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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1201779
審判番号 不服2007-24726  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-06 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 特願2004- 4346「画像形成装置及び定着機構部の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月21日出願公開、特開2005-196054〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年1月9日の出願であって、平成19年8月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月6日付けで審判請求がなされたものであって、平成21年3月9日付けで当審において拒絶理由の通知がなされ、これに対し、同年5月14日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものであり、「画像形成装置及び定着機構部の制御方法」に関するものと認める。


第2 当審の拒絶理由通知の概要
平成21年3月9日付けの拒絶理由の通知には、次の指摘事項が含まれている。

『3.拒絶理由2
本件出願は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1) ( 略 )

(2)本願発明1?8及び発明の詳細な説明記載の「制御手段には前記加圧ローラの表面温度と熱膨張との対応関係を示すテーブルが予め格納されており、前記制御手段は、前記用紙が加熱及び加圧ローラを通過する位置によってローラの長手方向に対し用紙の通紙部と非通紙部とが発生することに基づき、前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出し、その検出温度に基づいて前記テーブルを参照することで、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張率を算出し、その熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づいて前記加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御を行う」について。
表面温度と「熱膨張」との対応関係を示すテーブルから、ローラ径の「熱膨張率」を算出する方法が不明である。
また、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張及び熱膨張率の差と、非通紙部のローラ径の変化との関係が不明であり、どのような加圧ローラの周速度の可変制御がなされているのか不明である。熱膨張率の差がなければ可変制御は行わないのかどうか等不明である。

(3)本願発明1?8は、定着機構部を構成する加熱及び加圧ローラの周速度を、印字される用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づき、用紙後端部での転写ズレを生じないように可変制御する制御手段を備えているが、当該制御手段が、加圧ローラの検出温度に基づく制御のみであるのか、それ以外の制御手段を有するのか不明である。そして、仮にそれ以外の制御手段が含まれるとした場合、それ以外の制御手段がどのような制御を行っているか不明であるし、それ以外の制御手段が含まれない場合は、印字枚数に基づき、制御を行うことが何を意味しているのかが、検出温度に基づく制御手段との関係において不明瞭である。また、検出温度に基づく制御手段以外の制御手段を備えているとしても、特許請求の範囲で用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づく制御手段を備えるとあらゆる制御手段を含むといえる程度に充分に発明の詳細な説明に記載されていると言えず、本願発明1?8は、発明の詳細な説明に記載されたものであると認められない。』


第3 手続補正書及び意見書の内容
これに対し、請求人より、平成21年5月14日付けで手続補正書及び意見書が提出されたところ、それらには以下の内容が含まれている。

1.補正された特許請求の範囲
特許請求の範囲は、補正により、次のとおりの記載になった。
「【請求項1】 用紙を搬送する用紙搬送手段と、この用紙搬送手段で搬送される用紙に対して画像形成処理を行う画像形成手段と、この画像形成手段で画像が形成された用紙を排出する排出手段とを備え、前記画像形成手段は、画像を用紙に転写する転写機構部及び転写された画像を定着させる定着機構部を有し、装置の下側に配置された用紙収容部に収容された用紙を前記用紙搬送手段で1枚ずつ搬送し、装置の上側に配置された前記定着機構部を経て前記排出手段から排出する画像形成装置において、
前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出する温度検出手段と、前記定着機構部を構成する加熱及び加圧ローラの周速度を、印字される用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づいて可変制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記加圧ローラの表面温度と熱膨張との対応関係を示す熱膨張テーブルと、前記熱膨張テーブルを参照して得られる前記加圧ローラのローラ径の熱膨張率の変化をローラ周速度に変換し、このローラ周速度の変化を前記温度検出手段の通紙部と非通紙部との検出温度差と対応させた制御データを格納した制御テーブルとを備えており、
前記制御手段は、前記印字枚数分の連続印字において、前記用紙が加熱及び加圧ローラを通過する位置によってローラの長手方向に対し用紙の通紙部と非通紙部とが発生することに基づき、前記温度検出手段により前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出し、その検出温度に基づいて前記熱膨張テーブルを参照することで、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張率を取得し、その取得した熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づき、前記制御テーブルに格納されている制御データに従って前記加熱及び加圧ローラの周速度を可変制御することにより、前記加熱及び加圧ローラの幅方向に対して小サイズの用紙を連続して通紙させることで中央部の温度が低下し両端部が高い温度となった加熱及び加圧ローラ、及び、前記加熱及び加圧ローラの幅方向に対して大サイズの用紙を連続して通紙させることで幅方向の全域に渡って同じ温度となった加熱及び加圧ローラを、同じ搬送速度となるように制御することを特徴とする画像形成装置。

