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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1202258
審判番号 不服2006-22106  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-02 
確定日 2009-08-12 
事件の表示 特願2002-543133「燃焼機関からの排気ガスの後処理装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月23日国際公開、WO02/40837、平成16年 8月26日国内公表、特表2004-526091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、2001年11月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年11月18日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成15年7月15日付けで特許法第184条の4に規定する明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の翻訳文が提出され、平成18年2月22日付けで拒絶理由が通知され、同年5月25日付け意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年6月28日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、同年10月2日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月26日に手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされ、平成20年7月10日付けで審尋がなされ、同年10月15日に審尋に対する回答書が提出されたものである。

[2]平成18年10月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年10月26日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容及び目的
平成18年10月26日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成18年5月25日付けの手続補正書により補正された)下記の(ロ)に示す請求項1乃至18を下記の(イ)に示す請求項1乃至15と補正するものである。

(イ)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
燃焼機関からの排気ガスの後処理装置であって、
前記排気ガスの流れが通過する、ビーズで満たされた領域(3)と、
前記排気ガスの流れ方向に沿って前記領域(3)に隣接し、粒子フィルタとしての金属繊維で満たされた領域(5)と
を備え、
前記金属繊維で満たされた領域(5)は、前記排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域に分けられており、それぞれの小領域は前記排気ガスの流れ方向へ段階的に減少する空隙率及び/又は間隙径分布を有していることを特徴とする排気ガスの後処理装置。
【請求項2】
前記ビーズが中空ビーズである請求項1に記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項3】
前記ビーズが金属製である請求項1又は2に記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項4】
前記ビーズが多孔質である請求項1から3のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項5】
前記ビーズの直径が、前記排気ガスの流れる方向に従って減少する請求項1から4のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項6】
前記ビーズが、互いにスポット燒結された請求項1から5のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項7】
前記空隙率が、70%以上、95%以下の範囲である請求項1から6のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項8】
前記ビーズ及び前記金属繊維の少なくとも一方の表面は、前記排気ガスに触媒反応を発生させる活性材料をコート又はドープされる請求項1から6のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項9】
前記ビーズで満たされた領域(3)が、前記燃焼機関からの前記排気ガスの出口の近くに配置される請求項1から8のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項10】
前記ビーズで満たされた前記領域(3)が、前記燃焼機関の前記排気ガスの分流部の中に配置される請求項1から9のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項11】
前記中空ビーズで満たされた領域(3)と、前記金属繊維で満たされた領域(5)との間にキャビティ(4)が形成された請求項1から10のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項12】
前記ビーズで満たされた領域(3)から前記金属繊維で満たされた領域(5)までの区間において前記排気ガスが通過する部分の断面は、前記排気ガスの流れる方向について、
前記ビーズで満たされた領域(3)よりも上流側および前記金属繊維で満たされた領域(5)よりも下流において前記排気ガスが流れる管の断面に比べて増加する請求項1から11のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項13】
前記ビーズ及び金属繊維の少なくとも一方が、鉄-クロム-ニッケルの合金、ニッケル合金、鉄-クロム-アルミの合金、又はアルミナ、若しくはそれらの組み合わせから形成されることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項14】
燃焼機関からの排気ガスの後処理方法であって、
前記排気ガスを、ビーズで満たされた領域(3)を通過させる手順と、
前記ビーズで満たされた領域(3)を通過した前記排気ガスを、金属繊維で満たされた領域(5)を通過させる手順と
を含み、
前記金属繊維で満たされた領域(5)が、前記排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域(5')、(5'')及び(5''')に分けられており、それぞれの小領域は段階的に変化する空隙率を有し、
前記排気ガスが前記ビーズ及び前記金属繊維の少なくとも一方に触れることにより生じる触媒反応と、前記排気ガスに含まれる粒子の段階的なろ過とを実行する排気ガスの後処理方法。
【請求項15】
前記ビーズで満たされた領域(3)において塊になった粒子が、前記金属繊維で満たされた領域(5)において前記排気ガスの流れからろ過される請求項14に記載の排気ガスの後処理方法。」

