• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1201784
審判番号 不服2007-29572  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2009-08-06 
事件の表示 平成 9年特許願第 36616号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-337363〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成9年2月20日の出願であって、平成19年1月23日付の拒絶理由通知に対して同年4月2日付で手続補正がなされ、同年6月21日付の拒絶理由通知に対して同年8月24日付で手続補正がなされ、これに対し、同年9月27日付で補正の却下の決定がなされるとともに同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月1日付で拒絶査定不服の審判が請求されるとともに同月28日付で手続補正がなされ、平成20年12月3日付の審尋に対して平成21年2月5日に回答書が提出されたものである。


第2.平成19年11月28日付の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成19年11月28日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
【1】本件補正の内容と補正の適否
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成19年4月2日付手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】 遊技盤に設けられた設定賞球数の異なる複数の入賞口と、各入賞口に設けられた設定賞球払い出し数系列センサーと、賞球を払い出す賞球払い出しユニットと、遊技制御回路と、枠制御回路とを備えたパチンコ機において、設定賞球払い出し数系列センサーが入賞口に入賞した入賞球の検出により当該入賞に対する設定賞球払い出し数系列信号を遊技制御回路に出力すると、遊技制御回路が設定賞球払い出し数系列センサーから入力された設定賞球払い出し数系列信号を当該設定払い出し数系列信号に対する設定賞球払い出し数系列毎の系列未処理入賞数カウントとして加算記憶し当該系列未処理入賞数カウントの記憶結果により設定賞球払い出し数信号を遊技制御回路のタイミングで一方的に制御回路に出力するとともに出力した設定賞球払い出し数信号に対応する系列未処理入賞数カウントの記憶数を減算し、枠制御回路が遊技制御回路から入力された設定賞球払い出し数信号により当該設定賞球払い出し数信号に相当する設定賞球払い出し数の賞球を払い出すように賞球払い出しユニットを制御することを特徴とするパチンコ機。」
から、

「【請求項1】 遊技盤に設けられた設定賞球数の異なる複数の入賞口と、各入賞口に設けられた設定賞球払い出し数系列センサーと、賞球を払い出す賞球払い出しユニットと、遊技制御回路と、枠制御回路とを備えたパチンコ機において、上記複数の設定賞球払い出し数系列センサーが1つの設定賞球払い出し数系列センサーで検出された入賞球をそれ以外の設定賞球払い出し数系列センサーで検出しないように配置されており、設定賞球払い出し数系列センサーが入賞口に入賞した入賞球の検出により当該入賞に対する設定賞球払い出し数系列信号を遊技制御回路に出力すると、遊技制御回路が設定賞球払い出し数系列センサーから入力された設定賞球払い出し数系列信号を当該設定払い出し数系列信号に対する設定賞球払い出し数系列毎の系列未処理入賞数カウントとして加算記憶し当該系列未処理入賞数カウントの記憶結果により設定賞球払い出し数信号を遊技制御回路の設定賞球払い出し数系列センサー以外の入賞球を検出するセンサーや枠制御回路からの賞球払い出し動作開始のきっかけを作るための信号を受け取らない一方的なタイミングで枠制御回路に出力するとともに出力した設定賞球払い出し数信号に対応する系列未処理入賞数カウントの記憶数を減算し、枠制御回路が遊技制御回路から入力された設定賞球払い出し数信号により当該設定賞球払い出し数信号に相当する設定賞球払い出し数の賞球を払い出すように賞球払い出しユニットを制御することを特徴とするパチンコ機。」へと補正された。

本件補正により特許請求の範囲の請求項1にした補正は、遊技盤に設けられた複数の入賞口の各入賞口に設けられた設定賞球払い出し数系列センサーについて、「上記複数の設定賞球払い出し数系列センサーが1つの設定賞球払い出し数系列センサーで検出された入賞球をそれ以外の設定賞球払い出し数系列センサーで検出しない」配置とするように限定した補正を含むものであるが、これは、発明特定事項の上位概念から下位概念への変更に当たり、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的としたものに該当するから、以下、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)否かを検討する。

【2】独立特許要件違反の適否
[1]引用例に記載の発明・技術
第1引用例:特開平9-708号公報
第2引用例:特開平5-208070号公報
第3引用例:特開平8-57130号公報

