿(9)へと案内するファール球案内通路(84)」に相当する構成を備えている。
(四、4)引用発明1の「パチンコ球Pがスプリング1Sに弾かれて発射レール2上から誘導レール3に向かって発射されると、パチンコ球Pの発射方向への飛走力に対しては球の通過経路を開く方向に撓む」戻り球防止片12、及び「パチンコ球Pが戻り球となって誘導レール3上を逆走してきた場合、・・・戻り球の通過経路を閉じる方向に撓む」戻り球防止片12について検討すると、
1)引用発明1の「発射レール2上から誘導レール3に向かって発射されるパチンコ球P」は「発射方向への飛走力」により、「戻り球防止片12」を「球の通過経路を開く方向に撓」ませるものであり、また該「戻り球防止片12」は遊技球の戻りを阻止するものであるから、引用発明1は本願補正発明の「阻止部材(91)は、摺動板部(94)と、阻止部(95)とを備え、」に相当する事項を備えていることは明らかであり、
2)引用発明1の「戻り球」は「戻り球防止片12に衝突し、下景品球受皿11へ回収される」から、引用発明1は本願補正発明の「通常時は阻止部(95)が遊技球の移動空間の少なくとも一部分を遮ることにより外レール(24)側から発射レール(17)側への遊技球の戻りを阻止する」に相当する事項を備えていることは明らかであり、
3)引用発明1の「発射レール2上から誘導レール3に向かって発射されるパチンコ球P」は「発射レール2の先端部の上方前方に設けてある戻り球防止片12」を「球の通過経路を開く方向に撓」ませ、「発射レール2から誘導レール3へと移動」するから、引用発明1は本願補正発明の「発射方向に移動する遊技球に対しては、その移動中の遊技球により摺動板部(94)が押し上げられることにより、移動空間から阻止部(95)が退避する方向に阻止部材(91)が変形してその遊技球の通過を許容する」に相当する事項を備えていることは明らかである。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
一致点
発射手段によって発射された遊技球を遊技盤の外レール側に案内する発射レールと、該発射レールと前記外レールとの間に落下したファール球を貯留皿へと案内するファール球案内通路と、発射球を検出する発射球検出手段とを備えた弾球遊技機において、
前記外レール側から前記発射レール側への遊技球の戻りを阻止する阻止部材を有する戻り球阻止手段を備え、前記阻止部材は、遊技球の発射方向に向けて設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的に支持された摺動板部と、阻止部とを備え、通常時は前記阻止部が遊技球の移動空間の少なくとも一部分を遮ることにより前記外レール側から前記発射レール側への遊技球の戻りを阻止すると共に、発射方向に移動する遊技球に対しては、その移動中の遊技球により前記摺動板部が押し上げられることにより、前記移動空間から前記阻止部が退避する方向に前記阻止部材が変形してその遊技球の通過を許容するように構成され、
前記発射球検出手段を設けたことを特徴とする弾球遊技機。

相違点(A)
発射レールとファール球案内通路と発射球検出手段とを、本願補正発明では前枠に備え、発射球検出手段を、阻止部材の長手方向範囲内で且つ阻止部の近傍に設けたのに対して、引用発明1では発射レールは遊技盤取付枠に備えられ、ファール球案内通路の設置箇所は明記されておらず、発射球検出手段を阻止部材(戻り球防止片12)の後方位置の遊技盤に設けた点
相違点(B)
遊技球の戻りを阻止する阻止部材を有する戻り球阻止手段が、本願補正発明では発射レールの外レール側端部近傍に備えられるのに対して、引用発明1では発射レール先端部の上方前方位置に備えられる点
相違点(C)
阻止部材は、本願補正発明では発射レールの上方に設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的又は揺動自在に支持された摺動板部と、この摺動板部の発射方向下流側端部に設けられた阻止部とを備え、前記摺動板部の発射方向下流側端部と発射レールの外レール側端部とは発射方向位置が略一致しており、変形又は揺動して遊技球の通過を許容するのに対して、引用発明1では発射レール先端部の上方前方位置に設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的に支持された摺動板部と、阻止部とを備え、変形して遊技球の通過を許容する点
相違点(D)
阻止部が遮る遊技球の移動空間は、本願補正発明では発射レール上であるのに対して、引用発明1では発射レール先端部の上方前方位置である点
相違点(E)
摺動板部を押し上げる遊技球は、本願補正発明では発射レール上を発射方向に移動するものであるのに対して、引用発明1では発射レール先端部の前方を飛走するものである点