(ロ)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
燃焼機関からの排気ガスの後処理装置であって、
前記排気ガスの流れが通過する、ビーズで満たされた領域(3)と、
前記排気ガスの流れ方向に沿って前記領域(3)に隣接し、粒子フィルタとしての金属繊維で満たされた領域(5)と
を備える排気ガスの後処理装置。
【請求項2】
前記ビーズが中空ビーズである請求項1に記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項3】
前記ビーズが金属製である請求項1又は2に記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項4】
前記ビーズが多孔質である請求項1から3のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項5】
前記ビーズの直径が、前記排気ガスの流れる方向に従って減少する請求項1から4のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項6】
前記ビーズが、互いにスポット燒結された請求項1から5のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項7】
前記金属繊維で満たされた領域(5)は、前記排気ガスの流れ方向へ進むに従って、異なる空隙率及び/又は間隙径分布を有する層状の、少なくとも2つの小領域に分けられることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項8】
前記空隙率は、前記排気ガスの流れ方向へ減少することを特徴とする請求項7に記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項9】
前記空隙率が、70%以上、95%以下の範囲である請求項7または請求項8に記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項10】
前記ビーズ及び前記金属繊維の少なくとも一方の表面は、前記排気ガスに触媒反応を発生させる活性材料をコート又はドープされる請求項1から9のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項11】
前記ビーズで満たされた領域(3)が、前記燃焼機関からの前記排気ガスの出口の近くに配置される請求項1から10のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項12】
前記ビーズで満たされた前記領域(3)が、前記燃焼機関の前記排気ガスの分流部の中に配置される請求項1から11のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項13】
前記中空ビーズで満たされた領域(3)と、前記金属繊維で満たされた領域(5)との間にキャビティ(4)が形成された請求項1から12のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項14】
前記ビーズで満たされた領域(3)から前記金属繊維で満たされた領域(5)までの区間において前記排気ガスが通過する部分の断面は、前記排気ガスの流れる方向について、前記ビーズで満たされた領域(3)よりも上流側および前記金属繊維で満たされた領域(5)よりも下流において前記排気ガスが流れる管の断面に比べて増加する請求項1から13のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項15】
前記ビーズ及び金属繊維の少なくとも一方が、鉄-クロム-ニッケルの合金、ニッケル合金、鉄-クロム-アルミの合金、又はアルミナ、若しくはそれらの組み合わせから形成されることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の排気ガスの後処理装置。
【請求項16】
燃焼機関からの排気ガスの後処理方法であって、
前記排気ガスを、ビーズで満たされた領域(3)を通過させる手順と、
前記ビーズで満たされた領域(3)を通過した前記排気ガスを、金属繊維で満たされた領域(5)を通過させる手順とを含み、前記排気ガスが前記ビーズ及び前記金属繊維の少なくとも一方に触れることにより生じる触媒反応と、前記排気ガスに含まれる粒子のろ過とを実行する排気ガスの後処理方法。
【請求項17】
前記ビーズで満たされた領域(3)において塊になった粒子が、前記金属繊維で満たされた領域(5)において前記排気ガスの流れからろ過される請求項16に記載の排気ガスの後処理方法。
【請求項18】
前記金属繊維で満たされた領域(5)が、異なる空隙率を有する小領域(5')、(5'')及び(5''')に分けられ、前記排気ガスが前記金属繊維で満たされた領域(5)において段階的にろ過される請求項16または請求項17に記載の排気ガスの後処理方法。」

