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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1201767
審判番号 不服2007-14945  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-24 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 特願2001-569667「文書作成プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、並びに、文書作成システム及び文書作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月27日国際公開、WO01/71549〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2000年3月17日を国際出願日とする出願であって、平成19年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。



2.本願発明の認定

本願の請求項1乃至6に係る発明は、平成18年10月23日付けの手続補正書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
作成対象の文書を、レイアウトを含んだ任意の単位で分割した文書ファイルを用いて、分割された各文書ファイル間の関連付けを階層構造で行なうべく、直下の階層に位置する文書ファイルの配置位置を示す識別子を設定すると共に、該識別子に文書ファイルを特定する単一又は複数の文書ファイル名を設定する関連付け機能と、
該関連付け機能により識別子に単一の文書ファイル名が設定されたときには、該文書ファイル名により特定される文書ファイルを、識別子に複数の文書ファイル名が設定されたときには、その中から選択された1つの文書ファイル名により特定される文書ファイルを、該識別子の配置位置に複写することで、前記分割された各文書を合成する文書合成機能と、
該文書合成機能により合成された文書を表示する文書表示機能と、
をコンピュータに実現させるための文書作成プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。」



3.引用例1の認定

(1)
原査定の拒絶の理由に引用文献2(主引用文献)として引用された、特開平09-134344号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、文書中に用語を入力する用語入力装置に関するものである。」

(イ)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した前者の定型文書のうちの異なる領域のみ差し込み印刷指定し、差し込み文書を作成して印刷時に定型文書の差し込み部分に置き換えて印刷していたため、差し込み文書を個別にキー入力しなければならず、操作が面倒であると共に、手入力による間違いが発生し易いという問題があった。
【0005】また、後者の特定キーを押下して一覧を表示し、その中から選択して入力していたため、キー操作を行う煩雑さがあると共に、一覧中に所望のデータがあればよいが、無いときはデータ一覧中に追加登録してからでないと選択入力できないという問題があった。
【0006】本発明は、これらの問題を解決するため、フォーマット文書に従って常用句一覧から選択入力、差し込み入力、手入力、あるいはモードを切り替えて入力し、定型文書を簡単な操作かつ迅速に入力可能にすることを目的としている。」

(ウ)
「【0007】
【課題を解決するための手段】図1を参照して課題を解決するための手段を説明する。図1において、フォーマット文書作成手段1は、差し込み制御記号や常用句制御記号などを用いてフォーマット文書を作成するものである。
【0008】登録手段2は、常用句などを登録するものである。表示手段3は、フォーマット文書を表示するものである。入力手段4は、常用句や差し込み文書を文書中の所定領域に入力するものである。」

(エ)
「【0009】印刷手段5は、文書を印刷するものである。次に、動作を説明する。フォーマット文書作成手段1が文書中に差し込み制御記号や常用句制御記号などを用いてフォーマット文書を予め作成し、登録手段2が常用句や差し込み内容を予め登録する。そして、表示手段3が予め作成したフォーマット文書を表示し、入力手段4がフォーマット文書の先頭から順に差し込み制御記号で囲まれた差し込み領域を検出し、検出した差し込み領域に差し込みIDが設定されていたときにこの差し込みIDのファイルから差し込み文書を取り出して入力したり、あるいは常用句マーク(常用句ID)が設定されていたときにこの常用句マークに対応づけられた常用句一覧を表示して選択された常用句を入力したりすることを繰り返し、印刷手段5が入力された文書を印刷するようにしている。」

(オ)
「【0010】また、入力手段4が画面上に表示された文書中に差し込み制御記号で囲まれた差し込み領域を検出し、差し込み領域に差し込みIDが設定されていたときにこの差し込みIDのファイルから差し込み文書を取り出して入力したり、常用句マークが設定されていたときにこの常用句マークに対応づけられた常用句一覧を表示して選択された常用句を入力したり、あるいは手入力モードへの切り替えが入力されたときに手入力モードに切り替えて手入力された用語を入力したりすることを繰り返し、印刷手段5が入力された文書を印刷するようにしている。」

(カ)
「【0011】また、入力手段4が画面上に表示された文書中に常用句制御記号で囲まれた常用句領域を検し、常用句領域に常用句マークが設定されていたときにこの常用句マークに対応づけられた常用句一覧を表示して選択された常用句を入力したり、あるいは手入力モードへの切り替えが入力されたときにこの手入力モードに切り替えて手入力された用語を入力したりすることを繰り返し、印刷手段5が入力された文書を印刷するようにしている。」