(1)第1引用例に記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された、平成9年1月7日に頒布された刊行物である第1引用例(特開平9-708号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【請求項1】 遊技領域に打玉を打込んで遊技が行なわれる弾球遊技機であって、前記遊技領域に設けられ、打玉の入賞により払出される景品玉が互いに異なる複数種別に分類される複数の入賞領域と、該複数の入賞領域に入賞した入賞玉を検出可能な複数の入賞玉検出手段と、複数種類の個数の景品玉を払出可能な景品玉払出手段と、前記複数の入賞玉検出手段により検出された入賞玉を記憶する手段であって、当該入賞玉がどの種別に属する入賞領域への入賞玉かを前記複数種別すべてについて区別して記憶する入賞玉記憶手段と、該入賞玉記憶手段の記憶に従って前記玉払出手段により景品玉を払出す制御を行なう玉払出制御手段とを含むことを特徴とする、弾球遊技機。」(第2頁1欄2?17行)
(イ)「【0012】図1は、パチンコ遊技機の遊技盤を示す正面図である。遊技盤の任意の前面には、区画レール3が設けられており、この区画レール3に囲まれた部分が遊技領域4となる。」(第3頁3欄36?39行)
(ウ)「【0013】遊技領域4内のほぼ中央には、表示状態が変化可能な可変表示装置5が設けられている。さらに遊技領域4の下方位置には、遊技者にとって有利となる第1の状態と遊技者にとって不利となる第2の状態とに変化可能な可変入賞球装置21が設けられている。遊技領域4内に打込まれた打玉が始動口19に入賞すれば、その始動入賞玉が始動玉検出器20により検出され、その検出出力に従って、前記可変表示装置5が可変開始する。この可変表示装置5は、左可変表示部と中可変表示部と右可変表示部とを有し、打玉の始動入賞に伴ってすべての可変表示部が可変開始し、所定時間経過後にまず左可変表示部が停止され、次に右可変表示部が停止され、最後に中可変表示部が停止される。可変表示装置5は、図示するように、上段中段下段の横方向3本と斜め対角線上に2本との合計5本の当りラインが定められており、各可変表示部の停止時の表示結果が、この5本の当りラインのうちのいずれかの当りライン上において特定の識別情報の組合せ(たとえば777)となれば、特定遊技状態が発生して、可変入賞球装置21を第1の状態にする大当り制御が行なわれる。」(第3頁3欄47行?4欄16行)
(エ)「【0014】可変入賞球装置21は、開口23を開閉する開閉板24が設けられており、通常時はこの開閉板24が開口23を閉鎖して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態となっている。そして前記特定遊技状態が発生すれば、ソレノイド25が励磁されて開閉板24が開成して打玉が開口23内に入賞可能な遊技者にとって有利な第1の状態となる。」(第3頁4欄17?23行)
(オ)「【0015】可変表示装置5の上方部分には通常の入賞口7が設けられており、さらにその少し下方部分にはワープ入口8が設けられている。このワープ入口8に玉が入賞すれば、ワープ通路9a,9bのいずれかを通ってその玉がワープ出口10a,10bのいずれかから放出され、その放出された玉が始動口19に入賞しやすいように構成されている。可変表示装置5の可変表示中に再度打玉が始動口19に入賞して始動玉検出器20により検出されれば、その始動入賞が記憶されて、可変表示装置5の可変表示が停止した後再度可変開始可能な状態になってからその始動入賞記憶に基づいて可変表示装置5が再可変表示される。その始動入賞記憶の上限値はたとえば「4」と定められており、現時点における始動入賞記憶数が始動記憶表示器12により表示される。可変入賞球装置21の左右にも、始動口36a,36bがもうけられており、この始動口36a,36bにパチンコ玉が入賞すれば始動玉検出器36c,36dにより検出されてその検出出力が始動玉検出器20と同様に可変表示装置5を可変開始させるのに利用される。」(第3頁4欄39行?第4頁5欄7行)
(カ)「【0016】遊技領域4内には、さらに、通常の入賞口39a,39bが設けられている。」(第4頁5欄8?9行)
(キ)「【0018】図2は、遊技盤の裏面構造を示す背面図である。遊技盤の裏面側には、前述した各種の入賞領域から入賞した入賞玉を誘導して集合させる入賞玉集合カバー体47が設けられている。この入賞玉集合カバー体47には、入賞玉を誘導するための誘導通路48a,48b,50a,50b,51が設けられている。そして、入賞口7,39a,39bに入賞した入賞玉が誘導通路48a,48b,50a,50bにより誘導され、可変入賞球装置21に入賞した入賞玉が誘導通路51により誘導される。誘導通路48a,48bで誘導されてきた入賞玉は入賞情報スイッチ49a,49bにより検出される。図中5は可変表示装置であり、44はアウト口であり、36a,36bは始動口である。その始動口36a,36bに入賞した始動入賞玉が始動玉検出器36d,36cにより検出される。」(第4頁5欄31?45行)
(ク)「【0019】図3は、可変入賞球装置21の構造を説明するための斜視図である。可変入賞球装置21は取付基板22を有し、この取付基板22により遊技盤の前面に取付けられる。取付基板22には開口23が形成されており、その開口23を開閉板24が開閉する。開口23内には、通常入賞口27a,27bと特定領域26とが設けられている。そして特定領域(Vポケット)に入賞した入賞玉が特定玉検出器28により検出され、通常入賞口27a,27bに入賞した入賞玉が入賞玉検出器29a,29bにより検出される。」(第4頁5欄46行?6欄5行)