本件補正は、本件補正前の請求項1の「金属繊維で満たされた領域(5)」について、本件補正後の請求項1の「前記金属繊維で満たされた領域(5)は、前記排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域に分けられており、それぞれの小領域は前記排気ガスの流れ方向へ段階的に減少する空隙率及び/又は間隙径分布を有している」なる発明特定事項のように限定するものを含んでおり、かかる補正は、本件補正前の請求項7及び8における特定並びに本願明細書段落【0049】ないし【0054】の記載に基づくものであって、特許請求の範囲を限定的に減縮するものである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲を減縮することを目的とするものと認められる。

2.独立特許要件について
次に、本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。

(1)引用文献
国際公開第00/43094号(2000年7月27日公開。以下、「引用文献」という。)

(2)当審の判断
1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用文献には、次の事項が記載されている(なお、下線は引用箇所等を特に明示するために当審で付した。)。

ア.「L'invention concerne … de dechets.」(第1欄第2?5行、なお、アクサンテギュ等の仏語アクセント記号は省略した。以下同じ。)
(以下、[]内は当審による仮訳である。なお、下線は当審が付した。)
[本発明は、特にガソリン又はディーゼル内燃機関又は、例えば廃棄物焼却工場といったような有毒スモッグを吐出すあらゆるタイプの工業的燃焼によって排出される懸濁状態の粒子及び煤煙の熱分解により汚染性ガスを中和するシステムに関する。]

イ.「Selon un premier mode du realisation, … de dimensions corresppondantes.」(第3欄第1?10行)
[第一の実施形態によると、交換及び熱分解用表面は、各々その表面全体にわたり例えばダイヤモンドポイント又はそれに類似するタイプの複数の突出部分(1、2、3)を有する球の集合体で構成されている。各々複数の突出部分を有する球は、石灰岩又は任意の天然物から機械加工される。球は同様に、好ましくは石灰質の鉱物粉末の成形によって得ることもできる。
その突出部分を伴う球は、非常に薄いシート状の優れた熱伝導率をもつ金属から、二つの溶接される部分としてプレス加工することもできる。これらの球は、寸法に合わせて収納され、対応する寸法の熱分解ヒートセル内に導入される。]

ウ.「Tel qu'il est … la puissance du moteur.」(第6欄第4?末行)
[図1?3に表わされているように、排気ガスを乾燥させ不完全燃焼の又は、部分燃焼の粒子及びHCを保持しその高速熱分解を行なうための本発明に従った、交換及び熱分解用の大きな表面の例は、鉱物製の球の表面に機械加工された突出部分で構成されている。これらの同一の突出部分の形状は、好ましくは、ガスとの最大交換表面を提供する形状である。これは、例えば、「ダイヤモンドポイント」形状2、より鋭いポイント状1(等辺角錐)又は半球状ポイント3又は、例えば石灰岩といった鉱物粉塵の圧縮成形又は、機械加工によって容易に得られるその他の形状であってよい。成形により、これらの突出部分を備えた球以外の形状を得ることもできるが、球は同じ体積で最大の交換面積を提供し、ガスの循環を容易にすることから、これが好適である。
図4では半分ずつプレス加工され、例えば電気的に又は超音波により溶接されたダイヤモンドポイント状の突出部分を有する厚み約0.4ミリメートルの非常に薄い中空球の一例を表わしている。材料は、最良の熱伝導率を提供するものの中から選ぶべきであり、これは排気ガス又はその他の有毒廃棄物の腐食に充分な耐久性をもつ。一例を挙げると、球の直径は、軽自動車についておよそ20mm、バスについては50mm、大型車両については60mmである。球の数量は、中和すべき汚染物質の流量に応じて異なる。
突出部分の第一の機能は、効率を高めるためには球を中心まで加熱すべきでないことから、内燃機関の始動直後に瞬間的に排気ガスの温度に達するような形で球の表面の熱慣性を低減させることにある。それにより突出部分は、蓄熱量を画定する。突出部分の第二機能は、ガスとの交換面積を増大させ、不完全燃焼又は部分燃焼した粒子及び、残渣を通過時に保持することにある。粒子は、その寸法が小さければ小さいほど容易にこれらの突出部分上にへばりつき、非常に急速に焼成する。突出部分の第三の機能は、エンジンの出力を低減させる負荷損失を誘発するのを避けながらガスの通過を容易にすることにある。]