(キ)
「【0013】
【発明の実施の形態】次に、図1から図11を用いて本発明の実施の形態および動作を順次詳細に説明する。
【0014】図1は、本発明の動作説明フローチャートを示す。図1において、S1は、フォーマット文書を作成する。これは、フォーマット文書作成手段1が行い、例えば後述する図3に示すフォーマット文書を作成するものである。このフォーマット文書は、画面上からオペレータがキー入力して文書、差し込み制御記号(開始、終了)、差し込み文書ID、常用句制御記号(開始、終了)、常用句マーク(常用句ID)を設定したものである。」

(ク)
「【0017】S6は、S5のYESで差し込み編集と判明したので、一覧表示する。これは、S5のYESでカーソルの位置に差し込み制御記号があって差し込み編集と判明し、更にこの差し込み領域内に常用句ID(常用句マーク)があったので、当該常用句IDに対応する常用句を全て読み出して常用句の一覧表を表示する。
【0018】S7は、S6で常用句の一覧表上でいずれかを選択、あるいは/およびモード切り替えを入力する。S8は、置換する。これは、S7で常用句の一覧表上からいずれかの常用句が選択されたときに、常用句IDとこの選択された常用句を置換して文書中に常用句を入力する。
【0019】S11は、終了か判別する。これは、フォーマット文書を用いた文書作成が終了したか判別する。YESの場合には、S13で印刷する。一方、NOの場合には、S5に戻る。
【0020】以上のS5のYES、S6からS8、S11、S13によって、画面上に表示したフォーマット文書についてカーソルが停止した差し込み領域内に常用句IDが設定されていたときに、この常用句IDに対応する常用句一覧表を表示し、選択されたときのその常用句をフォーマット文書中の該当する位置に入力したり、モード切り替えが指示されたときに手入力モードに遷移してS5のNO、S14、S15の処理でキー入力したりすることが可能となる。」

(ケ)
「【0021】S9は、S5のYESで差し込み編集と判明したので、差し込み文書を取り出して表示する。これは、S5のYESでカーソルの位置に差し込み制御記号があって常用句IDがなかったので、差し込み制御記号で挟まれた差し込み領域内に設定されている差し込みIDに対応する文書を取り出して表示する。
【0022】S10は、入力する、あるいはもモード切り替えする。これは、S9で取り出して表示した差し込み文書を、該当する差し込みIDの部分に入力したり、あるいはモード切り替えを指示する(ここでは、手入力モードへの切り替えを指示する)。
【0023】S11は、終了か判別する。これは、フォーマット文書を用いた文書作成が終了したか判別する。YESの場合には、S13で印刷する。一方、NOの場合には、S5に戻る。
【0024】以上のS5のYES、S9からS11によって、画面上に表示したフォーマット文書についてカーソルが停止した差し込み領域内に常用句IDが設定されていなかったときに差し込みIDに対応する差し込み文書を取り出しフォーマット文書中の該当する位置に入力したり、モード切り替えが指示されたときに手入力モードに遷移してS5のNO、S14、S15の処理でキー入力したりすることが可能となる。
【0025】S14は、手入力したり、あるいはモード切り替えしたりする。これは、S5のNOでカーソルの位置に差し込み制御記号(更に常用句制御記号)がなかったので、オペレータが手入力したり、あるいはモード切り替え指示したりする。」

(コ)
「【0028】図2は、本発明の他の動作説明フローチャートを示す。これは、図1の差し込み制御記号がなくて、常用句制御記号があった場合のフローチャートである。図2において、S21は、フォーマット文書データを作成する。このフォーマット文書データは、画面上で定型の文書、文書中に常用句制御記号(開始、終了)および常用句マーク(常用句ID)を設定したものである。」

(サ)
「【0038】図3は、本発明のフォーマット文書例を示す。このフォーマット文書は、図1のS1で作成したフォーマット文書の例を示し、図中に差し込み制御記号の開始と終了で挟まれた差し込み領域内に、差し込みID(例えば20)、その説明を記載したり、あるいは差し込み領域内に更に常用句制御記号(隅付き括弧)の開始と終了で挟まれた常用句領域内に、常用句ID(例えば覧11)、必要に応じてその説明を記載したりするものである。」