(ケ)「【0037】図11は、パチンコ遊技機の遊技状態を制御するための遊技制御回路基板99に設けられた遊技制御回路を示すブロック図である。遊技制御回路は、CPU,ROM,RAM,I/Oポート等を含む基本回路130を有する。この基本回路130は、カウンタ131も有しており、後述する入賞玉検出器からの検出信号に基づいて入賞玉を計数することができるように構成されている。」(第6頁10欄15?22行)
(コ)「【0038】基本回路には、以下のような信号が入力される。入賞情報が入賞情報入力回路136を介して基本回路130に入力される。入賞玉検出器(10カウントスイッチ)29a,29b,入賞情報スイッチ49a,49b,特定領域スイッチ28,始動口スイッチ(始動玉検出器)20,36c,36dの検出信号がスイッチ回路140を介して基本回路130に入力される。」(第6頁10欄35?41行)
(サ)「【0039】基本回路130は、以下の各種機器に信号を出力する。賞球個数情報出力回路137を介して賞球個数情報を払出制御回路基板100側に出力する。」(第6頁10欄42?44行)
(シ)「【0041】図12は、遊技制御回路基板99と払出制御回路基板100との間でのデータのやり取りを行なう制御回路を示す図である。払出制御回路基板100には、払出制御用マイクロコンピュータ(図示せず)が設けられており、その払出制御用マイクロコンピュータに賞球回路149が接続されている。その賞球回路149には、入賞玉検出器(SW1)113(図5,図10参照)からの検出信号が入賞玉センサ回路146を介して入力される。この入力信号に応答して、払出制御用マイクロコンピュータは賞球回路149を介してフォトカプラ147に入賞があった旨の入賞情報を出力する。そしてその電気信号からなる入賞情報がフォトカプラ147により一旦光信号に変換された後再度電気信号に変換されて、その電気信号に変換された入賞情報が入賞情報入力回路136を介して基本回路130(図11参照)に入力される。」(第7頁11欄22?37行)
(ス)「【0042】一方、打玉が始動口19,36a,36bに入賞して始動玉検出器(SW2)20,36c,36dにより検出されれば、その検出信号が入賞玉センサ回路140を介して入賞個数カウンタ131に入力され、その始動入賞玉の個数が計数される。さらに、打玉が可変入賞球装置21内の通常領域27a,27bに入賞すれば入賞玉検出器(SW3)29a,29bにより検出され、さらに特定領域(Vポケット)26に入賞すれば特定玉検出器(SW3)28により検出され、それらの検出信号が入賞玉センサ回路140を介して入賞個数カウンタ131に入力され、それらの入賞玉が計数される。通常の入賞口39a,39b,7への入賞玉が入賞情報スイッチ(SW4)49a,49bにより検出されれば、その検出信号が入賞玉センサ回路140を介して入賞個数カウンタ131に入力され、それらの入賞玉が計数される。」(第7頁11欄38行?12欄3行)
(セ)「【0043】基本回路130は、入賞情報入力回路136からの入賞情報が入力されれば、後述するように、入賞個数カウンタ131の計数状態に応じて、払出すべき景品玉個数を特定する賞球データを賞球個数情報出力回路137から出力する。この賞球個数情報出力回路137は、D0?D3の4ビットのデータの形で賞球情報を払出制御回路基板100側に出力する。払出制御回路基板100側では、それらの4ビットのデータをそれぞれ入力するフォトカプラ148a?148dが設けられている。そしてこれらのフォトカプラ148a?148dにより4ビットからなる賞球データが一旦光信号に変換された後再度電気信号に変換されて、その電気信号に変換された4ビットの賞球データが賞球回路149を介して払出制御用マイクロコンピュータに入力される。払出制御用マイクロコンピュータは、入力された賞球データに相当する個数だけの景品玉を玉払出装置60から払出すための制御を行なう。」(第7頁12欄4?20行)
(ソ)「【0045】図14は、図12に示した制御回路の場合の基本回路130の制御動作を示すフローチャートである。まず、ステップS(以下単にSという)1により、入賞情報の入力があったか否かの判断がなされる。そして、払出制御基板100側から入賞情報が入賞情報入力回路136を介して基本回路130に入力されれば、S1によりYESの判断がなされてS2に進み、カウンタ4が「0」であるか否かの判断がなされる。このカウンタ4は、始動口19,36a,36bへの入賞に基づいた景品玉の払出制御と可変入賞球装置21(特定領域26,通常領域27a,27b)への入賞に基づいた景品玉の払出制御とそれら以外の通常の入賞口39a,39b,7への入賞に基づいた景品玉の払出制御とを、代わる代わる交互に行なうためのカウンタである。まずこのカウンタ4が「0」である場合には、S2によりYESの判断がなされてS3に進み、カウンタ1が「0」であるか否かの判断がなされる。このカウンタ1は、入賞個数カウンタ131内に設けられたカウンタであり、始動玉検出器20,36c,36d(SW2)からの検出信号が入力されるごとに、カウントアップしてその始動入賞玉個数を計数するものである。カウンタ1が「0」のときにはS4に進み、カウンタ4に「1」を加算する処理がなされる。次にS5に進み、カウンタ4が「1」であるか否かの判断がなされ、この場合には「1」であるために、S6に進み、カウンタ2が「0」であるか否かの判断がなされる。カウンタ2は、入賞個数カウンタ131内に設けられたカウンタであり、特定玉検出器28や入賞玉検出器29a,29b(SW3)からの検出信号があるごとにカウントアップしてそれらの入賞玉個数を計数するものである。このカウンタ2が「0」のときにはS7に進み、カウンタ4に「1」を加算する処理がなされ、S8に進む。S8では、カウンタ3が「0」であるか否かの判断がなされる。このカウンタ3は、入賞個数カウンタ131内に設けられたカウンタであり、通常の入賞口7,39a,39bに入賞した入賞玉を検出する入賞情報スイッチ49a,49b(SW4)からの検出信号が入力されるごとに、カウントアップしてその入賞玉個数を計数するものである。」(第7頁12欄37行?第8頁13欄24行)
