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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1201780
審判番号 不服2007-26576  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-27 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 特願2004-161489「ナビゲーション装置の経路探索方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月15日出願公開、特開2005-345114〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年5月31日の出願であって、平成19年8月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると共に、同年10月29日付で手続補正がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月29日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「ナビゲーション装置の経路探索方法であって、
前記ナビゲーション装置は、地図上の道路を構成する各リンクの旅行距離を含むリンクデータと、前記各リンクの過去に収集された交通情報の統計値より定まる旅行時間を含む統計データと、を記憶する記憶装置を備えており、
探索すべき経路の出発地および目的地を設定する設定ステップと、
前記記憶装置に記憶されているリンクデータおよび統計データを用いて、前記出発地および前記目的地間の推奨経路を探索する経路探索ステップと、を行い、
前記経路探索ステップは、
前記推奨経路を構成するリンクの候補リンク各々について、前記統計データに含まれている当該候補リンクの旅行時間と、前記リンクデータに含まれている当該候補リンクの旅行距離から求めた時間である補正時間との合計値に応じた値を、当該候補リンクの経路探索のためのコストに決定すること
を特徴とするナビゲーション装置の経路探索方法。」

2.引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-287393号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0003】この経路計算機能が付加された車載用ナビゲーション装置では、目的地が設定されると、道路の交差点等を結ぶリンクで構成された道路地図データを読出し、現在地又は目的地を起点として、現在地と目的地とを含む領域のリンクのツリーを探索する。この場合、道路地図データに含まれている各リンクの旅行時間(リンクコスト)データを順次加算して、同一のリンクに到達する複数の経路のうち、旅行時間の長い方の経路を抹消して、各リンクに最小リンクコストで到達する経路のトリーを求め、このトリーに沿った現在地と目的地との間の経路を最短時間経路とする。」

・「【0012】そこで、本発明は、外部の通信装置から交通情報を取得する場合において、経路に沿った精度のよい旅行時間を算出してドライバにしめすことのできる旅行時間提供装置を提供することを目的とする。また、本発明は、外部の通信装置から交通情報を取得する場合において、実際の交通状況を高精度に反映した最短時間経路を算出することができる経路計算装置を提供することを目的とする。」

・「【0034】前記車載地図専用ディスクDには、前記表示用道路地図データの他に、経路計算用道路地図データが格納されている。経路計算用道路地図データは、道路地図(高速自動車国道,自動車専用道路,その他の国道,都道府県道,政令指定都市の市道,その他の生活道路を含む)をメッシュ状に分割し、各メッシュ単位で道路の交差点等に相当するノードと各リンクをつなぐリンク(以下「ナビリンク」という)との組合わせからなる相対的に細かい第2経路ネットワークが高速道路・国道対応地図と一般道路対応地図と詳細地図との3階層に分けて記憶された構造であって、旅行時間固定値、旅行時間統計値T_(S) (t) 、各ナビリンクごとのリンク長、そのナビリンクの始点及び終点の座標等が対応付けられた構成となっている。
【0035】前記旅行時間統計値T_(S) (t) は、前記路上ビーコンを通じて過去一定期間に、当該交通情報提供エリア内で提供された提供時刻ごとの交通情報リンクの交通情報を、季節、月、曜日、平日/休日の別等のいずれか1つ又は複数の組合せごとに平均をとって記憶し、車載地図専用ディスクDに書き込んだ値である。この旅行時間統計値T_(S) (t) は、情報センターC等の地上系のシステムで取得され、各ユーザに提供されるものである。」