(シ)
「【0039】図4は、本発明のファイル例を示す。図4の(a)は、用語ファイル例を示す。この用語ファイルは、図示のように、種別に対応づけて内容を登録したものである。図3のフォーマット文書中の常用句制御記号の開始と終了で挟まれた常用句領域内の常用句ID(常用句マーク)例えば“覧11”のうちの“11”に対応づけて図示のように、
種別 内容
11 宅地
11 田
11 畑
を登録したものである。この用語ファイルに図示のように登録することにより、図3の不動産の表示の“地目”の下側の差し込み制御記号で挟まれた差し込み領域内にカーソルがきたときに、この差し込み領域内の常用句ID“11”に対応する上記内容“宅地”、“田”、“畑”の一覧が表示されるので、このうちから1つを選択すると、自動的に画面上に入力されるものである。」

(ス)
「【0040】図4の(b)は、常用句ファイル例を示す。これは、図示のように常用句種別に対応づけて常用句を図示のように登録したものである。ここでは、常用句の例えば
11:地目
は、図3の不動産の表示の“地目”の常用句IDの種別(図4の(a)の種別)が“11”である旨を登録したものである。これにより、“地目”の常用句ID“11”に対応づけて、図4の(a)に示すように、当該地目に該当する候補の用語を登録する。」

(セ)
「【0041】図4の(c)は、差し込みファイル例を示す。これは、図3の差し込み制御記号の開始と終了で挟まれた差し込み領域内に設定された差し込みID、例えば“25”に対応づけて差し込み内容“富士 太郎”を登録したものである。これにより、図3の差し込み制御記号の開始と終了で挟まれた差し込み領域内にカーソルがきたときにこの差し込みIDで指定された差し込みファイルの差し込み内容が取り出され、差し込み領域内に入力されることとなる。」


(2)
以上の引用例1の記載によれば、引用例1には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例1の上記(キ)の
「図1は、本発明の動作説明フローチャートを示す。図1において、S1は、フォーマット文書を作成する。これは、フォーマット文書作成手段1が行い、例えば後述する図3に示すフォーマット文書を作成するものである。このフォーマット文書は、画面上からオペレータがキー入力して文書、差し込み制御記号(開始、終了)、差し込み文書ID、常用句制御記号(開始、終了)、常用句マーク(常用句ID)を設定したものである。」
という記載、

引用例1の上記(サ)の
「図3は、本発明のフォーマット文書例を示す。このフォーマット文書は、図1のS1で作成したフォーマット文書の例を示し、図中に差し込み制御記号の開始と終了で挟まれた差し込み領域内に、差し込みID(例えば20)、その説明を記載したり、あるいは差し込み領域内に更に常用句制御記号(隅付き括弧)の開始と終了で挟まれた常用句領域内に、常用句ID(例えば覧11)、必要に応じてその説明を記載したりするものである。」
という記載、
(なお、「差し込み制御記号」及び「常用句制御記号(隅付き括弧)」は「制御記号」の一種であることは明らかである。)

引用例1の上記(シ)の
「【0039】図4は、本発明のファイル例を示す。図4の(a)は、用語ファイル例を示す。この用語ファイルは、図示のように、種別に対応づけて内容を登録したものである。図3のフォーマット文書中の常用句制御記号の開始と終了で挟まれた常用句領域内の常用句ID(常用句マーク)例えば“覧11”のうちの“11”に対応づけて図示のように、
種別 内容
11 宅地
11 田
11 畑
を登録したものである。この用語ファイルに図示のように登録することにより、図3の不動産の表示の“地目”の下側の差し込み制御記号で挟まれた差し込み領域内にカーソルがきたときに、この差し込み領域内の常用句ID“11”に対応する上記内容“宅地”、“田”、“畑”の一覧が表示されるので、このうちから1つを選択すると、自動的に画面上に入力されるものである。」という記載、

引用例1の上記(オ)の
「また、入力手段4が画面上に表示された文書中に差し込み制御記号で囲まれた差し込み領域を検出し、差し込み領域に差し込みIDが設定されていたときにこの差し込みIDのファイルから差し込み文書を取り出して入力したり、常用句マークが設定されていたときにこの常用句マークに対応づけられた常用句一覧を表示して選択された常用句を入力したり、あるいは手入力モードへの切り替えが入力されたときに手入力モードに切り替えて手入力された用語を入力したりすることを繰り返し、印刷手段5が入力された文書を印刷するようにしている。」
という記載から、

引用例1には、
「文書中に、差し込み領域を示す差し込み制御記号又は常用句制御記号を設定すると共に、該差し込み制御記号に差し込み文書を特定する差し込みIDを、該常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDを設定する設定機能」
が開示されていると認められる。


(b-1)
上記(a)の
「文書中に、差し込み領域を示す差し込み制御記号又は常用句制御記号を設定すると共に、該差し込み制御記号に差し込み文書を特定する差し込みIDを、該常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDを設定する設定機能」
という開示、