エ.「La figure 14 montre … les d'applications autres que l'automobile).」(第9欄第11行?第10欄第3行)
[図14は、円筒形の熱分解ヒートセル38の一例を、正面断面図で概略的に示しており、それは閉鎖用壁41又は42の嵌め合せ以前に設置された、ステンレス鋼製ネット内にヒートセルの容積に合わせて予め収納され、突出部分を備えた中空金属球の集合7で、その交換表面が構成されている断熱材40でとり囲まれた円筒形壁39を有する。球の数及び直径ならびにヒートセルの直径及び長さは、ガスの量及びその性質(ガソリン、軽油又は自動車以外の利用分野におけるその他のもの)に依存している。
図15は、断熱材46でとり囲まれた気密壁45を有する円筒形の熱分解ヒートセル44の一例を、正面断面図で概略的に示しており、その交換表面は、一組の鉱物球1、2または3から成っており、予めステンレス鋼ネット内の熱分解ヒートセルのサイズに合わせられており、メッシュ状のステンレス鋼製ワイヤから成り、非常に鋭利な三つの稜を有する断面をしており、且つ予めステンレス鋼製ネットに取り囲まれた、平坦なリング50、51を挿入した後、閉鎖スキン48または49にクリンピング(crimping)する前に配置された、スリーブ47に挿入される。粒子及び煤煙は、リング内の複雑な絡み合いを通してその連続的稜上及びこのワイヤ上で衝撃により細片化される。このワイヤは、連続旋盤の切り屑の形で得ることができる。これはその後、複雑に絡み合わさられる。その性質のためこのリングは、排気ガスの音響レベルを低下させるための消音器の役目を果たす。球の数及び直径ならびにヒートセルの直径及び長さは、気体の流量及び性質(ガソリン、軽油又は、自動車以外の利用分野におけるその他のもの)に依存する。]

オ.「La figure 19 montre schematiquement … d'injection de RINICEOLAT de zinc.」(第10欄第15行?第11欄末行)
[図19は、高出力エンジンのための本発明に従ったシステムの最も完全な形態を概略的に示している。この形態は、その入口管と出口管の嵌合せにより互いに組立てられたモジュールで構成されている。一定範囲の異なる長さ及び/又は断面に従って同じタイプのモジュールを実現することができ、こうして、熱分解による中和モジュール70、そして例えば同じく適切な網目をもつステンレス鋼製ネットの中に収納された「(anthracnose)炭疽」の名称で5ミリメートル?8ミリメートルの直径の集塊の形で工業的に製造されている、泥炭ベースの植物性フィルタで構成されているガスのろ過及び精製用モジュール71; 〔この機能は同様に、例えば同じく金属ネット内に収納されたアコーデオン状のろ過性カーボン紙によって確保することもできる。このろ過性カーボン体積の機能は、先行手段から来る熱分解のきわめて細かい残渣を保持し、なお含有している可能性のある残留気体成分の減少を追跡調査し、残留気体汚染物質をその中和を追跡しながら通過時点で精製することにある〕; 消臭及び中和用ガスの射出用モジュール72〔粒子を中和し排気ガスを脱臭する前記ガスは例えば、それを気化する圧縮空気で射出される「亜鉛RINICEOLAT」エマルジョンである。この装置は例えば、液体の形でガスを収納するタンク、電磁弁、液体の周期的射出用タイムコントロール、圧縮空気射出用タイムコントロールで構成されている。管内を循環する液体ガスと圧縮空気は、射出用カニューレ内で合流し、圧縮空気は液体ガスのほぼ瞬間的な気化を容易にする。流量は、例えば重量ディーゼル車両については5秒毎に約12マイクロリットルつまり平均速度で1,000kmについて約3.6リットルである〕; 既知のタイプの消音モジュール76といった複数のモジュールの全体又は一部分の選択によって、予め定められた出力範囲のために、ガスの流量、その性質及びその焼成すべき粒子又は煤煙負荷密度に応じてシステムを構成することが可能となる。
少量の汚染物質流量のため、つまり例えばガソリン又は軽油を用いる乗用車及びそれと同等のもの(小型発電装置)のためのシステム構成は、最小限の形態において、対応する容量の熱分解モジュール70及び消音用及びガス冷却用モジュール74そして場合によっては亜鉛RINICEOLATの射出用モジュールを有することができるだろう。]