・「【0038】コントローラ16は、ドライバによりリモコンキー4を介して目的地及び各種計算条件(有料道路を優先するか否か、フェリー利用を優先するか否か、又は経由地を使用するか否か、など)が入力されると、この入力された目的地データ等をSRAM162に記憶するとともに、車載地図専用ディスクDから経路計算用道路地図データを読出し、目的地及び車両位置検出部14で検出された現在地にそれぞれ近いナビリンク間の最短時間経路を例えばダイクストラ法又はポテンシャル法を用いて算出する。算出された最短時間経路は、ディスプレイ3に表示されている道路地図上に例えば破線で重畳表示される。
【0039】ここで、前記ポテンシャル法とは次のような方法である。すなわち、出発地(目的地でもよい)に近いナビリンクを計算開始リンクとし、目的地(出発地でもよい)に最も近いナビリンクを計算終了リンクとし、計算開始リンクから始まる所定地図領域内のナビリンクをすべて探索する。このとき、各ナビリンクの旅行時間推定値(後述する)を順次加算し、最短でない経路は切捨て、最短経路を実現する経路のみを残すという処理を繰り返す。その結果、最終的に、最短経路のみからなる経路のトリーが得られるので、計算終了リンクから計算開始リンクまでの経路を逆に辿っていけば、最短時間経路を得ることができる。
【0040】コントローラ16にはまた、ビーコン受信機7が接続されている。CPU161は、車両が路上ビーコンAの送信エリア内に進入して(図1参照)路上ビーコンAから送信されているリンク交通情報がビーコン受信機7で受信されると、当該リンク交通情報をSRAM162に与えて保持させる。CPU161では、前記方法によって最短時間経路を算出する際、SRAM162にリンク交通情報が保持されている場合には、前記経路計算用道路地図データに含まれている旅行時間統計値T_(S) (t) に、当該リンク交通情報を利用して求めた旅行時間推定値を加味して旅行時間推定値を求め、この旅行時間推定値に基づいて最短時間経路を算出する。
【0041】図5、図6及び図7は、前記車載用ナビゲーション装置1における最短時間経路の算出処理を説明するためのフローチャートである。ドライバは、走行前又は走行中に、リモコンキー4を操作して目的地や経由地を入力する(図5のステップS1)。その後、走行中において、コントローラ16は、目的地に到達したかどうか判断し(ステップS2)、到達すれば目的地到達を案内し、目的地情報、最短時間経路情報等の記憶を消去する(ステップS3)。」