引用例1の上記(ケ)の
「以上のS5のYES、S9からS11によって、画面上に表示したフォーマット文書についてカーソルが停止した差し込み領域内に常用句IDが設定されていなかったときに差し込みIDに対応する差し込み文書を取り出しフォーマット文書中の該当する位置に入力したり、モード切り替えが指示されたときに手入力モードに遷移してS5のNO、S14、S15の処理でキー入力したりすることが可能となる。」
という記載から、

引用例1には、
「上記設定機能により差し込み制御記号に差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書を、差し込み制御記号の差し込み領域に入力することで、差し込み文書とフォーマット文書を合成する合成機能」
が開示されていると認められる。


(b-2)
上記(a)の
「文書中に、差し込み領域を示す差し込み制御記号又は常用句制御記号を設定すると共に、該差し込み制御記号に差し込み文書を特定する差し込みIDを、該常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDを設定する設定機能」
という開示、

引用例1の上記(ク)の
「以上のS5のYES、S6からS8、S11、S13によって、画面上に表示したフォーマット文書についてカーソルが停止した差し込み領域内に常用句IDが設定されていたときに、この常用句IDに対応する常用句一覧表を表示し、選択されたときのその常用句をフォーマット文書中の該当する位置に入力したり、モード切り替えが指示されたときに手入力モードに遷移してS5のNO、S14、S15の処理でキー入力したりすることが可能となる。」
という記載、

引用例1の上記(シ)の
「【0039】図4は、本発明のファイル例を示す。図4の(a)は、用語ファイル例を示す。この用語ファイルは、図示のように、種別に対応づけて内容を登録したものである。図3のフォーマット文書中の常用句制御記号の開始と終了で挟まれた常用句領域内の常用句ID(常用句マーク)例えば“覧11”のうちの“11”に対応づけて図示のように、
種別 内容
11 宅地
11 田
11 畑
を登録したものである。この用語ファイルに図示のように登録することにより、図3の不動産の表示の“地目”の下側の差し込み制御記号で挟まれた差し込み領域内にカーソルがきたときに、この差し込み領域内の常用句ID“11”に対応する上記内容“宅地”、“田”、“畑”の一覧が表示されるので、このうちから1つを選択すると、自動的に画面上に入力されるものである。」という記載から、

引用例1には、
「上記設定機能により常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句を、常用句制御記号の差し込み領域に入力することで、常用句とフォーマット文書を合成する合成機能」
が開示されていると認められる。


(c)
上記(b-1)の
「上記設定機能により差し込み制御記号に差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書を、差し込み制御記号の差し込み領域に入力することで、差し込み文書とフォーマット文書を合成する合成機能」
という開示、

上記(b-2)の
「上記設定機能により常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句を、常用句制御記号の差し込み領域に入力することで、常用句とフォーマット文書を合成する合成機能」
という開示、

引用例1の上記(ケ)の
「S10は、入力する、あるいはもモード切り替えする。これは、S9で取り出して表示した差し込み文書を、該当する差し込みIDの部分に入力したり、あるいはモード切り替えを指示する(ここでは、手入力モードへの切り替えを指示する)。・・・(中略)・・・S11は、終了か判別する。これは、フォーマット文書を用いた文書作成が終了したか判別する。YESの場合には、S13で印刷する。一方、NOの場合には、S5に戻る。」
という記載、

引用例1の上記(ク)の
「S7は、S6で常用句の一覧表上でいずれかを選択、あるいは/およびモード切り替えを入力する。S8は、置換する。これは、S7で常用句の一覧表上からいずれかの常用句が選択されたときに、常用句IDとこの選択された常用句を置換して文書中に常用句を入力する。・・・(中略)・・・S11は、終了か判別する。これは、フォーマット文書を用いた文書作成が終了したか判別する。YESの場合には、S13で印刷する。一方、NOの場合には、S5に戻る。」
という記載から、

引用例1には、
「上記合成機能により合成されたフォーマット文書を印刷する文書印刷機能」
が開示されていると認められる。


(d)
引用例1の上記(ア)の
「本発明は、文書中に用語を入力する用語入力装置に関するものである。」
という記載から、

引用例1には、
「文書中に用語を入力する用語入力装置」
が開示されていると認められる。


(3)
以上の引用例1の記載によれば、引用例1には下記の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「文書中に、差し込み領域を示す差し込み制御記号又は常用句制御記号を設定すると共に、該差し込み制御記号に差し込み文書を特定する差し込みIDを、該常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDを設定する設定機能と、
上記設定機能により差し込み制御記号に差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書を、差し込み制御記号の差し込み領域に入力することで、差し込み文書とフォーマット文書を合成する合成機能と、
上記設定機能により常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句を、常用句制御記号の差し込み領域に入力することで、常用句とフォーマット文書を合成する合成機能と、
上記合成機能により合成されたフォーマット文書を印刷する文書印刷機能と、
を備えた文書中に用語を入力する用語入力装置。」



