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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1202240
審判番号 不服2006-18802  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-28 
確定日 2009-08-11 
事件の表示 平成 8年特許願第514123号「ネットワーク・セールス・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月 2日国際公開、WO96/13013、平成10年 9月14日国内公表、特表平10-509543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,1995年10月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年10月24日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成17年9月2日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,平成18年3月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものの,同年5月24日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年8月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年9月27日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項32に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年9月27日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項32に記載された以下のとおりのものであると認める。

「製品を買うことを望んでいるユーザによる操作のための少なくとも一つのバイヤー・コンピュータ,少なくとも一つのマーチャント・コンピュータ,及び少なくとも一つのペイメント・コンピュータを備えているコンピュータ・ネットワークのペイメント・コンピュータを操作する方法であって,
前記バイヤー・コンピュータが,製品を購入するためのユーザ要求に応じて前記ペイメント・コンピュータへ送らせるペイメント・メッセージを,前記ペイメント・コンピュータで,受け取り,前記ペイメント・メッセージは,前記製品を識別する製品識別子を備え;
暗号キーに基づきアクセス・メッセージ・オーセンチケータ及び前記製品識別子を備えているアクセス・メッセージを生成させ;かつ
前記アクセス・メッセージを前記マーチャント・コンピュータへ送らせ,前記マーチャント・コンピュータは,前記アクセス・メッセージを受け取り,前記アクセス・メッセージ・オーセンチケータが前記暗号キーを用いて生成されたことを確実にすべく前記アクセス・メッセージ・オーセンチケータを確認し,かつ前記製品を買うことを望んでいる前記ユーザへ該製品を送らせるべくプログラムされる段階を具備することを特徴とする方法。」

3.引用例
(引用例1)
原査定の拒絶の理由に引用された,米国特許第4799156号明細書(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に,以下の事項が記載されている。
(A)第1欄第5行?第2欄第36行の記載
「This invention relates generally to the field of automated
business, data processing, and data communications systems, and more
particularly to a system for interactive communications and
processing of business transactions between a plurality of types of
users within at least one industry including buyers, wholesalers,
distributors, suppliers, agents, and financial and freight carrier
services.
・・・
Briefly, according to one embodiment of the invention, a system is
provided for interactive on-line communications and processing of
business transactions between different types of independent users
including at least a plurality of sellers, and a plurality of
buyers, wherein each user communicates with the system. The system
comprises access means for providing selective access to a data base
by users. Processing means is provided responsive to the access
means for interactive on-line transactions between one of the
plurality of buyers and a selected one of the plurality of sellers
wherein one party to the transaction specifically selects the other
party. In an alternative embodiment, the processing means provide
for concurrent, interactive on-line processing of business
transactions between more than two different users concurrently
conducting an interactive business transaction session.」
[仮訳]
「この発明は,概して,自動取引,データ処理及びデータ通信システムの分野に関するものであり,特に,バイヤー,卸売業者,販売代理店,サプライヤー,エージェントおよび金融と輸送キャリアー・サービスの少なくとも1つの業に属する多くのタイプのユーザ間で行われる企業取引における対話型の通信及び処理システムに関するものである。
・・・
簡潔にいえば,この発明の1つの実施例によれば,システムは,当該システムで通信するユーザである,少なくとも多くの販売者や多くのバイヤーを含む異なるタイプの独立したユーザ間における企業取引の対話型のオンライン通信及び処理に供給される。当該システムは,ユーザによるデータ・ベースへの選択的なアクセスを提供するためのアクセス手段を含んでいる。取引相手として特に選ばれた多くのバイヤーの中の一人と多くの販売者の内の1人との対話型オンライン取引をするためのアクセス手段に応答して,処理手段は提供される。代替となる実施例では,処理手段は,同時に対話型の企業取引セッションを行う2以上の異なるユーザ間の同時的対話型のオンライン企業取引を提供する。」

