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審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F |
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管理番号 | 1201792 |
審判番号 | 不服2007-33614 |
総通号数 | 117 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-13 |
確定日 | 2009-08-06 |
事件の表示 | 特願2001-291584「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月27日出願公開、特開2002- 90746〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年7月28日(優先権主張1999年7月29日)に出願した特願2000-228550号の一部を平成13年9月25日に新たな特許出願としたものであって、平成19年7月2日付けで拒絶理由が通知され、同年8月29日に手続補正がなされたところ、同年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月13日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに平成20年1月11日に手続補正がなされ、その後当審において平成21年2月3日付けで前記平成20年1月11日付け手続補正が却下されるとともに同日付けで最後の拒絶理由が通知されたところ、平成21年4月10日に手続補正がなされたものである。 第2 平成21年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年4月10日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 平成21年4月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前(平成19年8月29日付けの手続補正)の請求項1を、以下のように補正することを含むものである。 「ソース配線電極とゲート配線電極とスイッチング素子とを有し、さらに前記ソース配線電極、ゲート配線電極及びスイッチング素子上に配置され、表面を平坦化する絶縁性の平坦化膜と、前記平坦化膜上に配置される画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板と、 前記アクティブマトリクス基板に対向する、対向電極が形成された対向基板と、 前記アクティブマトリクス基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶分子の配向状態がスプレイ配向状態であり、表示に用いる配向状態がベント配向状態となる液晶表示装置であって、 前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有し、 前記ゲート配線電極を走査又は全オンさせた状態にして前記対向電極と前記画素電極との間に電圧を印加して、前記画素電極の辺部の前記液晶分子を前記アクティブマトリクス基板面に水平状態に配向する電界歪を前記画素電極と前記ゲート配線電極との間に発生させ、これによって前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態への転移核を発生させる液晶表示装置。」(以下「本願補正発明」という。) 2 当審の判断 補正後の請求項1に係る補正は、 ア 補正前の請求項1の「対向基板」について「対向電極が形成された」との限定を行い、 イ 同じく「電圧を印加しない状態の液晶の配向状態」を「電圧を印加しない状態の液晶分子の配向状態」と補正するとともに、 ウ 補正前の請求項1の「それ(審決注:前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有すること)によって前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態へと配向変化を起こす転移核を発生させるための電界歪を発生させる」との発明特定事項を、「前記ゲート配線電極を走査又は全オンさせた状態にして前記対向電極と前記画素電極との間に電圧を印加して、前記画素電極の辺部の前記液晶分子を前記アクティブマトリクス基板面に水平状態に配向する電界歪を前記画素電極と前記ゲート配線電極との間に発生させ、これによって前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態への転移核を発生させる」とするものである。 そして、補正前の請求項1においては、「前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態へと配向変化を起こす転移核を発生させるための電界歪」は、「前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有すること」によって発生するものに特定されていたところ、上記ウの補正により、該「電界歪」は、「前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有すること」によって発生するものに特定されないものとなった。この点において、上記ウの補正は特許請求の範囲を拡張するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法における改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。 