4.引用例2の認定

(1)
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、特開平03-141466号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)
「【産業上の利用分野】
本発明は、日本語ワードプロセッサ等文書作成装置の文書管理方法に関するものである。」
(第2頁右上欄第7乃至9行)

(イ)
「【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術では、印刷時に文書のある部分に文字列しか挿入できなかった。したがって、新聞のタイトル等固定の文書を挿入できず、使い勝手が悪かった。
本発明の目的は、文書作成装置において、親文書に子文書の文書情報を設定し、親文書の印刷時に子文書を指示することにより親文書中に子文書のデータを取り込んで一度に印刷できることを可能にし、文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供することにある。」
(第2頁右上欄第16行から同頁左下欄第6行)

(ウ)
「【課題を解決するための手段】
・・・(中略)・・・
本発明による他の文書作成装置は、親文書印刷時に親文書の書式・行形式を継承するか、あるいは、子文書の書式・行形式情報を継承するかを操作者が指定できる手段を具備したものである。
本発明による他の文書作成装置は、親文書と子文書のデータをマージする際、子文書で保持する書式・行形式をそのまま保持してマージする手段を具備したものである。」
(第2頁左下欄第7行から同頁右下欄第9行)

(エ)
「【実施例】
以下に、本発明について実施例に従って、詳細に述べる。
第1図は本発明の文書作成装置の一実施例の構成図である。
第1図において、1は表示装置、2はキーボード、3は主記憶装置、4は補助記憶装置、5は本発明による印刷領域設定部、6は登録データ管理部、7は子文書指定部、8はデータマージ部を表わしている。」
(第3頁右上欄第18行から同頁左下欄第7行)

(オ)
「第8図(a)?(c)は、子文書指定部7が親文書の印刷時に子文書を指定するときのデータ処理フローと表示装置1における表示画面例を示す。
通常の入力、編集状態701からの処理について説明する。まず、702で「印刷開始」キー204の信号を入力することにより処理703に移り、第8図(b)に示すように、ガイダンス表示欄103に「番号〔 〕」と表示し、入力編集画面欄101上に別画面を設定し、補助記憶装置4上の別文書の文書名一覧表を既知の画面制御プログラムにより表示する。その後、処理704へ移る。
処理704では、第8図(c)に示すように、操作者は親文書中に印刷したい子文書の文書番号を「テン」キー203で選択する。本実施例では、文書番号「2」番を子文書として設定したところを示している。
処理705では、操作者が「実行」キーを入力する。その後、処理706に移る。
処理706では、データマージ部8を起動させ編集対象親文書のデータと処理704で指定した子文書のデータをマージして印刷する。そして、子文書指定部7の処理を終了する。」
(第6頁左上欄第6行から同頁右上欄第8行)


(2)
以上の引用例2の記載によれば、引用例2には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例2の上記(イ)の
「前記従来技術では、印刷時に文書のある部分に文字列しか挿入できなかった。したがって、新聞のタイトル等固定の文書を挿入できず、使い勝手が悪かった。
本発明の目的は、文書作成装置において、親文書に子文書の文書情報を設定し、親文書の印刷時に子文書を指示することにより親文書中に子文書のデータを取り込んで一度に印刷できることを可能にし、文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供することにある。」
という記載、
(なお、「親文書中に子文書のデータを取り込んで一度に印刷できること」という記載から、「親文書」と「子文書」という階層構造を用いて、作成対象の文書が構成されることは明らかである。また、「親文書」と「子文書」は、文書単位であれば任意であることも明らかである。)

引用例2の上記(ウ)の
「本発明による他の文書作成装置は、親文書印刷時に親文書の書式・行形式を継承するか、あるいは、子文書の書式・行形式情報を継承するかを操作者が指定できる手段を具備したものである。
本発明による他の文書作成装置は、親文書と子文書のデータをマージする際、子文書で保持する書式・行形式をそのまま保持してマージする手段を具備したものである。」
という記載から、

引用例2には、
「作成対象の文書を、書式・行形式を含んだ親文書と子文書からなる任意の単位で分割したデータを用いて、分割された各データ間の関連付けを階層構造で行う」
ことが開示されていると認められる。