・「【0045】一方、走行中において、前記ステップS4で路上ビーコンAからリンク交通情報が受信されたと判別されると、図6に示すように、当該リンク交通情報の内容を考慮して、当該リンク交通情報を車載用ナビゲーション装置1で利用できる形態である旅行時間推定値T_(E) (t) (ただしtはリンク交通情報の取得時刻を表す)に変換する処理が実行される(ステップS22?S28)。
【0046】より具体的に説明すると、リンク交通情報が旅行時間データそのものを表している場合には(ステップS23のYES)、当該旅行時間データをそのまま旅行時間推定値T_(E) (t) とする(ステップS24)。また、リンク交通情報が渋滞長を表している場合には(ステップS25のYES)、当該渋滞長に基づいて、下記(1) 式の演算が行われ、旅行時間推定値T_(E)(t) が算出される(ステップS26)。
【0047】
T_(E) (t) =(L_(1) /V_(1) )+{(L_(2) -L_(1) )/V_(2) } ‥‥(1)
ただし、前記(1) 式において、L_(1) は前記渋滞長、V_(1) は当該交通情報リンクにおける渋滞時の平均車速、L_(2) は当該交通情報リンクのリンク長、及びV_(2) は当該交通情報リンクにおける非渋滞時の平均車速を表す。なお、前記平均車速V_(1),V_(2) はそれぞれテーブルとして交通情報リンクに対応付けられて地図専用ディスクDに格納されている。
【0048】さらに、リンク交通情報が旅行時間データそのもの、又は渋滞長のいずれも表していない場合には(ステップS25のNO)、リンク交通情報は渋滞度を表すものとみなされ(ステップS27)、当該渋滞度に基づいて、下記(2) 式の演算が行われて、旅行時間推定値T_(E) (t) が算出される(ステップS28)。
T_(E) (t) =L_(2) /V_(3) ‥‥(2)
ただし、前記(2) 式において、V_(3) は当該交通情報リンクにおける前記渋滞度に対応した平均車速を表すもので、この平均車速V_(3) は前記平均車速V_(1) ,V_(2) と同様にテーブルとして交通情報リンクに対応付けられて地図専用ディスクDに格納されている。
【0049】以上のようにして求められた旅行時間推定値T_(E) (t) をそのまま適用して、最短時間経路を求めるのでは、旅行時間推定値T_(E) (t) の瞬時的変動が激しすぎるので(図10のグラフ参照)、これを平滑化するため、旅行時間統計値T_(S) (t)を加味した指数平滑手法を用いる。そこで、ステップS29?S30では、旅行時間推定値T_(E) (t) を平滑化する処理をする。
【0050】まず、当該経路計算対象ナビリンクと交通情報リンクとが図3(a) に示すように1対1に対応している場合、前記交通情報リンクに対応する旅行時間統計値T_(S) (t) をSRAM162から読出すとともに、旅行時間統計値T_(S) (t) を修正するために必要な変換係数K_(t) を求める。前記変換係数K_(t) は、その初期値は1とするが、旅行時間推定値T_(E) (t) の瞬時的変動が激しすぎるのでこれを平滑化して用いるという目的を考慮すると、旅行時間推定値T_(E) (t) の瞬時的変動を吸収する必要がある。このため、以前に路上ビーコンを通過したときに取得された同一の交通情報リンクのリンク交通情報に基づいて採用した変換係数K_(t-1) を考慮して、重み付けした平均をとって変換係数K_(t) とする。
【0051】より具体的に説明すると、前記ステップS28で旅行時間推定値T_(E) (t) が得られると、旅行時間推定値T_(E) (t) と、当該交通情報リンクの旅行時間統計値T_(S) (t) との差を求める(ステップS29)。次に、現在よりも前に他の路上ビーコンを通過したときに算出されて不揮発性メモリに保持されている、同一リンクの旅行時間推定値T_(E) (t-1)を読み出し、このリンクの旅行時間統計値T_(S) (t) との差をとり、変換係数K_(t-1) を求め、下記(3) 式のようにして新たな変換係数K_(t) に更新する(ステップS30)。
【0052】
K_(t) =α(T_(E) (t) -T_(S) (t) )+(1-α)K_(t-1) ‥‥(3)
ただし、前記(3) 式において、α(0<α<1)は平滑指数であって、1に近ければ、過去の変換係数K_(t-1) に重みをおき、0に近ければ、現在の旅行時間推定値T_(E) (t) に重みをおいている。このようにして求められた変換係数Kt を使って、下記(4) 式のようにして当該経路計算対象ナビリンクに対応する旅行時間推定値T_(E) (t) を算出する(ステップS31)。」

・「【0055】このように、変換係数K_(t) は、旅行時間推定値T_(E) (t) の瞬時的変動を吸収するために求められるので、変換係数K_(t) を用いて得られた旅行時間推定値T_(E) (tク) は、現在の交通状況を反映するとともに、実際の交通状況の極端な変動を抑えた値となっている。したがって、この旅行時間推定値T_(E) (t) を用いて最短時間経路を計算することとしている。
【0056】経路計算処理では、ドライバにより各種計算条件が入力されると、CPU161は、車両位置検出部14から車両の現在地データを取得し(ステップS41)、SRAM162に保持されている設定された目的地と前記認識された現在地との間の最短時間経路を、前記不揮発性メモリに保持されている現在時刻の旅行時間推定値T_(E) (t) を利用して算出する(ステップS42)。このとき、もし旅行時間推定値T_(E) (t) の得られていないリンク(例えば交通情報提供の対象でない道路のナビリンク)があれば、やむを得ず旅行時間推定値T_(E) (t) の代わりに旅行時間固定値(リンク長を平均走行速度で割ったもの)を使用する。
【0057】その後、算出された最短時間経路をディスプレイ3の表示画面上に表示するとともに(ステップS43)、当該最短時間経路に対応する誘導指示情報を作成する(ステップS44)。この最短時間経路に対応する誘導指示情報の内容としては、目的地までの方向、目的地までの直線距離、最短時間経路に沿った経路距離及び旅行時間、交差点模式図等、従来より知られている色々なものがあり、これらのいずれか又はすべての情報がドライバに提示される。」