また、上記ウの補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法における改正前の特許法第17条の2第3項第1号、第3号、第4号の請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明、のいずれにも該当しない。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 付言 本願補正発明について 本願補正発明は、以下のとおり、特許を受けることができないものであるから、本件補正を受け入れる余地はない。 付-1 刊行物の記載事項 本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-185037号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】OCBセルを用いた液晶表示装置の駆動方法であって、 表示動作の開始時にTFTのゲートオン・オフ時間を制御し、 ゲート電極と共通電極間に発生する強い電界により各画素にベンド配向を行わせ、 同時に表示電極と共通電極間にベンド配向を継続させるために必要な電界以上の電圧を印加することにより短時間でベンド状態に移行させることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。」 イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置の駆動方法に係り、特に広視野角と高速応答を実現するOCB(Optically Conpensated Birefringence)技術を用いた液晶表示装置の駆動方法に関する。」 ウ 「【0005】OCBセルはバイアス電圧が印加されていないときはスプレー配向状態にあり、所定の高電圧が印加されているときにはベンド配向状態をとる。液晶表示装置として動作させるには、最初にスプレー配向からベンド配向にさせておく必要がある。」 エ 「【0007】・・・本発明の目的は、OCBセルを使用したTFT/LCDにおいて、OCBセルをスプレー配向状態からベンド配向状態に短時間に移行させる液晶表示装置の駆動方法を提供することにある。」 オ 「【0011】 【課題を解決するための手段】上記目的は、以下のような駆動方法を行うことにより達成される。OCBセルを用いた液晶表示装置の表示動作開始時にTFTのゲートオン・オフ時間を制御し、ゲート電極と共通電極間に発生する強い電界により各画素にベンド配向を行わせ、同時に表示電極(画素電極)と共通電極間にベンド配向を継続させるために必要な電界以上の電圧を印加することにより短時間でベンド状態に移行させる駆動方法である。」 カ 「【0016】本実施の形態で用いた液晶表示装置の構成を図1を用いて簡単に説明する。まず、ガラス基板からなるアレイ基板2と対向基板4とが液晶を介して所定の間隔で対向して設けられている。図示はしないが対向基板4のほぼ全面には共通電極が形成され、この共通電極に電圧を印加するための共通電極駆動回路20が接続されている。 【0017】アレイ基板2上には、複数のデータ線6と、データ線6と交差する複数のゲート線8が形成されている。データ線6とゲート線8とでマトリクス状に画定された領域は画素領域であり、画素電極12が形成されている。データ線6及びゲート線8の交差部近傍にスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)10が形成されている。各データ線6はデータ線駆動回路14に接続され、各ゲート線8はゲート線駆動回路16に接続されている。ゲート線駆動回路16には、ゲート電圧発生器22が接続されている。 ・・・ 【0019】このような構成の下で本駆動方法は、液晶表示装置の各画素に夫々形成されたTFT(薄膜トランジスタ)10のゲート電極と、TFT10が形成されたアレイ基板2に対向して設けられている対向基板4上に形成された共通電極との間に、駆動開始時に発生させた電界によりベンドの核を発生させ、各画素にベンド配向を行わせることを特徴としている。 【0020】そして、一般にTFTのゲート電極に印加させるゲート電圧の振幅は約20?30Vもあって、アレイ基板上の画素電極と対向基板上の共通電極との間の電位差約6Vよりもかなり大きい。従って、ゲート電極と共通電極間の電位差が大きいため、ゲート電極と共通電極との間に存在する液晶はベンド配向に成り易く、同時に画素電極と共通電極間にベンド配向を継続させるために必要な電圧より高い電圧を印加すると短時間で全画素をベンド配向にさせることができる。」 よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「バイアス電圧が印加されていないときはスプレー配向状態にあり、所定の高電圧が印加されているときにはベンド配向状態をとり、液晶表示装置として動作させるには、最初にスプレー配向からベンド配向にさせておく必要があるOCBセル、を用いた液晶表示装置の駆動方法であって、 液晶表示装置は、ガラス基板からなるアレイ基板と対向基板とが液晶を介して所定の間隔で対向して設けられており、 対向基板のほぼ全面には共通電極が形成され、 アレイ基板上には、複数のデータ線と、データ線と交差する複数のゲート線が形成され、データ線とゲート線とでマトリクス状に画定された領域は画素領域であり、画素電極が形成され、データ線及びゲート線の交差部近傍にスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)が形成されており、 表示動作開始時に、TFTのゲートオン・オフ時間を制御し、ゲート電極と共通電極間に発生する強い電界により各画素にベンド配向を行わせ、TFTのゲート電極には、アレイ基板上の画素電極と対向基板上の共通電極との間の電位差約6Vよりもかなり大きい、振幅が約20?30Vのゲート電圧を印加して、TFTのゲート電極と、対向基板上に形成された共通電極との間に強い電界を発生させてベンドの核を発生させ、各画素にベンド配向を行わせる、液晶表示装置の駆動方法。」 