(b)
上記(a)の
「作成対象の文書を、書式・行形式を含んだ親文書と子文書からなる任意の単位で分割したデータを用いて、分割された各データ間の関連付けを階層構造で行う」
という開示、

引用例2の上記(オ)の
「通常の入力、編集状態701からの処理について説明する。まず、702で「印刷開始」キー204の信号を入力することにより処理703に移り、第8図(b)に示すように、ガイダンス表示欄103に「番号〔 〕」と表示し、入力編集画面欄101上に別画面を設定し、補助記憶装置4上の別文書の文書名一覧表を既知の画面制御プログラムにより表示する。その後、処理704へ移る。
処理704では、第8図(c)に示すように、操作者は親文書中に印刷したい子文書の文書番号を「テン」キー203で選択する。本実施例では、文書番号「2」番を子文書として設定したところを示している。
処理705では、操作者が「実行」キーを入力する。その後、処理706に移る。
処理706では、データマージ部8を起動させ編集対象親文書のデータと処理704で指定した子文書のデータをマージして印刷する。そして、子文書指定部7の処理を終了する。」
という記載、
(なお、「文書名」に基づいて「文書名」に対応する文書のデータが取得されることは、情報処理分野における技術常識である。)

引用例2の図8には、子文書の番号と(文書名に対応する)文献名が複数が図示されていることから、

引用例2には、
「複数の子文書の中から文書番号によって選択された1つの文書名により特定される子文書のデータをマージすることで、前記分割されたデータを合成する機能」
が開示されていると認められる。


(c)
引用例2の上記(イ)の
「前記従来技術では、印刷時に文書のある部分に文字列しか挿入できなかった。したがって、新聞のタイトル等固定の文書を挿入できず、使い勝手が悪かった。
本発明の目的は、文書作成装置において、親文書に子文書の文書情報を設定し、親文書の印刷時に子文書を指示することにより親文書中に子文書のデータを取り込んで一度に印刷できることを可能にし、文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供することにある。」
という記載から、

引用例2には、
「親文書に挿入する情報を文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供する文書作成装置」
が開示されていると認められる。


(3)
以上の引用例2の記載によれば、引用例2には下記の発明(以下、「引用例2発明」という。)が開示されていると認められる。

「作成対象の文書を、書式・行形式を含んだ親文書と子文書からなる任意の単位で分割したデータを用いて、分割された各データ間の関連付けを階層構造で行うものであって、
複数の子文書の中から文書番号によって選択された1つの文書名により特定される子文書のデータをマージすることで、前記分割されたデータを合成する機能、
を具備した、親文書に挿入する情報を文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供する文書作成装置。」



5.対比

本願発明と引用例1発明とを対比する。

(1)
引用例1発明の「指し込み領域」、「差し込み制御記号又は常用句制御記号」は、それぞれ、

本願発明の「配置位置」、「識別子」に相当する。


(2)
引用例1発明の「文書中に、差し込み領域を示す差し込み制御記号又は常用句制御記号を設定すると共に、該差し込み制御記号に差し込み文書を特定する差し込みIDを、該常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDを設定する設定機能」と、

本願発明の「作成対象の文書を、レイアウトを含んだ任意の単位で分割した文書ファイルを用いて、分割された各文書ファイル間の関連付けを階層構造で行なうべく、直下の階層に位置する文書ファイルの配置位置を示す識別子を設定すると共に、該識別子に文書ファイルを特定する単一又は複数の文書ファイル名を設定する関連付け機能」とは、

「配置位置を示す識別子を設定すると共に、該識別子に指示情報を設定する関連付け機能」という点で一致し、

・本願発明では、「作成対象の文書を、レイアウトを含んだ任意の単位で分割した文書ファイルを用いて、分割された各文書ファイル間の関連付けを階層構造で行なう」ものであるため、本願発明の「配置位置」は、「直下の階層に位置する文書ファイル」の配置位置であるのに対し、
引用例1発明では、そのようなものではない点、

・本願発明では、識別子に設定される「指示情報」が「文書ファイルを特定する単一又は複数の文書ファイル名」であるのに対し、
引用例1発明では、識別子に設定される「指示情報」が「差し込み文書を特定する差し込みID」又は「複数の常用句が対応付けられている常用句ID」である点、

で相違する。


(3)
引用例1発明の
「上記設定機能により差し込み制御記号に差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書を、差し込み制御記号の差し込み領域に入力することで、差し込み文書とフォーマット文書を合成する合成機能と、
上記設定機能により常用句制御記号に複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句を、常用句制御記号の差し込み領域に入力することで、常用句とフォーマット文書を合成する合成機能」と、