カ.上記ア.ないしオ.の記載及び各図の記載によれば、FIG.19(図19)に示される全体システムの熱分解による中和モジュール70の具体的な態様が、FIG.1(図1)ないしFIG.4(図4)、FIG.14(図14)、FIG.15(図15)に記載される球で満たされた熱分解ヒートセルであることが分かるから、引用文献には、球で満たされた中和モジュール70が記載されているといえる。

キ.上記オ.及びFIG.19(図19)の記載によれば、中和モジュール70とガスのろ過及び精製用モジュール71とは隣りあって続いていることが分かるから、両者は隣接しているといえる。

上記ア.ないしキ.の記載並びにFIG.1(図1)ないしFIG.4(図4)、FIG.14(図14)、FIG.15(図15)及びFIG.19(図19)の記載によれば、引用文献には、次の発明が記載されていると認められる。

「内燃機関からの排ガスの汚染性ガス中和システムであって、
前記排気ガスの流れが通過する、球で満たされた中和モジュール70と、
前記排気ガスの流れ方向に沿って前記中和モジュール70に隣接し、泥炭ベースの植物性フィルタで構成されているガスのろ過及び精製用モジュール71とを備える排ガスの汚染性ガス中和システム。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

2)対比
本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「内燃機関」は、その機能又は構成からみて、本願補正発明における「燃焼機関」に相当する。また、同様に、引用文献記載の発明における「汚染性ガス中和システム」は、本願補正発明における「後処理装置」に、「球で満たされた中和モジュール70」は「ビーズで満たされた領域(3)」に、それぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「泥炭ベースの植物性フィルタで構成されているガスのろ過及び精製用モジュール71」は、「フィルタで満たされた領域」という限りにおいて、本願補正発明における「粒子フィルタとしての金属繊維で満たされた領域(5)」に相当する。

してみると、両者は、
「燃焼機関からの排ガスの後処理装置であって、
前記排気ガスの流れが通過する、ビーズで満たされた領域と、
前記排気ガスの流れ方向に沿って前記領域に隣接し、フィルタで満たされた領域と
を備える排ガスの後処理装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点
フィルタで満たされた領域に関して、本願補正発明では、「粒子フィルタとして金属繊維で満たされ」、「排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域に分けられており、それぞれの小領域は前記排気ガスの流れ方向へ段階的に減少する空隙率及び/又は間隙径分布を有している」ものであるのに対して、引用文献記載の発明では、ガスのろ過及び精製用として植物性フィルタで構成され、具体的な構成は明らかではない点(以下、「相違点1」という。)。

3)判断
上記相違点1について検討する。
内燃機関の排気ガスの後処理装置において、粒子フィルタとして金属繊維で満たされ、排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域に分けられており、それぞれの小領域は排気ガスの流れ方向へ段階的に粒子フィルタの粗さを粗から密に変化させることは、本願優先日前において、例えば、特開平11-166409号公報(段落【0019】等を参照。)に示されるように周知の技術的事項(以下、「周知技術1」という。)である。そして、内燃機関の排気ガスの後処理装置である引用文献記載の発明において、周知技術1を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、格別の創作力を要することなく想到することができたことである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術1から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