付-2 対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 ア 引用発明は、「液晶表示装置の駆動方法」に関するものであるが、所定の駆動方法で駆動される液晶表示装置を備えるものであることは明らかであるから、引用発明は、本願補正発明の「液晶表示装置」に相当する「液晶表示装置」を備える、といえる。 イ 引用発明の「液晶表示装置」は、「(ガラス基板からなる)アレイ基板上には、複数のデータ線と、データ線と交差する複数のゲート線が形成され、データ線とゲート線とでマトリクス状に画定された領域は画素領域であり、画素電極が形成され、データ線及びゲート線の交差部近傍にスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)が形成されて」いるから、 (ア)引用発明の「複数のデータ線」、「データ線と交差する複数のゲート線」、「データ線及びゲート線の交差部近傍にスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)」、「(データ線とゲート線とでマトリクス状に画定された画素領域に形成される)画素電極」及び「アレイ基板」は、それぞれ、本願補正発明の「ソース配線電極」、「ゲート配線電極」、「スイッチング素子」、「画素電極」及び「アクティブマトリクス基板」に相当するとともに、 (イ)引用発明の「液晶表示装置」は、本願補正発明の「ソース配線電極とゲート配線電極とスイッチング素子とを有し、画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板」を有する、といえる。 ウ 引用発明の「液晶表示装置」は、「ガラス基板からなるアレイ基板と対向基板とが液晶を介して所定の間隔で対向して設けられて」おり、「対向基板のほぼ全面には共通電極が形成され」ているから、 (ア)引用発明の「共通電極」は、本願補正発明の「対向電極」に相当するとともに、引用発明の「対向基板」は、「アクティブマトリクス基板に対向する、対向電極が形成された『対向基板』」に相当し、 (イ)引用発明の「液晶表示装置」と、本願補正発明の「液晶表示装置」とは、「前記アクティブマトリクス基板に対向する、対向電極が形成された対向基板」を有する点で一致する。 エ 引用発明の「液晶表示装置」は、「バイアス電圧が印加されていないときはスプレー配向状態にあり、所定の高電圧が印加されているときにはベンド配向状態をとり、液晶表示装置として動作させるには、最初にスプレー配向からベンド配向にさせておく必要があるOCBセル、を用いた」ものであり、「アレイ基板と対向基板とが液晶を介して所定の間隔で対向して設けられて」いるから、 (ア)引用発明の「液晶」は、本願補正発明の「液晶層」に相当するとともに、 (イ)引用発明の「液晶表示装置」は、本願補正発明の「前記アクティブマトリクス基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶分子の配向状態がスプレイ配向状態であり、表示に用いる配向状態がベント配向状態となる」との事項を備える。 オ 引用発明は、「表示動作開始時に、TFTのゲートオン・オフ時間を制御し、ゲート電極と共通電極間に発生する強い電界により各画素にベンド配向を行わせ、TFTのゲート電極には、アレイ基板上の画素電極と対向基板上の共通電極との間の電位差約6Vよりもかなり大きい、振幅が約20?30Vのゲート電圧を印加して、TFTのゲート電極と、対向基板上に形成された共通電極との間に強い電界を発生させ」るものであり、TFTのゲートオン時にゲート電極に振幅が約20?30Vのゲート電圧を印加すると同時に、共通電極と画素電極との間に6Vの電位差が生じ、画素電極とゲート電極との間にも電位差が生じ、両者の間には比較的大きな電界が発生しているものといえる。したがって、 (ア)引用発明の「振幅が約20?30Vのゲート電圧を」「TFTのゲート電極に」「印加する」との事項と、本願補正発明の「前記ゲート配線電極を走査又は全オンさせた状態にして」との事項とは、「前記ゲート配線電極をオンする」点で一致するとともに、 (イ)引用発明は、本願補正発明と、「前記ゲート配線電極をオンさせた状態にして前記対向電極と前記画素電極との間に電圧を印加して、電界を前記画素電極と前記ゲート配線電極との間に発生させ」との点でも一致する。 したがって、両者は、 「ソース配線電極とゲート配線電極とスイッチング素子とを有し、さらに画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板と、 前記アクティブマトリクス基板に対向する、対向電極が形成された対向基板と、 前記アクティブマトリクス基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶分子の配向状態がスプレイ配向状態であり、表示に用いる配向状態がベント配向状態となる液晶表示装置であって、 前記ゲート配線電極をオンし、前記対向電極と前記画素電極との間に電圧を印加して、電界を前記画素電極と前記ゲート配線電極との間に発生させる液晶表示装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点 [相違点1] 