(B)第5欄第16行?同欄第65行の記載
「FIG. 1 is a generalized block diagram illustrating the structure
of a specific embodiment of the interactive market management system
50 for interactive communications and processing of business
transactions between users according to the invention. The system 50
permits users such as buyers, sellers, etc. at remote sites to
conduct business transactions and communicate with data bases on
other computing services from a variety of remote terminals, as
shown.
・・・
Various remote sites communicate with a central processor 80 which
comprises a central processing unit (CPU) 81, communications
interface 79, and a mass storage system 72. The CPU 81 provides
local processing capability and the communications interface 79
provides an interface to permit access by the remote users to the
processor 80 and to the local data bases stored on the mass storage
system 72 via communication links 74a-i.・・・ The communication
links 74a-8i may be any of a wide variety of network services, such
as public telephone networks, public data networks (e.g., Telenet),
open virtual lines, private or public network, ISDN, Software
Defined Networks, leased data lines, etc. The remote communications
may use any of a variety communications protocols such as System
Network Architecture (SNA), X.25, ASYNCH, BSC, etc.・・・」
[仮訳]
「図1は,当該発明によるユーザ間の企業取引における対話型の通信及び処理のための対話型の市場管理システム50について,特定の実施例の構造を説明するための概要のブロック図である。図示されるように,当該システム50は,リモートサイトのバイヤー,販売者などのようなユーザが,様々な遠隔端末から企業取引を処理するとともに,他のコンピューター・サービス上のデータベースと通信することを可能にする。
・・・
様々なリモートサイトは,中央処理装置(CPU)81,通信インターフェース79及び大容量記憶システム72で構成される中央プロセッサ80を用いて通信する。CPU81はローカルの処理機能を提供し,また,通信インターフェース79は,遠隔ユーザによるプロセッサ80及び大容量記憶システム72に格納されたローカルデータベースに通信リンク74a-i経由のアクセスを可能にするインターフェースを提供する。・・・通信リンク74a-8iは,公衆電話ネットワーク,公衆データネットワーク(例えばTelenet),オープンな仮想ライン,個人あるいは公衆網,ISDN,SDN(Software Defined Networks),リースデータラインなどのような種々様々なネットワーク・サービスのいずれかであるだろう。遠隔通信は,システム・ネットワーク・アークテクチャ(SNA),X.25,ASYNCH,BSCなどのような様々な通信プロトコルが使用されるであろう。 ・・・」

(C)第5欄第66行?第6欄第18行の記載
「Referring now to FIG. 2, there is shown a generalized block
diagram illustrating the organizational relationship between market
participants (i.e., system users) and the interactive market
management system 50 according to the invention. ・・・ Subscribers
may include such market participants as sellers (i.e. distributors
83, suppliers 84), their agents 98 (e.g., manufacturers'
representatives), buyers 82, freight service providers 86, financial
service providers 96, commercial service providers 88, information
service providers 94, and proprietary service providers 90, as
shown. The interactive market management system 50 may also be
linked to other interactive market management systems 92 in other
industries.」
[仮訳]
「ここで図2を参照すると,市場参加者(すなわちシステムユーザ)と,この発明による市場管理システム50との組織的な関係を説明するための概要のブロック図が示されている。・・・図示されるように,加入者には,販売者(つまり販売代理店83,サプライヤー84),エージェント98(例えばメーカーの代表),バイヤー82,輸送サービス・プロバイダー86,金融サービス供給者96,商業サービス供給者88,情報サービス・プロバイダー94および所有者のサービス・プロバイダー90のような市場参加者が含まれているであろう。対話型の市場管理システム50は,他業種の対話型の市場管理システム92にリンクされることもあるだろう。」

(D)第8欄第55行?第9欄第19行の記載
「A payment service capability is provided to the user (e.g., buyer,
distributor, supplier, service provider, etc.) who authorizes the
system 50 to carry its payment instructions to the user's bank. ・・・
The buyer of goods or services can inform the system 50 that he
commits to pay for a particular invoice or for invoices covering a
particular order through the system payment services. ・・・」
[仮訳]
「ペイメントサービス機能は,その支払い指示をユーザの銀行に伝えることをシステム50に認可しているユーザ(例えばバイヤー,販売代理店,サプライヤー,サービス・プロバイダーなど)に提供される。・・・
品物またはサービスのバイヤーは,そのシステムのペイメントサービスを通じて,特別の請求書あるいは特別の注文をカバーする請求書の代金を支払うことを彼が委託するシステム50に通知することができる。・・・」