本願発明の
「該関連付け機能により識別子に単一の文書ファイル名が設定されたときには、該文書ファイル名により特定される文書ファイルを、識別子に複数の文書ファイル名が設定されたときには、その中から選択された1つの文書ファイル名により特定される文書ファイルを、該識別子の配置位置に複写することで、前記分割された各文書を合成する文書合成機能」とは、

「該関連付け機能により、該識別子の配置位置に複写することで、文書を合成する文書合成機能」という点で一致し、

・本願発明では、識別子に「単一の文書ファイル名が設定されたときには、該文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写するのに対し、
引用例1発明では、識別子に「差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書」を複写する点、

・本願発明では、識別子に「複数の文書ファイル名が設定されたときには、その中から選択された1つの文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写するのに対し、
引用例1発明では、識別子に「複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句」を複写する点、

・本願発明では、「分割された各文書」を合成するのに対し、
引用例1発明では、「差し込み文書」又は「常用句」と、「フォーマット文書」を合成する点、

で相違する。


(4)
引用例1発明の「上記合成機能により合成されたフォーマット文書を印刷する文書印刷機能」と、

本願発明の「該文書合成機能により合成された文書を表示する文書表示機能」とは、

「該文書合成機能により合成された文書を処理する機能」という点で一致し、

本願発明では、「文書を処理する機能」は「文書を表示する文書表示機能」であるのに対し、
引用例1発明では、「文書を処理する機能」は「文書を印刷する文書印刷機能」である点、
で相違する。


(5)
「文書作成装置」の一種である用語入力装置などのコンピュータが、プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を読み取り、当該プログラムに従って処理することにより所定の「機能」を実現することは、情報処理分野における技術常識であること、
すなわち、用語入力装置などのコンピュータが、「コンピュータに実現させるための文書作成プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」を当然に備えていることは情報処理分野における技術常識であることを鑑みれば、

引用例1発明の「文書中に用語を入力する用語入力装置」は、

本願発明の「コンピュータに実現させるための文書作成プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」に相当する。


(6)
したがって、両者は、

「配置位置を示す識別子を設定すると共に、該識別子に指示情報を設定する関連付け機能と、
該関連付け機能により、該識別子の配置位置に複写することで、文書を合成する文書合成機能と、
該文書合成機能により合成された文書を処理する機能と、
をコンピュータに実現させるための文書作成プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。」

である点で一致し、

(相違点1)
本願発明では、「作成対象の文書を、レイアウトを含んだ任意の単位で分割した文書ファイルを用いて、分割された各文書ファイル間の関連付けを階層構造で行なう」ものであるため、本願発明の「配置位置」は、「直下の階層に位置する文書ファイル」の配置位置であるのに対し、
引用例1発明では、そのようなものではない点、

そのため、

・本願発明では、「分割された各文書」を合成するのに対し、
引用例1発明では、「差し込み文書」又は「常用句」と、「フォーマット文書」を合成する点、


(相違点2)
・本願発明では、識別子に設定される「指示情報」が「文書ファイルを特定する単一又は複数の文書ファイル名」であるのに対し、
引用例1発明では、識別子に設定される「指示情報」が「差し込み文書を特定する差し込みID」又は「複数の常用句が対応付けられている常用句ID」である点、

そのため、

・本願発明では、識別子に「単一の文書ファイル名が設定されたときには、該文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写するのに対し、
引用例1発明では、識別子に「差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書」を複写する点、

及び、

・本願発明では、識別子に「複数の文書ファイル名が設定されたときには、その中から選択された1つの文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写するのに対し、
引用例1発明では、識別子に「複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句」を複写する点、

(相違点3)
本願発明では、「文書を処理する機能」は「文書を表示する文書表示機能」であるのに対し、
引用例1発明では、「文書を処理する機能」は「文書を印刷する文書印刷機能」である点、

で相違する。



6.相違点の判断

(1)相違点1について

引用例2発明には、

「作成対象の文書を、書式・行形式を含んだ親文書と子文書からなる任意の単位で分割したデータを用いて、分割された各データ間の関連付けを階層構造で行うものであって、
・・・(中略)・・・
を具備したことを特徴とする、親文書に挿入する情報を文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供する文書作成装置。」