そこで、上記相違点(A)について検討する。
発射レールとファール球案内通路と発射球検出手段とを遊技機のどの部材に備えるかは、それらの機能や他の部材との関連性を考慮して、当業者が適宜なし得る設計上の事項であり、前枠は弾球遊技機が普通に有している枠部材であるから、発射レールとファール球案内通路と発射球検出手段とを、前枠に備えることは当業者が容易になし得ることである。また、同様の理由により、阻止部材の後方位置に設けられた発射球検出手段を阻止部材の長手方向範囲内で且つ阻止部の近傍に設けることは、当業者が容易になし得ることである。
次に、上記相違点(B)について検討する。
遊技球の戻りを阻止する機能を有する機構が発射レールの外レール側端部近傍の上部に備えられるものは、例えば特開昭61-143083号公報に示された「玉回収孔13の直前位置のレール上に軸支された規制片14」(公報第2頁右上欄第10行乃至第14行及び【第3図】参照)及び実願昭52-76957号(実開昭54-6185号)のマイクロフィルムに示された「発射レール8の端部上方に枢着された衝止片12」(明細書第3頁第12行乃至第14行及び【第2図】乃至【第5図】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術1」という。)である。したがって、引用発明1に上記「周知・慣用の技術1」を適用し、相違点(B)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得るものである。
次に、上記相違点(C)乃至(E)について検討する。
相違点(C)について
遊技球の戻りを阻止する阻止部材が、発射方向上流側端部を揺動自在に支持された摺動板部と、この摺動板部の発射方向下流側端部に設けられた阻止部とを備え、揺動して遊技球の通過を許容するものは、例えば実公平7-24149号公報に示された「発射球がガイド突条521に接触すると回動するゲート部材52」(公報第2頁第4欄第1行乃至第13行及び【第2図】乃至【第4図】参照)及び実公昭57-50061号公報に示された「打玉aに排除される逆流阻止片11」(公報第2頁第3欄第21行乃至第4欄第4行及び【第2図】乃至【第4図】参照)のように周知・慣用の技術(以下、「周知・慣用の技術2」という。)であり、また遊技球の戻りを阻止する機能を有する機構を発射レールの外レール側端部近傍の上方に設けることは、例えば前記特開昭61-143083号公報に示された「玉回収孔13の直前位置のレール上に軸支された規制片14」(公報第2頁右上欄第10行乃至第14行及び【第3図】参照)及び前記実願昭52-76957号(実開昭54-6185号)のマイクロフィルムに示された「発射レール8の端部上方に枢着された衝止片12」(明細書第3頁第12行乃至第14行及び【第2図】乃至【第5図】参照)のように周知・慣用の技術(「周知・慣用の技術1」)である。したがって、引用発明1に上記「周知・慣用の技術1」及び「周知・慣用の技術2」を適用し、摺動板部の発射方向下流側端部に設けられた阻止部と発射レールの外レール側端部との発射方向位置を略一致させる、即ち、摺動板部の発射方向下流側端部と発射レールの外レール側端部との発射方向位置を略一致させて、相違点(C)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得るものである。
さらに、上記「摺動板部の発射方向下流側端部に設けられた阻止部と発射レールの外レール側端部との発射方向位置を略一致させる」場合には、阻止部が遮る遊技球の移動空間は発射レール上となること、及び摺動板部を押し上げる遊技球は発射レール上を発射方向に移動するものとなることは当然の技術事項であるから、相違点(D)及び(E)に係る本願補正発明を特定する事項とすることは、同様に当業者が容易になし得るものである。

そして、効果においても、引用発明1は「衝突した戻り球は確実に下景品球受皿11へ回収される」ものであるから、本願補正発明が格別の効果を奏するものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知・慣用の技術1並びに周知・慣用の技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第五、本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第六、本願発明について
平成19年3月28日付けの手続き補正は上記のとおり却下すべきものとなり、また、上記「第一、手続きの経緯」に記載したように、平成18年12月22日付けの手続補正は既に却下されているので、本願の請求項1乃至5に係る発明は、上記平成18年9月28日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】 前枠(2)に、発射手段(15)によって発射された遊技球を遊技盤(12)の外レール(24)側に案内する発射レール(17)と、該発射レール(17)と前記外レール(24)との間に落下したファール球を貯留皿(9)へと案内するファール球案内通路(84)と、発射球を検出する発射球検出手段(101)とを備えた弾球遊技機において、前記発射レール(17)の前記外レール(24)側端部(17b)近傍に、前記外レール(24)側から前記発射レール(17)側への遊技球の戻りを阻止する阻止部材(91)を有する戻り球阻止手段(93)を備え、前記阻止部材(91)は、前記発射レール(17)の上方に遊技球の発射方向に向けて設けられ且つ発射方向上流側端部を固定的又は揺動自在に支持された摺動板部(94)と、この摺動板部(94)の発射方向下流側端部に設けられた阻止部(95)とを備え、通常時は前記阻止部(95)が前記発射レール(17)上の遊技球の移動空間の少なくとも一部分を遮ることにより前記外レール(24)側から前記発射レール(17)側への遊技球の戻りを阻止すると共に、前記発射レール(17)上を発射方向に移動する遊技球に対しては、その発射レール(17)上を移動中の遊技球により前記摺動板部(94)が押し上げられることにより前記阻止部(95)が前記移動空間から退避する方向に変形又は揺動してその遊技球の通過を許容するように構成され、前記発射球検出手段(101)を、前記阻止部材(91)の長手方向範囲内で且つ前記阻止部(95)の近傍に設けたことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

第七、刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由通知に引用された刊行物及びその記載事項は前記「第三、刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

第八、本願発明と引用発明1との比較・検討
本願補正発明は、本願発明を特定するために必要な事項である、「摺動板部(94)の発射方向下流側端部」と「発射レール(17)の(前記)外レール(24)側端部」とについて「発射方向位置が略一致しており、」と限定し、「変形又は揺動」するものが「阻止部材(91)」であることを明確にしたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第四、本願補正発明と引用発明1との比較・検討」に記載したとおり、引用発明1及び「周知・慣用の技術1」並びに「周知・慣用の技術2」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び「周知・慣用の技術1」並びに「周知・慣用の技術2」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第九、むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び「周知・慣用の技術1」並びに「周知・慣用の技術2」に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-04 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-23 
出願番号 特願2001-110256(P2001-110256)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 俊久  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 深田 高義
川島 陵司
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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