これらの記載からみて,引用例1には,以下の発明(以下,「引用例1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「品物またはサービスを買うことを望んでいるバイヤーによる操作のための少なくとも一つのバイヤーの遠隔端末,少なくとも一つの販売代理店等の遠隔端末,及び少なくとも一つのペイメントサービス機能を備える市場管理システムを備えているコンピュータ・ネットワークの市場管理システムを操作する方法であって,
前記バイヤーの遠隔端末が,製品を購入するためのバイヤーの要求に応じて前記市場管理システムのペイメントサービス機能を利用するためのメッセージを,前記市場管理システムで,受け取る段階を具備する方法。」

(引用例2)
同じく,原査定の拒絶の理由に引用された,大森,館林,ユーザのプライバシ保護を考慮した通信販売システム,電子情報通信学会技術研究報告 SEC94-23?30 情報セキュリティ,社団法人電子情報通信学会,1994年10月20日,第94巻,第297号,第25?32頁(以下,「引用例2」という。)には,図表と共に,以下の事項が記載されている。

(E)第26頁右欄下9行?第30頁左欄11行の記載
「2 提案プロトコル
図1は,本システムの構成の概略図である.本システムでは,通販会社は受付部門a,中継部門b,商品部門cからなる.各ユーザは,受付部門aに対してパソコン通信で注文を行なう.受付部門a,中継部門b,商品部門cの間も通信回線で情報伝送を行なう.信頼できるシステム管埋者は,初期設定時・トラブル時にのみ関与する.またこれから説明するシステムで実際に取り引きする商品は,電子的商品であるとする.

2.1 構成要素
・ユーザi(複数人)
予め本システム加入を申し込み,(名前,通信アドレス[Address],支払方法[account])をシステムに登録し,システム管理者から会員番号IDiが付与されている.
・受付部門a
本通信販売システムのユーザi向け窓口であり,注文受付と電子的商品の発送を行なう.全ユーザの登録情報(IDi,名前,Address,account,公開鍵[pi])のデータベースを保持している.注文者からの料金徴収も行なう.
商品に関する情報は,暗号化されており得ることは出来ない.
・中継部門b
受付部門aと商品部門cの間を送られる情報を中継する部門.ac間の各情報はここで変換され,直接に渡されることはない.ユーザに関する情報は,送られてくる情報に付与されている照会番号がユーザiと対応つかないので個人に関する情報を得ることができない.また商品に関する情報も暗号化されており得ることは出来ない.
・商品部門c
注文に応じて商品を倉庫から取り出す部門.
ユーザに関する情報は,得ることができない.
※i,a,b,cはそれぞれ自分の秘密鍵を秘密に保管し,公開鍵を公表している.
・システム管理者
システム起動時,ユーザ登録時,トラプル発生時のみに機能する.
各ユーザからシステム加入を受付けて,その登録情報を受付部門aに与える.各暗号アルゴリズムを配布する.
ユーザと通販会社の間で起きたトラプルの処理を行なう.
実際にはシステム管理者が,ユーザの秘密鍵・公開鍵を計算しそれぞれをユーザに配布,公表することも可能である.ただしこの場合,各ユーザの秘密鍵は覚えておく必要はない.

2.2 プロトコルの概略
本提案プロトコルの概略を図2に示す.
(1)ユーザiは,自分の欲しい商品PDTの商品コードPIDを二重暗号化してEOrd1とし,受付部門aに会員番号IDiと共に送付する.
(2)受付部門aは,IDiとは独立の照会番号1Ref1を発行し,ユーザiから送られてきたEOrd1に付加して中継部門bに送る.この時,IDiとRef1の対応は記憶しておく.
(3)中継部門bは,受付部門aから送られてきたEOrd1を部分復号し一重暗号化注文内容EOrd2とする.Ref1とは独立の照会番号2Ref2を発行し,EOrd2に付加して商品部門cに送る。この時,Ref1とRef2の対応は記憶しておく.
(4)商品部門cは,中継部門bから送られてきたEOrd2を復号し,商品コードPIDを得る.商品コードPIDに対応する商品PDTを暗号化してEPDT1とし,商品価格PrとRef2と共に中継部門bヘ送付する.
(5)中継部門bは,商品部門cから送られてきたEPDT1を二重暗号化してEPDT2とし,Ref2と対応するRef1,Prと共に受付部門aに送る.
(6)受付部門aは,中継部門bからRef1と共に送られてきたEPDT2を,Ref1と対応するIDiを持つユーザiに送付する.クレジットまたは銀行振替などで,Prをユーザiから徴収.
(7)ユーザiは,受付部門aから送られてきたEPDT2を復号して,PDTを得る.
商品を暗号化する鍵は,公開鍵暗号の秘密暗号通信を用いてユーザiからb,cに配送する.公開鍵暗号では送信者を特定できないという特性ため,b,cは相手の誰かわからないユーザとそれぞれ鍵を共有し,その鍵を用いて商品を暗号化して送信している.詳しくは,次の詳細なプロトコルを参照のこと.