3.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

[3]本願発明について
1. 本願発明
上記のとおり、平成18年10月26日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年5月25日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、上記[2]1.(ロ)に記載したとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、引用文献(国際公開第00/43094号)記載事項は、上記[2]2.(2)1)に記載したとおりである。

3.当審の判断
本願発明は、前記[2]2.で検討した本願補正発明の「金属繊維で満たされた領域(5)」について、「前記金属繊維で満たされた領域(5)は、前記排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域に分けられており、それぞれの小領域は前記排気ガスの流れ方向へ段階的に減少する空隙率及び/又は間隙径分布を有している」なる事項を有しないものに相当する。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに本願発明を減縮したものに相当する本願補正発明が、上記[2]2.に記載したとおり、引用文献記載の発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

5.付記
上記「[1]手続の経緯」において記載したとおり、本願は、平成20年7月10付けで審尋がなされ、同年10月15日に審尋に対する回答書が提出されている。かかる回答書において、請求人は、特許請求の範囲を次のようにする補正案を示した上で、補正の機会を求めているので、念のため検討する。

「(請求項1)
燃焼機関からの排気ガスの後処理装置であって、
前記排気ガスの流れが通過する、ビーズで満たされた領域(3)と、
前記排気ガスの流れ方向に沿って前記領域(3)に隣接し、粒子フィルタとしての金属繊維で満たされた領域(5)と
を備え、
前記金属繊維で満たされた領域(5)は、前記排気ガスの流れ方向へ進むに従って、連続して層状に配置される複数の小領域に分けられており、それぞれの小領域は前記排気ガスの流れ方向へ段階的に減少する空隙率及び/又は間隙径分布を有し、 前記ビーズで満たされた領域(3)と、前記金属繊維で満たされた領域(5)とが同一のハウジング(2)内に配置され、かつ、互いの領域は前記ハウジング(2)の断面積が減少することなく接続されていることを特徴とする排気ガスの後処理装置。」(「本願補正案発明」という。)

本願補正案発明は、前記[2]2.で検討した本願補正発明に「前記ビーズで満たされた領域(3)と、前記金属繊維で満たされた領域(5)とが同一のハウジング(2)内に配置され、かつ、互いの領域は前記ハウジング(2)の断面積が減少することなく接続されている」なる事項を加えたものに相当する。
そうすると、本願補正案発明は、前記[2]2.2)対比で示した相違点1に加え、次の点で相違する。

・相違点2
本願補正案発明では、ビーズで満たされた領域(3)と、前記金属繊維で満たされた領域(5)とが同一のハウジング(2)内に配置され、かつ、互いの領域は前記ハウジング(2)の断面積が減少することなく接続されているのに対して、引用文献記載の発明では、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点2」という。)。
しかしながら、内燃機関の排気ガス後処理装置において、所定の機能を有する領域(例えば、触媒)と、フィルタ機能を有する領域とが同一のハウジング内に配置され、かつ、互いの領域は前記ハウジングの断面積が減少することなく接続されているように構成することも、例えば、特開昭56-509号公報(特に、第7図を参照されたい。)に示されるように本願優先日前において周知の技術的事項(以下、「周知技術2」という。)である。そして、内燃機関の排気ガスの後処理装置である引用文献記載の発明において、周知技術2を採用し、相違点2に係る本願補正案発明のように構成することは、格別の創作力を要することなく相当することができたことである。
また、本願補正案発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明、周知技術1及び周知技術2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。
そうすると、本願補正案発明も、引用文献記載の発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
 
審理終結日 2009-03-12 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-31 
出願番号 特願2002-543133(P2002-543133)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
P 1 8・ 575- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 柳田 利夫
森藤 淳志
発明の名称 燃焼機関からの排気ガスの後処理装置及び方法  
代理人 龍華 明裕  
代理人 龍華 明裕  
代理人 龍華 明裕  

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