また、図5?図7には、最短時間経路算出方法のフローチャートが示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「車載用ナビゲーション装置の経路算出方法であって、
前記車載用ナビゲーション装置は、経路計算用道路地図データの道路を構成する各ナビリンクのリンク長やナビリンクの始点及び終点の座標等と、前記各ナビリンクの路上ビーコンを通じて過去一定期間に、当該交通情報提供エリア内で提供された提供時刻ごとの交通情報リンクの交通情報を、季節、月、曜日、平日/休日の別等のいずれか1つ又は複数の組合せごとに平均をとった旅行時間統計値と、を記憶する車載地図専用ディスクを備えており、
目的地を入力するステップ(ステップS1)及び車両の現在地データを取得するステップ(ステップS41)と、
前記車載地図専用ディスクに記憶されているリンク長やナビリンクの始点および終点の座標等及び旅行時間統計値を用いて、前記現在地と前記目的地との間の最短時間経路を算出するステップ(ステップS21?S42)と、を行い、
前記最短時間経路を算出するステップ(ステップS21?S42)は、
経路計算対象ナビリンクについて、前記旅行時間統計値と、リンク交通情報から算出される旅行時間推定値とから指数平滑手法により求めた値を、当該経路計算対象ナビリンクの経路算出のためのリンクコストに決定する
車載用ナビゲーション装置の経路算出方法。」

(2-2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-193470号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】従来、経路探索技術はカーナビゲーションシステムに広く応用されている。例えば、デジタル道路地図データ等に基づいて、画面に表示された道路地図上に、ユーザが所望の出発地及び目的地を設定すると、その出発地から目的地に至るまでの最適経路を探索して、その経路にしたがって車両の走行を案内するようにしたものが開発されている。
【0003】このようなデジタル道路地図データ等に基づいて経路探索を行う方法としては、例えば、Dijkstra法等の公知のアルゴリズムに従って、出発地から目的地に至るまでの経路のコスト(例えば、距離、平均走行時間又はそれらの組合せ等)を最小にする経路を探索する方法が知られている。また、ネットワーク状の道路の各リンクごとに予め設定された予想旅行時間に基づいて、経路探索を行う方法も知られている。」