【請求項2】 前記制御手段による加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御は、装置に印字要求及び印字条件が入力されることによって、前記テーブルに基づいて印字の開始から終了まで継続して行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【請求項3】 前記加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御幅は、前記転写機構部を通過する用紙の搬送速度を基に下式
(転写機構部を通過する用紙搬送速度):(加熱及び加圧ローラの周速度の可変幅)=1.0:(0.95?1.02)
の関係式で表される範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。

【請求項4】 前記定着機構部の用紙搬送方向上流側に配置される用紙搬送用駆動部材は、前記定着機構部の用紙搬送速度の可変に合わせて該定着機構部の用紙搬送速度と等速に制御されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【請求項5】 装置の下側に配置された用紙収容部に収容された用紙を用紙搬送手段で1枚ずつ搬送し、装置の上側に配置された転写機構部及び定着機構部を経て排出手段から排出する画像形成装置における前記定着機構部の制御方法であって、
前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出する温度検出手段と、 前記加圧ローラの表面温度と熱膨張との対応関係を示す熱膨張テーブルと、 前記熱膨張テーブルを参照して取得される前記加圧ローラのローラ径の熱膨張率の変化をローラ周速度に変換し、このローラ周速度の変化を前記温度検出手段の通紙部と非通紙部との検出温度差と対応させた制御データを格納した制御テーブルとを用い、 前記定着機構部を構成する加熱及び加圧ローラの周速度を、印字される用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づいて可変制御する制御工程を備え、
前記制御工程は、前記印字枚数分の連続印字において、前記用紙が加熱及び加圧ローラを通過する位置によってローラの長手方向に対し用紙の通紙部と非通紙部とが発生することに基づき、前記温度検出手段により前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出する工程と、その検出温度に基づいて前記熱膨張テーブルを参照することで、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張率を取得する工程と、その取得した熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づき、前記制御テーブルの制御データに従って前記加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御を行う工程とを含み、前記加熱及び加圧ローラの幅方向に対して小サイズの用紙を連続して通紙させることで中央部の温度が低下し両端部が高い温度となった加熱及び加圧ローラ、及び、前記加熱及び加圧ローラの幅方向に対して大サイズの用紙を連続して通紙させることで幅方向の全域に渡って同じ温度となった加熱及び加圧ローラを、同じ搬送速度となるように制御することを特徴とする定着機構部の制御方法。

【請求項6】 前記加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御は、印字要求及び印字条件が入力されることにより、前記テーブルに基づいて印字の開始から終了まで継続して行うことを特徴とする請求項5に記載の定着機構部の制御方法。

【請求項7】
前記加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御幅は、前記転写機構部を通過する用紙の搬送速度を基に下式
(転写機構部を通過する用紙搬送速度):(加熱及び加圧ローラの周速度の可変幅)=1.0:(0.95?1.02)
の関係式で表される範囲内で制御することを特徴とする請求項6に記載の定着機構部の制御方法。

【請求項8】
前記定着機構部の用紙搬送方向上流側に配置される用紙搬送用駆動部材も、前記定着機構部の用紙搬送速度の可変に合わせて該定着機構部の用紙搬送速度と等速に制御することを特徴とする請求項7に記載の定着機構部の制御方法。」

以下、「請求項1に係る発明」、「請求項2に係る発明」・・・「請求項8に係る発明」を、「本願発明1」、「本願発明2」・・・「本願発明8」という。

2.意見書の内容
また、請求人は、意見書にて、上記「第2」で示した拒絶理由の通知に対して、次のように反論している。

『<拒絶理由2について>
[a] ( 略 )