2.3 詳細なプロトコル
先に説明したプロトコルを詳細に述べる.

2.3.1 Notation
以下使用する用語について説明する.
・F(K,X):秘密鍵暗号アルブリズム.鍵KでXを暗号化したものを表す.
・F^(-1)(K,X):F(K,X)の復号アルゴリズム.
i.e., F^(-1)(K,F(K,X))=X
・E(pk,X):公開鍵暗号アルゴリズム.鍵pkでXを暗号化したものを表す.
・D(sk,X):公開鍵復号アルゴリズム.鍵skでXを復号化したものを表す.
・sign(K,X):署名生成アルゴリズム.鍵KでXに対して署名を施したものを表す.
・verify(K,X,Y):署名確認アルゴリズム.XがYに対する署名かどうかを確認するアルゴリズム.OK/NGを返す.
・X[x]:テータXと,データXにエンティティxの署名を施したsign(sx,X)の合併.
i.e., X[x]=X?sign(sx,X)
また各部門の公開鍵ならびに暗号アルゴリズムは,公開されているものとする.

2.3.2 詳細なプロトコル
以下のプロトコルでは,(1)送る情報は全て署名を付けて送付する,(2)署名付情報が送られてくると直ちに署名の正当性を確認する,(3)送られてきた情報は関連する情報と組にして記録している,ことについては省略する.

A.注文受付フェーズ
(01)[i]
・注文内容暗号鍵rb,rcを2つランダムに取る(毎回変える).
・PIDをrb,rcで二重暗号化:
F(rb,F(rc,PID))
・rb,rcをそれぞれpb,pcで暗号化:
E(pb,rb),E(pc,rc)
・これらを連結して,EOrd1とする:
EOrd1:=F(rb,F(rc,PID))
?E(pb,rb)?E(pc,rc)
(02)[i→a]
・IDi,EOrd1[i]を送る.
・署名認証がOKならば(03)ヘ.NGの場合は
ユーザ認証できなかったことを伝える.
(03)[a]
・照会番号1Ref1を発行する.
(04)[a→i]
・(Ref1?EOrd1)[a]を受付番号として送る.

B.注文処理フェーズ
(05)[a→b]
・(Ref1?EOrd1)[a]を送る.
(06)[b]
・EOrd1からE(pb,rb)を取りだし,sbで復号:
D(sb,E(pb,rb))=rb
・rbでF(rb,F(rc,PID))を一部復号化:
F^(-1)(rb,F(rb,F(rc,PID))=F(rc,PID)
・これらを連結してEOrd2とする:
EOrd2:=F(rc,PID)?E(pc,rc)
・照会番号2Ref2を発行する.
(07)[b→c]
・(Ref2?EOrd2)[b]を送る.
(08)[c]
・EOrd2からE(pc,rc)を取りだし,scで復号化:
D(sc,F(pc,rc))=rc
・rcでF(rc,PID)を復号化しPIDを求める.
・PIDから商品価格Prを求める.

C.商品発送フェーズ
(09)[c]
・PIDを基に,商品PDTを取り出す.
・rcを暗号鍵として,PDTを暗号化しEPDT1とする.
EPDT1:=F(rc,PDT)
(10)[c→b]
・(Ref2?EPDT1?Pr)[c]を送る.
(11)[b]
・cから送られてきたRef2からrbを検索し,これを
秘密鍵としてEPDT1を暗号化しEPDT2とする:
EPDT2:=F(rb,EPDT1)
=F(rb,F(rc,PDT))
(12)[b→a]
・(Ref1?EPDT2?Pr)[b]を送る.