本願補正発明は、ソース配線電極、ゲート配線電極及びスイッチング素子上に表面を平坦化する絶縁性の平坦化膜が配置され、画素電極が前記平坦化膜上に配置され、前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有し、かつ、画素電極の辺部の液晶分子をアクティブマトリクス基板面に水平状態に配向する電界歪を前記画素電極とゲート配線電極との間に発生させ、これによってスプレイ配向状態からベント配向状態への転移核を発生させるのに対し、引用発明は、上記のような平坦化膜はなく、ゲート配線電極と画素電極とが、アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有しておらず、また、画素電極とゲート配線電極との間に発生する電界が前記画素電極の辺部の液晶分子をアクティブマトリクス基板面に水平状態に配向する電界歪となり、これによってスプレイ配向状態からベント配向状態への転移核が発生するのかどうか不明である点。 [相違点2] 対向電極と画素電極との間に電圧を印加する際、本願補正発明では、ゲート配線電極を走査又は全オンさせた状態にするのに対し、引用発明では、ゲート配線電極をオンするものの、ゲート配線電極を走査又は全オンさせた状態なのかどうか不明である点。 付-3 判断 上記相違点につき検討する。 ア [相違点1]について 引用発明は、「TFTのゲート電極には、アレイ基板上の画素電極と対向基板上の共通電極との間の電位差約6Vよりもかなり大きい、振幅が約20?30Vのゲート電圧を印加して、TFTのゲート電極と、対向基板上に形成された共通電極との間に強い電界を発生させてベンドの核を発生させ」るものであるが、上記付-2のオで述べたとおり、引用発明の「画素電極」と「ゲート電極」との間には電位差が生じ、両者の間には比較的大きな電界が発生しているものである。一方、液晶表示装置において、走査線及びTFT上に表面の平坦な透明絶縁層を設け、該透明絶縁層上に透明画素電極を形成し、平面的にみて、透明画素電極を走査線上に重ねるように配設するものは、本願の優先日前に周知であり(必要なら、特開昭64-68726号公報(第3頁右上欄第5行?同頁左下欄最下行、第1図)、特開平11-126907号公報(【0010】、図12)、特開平11-72802号公報(【0006】、図4(c))、特開平11-109414号公報(【0006】)参照。)、かつ、OCB方式の液晶表示パネルにおいても、配線上に表面が平坦な透明誘電体膜を形成し、該透明誘電体膜上に画素電極を形成するものが本願の優先日前に周知である(例えば、特開平10-142638号公報(【0045】、図8、図9)、特開平9-61810号公報(【請求項1】、【請求項11】、【0081】)参照。)ことを考慮すると、引用発明に前記各周知技術を適用して、ゲート電極(ゲート線)及びTFT上に表面が平坦な透明絶縁体膜を配置し、表示電極を前記平坦な透明絶縁体膜上に配置するとともに、前記ゲート電極(ゲート線)と前記表示電極とが、アレイ基板に対して垂直方向から平面的にみて互いに重なる部分を有するようになし、その際、OCBセルをスプレー配向状態からベンド配向状態により短時間で移行させるべく、ゲート電極と共通電極間に大きな電位差を与えるようになすことは、当業者が容易になし得ることである。そして、その結果、画素電極とゲート電極との間に、大きな電圧差が生じ、画素電極の辺部の液晶分子をアクティブマトリクス基板面に水平状態に配向する電界歪が発生し、これによってスプレイ配向状態からベント配向状態への転移核が発生するものと認められる。 イ [相違点2]について 引用発明の「液晶表示装置の駆動方法」において、液晶表示装置の表示領域全面にわたってOCBセルのスプレー配向をベンド配向にさせる必要があることは明らかであるから、表示領域全面にわたってOCBセルのスプレー配向をベンド配向にさせるゲート配線電極をオンさせる際に、該ゲート配線電極を走査又は全オンさせた状態となすことは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願補正発明によってもたされる効果は、引用発明及び上記各周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 付-4 まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第3 平成19年8月29日付け手続補正の適否についての判断 1 平成19年8月29日付け手続補正の内容 (1)平成19年8月29日付け手続補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶の配向状態を配向状態1、表示に用いる配向状態を配向状態2とし、配向状態1と配向状態2とが異なる液晶表示装置であって、 前記液晶層と前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板との界面を平坦化した構成であることを特徴とする液晶表示装置。」 から、 「ソース配線電極とゲート配線電極とスイッチング素子とを有し、さらに前記ソース配線電極、ゲート配線電極及びスイッチング素子上に配置され、表面を平坦化する絶縁性の平坦化膜と、前記平坦化膜上に配置される画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板と、 前記アクティブマトリクス基板に対向する対向基板と、 前記アクティブマトリクス基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶の配向状態がスプレイ配向状態であり、表示に用いる配向状態がベント配向状態となる液晶表示装置であって、 前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有し、それによって前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態へと配向変化を起こす転移核を発生させるための電界歪を発生させる液晶表示装置。」 