[b]拒絶理由2の(2)では、(2-1)「表面温度」と「熱膨張」との対応関係を示すテーブルから、ローラ径の「熱膨張率」を算出する方法が不明である。と指摘されています。この点に関しては、上記しましたように、「その検出温度に基づいて前記熱膨張テーブルを参照することで、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張率を取得、」と補正しています。すなわち、[0080]段落の記載から、予め実験等によって加圧ローラ39bの表面温度と熱膨張との対応関係を求めていますので、熱膨張テーブルには、各表面温度に対応する熱膨張率が格納されていることは明らかです。従って、「その検出温度に基づき前記熱膨張テーブルを参照することで、通紙部39b1と非通紙部39b2のローラ径の熱膨張率を算出する。」というのは、「その検出温度に基づき前記熱膨張テーブルを参照することで、通紙部39b1と非通紙部39b2のローラ径の熱膨張率を、熱膨張テーブルから取得する。」ということですので、今回の補正により、「熱膨張率を取得する」と補正致しました。
以上により、拒絶理由2の(2)の(2-1)につきましては拒絶理由が解消しているものと確信致します。
また、拒絶理由2の(2-2)では、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張及び熱膨張率の差と、非通紙部のローラ径の変化との関係が不明であり、どのような加圧ローラの周速度の可変制御がなされているのか不明である。熱膨張率の差がなければ可変制御は行われないのかどうか等不明である。と指摘されています。この点に関しては、明細書の[0085]段落に、「ただし、本実施例1では、前記熱膨張テーブルを参照して算出されるローラ径の熱膨張率の変化をローラ周速度に変換し、このローラ周速度の変化を各温度センサ393C,393Dの検出温度差と対応させた制御テーブルを予め格納しているものとし、この制御テーブルを用いて定着ローラの速度制御を行うものとする。」と記載されており、ローラ径の熱膨張率の変化をローラ周速度に変換した制御テーブルを用いて行うことが記載されています。従いまして、今回の補正では、請求項1,5を「前記制御テーブルに格納されている制御データに従って前記加熱及び加圧ローラの周速度を可変制御することにより、」と補正しています。なお、「熱膨張率の差がなければ可変制御は行われないのかどうか等不明である。」とのご指摘の点ですが、この点に関しては、[0088]段落に、「・・・。その結果、記録用紙が定着ローラのほぼ全長にわたって通紙する大サイズ紙印字である場合(例えば、A4サイズの記録用紙を横搬送する場合等)には(ステップS5)、上記したように加熱ローラ39bの熱膨張差は生じないので、定着ローラの駆動速度、すなわち加熱ローラ39a及び加圧ローラ39bのローラ周速度を、従来通り、転写ローラのローラ周速度に対して常に一定の比率(例えば、1.02倍)で制御しつつ(ステップS6)、全ての印字が終了するまで印字処理を行う(ステップS7,ステップS8)。」と記載されており、従来通り、転写ローラのローラ周速度に対して常に一定の比率(例えば、1.02倍)で制御しています。
以上により、拒絶理由2の(2)の(2-2)につきましては拒絶理由が解消しているものと確信致します。

[c]拒絶理由2の(3)では、(3-1)制御手段が、加圧ローラの検出温度に基づく制御のみであるのか、それ以外の制御手段を有するのか不明である。と指摘され、(3-2)そして、仮にそれ以外の制御手段が含まれるとした場合、それ以外の制御手段がどのような制御を行っているか不明である。と指摘され、さらに、(3-3)また、検出温度に基づく制御手段以外の制御手段を備えているとしても、特許請求の範囲で用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づく制御手段を備えるとあらゆる制御手段を含むといえる程度に充分に発明の詳細な説明に記載されているとは言えない。と指摘されています。
この点に関しては、明細書では、図2に制御系のブロック構成が記載されており、図3に定着ローラ制御回路構成が記載されています。そして、実施形態では図3に示すCPU542が本願の制御動作を行うこととなっています。すなわち、図3に示す定着制御部106のCPU542が、図2に示す帯電制御と現像制御と転写制御と定着制御とを行うメインCPU101と連係して、制御を行っています。従って、特許請求の範囲に記載の制御手段は、原則的には定着制御部106のCPU542に相当し、本願発明の特徴部分である、加圧ローラの検出温度に基づく制御のみを行うものです。この際、定着制御部106のCPU542は、メインCPU101と連係して制御を行うことから、用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数等の情報をメインCPU101から受け取った定着制御部106のCPU542が、本願発明の特徴的な部分である加圧ローラの検出温度に基づく制御を行うものです。
以上により、拒絶理由2の(3)の(3-1)につきましては拒絶理由が解消しているものと確信致します。』