D.商品受取フェーズ
(13)[a→i]
・Ref1に対応するIDiを検索し,ユーザiに
(Ref1?EPDT2?Pr)[a]を送る.
(14)[i]
・受け取ったPrが注文したPIDの価格と合致するか確認する.
・合致した場合,商品受取票Receiptを作成する:
Receipt:=sign(si,Ref1?EPDT2?Pr)
(15)[i→a]
・Receiptを送る.
(16)[i]
・rbでEPDT2を復号化する:
F^(-1)(rb,EPDT2)=F(rc,PDT)
・rcでF(rc,PDT)を復号化する:
F^(-1)(rc,F(rc,PDT))=PDT」

4.対比
そこで,本願発明と引用例1記載の発明とを比較すると,引用例1記載の発明の「品物またはサービス」,「バイヤー」,「バイヤーの遠隔端末」,「販売代理店等の遠隔端末」,「ペイメントサービス機能を備える市場管理システム」は,それぞれ,本願発明の「製品」,「ユーザ」,「バイヤー・コンピュータ」,「マーチャント・コンピュータ」,「ペイメント・コンピュータ」に対応していることから,本願発明と引用例1記載の発明は,
「製品を買うことを望んでいるユーザによる操作のための少なくとも一つのバイヤー・コンピュータ,少なくとも一つのマーチャント・コンピュータ,及び少なくとも一つのペイメント・コンピュータを備えているコンピュータ・ネットワークのペイメント・コンピュータを操作する方法であって,
前記バイヤー・コンピュータが,製品を購入するためのユーザの要求に応じて前記ペイメント・コンピュータへ送らせるメッセージを,前記ペイメント・コンピュータで,受け取る段階を具備する方法。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明では,「前記バイヤー・コンピュータが,製品を購入するためのユーザ要求に応じて前記ペイメント・コンピュータへ送らせるペイメント・メッセージを,前記ペイメント・コンピュータで,受け取り,前記ペイメント・メッセージは,前記製品を識別する製品識別子を備え;暗号キーに基づきアクセス・メッセージ・オーセンチケータ及び前記製品識別子を備えているアクセス・メッセージを生成させ;かつ前記アクセス・メッセージを前記マーチャント・コンピュータへ送らせ,前記マーチャント・コンピュータは,前記アクセス・メッセージを受け取り,前記アクセス・メッセージ・オーセンチケータが前記暗号キーを用いて生成されたことを確実にすべく前記アクセス・メッセージ・オーセンチケータを確認し,かつ前記製品を買うことを望んでいる前記ユーザへ該製品を送らせるべくプログラムされる」段階を具備するのに対し,引用例1記載の発明では,「前記バイヤー・コンピュータが,製品を購入するためのユーザの要求に応じて前記ペイメント・コンピュータへ送らせるメッセージ(ペイメントサービス機能を利用するためのメッセージ)を,前記ペイメント・コンピュータで,受け取る」ものの,上記のような段階を具備していない点。