に補正する内容を含むものである。 (2)上記(1)の補正により、本願の請求項1に係る発明は、以下の事項を含むものとなった。 「前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有し、それによって前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態へと配向変化を起こす転移核を発生させるための電界歪を発生させる」こと(下線は審決で付した。以下同じ。) 2 当初明細書等の記載事項 (1)本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「本願当初明細書等」という。)には、以下の記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶の配向状態を配向状態1、表示に用いる配向状態を配向状態2とし、配向状態1と配向状態2とが異なる液晶表示装置であって、 前記液晶層と前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板との界面を平坦化した構成であることを特徴とする液晶表示装置。 【請求項2】 前記一対の基板のうちの一方の基板がアクティブマトリクス基板であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。 【請求項3】 前記界面を樹脂層よりなる平坦化膜により平坦化した構成であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。 ・・・ 【請求項8】 前記アクティブマトリクス基板が複数の画素電極を有し、該画素電極間の距離が1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。 【請求項9】 前記アクティブマトリクス基板が複数の画素電極を有し、該画素電極間の距離が1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。 ・・・ 【請求項11】 前記画素電極と前記一対の基板のうちの他方の基板に形成された対向電極間に電圧を印加して液晶層をベンド配向へ転移させ、転移後の状態で表示を行うことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の液晶表示装置。」 イ 「【0003】 それらに対して、応答が速く視野角が広い表示モードとして光学補償ベンド(OCB)モ-ドが提案されている(特開平7-84254号公報、特開平9-96790号公報)。 ・・・ 【0005】 図21に示すように、このOCBモ-ドの液晶表示装置は、配向膜19・19が一定方向に配向処理され、電圧を印加してセル中央部にベンド配向あるいはねじれ配向を含んだベンド配向を起こさせた液晶セル14と、かつ低電圧駆動と視角拡大のために光学補償する位相補償板3とを配置したものであり、性能的には高速で視角が広い特徴を持つ優れたアクティブマトリックス型の液晶表示装置を実現することができる。そして、透過型あるいは反射型の液晶表示装置として利用される可能性が高い。 【0006】 また、前記液晶表示装置は、画素電極18に接続された画素部駆動用のスイッチング素子13等が配設されたアレー基板6と、対向電極17を設けた対向基板5との両内面に設けた配向膜19・19を、互いに平行方向にプレチルト角Cが正負逆で且つ約数度?10度になるように配向処理し、正の誘電率異方性のネマティック液晶を挿入して液晶層12を配置して構成されている。そして、電圧を印加しない状態で液晶分子が上下対称に斜めに広がった配向領域からなるスプレイ配向11が形成されている。 【0007】 その後、前記電極間に臨界転移電圧以上の電圧を印加することによって、図21(b)の如く、液晶セル中央部の液晶分子を立たせ、あるいはねじれ配向を含んだ液晶分子が立ち上がり曲がった配向領域からなるベンド配向13に転移させこの領域を拡大移行させる。」 ウ 「【0010】 【発明が解決しようとする課題】 従って、OCBモ-ドの液晶表示装置においては、このスプレイ配向からベンド配向への転移核を発生させて画素を均一なベンド配向にさせ、TFTパネル全画素領域内でそれを確実に起こさせておく必要があるが、転移核を確実に起こさせるのは実際には容易ではない。 【0011】 前記の画素領域を顕微鏡観察していると、ギャップ形成のために散布されたスペーサの周囲から転移核が発生したり、画素電極に沿って配線されたソース線やゲート線周囲から転移核が発生するが、その発生場所は一定の場所ではなく、しばしば全く発生しない場合さえある。この場合、配向欠陥、表示点欠陥不良パネルとなる。」 エ 「【0014】 【課題を解決するための手段】 一群の本発明は、前記現状に鑑みなされたものであり、その目的は、配向転移がほぼ確実に発生し、かつ極めて短時間に転移が完了することにより表示欠陥の無い、応答速度が速く動画表示に適しかつ広視野の液晶表示装置を提供することにあり、特に、ベンド配向転移をほぼ確実に発生させて、極めて短時間に転移を完了させ、応答速度が速く動画表示に適するベンド配向型の液晶表示装置を提供することである。」 オ 「【0016】 (1)第1の発明群 第1の発明群は、電圧を印加しない状態の前記液晶の配向状態を配向状態1とし、表示に用いる配向状態を配向状態2とするとき、配向状態1と配向状態2が異なる液晶表示装置において、配向状態1から配向状態2への転移を容易にかつ確実に実現するために、基板表面の凹凸を平坦化し、液晶層の界面を平坦化したことを特徴としている。」 