・「【0035】なお、上式のように、各リンクの旅行時間に一致するようにコストを修正した場合には、最適経路検出部7においては、出発地点から目的地点に至るまでの全旅行時間が最小となる経路の探索が行われる。また、各リンクの密度に一致するようにコストを修正することも可能である。この場合は、最適経路検出部7において、密度が最小となる経路の探索が行われ、渋滞がないだけでなく、なるべく空いている経路が最適経路として検出される。さらに、各リンクの旅行時間T、密度D、リンク長Lのうちから選択された2要素、あるいは全要素からなる次式のようにコストを修正することもできる。なお、k_(t) ,k_(d) ,k_(l) はパラメータであり、0または正の値である。また、次式に基づいて修正した場合は、旅行時間、密度、距離を統合的に考慮した経路が最適経路として検出される。
【0036】
【数4】k_(t) T+k_(d) D+k_(l) L
[1-2.作用]図4は、本発明の第1実施形態の処理の手順を示すフローチャートである。まず、各リンクの時刻毎のコストの初期値を設定する(ステップ401)。続いて、各移動体ごとにユーザが入力した出発時刻、出発地点及び目的地点等のデータを取得し(ステップ402)、出発地点及び目的地点のデータに基づいて、各移動体について、走行経路の候補を生成する(ステップ403)。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「各リンクの旅行時間Tから求めた値であるk_(t)Tと、リンク長Lから求めた値であるK_(l)Lとの和に応じた値(k_(t) T+k_(d) D+k_(l) L)を、最適経路検索のためのコストとする、経路探索方法。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「車載用ナビゲーション装置」が前者における「ナビゲーション装置」に相当しており、以下同様に、
「経路算出方法」が「経路探索方法」に、
「経路計算用道路地図データの道路」が「地図上の道路」に、
「ナビリンク」が「リンク」に、
「リンク長やナビリンクの始点及び終点の座標等」が「旅行距離を含むリンクデータ」に、
「路上ビーコンを通じて過去一定期間に、当該交通情報提供エリア内で提供された提供時刻ごとの交通情報リンクの交通情報を、季節、月、曜日、平日/休日の別等のいずれか1つ又は複数の組合せごとに平均をとった旅行時間統計値」が「過去に収集された交通情報の統計値より定まる旅行時間を含む統計データ」及び「統計データに含まれている当該候補リンクの旅行時間」に、
「車載地図専用ディスク」が「記憶装置」に、
「目的地を入力するステップ(ステップS1)及び車両の現在地データを取得するステップ(ステップS41)」が「探索すべき経路の出発地および目的地を設定する設定ステップ」に、
「現在地と目的地との間の最短時間経路を算出するステップ(ステップS21?S42)」が「出発地および目的地間の推奨経路を探索する経路探索ステップ」に、
「経路計算対象ナビリンク」が「推奨経路を構成するリンクの候補リンク各々」に、それぞれ相当している。
また、後者の「リンク交通情報から算出される旅行時間推定値とから指数平滑手法により求めた値」と前者の「リンクデータに含まれている当該候補リンクの旅行距離から求めた時間である補正時間との合計値に応じた値」とは、「旅行時間を補正するための補正値とから所定の演算により求められる値」との概念で共通する。
さらに、後者における「リンクコスト」が前者における「コスト」に相当している。

したがって、両者は、
「ナビゲーション装置の経路探索方法であって、
前記ナビゲーション装置は、地図上の道路を構成する各リンクの旅行距離を含むリンクデータと、前記各リンクの過去に収集された交通情報の統計値より定まる旅行時間を含む統計データと、を記憶する記憶装置を備えており、
探索すべき経路の出発地および目的地を設定する設定ステップと、
前記記憶装置に記憶されているリンクデータおよび統計データを用いて、前記出発地および前記目的地間の推奨経路を探索する経路探索ステップと、を行い、
前記経路探索ステップは、
前記推奨経路を構成するリンクの候補リンク各々について、前記統計データに含まれている当該候補リンクの旅行時間と、前記旅行時間を補正するための補正値とから所定の演算により求められる値を、当該候補リンクの経路探索のためのコストに決定する
ナビゲーション装置の経路探索方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
「旅行時間を補正するための補正値とから所定の演算により求められる値」が、本願発明では「リンクデータに含まれている当該候補リンクの旅行距離から求めた時間である補正時間との合計値に応じた値」であるのに対し、引用発明1では「リンク交通情報から算出される旅行時間推定値とから指数平滑手法により求めた値」である点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。
引用発明2は、旅行時間から求めた値と、リンクデータに含まれている当該候補リンクの旅行距離(引用発明2の「リンク長L」が相当、以下同様)から求めた時間である補正時間(「K_(l)L」)との合計値(「和」)に応じた値を、当該候補リンクの経路探索のためのコストに決定する(「最適経路検索のためのコストとする」)方法と言い換えることができる。
そして、引用発明2における最適な経路を検出するという課題は、ナビゲーション装置において一般的な課題であり、引用発明1においても考慮すべき課題といえるから、当該課題の下に、引用発明1における「旅行時間を補正するための補正値とから所定の演算により求められる値」として、引用発明2の「リンクデータに含まれている当該候補リンクの旅行距離から求めた時間である補正時間との合計値に応じた値」を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-08 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-22 
出願番号 特願2004-161489(P2004-161489)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 小川 恭司
黒瀬 雅一
発明の名称 ナビゲーション装置の経路探索方法  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  

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