(タ)「【0047】一方、図12に示したスイッチSW3からの検出信号が入力されれば、カウンタ3が「0」でなくなるために、S8によりNOの判断がなされてS10に進み、第1賞球態様の指令信号を景品玉払出装置100側に出力する処理がなされる。この第1賞球態様の指令信号は、景品玉を7個払出指令するための賞球データを含んでいる。次にS11に進み、カウンタ3を「1」減算し、S12に進み、カウンタ4をクリアする処理がなされる。」(第8頁13欄35?43行)
(チ)「【0048】次に、図12に示すスイッチSW2からの検出信号が入力された場合には、カウンタ1が「0」でなくなるために、S1,S2,S3と制御が進んでS3によりNOの判断がなされてS16に進む。S16では、第3賞球態様の指令信号が払出制御基板100に出力される。この第3賞球態様の指令信号は、景品玉を5個払出指令するための賞球データを含んでいる。次にS17に進み、カウンタ1を「1」減算し、S18に進み、カウンタ4を「1」加算する処理が行なわれる。」(第8頁13欄44行?14欄2行)
(ツ)「【0049】次に入賞情報があってS2に進んだ段階では、カウンタ4が「1」となっているためにS2によりNOの判断がなされてS5に進み、S5でYESの判断がなされてS6に進み、カウンタ2が「0」であるか否かの判断がなされ、図12に示すスイッチSW3からの検出信号があった場合には、S6によりNOの判断がなされてS13に進み、第2賞球態様の指令信号を払出制御基板100に出力する処理がなされる。この第2賞球態様の指令信号は、景品玉15個を払出指令するための賞球データを含んでいる。次にS14に進み、カウンタ2を「1」減算し、S15により、カウンタ4に「1」を加算する処理が行なわれる。その結果、カウンタ4は「2」となる。」(第8頁14欄3?15行)
(テ)「【0050】この状態で、入賞情報があれば、S1,S2,S5,S8に進み、前記第1賞球態様指令信号を出力するか否かのカウンタ3の値を判別する処理が実行されることとなる。このように、カウンタ4の値に従って、第1賞球態様指令信号を出力するか否かのカウンタ3の値の判別,第2賞球態様指令信号を出力するか否かのカウンタ2の値の判別,第3賞球態様指令信号を出力するか否かのカウンタ1の値の判別というように、打玉の入賞により払出される景品玉数が互いに異なる複数種別に分類される複数の入賞領域において、当該複数種別に対応する個数の景品玉が代わる代わるに払出制御されるように構成されている。これにより、いずれかの種別に対応する個数の景品玉が未払出のままになるのを防止できる。」(第8頁14欄16?29行)
(ト)「【0067】次に、以上説明した実施例の特徴や変形例等を以下に列挙する。」(第11頁19欄29?30行)
(ナ)「【0068】始動口19,36a,36b,特定領域26,通常領域27,入賞口7,39a,39bにより、前記遊技領域に設けられ、打玉の入賞により払出される景品玉数が互いに異なる複数種別に分類される複数の入賞領域が構成されている。始動玉検出器20,36c,36d(SW2),特定玉検出器28,入賞玉検出器29a,29b(SW3),入賞情報スイッチ49a,49b(SW4)により、前記複数の入賞領域に入賞した入賞玉を検出する複数の入賞玉検出手段が構成されている。この入賞玉検出手段は、入賞玉がどの種別に属する入賞玉であるかを検出するための種別特定用入賞玉検出手段、換言すれば、景品玉の払出数を特定するための景品玉払出数特定用入賞玉検出手段である。前記入賞玉検出器113(SW1)により、入賞玉を検出して入賞玉が発生した旨の信号を後述する遊技制御手段に出力する入賞玉発生検出手段、換言すれば、景品玉の払出制御を実行させるための景品玉払出制御用入賞玉検出手段が構成されている。」(第11頁19欄41行?20欄8行)
(ニ)「【0071】(3) 玉払出制御回路基板100に設けられている玉払出制御回路により、後述する入賞玉記憶手段の記憶に従って前記玉払出手段により景品玉を払出す制御を行なう玉払出制御手段が構成されている。遊技制御回路基板99に設けられている遊技制御回路により、遊技機の遊技状態を制御する遊技制御手段が構成されている。この遊技制御手段は、前記玉払出制御手段から送信されてきた入賞情報に従って、その入賞に伴って払出すべき景品玉の個数を特定する賞球情報を前記玉払出制御手段に出力する。入賞個数カウンタ131により、前記入賞玉検出手段により検出された入賞玉を一時的に記憶する入賞玉記憶手段が構成されている。この入賞玉記憶手段は、入賞玉検出手段(SW2?SW4)による入賞玉の検出に応じて種別毎に加算記憶するとともに、前記遊技制御手段から前記賞球情報が出力された後、その賞球情報に対応する入賞玉の記憶を消去、すなわち、種別毎に記憶されている入賞玉数から減算する。なお、この入賞記憶手段による入賞玉の記憶の消去は、前記玉払出手段による景品玉の払出動作が完了した後記憶の消去を行なうようにしてもよい。」(第11頁20欄31?50行)