カ 「【0019】 OCBモードの液晶表示装置のように、電圧を印加しない状態の配向状態と表示状態の配向状態とが異なる液晶表示装置では、表示状態の配向状態に移行させる「転移」作用が必要である。 【0020】 OCBモードの液晶表示装置では、TN型液晶表示措置とは異なる平行配向状態を用いているため、TN型液晶表示装置での配向乱れような問題は発生しないが、本願発明者らは、転移に対してこの段差が悪影響を及ぼすことを新たに見出した。 【0021】 OCBモードの液晶表示装置の転移は、転位電圧を印加することで行う。このとき、転移核からベンド配向が発生し、この配向状態が広がっていく。ただし、このベンド配向の成長が基板の凹凸領域、特に基板が凸状態で液晶層が薄くなっている領域にさしかかると成長が止まることを見出した。特に、ベンド配向の成長はデフェクトに沿って成長することが多いのであるが、前記した液晶層が薄くなっている箇所では、デフェクトが断続的になることが多く、このため成長が止まる場合も多い。このデフェクトは、セル厚方向での液晶分子の傾斜する方向が異なる2種類のスプレイ配向状態の境界部分であることが多い。 【0022】 また、所定の転移波形の電圧で完全に転移が完了せず、特定の画素がスプレイ配向を残した場合にも、後の通常表示駆動によって徐々にベンド配向に移行することを見出した。 【0023】 このように、OCBモードの液晶表示装置のように電圧を印加しない状態の前記液晶の配向状態を配向状態1とし、表示に用いる配向状態を配向状態2とするとき、配向状態1と配向状態2が異なる液晶表示装置であって、転移が容易にかつ確実に実現するために、基板表面の凹凸を平坦化し、液晶層の界面を平坦化したことを特徴とする液晶表示装置を実現した。 【0024】 即ち、請求項1記載の発明は、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶の配向状態を配向状態1、表示に用いる配向状態を配向状態2とし、配向状態1と配向状態2とが異なる液晶表示装置であって、前記液晶層と前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板との界面を平坦化した構成であることを特徴としている。 【0025】 前記構成とすることにより、液晶層と基板との界面の凹凸領域が少なくなるので、配向状態1から配向状態2への転移が容易にかつ確実に実現する。 ・・・ 【0027】 また、請求項3記載の発明は、請求項1に記載の液晶表示装置であって、前記界面を樹脂層よりなる平坦化膜により平坦化した構成であることを特徴としている。 【0028】 また、請求項4記載の発明は、請求項3に記載の液晶表示装置であって、前記平坦化膜の少なくとも一部の上に電極を形成したことを特徴としている。 【0029】 また、請求項5記載の発明は、請求項1に記載の液晶表示装置であって、前記配向状態1がスプレイ配向状態、前記配向状態2がベンド配向状態であることを特徴としている。 【0030】 前記構成とすることにより、転移が容易にかつ確実に実現することのできるOCBモードの液晶表示装置が実現できる。 ・・・ 【0034】 また、請求項8記載の発明は、請求項2に記載の液晶表示装置であって、前記アクティブマトリクス基板が複数の画素電極を有し、該画素電極間の距離が1μm以上10μm以下であることを特徴としている。 【0035】 また、請求項9記載の発明は、請求項2に記載の液晶表示装置であって、前記アクティブマトリクス基板が複数の画素電極を有し、該画素電極間の距離が1μm以上5μm以下であることを特徴としている。 ・・・ 【0038】 また、請求項11記載の発明は、請求項8または請求項9に記載の液晶表示装置であって、前記画素電極と前記一対の基板のうちの他方の基板に形成された対向電極間に電圧を印加して、液晶層をベンド配向へ転移させ、転移後の状態で表示を行うことを特徴としている。」 キ 「【0040】 [実施の形態1] 図1は本発明の実施の形態1に係る液晶表示装置の構成概念図を示し、図1(a)は、液晶表示装置の画素単位の構成概念断面図、図1(b)は同じく液晶表示装置の画素単位の構成概念平面図、図1(c)は、図1(a)を横から見た時の液晶分子のベンド配向状態と配向処理方向を模式的に図示したものである。 【0041】 本実施の形態の液晶表示装置は、図示していない2枚の偏光板および光学補償用の位相補償板を一方にあるいは両方に配置したアクティブマトリックス型の液晶セル124を有する。 【0042】 前記液晶セル124は、互いに対向する対向基板105とアレー基板106とを有し、該アレー基板106にはTFTからなるスイッチング素子123、ソース配線電極181等が配置されている。また、前記スイッチング素子123、ソース配線電極181等の上には、例えば透明なアクリル系有機ポリマーなどの透明絶縁膜材料からなる平坦化膜100が約3μmの厚さで積層されている。 【0043】 前記平坦化膜100面上には、各画素単位にITOなどからなる画素電極128…が隣接間隔約3μmおいて複数配置されている。 ・・・ 【0044】 また、前記対向基板105上には対向電極127が形成され、該対向電極127と前記画素電極128の面上には、例えば日産化学工業(株)社製のポリアミック酸タイプのポリイミド配向膜材料を塗布焼成させ、配向膜129・191が形成されている。 ・・・ 【0046】 そして、前記配向膜129・191は、その表面上の液晶分子のプレチルト角が正負逆の値約5?6度を持つように、互いにほぼ平行方向になるよう同一方向に(図1(b)に示す矢印の方向であり、ソ-ス配線電極181方向に沿って)平行配向処理されている。 