第4 当審の判断
1.拒絶理由2.(2)について
平成21年3月9日付けの拒絶理由通知において指摘した、本願補正前の請求項1に係る発明の「制御手段には前記加圧ローラの表面温度と熱膨張との対応関係を示すテーブルが予め格納されており、前記制御手段は、前記用紙が加熱及び加圧ローラを通過する位置によってローラの長手方向に対し用紙の通紙部と非通紙部とが発生することに基づき、前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出し、その検出温度に基づいて前記テーブルを参照することで、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張率を算出し、その熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づいて前記加熱及び加圧ローラの周速度の可変制御を行う」は、
「制御手段は、前記加圧ローラの表面温度と熱膨張との対応関係を示す熱膨張テーブルと、前記熱膨張テーブルを参照して得られる前記加圧ローラのローラ径の熱膨張率の変化をローラ周速度に変換し、このローラ周速度の変化を前記温度検出手段の通紙部と非通紙部との検出温度差と対応させた制御データを格納した制御テーブルとを備えており、
前記制御手段は、前記印字枚数分の連続印字において、前記用紙が加熱及び加圧ローラを通過する位置によってローラの長手方向に対し用紙の通紙部と非通紙部とが発生することに基づき、前記温度検出手段により前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出し、その検出温度に基づいて前記熱膨張テーブルを参照することで、通紙部と非通紙部のローラ径の熱膨張率を取得し、その取得した熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づき、前記制御テーブルに格納されている制御データに従って前記加熱及び加圧ローラの周速度を可変制御することにより、前記加熱及び加圧ローラの幅方向に対して小サイズの用紙を連続して通紙させることで中央部の温度が低下し両端部が高い温度となった加熱及び加圧ローラ、及び、前記加熱及び加圧ローラの幅方向に対して大サイズの用紙を連続して通紙させることで幅方向の全域に渡って同じ温度となった加熱及び加圧ローラを、同じ搬送速度となるように制御することを特徴とする画像形成装置。」と補正された。
そして、意見書において、拒絶理由2の(1)の反論において説明されているように、加圧ローラの表面温度と熱膨張とが比例等の対応関係にあることは、理解できる。
しかしながら、通常熱膨張率は材料により固有の値であり、本願発明1のように「熱膨張テーブルを参照して得られる前記加圧ローラのローラ径の熱膨張率」は変化しないことは明らかであり、当該熱膨張率の変化を、さらにローラ周速度に変換することの技術的意味が依然として不明である。さらに通紙部と非通紙部で異なる熱膨張率を得られる点も、熱膨張率が材料固有の値であることを考えると、その技術的意味が不明である。
さらに、熱膨張と温度は一対一に対応し、熱膨張により周速度が変化することから、熱膨張と周速度も一対一に対応するものと推定されるが、「ローラ周速度の変化を前記温度検出手段の通紙部と非通紙部との検出温度差と対応させた」ことの技術的意味が依然として不明である。つまり、ローラ周速度の変化と検出温度差がどのような関係にあるのか不明であり、かつ、ローラの周速度の変化は、検出温度に基づき熱膨張テーブルを参照して得るものであるにもかかわらず、その得られた周速度の変化をさらに、検出温度差を参考に、周速度を変化させることの技術的意義が不明である。
同様に、熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づき制御がなされると記載されているが、非通紙部のローラ径の変化は非通紙部の検出温度により熱膨張テーブルを参照することにより得られるとの記載もあり、ローラ径の変化が何に影響をされるのか全く不明であり、かつ、熱膨張率の差による非通紙部のローラ径の変化に基づいて、具体的にどのような制御がなされるのかも全く不明である。

2.拒絶理由2.(3)について
本願発明1は、「前記加圧ローラの表面温度を通紙部と非通紙部とでそれぞれ検出する温度検出手段と、前記定着機構部を構成する加熱及び加圧ローラの周速度を、印字される用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づいて可変制御する制御手段とを備え」と補正されている。
しかしながら、平成21年5月14日付け意見書においても、加圧ローラの検出温度に基づく制御のみを行うと記載されており、依然として、印字される用紙サイズ、通紙方向及び印字枚数に基づいて、何が具体的に制御されるのか不明であり、これら点は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとも認められない。
以上により、本願発明1?8及び発明の詳細な説明は、依然として、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号の規定を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項第1号、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2009-06-05 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-22 
出願番号 特願2004-4346(P2004-4346)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G03G)
P 1 8・ 537- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村上 勝見宮崎 恭  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 大森 伸一
木村 史郎
発明の名称 画像形成装置及び定着機構部の制御方法  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  
代理人 倉内 義朗  

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