上記(ア)?(ニ)に摘示した事項によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「遊技盤の遊技領域に設けられ、打玉の入賞により払出される景品玉が互いに異なる複数種別に分類される複数の入賞領域と、該複数の入賞領域に入賞した入賞玉を検出可能な複数の入賞玉検出手段と、複数種類の個数の景品玉を払出可能な景品玉払出手段と、前記玉払出手段により景品玉を払出す制御を行なう玉払出制御手段と、遊技制御回路とを含むパチンコ遊技機において、
始動口19に入賞した始動入賞玉が始動玉検出器20により検出され、
始動口36a,36bに入賞した始動入賞玉が始動玉検出器36c,36dにより検出され、
通常の入賞口7,39a,39bに入賞した入賞玉が誘導通路48a,48bにより誘導されて入賞情報スイッチ49a,49bにより検出され、
可変入賞球装置21内に通常入賞口27a,27bと特定領域26とが設けられ、該特定領域26に入賞した入賞玉が特定玉検出器28により検出され、前記通常入賞口27a,27bに入賞した入賞玉が入賞玉検出器29a,29bにより検出され、
入賞玉検出器113からの検出信号が払出制御回路基板100の賞球回路149に入力され、入賞があった旨の入賞情報が入賞情報入力回路136を介して遊技制御回路が有する基本回路130に入力され、
前記基本回路130が入賞個数カウンタ131を有し、
打玉が前記始動口19,36a,36bに入賞して前記始動玉検出器20,36c,36dにより検出されれば、その検出信号が入賞個数カウンタ131に入力されて始動入賞玉の個数が加算して計数され、
前記通常の入賞口7,39a,39bへの入賞玉が前記入賞情報スイッチ49a,49bにより検出されれば、その検出信号が前記入賞個数カウンタ131に入力されて、それらの入賞玉の個数が加算して計数され、
打玉が前記通常入賞口27a,27bに入賞すれば前記入賞玉検出器29a,29bにより検出され、前記特定領域26に入賞すれば前記特定玉検出器28により検出され、それらの検出信号が前記入賞個数カウンタ131に入力されてそれらの入賞玉の個数が加算して計数され、
前記基本回路130は、前記入賞情報入力回路136からの前記入賞情報が入力されれば、前記入賞個数カウンタ131の計数状態に応じて、払出すべき景品玉個数を特定する賞球データを前記払出制御回路基板100側に出力して、前記入賞個数カウンタ131におけるそれぞれの検出器又はスイッチに対応するカウンタを減算し、
前記払出制御回路基板100側では、入力された前記賞球データに相当する個数だけの景品玉を玉払出装置60から払出すための制御を行なうこととしたパチンコ遊技機。」