【0047】 これによって、図示せぬが、液晶層122はいわゆる無電圧印加状態で液晶分子が斜めに広がった配向領域からなるいわゆるスプレイ配向の液晶セル124が形成される。 【0048】 このように構成された液晶表示装置で、通常の表示の前に、ゲート配線電極126を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にして、対向電極127と画素電極128との間に例えば高電圧-15Vパルスを繰り返し印加する。 【0049】 そして、前記平坦化膜100による平坦化構成によって、極めて狭い間隔で画素電極128…を形成することができ、該画素電極128…間には電界歪みが発生印加される。或いは、画素電極128とゲート配線電極126との間に電界歪みが発生する。これによって、画素領域内の図示していないスプレイ配向から、画素電極128のソース配線電極あるいはゲート配線電極側の辺部では、b-スプレイ配向112への配向変化が起こり、これからベンド配向113への転移核が発生しその領域を拡大する。 【0050】 そして、t-スプレイ配向111の領域もすべてベンド配向113の領域へ最終的には移行し、画素領域全体を約0.5秒でベンド配向領域に変化させることができた。 【0051】 また、TFTパネル全体では約3秒で速かに転移完了させることができ、転移を確実にしかも速く起こし、表示欠陥のないアクティブマトリックス型の液晶セルからなる高速応答で広視野高画質のOCB表示モードの液晶表示装置を得ることができた。 【0052】 また、前記隣接する狭い画素電極間隔に発生する電界歪みで、画素電極辺部の付近の液晶分子は基板面に水平状態に配向され、いわゆるb-スプレイ配向112となり、周囲より歪みのエネルギーが高くなって、この状態に、上下電極間に高電圧が印加されることによって更にエネルギーが与えられ、前記画素電極際において転移核が発生し、ベンド配向113の領域が拡大したものと考えられる。 【0053】 また、前記平坦化膜100により、画素電極128そのもの、または画素電極間全体に渡ってその表面の凹凸を低減することによって、スプレイ配向からベンド配向への転移を容易にかつ確実に実現することができる。 ・・・ 【0055】 ここで、図2(a)に示すように、前記平坦化膜100上に凸部100a・100b・100c・100dを形成し、平坦化膜の平坦性とスプレイ配向からベンド転移への転移との関係を求める実験を行った。尚、前記凸部100aの高さは1μm、凸部100bの高さは0.5μm、凸部100cは0.5μm、凸部100dは2μmとした。 【0056】 このように構成された液晶表示装置で、前記と同様にして、通常の表示の前に、ゲート配線電極126を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にして、対向電極127と画素電極128との間に例えば高電圧-15Vパルスを繰り返し印加する。そして、画素領域内にベンド配向113の領域を拡大させた。 【0057】 その結果、図2(b)に示すように、画素電極128のソース配線電極あるいはゲート配線電極側の辺部から発生したベンド配向領域113は、凸部100a、凸部100b、凸部100cを乗り越えて拡大するが、凸部100dを乗り越えて拡大することはできず、凸部100dで止まることが確認された。この実験結果より、この前記平坦化膜100による平坦化は完全である必要がなく、実用上は、平坦化膜100の段差が1μm以下、望ましくは0.5μm以下であれば良いことが分かる。 【0058】 また、前記平坦化膜により基板を平坦化することで、前記画素電極間の距離を縮めることができる。これは、通常の構成では、例えば、画素電極-ソース電極、ソース電極一画素電極の双方の合わせマージンを十分に取る必要があるため、画素電極間の距離は20μm程度と大きいものであった。しかし、本発明によって、画素電極間の距離は、画素電極一画素電極間の合わせマージンのみを考慮するだけで済むため、この距離を半分以下の10μm以下にすることができる。このように、画素電極間の距離を短くすることにより、画素間への転移がより良好に成長し、画素間を跨いで成長することを実現することができる。尚、この距離は1μm以上10μm以下が望ましく、さらに望ましくは1μm以上5μm以下であれば、尚良い。」 ク 「【0227】 【発明の効果】 以上に説明したように、本発明の構成によれば、本発明の課題を十分に達成することができる。 【0228】 即ち、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された液晶層とを有し、該液晶層に電圧を印加しない状態の液晶の配向状態を配向状態1、表示に用いる配向状態を配向状態2とし、配向状態1と配向状態2とが異なる液晶表示装置であって、前記液晶層と前記一対の基板のうちの少なくとも一方の基板との界面を平坦化した構成とすることにより、転移を確実にしかも速く起こし、表示欠陥のない、高速応答で広視野高画質の液晶表示装置を得ることができる。」 ケ 図1(a)及び(b)から、ゲート配線電極126と画素電極128とは、アクティブマトリックス型の液晶セル124のアレー基板106に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有すること、が見て取れる。 (2)当初明細書等の記載から把握できる技術的事項 上記(1)によれば、本願当初明細書等の記載から、以下のような技術的事項が把握できる。 ア OCBモードの液晶表示装置において、スプレイ配向からベンド配向への転移核を発生させて画素を均一なベンド配向にさせる際、画素電極に沿って配線されたソース線やゲート線周囲から転移核が発生するが、その発生場所は一定の場所ではなく、しばしば全く発生しない場合さえあること。 