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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B01D
管理番号 1201874
判定請求番号 判定2009-600001  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-09-25 
種別 判定 
判定請求日 2008-12-28 
確定日 2009-07-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第3218031号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号説明書に示す「シトリクリーンシリーズ」は、特許第3218031号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨

本件判定請求の趣旨は、被請求人が販売する「シトリクリーンシリーズ」(以下、「イ号物件」という。)は、請求人所有の特許第3218031号(以下、「本件本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。

2.本件特許発明

本件特許発明は、特許明細書の記載からみて、特許請求の範囲第1?11項に記載されたとおりのものであり、このうち、請求人が上記判定を求めるのは請求項第7項に係る発明であり(以下、「本件第7発明」という。)、その構成要件を符号をつけて分説して記載すると次のとおりである。

「(I)(e)抽出対象物質を含有する液体と同じ組成の液体、または界面活性剤を用いずに混合できる液体と、
(II)(f)(e)の液体とは極性が異なる液体または界面活性剤を用いずには混合できない液体と、
(III)界面活性剤とで多層乳化したエマルションを含有する抽出液であり、
(IV)次の両方の事項を特徴とするもの:
1.該抽出液と抽出対象物質を含有する液体とを接触・攪拌した際に、多層乳化エマルションが転層することにより、抽出対象物を含有するミセルを形成するもの。
2.転層により生成した、抽出対象物を含有するミセルが比重により沈殿または浮上するもの。」

3.イ号物件
請求人が提出した判定請求書に添付の「イ号説明書」によれば、イ号物件(日華化学株式会社製の「シトリクリーンシリーズ」)の構成は次のとおりのものである。
「各種工作機械、建設機械、印刷機械等のメンテナンス洗浄や工具の油落とし等に使用される洗浄剤であり、天然オレンジオイルから抽出したd-リモネン、界面活性剤、水等を含有する液状組成物」

4.対比・判断
イ号物件の構成が、本件第7発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。
イ号物件の洗浄剤たる液状組成物は、「天然オレンジオイルから抽出したd-リモネン」及び「水」を含有しており、これらの成分は本件特許明細書の実施例1及び2において使用されているものであるから、これらは、本件第7発明の上記構成要件(I)の「抽出対象物を含有する液体」以外及び同構成要件(II)に対応しているといえる。
次に、イ号物件の「天然オレンジオイルから抽出したd-リモネン、界面活性剤及び水等を含有する液状組成物」が上記構成要件(III)の「多層乳化したエマルションを含有する抽出液」を充足するか否かについて検討する。請求人は、判定請求書において甲第5号証に示すとおり、油層の割合が所定の値を超え、界面活性剤が洗浄剤のように多い場合、多層乳化エマルションが生成することは周知事実であるとし、同種の洗浄剤を作成し、これが多層乳化しているか、及び本件特許の抽出機能を有するかについて試験を行ったとし、甲第6号証を提出して、「測定結果:A液及びC液はともに多層乳化していることが確認された。したがって、イ号物件はd-リモネン、界面活性剤及び水等を混合し、多層乳化したエマルションである」と主張するが、甲第6号証は、私企業の作成による測定結果報告書であって、しかも、「両サンプルともに多層エマルジョン構造と思われる粒子を確認いたしました。HPFモードの7μm前後の粒子が多層エマルジョンであることが粒子画像より確認可能でありました。」とあるように、特定サンプルの一部に多層エマルジョン構造と思われる粒子を確認した程度の内容にすぎず、偶々多層エマルジョンが存在する特定サンプルの存在により「多層乳化したエマルションを含有する」ことを証明することができないことは明らかである。さらに、イ号の「洗浄剤」と本件第7発明の「抽出液」とはそれぞれの処理により分離する対象が洗浄では回収をせず廃棄を目的とし、抽出では有用物として回収するように基本的に異なり、イ号の洗浄剤が「多層乳化したエマルション」をその洗浄に用いるものとはいえない以上、これらを同一視することはできない。
そうすると、イ号物件の「天然オレンジオイルから抽出したd-リモネン、界面活性剤、水等を含有する液状組成物」なる構成から「多層乳化したエマルションを含有する抽出液」なる構成要件を導出できず、イ号物件は構成要件(III)を充足していないといえる。また、イ号物件は、「多層乳化したエマルションを含有する抽出液」を前提とする構成要件(IV)をも充足しないことは明らかである。
よって、イ号物件は、本件第7発明の構成要件のうち、(III)及び(IV)を充足しないから、他の構成要件である(I)及び(II)を検討するまでもなく、イ号物件は本件第7発明の構成要件をすべて充足しているとはいえない。
なお、請求人は、請求書の「5請求の理由(4)イ号物件の説明(a)」(第6頁)において、イ号物件が多層乳化しているか否かについて証拠調を行うことを申し立てているが、上記したようにイ号物件は、「洗浄剤」であってイ号物件は本件第7発明の構成要件をすべて充足しているとはいえないことは明らかであるから、証拠調を行わない。また、同項において与えられることを希望する証拠保全の機会と弁駁書の提出の機会についても同様の理由により必要を認めないことを付記する。

5.むすび
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2009-07-14 
出願番号 特願2001-7151(P2001-7151)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新居田 知生  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 安齋 美佐子
大黒 浩之
登録日 2001-08-03 
登録番号 特許第3218031号(P3218031)
発明の名称 多層乳化エマルションを利用した有用物の抽出方法および抽出液  
代理人 長濱 範明  

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