(2)第2引用例に記載の技術
平成5年8月20日に頒布された刊行物である第2引用例(特開平5-208070号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0059】・・・始動入賞口以外の通常の入賞口または可変入賞球装置内にパチンコ玉が入賞すれば、入賞玉センサB(170b)より検出され、その検出信号が検出スイッチ入力回路853を介してゲーム制御用マイクロコンピュータ370に入力される。ゲーム制御用マイクロコンピュータ370では、k(15個)の個数の景品玉を払出すための制御信号を出力回路850に出力する。出力回路850では、出力ポートD0?D3からk(15個)の個数の景品玉を払出すめたの信号(たとえば1111)を払出集中制御基板730側に出力する。」(第11頁20欄16?49行)
(イ)「【0060】払出集中制御基板730では、ゲーム制御用基板148′から出力されてきた賞球個数信号を各フォトカプラ855?858が受け、その各フォトカプラ855?858から賞球個数信号が入力回路851に入力され、その入力回路851から払出制御用マイクロコンピュータ350に賞球個数信号が入力される。そして払出制御用マイクロコンピュータ350では、入力された賞球個数に相当する個数だけの景品玉を払出制御する。」(第11頁20欄50行?第12頁21欄8行)

上記(ア)?(イ)に摘記した事項によれば、通常の入賞口または可変入賞球装置内への入賞に基づいて行われる景品玉の払出は、「払出集中制御基板」や「入賞玉センサB以外のセンサ」からの信号を、「ゲーム制御基板」が受け取ったタイミングで行うものではない。

(3)第3引用例に記載の技術
平成8年3月5日に頒布された刊行物である第3引用例(特開平8-57130号公報)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「大入賞口14a内部には入賞球の通過を検出する特定領域通過スイッチ14a1が設けられている。」(第3頁3欄11?13行)
(イ)「【0010】そして、センターカバー21の下側には、上記入賞口等に入賞した遊技球が遊技盤11の裏面の開口から落下した遊技球を集める入賞球集合樋25が、右下方向に傾斜して設けられている。入賞球集合樋25の右端位置には、入賞球検出スイッチ25a、入賞球排出ソレノイド25b及び入賞球排出カム25cが順次設けられており、入賞球排出カム25cの下側の通路には入賞球排出確認センサ25dが設けられている。」(第3頁3欄35?42行)
(ウ)「【0012】また、本体10に取り付けられた周辺基板40は、図4に示すように、CPU,ROM,RAM,カウンタ等を有するマイクロコンピュータにより構成された賞品球制御回路41を設けている。賞品球制御回路41は、図8に示す「賞品球処理プログラム」を実行し続ける。賞品球制御回路41の入力側には、上記入賞球排出確認センサ25dが接続されている。」(第3頁4欄15?21行)
(エ)「【0017】つぎに、以上のように構成した実施例の動作について説明する。・・・制御回路31は、図6に示す「入賞制御プログラム」の実行をステップ50にて開始し、・・・ステップ52にて入賞球検出スイッチ25aがオンされたか否かを判定する。いずれかの入賞口、始動口に遊技球が入賞したときは、ステップ52にて「YES」との判定の基にプログラムはステップ53に移行され、クロックパルス信号SCKが出力される。そして、ステップ54にて、大入賞口への入賞個数の記憶数Cが「0」か否かの判定がなされる。現時点においては、遊技開始直後であり「YES」との判定の基にプログラムはステップ55に移行され、通常の入賞口に入賞したことを示すデータ信号SI(7)が出力される。そして、プログラムはステップ52に戻され、以下ステップ52からステップ55の処理が繰り返される。」(第4頁5欄41行?6欄11行)
(オ)「【0018】また、周辺基板40の賞品球制御回路41も、制御回路31による処理と同時に、図8に示すステップ70にて「賞品球処理プログラム」の実行を開始する。・・・ステップ72にてクロックパルス信号SCKが出力されたか否かを判定する。いずれかの入賞口等に遊技球が入賞すると、「YES」との判定の基プログラムは、ステップ73に移行され、同時に入力されたデータ信号SIが賞品球数7個相当のSI(7)であるか否かが判定される。上記のように通常の入賞口への入賞なので、「YES」との判定の基にプログラムはステップ74に移行され、7個供給信号が賞品球ケース24に出力される。これを受けて駆動回路42aは、電磁ソレノイド24dを励磁してスプロケット24aを回転させて、7個の賞品球を賞品球通路23aを通して受皿15に供給する。」(第4頁6欄12?27行)
(カ)「【0019】上記制御回路31による「入賞制御プログラム」の実行及び賞品球制御回路41による「賞品球処理プログラム」の実行の間に、制御回路31は、図7に示す「大入賞口入賞インタラプトプログラム」の割り込み実行を行っている。・・・。」(第4頁6欄28?32行)
(キ)「【0020】そして、大入賞口に遊技球が入賞すると、ステップ62にて「YES」との判定の基にプログラムはステップ63に移行され、入賞記憶数Cが「1」だけプラスされ、さらにステップ64にてデータ信号SI(15)が出力されたか否かが判定される。データ信号SI(15)が出力されたときは、ステップ64にて「YES」との判定の基にプログラムはステップ65に移行され、入賞記憶数Cが「1」だけ減らされる。・・・」(第4頁6欄47行?第5頁7欄4行)
(ク)「【0021】そして、大入賞口への遊技球の入賞により入賞記憶数Cが有限値になると、制御回路31は、図6のステップ54にて「NO」との判定の基にプログラムをステップ56に移行させて、データ信号SI(15)を出力する。すると、これを受けて賞品球制御回路41は、図8のステップ73にて「NO」との判定の基に、プログラムをステップ75に移行させて、15個供給信号SI(15)信号を賞品球ケース24に出力させる。」(第5頁7欄7?15行)
(ケ)【図4】には、(大入賞口内部の入賞球の通過を検出する)特定領域通過スイッチ14a1や、(入賞球集合樋に設けられる)入賞球検出スイッチ25a以外に、「入賞球排出確認センサ25d」が、賞品球制御回路に設けられた点が記載されている。