とあるように、「親文書に挿入する情報を文字列から文書に拡張したことにより、汎用性のある文書管理方法を提供する」ために、
「作成対象の文書を、書式・行形式を含んだ親文書と子文書の単位で分割したデータを用いて、分割された各データ間の関連付けを階層構造で行う」ことが開示されている。
(なお、引用例2発明の「書式・行形式を含んだ親文書と子文書からなる任意の単位で分割したデータ」は、本願発明の「レイアウトを含んだ任意の単位で分割した文書ファイル」に相当する。)

したがって、「親文書に挿入する情報を文字列から文書に拡張」することにより「汎用性のある文書管理」を行うべく、引用例1発明に対して、引用例2発明を適用して、
「作成対象の文書を、レイアウトを含んだ任意の単位で分割した文書ファイルを用いて、分割された各文書ファイル間の関連付けを階層構造で行なう」ものとしたり(なお、このことにより、必然的に、引用例1発明の「配置位置」は「直下の階層に位置する文書ファイル」の配置位置になる。)、
「分割された各文書」を合成したりすることは、
当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

本願発明では、
・識別子に設定される「指示情報」が「文書ファイルを特定する単一又は複数の文書ファイル名」であること、
・識別子に「単一の文書ファイル名が設定されたときには、該文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写すること、
・識別子に「複数の文書ファイル名が設定されたときには、その中から選択された1つの文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写すること、
というように、識別子に対して「単一又は複数の文書ファイル名」を設定するための方法については限定していない。
このことから、本願発明は、識別子に対して「単一又は複数の文書ファイル名」を設定する方法については問題としない。
すなわち、本願発明は、識別子に対して『間接的』に「単一又は複数の文書ファイル名」を設定するものを含む。


一方、引用例1発明では、
・識別子に設定される「指示情報」が「差し込み文書を特定する差し込みID」を含むこと、
・識別子に「差し込みIDが設定されたときには、この差し込みIDに対応する差し込み文書」を複写すること、
というように、識別子に「差し込みID」を設定することによって、「差し込みID」により特定される文書ファイルを参照することができるのであるから、
引用例1発明では、「差し込みID」に対して『間接的』に「文書ファイル」が設定されているといえる。

しかも、引用例1発明では、
・識別子に設定される「指示情報」が「複数の常用句が対応付けられている常用句ID」を含むこと、
・識別子に「複数の常用句が対応付けられている常用句IDが設定されたときには、その中から選択された1つの常用句」を複写すること、
というように、識別子に「複数の常用句が対応付けられている常用句ID」を設定することによって、「常用句ID」により特定される常套句を参照することができるのであるから、
引用例1発明では、「常用句ID」に対して『間接的』に「常用句」が設定されているといえる。


更に、文書(ファイル)が設定される際、文書(ファイル)の「文書ファイル名」が用いられることは、情報処理分野における常套手段である。


したがって、より汎用性のある文書管理を行うべく、引用例1発明に対して、引用例2発明及び当該常套手段を適用して、
常用句という文字列を文書に拡張し、当該拡張した文書及び「文書ファイル」を「文書ファイル名」を用いて設定することにより、
本願発明の如く、識別子に設定される「指示情報」を「文書ファイルを特定する単一又は複数の文書ファイル名」とした上で、
識別子に「単一の文書ファイル名が設定されたときには、該文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写するように構成したり、
識別子に「複数の文書ファイル名が設定されたときには、その中から選択された1つの文書ファイル名により特定される文書ファイル」を複写するように構成したりすることは、
当業者が容易に想到し得ることである。


なお、仮に、本願発明が、識別子に対して『直接的』に「単一又は複数の文書ファイル名」を設定するものに限定されるとしても、識別子に対して『直接的』にファイル名を設定することは、
例えば、アンカータグ(<A></A>で表現される一種の識別子)中にファイル名を記述することによってファイルの階層的な関連付けを行うHTML技術にあるように、情報処理分野における周知技術であることを鑑みれば、
引用例1発明に対して、当該周知技術を適用して、『間接的』に設定するかわりに、『直接的』に設定することは、当業者が容易に想到し得ることである。



(3)相違点3について

処理対象の文書を表示したり印刷したりすることや、
印刷する前に、印刷対象の文書を表示して確認することは、
情報処理分野における技術常識である。

したがって、引用例1発明に対して、当該技術常識を適用することにより、「文書を処理する機能」として「文書を表示する文書表示機能」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。



6.むすび

したがって、本願発明は、引用例1発明及び引用例2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-02 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-22 
出願番号 特願2001-569667(P2001-569667)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長 由紀子成瀬 博之  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 小曳 満昭
和田 財太
発明の名称 文書作成プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、並びに、文書作成システム及び文書作成方法  
代理人 笹島 富二雄  

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