イ OCBモードの液晶表示装置において、転位電圧を印加しての転移を行うと、転移核からベンド配向が発生し、この配向状態が広がり成長するとき、このべンド配向の成長は、基板の凹凸領域、特に基板が凸状態で液晶層が薄くなっている領域にさしかかると成長が止まること。 ウ 無電圧印加状態でスプレイ配向の液晶セルを備えた液晶表示装置において、基板表面の凹凸を平坦化膜により平坦化し、液晶層の界面を平坦化すると、液晶層と基板との界面の凹凸領域が少なくなるので、転移が容易にかつ確実に実現でき、極めて短時間に転移を完了させることができるとともに、平坦化膜100による平坦化構成によって、極めて狭い間隔で画素電極128を形成することができ、ゲート配線電極を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にして、対向電極127と画素電極128との間に例えば高電圧-15Vパルスを繰り返し印加すると、画素電極128間には電界歪みが発生印加され、或いは、画素電極128とゲート配線電極126との間に電界歪みが発生し、これによって、画素電極128のソース配線電極あるいはゲート配線電極側の辺部では、b-スプレイ配向112への配向変化が起こり、これからベンド配向113への転移核が発生しその領域を拡大して、t-スプレイ配向111の領域もすべてベンド配向113の領域へ最終的には移行し、画素領域全体を約0.5秒でベンド配向領域に変化させることができ、TFTパネル全体では約3秒で速かに転移完了させることができ、これは、隣接する狭い画素電極128間隔に発生する電界歪みで、画素電極辺部の付近の液晶分子は基板面に水平状態に配向され、いわゆるb-スプレイ配向112となり、周囲より歪みのエネルギーが高くなって、この状態に、上下電極間に高電圧が印加されることによって更にエネルギーが与えられ、画素電極際において転移核が発生し、ベンド配向113の領域が拡大したものと考えられ、平坦化膜100により、画素電極128そのもの、または画素電極間全体に渡ってその表面の凹凸を低減することによって、スプレイ配向からベンド配向への転移を容易にかつ確実に実現することができること。 エ ゲート配線電極126と画素電極128、ソース配線電極181と画素電極128とが、アクティブマトリクス基板に対して垂直方向からみて互いに重なる部分を有すること。 3 判断 上記2によれば、本願当初明細書等の記載からは、「ゲート配線電極126と画素電極128とは、アレー基板106に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有して」いること、及び、「ゲート配線電極を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にして、対向電極と画素電極との間に例えば高電圧-15Vパルスを繰り返し印加すると、極めて狭い間隔の画素電極間には電界歪みが発生印加され、或いは、画素電極とゲート配線電極との間に電界歪みが発生し、これによって、画素電極のソース配線電極あるいはゲート配線電極側の辺部では、b-スプレイ配向への配向変化が起こり、これからベンド配向への転移核が発生」することが把握できるものの、ゲート配線電極126と画素電極128とがアレー基板106に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有するか有さないかということと、ゲート配線電極を通常の走査状態か、あるいは殆ど全てオンさせた状態にして、対向電極と画素電極との間に例えば高電圧-15Vパルスを繰り返し印加するとき、画素電極とゲート配線電極との間に電界歪みが発生するか発生しないかということとの間の因果関係については把握できない。 したがって、「前記ゲート配線電極と前記画素電極とは、前記アクティブマトリクス基板に対して垂直方向の投影において互いに重なる部分を有し、それによって前記スプレイ配向状態から前記ベント配向状態へと配向変化を起こす転移核を発生させるための電界歪を発生させる」こと、すなわち、上記1(2)の事項が、本願当初明細書等に記載されたすべての事項を総合することにより導かれる技術的事項であるとはいえない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、上記1(1)の補正の内容を含む、平成19年8月29日付けでした手続補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできず、同手続補正が、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものということはできないから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-05-12 |
結審通知日 | 2009-05-19 |
審決日 | 2009-06-24 |
出願番号 | 特願2001-291584(P2001-291584) |
審決分類 |
P
1
8・
573-
WZ
(G02F)
P 1 8・ 55- WZ (G02F) P 1 8・ 572- WZ (G02F) P 1 8・ 571- WZ (G02F) P 1 8・ 574- WZ (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 裕之 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
右田 昌士 小牧 修 |
発明の名称 | 液晶表示装置 |
代理人 | 板東 義文 |
代理人 | 大前 要 |