上記(ア)?(ケ)に摘記した事項によれば、入賞口、始動口及び大入賞口への入賞に基づいて行われる賞品球の供給のプロセスは、「賞品球制御回路41」(本願補正発明の「枠制御回路」に相当する。)や「入賞球排出確認センサ25d」(本願補正発明の「設定賞球払い出し数系列センサー以外の入賞球を検出するセンサー」に相当する。)からの信号を、「制御回路31」(本願補正発明の「遊技制御回路」に相当する。)が受け取ったタイミングで行うものではない。

[2]本願補正発明について
(1)本願補正発明と引用発明との対比
(ア)本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「入賞領域」は、本願補正発明の「入賞口」に相当し、以下同様に、
「入賞玉検出手段」は「設定賞球数払い出し数系列センサー」に、
「複数種類の個数の景品玉を払出可能な景品玉払出手段」は「賞球を払い出す賞球払い出しユニット」に、
「玉払出手段により景品玉を払出す制御を行なう玉払出制御手段」は「枠制御回路」に、
「含む」は「備えた」に、
「パチンコ遊技機」は「パチンコ機」に、
「検出信号」は「設定賞球払い出し数系列信号」に、
「払出すべき景品玉個数を特定する賞球データ」は「設定賞球払い出し数信号」に、
「払出制御回路」は「枠制御回路」に、
「玉払出装置60」は「賞球払い出しユニット」に、それぞれ相当する。
(イ)上記したように、引用発明の「入賞領域」は本願補正発明の「入賞口」に相当するものであり、引用発明における「遊技盤の遊技領域に設けられ、打玉の入賞により払出される景品玉が互いに異なる複数種別に分類される複数の入賞領域」の構成は、表現上の差異があるだけで、実質的には、本願補正発明における「遊技盤に設けられた設定賞球数の異なる複数の入賞口」の構成に対応するものである。
(ウ)引用発明における複数の「入賞玉検出手段」(上記したように、本願補正発明の「設定賞球数払い出し数系列センサー」に相当する。)は、複数の「入賞領域」(上記したように、本願補正発明の「入賞口」に相当する。)に入賞した入賞玉を検出可能なものであるから、本願補正発明における「設定賞球数払い出し数系列センサー」が「各入賞口に設けられ」ていることとは、「設定賞球数払い出し数系列センサー」が「各入賞口に関連して設けられ」ている点で共通する。
(エ)引用発明における「入賞玉検出手段」(上記したように、本願補正発明の「設定賞球数払い出し数系列センサー」に相当する。)は、同じく引用発明における「始動玉検出器20」、「始動玉検出器36c,36d」、「入賞情報スイッチ49a,49b」、「入賞玉検出器29a,29b」をそれぞれ言い換えたものであり、また、引用発明は、「打玉が前記始動口19,36a,36bに入賞して前記始動玉検出器20,36c,36dにより検出されれば、その検出信号が入賞個数カウンタ131に入力されて始動入賞玉の個数が加算して計数され、前記通常の入賞口7,39a,39bへの入賞玉が前記入賞情報スイッチ49a,49bにより検出されれば、その検出信号が前記入賞個数カウンタ131に入力されて、それらの入賞玉の個数が加算して計数され、打玉が前記通常入賞口27a,27bに入賞すれば前記入賞玉検出器29a,29bにより検出され、前記特定領域26に入賞すれば前記特定玉検出器28により検出され、それらの検出信号が前記入賞個数カウンタ131に入力されてそれらの入賞玉の個数が加算して計数され、前記基本回路130は、前記入賞情報入力回路136からの前記入賞情報が入力されれば、前記入賞個数カウンタ131の計数状態に応じて、払出すべき景品玉個数を特定する賞球データを前記払出制御回路基板100側に出力して、前記入賞個数カウンタ131におけるそれぞれの検出器又はスイッチに対応するカウンタを減算し、前記払出制御回路基板100側では、入力された前記賞球データに相当する個数だけの景品玉を玉払出装置60から払出すための制御を行なう」ものである。第1引用例には直接の記載がないものの、この引用発明が、「始動玉検出器20」、「始動玉検出器36d,36c」、「入賞情報スイッチ49a,49b」または「入賞玉検出器29a,29b」の4種類の入賞検出手段のいずれか1つで検出された入賞玉を、それ以外の3種類の入賞検出手段のいずれかで検出(ダブルカウント)させて景品玉個数を増加させることがないことは一般的技術(例えば、特開平7-250958号公報の段落【0041】等を参照。)であって、第1引用例に記載されているに等しく且つ当業者にとって自明であるから、引用発明は、本願補正発明と同様に、「複数の設定賞球払い出し数系列センサーが1つの設定賞球払い出し数系列センサーで検出された入賞球をそれ以外の設定賞球払い出し数系列センサーで検出しないように配置され」た構成を備えたものであるといえる。
(オ)引用発明は、「始動口19に入賞した始動入賞玉が始動玉検出器20により検出され、始動口36a,36bに入賞した始動入賞玉が始動玉検出器36c,36dにより検出され、通常の入賞口7,39a,39bに入賞した入賞玉が誘導通路48a,48bにより誘導されて入賞情報スイッチ49a,49bにより検出され、可変入賞球装置21内に通常入賞口27a,27bと特定領域26とが設けられ、該特定領域26に入賞した入賞玉が特定玉検出器28により検出され、前記通常入賞口27a,27bに入賞した入賞玉が入賞玉検出器29a,29bにより検出され」、「遊技制御回路が有する」「基本回路130が入賞個数カウンタ131を有し、打玉が前記始動口19,36a,36bに入賞して前記始動玉検出器20,36c,36dにより検出されれば、その検出信号が入賞個数カウンタ131に入力されて始動入賞玉の個数が加算して計数され、前記通常の入賞口7,39a,39bへの入賞玉が前記入賞情報スイッチ49a,49bにより検出されれば、その検出信号が前記入賞個数カウンタ131に入力されて、それらの入賞玉の個数が加算して計数され、打玉が前記通常入賞口27a,27bに入賞すれば前記入賞玉検出器29a,29bにより検出され、前記特定領域26に入賞すれば前記特定玉検出器28により検出され、それらの検出信号が前記入賞個数カウンタ131に入力されてそれらの入賞玉の個数が加算して計数され、前記基本回路130は、前記入賞情報入力回路136からの前記入賞情報が入力されれば、前記入賞個数カウンタ131の計数状態に応じて、払出すべき景品玉個数を特定する賞球データを前記払出制御回路基板100側に出力して、前記入賞個数カウンタ131におけるそれぞれの検出器又はスイッチに対応するカウンタを減算し、前記払出制御回路基板100側では、入力された前記賞球データに相当する個数だけの景品玉を玉払出装置60から払出すための制御を行なう」構成を備えたものであるが、引用発明の「始動玉検出器20」、「始動玉検出器36c,36d」、「入賞情報スイッチ49a,49b」及び「入賞玉検出器29a,29b」は、上記したように、それぞれが、本願補正発明の「設定賞球数払い出し数系列センサー」に相当し、同じく上記したように、引用発明の「検出信号」、「払出すべき景品玉個数を特定する賞球データ」、「払出制御回路」、「玉払出装置60」が、本願補正発明の「設定賞球払い出し数系列信号」、「設定賞球払い出し数信号」、「枠制御回路」、「賞球払い出しユニット」にそれぞれ相当するから、引用発明は、表現上の差異があるだけで、実質的に、本願補正発明における「設定賞球払い出し数系列センサーが入賞口に入賞した入賞球の検出により当該入賞に対する設定賞球払い出し数系列信号を遊技制御回路に出力すると、遊技制御回路が設定賞球払い出し数系列センサーから入力された設定賞球払い出し数系列信号を当該設定払い出し数系列信号に対する設定賞球払い出し数系列毎の系列未処理入賞数カウントとして加算記憶し当該系列未処理入賞数カウントの記憶結果により設定賞球払い出し数信号を枠制御回路に出力するとともに出力した設定賞球払い出し数信号に対応する系列未処理入賞数カウントの記憶数を減算し、枠制御回路が遊技制御回路から入力された設定賞球払い出し数信号により当該設定賞球払い出し数信号に相当する設定賞球払い出し数の賞球を払い出すように賞球払い出しユニットを制御する」ことに対応する構成を備えたものであるといえる。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「遊技盤に設けられた設定賞球数の異なる複数の入賞口と、各入賞口に関連して設けられた設定賞球払い出し数系列センサーと、賞球を払い出す賞球払い出しユニットと、遊技制御回路と、枠制御回路とを備えたパチンコ機において、上記複数の設定賞球払い出し数系列センサーが1つの設定賞球払い出し数系列センサーで検出された入賞球をそれ以外の設定賞球払い出し数系列センサーで検出しないように配置されており、設定賞球払い出し数系列センサーが入賞口に入賞した入賞球の検出により当該入賞に対する設定賞球払い出し数系列信号を遊技制御回路に出力すると、遊技制御回路が設定賞球払い出し数系列センサーから入力された設定賞球払い出し数系列信号を当該設定払い出し数系列信号に対する設定賞球払い出し数系列毎の系列未処理入賞数カウントとして加算記憶し当該系列未処理入賞数カウントの記憶結果により設定賞球払い出し数信号を枠制御回路に出力するとともに出力した設定賞球払い出し数信号に対応する系列未処理入賞数カウントの記憶数を減算し、枠制御回路が遊技制御回路から入力された設定賞球払い出し数信号により当該設定賞球払い出し数信号に相当する設定賞球払い出し数の賞球を払い出すように賞球払い出しユニットを制御するパチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
相違点A.各入賞口に関連して設けられる設定賞球払い出し数系列センサーが、本願補正発明では、「各入賞口」に設けられたものであるのに対し、引用発明では、「複数の入賞口に入賞した入賞玉を検出可能」に設けられたものである点。
相違点B.設定賞球払い出し数信号の枠制御回路への出力について、本願補正発明は、「遊技制御回路の設定賞球払い出し数系列センサー以外の入賞球を検出するセンサーや枠制御回路からの賞球払い出し動作開始のきっかけを作るための信号を受け取らない一方的なタイミングで」出力するようにしているのに対し、引用発明は、入賞玉検出器113からの検出信号が払出制御回路基板100の賞球回路149に入力され、入賞があった旨の入賞情報が入賞情報入力回路136を介して遊技制御回路が有する基本回路130に入力され、基本回路130は、入賞情報入力回路136からの前記入賞情報が入力されれば、入賞個数カウンタ131の計数状態に応じて出力するようにしている点。