5.当審の判断
[相違点1について]
引用例2に記載された通信販売システムは,パソコン通信で注文を行い,通販会社内も通信回線で情報伝送を行うものであるから,商品PDTを買うことを望んでいるユーザi及び通販会社内の受付部門a,中継部門b,商品部門cのそれぞれには,通信ネットワークを介して通信可能なコンピュータであるユーザiによる操作のための少なくとも一つのユーザiのコンピュータ,受付部門aのコンピュータ,中継部門bのコンピュータ及び商品部門cのコンピュータが備えられているものと認められる。
そして,引用例2には,「前記ユーザiのコンピュータが,商品PDTを購入するためのユーザ要求に応じて前記受付部門aのコンピュータへ送らせるメッセージEOrd1を,前記受付部門aのコンピュータで受け取り,前記メッセージEOrd1は,前記商品を識別する商品コードPIDを備え」ていることが記載されていると認められる。ここで,引用例2の受付部門aは商品価格Prをユーザiから徴収する機能も有していることから,受付部門aのコンピュータは,ペイメント機能を有するコンピュータであると認められ,そうしてみると,前記「ユーザiのコンピュータが,商品PDTを購入するためのユーザ要求に応じて前記受付部門aのコンピュータへ送らせるメッセージEOrd1」は,ペイメント機能を有するコンピュータに送信するメッセージということができる。
また,前記受付部門aのコンピュータにおいて,前記「メッセージEOrd1」に基づいて生成されたメッセージは,前記中継部門bのコンピュータで中継されて,前記受付部門aのコンピュータから前記商品部門cのコンピュータに送付されており,前記商品部門cのコンピュータでは,受け取ったメッセージから商品コードPIDを得ていることからみて,前記受付部門aのコンピュータから前記商品部門cのコンピュータに送付される前記メッセージは,商品コードPIDを備えているものと認められ,更に,引用例2の第29頁左欄2?6行には,「以下のプロトコルでは,(1)送る情報は全て署名を付けて送付する,(2)署名付情報が送られてくると直ちに署名の正当性を確認する,(3)・・・」と記載されていることからみて,引用例2には,「前記受付部門aのコンピュータが,暗号鍵に基づき署名を施した署名付きの前記商品コードPIDを備えているメッセージを生成させ,かつ,前記メッセージを前記商品部門cのコンピュータへ送らせ,前記商品部門cのコンピュータは,前記メッセージを受け取り,前記メッセージの署名の正当性を確認し」ていることが記載されているものと認められる。なお,引用例2に記載の「署名」は,暗号鍵(暗号キー)に基づくデジタル署名であるから「オーセンチケータ」に相当していると認められる。
更に,引用例2の前記商品部門cのコンピュータは,前記商品コードPIDを基に,商品PDTを取り出し,前記中継部門bのコンピュータを中継して,前記受付部門aのコンピュータから前記ユーザiへ該商品PDTを送付していることからみて,引用例2には,「前記商品部門cのコンピュータは,前記商品PDTを買うことを望んでいる前記ユーザiへ該商品PDTを送らせるべくプログラムされる」ことが記載されていると認められる。
そうしてみると,引用例2には,「ユーザiのコンピュータが,商品PDTを購入するためのユーザ要求に応じてペイメント機能を有する受付部門aのコンピュータへ送らせるメッセージEOrd1を,前記受付部門aのコンピュータで受け取り,前記メッセージEOrd1は,前記商品を識別する商品コードPIDを備え;前記受付部門aのコンピュータが,暗号鍵に基づき署名を施した署名付きの前記商品コードPIDを備えているメッセージを生成させ;かつ前記メッセージを前記商品部門cのコンピュータへ送らせ,前記商品部門cのコンピュータは,前記メッセージを受け取り,前記メッセージの署名の正当性を確認し,かつ前記商品部門cのコンピュータは,前記商品PDTを買うことを望んでいる前記ユーザiへ該商品PDTを送らせるべくプログラムされる」ことが記載されていると認められる。
そして,引用例1記載の発明及び引用例2記載の事項は,いずれも,コンピュータネットワークを用いた販売システムに関するものであり,引用例1記載の発明に引用例2記載の事項を適用することに格別の困難性は認められない。
してみれば,引用例1記載の発明に引用例2記載の事項を適用して,引用例1記載の発明において,「前記バイヤー・コンピュータが,製品を購入するためのユーザ要求に応じて前記ペイメント・コンピュータへ送らせるペイメント・メッセージを,前記ペイメント・コンピュータで,受け取り,前記ペイメント・メッセージは,前記製品を識別する製品識別子を備え;暗号キーに基づきアクセス・メッセージ・オーセンチケータ及び前記製品識別子を備えているアクセス・メッセージを生成させ;かつ前記アクセス・メッセージを前記マーチャント・コンピュータへ送らせ,前記マーチャント・コンピュータは,前記アクセス・メッセージを受け取り,前記アクセス・メッセージ・オーセンチケータが前記暗号キーを用いて生成されたことを確実にすべく前記アクセス・メッセージ・オーセンチケータを確認し,かつ前記製品を買うことを望んでいる前記ユーザへ該製品を送らせるべくプログラムされる」段階を具備するようにすることは,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用例1記載の発明及び引用例2記載の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。

[本願発明の作用効果]
本願発明の作用効果は,引用例1及び引用例2から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)まとめ
したがって,本願発明は,引用例1記載の発明及び引用例2記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1記載の発明及び引用例2記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-11 
結審通知日 2009-03-16 
審決日 2009-03-27 
出願番号 特願平8-514123
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 浩二田川 泰宏  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
山本 穂積
発明の名称 ネットワーク・セールス・システム  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 中村 稔  
代理人 須田 洋之  
代理人 熊倉 禎男  

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