(2)相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
第1引用例には、入賞玉の検出用のスイッチについて、個々の入賞口(始動口)に設けたものと、系列通路(複数の入賞口に対応)に設けたものとを混在させた技術が記載されている(特に、段落【0042】、【図2】等を参照されたい。)が、前記した如く混在させて設けるかいずれかに限定して設けるかは、経済性や必要性を勘案して当業者が適宜決定する設計的事項に過ぎず、設定賞球払い出し数系列センサーを、本願補正発明の如く「各入賞口」に設けるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。

(イ)相違点Bについて
遊技制御回路から枠制御回路への設定賞球払い出し数信号の送信の契機に関して、「遊技制御回路の設定賞球払い出し数系列センサー以外の入賞球を検出するセンサーや枠制御回路からの賞球払い出し動作開始のきっかけを作るための信号を受け取らない一方的なタイミングで」出力するようにすることは、例えば、上記第2引用例(特開平5-208070号公報)や第3引用例(特開平8-57130号公報)に開示されるように、従来周知の技術事項(以下、「周知技術A」という。)であり、引用発明に前記周知技術Aを採用して、上記相違点Bに係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

(3)本願補正発明の作用効果の検討
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術Aに基づいて、当業者が当然予測できるものである。

(4)むすび
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

[3]補正の却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。


第3.本願発明について
【1】本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年11月28日付の手続補正が上記のとおり却下されているので、平成19年4月2日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「【請求項1】 遊技盤に設けられた設定賞球数の異なる複数の入賞口と、各入賞口に設けられた設定賞球払い出し数系列センサーと、賞球を払い出す賞球払い出しユニットと、遊技制御回路と、枠制御回路とを備えたパチンコ機において、設定賞球払い出し数系列センサーが入賞口に入賞した入賞球の検出により当該入賞に対する設定賞球払い出し数系列信号を遊技制御回路に出力すると、遊技制御回路が設定賞球払い出し数系列センサーから入力された設定賞球払い出し数系列信号を当該設定払い出し数系列信号に対する設定賞球払い出し数系列毎の系列未処理入賞数カウントとして加算記憶し当該系列未処理入賞数カウントの記憶結果により設定賞球払い出し数信号を遊技制御回路のタイミングで一方的に制御回路に出力するとともに出力した設定賞球払い出し数信号に対応する系列未処理入賞数カウントの記憶数を減算し、枠制御回路が遊技制御回路から入力された設定賞球払い出し数信号により当該設定賞球払い出し数信号に相当する設定賞球払い出し数の賞球を払い出すように賞球払い出しユニットを制御することを特徴とするパチンコ機。」

【2】特許法第29条2項の適用
[1]引用例に記載の発明及び技術
原査定の拒絶の理由で引用された第1引用例(特開平9-708号公報)に記載の発明(引用発明)は、上記第2.【2】[1](1)に記載したとおりである。

[2]対比・判断
本願発明は、本願補正発明において、遊技盤に設けられた複数の入賞口の各入賞口に設けられた設定賞球払い出し数系列センサーについて、「上記複数の設定賞球払い出し数系列センサーが1つの設定賞球払い出し数系列センサーで検出された入賞球をそれ以外の設定賞球払い出し数系列センサーで検出しない」配置とするものとした限定事項を省き、設定賞球数払い出し数信号の出力先を、制御回路ののうちの「枠制御回路」であるとした限定事項を省き、当該出力のタイミングを、「設定賞球払い出し数系列センサー以外の入賞球を検出するセンサーや枠制御回路からの賞球払い出し動作開始のきっかけを作るための信号を受け取らない」ものであるとした限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要素を全て含むものに相当する本願補正発明が、上記第2.【2】[2]に説示したように、引用発明(第1引用例に記載の発明)及び上記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、同様の理由により、上記引用発明及び上記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3]むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び上記周知技術Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-04 
結審通知日 2009-06-09 
審決日 2009-06-23 
出願番号 特願平9-36616
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉村 尚  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小林 俊久
川島 陵司
発明の名称 パチンコ機  
代理人 宮園 純一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